説明

報知装置

【課題】 運転者に何らの操作を行わせることなく、車両の走行状態又はその変化についての報知をその受け手に不快感を与えることなく、かつ、その受け手が報知内容を把握し易い態様で行うことを可能にする。
【解決手段】 エンジンを動力源として走行する車両の車体の全部を覆うように設けられ、予め定められた複数の色の発光が可能な発光手段と、前記車両の走行速度、または前記動力源に対して走行速度の増減を指示するための操作ペダルの踏み込み度合いを表す車両情報を前記動力源の駆動制御を行う駆動制御部から受け取る受け取り手段と、前記車両情報の表す走行速度または前記操作ペダルの踏み込み度合いに対して予め定められた色合いで前記発光手段を発光させる制御手段とを具備することを特徴とする報知装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周囲に居る人にその車両の走行速度や走行方向(以下、走行状態)又はその変化についての報知を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを搭載し自走する車両の周囲に居る人(例えば、歩行者や他の車両の運転者)に対し、ウィンカーの点滅や「左へ曲がります」といった音声メッセージの出力によってその車両の進行方向が変わることを報知したり、接近しすぎなどの危険な状態をクラクション音の出力やパッシングによって報知することが一般に行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、音声メッセージやクラクション音の出力による報知、または、ウィンカーの点滅やパッシングによる報知には、以下のような問題点がある。
例えば、音声メッセージやクラクション音の出力による報知では、聴覚障害者や携帯型音楽プレーヤで再生される楽音をヘッドホンで聴きながら歩いている歩行者に対しては、全く意味を為さないといった問題点や、一定の音量で音声メッセージやクラクション音が出力されるため例えば夜間の住宅地などにおいては周囲の迷惑になりかねないといった問題点がある。一方、ウィンカーの点滅やパッシングによる報知では、例えば夜間に複数の車両が走行している状況下では、何れの車両からの報知であるかを判断し辛い場合があるといった問題点がある。
また、クラクション音やパッシングによる報知では、その報知の対象者に威圧感を与えてしまったり、驚かせてしまったりするなど、その対象者に不快感を抱かせてしまう場合があるといった問題点がある。
さらに、上記各態様による報知は、運転者が何らかの操作を行うことによって実行されるのであるが、咄嗟の場合に上記操作が遅れてしまい、報知が間に合わないといった問題点もある。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、運転者に何らの操作を行わせることなく、車両の走行状態又はその変化についての報知をその受け手に不快感を与えることなく、かつ、その受け手が報知内容を把握し易い態様で行うことを可能にする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、エンジン又は電動機を動力源として走行する車両の車体の一部または全部を覆うように設けられ、予め定められた複数の色の発光が可能な発光手段と、前記車両の走行速度、または前記動力源に対して走行速度の増減を指示するための操作ペダルの踏み込み度合いを表す車両情報を前記動力源の駆動制御を行う駆動制御部から受け取る受け取り手段と、前記車両情報の表す走行速度または前記操作ペダルの踏み込み度合いに対して予め定められた色合いで前記発光手段を発光させる制御手段と、を具備することを特徴とする報知装置を提供する。
【0006】
より好ましい態様においては、上記報知装置において、前記車両情報は、前記車両の走行速度または前記操作ペダルの踏み込み度合いの他に、前記車両の走行方向の変更を指示するためのハンドルの操作量を表し、前記制御手段は、前記車両が進行方向を変えつつあることを前記車両情報が示している場合には、前記車両が直進していることを前記車両情報が示している場合と異なる色合いで前記発光手段を発光させることを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明は、エンジン又は電動機を動力源として走行する車両の車体の一部または全部を覆うように設けられ、予め定められた複数の色の発光が可能な発光手段と、前記車両の周囲に報知の対象となる対象者がいるか否かを検出するセンサから、その検出結果を示すデータを受け取る受け取り手段と、前記受け取り手段によって受け取ったデータが、前記車両の周囲に報知の対象者がいることを示している場合に、所定の色合いで前記発光手段を発光させる制御手段と、を有することを特徴とする報知装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運転者に何らの操作を行わせることなく、車両の走行状態又はその変化についての報知をその受け手に不快感を与えることなく、かつ、その受け手が報知内容を把握し易い態様で行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施する際の最良の形態について説明する。
(A:構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る報知装置10の構成例を示すブロック図である。
報知装置10は、図1に示すように、発光部110と、記憶部120と、発光部110の作動制御を行う制御部130と、インタフェース部140とを有している。この報知装置10は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関又は電動機を動力源として走行する車両(図1では図示省略)に搭載され、発光部110の発光態様でその車両の走行速度やその進行方向が変わることをその車両の周囲の人へ報知するものである。
【0010】
発光部110は、報知装置10が搭載されている車両の車体全体を覆う形状に形成されたEL(electroluminescence)シート(図示省略)と、このELシートの発光制御を行うインバータ(図示省略)とを含んでおり、上記ELシートは上記車両の車体全面に亘って貼り付けられている。このELシートは、厚さ0.6mm程のシート状の発光装置で、発光色が豊富かつ曲面発光や多色分割発光、及び点滅発光などの自由な表現が可能であるという特徴を有している。
【0011】
図2は、発光部110の構造を説明するための図である。
図2に示すように、上記ELシートは、上記車両の車体表面に接する側から順に、保護層112a、背面電極層112b、絶縁層112c、発光層112d、透明電極層112eおよび保護層112fを積層してなる多層構造を有している。
保護層112aと保護層112fは、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂からなる高分子フィルムであり、背面電極層112b、絶縁層112c、発光層112dおよび透明電極層112eにラミネート加工を施して保護するためのものである。このELシートにおいては、背面電極層112bと透明電極層112eとにインバータによって所定電圧が印加されることによって発光層112dが発光する。透明電極層112eは、例えば錫を混入した酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)で形成されており、アノード(陽極)として機能するとともに、発光層112dから発せられた光を透過させる。一方、背面電極層112bはカソード(陰極)として機能するものである。なお、図2に示すELシートとしては、ストロンチウムやガリウムなどの無機化合物で発光層112dが形成された無機ELシートを用いても良く、また、ポリフェニレンビニレンなどの有機化合物で発光層112dが形成された有機ELシートを用いても良い。また、図2では、背面電極層112bと透明電極層112eとの間に、絶縁層112cと発光層112dとが各々一層ずつ積層されている場合について例示されているが、実際には、ELシートに発光させるべき発光色の数または多色分割発光の発光パターンに応じた数分の絶縁層112cと発光層112dとが積層されている。
【0012】
記憶部120は、例えばフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリであり、この記憶部120には、図3に示す発光パターンテーブルが格納されている。この発光パターンテーブルには、車両の走行状態を示す状態識別子に対応付けて、その状態を周囲へ報知する際に用いる発光パターンを示す発光パターンデータが格納されている。
本実施形態においては、状態識別子“010”は、車両が通常走行状態であることを示す識別子であり、状態識別子“020”は、車両が減速中であることを示す識別子である。ここで、通常走行状態とは、車両の走行速度がその走行位置における制限速度(例えば、法定速度)から所定の範囲内(例えば、プラスマイナス5キロメートル毎時)であることをいう。また、状態識別子“030”は、車両が左折しつつあることを示す識別子である。
【0013】
一方、図3に示す発光パターンテーブルにて状態識別子“010”に対応付けられている発光パターンデータaは、無模様かつ青色一色で発光部110を発光させることを示すデータ(例えば、無模様かつ青色一色で発光部110を発光させる際に、図2に示すインバータにより印加するべき電圧値を示すデータ)であり、状態識別子“020”に対応付けられている発光パターンデータbは、無模様かつ赤色一色で発光部110を発光させることを示すデータである。そして、状態識別子“030”に対応付けられている発光パターンデータcは、赤地に青色の帯状模様を水平方向にあしらった発光パターンで車両の左側面部分の発光部110を発光させ、他の部分は無模様かつ赤色一色で発光させる多色分割発光の発光パターンを示すデータである。
【0014】
図3に示す発光パターンテーブルは、報知装置10が搭載されている車両の走行状態に応じた発光パターンを制御部130に特定させる際に利用される。なお、図3では、通常走行状態、減速状態および左折しつつある状態の3種類の走行状態についての状態識別子とその走行状態の報知に用いる発光パターンを示す発光パターンデータとが発光パターンテーブルに格納されている場合について例示されているが、車両が右折しつつある状態や、車両が後進している状態、停車しているもののエンジンは駆動中である状態、又は車両が加速中である状態など、他の走行状態についての状態識別子と発光パターンデータとの組を発光パターンテーブルに格納しても勿論良い。要は、走行状態毎に固有の発光パターン(すなわち、走行状態毎に異なる発光パターン)が割り当てられている態様であれば良い。
【0015】
インタフェース部140は、例えばCAN(Controller
Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)、USB(Universal Serial Buss)など所定の規格に準拠した外部機器接続インタフェースであり、接続されている外部機器(図1に示すように、本実施形態では、カーナビゲーション装置、ECUおよび対象者探知装置)から各種データを受け取って制御部130へ引き渡すデータ受け取り手段としての役割を担っている。
【0016】
カーナビゲーション装置は、例えばGPS(Global Positioning System)受信機と道路地図データベースとを含んでおり、衛星軌道を周回するGPS衛星と通信してこのカーナビゲーション装置が搭載されている車両の現在位置およびその現在位置に対応する道路の制限速度(法定速度)を特定し、その制限速度を示すデータを出力する。
なお、本実施形態では、車両の位置に応じて制限速度を特定するためにカーナビゲーション装置を用いる場合について説明したが、例えば車両の位置とは無関係に常に時速60キロメートルを制限速度とする場合など、固定の制限速度と車両の走行速度とを比較する場合には、上記カーナビゲーション装置を設ける必要がないことは言うまでもない。
【0017】
ECUは、そのECUが搭載されている車両の動力源の駆動制御を行う駆動制御部であり、車両の走行速度や走行速度の増減を指示するためのアクセルペダルの踏み込み量(以下、アクセル開度)、進行方向の変更を指示するためのハンドルの操作量などを検出し、それら検出結果を示すデータを車両情報として出力する。なお、車両の走行速度や走行速度の変化の度合いのみを発光部110の発光パターンによって周囲へ報知する場合には、上記車両情報にハンドル操作量が含まれていなくても良いことは勿論である。
【0018】
対象者探知装置は、例えば超音波センサであり、車両の周囲に向けて所定周波数の超音波を発し、その反射波を計測することによって、その探索エリア(充分な強度の反射波が得られる範囲:本実施形態では、車両の重心位置を中心とする半径R1の円内)に報知の対象者たる歩行者が居るのか、居ないのかを判別し、居ると判別した場合にその対象者と上記重心位置との距離(以下、単に「対象者との距離」と呼ぶ)を示すデータを制御部130へ引き渡す。なお、本実施形態では、対象者探知装置を超音波センサで構成する場合について説明するが、ミリ波レーダで構成しても良い。また、報知装置10による報知の受け手は歩行者に限定されるものではなく、報知装置10が搭載されている車両の周囲を走行している他の車両の運転者であっても良く、この場合、車間距離センサなどで対象者探知装置を構成しても良い。
【0019】
制御部130は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、ROM(Read Only Memory:図示省略)に記憶されている制御プログラムをRAM(Random
Access Memory:図示省略)へ読み出して実行することによって、本発明に係る報知装置に特徴的な報知処理(具体的には、図5に示す報知処理)を実行する。
より詳細に説明すると、制御部130は、図5に示すように、対象者探知装置から対象者との距離を示すデータを受け取ったか否かに応じて、報知の受け手となるべき対象者が車両の周囲にいるか否かを判定し、対象者がいると判定した場合に、カーナビゲーション装置およびECUから受け取ったデータの表す走行状態に応じた発光パターン(すなわち、その走行状態を示す状態識別子に対応付けて発光パターンテーブルに格納されている発光パターンデータの示す発光パターン)で発光部110を発光させることによって、その走行状態を上記対象者へ報知する処理を実行する。
【0020】
例えば、報知装置10を搭載している車両が通常走行状態である場合には、図4(a)に示す無模様かつ青色一色の発光パターン(図4では斜め線のハッチングが無模様かつ青色一色を意味する)で発光部110を発光させることによって、その旨が周囲に報知される。また、車両が減速中である場合には、図4(b)に示す無模様かつ赤色一色の発光パターン(図4では縦線のハッチングが無模様かつ赤色一色を意味する)で発光部110を発光させることによって、その旨が周囲に報知される。そして、車両が左折しつつある場合には、図4(c)に示す赤地に青色の帯状模様を水平方向にあしらった発光パターンで車両の左側面に配置されている発光部110を発光させ、他の部分を無模様かつ赤色一色の発光パターンで発光させることでその旨が周囲に報知される。
以上が報知装置10の構成例である。
【0021】
(B:動作)
次いで報知装置10が行う動作について図面を参照しつつ説明する。
以下に説明する動作の開始時点では、図6(a)に示すように、報知装置10を搭載している車両Aが車道RW上をその車道RWにおける法定速度V1で走行しており(すなわち、通常走行状態)、車道RW沿いの歩道SW上を歩行者Wが速度V2(ただし、V2<V1)で車両1の進行方向と同一の方向に歩行しているものとする。なお、図6(a)に示す状態においては、車両Aと歩行者Wとは充分に距離を隔てており、歩行者Wは、車両Aに搭載されている対象者探知装置の探索エリアに入っていないものとする。
【0022】
図5は、制御プログラムにしたがって作動している制御部130が実行する報知処理の流れを示す図である。図5に示すように、制御部130は、カーナビゲーション装置、ECUおよび対象者探知装置から出力されるデータをインタフェース部140を介して受け取り(ステップSA100)、まず、車両Aの周囲に報知の対象となる対象者がいるか否かを判定する(ステップSA110)。具体的には、制御部130は、ステップSA100にて対象者探知装置から上記対象者との距離を示すデータを受け取った場合(すなわち、対象者探知装置の探知エリア内で対象者が検知された場合)に、車両Aの周囲に報知の対象となる対象者がいると判定する。
【0023】
ステップSA110の判定結果が“Yes”である場合には、制御部130はステップSA100にてカーナビゲーション装置およびECUから取得したデータを解析することによって車両Aの走行状態を特定し(ステップSA120)、その特定結果に対応する発光パターンで発光部110を発光させる(ステップSA130)。例えば、制御部130は、カーナビゲーション装置から引き渡されたデータの示す制限速度と、ECUから引き渡された車両情報の示す走行速度とを比較し、後者が、前者を中心とする所定範囲内にある場合には、車両Aは通常走行状態であると判定する。また、制御部130は、ECUから引き渡された車両情報の示すアクセル開度から車両Aが減速中であるか否かを判定し、その車両情報の示すハンドル操作量から車両Aが直進しているのか、それとも、左折または右折しつつあるのかを判定する。なお、制御部130は、車両Aが通常走行状態であると同時に減速中または左折(右折)中であると判定した場合には、後者の判定(すなわち、減速中や左折(右折)中であるという判定)を優先する。何故ならば、通常走行状態であることよりも、減速中または左折(右折)中であることのほうが、報知の重要度が高いからである。
逆に、ステップSA110の判定結果が“No”である場合には、制御部130は、デフォルトパターンで発光部110を発光させる(ステップSA140)。例えば、デフォルトパターンとして通常走行状態に対応する発光パターンを用いるべきことが予め定められている場合には、制御部130は、上記ステップSA140にて通常走行状態を示す状態識別子(本実施形態では、“010”)に対応付けて発光パターンテーブルに格納されている発光パターンデータ(本実施形態では、発光パターンデータa)を読み出し、その発光パターンデータにしたがって発光部110を発光させる。
【0024】
さて、本動作例では、図6(a)に示す状態から図6(b)に示す状態に至るまでは、歩行者Wは対象者探知装置の探知エリア外にいるため、その存在が探知されず、ステップSA110の判定結果は“No”になり、図5に示すようにステップSA140の処理が実行される。前述したように、本実施形態では、状態識別子“010”に対応する発光パターンをデフォルトパターンとする旨の設定が為されているため、図6(a)から図6(b)に示す状態に至るまでは、車両Aの走行状態によらずに、発光パターンデータaにしたがって発光部110の発光制御が行われる。その結果、図6(a)から図6(b)に示す状態に至るまでは、図4(a)に示す発光パターンで発光部110は発光することになる。
【0025】
これに対して、図6(b)に示す状態に至ると、歩行者Wは上記探知エリア内に入ってくるのであるから、歩行者Wとの距離が対象者探知装置によって計測され、その計測結果を示すデータが制御部130へ引き渡される。その結果、ステップSA110の判定結果は“Yes”になり、ステップSA120以降の処理が実行される。
例えば、図6(b)に示す状態以降、車両Aの運転者がブレーキペダルを踏み込むなどしてその走行速度を減速させると、制御部130はECUから引き渡された車両情報を解析して車両Aが減速中であると判定し、その判定結果に応じた発光パターンデータ(すなわち、発光パターンデータb)を発光パターンテーブルから読み出し、その発光パターンデータの示す発光パターン(すなわち、図4(b)に示す発光パターン)で発光部110を発光させる。また、図6(b)に示す状態以降で、車両Aの運転者が左方向にハンドルを切ると、そのハンドル操作に応じた車両情報がECUから制御部130へ引き渡され、制御部130はその車両情報を解析して車両Aが左折しつつあると判定し、その判定結果に応じた発光パターンデータ(すなわち、発光パターンデータc)を発光パターンテーブルから読み出し、その発光パターンデータの示す発光パターン(すなわち、図4(c)に示す発光パターン)で発光部110を発光させる。
【0026】
以降、制御部130は、ステップSA130またはステップSA140に後続して実行されるステップSA150において、ECUから引き渡される運転情報を解析し、そのECUによる駆動制御対象であるエンジンが停止しているか否かを判定する。そして、制御部130は、その判定結果が“No”である場合には、上記ステップSA100以降の処理を繰り返し実行する。その間、車両Aの周囲に居る歩行者Wは、発光部110の発光パターンから、その車両Aが通常走行状態であるのか、減速中であるのか、それとも、左折しつつある状態であるのかを把握することができる。そして、ステップSA150の判定結果が“Yes”になると、制御部130は、本報知処理を終了する。
【0027】
以上に説明したように、本実施形態に係る報知装置10によれば、この報知装置10が搭載されている車両の車体表面に設けられている発光部の発光パターンによってその車両の走行状態が周囲の対象者へ報知されるため、その対象者が聴覚障害者であっても確実に上記走行状態を伝達することができることは勿論、クラクション音やパッシングによる報知とは異なり、上記対象者へ威圧感を与えたり、上記対象者を驚かせたりすることがないため、上記対象者に不快感を与えることもない。
加えて、本実施形態に係る報知装置10によれば、ECUやカーナビゲーション装置などの各種外部機器から取得されるデータに基づいて発光部110の発光制御が実行され、運転者が特段の報知操作を行う必要はないため、咄嗟の場合に報知の実行が遅れてしまうといったことも回避される。
【0028】
(C:変形)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、係る実施形態に以下に述べるような変形を加えても良いことは勿論である。
(1)上述した実施形態では、報知装置10が搭載される車両の車体をその報知装置10の発光部110に含まれるELシートで全面に亘って覆っておく場合について説明したが、例えば、車体の両側面のドア部分やボンネット部分など周囲の人から見えやすい部分にのみELシートを貼り付けておくようにしても勿論良い。
【0029】
(2)上述した実施形態では、報知装置10が搭載されている車両の周囲に報知の対象たる対象者が居ることが検出された場合(すなわち、対象者探知装置の探知エリア内に対象者が居ることが検出された場合)に、その車両の走行状態に応じた発光パターンで発光部110を発光させる場合について説明したが、対象者との距離に拘らず、常に車両の走行状態に応じた発光パターンで発光部110を発光させる(すなわち、図5に示す報知処理にてステップSA110の判定を行わず、常にステップSA100に後続してステップSA120の処理を実行させる)としても勿論良い。なお、このような場合にあっては、報知装置10のインタフェース部140に対象者探知装置を接続しておく必要がないことは言うまでもない。
【0030】
また、上述した実施形態では、報知装置10が搭載されている車両の走行状態に応じて発光部110の発光パターンを切り替える場合について説明したが、例えば報知の対象者との距離に応じて発光部110の発光パターンを切り替えるようにしても良い。なお、このような場合にあっては、報知装置10のインタフェース部140にカーナビゲーション装置やECNを接続しておく必要がないことは言うまでもない。
【0031】
また、上述した実施形態では、車両の走行状態に応じて発光部110の発光パターンを切り替える場合について説明したが、例えば、車両のドアの鍵が掛けられているか否か、や、鍵やウィンドガラスが破壊されているか否かを検出するセンサを設け、そのセンサの検出結果に応じて発光部110の発光パターンを切り替えるようにしても良い。このようにすると、例えば、車両の運転者がそのエンジンを掛けたまま車両から離れる場合に鍵の掛け忘れを未然に防いだり、車両を離れている間にいわゆる車上荒らしなどの被害にあったか否かをその運転者に迅速に把握させることが可能になる。
【0032】
(3)上述した実施形態では、報知装置10が搭載されている車両の周囲に報知の対象たる対象者が居ることが検出された場合には、その車両の走行状態に応じた発光パターンで発光部110を発光させる場合について説明したが、例えば、夜間である場合や、住宅地を走行している場合に、車両の走行状態に応じた発光パターンで発光部110を発光させるようにしても良い。このようにすると、夜間や住宅地を走行している状況下で、周囲に迷惑を掛けることなく、対象者に把握し易い態様で車両の走行状態を周囲に報知することが可能になる。なお、夜間であるか否かは、例えば車両に搭載されている計時部により計時された時刻が、夜間を示す時間帯として予め定められた時間帯(例えば、午後5時から翌朝5時まで)に含まれるか否かによって判定するとしても良く、車両に照度計を搭載しその照度計によって計測された照度が所定の値を下回った場合に夜間であると判定するようにすれば良い。また、住宅地を走行中であるか否かは、カーナビゲーション装置によって特定される走行位置と地図データベースとを照合することによって判定すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る報知装置10の構成例を示すブロック図である。
【図2】同報知装置10の発光部110の断面構造を示す図である。
【図3】同報知装置10の記憶部120に記憶されている発光パターンテーブルの一例を示す図である。
【図4】同報知装置10により実行される報知の具体的態様の一例を示す図である。
【図5】同報知装置10の制御部130が実行する報知処理の流れを示す図である。
【図6】同報知装置10による報知の実行例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
10…報知装置、110…発光部、120…記憶部、130…制御部、140…インタフェース部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン又は電動機を動力源として走行する車両の車体の一部または全部を覆うように設けられ、予め定められた複数の色の発光が可能な発光手段と、
前記車両の走行速度、または前記動力源に対して走行速度の増減を指示するための操作ペダルの踏み込み度合いを表す車両情報を前記動力源の駆動制御を行う駆動制御部から受け取る受け取り手段と、
前記車両情報の表す走行速度または前記操作ペダルの踏み込み度合いに対して予め定められた色合いで前記発光手段を発光させる制御手段と、
を具備することを特徴とする報知装置。
【請求項2】
前記車両情報は、前記車両の走行速度または前記操作ペダルの踏み込み度合いの他に、前記車両の走行方向の変更を指示するためのハンドルの操作量を表し、
前記制御手段は、前記車両が進行方向を変えつつあることを前記車両情報が示している場合には、前記車両が直進していることを前記車両情報が示している場合と異なる色合いで前記発光手段を発光させる
ことを特徴とする請求項1に記載の報知装置。
【請求項3】
エンジン又は電動機を動力源として走行する車両の車体の一部または全部を覆うように設けられ、予め定められた複数の色の発光が可能な発光手段と、
前記車両の周囲に報知の対象となる対象者がいるか否かを検出するセンサから、その検出結果を示すデータを受け取る受け取り手段と、
前記受け取り手段によって受け取ったデータが、前記車両の周囲に報知の対象者がいることを示している場合に、所定の色合いで前記発光手段を発光させる制御手段と、
を有することを特徴とする報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−114639(P2008−114639A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297482(P2006−297482)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】