説明

【課題】 デザインの設計自由度が高く、しかも侵入を確実に阻止することができる塀を提供すること。
【解決手段】 柵5の支柱3の下部を、弾性体6を介して基礎体2に支持させ、柵5の表面に対して垂直な方向の人力が作用した場合に、柵5が傾動するようにしたことを特徴とする。侵入者が塀1を登ろうとして柵5に手を掛けると、その力によって、柵5は手前に傾動し、柵5がいわゆる忍び返しの状態になるため、柵5に登ることができなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷地内等への侵入者の侵入を防止した塀に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塀を越えて敷地内等に侵入されるのを防止するために、塀の上面全幅に亘って、回転体を配設し、侵入者が塀に登ろうとして回転体に手を掛けると、回転体が回転し、侵入者が塀に登ることができないようにした塀は存在する(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】実用新案登録第3102994号公報(図1〜図5参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の塀では、回転体を塀の上面全幅に亘って設置しなければならないため、塀のデザインに制約を受け、それだけデザインの設計自由度が小さくなってしまう。
【0004】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、デザインの設計自由度が高く、しかも侵入を確実に阻止することができる塀を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の塀は、柵の支持部材(例えば支柱)の下部を、弾性体を介して基礎体に支持させ、前記柵の表面に対して垂直な方向の人力が作用した場合に、前記柵が傾動するようにしたことを特徴とする。
【0006】
ここで、「柵」とは、支柱に横桟を配したものばかりでなく、支柱に板を差し渡したもの、板全体の下端部を基礎体に支持させたもの等も含んでいる。また、「表面」とは、柵の支柱および横桟等によって画成される面をいう。また、「基礎体」とは、コンクリート等によって、地面に強固に設置されたもので、塀の下部の大部分が、例えば、150cm以上の高さを有するもの、塀の下部のみが、例えば、100cm以下の高さを有するもの、さらには、地中に埋設したものがある。勿論、基礎体の高さが100〜150cmのものであってもよい。弾性体としては、ゴム等の材料によって形成されたもの、コイルスプリング,板ばね等によって形成されたものが挙げられる。そして、この弾性体の弾性係数は、柵が風等によって容易に傾動されない程度で、人が柵の表面に対して垂直な方向に引いたり、押したりした場合に、柵が完全に倒れ込まないように、適宜な角度、例えば10〜45度程度傾くように設定することが好ましい。
【0007】
本発明の塀によれば、侵入者が塀を登ろうとして柵に手を掛けると、その力によって、柵は手前に傾動し、柵がいわゆる忍び返しの状態になるため、柵に登ることができなくなる。また、柵を傾動させる機能を有する弾性体が柵の下部と基礎体に設置されるため、柵のデザインは、弾性体に邪魔されること無く、自由に設計することができる。
【0008】
本発明の具体的な態様では、前記基礎体にストッパを設置し、前記柵が適宜角度傾動した場合に、前記柵のそれ以上の傾動を規制するようにしたことを特徴とする。この場合、弾性体の弾性係数を風等によって傾動しない範囲に設定すればよく、それだけ設計自由度が増大する。
【0009】
本発明の別の態様では、前記柵を複数の柵部分によって構成したことを特徴とする。この場合、柵部分を基礎体上にそれぞれ個々に設置することができるので、設置や施工が容易になる。
【0010】
本発明のさらに別の態様では、隣り合う前記複数の柵部分を索条によって互いに連結したことを特徴とする。ここで、「索条」とは、ワイヤロープ,鎖等の紐状のものをいう。この場合、柵部分間からの侵入をより確実に阻止することができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、前記基礎体に対して前記柵が傾動した状態を検知する警報装置を設置したことを特徴とする。警報装置としては、フォトセンサ、振動センサ、傾斜センサ等の物理的な検知手段と、ベルを鳴らしたり,ライトを点灯したりして報知する報知手段とを組み合わせた電気制御的な装置が好適であるが、鈴等のいわゆる鳴子を設置したもの等も含まれる。この場合、柵が傾動された際に、警報が発せられるので、侵入をしようとする初期の段階で、侵入を阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係る塀を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る塀の一部を概念的に示した斜視図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は図2における柵が傾斜した状態を示した断面図である。また、図4は本発明に係る塀の他の形態を示したもので、柵の支持構造を示した要部断面図、図5はその柵が傾斜した状態を示した断面図である。さらに、図6は他の形態を示したもので柵のストッパを示した要部断面図、図7はストッパが作用している状態を示した要部断面図である。そして、図8および図9は本発明に係る塀のデザインを例示した斜視図である。
【0013】
図1に示した塀1は、地面10に構築したコンクリートの基礎体2の上面に、支柱3に横桟4を結合させて格子状に組んだ柵5の支柱3を弾性体6を介して設置したものである。
【0014】
この塀1では、図2に示したように、柵5の支柱3の下端を、柱状に形成したゴム等の弾性体6に挿入して接着材,焼付け等によって固定し、その弾性体6の基部を基礎体2上部の凹部2a内に植設している。
【0015】
また、この塀1には、柵5の表面に沿ってその幅方向両端部に発光素子7a,受光素子7b,コントローラ7c等からなる柵の検知手段と、コントローラ7cによって作動されるベル7d等の報知手段とによって構成される警報装置7が設置されている。
【0016】
このように構成された塀1によれば、侵入者が柵5に手を掛けて登ろうとすると、その柵5に作用する力によって、図3に示したように、柵5が傾動される。したがって、柵5は、忍び返しと同様の状態になって、侵入者が柵5に登るのを阻止する。
また、柵5が傾動されると、柵5の傾動が検知手段によって検知され、報知手段によって警報される。
【0017】
図4に示した変形例の塀1は、弾性体6として、コイルスプリングを使用している。この塀1では、柵5の支柱3の下端を弾性体としてのスプリング6の上端内に螺合させて係止し、スプリング6の下端を、基礎体2の上面に形成した凹部2aに挿嵌させ、該凹部2aに投入したモルタル等によって、スプリング6の下端が基礎体2に確実に固定されている。
【0018】
このように構成された塀1によれば、図1乃至図3に示した塀1と同様に、侵入者が柵5に手を掛けて登ろうとすると、その柵5に作用する力によって、図5に示したように、柵5が傾動される。したがって、柵5は、忍び返しと同様の状態になって、侵入者が柵5に登るのを阻止する。
【0019】
図6および図7は、図4および図5に示した塀1に、柵5が所定角度傾動した場合に、柵5がそれ以上傾動しないように、ストッパ8を配設した例を示している。
この塀1では、図6に示したように、湾曲したストッパ8が柵5の支柱3の下部に固設され、柵5が所定角度傾動されると、図7に示したように、ストッパ8の端部が基礎体2の上面に当接し、柵5がそれ以上傾動しないようにしている。
なお、この塀1では、ストッパ8を覆うようにしてゴム等の弾性カバー9が配置され、該カバー9は基礎体2の上面に接着等によって取付けられている。したがって、この塀1では、ストッパ8および弾性体6が隠され、塀1の外観が向上する。
【0020】
なお、上記実施形態では、塀1の概念的な構造を示しているが、塀1の全体構造の形態としては、図8および図9に示したようなものがある。
図8は、高さの高い基礎体2の上面に、高さの低い柵1を配設した例を示しており、図8(a)では、各支柱3に、横桟4を差し渡して設置し、図8(b)では、各支柱3に横桟4をそれぞれ配設するとともに、相隣り合う支柱の横桟4を上下方向にオフセットさせており、図8(c)では、各支柱3を鎖4a等によって互いに連結している。
また、図9は、高さの低い基礎体2の上面に、高さの高い柵1を配設した例を示しており、図9(a)では、各支柱3に、3本の横桟4をそれぞれ差し渡して設置し、図9(b)では、3本の支柱柱3に2本の横桟4をそれぞれ配設して、柵部分5aとし、その柵部分5aを基礎体2の上面に並べて設置し、図9(c)では、各支柱3を鎖4a等によって互いに連結している。
なお、図8および図9に示したものは、塀1のデザインを例示したもので、本発明に係る塀1は、上記デザインに限定されない。
【0021】
また、本発明に係る塀1では、各支柱3の上端部に、忍び返し等を付加設置すれば、侵入者が塀1を越えるのを、さらに確実に阻止することができる。
また、図1では、警報装置7が、光学的な検知手段と音響的な報知手段とによって構成されるとしたが、これに代えて振動センサ、傾斜センサ等の異常検出手段と、光警報(防犯ライトを含む)、電気信号出力装置等の報知手段とによって構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る塀の一部を概念的に示した斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図2における柵が傾斜した状態を示した断面図である。
【図4】本発明に係る塀の他の形態を示したもので、柵の支持構造を示した要部断面図である。
【図5】図4に示した柵が傾斜した状態を示した断面図である。
【図6】柵のストッパを示した要部断面図である。
【図7】図6に示した柵が傾動して、ストッパが作用している状態を示した要部断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、実施形態に係る塀のデザインを例示した斜視図である。
【図9】(a)〜(c)は、実施形態に係る塀のデザインを例示した斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1…塀、 2…基礎体、 2a…凹部、 3…支柱、 4…横桟、 4a…鎖、 5…柵、 6…弾性体、 7…警報装置、 7a…発光素子、 7b…受光素子、 7c…コントローラ、 7d…ベル、 8…ストッパ、 9…弾性カバー、 10…地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材を有する柵と、
前記支持部材の下部を基礎体に対して支持するとともに、前記柵に対して垂直な方向の人力が作用した場合に、前記柵が傾動するようにした弾性体と、
を備える塀。
【請求項2】
前記基礎体にストッパを設置し、前記柵が適宜角度傾動した場合に、前記柵のそれ以上の傾動を規制するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の塀。
【請求項3】
前記柵は、複数の柵部分によって構成され、当該複数の柵部分は、前記支持部材と前記弾性体とを個別に有することを特徴とする請求項1および2のいずれか一項に記載の塀。
【請求項4】
隣り合う前記複数の柵部分を互いに連結した索条をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の塀。
【請求項5】
前記基礎体に対して前記柵が傾動した状態を検知する警報装置を設置したことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の塀。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−266066(P2006−266066A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213994(P2005−213994)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(505112440)
【Fターム(参考)】