説明

基盤構造体

【課題】タイルの飛散を防止するとともに、基盤のメンテナンスやタイルの張り替え等を容易に行うことができる基盤構造体及び基盤構造体の施工方法を提供する。
【解決手段】基盤2上に配置されたタイル4と、前記基盤2上に張設され、前記タイル4を掛止するワイヤ部材5と、を有することを特徴とする。本発明によれば、タイルの飛散を防止するとともに、基盤のメンテナンスやタイルの張り替え等を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、バルコニーやベランダなどにタイルを敷設して形成された基盤構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、戸建て住宅やマンションなどのバルコニー又はベランダなどにおいて、意匠性を向上させたり、排水性を高めたりするために、複数のタイルを敷設して基盤構造体を構築することが知られている。このような基盤構造体は、基盤とタイルの間又は隣り合うタイルの間にモルタルなどを充填・固化させて固定することが一般的に行われている。このように、モルタルなどを充填・固化させることにより、タイルの移動や飛散を防止することができる(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−264601
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した従来の基盤構造体であると、基盤のメンテナンスを行う場合や、タイルを張り替える場合には、作業が煩雑となるという問題があった。
例えば、基盤に防水層が設けられている場合には、ある程度の年数が経過すると、防水層が劣化する可能性があるため、メンテナンスが必要になる。前記した従来の基盤構造体に係る防水層に対してメンテナンスを行う場合は、固化したモルタルなどを破壊して、タイルを除去しなければならなかった。すなわち、固化したモルタルのはつり作業が煩雑になるとともに、モルタルを破壊する際に、基盤に設けられた防水層をも破壊してしまう可能性があった。さらには、モルタルのはつり作業の際に、再利用したいタイルをも破壊してしまう可能性があった。
また同様に、タイルの張り替えを行う場合においても、作業が煩雑になるため、デザインの自由性を奪う原因になっていた。
【0005】
このような観点から本発明は、タイルの飛散を防止するとともに、基盤のメンテナンスやタイルの張り替え等を容易に行うことができる基盤構造体及び基盤構造体の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明に係る基盤構造体は、基盤上に配置されたタイルと、前記基盤上に張設され、前記タイルを掛止するワイヤ部材と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、タイルが、張設されたワイヤ部材に掛止されるため、タイルの飛散を防止することができる。また、基盤とタイルとをモルタルなどを介して固着せずに、タイルをワイヤ部材で掛止するため、例えば、ワイヤ部材を弛めるだけで、タイルの張り替えや、基盤のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0008】
また、前記課題を解決するために本発明に係る基盤構造体は、基盤上に配置されたベース部材と、前記ベース部材に接合されたタイルと、前記基盤上に張設され、前記ベース部材を掛止するワイヤ部材と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、タイルがベース部材に接合されるとともに、ベース部材が張設されたワイヤ部材に掛止されるため、タイルの飛散を防止することができる。また、基盤とベース部材とをモルタルなどを介して固着せずに、ベース部材をワイヤ部材で掛止するため、例えば、ワイヤ部材を弛めるだけで、ベース部材及びタイルの張り替えや、基盤のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0010】
また、前記ワイヤ部材は、前記タイルの上面よりも前記基盤側に挿通されていることが好ましい。このようにすると、ワイヤ部材がタイルの上面よりも下に配置されるので、ワイヤ部材が露出せず、基盤構造体の意匠性を高めることができる。
【0011】
また、前記タイルは、このタイル外面に切り欠かれた凹溝を備え、前記ワイヤ部材は、前記凹溝に挿通されていることが好ましい。このようにすると、凹溝にワイヤ部材を挿通させて、タイルの移動を抑制しながらワイヤ部材の張りを調節することができるため、基盤構造体の施工性を高めることができる。
【0012】
また、複数の前記タイルは、隣り合う前記タイルと連結される連結部を備え、前記ワイヤ部材は、前記タイル同士の間に形成された目地に挿通されていることが好ましい。このようにすると、タイルの連結性を高めるとともに、目地にワイヤ部材を挿通させて、タイルの移動を抑制しながらワイヤ部材の張りを調節することができるため、基盤構造体の施工性を高めることができる。また、目地にワイヤ部材を挿通させることで、ワイヤ部材の露出をより抑えることができる。
【0013】
また、前記ワイヤ部材の少なくとも一方の端部にテンショナーが設けられていることが好ましい。このようにすると、ワイヤ部材の張力を好適に保つことができるため、温度に起因するワイヤ部材の弛みや縮みを解消することができる。
【0014】
前記テンショナーは、引張方向変換具を介在させて、前記ワイヤ部材の少なくとも一方の端部に設けられていることが好ましい。このようにすると、ワイヤ部材の張設方向とテンショナーの設置場所との関係が柔軟な機構となり、テンショナーの設置スペースが狭小で、ワイヤ部材の張設方向と平行に配置することが困難な場合でも、十分対応することができる。
【0015】
また、前記基盤と前記タイルの間にベース部材が介設されており、前記ベース部材が排水部を備えていることが好ましい。このようにすると、タイルの表面及び側面を流れる水がベース部材の排水部に導かれて排水されるため、排水機能を高めることができる。
【0016】
前記課題を解決するために本発明に係る基盤構造体の施工方法は、基盤にタイルを配置する配置工程と、前記タイルに、ワイヤ部材を掛け渡しつつ、所定の張力で張設する張設工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、タイルが張設されたワイヤ部材に掛止されるため、タイルの飛散を防止することができる。また、基盤とタイルとをモルタルなどを介して固着せずに、タイルをワイヤ部材で掛止するため、例えば、ワイヤ部材を弛めるだけで、タイルの張り替えや、基盤のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0018】
前記課題を解決するために本発明に係る基盤構造体の施工方法は、基盤にベース部材を配置する配置工程と、前記ベース部材にタイルを接合する接合工程と、前記ベース部材に、ワイヤ部材を掛け渡しつつ、所定の張力で張設する張設工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、タイルがベース部材に接合されるとともに、ベース部材が張設されたワイヤ部材に掛止されるため、タイルの飛散を防止することができる。また、基盤とベース部材とをモルタルなどを介して固着せずに、ベース部材をワイヤ部材で掛止するため、例えば、ワイヤ部材を弛めるだけで、ベース部材及びタイルの張り替えや、基盤のメンテナンスを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タイルの飛散を防止するとともに、基盤のメンテナンスやタイルの張り替え等を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明をベランダの基盤構造体に適用した場合を例にして説明する。ベランダBは、図1に示すように、建物の外壁Tと、一対の側壁S(S1,S2)と、建物の外壁Tから離間した位置に設けられた外壁Gと、これらの壁材によって囲まれた基盤構造体1とから構成されている。
【0022】
本実施形態に係る基盤構造体1は、図1及び図2に示すように、基盤2と、ベース部材3と、タイル4と、ワイヤ部材5、テンショナー6とから主に構成されている。
【0023】
基盤2は、図2に示すように、合板2aと、防水下地2b、防水層2cとから構成されており、この順に下から配置されている。防水下地2bは、例えば、モルタル材や断熱材や木材の組合せなどから形成されており、防水層2cは、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics)層などから形成されている。防水層2cが設置されることにより、ベランダBの防水性が確保される。本実施形態では、防水下地2bに、建物の外壁Tから外壁Gに向かうに従って下るように水勾配が設けられている。尚、防水層2cは、これに限定されることなく、例えば、ゴムシート防水、ウレタン塗膜防水、アスファルト系防水材などから形成されても構わない。
【0024】
ベース部材3は、図1及び図2に示すように、基盤2とタイル4との間に設けられる部材であって、タイル4の下地となる部材である。ベース部材3は、本実施形態では、平面視略矩形を呈する板状の複数のユニット部U,U・・・が碁盤の目状に配置されて一体形成されている。即ち、一のユニット部Uに対して、一のタイル4が配置されるように形成されている。
【0025】
ユニット部Uは、図4に示すように、薄板状の本体部3aと、本体部3aの下面に設けられた4つの脚部3b,3b・・・とを主に有する。本体部3aは、タイル4よりも一回り大きく形成されており、本体部3aの外周に沿って上下方向に貫通する貫通孔3e,3e・・・が形成されている。本体部3aの上面には、タイル4が載置される載置部3cが格子状に形成されており、さらに、載置部3cには、後記するタイル4の凹部4dと嵌め合わされる複数の凸部3d,3d・・・が形成されている。
【0026】
図2に示すように、脚部3b,3b・・・は、本体部3aの下面に所定の間隔をあけて設けられている。これにより、基盤2と本体部3aの下面との間に、ベランダBの建物の外壁T(図1参照)から外壁Gに連通する空間3Aが形成される。したがって、タイル4上を流れる水は、タイル4の側面からユニット部Uの貫通孔3eに流れ込んだ後、空間3Aに導かれて基盤2の傾斜下降側に形成された図示しない排水口から排水される。
このように、ベース部材3の下部に設けられた空間3Aが、排水機能を備えた排水部として機能するため、基盤構造体1の排水機能を高めることができる。
【0027】
尚、ベース部材3は、本実施形態では樹脂製のものを用いたが、他の材料からなる部材であっても構わない。また、ベース部材3は、本実施形態では複数のユニット部U,U・・・が一体形成されたものを用いたが、これに限定されるものではなく、各ユニット部Uが分離された形態であっても構わない。また、凸部3dの数は、図示の数に限定されることなく、少なくとも1つ以上形成すればよい。
【0028】
タイル4は、図1及び図2に示すように、略直方体を呈しており、ベース部材3の上に設置されている。複数のタイル4,4・・・は、図1に示すように、碁盤の目状に配列されており、隣り合うタイル4同士の間には、目地7が形成されている。図3に示すように、タイル4の4つの側面のうち、隣接する2つの側面には、それぞれ雄部4a,4aが形成されるとともに、残りの隣接する側面には、それぞれ雌部4b,4bが形成されている。雄部4aは、断面視で円形状を呈し、タイル4の側面から突出形成されるとともに、その先端が水平方向に直角に折り曲げられて平面視略L字状を呈している。雌部4bは、側面視略かまぼこ形状を呈し、タイル4の側面から突出形成されており、その先端側に水平方向に貫通する貫通孔4cが形成されている。
【0029】
隣り合うタイル4,4は、図1及び図2に示すように、それぞれ対応する雄部4aと雌部4bとから構成される連結部4Aを介して連結されている。すなわち、一方のタイル4の雄部4aと、他方のタイル4の雌部4bとを嵌合することにより、隣り合うタイル4同士が連結されている。また、タイル4は、図4に示すように、その下面に凹部4d,4d・・・が形成されている。この凹部4dと、ベース部材3の凸部3dとを嵌合することにより、タイル4とベース部材3が接合されている。
【0030】
尚、本実施形態のタイル4は、樹脂素材を用いているが、これに限定されることなく、例えば、磁器、半磁器、陶器質、自然石、人工石、木材など、他の素材を用いても構わない。また、タイル4の形状及び数は、図示のものに限定されることなく、適宜変更しても構わない。例えば、タイル4の形状を平面視長方形状や平行四辺形状などに形成しても構わない。また、雄部4a及び雌部4bの数は、図示の数に限定されることなく、少なくとも1つ以上あればよい。また、タイル4に凸部を形成し、ベース部材3に凹部を形成して、タイル4とベース部材3を接合してもよい。また、タイル4同士の接合やタイル4とベース部材3の接合には、例えば、接着剤などを用いても構わない。さらに、ベース部材3を省略して基盤2の上に直接タイル4を設置しても構わない。
【0031】
ワイヤ部材5は、公知のワイヤを適宜選択して用いることができ、例えば、ステンレス鋼やNi−Ti系合金などのような金属材料で構成されるとともに、編線で構成されたものを用いるのが好ましい。ワイヤ部材5は、図1及び図2に示すように、ベランダBの短手方向の目地7に一列置きに挿通されるとともに、その下部が連結部4Aの上面に当接されている。また、ワイヤ部材5は、図1に示すように、その一端が建物の外壁T側に配置されたテンショナー6に固定されるとともに、他端が例えば、図示しない金具などを介して外壁Gに固定されている。ワイヤ部材5は、所定の張力で基盤2の上面から離間した位置に張設されており、タイル4を掛止している。
【0032】
尚、ワイヤ部材5は、前記した素材に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム製、銅製、樹脂製、炭素繊維、またはこれらの複合材などの線状の部材を用いても構わない。また、ワイヤ部材5は、例えば、溶接を施して外壁Tに固定してもよいし、接着剤を介して外壁Tに固定しても構わない。また、ワイヤ部材5の掛止場所は、適宜変更してもよく、例えば、長手方向の目地7にワイヤ部材5を挿通してもよいし、短手方向及び長手方向の双方の目地7にワイヤ部材5を挿通しても構わない。また、ワイヤ部材5の数は、少なくとも1つ以上設置すればよい。また、ワイヤ部材5の固定場所は、固定部材などを介して、基盤2に固定してもよい。
【0033】
テンショナー6は、図5に示すように、固定部材6aと、弾性部材6bと、保持部材6cと、一対の押圧部材6d,6dと、収納ケース6eとからなる部材であって、ワイヤ部材5が所定の張力を保持し、また、温度差によるワイヤ部材5の長さ変化を吸収するための役割を果す。弾性部材6bは、例えば、引っ張りコイルバネからなり、一端が固定部材6aに、他端が保持部材6cに当接され、保持部材6cを付勢している。保持部材6cは、弾性部材6bの伸縮に伴って移動する板状部材であって、弾性部材6bと押圧部材6d,6dの間に介設されている。また、保持部材6cの弾性部材6bとは反対側の面には、引張方向変換具たる滑車6fを介して張設されたワイヤ部材5の一端が固着されている。ボルトからなる押圧部材6d,6dは、筒状を呈する収納ケース6eの側面を貫通して設けられており、その先端に保持部材6cが当接されている。収納ケース6eの側面には、ねじ穴が形成されており、当該ねじ穴を貫通する押圧部材6d,6dを締めたり緩めたりすることにより、保持部材6cが摺動するように形成されている。収納ケース6eは、例えば、公知の接合金具を介して基盤2に固定されている。
【0034】
ここで、ワイヤ部材5は、温度が高くなると線膨張によって弛み、温度が低くなると線収縮によって縮む性質を有する。特に、ワイヤ部材5は、温度が高くなって張力が低下すると、タイル4が移動したり、飛散したりする原因となるため好ましくない。また、ワイヤ部材5自体の断裂やワイヤ部材5の端部が固定されている箇所に応力が加わり防水層2cを破損してしまうため好ましくない。
しかし、前記したテンショナー6によれば、ワイヤ部材5が弛んだ場合には、押圧部材6dを締めることにより、保持部材6cが固定部材6a側に押し込まれるため、保持部材6cに固着されたワイヤ部材5の張力を高めることができる。一方で、ワイヤ部材5が収縮した場合には、押圧部材6dを緩めてワイヤ部材5の張力を低下させればよい。
【0035】
尚、本実施形態で示したテンショナー6は、あくまで例示であって、これに限定されるものではない。テンショナー6は、ワイヤ部材5の張力を調節可能に構成されるものであればよく、他の形態であっても構わない。また、テンショナー6を設けたが、テンショナー6は設けずに、例えば両端を固定してもよい。
【0036】
テンショナー6は、図1及び図5に示すように、タイル4と建物の外壁Tとの間に空いたスペース8を利用して設置されている。ここで、図1のX−X線断面図である図6を用いて、スペース8近傍の構成について詳細に説明する。
【0037】
スペース8近傍は、外壁合板9と、支持金物10と、合板受材11と、防水ワッシャー12,12と、水切り金物13と、スペーサー14とから主に構成されている。
【0038】
外壁合板9は、建物の壁材の一部であって、防水下地2bの端縁から立設されている。防水層2cは、防水下地2bの表面から連続して、外壁合板9のベランダB側の側面に形成されている。
【0039】
支持金物10は、側面視略L字形状を呈し、外壁合板9に固定される外壁合板側固定部10aと、この外壁合板側固定部10aの下端からタイル4側に向かって延出するタイル側支持部10bとを有する。外壁合板側固定部10aは、例えばネジN,Nによって外壁合板9に固定されている。タイル4側に延設されたタイル側支持部10bの先端側には、滑車6fが固定されている。
【0040】
合板受材11は、建物内の床15の上に設置されるとともに、外壁合板9の建物内側の側面に沿って、設置されている。また、ネジN,Nと外壁合板9及び防水層2cとの間に形成される微細な隙間から建物内へ水が浸入するのを防止するために防水ワッシャー12,12がネジN,Nの頭部分と防水層2cとの間に設置されている。
【0041】
水切り金物13は、防水層2c及び外壁合板9の側面に沿って上方に向かって延出する外壁合板側固定部13aと、この外壁合板側固定部13aの下端からタイル4に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜部13bと、この傾斜部13bの先端から下方に向かって延出している水切り部13cとを有する。水切り部13cは、スペース8の真上に位置するように設置されている。
【0042】
スペーサー14は、図1及び図6に示すように、スペース8の上方を覆う部材であって、ベランダBの長手方向に亘って複数個設置されている。スペーサー14は、傾斜部13bの裏面から下方に向かって延出する水切り金物側固定部14aと、水切り金物側固定部14aの下端からタイル4側に向かって延出するタイル側固定部14bとを有する。水切り金物側固定部14aの先端は、水切り金物13の傾斜部13bに当接されている。一方、タイル側固定部14bの下面の略半分は、タイル4の上面に当接されており、例えば、接着剤などによってタイル4に固定されている。また、タイル側固定部14bには、上下方向に貫通する複数の貫通孔14c,14c・・・が間隔を空けて形成されている。
【0043】
すなわち、スペーサー14は、スペース8に設置されたテンショナー6や滑車6fを覆うとともに、支持金物10を固定するネジN,Nの露出を防ぐ。また、例えば、水切り金物13から流下した水は、タイル側固定部14bに形成された貫通孔14cを通って、基盤2から排水される。尚、水切り金物側固定部14aの先端は、水切り金物13の傾斜部13bに当接されていなくてもよい。
【0044】
ここで、ベランダを構成する壁部材(建物の外壁T,外壁G,側壁S1,側壁S2)と、タイル4との間に、意図的に又は不可避的にスペースが形成される場合がある。例えば、外壁G側に排水口が形成されている場合は、当該排水口分のスペースを設けなければならないし、また、例えば、基盤2と敷設されたタイル4の規格寸法が合わない場合は、不可避的にスペースが形成される。このようなスペースは、狭小であるため、ワイヤ部材5の張設方向と平行にテンショナー6を配置することが困難となる。
しかし、本実施形態のように、スペース8に滑車6fを設けて、ワイヤ部材5の張設方向を変えることで、狭小なスペース8にテンショナー6を設置することができる。また、本実施形態では、テンショナー6がスペーサー14に覆われているため、テンショナー6が露出することがなく意匠的にも好適である。尚、本実施形態では、引張方向変換具として、滑車6fを用いたが、これに限定されることなく、例えば、スペース8の底面から立設する棒状部材で代用してもよい。
【0045】
〔施工方法〕
次に、本実施形態の基盤構造体1の施工方法について説明する。本実施形態に係る基盤構造体1の施工方法は、基盤2に複数のタイル4を配置する配置工程と、複数のタイル4に、ワイヤ部材5を掛け渡しつつ、所定の張力で張設する張設工程とを含んでいる。
【0046】
配置工程は、ベランダBの基盤2上にベース部材3を配置するとともに、ベース部材3の上に複数のタイル4を嵌めて、配置する工程である。すなわち、目地7が形成されるように、ベース部材3の上に碁盤の目状に、複数のタイル4を配置する。このとき、ベース部材3とタイル4の接合及びタイル4同士の接合は、前記の方法により行う。
【0047】
張設工程は、複数のタイル4の上にワイヤ部材5を掛け渡しつつ、ワイヤ部材5を張設する工程である。すなわち、ワイヤ部材5の一端を外壁G若しくはテンショナー6のいずれか一方に固定する。ワイヤ部材5の一端を固定後に、タイル4の目地7にワイヤ部材5を挿通させるとともに、目地7にあるタイル4の連結部4Aの上面にワイヤ部材5を掛け渡す。そして、所定の張力を保った状態で、タイル4を掛止させつつ、ワイヤ部材5の他端をまだワイヤ部材5が固定されていない外壁G若しくはテンショナー6のいずれか他方に固定する。最後に、テンショナー6でワイヤ部材5の張力を調節して、所定の張力で張設すると、基盤構造体1が完成する。尚、ベース部材3を省略する場合には、基盤2上に複数のタイル4を配置する。また、テンショナー6の設置は、ワイヤ部材5の一端をテンショナー6に固定するまでに行えばよい。
【0048】
以上説明した本実施形態に係る基盤構造体1によれば、タイル4が、所定の張力で張設されたワイヤ部材5に掛止されるため、タイル4の飛散を防止することができる。すなわち、ワイヤ部材5は、タイル4同士を連結する連結部4Aの上面に設置されて、タイル4を掛止しているので、タイル4の飛散を防止することができる。
【0049】
また、基盤2とタイル4とをモルタルなどを介して固着せずに、タイル4をワイヤ部材5で掛止するため、例えば、ワイヤ部材5を弛めるだけで、タイル4の張り替えや、基盤2のメンテナンスを容易に行うことができる。
また、ワイヤ部材5がタイル4の上面よりも下に配置されるので、ワイヤ部材5が露出せず、基盤構造体1の意匠性を高めることができる。
【0050】
また、隣り合うタイル4,4が、それぞれ対応する雄部4aと雌部4bとから構成される連結部4Aを介して連結されているので、タイル4の連結性を高めるとともに、目地7にワイヤ部材5を挿通させて、タイル4の移動を抑制しながらワイヤ部材5の張りを調節することができるため、基盤構造体1の施工性を高めることができる。また、目地7にワイヤ部材5を挿通させることで、ワイヤ部材5の露出をより抑えることができる。
【0051】
また、ワイヤ部材5にテンショナー6が設置されるため、ワイヤ部材5の張力を好適に保つことができ、温度に起因するワイヤ部材5の弛みや縮みを解消することができる。
また、タイル4の表面及び側面を流れる水がベース部材3の排水部に導かれて排水されるため、排水機能を高めることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できるのはいうまでもない。本実施形態では、本発明をベランダBの基盤に使用したが、戸建て住宅やマンションなどのバルコニーや庭、ビルや商業施設の屋上などに使用しても構わない。
【0053】
また、本実施形態のタイル4は、複数で構成されているが、1つから構成されてもよい。
【0054】
また、図7に示すように、タイル4にその側面を貫通する貫通孔4eを形成して、ワイヤ部材5を貫通孔4eに挿通してもよい。かかる構成によれば、ワイヤ部材5がタイル4の内部に配置されるので、ワイヤ部材5の露出をさらに抑制し、基盤構造体1の意匠性を高めることができる。また、貫通孔4eにワイヤ部材5を挿通させて、タイル4の移動を抑制しながらワイヤ部材5の張りを調節することができるため、基盤構造体1の施工性を高めることができる。
【0055】
また、図8に示すように、タイル4の表面(外面)に切り欠かれた凹溝4fを形成して、ワイヤ部材5を凹溝4fに挿通してもよい。かかる構成によれば、凹溝4fにワイヤ部材5を挿通させて、タイル4の移動を抑制しながらワイヤ部材5の張りを調節することができるため、基盤構造体1の施工性を高めることができる。尚、凹溝4fをタイル4の側面に形成してもよい。
【0056】
また、図9に示すように、ワイヤ部材5でベース部材3を掛止しても構わない。尚、かかる変形例に係る基盤構造体1の説明においては、本実施形態に係る基盤構造体1と重複する部分については、説明を省略する。
【0057】
本変形例では、ユニット部Uを有する複数のベース部材3,3・・・が基盤2の上に碁盤の目状に配置されている。また、隣り合うベース部材3,3・・・は、連結部3Bを介して連結されている。すなわち、一方のベース部材3の雄部3fと、他方のベース部材3の雌部3gとを嵌合することにより、隣り合うベース部材3同士が連結されている。また、タイル4は、接着剤16を介在して、ベース部材3に接合されている。
【0058】
ワイヤ部材5は、目地7に挿通されるとともに、その下部が連結部3Bの上面に当接されている。ワイヤ部材5は、所定の張力で張設されており、ベース部材3を掛止している。
【0059】
〔施工方法〕
次に、本変形例に係る基盤構造体1の施工方法について説明する。本変形例に係る基盤構造体1の施工方法は、基盤2に複数のベース部材3を配置する工程と、複数のベース部材3に複数のタイル4を接合する接合工程と、複数のベース部材3に、ワイヤ部材5を掛け渡しつつ、所定の張力で張設する張設工程とを含んでいる。
【0060】
配置工程は、ベランダBの基盤2上に複数のベース部材3を配置する工程である。すなわち、目地7が形成されるように、基盤2の上に、複数のベース部材3を配置する。
【0061】
接合工程は、複数のベース部材3に複数のタイル4を接合する工程である。すなわち、ベース部材3とタイル4との間に接着剤16を介在して、ベース部材3にタイル4を接合する。尚、ベース部材3とタイル4を接合してから、基盤2上に配置してもよい。
【0062】
張設工程は、複数のベース部材3の上にワイヤ部材5を掛け渡しつつ、ワイヤ部材5を張設する工程である。すなわち、ワイヤ部材5の一端を外壁G若しくはテンショナー6のいずれか一方に固定する。ワイヤ部材5の一端を固定後に、ベース部材3の目地7にワイヤ部材5を挿通させるとともに、目地7にあるベース部材3の連結部3Bの上面にワイヤ部材5を掛け渡す。そして、所定の張力を保った状態で、ベース部材3を掛止させつつ、ワイヤ部材5の他端をまだワイヤ部材5が固定されていない外壁G若しくはテンショナー6のいずれか他方に固定する。最後に、テンショナー6でワイヤ部材5の張力を調節して、所定の張力で張設すると、基盤構造体1が完成する。
【0063】
以上説明した本変形例に係る基盤構造体1によれば、タイル4がベース部材3に接合されるとともに、ベース部材3が張設されたワイヤ部材5に掛止されるため、タイル4の飛散を防止することができる。すなわち、ワイヤ部材5は、ベース部材3同士を連結する連結部3Bの上面に設置されて、タイル4と接合しているベース部材3を掛止するので、タイル4の飛散を防止することができる。
【0064】
また、基盤2とベース部材3とをモルタルなどを介して固着せずに、ベース部材3をワイヤ部材5で掛止するため、例えば、ワイヤ部材5を弛めるだけで、ベース部材3及びタイル4の張り替えや、基盤2のメンテナンスを容易に行うことができる。
また、ワイヤ部材5がタイル4の上面よりも下に配置されるので、ワイヤ部材5が露出せず、基盤構造体1の意匠性を高めることができる。
【0065】
また、隣り合うベース部材3,3が、それぞれ対応する雄部3fと雌部3gとから構成される連結部3Bを介して連結されているので、ベース部材3の連結性を高めるとともに、目地7にワイヤ部材5を挿通させて、ベース部材3及びタイル4の移動を抑制しながらワイヤ部材5の張りを調節することができるため、基盤構造体1の施工性を高めることができる。また、目地7にワイヤ部材5を挿通させることで、ワイヤ部材5の露出をより抑えることができる。
【0066】
尚、例えば、図2を参照するように、連結部4Aとベース部材3の間にワイヤ部材5を挿通させるとともに、ベース部材3の上面にワイヤ部材5を当接させてもよい。また、ベース部材3とタイル4は、凹凸嵌合で接合してもよい。
【0067】
また、本実施形態では、ワイヤ部材5をベース部材3やタイル4に当接させたが、必ずしも当接させる必要はなく、飛散を防止できる程度に掛止されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態に係る基盤構造体の構成を示す一部破断平面図である。
【図2】本実施形態に係る基盤構造体の構成を示す側面図である。
【図3】本実施形態に係る一対のタイルの構成を示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係るタイルとベース部材の一部の構成を示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係るテンショナーの構成を示す平面図である。
【図6】図1のX−X線断面図である。
【図7】第1の変形例に係るタイルの側面図である。
【図8】第2の変形例に係るタイルの側面図である。
【図9】基盤構造体の変形例の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 基盤構造体
2 基盤
2a 合板
2b 防水下地
2c 防水層
3 ベース部材
4 タイル
4A 連結部
5 ワイヤ部材
6 テンショナー
7 目地
8 スペース
B ベランダ
G 外壁
S 側壁
T 建物の外壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤上に配置されたタイルと、
前記基盤上に張設され、前記タイルを掛止するワイヤ部材と、
を有することを特徴とする基盤構造体。
【請求項2】
基盤上に配置されたベース部材と、
前記ベース部材に接合されたタイルと、
前記基盤上に張設され、前記ベース部材を掛止するワイヤ部材と、
を有することを特徴とする基盤構造体。
【請求項3】
前記ワイヤ部材は、前記タイルの上面よりも前記基盤側に挿通されていることを特徴とする請求項1に記載の基盤構造体。
【請求項4】
前記タイルは、このタイルの外面に切り欠かれた凹溝を備え、
前記ワイヤ部材は、前記凹溝に挿通されていることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の基盤構造体。
【請求項5】
複数の前記タイルは、隣り合う前記タイルと連結される連結部を備え、
前記ワイヤ部材は、前記タイル同士の間に形成された目地に挿通されていることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の基盤構造体。
【請求項6】
前記ワイヤ部材の少なくとも一方の端部にテンショナーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の基盤構造体。
【請求項7】
前記テンショナーは、引張方向変換具を介在させて、前記ワイヤ部材の少なくとも一方の端部に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の基礎構造体。
【請求項8】
前記基盤と前記タイルの間に介設されるベース部材を有し、
前記ベース部材は、排水部を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項3乃至請求項7のいずれか一項に記載の基盤構造体。
【請求項9】
前記ベース部材は、排水部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の基盤構造体。
【請求項10】
基盤にタイルを配置する配置工程と、
前記タイルに、ワイヤ部材を掛け渡しつつ、所定の張力で張設する張設工程と、を含むことを特徴とする基盤構造体の施工方法。
【請求項11】
基盤にベース部材を配置する配置工程と、
前記ベース部材にタイルを接合する接合工程と、
前記ベース部材に、ワイヤ部材を掛け渡しつつ、所定の張力で張設する張設工程と、を含むことを特徴とする基盤構造体の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−215852(P2009−215852A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63504(P2008−63504)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【Fターム(参考)】