説明

場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法

【課題】 簡便な施工でスラブとスラブ、スラブと梁との連結を堅牢にし、既設RCラーメン高架橋の耐力と剛性の向上および振動対策を図ることができる場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法を提供する。
【解決手段】 場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法において、スラブ1の下面1Aの線路直角方向に設置される場所打ちコンクリートからなる補強用小梁3と、前記スラブ1に配置されるあと施工アンカー5と、前記スラブ1の梁4に配置されるあと施工アンカー6とを施工し、前記補強用小梁3の軸方向鉄筋2Bは前記スラブ1の梁4に配置されるあと施工アンカー6と継ぎ、前記補強用小梁3のせん断補強筋2Aは前記スラブ1のあと施工アンカー5と継ぐように前記補強用小梁3の配筋を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法に係り、特に、場所打ちRCを用いたRCラーメン高架橋のスラブの補強工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造(以下、Reinforced Concrete:RC)が本格的に鉄道施設に用いられるようになった大正期以降、数多くのラーメン高架橋が建設されてきた。これらのラーメン高架橋は、建設から多くの歳月が経過していることから、耐久性や耐震性の観点から大規模な改修が必要となる場合がある(下記非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】田所 敏弥,「アーチ型鋼材によるRCラーメン高架橋の梁補強」,RRR 2010.3,pp.46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、既存のRCラーメン高架橋は、立地条件や列車の過密な運行状況などのため、大規模な取り替えや改修が難しいのが現状である。
本発明は、上記状況に鑑みて、簡便な施工でスラブとスラブ、スラブと梁との連結を堅牢にし、既設RCラーメン高架橋の耐力や剛性の向上および振動対策を図ることができる、場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法において、スラブの下面の線路直角方向に設置される場所打ちコンクリートからなる補強用小梁と、前記スラブに配置されるあと施工アンカーと、前記スラブの梁に配置されるあと施工アンカーとを施工し、前記補強用小梁の軸方向鉄筋は前記スラブの梁に配置されるあと施工アンカーと継ぎ、前記補強用小梁のせん断補強筋は前記スラブのあと施工アンカーと継ぐように前記補強用小梁の配筋を行うことを特徴とする。
【0006】
〔2〕上記〔1〕記載の場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法において、前記補強用小梁の底面に鋼板埋設型枠を配置することを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法において、前記補強用小梁の外面に超高強度繊維コンクリート埋設型枠を配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡便な施工でスラブとスラブ、スラブと梁との連結を堅牢にし、既設RCラーメン高架橋の耐力や剛性の向上および振動対策を図ることができる場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施例を示す場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法を示す要部模式図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す鋼板埋設型枠を施工する場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法を示す要部模式図である。
【図4】本発明の第3実施例を示す超高強度繊維コンクリート埋設型枠を施工する場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法を示す要部模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法は、スラブの下面の線路直角方向に設置される場所打ちコンクリートからなる補強用小梁と、前記スラブに配置されるあと施工アンカーと、前記スラブの梁に配置されるあと施工アンカーとを備え、前記補強用小梁の軸方向鉄筋は前記スラブの梁に配置されるあと施工アンカーを継ぎ、前記補強用小梁のせん断補強筋は前記スラブのあと施工アンカーと継ぐように前記補強用小梁の配筋を行う。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法の概略構成図であり、そのスラブを下方から見上げた概略構成図、図2はその補強工法を示す要部模式図であり、図2(a)は線路方向から見た図、図2(b)は線路直角方向から見た図である。
【0011】
これらの図において、1はスラブ(鉄筋コンクリートの床板、天井板、デッキなどの構築体を言う)、3はこのスラブ1の下面1Aに線路直角方向に設置された場所打ちコンクリート(RC)からなるスラブ1の補強用小梁であり、この内部に鉄筋2A,2Bが配筋されている。4はスラブ1の縦梁、5はスラブ1に配置される打ち込み式あと施工アンカー、6は縦梁4に配置される打ち込み式あと施工アンカーである。本発明では、吊り型枠(図示なし)を用いて、スラブ1の下面1Aに線路直角方向に逆打ちでコンクリート2Cを打設し、せん断補強筋2Aと軸方向鉄筋2Bを有する補強用小梁3とする。この時、縦梁4に設置した打ち込み式あと施工アンカー6は補強用小梁3の軸方向鉄筋2Bと継ぎ、スラブ1の打ち込み式あと施工アンカー5は補強用小梁3のせん断補強筋2Aと継ぐようにして、スラブ1の補強用小梁3の鉄筋2A,2Bの配筋を行う。このように構成することで、スラブ1の補強用小梁3の鉄筋としてのせん断補強筋2Aおよび軸方向鉄筋2Bとスラブ1および縦梁4との接合を強固なものにしている。
【0012】
図3は本発明の第2実施例を示す鋼板埋設型枠を施工する場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法を示す要部模式図であり、図3(a)は線路方向から見た図、図3(b)は線路直角方向から見た図である。
この実施例では、コンクリート2Cを打設してスラブ1の補強用小梁3を設置後、その補強用小梁3の底面に鋼板埋設型枠7を配置してスラブ1の補強用小梁3自体の補強度を高めている。
【0013】
図4は本発明の第3実施例を示す超高強度繊維コンクリート埋設型枠を施工する場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法を示す要部模式図であり、図4(a)は線路方向から見た図、図4(b)は線路直角方向から見た図である。
この実施例では、コンクリート2Cを打設してスラブ1の補強用小梁3を設置後、その補強用小梁3の外面全体に超高強度繊維コンクリート埋設型枠8を配置して補強用小梁3自体の補強度を高めている。
【0014】
このように構成することにより、スラブ1の補強用小梁3は、スラブ1と縦梁4に堅牢に接合されることになり、剛性を高めたスラブ1の補強用小梁3を構築することができる。
したがって、本発明によれば、既設RCラーメン高架橋の耐力と剛性の向上を図ることができ、また、振幅時に騒音の原因となるスラブの腹に補強用小梁を設置するので、振動対策も図ることができる。
【0015】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、簡便な施工でスラブとスラブ、スラブと梁との連結を堅牢にし、既設RCラーメン高架橋の耐力と剛性の向上および振動対策を図ることができる、場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法として利用可能である。
【符号の説明】
【0017】
1 スラブ
1A スラブの下面
2A せん断補強筋
2B 軸方向鉄筋
2C コンクリート
3 補強用小梁
4 スラブの縦梁
5 スラブへのあと施工アンカー
6 縦梁へのあと施工アンカー
7 鋼板埋設型枠
8 超高強度繊維コンクリート埋設型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)スラブの下面の線路直角方向に設置される場所打ちコンクリートからなる補強用小梁と、
(b)前記スラブに配置されるあと施工アンカーと、
(c)前記スラブの梁に配置されるあと施工アンカーとを施工し、
(d)前記補強用小梁の軸方向鉄筋は前記スラブの梁に配置されるあと施工アンカーと継ぎ、前記補強用小梁のせん断補強筋は前記スラブのあと施工アンカーと継ぐように前記補強用小梁の配筋を行うことを特徴とする場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法。
【請求項2】
請求項1記載の場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法において、前記補強用小梁の底面に鋼板埋設型枠を配置することを特徴とする場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法。
【請求項3】
請求項1記載の場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法において、前記補強用小梁の外面に超高強度繊維コンクリート埋設型枠を配置することを特徴とする場所打ちコンクリートを用いたスラブの補強工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−149400(P2012−149400A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7400(P2011−7400)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】