説明

基準信号発生装置

【課題】 顧客変更可能なパラメータの保護を強化し、パラメータ書き込み不良等に対する復旧を容易にできる基準信号発生装置を提供する。
【解決手段】 2面のデバイスから成る保持用メモリについて、出荷用パラメータを保持する領域と顧客変更パラメータを保存する領域とを別々とし、顧客変更パラメータと出荷用パラメータとを分けて、パラメータ毎にSUMを付加し、誤り検出を行うことでSUMデータ領域の書き込み回数制限以上におけるデバイス劣化を防止し、2面のデバイス構成によってエラーが発生しているパラメータを正常なパラメータ、正常なSUMに更新し、両面のデバイスにエラーが発生した場合に、エラー報告して、出荷用パラメータに切り替える基準信号発生装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準信号を発生する基準信号発生装置に係り、特に、顧客変更可能なパラメータの保護を強化し、パラメータ書き込み不良に対する復旧を容易にする基準信号発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来のパラメータ保護機能:図7]
従来の基準信号発生装置におけるパラメータの保護機能について図7を参照しながら説明する。図7は、従来の基準信号発生装置のパラメータ保護機能を説明する概略図である。
図7に示すように、パラメータを記憶するメモリとしてデバイスA(0面)とデバイスB(1面)の2つのEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)を備えている。
【0003】
出荷用パラメータが両方のデバイスに書き込まれ、パラメータの書き替えも2面で行うようになっている。
パラメータの保護機能は、全パラメータに対して、誤り符号検出の一種であるチェックサム(以下、単に「SUM」とする)を計算し、SUMデータ領域にSUMの値(SUMデータ)を設定する。
具体的には、出荷時に出荷用パラメータについてデバイスAでSUM計算を行い、SUM値の設定を行って、続いて同様にデバイスBでSUM計算を行い、SUM値の設定を行う。
【0004】
装置が出荷されて設置後は、電源投入時に、全データ(パラメータ及びSUMデータを含む)のSUMを計算し、SUMデータと比較することにより、エラー発生を判定する。
具体的には、SUMデータ領域(チェックサムフィールド)にはチェックサムフィールドがゼロの場合におけるSUMデータの補数がセットされるので、全データのSUMデータ(総計SUMデータ)がゼロになれば、正しいことになる。
つまり、チェックサムフィールド以外のチェックサム+チェックサムフィールド以外のチェックサムの補数=0(ゼロ)になれば、正しいことになる。
【0005】
エラーが発生している場合は、エラーが発生していないデバイスのパラメータを使用するようにする。
具体的には、デバイスAにエラーが発生している場合には、デバイスBのパラメータをデバイスAにコピーして使用する。また、デバイスBにエラーが発生している場合には、デバイスAのパラメータのみを使用し、両デバイスにエラーが発生した場合には、正常に立ち上がらないことになる。
【0006】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開平05−011826号公報「CNCのパラメータ記憶方式」(ファナック株式会社)[特許文献1]、特開2006−258453号公報「エンコーダ装置およびそのパラメータ破壊自己復帰装置並びにパラメータ破壊自己復帰方法」(株式会社安川電機)[特許文献2]がある。
【0007】
特許文献1には、CNCのパラメータ記憶方式において、不揮発性メモリ1と磁気不揮発性メモリ2にはパラメータ変更手段3から変更されたパラメータが書き込まれ、監視手段4は不揮発性メモリ1の異常を監視し、異常が発生した場合に、パラメータ転送手段5が磁気不揮発性メモリ2のパラメータを不揮発性メモリ1に転送することが示されている。
【0008】
特許文献2には、エンコーダ装置において、マイクロコンピュータ2がRAM部3とバックアップ部6とを備え、外部メモリデバイス1のデータが破壊された場合、バックアップ部6のバックアップデータを用いて破壊されたデータを照合して復旧するデータを求めることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平05−011826号公報
【特許文献2】特開2006−258453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の基準信号発生装置では、パラメータ保持用のメモリとして2個のデバイスを使用し、出荷時のパラメータの保護を実現しているが、そのパラメータの誤り検出として、全データのSUMを計算することで実現している。
この場合、1個のパラメータが更新されると、SUMデータも更新されなければならず、常時パラメータを更新するようなシステムでは、SUMデータ領域の書き込み劣化が発生し、保持用メモリの書き込み劣化によるパラメータ読み出し不良が発生するおそれがあるという問題点があった。
【0011】
保持用メモリは、EEPROMを使用しているため、およそ100万回の書き替え回数の制限があり、この制限回数を超えた場合、書き込み不良によるデバイス不良となり、パラメータを正常に読み出すことができなくなるというおそれがあった。
【0012】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、顧客変更可能なパラメータの保護を強化し、パラメータ書き込み不良等に対する復旧を容易にすることができる基準信号発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、パラメータを記憶する第1のメモリと第2のメモリと、基準となる信号を発生させる信号発生器と、発生させた信号の状態を表示する表示部と、第1のメモリ又は第2のメモリからパラメータを読出し、信号発生器での信号発生を制御し、信号の状態を表示部に出力する制御マイコンとを備えた基準信号発生装置であって、第1のメモリ及び第2のメモリが、出荷用パラメータを記憶する出荷用パラメータ領域と顧客変更パラメータを記憶する顧客変更パラメータ領域とで構成され、出荷用パラメータ領域が、出荷用パラメータと、顧客変更パラメータが書き込まれる際にセットされる切替フラグと、チェックサムのデータを記憶し、顧客変更パラメータ領域が、パラメータ毎に顧客変更パラメータと当該パラメータに対するチェックサムのデータを記憶し、制御マイコンが、顧客変更パラメータを第1のメモリと第2のメモリ両方に書き込むものであり、制御マイコンが、電源オン時に、第1のメモリの切替フラグを参照し、セットされていれば、第1のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと第1のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムのデータとを比較し、一致していれば第1のメモリに記憶する顧客変更パラメータの読出し処理を行い、一致していなければ第2のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと第2のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムとを比較し、一致していれば第2のメモリに記憶する顧客変更パラメータの読出し処理を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記基準信号発生装置において、制御マイコンが、第1のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと第1のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムのデータとを比較し、一致している場合に、第2のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと第2のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムとを比較し、一致していなければ第1のメモリに記憶する顧客変更パラメータで第2のメモリの顧客変更パラメータを書き換えることを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記基準信号発生装置において、制御マイコンが、第2のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと第2のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムとを比較し、一致していなければ顧客変更パラメータを使用できなかった旨のエラー報告を出力し、第1のメモリと第2のメモリの切替フラグをクリアし、第1のメモリ又は第2のメモリの出荷用パラメータ領域から出荷用パラメータの読出し処理を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記基準信号発生装置において、制御マイコンが、第2のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと第2のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムとを比較し、一致している場合に、第2のメモリに記憶する顧客変更パラメータ及びチェックサムのデータで第1のメモリの顧客変更パラメータ及びチェックサムのデータを書き換えることを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記基準信号発生装置において、制御マイコンが、電源オン時に、第1のメモリの切替フラグを参照し、セットされていなければ、出荷用パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと当該出荷用パラメータ領域で計算されたチェックサムを比較し、一致していれば第1のメモリに記憶する出荷用パラメータの読出し処理を行い、一致していなければ第2のメモリの出荷用パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと当該出荷用パラメータ領域で計算されたチェックサムを比較し、一致していれば第2のメモリに記憶する出荷用パラメータの読出し処理を行うことを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記基準信号発生装置において、制御マイコンが、第2のメモリの出荷用パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと当該出荷用パラメータ領域で計算されたチェックサムを比較し、一致していなければ第1のメモリ及び第2のメモリに記憶された出荷用パラメータは両方共にチェックサムのエラーである旨のエラー報告を出力することを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記基準信号発生装置において、制御マイコンが、第1のメモリの出荷用パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと第1のメモリの出荷用パラメータ領域で計算されたチェックサムのデータとを比較し、一致している場合に、第2のメモリの出荷用パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと第2のメモリの出荷用パラメータ領域で計算されたチェックサムとを比較し、一致していなければ第1のメモリに記憶する出荷用パラメータで第2のメモリの出荷用パラメータを書き換えることを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記基準信号発生装置において、制御マイコンが、第2のメモリの出荷用パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと第2のメモリの出荷用パラメータ領域で計算されたチェックサムとを比較し、一致している場合に、第2のメモリに記憶する出荷用パラメータ及びチェックサムのデータで第1のメモリの出荷用パラメータ及びチェックサムのデータを書き換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1のメモリ及び第2のメモリが、出荷用パラメータを記憶する出荷用パラメータ領域と顧客変更パラメータを記憶する顧客変更パラメータ領域とで構成され、出荷用パラメータ領域が、出荷用パラメータと、顧客変更パラメータが書き込まれる際にセットされる切替フラグと、チェックサムのデータを記憶し、顧客変更パラメータ領域が、パラメータ毎に顧客変更パラメータと当該パラメータに対するチェックサムのデータを記憶し、制御マイコンが、顧客変更パラメータを第1のメモリと第2のメモリ両方に書き込むものであり、制御マイコンが、電源オン時に、第1のメモリの切替フラグを参照し、セットされていれば、第1のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと第1のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムのデータとを比較し、一致していれば第1のメモリに記憶する顧客変更パラメータの読出し処理を行い、一致していなければ第2のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと第2のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムとを比較し、一致していれば第2のメモリに記憶する顧客変更パラメータの読出し処理を行う基準信号発生装置としているので、顧客変更可能なパラメータの保護を強化し、パラメータ書き込み不良等に対する復旧を容易にすることができる効果がある。
【0022】
本発明によれば、制御マイコンが、第2のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと第2のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムとを比較し、一致していなければ顧客変更パラメータを使用できなかった旨のエラー報告を出力し、第1のメモリと第2のメモリの切替フラグをクリアし、第1のメモリ又は第2のメモリの出荷用パラメータ領域から出荷用パラメータの読出し処理を行う上記基準信号発生装置としているので、顧客変更パラメータが使用できないエラー報告を行って、出荷用パラメータで立ち上げることができ、顧客変更可能なパラメータの保護を強化し、パラメータ書き込み不良等に対する復旧を容易にすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る基準信号発生装置の構成ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る基準信号発生装置における新パラメータ保護機能を説明する図である。
【図3】パラメータ読出し処理のフローチャートである。
【図4】出荷用パラメータ読出し処理のフローチャートである。
【図5】顧客変更パラメータ読出し処理のフローチャートである。
【図6】顧客変更パラメータ書換え処理のフローチャートである。
【図7】従来の基準信号発生装置のパラメータ保護機能を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る基準信号発生装置は、保持用メモリを出荷用パラメータと顧客変更パラメータを保存する領域を別々とし、顧客変更パラメータと出荷用パラメータとを分けて、パラメータ毎にSUMを付加し、誤り検出を行うことでSUMデータ領域の書き込み回数制限以上におけるデバイス劣化を防止し、2面のデバイス構成によってエラーが発生しているパラメータを正常なパラメータ、正常なSUMに更新し、両面のデバイスにエラーが発生した場合に、出荷用パラメータに切り替えるものであり、顧客変更可能なパラメータの保護を強化し、パラメータ書き込み不良等に対する復旧を容易にすることができるものである。
【0025】
[基準信号発生装置:図1]
本発明の実施の形態に係る基準信号発生装置について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る基準信号発生装置の構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係る基準信号発生装置(本装置)は、図1に示すように、制御マイコン1と、第1のメモリ(0面)2aと、第2のメモリ(1面)2bと、表示部3と、入力部4と、保守インタフェース部5と、内蔵信号発生器10とを基本的に有している。
【0026】
[本装置の各部]
本装置の各部について具体的に説明する。
制御マイコン1は、第1メモリ2a又は第2メモリ2bからパラメータを読み込み、内蔵信号発生器10に基準信号を発振させる指示を出力し、内蔵信号発生器10からのアラーム信号を監視し、表示部3に発振周波数とレベルを表示させ、保守インタフェース部5にシリアル通信で保守用のデータを出力する。
また、制御マイコン1は、入力部4から入力された顧客変更可能なパラメータを第1のメモリ2aと第2のメモリ2bに記憶する。
【0027】
更に、制御マイコン1は、第1のメモリ2aと第2のメモリ2bにおいて書き込みによるエラーが発生したか否かを判定し、エラーが発生した場合に復旧させるための特徴的な処理を実行するものである。この処理の詳細については、後述する。
尚、制御マイコン1の内部構成としては、プロセッサの制御部と記憶部を備え、記憶部に格納された処理プログラムを制御部が読み込んで処理プログラムを実行し、上記の処理を実現している。
【0028】
第1のメモリ(0面)2a及び第2のメモリ(1面)2bは、パラメータ保持メモリであり、EEPROMで構成され、バスで制御マイコン1に接続している。
尚、第1のメモリ2aを主とし、第2のメモリ2bを従として使用する。
第1のメモリ2aと第2のメモリ2bの構成については後述する。
【0029】
表示部3は、制御マイコン1から出力された発振周波数とレベルの情報を表示するもので、VFD(蛍光表示管:Vacuum Fluorescent Display)又はLCD(水晶:Liquid Crystal Display)で構成されている。
尚、レベルは、発振周波数の出力レベル(出力電力レベル)である。
【0030】
入力部4は、パラメータを第1のメモリ2aと第2のメモリ2bに設定するために入力又は選択する。パラメータの設定に当たって、表示部3にパラメータに関する情報を制御マイコン1が表示するようにしてもよい。
【0031】
保守インタフェース部5は、シリアル通信で制御マイコン1に接続し、外部の保守用のコンピュータにシリアル通信で接続可能となっている。
保守インタフェース部5は、外部の保守用のコンピュータから保守用のコマンドを入力し、制御マイコン1に出力し、制御マイコン1からの保守用のデータを外部の保守用のコンピュータに出力する。
【0032】
内蔵信号発生器10は、制御マイコン1から発振に必要なデータ、パラメータ等を入力し、基準信号の発振を行い、異常等が発生した場合にはアラーム信号を制御マイコン1に出力する。
【0033】
[新パラメータ保護機能:図2]
次ぎに、本装置における新パラメータ保護機能について図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る基準信号発生装置における新パラメータ保護機能を説明する図である。
図2に示すように、デバイスA(0面)とデバイスB(1面)において、出荷用パラメータ領域と顧客変更パラメータ領域に分離する。
【0034】
[出荷用パラメータ領域]
出荷用パラメータ領域は、出荷パラメータを記憶する領域と、切替フラグを記憶する領域と、出荷パラメータと切替フラグについてSUMを計算したSUMデータが記憶する領域を備えている。
尚、出荷パラメータが複数種類ある場合には、出荷パラメータの種類毎に切替フラグが設けられ、SUMデータは、全ての出荷パラメータと全ての切替フラグについてSUMを計算したものとなる。
【0035】
[顧客変更パラメータ領域]
顧客変更パラメータ領域は、顧客が変更可能なパラメータとそのパラメータの種類毎にSUMデータを記憶する。つまり、1つの種類のパラメータに1つのSUMデータを持つ構成である。
例えば、パラメータAが顧客の要求により変更になると、デバイスA,Bの両面についてパラメータAの領域が書き替えられ、当該パラメータAのSUMデータをSUMデータの領域に格納するものである。
【0036】
[動作概略]
本装置は、出荷後の電源投入時は、主となるデバイスAの出荷用パラメータで立ち上がり、その後、顧客変更パラメータが設定される場合は、出荷用パラメータ領域の切替フラグを「0」から「1」に更新し、顧客変更パラメータ領域に顧客変更パラメータが設定され、SUMデータが格納される。
切替フラグの更新、顧客変更パラメータの設定とSUMデータの格納は、デバイスAで為されて、続いてデバイスBで為される。
【0037】
顧客変更パラメータ設定後に電源投入されると、顧客変更パラメータ領域のパラメータAとSUM(A)データを読出す。
デバイスAのパラメータ(A)がSUMエラーでない場合、パラメータ(A)を使用する。デバイスAのパラメータ(A)がSUMエラーの場合、デバイスBのパラメータ(A)とSUM(A)データを読出し、SUMエラーでなければ、デバイスBのパラメータ(A)を使用する。そして、デバイスBのパラメータ(A)でデバイスAのパラメータ(A)を更新する。
【0038】
デバイスA,Bの両方でSUMエラーがある場合には、切替フラグをクリア(「0」に)して、出荷用パラメータAを使用し、エラー報告を行う。
エラー報告とは、表示部3の画面に、顧客変更パラメータがエラーとなって出荷用パラメータで立ち上げた旨の表示等を行うものである。
顧客(ユーザ)は、当該エラー報告により、顧客変更パラメータを再設定することで、エラー前の状態に復旧できるものである。
【0039】
[パラメータ読出し処理フロー:図3]
次に、本装置におけるパラメータ読出し処理について図3を参照しながら説明する。図3は、パラメータ読出し処理のフローチャートである。
制御マイコン1内の制御部が、処理プログラムを読み込んでパラメータ読出し処理を実行すると、図3に示すように、第1のメモリ(デバイスA)2aの出荷用パラメータ領域の切替フラグを参照し、切替フラグが1(セット)されているか否かを判定する(S1)。
【0040】
切替フラグが1ではなく0(未セット)の場合(Noの場合)、出荷用パラメータ領域の出荷用パラメータ読出し処理を実行し(S2)、切替フラグが1(セット)の場合(Yesの場合)、顧客変更パラメータ領域の顧客変更パラメータ読出し処理を実行する(S3)。
尚、処理S2の出荷用パラメータ読出し処理と処理S3の顧客変更パラメータ読出し処理の詳細は後述する。
【0041】
[出荷用パラメータ読出し処理フロー:図4]
次に、本装置における出荷用パラメータ読出し処理について図4を参照しながら説明する。図4は、出荷用パラメータ読出し処理のフローチャートである。
制御マイコン1の制御部は、図4に示すように、第1のメモリ(デバイスA(0面))2aの出荷用パラメータ領域における全データのSUM(0面)(以下、SUM0とする)を計算し(S11)、SUMデータ領域のSUMデータと比較してエラー判定を行う(S12)。
【0042】
処理S11と処理S12に並行して、第2のメモリ(デバイスB(1面))2bの出荷用パラメータ領域における全データのSUM(1面)(以下、SUM1とする)を計算し(S13)、SUMデータ領域のSUMデータと比較してエラー判定を行う(S14)。
【0043】
そして、処理S12の結果、SUM0がSUMデータと一致するか否か、すなわち、エラーとなっていないかどうかを判定する(S15)。
SUM0が一致する場合(エラーがない場合:OKの場合)、次に、処理S14の結果、SUM1がSUMデータと一致するか否か、すなわち、エラーとなっていないかどうかを判定する(S16)。
【0044】
SUM1が一致する場合(エラーがない場合:OKの場合)、パラメータ使用面を0面(デバイスA)として出荷用パラメータ領域から出荷用パラメータの読出し処理を行う(S18)。
判定処理S16で、SUM1が一致しない場合(エラーがある場合:NGの場合)、0面(デバイスA)の出荷用パラメータとSUMデータを1面(デバイスB)の出荷用パラメータとSUMデータを記憶する領域にコピーし(S17)、パラメータ使用面を0面(デバイスA)として出荷用パラメータ領域から出荷用パラメータの読出し処理を行う(S18)。
【0045】
判定処理S15で、SUM0が一致しない場合(エラーがある場合:NGの場合)、次に、処理S14の結果、SUM1がSUMデータと一致するか否か、すなわち、エラーとなっていないかどうかを判定する(S19)。
SUM1が一致する場合(エラーがない場合:OKの場合)、1面(デバイスB)の出荷用パラメータとSUMデータを0面(デバイスA)の出荷用パラメータとSUMデータを記憶する領域にコピーし(S20)、パラメータ使用面を1面(デバイスB)として出荷用パラメータ領域から出荷用パラメータの読出し処理を行う(S22)。
【0046】
判定処理S19で、SUM1が一致しない場合(エラーがある場合:NGの場合)、上位へエラー報告を行い(S21)、パラメータ使用面を0面(デバイスA)として出荷用パラメータ領域から出荷用パラメータの読出し処理を行う(S18)。
尚、処理S21のエラー報告は、出荷用パラメータにおけるSUM0とSUM1の両方は一致しなかったが、0面の出荷用パラメータの読出しを行った旨の内容となる。若しくは、単純に特定のLED(Light Emitting Diode)を点灯又は点滅させるものであってもよい。
【0047】
[顧客変更パラメータ読出し処理フロー:図5]
次に、本装置における顧客変更パラメータ読出し処理について図5を参照しながら説明する。図5は、顧客変更パラメータ読出し処理のフローチャートである。
制御マイコン1の制御部は、図5に示すように、第1のメモリ(デバイスA(0面))2aの顧客変更パラメータ領域におけるパラメータ(0面)データ(以下、0面パラメータとする)とSUMデータ(0面)(以下、SUM0とする)を読出し(S31)、0面パラメータのSUMを計算し(S32)、SUM0と計算したSUMデータと比較してエラー判定を行う(S33)。
【0048】
処理S31〜処理S33に並行して、第2のメモリ(デバイスB(1面))2bの顧客変更パラメータ領域におけるパラメータ(1面)データ(以下、1面パラメータとする)とSUMデータ(1面)(以下、SUM1とする)を読出し(S34)、1面パラメータのSUMを計算し(S35)、SUM1と計算したSUMデータと比較してエラー判定を行う(S36)。
【0049】
そして、処理S33の比較の結果、SUM0が計算したSUMデータと一致するか否か、すなわち、エラーとなっていないかどうかを判定する(S37)。
SUM0が一致する場合(エラーがない場合:OKの場合)、次に、処理S36の比較の結果、SUM1が計算したSUMデータと一致するか否か、すなわち、エラーとなっていないかどうかを判定する(S38)。
【0050】
SUM1が一致する場合(エラーがない場合:OKの場合)、パラメータ使用面を0面(デバイスA)として顧客変更パラメータ領域から顧客変更パラメータの読出し処理を行う(S40)。
判定処理S38で、SUM1が一致しない場合(エラーがある場合:NGの場合)、0面(デバイスA)の顧客変更パラメータとSUM0を1面(デバイスB)の顧客変更パラメータを記憶する領域とSUMデータを記憶する領域にコピーし(S39)、パラメータ使用面を0面(デバイスA)として顧客変更パラメータ領域から顧客変更パラメータの読出し処理を行い、当該0面のデータを使用する(S40)。
【0051】
判定処理S37で、SUM0が一致しない場合(エラーがある場合:NGの場合)、次に、処理S36の比較の結果、SUM1が計算したSUMデータと一致するか否か、すなわち、エラーとなっていないかどうかを判定する(S41)。
SUM1が一致する場合(エラーがない場合:OKの場合)、1面(デバイスB)の顧客変更パラメータとSUM1を0面(デバイスA)の顧客変更パラメータを記憶する領域とSUMデータを記憶する領域にコピーし(S42)、パラメータ使用面を1面(デバイスB)として顧客変更パラメータ領域から顧客変更パラメータの読出し処理を行い、当該1面のデータを使用する(S43)。
【0052】
判定処理S41で、SUM1が一致しない場合(エラーがある場合:NGの場合)、エラー報告のセットを行い(S44)、デバイスA及びデバイスBのパラメータの切替フラグをクリア(フラグ0)にし(S45)、デバイスA又はデバイスBの出荷用パラメータ領域から出荷用パラメータの読出し処理を行い(S46)、パラメータは当該出荷用を使用する(S47)。
尚、処理S44のエラー報告は、顧客変更パラメータにおけるSUM0とSUM1の両方は一致しなかったが、0面の出荷用パラメータの読出しを行った旨の内容となる。若しくは、単純に特定のLEDを点灯又は点滅させるものであってもよい。
【0053】
[顧客変更パラメータ書換え処理フロー:図6]
次に、本装置における顧客変更パラメータ書換え処理について図6を参照しながら説明する。図6は、顧客変更パラメータ書換え処理のフローチャートである。
制御マイコン1の制御部は、図6に示すように、顧客変更パラメータ書換え処理を行う場合は、出荷用パラメータ領域の切替フラグを参照し、当該パラメータの切替フラグが0(クリア)であるか、1(セット)であるのか判定する(S51)。
【0054】
切替フラグが0(クリア)であれば、切替フラグに1をセットし(S52)、処理S53に移行し、切替フラグが1(セット)であれば、顧客変更パラメータを両面(デバイスA及びデバイスBの双方)で更新し(S53)、両面でSUMを計算してSUMデータの更新を行い(S54)、処理を終了する。
【0055】
[実施の形態の効果]
本装置によれば、出荷用パラメータ領域と顧客変更パラメータ領域とに分け、顧客パラメータはパラメータ毎にSUMを計算してSUMデータを記憶するようにしているので、従来の技術に比べて、EEPROMのSUMデータの記憶領域における書き込み劣化が低減できる効果がある。
【0056】
また、本装置によれば、保持メモリのデバイス不良、故障、書き込み不良が発生しても、メモリを二重化して出荷用パラメータ領域と顧客変更パラメータ領域とに分けるようにしているので、一方のメモリの不良等には他方のメモリのパラメータを利用でき、両方のメモリの不良等に対しては、出荷用パラメータで立ち上げることができ、装置のエラーを少なくし、顧客側での復旧を容易に行うことができる効果がある。
【0057】
また、本装置によれば、ハードウェアの構成を変更しなくても、ソフトウェアの変更だけで、実現できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、顧客変更可能なパラメータの保護を強化し、パラメータ書き込み不良等に対する復旧を容易にできる基準信号発生装置に好適である。
【符号の説明】
【0059】
1…制御マイコン、 2a…第1のメモリ(0面:デバイスA)、 2b…第2のメモリ(1面:デバイスB)、 3…表示部、 4…入力部、 5…保守インタフェース部、 10…内蔵信号発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラメータを記憶する第1のメモリと第2のメモリと、基準となる信号を発生させる信号発生器と、発生させた信号の状態を表示する表示部と、前記第1のメモリ又は前記第2のメモリからパラメータを読出し、前記信号発生器での信号発生を制御し、信号の状態を前記表示部に出力する制御マイコンとを備えた基準信号発生装置であって、
前記第1のメモリ及び前記第2のメモリは、出荷用パラメータを記憶する出荷用パラメータ領域と顧客変更パラメータを記憶する顧客変更パラメータ領域とで構成され、
前記出荷用パラメータ領域は、出荷用パラメータと、顧客変更パラメータが書き込まれる際にセットされる切替フラグと、チェックサムのデータを記憶し、
前記顧客変更パラメータ領域は、パラメータ毎に顧客変更パラメータと当該パラメータに対するチェックサムのデータを記憶し、
前記制御マイコンは、顧客変更パラメータを前記第1のメモリと前記第2のメモリ両方に書き込むものであり、
前記制御マイコンは、電源オン時に、前記第1のメモリの切替フラグを参照し、セットされていれば、前記第1のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと前記第1のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムのデータとを比較し、一致していれば前記第1のメモリに記憶する顧客変更パラメータの読出し処理を行い、一致していなければ前記第2のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと前記第2のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムとを比較し、一致していれば前記第2のメモリに記憶する顧客変更パラメータの読出し処理を行うことを特徴とする基準信号発生装置。
【請求項2】
制御マイコンは、第1のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと前記第1のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムのデータとを比較し、一致している場合に、第2のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと前記第2のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムとを比較し、一致していなければ前記第1のメモリに記憶する顧客変更パラメータで前記第2のメモリの顧客変更パラメータを書き換えることを特徴とする請求項1記載の基準信号発生装置。
【請求項3】
制御マイコンは、第2のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと前記第2のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムとを比較し、一致していなければ顧客変更パラメータを使用できなかった旨のエラー報告を出力し、前記第1のメモリと前記第2のメモリの切替フラグをクリアし、前記第1のメモリ又は前記第2のメモリの出荷用パラメータ領域から出荷用パラメータの読出し処理を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の基準信号発生装置。
【請求項4】
制御マイコンは、第2のメモリの顧客変更パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと前記第2のメモリに記憶された顧客変更パラメータから計算されたチェックサムとを比較し、一致している場合に、前記第2のメモリに記憶する顧客変更パラメータ及びチェックサムのデータで第1のメモリの顧客変更パラメータ及びチェックサムのデータを書き換えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の基準信号発生装置。
【請求項5】
制御マイコンは、電源オン時に、第1のメモリの切替フラグを参照し、セットされていなければ、出荷用パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと当該出荷用パラメータ領域で計算されたチェックサムを比較し、一致していれば前記第1のメモリに記憶する出荷用パラメータの読出し処理を行い、一致していなければ第2のメモリの出荷用パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと当該出荷用パラメータ領域で計算されたチェックサムを比較し、一致していれば前記第2のメモリに記憶する出荷用パラメータの読出し処理を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の基準信号発生装置。
【請求項6】
制御マイコンは、第2のメモリの出荷用パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと当該出荷用パラメータ領域で計算されたチェックサムを比較し、一致していなければ第1のメモリ及び前記第2のメモリに記憶された出荷用パラメータは両方共にチェックサムのエラーである旨のエラー報告を出力することを特徴とする請求項5記載の基準信号発生装置。
【請求項7】
制御マイコンは、第1のメモリの出荷用パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと前記第1のメモリの出荷用パラメータ領域で計算されたチェックサムのデータとを比較し、一致している場合に、第2のメモリの出荷用パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと前記第2のメモリの出荷用パラメータ領域で計算されたチェックサムとを比較し、一致していなければ前記第1のメモリに記憶する出荷用パラメータで前記第2のメモリの出荷用パラメータを書き換えることを特徴とする請求項5又は6記載の基準信号発生装置。
【請求項8】
制御マイコンは、第2のメモリの出荷用パラメータ領域に記憶されたチェックサムのデータと前記第2のメモリの出荷用パラメータ領域で計算されたチェックサムとを比較し、一致している場合に、前記第2のメモリに記憶する出荷用パラメータ及びチェックサムのデータで第1のメモリの出荷用パラメータ及びチェックサムのデータを書き換えることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか記載の基準信号発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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