説明

塗工紙

【課題】
製紙用の塗工用顔料として必要な特性を備えた再生粒子を塗工層用の顔料として用いた、品質が安定した塗工紙を得る。
【解決手段】古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程して得た再生粒子を、塗工用の顔料として用いた塗工層を有する塗工紙であって、前記燃焼工程が、第1燃焼炉14と第1燃焼炉14にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する、後の第2燃焼炉32とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、前記第1燃焼炉14では、300℃以上〜500℃未満で燃焼処理が行われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱墨フロスを主原料とし、所定の製造方法にて得た再生粒子を、塗工用顔料として用いた塗工層を有する塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙パルプ工場の各種工程から排出される製紙スラッジは、無機充填剤及び無機顔料粒子をかなりの割合で含み、これらの製紙スラッジは、回収され、流動床炉やストーカー炉などの焼却炉で製紙スラッジ中の有機物を燃焼して製紙スラッジの減容化を図るとともに、エネルギーとして回収されている。
【0003】
しかしながら、製紙スラッジには、多量の無機物が含有されているため、燃焼しても多量の焼却灰(無機物)が残り、減容化にも限度がある。そこで、この焼却灰をセメント原料の助剤として活用することや、土壌改良材として活用すること等の努力もなされている。しかし、これらセメント原料の助剤や、土壌改良材のとしての焼却灰の使用量はわずかなものであり、結局、大部分の焼却灰は埋立て処分されているのが実情である。
【0004】
そこで、焼却によって熱エネルギーとして回収するだけでなく、製紙スラッジ中の無機物を製紙用填料、顔料、プラスチック用充填剤等として再利用することは、製紙業界において古紙利用率の向上とともに環境問題に関わる重要な改善課題である。
【0005】
しかしながら、製紙スラッジの焼却灰には燃焼されずに残った有機物がカーボンとして含まれるため白色度が低く、あるいは、無機物の焼結が進み、粒子径が不揃いで大きくなっており、そのままの状態では製紙用の塗工用顔料等として使用するのに適さない。
【0006】
そこで、特許文献1は焼却灰を再燃焼し、白色度を向上させてから使用する方法を開示している。
【0007】
しかしながら、特許文献1の焼却灰を再燃焼する方法の場合、未燃焼カーボンを完全に燃焼させるため再燃焼温度を500℃〜900℃に設定する必要があり、焼却灰の白色度は50%程度にまでしか向上せず、製紙用の塗工用顔料として使用するには見栄えが悪く、また、再燃焼温度を900℃超に設定すると、焼却灰(無機物)が焼結、溶融し、極めて硬くなることが知見され、得られた再燃焼物は塗工用設備・部材の摩耗やストリーク等の品質問題を招き易いため、塗工用顔料には適するものとはならないことが知見された。 また、カレンダー処理を行っても、再燃焼物を塗工用顔料として含有した塗工層表面は、平滑性が劣るという問題が生じる。
【0008】
この点、再焼却灰を粉砕し、その粒子径を小さくして、摩耗の低減、平滑性の向上を図ることも考えられるが、内添填料として使用する場合には、抄紙時における歩留りが低いものになり、焼却灰自体がきわめて硬いため、粉砕のためのエネルギーコストが極めて高いものとなる。
【0009】
更に、過燃焼により再燃焼物中にアルミン酸カルシウムに代表される、所謂セメント状物質が生じ、水分散時に再燃焼物の凝集固化が生じ、粉砕工程を経ても得られる再燃焼物の粒度がブロードになり、過大又は過小の再燃焼物が生じやすく、用いた塗工層の品質低下を招く問題を生じる。
【0010】
特許文献2では、製紙スラッジを、酸素含有ガスを注入した反応器内に供給し、250℃〜300℃、3000psig程度の加温加圧下で0.25時間〜5時間酸化して、製紙スラッジ中の無機物を製紙用の顔料として再生化する方法が提案されている。
【0011】
しかし、この方法は、製紙スラッジを液相のままで湿式空気酸化処理によるものであるため、有機物除去が十分でなく、また、得られた顔料の白色度が低く、粒子径も不揃いで、製紙用の顔料として使用するには不適であり、しかも反応操作が複雑でコストが高いという問題がある。
【0012】
一方、特許文献3には、製紙スラッジをいぶし焼きしてPS炭とした後、さらにこれを内熱キルン炉で焼却して製紙用原料となる白土を生成させる方法が提案されている。しかし、この方法は製紙スラッジをいぶし焼きするため、製紙スラッジからエネルギーを有効に取り出すことができないばかりか、逆に投入エネルギーが必要になるという大きなデメリットがある。また、いぶし焼きにより、揮発分が除去され有機物が燃焼(酸化)し難い所謂「残カーボン」とよばれる状態となり、後工程での燃焼が困難になるとともに、残カーボンのために長い燃焼時間を掛けなければ高い白色度を得がたく、さらに、生成した白土も特許文献1と同様の問題を抱えると共に、粒子径が不揃いで大きくなっており、また、内熱キルンで使用される重油バーナーからのカーボンやイオウ酸化物による汚染が生じ、製紙用顔料としては使用できないという問題がある。
【0013】
特許文献4においては、排水処理汚泥をロータリーキルン炉内で連続して乾燥・炭化・燃焼する方法が開示されている。この方法において使用される排水処理汚泥は、種々の発生源を有する汚泥で構成されているため、発生源や発生量の変動により、得られる造粒・成形物質においても変動が生じる問題を有し、当該特許文献においては、燃焼に先立って、造粒・成形するのは、燃焼を均一に行うためであると考えられるものの、実施の形態に記載されている固形分濃度40%〜60%(換言すれば水分率60%〜40%)の状態においてロータリーキルン炉内で連続して乾燥・炭化・燃焼する場合、汚泥の乾燥状態、炭化状態のいかんに係らず、キルン炉の回転によって汚泥粒子は強制的に処理が進行してしまう。
【0014】
従って、乾燥が不十分であると粒子内部に未燃分が多く残留しその結果燃焼が不完全となって白色度の低下を生じ、逆に過乾燥になると燃焼は完全となるが過燃焼を招き、得られた再生粒子の硬度が高くなり、この再生粒子を使用すると抄紙機でのワイヤー摩耗や紙を断裁する場合のカッター刃摩耗が生じやすくなるという問題を引き起こす。
【0015】
そもそも先行する特許文献1〜4に記載の製紙スラッジを原料とする場合における最も大きな問題点は、原料とする製紙スラッジが、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したもの、パルプ化工程での洗浄過程で発生した固形分を含む排水から回収したもの、排水処理工程において、沈殿あるいは浮上などを利用した固形分分離装置によりその固形分を分離、回収したもの、古紙処理工程での混入異物除去したもの等の各種スラッジが混在している点である。
【0016】
これらの製紙スラッジのうち、例えば、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したものは、紙力剤等が混入しており、また、抄紙工程における抄造物の変更によって品質に変動が生じる。また、排水処理工程から回収した製紙スラッジには凝集剤が混入する他、工場全体の抄造物、生産量の変動、あるいは生産設備の工程内洗浄などにより大きな変動が生じる。
【0017】
パルプ化工程での洗浄過程から生じる製紙スラッジにおいては、チップ水分やパルプ製造条件で変動が生じる他、さまざまな填料、顔料とすることができない物質が混入し、品質変動が生じる。従って、全ての製紙スラッジを無選別に用いようとすると、製紙用の填料や塗工用顔料としての品質が大きく低下し、しかも品質の変動が極めて大きく、不安定なものとなる。
【0018】
すなわち、従来公知の方法で得られる再生粒子は、製紙用の塗工用顔料として使用するには品質が適さず、品質安定性に欠け、製紙用の填料または塗工用顔料として必要な特性を備えた再生粒子が得難く、安定した品質の塗工紙を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平11−310732号公報
【特許文献2】特公昭56−27638号公報
【特許文献3】特開昭54−14367号公報
【特許文献4】特許第3812900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明が解決しようとする主たる課題は、製紙用の塗工用顔料として必要な特性を備えた再生粒子を塗工層用の顔料として用いた、品質が安定した塗工紙を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
【0022】
〔請求項1記載の発明〕
古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程して得た再生粒子を、塗工用の顔料として用いた塗工層を有する塗工紙であって、
前記燃焼工程が、第1燃焼炉と第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する、後の第2燃焼炉とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、
前記第1燃焼炉では、300℃以上〜500℃未満で燃焼処理が行われている、
ことを特徴とする塗工紙。
【0023】
〔請求項2記載の発明〕
前記第1燃焼炉が、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉であり、前記脱水工程後の原料の水分率が40%以上とされている、
請求項1記載の塗工紙。
【0024】
〔請求項3記載の発明〕
前記内熱キルン炉内の酸素濃度が0.2%〜20%となるように、300℃以上500℃未満の熱風が吹き込まれている、
請求項1又は請求項2記載の塗工紙。
【0025】
〔請求項4記載の発明〕
前記第2燃焼炉が、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉であり、前記キルン炉内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び軸心と平行な平行リフターの少なくとも一方が配設されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗工紙。
【0026】
〔請求項5記載の発明〕
塗工紙基材の原料パルプとして、古紙パルプが主原料として用いられ、当該古紙パルプが複合酵素によって酵素処理された酵素処理古紙パルプである、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗工紙。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、製紙用の塗工用顔料として必要な特性を備えた過剰燃焼を回避した再生粒子を塗工層用の顔料として用いた、品質が安定した塗工紙となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】製造設備の概要図である。
【図2】第2燃焼炉の概要図で、(a)は縦断面図、(b)は内面の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本発明者らは、優れた再生粒子を得るために、特開2008−127704号において、紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て、再生粒子を得る再生粒子の製造方法であって、前記乾燥と燃焼工程が、前記脱水後の原料の乾燥と燃焼を一連で行う先の第1燃焼炉と第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する、後の第2燃焼炉を有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、その後に粉砕し、再生粒子を得る操作を有する再生粒子の製造方法を提案した。
【0030】
さらに、その具体的な提案内容は、第1(次)燃焼炉(内熱キルン炉)内の酸素濃度が0.2%〜20%となるように、500℃〜650℃の熱風を吹き込み、第2燃焼炉では、内熱キルン炉からの燃焼物を、550℃〜750℃の温度で燃焼するものである。
【0031】
しかしながら、古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、再生粒子の原料となる微細な無機微粒子を含有すると共に、古紙パルプとして利用が困難な微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分を多く含み、燃焼処理においては脱墨フロスそのものが自ら燃焼反応(酸化)を生じ燃焼するため、先の出願で提案した熱風による加熱処理以上の発熱が生じ、原料の過剰燃焼を惹き起す問題がみられることを知見した。
【0032】
過剰な燃焼は、次記の問題を招いている。(1)高温燃焼により原料が黄変化し白色度の低下を招く。(2)原料の溶融によりゲーレナイト等の硬質物質(参考:特願2007−22377)を生じやすくなり、抄紙設備でのワイヤー摩耗度が上昇する。(3)原料の溶融による凝集体を形成するため、後の微粉砕工程において粉砕エネルギーの増加、処理効率が低下する。(4)原料の表面が高温に晒され、原料内部よりも先に溶融されるため、原料内部まで燃焼反応(酸化反応)が進まず、有機物(カーボン)が残留する(結果として白色度の低下を招く)。(5)原料の分解・反応によりアルミン酸カルシウム等の水和硬化物質が生じ、スラリーの凝集,固化が生じる。
【0033】
本発明者らは、前記問題を解決する手段として、過剰な燃焼をコントロールする方策に着目し、鋭意検討を行った結果、第1燃焼炉において、燃焼温度を原料である脱墨フロスが自燃せず、脱墨フロス中に含有される有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)を放出するに必要なだけの第1次燃焼炉の炉内温度に留め、有機成分ガスの燃焼反応(酸化反応)のみを促進させることで、前記問題を解決できることを見出した。
【0034】
さらに、第1次燃焼炉内において、燃焼ガス(可燃焼ガス)を燃焼させるために必要な酸素濃度0.2%〜20%を確保するとともに、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するため、熱風供給に加え、原料となる脱墨フロスの含有水分を高める方策が有効であることを見出している。本発明者らの知見によると、第1次燃焼炉内の酸素濃度0.2%〜20%を確保することは、燃焼が促進される炉内環境となるため、脱墨フロスの過剰燃焼が発生しやすくなる。
【0035】
しかるに、原料となる脱墨フロスの脱水後の水分を、40%以上、好ましくは40%以上90%未満、より好ましくは45%以上70%以下、特に好ましくは50%超60%以下の高含水状態で第1次燃焼炉内に供給することが、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するために適していることを知見した。その理由は、第1次燃焼炉内に高含水状態で供給することで、第1次燃焼炉内において水の蒸発により、炉内温度が低下し、脱墨フロスの自燃を抑え、発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)のみの燃焼を促進し、過剰な燃焼温度の上昇を抑制することができるものと考えられる。
【0036】
更に好適には、第1次燃焼炉において、燃焼温度を原料である脱墨フロスが自燃せず、脱墨フロス中に含有される有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)を放出するに必要なだけの第1次燃焼炉の炉内温度に留め、有機成分ガスの燃焼反応(酸化反応)のみを促進させる方策、さらに、第1次燃焼炉内において、燃焼ガス(可燃焼ガス)を燃焼させるために必要な酸素濃度0.2%〜20%を確保するとともに、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するため、熱風供給に加え、原料となる脱墨フロスの含有水分を高める方策との組み合わせにおいて、より高品質の再生粒子を得ることができることを見出した。
【0037】
他方、より好適には、第2次燃焼炉内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/または軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
【0038】
先に述べた発明者等の知見によると、第1次燃焼炉では、低い燃焼温度で原料脱墨フロスを燃焼反応に晒し、均質な第1次燃焼炉出口原料を得たのち、残留する白色度を低下させる原因となる炭素分をできる限り燃焼させる必要があるため、原料を緩慢に燃焼させる必要があり、可能な限り均一な燃焼を連続的に実施するには、第2次燃焼炉内での原料搬送速度を適宜コントロールする方策が最も好適と考えられ、その手段として、リフター設備を用い、原料の搬送速度を調整可能にすることができることも見出した。しかるに、公知のリフターは鉄素材で一般に製造されているため、鉄分がコンタミとして原料中に含有され、鉄の酸化により白色度を低下させる問題を招く。そこで、本発明者らは、ステンレス製のリフターを第2次燃焼炉に設けることで、前記鉄の酸化問題を生じることなく、白色度の低下がないなど、高品質の再生粒子を製造できる技術を見出した。
【0039】
なお、第2次燃焼炉の構造としては、外熱キルンが好適に採用される。外熱キルンはバーナーの直火が原料に直接晒されないため、過焼を防止でき、均一な燃焼品質(高い白色度が得られる)。一方、内熱キルンは、内部に貼り付けた耐火物が断熱性を持つと同時に遠赤外線を放出し、少ない熱量で加温できるメリットがある。
【0040】
また、第2燃焼炉として好適に用いられる外熱キルン炉により燃焼すると、例えば電気炉のように温度調整が可能な外熱により第2燃焼炉における燃焼物の燃焼状況変動に応じた燃焼温度調整が容易になるとともに、白色度の低下を来たさず、過剰な酸化反応を抑えながら燃焼物に均一な加熱を行う事ができ、燃焼物の品質の安定化を図ることが出来る。また、内熱によって、直接燃焼物に対し加熱を施すことで、燃焼物の燃焼状況に応じて均一かつ十分な加熱が可能になり、製紙スラッジ由来による燃焼物の燃焼のバラツキ、燃焼物の構成変動に応じた燃焼を施すことが可能となる。さらに、キルン炉の回転により、回転方向に沿って燃焼物が偏在する状態になるとともに、燃焼物と内壁との摩擦によって燃焼物が転動し、キルン炉内で緩やかに攪拌されつつ排出口へ燃焼物が移動するため、燃焼物の微粉化を抑えることが可能になり、その結果、最終的な燃焼物の品質及び形状が安定したものとなる。
【0041】
上記のとおり、乾燥、燃焼の操作、特に燃焼物中の未燃物の割合を2〜20質量%となるように先の第1燃焼炉で燃焼処理を行い、その後の残留する有機物、炭化物等の未燃物の燃焼を第2燃焼炉で行う、少なくとも2段階の燃焼炉により行うことで、特に製紙用の填料や塗工用顔料として必要な特性を備えた再生粒子を、均一で安定して製造することができる。
【0042】
好適な燃焼炉として用いられる燃焼用キルン炉は、内部耐火物を円周状でなく、六角形や八角形とすることで乾燥・燃焼物を滑らす事無く持ち上げて攪拌することができ、粉塵の発生を抑制し排ガスへの粉塵混入を抑えることができ、製品歩留りを向上させることができる。第2燃焼炉の構造については、これら諸条件を鑑みて適宜選択できるが、いずれに方式についてもリフターを設けることが最適である。
【0043】
上記のように再生粒子の製造における燃焼工程において、再生粒子を過燃焼させることなく燃焼する必要がある。しかし、燃焼工程内での燃焼変動により一部過燃焼した再生粒子が生じる場合があり、その場合、過燃焼された再生粒子は、填料または塗工用顔料として水に懸濁化し適宜、粒度調整のため粉砕を行うが、過燃焼により生じた水和硬化物質が製造工程内で硬化反応を生じ凝集,固化する。あるいは製品粒度を増大させたり、粘性を増大させたりする等、操業性および品質に問題が生じている。
【0044】
凝集,固化の問題の発生要因を鋭意検討した結果、製紙スラッジの主成分たる炭酸カルシウムとカオリンが過焼成により酸化カルシウムとメタカオリン更にはアルミナと珪酸に分解することでアルミン酸カルシウムが生成することが判った。アルミン酸カルシウムは水と混合すると水和硬化反応が生じ固化する。また、カオリンが焼成により生じるメタカオリンは水和硬化反応の促進剤として作用する。従って、過燃焼によって生じた水和硬化物質を含む焼成灰(燃焼物)を水に懸濁した場合は、メタカオリンの硬化促進との相乗作用により凝集、固化に至ると考えられた。
【0045】
水和硬化物質を生成させないために焼成炉での燃焼条件を研究してきたが、実際の製造工程においては種々の変動要因によって微量ながらアルミン酸カルシウムを生成させてしまう焼成条件が見られた。
【0046】
本発明者は、これらの知見をもとに、水和硬化物質を改質することで凝集、固化を防止し、製造安定性および品質向上を図る方策について検討した。アルミン酸カルシウムを硫酸カルシウム二水和物と反応させ、エトリンガイトと呼ばれる物質に改質することで固化を防止することができることを見出した。
【0047】
エトリンガイトは、サチンホワイトと呼ばれ、一般的に塗工用顔料として用いられる物質であり、本来、製紙用薬品として適さないアルミン酸カルシウムを塗工用顔料として使用されるサチンホワイトに改質することで、凝集、固化を防止するだけで無く、紙の表面の光沢,白色度,不透明度を付与する効果を果たす。
【0048】
一方、反応で余剰に残留した硫酸カルシウムは、柔らかく,酸にもアルカリにも不溶の白色物質であることから、内添用填料として使用した場合に、ワイヤー摩耗性の改善や白色度の向上に寄与する。
【0049】
硫酸カルシウム二水和物の添加は、抄紙用薬品として適さない水和硬化性物質の改質と同時に残留した薬品はそれ自体が抄紙用薬品として使用できる点で有効である。
【0050】
一方、たとえば、製紙用スラッジを燃焼する場合、(1)特開2003−119695号公報記載の発明では、乾燥物を炉内の酸素濃度が0.1体積%以下となる実質的に酸素が存在しない貧酸素状態で、具体的には間接加熱炉(外熱燃焼炉)によって乾燥及び炭化処理する。次に炭化物に含まれる有機物由来の炭素を酸化させて脱炭素する、具体的には間接加熱炉によって白化処理する方法が提案されている。また、同発明は、後者の白化処理については内熱ロータリーキルン炉を使用することも教示している。
【0051】
他方、本出願人は、(2)特開2002−275785号において、炭化後に再燃焼のためにロータリーキルン炉を使用することを教示している。
【0052】
さらに、本出願人は、(3)特許3808852号において、「原料スラッジとして脱墨スラッジを用い、これを乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥させた脱墨スラッジをサイクロン型燃焼炉の炉上部から炉内に供給し、旋回下降させつつ燃焼させ未燃分を含む一次燃焼物を得る一次燃焼工程と、前記サイクロン型燃焼炉に連通し、その下端からの未燃分を含む一次燃焼物を受けて、機械的な攪拌により酸素との接触を促進させながら、前記一次燃焼工程の燃焼熱を利用して所定の白色度となるまで燃焼させる二次燃焼工程とを含む、ことを特徴とする脱墨スラッジからの白色顔料または白色填料の製造方法。」を提案している。
【0053】
また、(4)特開2004−176208号においては、「塗工紙製造工程の排水処理汚泥」から填料を製造するに際し、成形汚泥を「1つのロータリーキルン炉内で乾燥、炭化、燃焼」を行うことを提案している。
【0054】
上記(1)(2)及び(4)は、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料とするものではなく、前述の製紙スラッジを主原料とするものである。そして、得られる再生粒子は、本発明のような、再生粒子「凝集体」とは異なるものと考えられる。
【0055】
一方、(3)の方法によれば、本発明によって得られるものと同様な再生粒子を得ることができると考えた。しかしながら、同方法ではサイクロン式流動燃焼炉を使用し、乾燥物を燃焼し、次いで二次燃焼を行っている。そして、サイクロン式流動燃焼炉自体の形式に由来するものと考えられるが、サイクロン式は数十〜数百ミクロンの原料と空気を旋回流として供給口から供給し、空気の旋回作用により空気と効果的に混合されながら燃焼させるため、原料に含有される微粒子が、排ガスとともに系外に排出され製品歩留りが低下する問題、主原料である脱墨フロスの燃焼時間(加熱時間)が短時間であることにより未燃焼分が生じやすい問題、最終的に得られる燃焼物の品質(特に形状)が一定でなく、燃焼物の白色度もバラツキが生じる場合があることが知見された。
【0056】
そこで、本発明者は、過剰燃焼させないで、得られる再生粒子の水和硬化物質の生成を防止することで水溶解時の安定性を図り、品質の安定した再生粒子を得る手段について検討を重ね、燃焼工程が、第1燃焼工程と、第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する、後の第2燃焼工程とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、前記第1燃焼工程において、300℃以上〜500℃未満で燃焼処理を行うことで、品質の安定した再生粒子を得ることを見出している。より好適な再生粒子の製造方法においては、前記第1燃焼工程において、300℃以上〜500℃未満で燃焼処理を行った再生粒子の水溶解時に硫酸カルシウム二水和物を凝集抑制剤として添加することで、水和硬化物質を生じさせない高品質の再生粒子を製造できることも見出している。
【0057】
前記、水和硬化物質を生じさせない好適な再生粒子を得る態様としては、脱水後の原料の乾燥と燃焼が一連で行われ、内熱による第1次燃焼炉における燃焼時間(滞留時間)が30分以上、90分以下、より好適には40分〜80分の、最適には50分〜70分の第1燃焼炉を用い、好ましくは本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱(直接加熱)キルン炉により、前記脱水後の原料の乾燥及び燃焼を行い、次に、第1燃焼炉から得られる燃焼物を再度燃焼する燃焼時間(滞留時間)が、60分以上の、より好適には60分〜240分、特には90分〜150分、最適には120分〜150分の、外熱による第2燃焼炉を用い、好ましくは本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱(間接加熱)キルン炉、特に燃焼温度を容易に調整可能な外熱電気炉により、燃焼する方法を採用するものである。
【0058】
また、後に図面と共に説明する実施の形態では、第1燃焼炉として内熱キルン炉、第2燃焼炉として外熱キルン炉を選択し詳説するが、これらのキルン炉としては公知の燃焼炉を使用できる。また、キルン炉に限定されることなく、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等、公知の装置を用いることもできる。
【0059】
本発明において好適な態様は、先の第1燃焼炉を内熱で行い、後の第2燃焼炉を外熱で行うものである。さらに、この外熱第2燃焼炉としては重油等を熱源にした間接加熱方式の燃焼炉等の公知の燃焼方法を採用することもできる。
【0060】
第1燃焼炉として好適に用いることができる内熱キルン炉によれば、乾燥及び燃焼を1つの炉で行うことができ、供給口から排出口に至るまで、緩やかに安定的に乾燥及び燃焼が進行し、かつ燃焼物の微粉化が抑制される。また、第2燃焼炉として好適に用いることができる外熱キルン炉により燃焼すると、その端部から燃焼物を所定の滞留時間をもって、他端部の排出口から排出でき、さらに外熱により燃焼物に均一な熱が加わるので、燃焼が均一なものとなり、燃焼のバラツキを生じさせないものとなる。さらに、キルン炉内壁の回転による摩擦によって燃焼物が緩やかに攪拌されるため、微粉化を生じにくい。その結果、最終的な燃焼物の品質及び形状が安定したものとなる。
【0061】
従来の第1燃焼炉においては、原料中の微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分等を効率よく燃焼させるために、水分率を40%未満に脱水乾燥させ、高温で燃焼させる方法が先に述べた公知文献にも記載されているものの、本発明者等の知見では、第1燃焼炉においては300℃以上〜500℃未満の従来に比して低温で加温操作することにより、原料中から、原料に含有される有機物が燃焼ガス化し、燃焼ガスを燃焼(酸化)させることが、得られる再生粒子のイオン性が安定化し、より好適な再生粒子の製造方法においては、硫酸カルシウム二水和物を主剤とする凝集抑制剤と組み合わせることで均一な分散が図れ、得られる再生粒子の品質安定化、白色度向上に対する寄与が大きいことも見出している。
【0062】
上記のとおり、乾燥、燃焼の工程を、好適には内熱キルン炉と外熱キルン炉にて、少なくとも2段階の燃焼炉により行うことで、均一で安定的な再生粒子が得られる。
【0063】
好適な燃焼炉として用いられる内熱または外熱キルン炉は、内部耐火物を円周状でなく、六角形や八角形とすることで燃焼物を滑らすことなく持ち上げて攪拌することができるが、現実には、キルン炉として円筒形であり、燃焼物攪拌用のリフターを設けることが、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる点で最適である。これは、第1燃焼炉において、本発明が低温でじっくり原料全体を燃焼することを意図することとも関係すると考えられる。
【0064】
ここで、本発明者らが好適な再生粒子を得るに当り、最も注力した燃焼炉の選択について説明する。
従来から慣用的に用いられてきた燃焼炉は、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉の4種に大別でき、本発明者らは、それぞれの焼却炉で再生粒子の製造の検討を重ねたところ、次記の事項が明らかとなった。
【0065】
・ ストーカー炉(固定床)については、脱墨フロスの燃焼度合い調整が困難であり、燃焼物が不均一である上に、灰分の多い脱墨フロスの燃焼では火格子間のクリアランスから落塵を生じるため適さない。火格子を通し燃焼物の下に空気を吹上げ燃焼させるため、炭酸カルシウムなどが飛灰となり排ガスとともに排ガス設備へ送られるため、歩留の低下が問題となる。
【0066】
・ 流動床炉については、炉内の流動媒体に珪砂のような粒子状の流動媒体を使用するため、珪砂が再生填料へ混入し品質の低下を招く問題を有する。均一な攪拌ができない。硅砂を流動層に混合して燃焼させた後、硅砂と燃焼物を分離し、硅砂は燃焼炉へ戻し燃焼物のみを取り出すが、燃焼物も硅砂と同程度の粒径が生じるため分離できない。硅砂と浮遊した状態で燃焼させているため、燃焼の度合い調整が困難であり、品質のばらつきが発生する。燃焼炉のストーカ(階段状)を、所定幅で、燃焼物が通過しながら燃焼するため灰の攪拌が不十分で幅方向で燃焼にバラツキが発生する。また、硬度の高い珪砂との摩擦、衝突により燃焼物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され歩留りが低下する。
【0067】
・ サイクロン炉については、炉内を一瞬で通過するため燃焼物中の固定炭素を十分に燃焼できず白色度の低下に繋がる。さらに、風送により細かい粒子はサイクロンで分離されず排ガスと一緒に排ガス処理工程に回るため歩留が低下する。
【0068】
前記諸問題について鋭意検討を重ねた結果、燃焼炉としてはキルン炉にて燃焼させることが最も好適な燃焼手段として選択され、さらに以下の理由から、本発明において最適な実施の形態である、先の第1燃焼炉を内熱キルン、後の第2燃焼炉を外熱キルンとすることは次記の理由から好適であることを見出している。
【0069】
外熱キルン炉は、キルン炉の外側に加熱設備を設けた構成となるため、キルン炉の構造が複雑になるとともに、燃焼物を間接的に乾燥、燃焼させるゆえに多量の熱源が必要になるため、本発明に係る、脱水後の水分率が高い原料の乾燥、燃焼処理に外熱キルン炉を先の第1燃焼炉として使用した場合には、乾燥・燃焼効率が低くなり、生産性が悪く、温度の制御が困難になるとともに多大なエネルギーコストを必要とし、費用対効果が極めて低くなる。
【0070】
また、内熱キルン炉を2次燃焼炉に使用した場合には、残カーボンを燃焼するにおいて、炉内温度の調整に多量の希釈空気が必要であり、また、多量の空気を投入しないと燃焼熱を内熱キルン炉内に均一に伝えることが困難であり、さらに炉内温度の変動を抑えることが困難であるため、燃焼物の過燃焼や燃焼ムラが生じやすい問題を呈する。
【0071】
さらに、通常加熱に使用される重油バーナーからの重油燃焼残カーボンや硫黄酸化物等による汚染が発生し、製品段階で白色度の低下やバラツキが生じ、得られる燃焼物の品質の均一化が困難な問題が生じる。
【0072】
<再生粒子の製造方法>
次に、再生粒子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0073】
本発明における好適な再生粒子の製造方法は、脱水工程、乾燥工程、燃焼工程、粉砕工程を有するが、更に脱墨フロスの凝集工程、造粒工程や、各工程間における分級工程等を設けてもよい。
【0074】
再生粒子の製造設備フローの一部構成例(乾燥・燃焼工程及び燃焼工程を含む)を、図1に示した。本設備には、各種センサーが備わっており、被燃焼物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
【0075】
〔原料〕
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも、古紙中に未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が含まれていたとしても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去される。したがって、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等の、他の工程で発生する製紙スラッジと比べて、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための原料となる。
【0076】
ここに脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
【0077】
〔脱水工程〕
古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、同じく図示しない公知の脱水設備により脱水する。本形態における一例では、脱水手段たる例えばスクリーンによって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。このスクリーンにおいて、水分率を90%〜97%に脱水した脱墨フロスは、脱水手段たる例えばスクリュープレスに送り、更に所定の水分率まで脱水するのが望ましい。脱水後の原料(脱墨フロス)は、40%以上、好ましくは40%以上90%未満、より好ましくは45%以上70%以下、特に好ましくは50%超60%以下の高含水状態とすることが望ましい。
【0078】
脱水後の原料の水分率が70%を超えると、第1燃焼炉における乾燥・燃焼処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料の燃焼ムラが生じやすくなり均一な燃焼を進めがたくなる。また、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくなる問題を有する。他方、脱水後の原料の水分率が40%未満と低いと、脱墨フロスの過剰燃焼の原因となる。また、脱水処理エネルギーの削減にも反する。
【0079】
以上のように、脱墨フロスの脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
【0080】
脱墨フロスの脱水工程は、再生粒子の製造工程に隣接することが生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行った物を搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から乾燥・燃焼工程に供給することもできる。
【0081】
〔粉砕工程〕
脱水後の原料10は、第1燃焼炉14に供給する前に、粉砕機(又は解砕機)等により、平均粒子径40mm以下、好ましくは平均粒子径3mm〜30mm、より好ましくは平均粒子径5mm〜20mmに粒子径を揃えると好適であり、また、粒子径50mm以下の割合が70重量%以上、好ましくは90〜100%となるように粒子径を揃えると好適である。脱墨フロスに含まれる炭酸カルシウムの熱変化を来たさない燃焼を図るため、原料の粒子径は均一であることが好ましいところ、平均粒子径が3mm未満では過燃焼になりやすく、他方、平均粒子径が40mmを超えると、原料芯部まで均一に燃焼を図るのが困難になる。
【0082】
前記平均粒子径及び粒子径の割合は、攪拌式の分散機で充分分散させた試料溶液を用いて測定した値である。なお、各燃焼工程における粒子径は、JIS Z 8801−2:2000に基づき、金属製の板ふるいにて測定した値である。
【0083】
〔第1燃焼工程〕(乾燥及び燃焼工程)
脱水、粉砕等を行った原料10は、貯槽12から切り出されて、第1燃焼炉14に供給される。第1燃焼炉14は本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉方式からなり、この内熱キルン炉14の一方側から原料10が装入機15により装入される。この内熱キルン炉14においては、熱風発生炉20にて生成された熱風が、内熱キルン炉14の排出口側から原料(脱水物)10の流れと向流するように送り込まれる。内熱キルン炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が内熱キルン炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、内熱キルン炉14の回転に伴って前記他方側へ順次移送される原料10の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
【0084】
このように本乾燥・燃焼工程においては、脱水物10を、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥と有機分の燃焼とを行うことができ、燃焼物の微粉化が抑制され、凝集体形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物10の燃焼度合いの制御と、粒揃えとを、安定的に行うことができる。なお、乾燥を別工程に分割し、例えば、吹上げ式の乾燥機によって乾燥させることもできる。
【0085】
ここで、内熱キルン炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度0.2%〜20%であるのが好ましく、1%〜17%であるのがより好ましく、7%〜15%であるのが特に好ましい。この点、内熱キルン炉14内の酸素濃度は、原料10の燃焼(酸化)により酸素が消費されるため、燃焼の状況により変動が生じる。そして、酸素濃度が過度に低いと、十分な燃焼を図ることが困難になる。しかしながら、熱風発生炉20等により、空気などの酸素を含有するガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度の維持、調節が可能であり、また、酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、内熱キルン炉14内の温度を細かく調節可能であり、原料10をムラなく万遍に燃焼することができる。
【0086】
第1燃焼炉14の炉内温度は、300℃以上500℃未満、好ましくは400℃以上500℃未満、より好ましくは400℃以上450℃以下が好適である。第1燃焼炉14においては、容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼し難い残カーボンの生成を抑える目的から、燃焼温度300℃以上500℃未満の温度範囲で燃焼するのが好ましい。過度に温度が低いと、有機物の燃焼が不十分であり、他方、過度に温度が高いと過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解によって酸化カルシウムが生成し易くなる。また、炉内燃焼温度500℃以上の場合は、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物10の粒揃えが進行するよりも早くに乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面と粒子内部との未燃率の差を少なく均一にするのが困難になる。熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
【0087】
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中に含まれる微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再び原料10に配合され再利用される。排ガスは、再燃焼室22でバーナー等により再燃焼され、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通され、誘引ファン28によって煙突30から排出される。
【0088】
ここで、熱交換器26は外気を昇温し、この昇温した外気は、熱風発生炉20に送られ、内熱キルン炉14に吹き込まれる。つまり、熱交換器26は、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収する。排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去に有効である。
【0089】
第1燃焼炉14は、脱水物10に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、前記条件下で、30分〜90分の滞留(燃焼)時間で燃焼させるのが好ましい。燃焼時間が30分未満では、十分な燃焼が行われず残カーボンの割合が多くなる。他方、燃焼時間が90分を超えると、原料10の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、また、得られる再生粒子が極めて硬くなる。有機物の燃焼及び生産効率の面では、40分〜80分の滞留時間で燃焼させるのが好ましい。恒常的な品質を確保するためには、50分〜70分の滞留時間で燃焼させるのが好ましい。
【0090】
また、本工程の乾燥及び燃焼は、後述する第2燃焼工程に供給する燃焼物の未燃率が、2〜20質量%となるように行うのが好ましく、5〜17質量%となるように行うのがより好ましく、7〜12質量%となるように行うのが特に好ましい。未燃率が2〜20質量%となるように乾燥及び燃焼を行うことで、第2燃焼工程における燃焼を短時間に効率よく行うことができるようになるとともに、第2燃焼工程における安定した加熱により、硬度が低く白色度が通常80%以上、少なくとも70%以上の高白色度の燃焼物を得ることができるようになる。未燃率が2質量%未満となるように乾燥及び燃焼を行うと、第1燃焼炉14におけるエネルギーコストが高いものになるとともに、燃焼物の硬度が高くなるおそれがあり、第2燃焼工程を経た燃焼物の白色度低下等の品質低下を来たすおそれがある。
【0091】
〔第2燃焼工程〕(燃焼工程)
内熱キルン炉14において乾燥及び燃焼した燃焼物は、移送流路等を通して、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケット31を有する第2燃焼炉にあたる外熱キルン炉32に装入する。
【0092】
この外熱キルン炉32では、燃焼物を、外熱で加温しながらキルン炉内壁に設けたリフターにより、燃焼物の燃焼炉内での搬送を制御し、緩慢に燃焼させることで、更に均一に未燃分を燃焼する。
【0093】
第2燃焼炉32における燃焼においては、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1燃焼炉14に供給される原料10の粒子径よりも小さい粒子径に調整された燃焼物を用いることが好ましい。乾燥・燃焼工程後の燃焼物の粒揃えは、平均粒子径10mm以下となるように調整するのが好ましく、平均粒子径1〜8mmとなるように調整するのがより好ましく、平均粒子径1〜5mmとなるように調整するのが特に好ましい。第2燃焼炉32入口での平均粒子径が1mm未満では、過燃焼の危惧があり、平均粒子径10mm超では、残カーボンの燃焼が困難であり、芯部まで燃焼が進まず得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
【0094】
また、第2燃焼炉32での安定生産を確保するためには、平均粒子径1〜8mmの燃焼物が70%以上となるように粒子径を調整しておくのが好ましい。このような調整は、得られる再生粒子の品質を均一にするという観点における実用化可能性に有益である。また、このように分級(粒径の調整)を乾燥・燃焼後に行うと、小粒径の燃焼物を確実に除去することができ、また、処理効率も向上する。
【0095】
外熱キルン炉32の外熱源としては、外熱キルン炉32内の温度コントロールが容易で、かつ長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の熱源が好適であり、したがって、電気ヒーターによる外熱キルン炉32が好ましい。外熱源に電気を使用することにより、炉内の温度を細かく、かつ均一にコントロールすることができ、凝集体の形成、硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する燃焼物の燃焼度合いの制御と、粒揃えとを、安定的に行うことができる。また、電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、燃焼物の温度を一定時間、一定温度に保持することができ、第1燃焼炉14を経た燃焼物中の残留有機分、特に残カーボンを第2燃焼炉32で炭酸カルシウムの分解を来たすことなく限りなくゼロに近づけることができ、例えば重質炭酸カルシウムと比べて低いワイヤー摩耗度で、高白色度の再生粒子を得ることができる。
【0096】
外熱キルン炉32においては、酸素濃度を調整する空気あるいは酸素の供給機構(図示せず)を用いる等して、酸素濃度5%〜20%、好ましくは10%〜20%、より好ましくは10%〜15%となるようにするのが望ましい。外熱キルン炉32内の酸素濃度が5%未満では、燃焼困難な残カーボンの燃焼が進まないおそれがある。
【0097】
外熱キルン炉32における燃焼温度は、好ましくは550℃〜780℃、より好ましくは600℃〜750℃である。第2燃焼炉32では、先に述べたように、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1燃焼炉14よりも高温で燃焼させるのが好ましく、燃焼温度が550℃未満では、十分に残留有機物の燃焼を図ることができないおそれがあり、他方、燃焼温度が780℃を超えると、燃焼物中の炭酸カルシウムの酸化が進行し、粒子が硬くなるおそれがある。
【0098】
外熱キルン炉32における滞留(燃焼)時間は、好ましくは60分以上、より好ましくは60分〜240分、特に好ましくは90分〜150分、最適には120分〜150分が、残カーボンを完全に燃焼させるに望ましい。特に残カーボンの燃焼は炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に燃焼させる必要があり、滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不十分であり、他方、滞留時間が240分を超えると、炭酸カルシウムが分解するおそれがある。また、燃焼物の安定生産を行うにおいては、滞留時間を60分以上、過燃焼防止、生産性確保のためには、滞留時間を240分以下とするのが好適である。
【0099】
外熱キルン炉32から排出される燃焼物の平均粒子径は、10mm以下、好ましくは1mm〜8mm、より好ましくは1mm〜4mmに調整すると好適である。この調整は、例えば、燃焼物を一定のクリアランスを持った回転する2本ロールの間を通過させること等により行うことができる。
【0100】
第2燃焼工程を経た燃焼物は、好適には凝集体であり、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により選別され、湿式粉砕機等を用いた粉砕工程で目的の粒子径に調整された後、燃焼品サイロ38に一時貯留され、再生粒子として顔料や填料等の用途先に仕向けられる。
【0101】
なお、以上では、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他の製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とすることなどもできる。
【0102】
〔スラリー化工程〕
以上の脱水工程、乾燥・燃焼工程、燃焼工程等を経て得られた再生粒子は、水中に懸濁して再生粒子のスラリーにするのが好ましい。
再生粒子は、後工程である粉砕工程において、効果的な粉砕を図るために、ミキサー等を使用して水に溶解しながら粉砕するのが好ましいが、この際の溶解は、スラリー濃度が15〜50%、好ましくは20〜40%となるように行い、また、このスラリー化にあたっては、粉体の状態の再生粒子に硫酸カルシウム二水和物を混合し、又は溶解と同時に硫酸カルシウム二水和物等を混合させると好適である。再生粒子をスラリー化した後に硫酸カルシウム二水和物等を添加すると、既に水和硬化物質の硬化反応が開始されており、水和硬化物質の硬化反応抑制という効果が得られないか、又は効果が低下するおそれがある。また、硫酸カルシウムを含有させることで、燃焼物(再生粒子)を極めて均一に水に溶解することができる。
【0103】
硫酸カルシウム二水和物は、燃焼物(再生粒子)100質量部に対して、0.5〜10質量部含有させると好適である。硫酸カルシウム二水和物が0.5質量部未満の場合には、水和硬化物質との接触確率が低く、硬化反応抑制効果が得られないおそれがある。他方、10質量部を超えても、硬化反応抑制効果が頭打ちとなってしまうおそれがある。硫酸カルシウムの含有量は、2〜7質量部が品質、操業性の面でより好適である。水に溶解した再生粒子スラリーは、用途に応じて粉砕機等にて微粒子化し、粒度の調整を行うことになる。
【0104】
硫酸カルシウムは、市販されているものを購入して使用できる他に、製紙工場等で使用されている塩化カルシウムと希硫酸とを用いて硫酸カルシウム二水和物を反応生成させて使用することもできる。これは、塩化カルシウムを水に溶解し、希硫酸を添加させると硫酸カルシウム二水和物が生成沈殿することから可能である。
【0105】
また、産業廃棄物として処理されている廃石膏ボードを回収し、利用することもできる。資源循環の面から廃石膏ボードを利用するのも好適であるが、費用面等を考慮した上で適宜選択できる。
【0106】
〔粉砕工程〕
本形態の再生粒子の製造方法においては、公知の分散・粉砕装置等を用いて、再生粒子を適宜必要な粒子径に微細粒化することで、塗工用の顔料、内添用の填料として好適に使用することができる。
【0107】
前記燃焼工程、スラリー化工程を経た、好ましくは15〜50%の濃度の再生粒子は、好適には粉砕機にて微粒子化する。微粒子化された再生粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm〜10.0μm、より好ましくは0.3μm〜5.0μm、特に好ましくは0.5μm〜2.0μmである。平均粒子径が0.1μm未満では、再生粒子中に内在するアルミン酸カルシウム等の水和硬化物質が露出し、スラリーの凝集が生じるおそれがあり、また、比表面積が増大して、塗工用顔料用途において、塗料中のバインダー成分が過剰に必要となり、コストアップ要因になると共に、塗工層強度の低下を招き、製造した塗工紙の印刷時の紙紛発生等品質に影響を及ぼすおそれがある。他方、平均粒子径が10.0μmを超えると、粒度分布がブロードなピークを描き、塗工用顔料用途において、塗工紙表面の光沢度が低下し、印刷時の見映え等の品質低下に繋がるおそれがある。
【0108】
なお、粉砕工程後における再生粒子の粒子径は、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計:日機装製)により測定した体積平均粒子径である。
【0109】
〔その他の工程〕
得られた再生粒子スラリーは、そのままではpHが12以上とアルカリ性を呈し、塗工用顔料用途における塗工液調整工程で他の薬品と反応して品質低下をまねくおそれがあるため、再生粒子中の酸化カルシウムを炭酸カルシウムに戻し、pHを低減させるために、乾燥・燃焼工程や燃焼工程において排出された排ガス中の二酸化炭素を利用して、例えば9〜11にpH調整すると好適である。このpH調整は、排ガスだけでなく市販の二酸化炭素ガスを利用、併用することもできる。
【0110】
pH調整を完了させたスラリーは、分散工程に送られる。分散装置としては、例えば、ミキサー、コーレス分散機、ボールミルなどから、適宜選択して使用することができる。この際の再生粒子の濃度は、50〜70質量%、好ましくは55〜70質量%、より好ましくは60〜65質量%である。スラリー濃度が50質量%未満であると、例えば、塗工顔料用途における塗工液の低濃度化、凝集抑制剤の効果低減や、再生粒子スラリー中の粒子分の沈殿等が生じ、再生粒子スラリーの品質安定性が低下するおそれがある。他方、スラリー濃度が70質量%を超えると、スラリーが増粘・固化するおそれがあり、また、脱水に要するエネルギーの増加が問題となる。
【0111】
本形態において、再生粒子のいっそうの品質安定化を図るためには、被処理物の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることで、より品質の安定化を図ることができる。
【0112】
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロス(脱水物)を造粒することが好ましく、更には造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用できるが、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
【0113】
本形態の製造方法における原料としては、再生粒子の原料と成り得るもの以外は予め除去しておくことが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化により微粒子の白色度低下の起因物質になるため、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが推奨され、各工程を鉄以外の素材で設計またはライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
【0114】
本形態の再生粒子の製造方法による再生粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合であるのが好ましく、40〜82:9〜30:9〜30の質量割合であるのがより好ましく、60〜82:9〜20:9〜20の質量割合であるのが特に好ましい。カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含ませることで、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑えられるため、脱水工程のおける脱水性が良好であり、乾燥・燃焼工程における未燃物の割合や、燃焼工程における焼結による過度の硬さを生じる恐れを低減できる。
【0115】
カルシウム、シリカ及びアルミニウムの質量割合を調整する方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが本筋ではあるが、乾燥・燃焼工程、燃焼工程において、出所が明確な塗工フロスや調成工程フロスをスプレー等で工程内に含有させる手段や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる手段にて調整することも可能である。例えば、脱墨フロスを主原料に、再生粒子中のカルシウムの調整には、中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調整には、不透明度向上剤としてホワイトカーボンが多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
【0116】
また、本形態の再生粒子の製造方法による再生粒子は、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製(型式 TG/DTA6200))を用い、測定条件を(1)昇温速度25〜1050℃:20℃/min、(2)供給ガス:空気(酸素濃度約5vol%)、(3)供給ガス流量:約48ml/minにて測定した示差熱分析において、700℃近傍で生じる炭酸カルシウムの分解(酸化カルシウムへの変化)における減量(率)が50%以上となるように、被処理物を燃焼制御することで、より正確にカルシウム成分の酸化の進行を抑制し、粒子が硬くなることを防止することができる。
【0117】
(第2燃焼炉32のリフター(堰))
先に採用理由と共に述べたように、第2燃焼炉32内の内壁には、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料(被燃焼物)の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
【0118】
そして、特に被燃焼物の装入側から排出側に向けて、螺旋状リフターと、軸心と平行な平行リフターとをこの順で配設するのが望ましい。この構成によると、装入側から投入された被燃焼物が、まず螺旋状リフターにて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下する間に、被燃焼物に起因する有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触し、引き続いて平行リフターにて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触するため、熱交換効率よく被燃焼物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフターにて平行リフターに送り込まれる被燃焼物の量がコントロールされることで、平行リフター部分における被燃焼物の持ち上げ・落下が適正に行われ、被燃焼物の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷の恐れがないことから、被燃焼物の純度の低下がなく、その生産能力も向上する。
【0119】
また、螺旋状リフター及び平行リフターを、例えば耐熱性を有するステンレス鋼板などの金属製とすると、比較的温度が低いので高価な耐熱材料を用いなくても十分に耐久性と強度を確保できるとともに、耐火物製のリフターなどに比して伝熱効率が高いので、一層熱効率を向上することができる。
【0120】
上記の実施の形態例を図2によって説明すると、被燃焼物は、図2では、第2燃焼炉32の左側から装入され、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成され、他端側から排出される。
【0121】
第2燃焼炉32は、円筒状の外筐32Aの内面に耐火キャスタブルや耐火レンガから成る耐火壁32Bを内張りして構成されている。第2燃焼炉32の耐火壁32Bの内面には、投入(装入)側において、第2燃焼炉32の軸心に対して45・〜70・の傾斜角で傾斜した複数条(図示例では8条)の螺旋状リフター4が等間隔に突設され、さらにこの螺旋条リフター4の配設領域の他端側に、第2燃焼炉32の軸心と平行な適当長さの平行リフター5Aが周方向に等間隔置き複数(図示例では8つ)かつ軸心方向に複数列(図示例では8列)千鳥状に配列して突設されている。
【0122】
また、平行リフター5Aは、図示の右側に排出部に向かって連続的に形成されている(図示せず)。この場合、装入側では低温であるので、ステンレス鋼板などの耐熱性と耐腐食性のある金属板にて形成するのが望ましく、排出部側では相対的に高温となるので、排出側の平行リフター5Aは耐火物製とすることができる。
【0123】
本実施形態では、螺旋状リフター4はその長手方向に適当間隔おきに配設した取付けブラケット6に固定されて配設されている。また、各平行リフター5Aは、それぞれの取付けブラケット5Bに固定されて配設されている。なお、必要ならば、螺旋状リフターまたは平行リフターの一方のみを設けることでもよい。
【0124】
〔塗工層〕
次に、塗工液の調製工程を説明する。
本形態において、塗工層を構成する顔料に占める再生粒子からなる顔料の割合は、塗工層を単層とするか、多層とするか、あるいは多層塗工層の何処へ再生粒子からなる顔料を使用するか、さらには目的とする塗工紙の目標品質等に応じて適宜調節しうるもので、特に限定するものではない。しかしながら、本発明の目的とする高不透明度の塗工紙を得るには、塗工層を構成する全顔料のうち、10重量%以上、好ましくは20重量%以上が再生粒子からなる顔料となるように配合することが望ましい。また、再生粒子からなる顔料の使用割合の上限は、例えば、下塗り塗工層に配合する場合には100重量%も可能であり、一方、単層塗工層あるいは多層塗工層の最外層に再生粒子からなる顔料を配合する場合には、塗工紙の不透明度や白色度等の品質を勘案して、当該塗工層を構成する全顔料のうち50重量%以下が再生粒子からなる顔料となるように配合するのが好ましい。
【0125】
再生粒子からなる顔料と併用しうる顔料としては、通常の印刷用紙を製造する場合に使用されるカオリン、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、シリカ、活性白土、タルク、サチンホワイト、レーキ等の無機顔料、およびプラスチックピグメント等の有機顔料が挙げられる。この際、原紙の白色度と再生粒子からなる顔料を含む塗工層を構成する全顔料の白色度との差の絶対値が、10ポイント以内となるように配合することで、高不透明度で白色度むらの少ない塗工紙を得ることができる。
【0126】
本発明における塗工紙には、新聞用紙も包含される。新聞用紙の白色度は一般に50%程度であるものの、軽量化した新聞用紙の不透明度は90%以上であることが求められる。従って、このような新聞用紙の不透明度対策として、再生粒子からなる顔料と接着剤を主成分とする処理層(塗工層)を、新聞用原紙に設けることもできる。なお、新聞用紙では不透明度が最も重要な紙質であるため、原紙の白色度と塗工層を構成する全顔料の白色度の差が±10ポイントの範囲に収まらないこともある。
【0127】
本発明の印刷用塗工紙において、顔料と共に使用される接着剤としては、特に限定するものではないが、例えば、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類:スチレン・ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体/または共重合等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合等のビニル系重合体ラテックス、或いはこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ可溶性或いはアルカリ非溶解性の重合体ラテックス:ポリビニルアルコール、オレフィン・無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂等の合成樹脂系接着剤:陽性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶性澱粉等の澱粉類:カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等、通常の塗工紙用の接着剤が適宜選択して使用し得る。
【0128】
接着剤の配合割合は、固形分比で顔料100重量部に対して、5〜25重量部、より好ましくは10〜20重量部程度である。なお、顔料塗工組成物中には必要に応じて分散剤、増粘剤、保水剤、流動変性剤、消泡剤、離型剤、耐水化剤滑剤、青味剤、防腐剤、滑剤、染料、pH調節剤等の各種助剤を適宜配合することも出来る。
【0129】
本発明の印刷用塗工紙において、特に、再生粒子からなる顔料を最外層となる塗工層に使用する場合には、蛍光染料を再生粒子からなる顔料に対して0.3〜3.0重量%添加することが好ましい。
【0130】
かかる蛍光染料は、340〜380nm付近の光を吸収し、その吸収エネルギーを430〜440nm付近の可視部で蛍光発光して塗工紙の白色度を高める染料である。具体的には、下記の化合物系が例示できる。これらは単独で用いても良いが、2種類以上を配合してもよい。4,4'−ビス(4,6−ジ置換−1,3,5−トリアジニル−2−アミノ)スチルベン−ジスルホン酸系、α,β−ビス(ベンズオキサゾリル)エチレン系、アルコキシナフタル酸−N−置換イミド系、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、チオフェン系等の構造を有する有機化合物を挙げることができる。
【0131】
本発明では、上述の如く、原紙の片面に顔料塗工層を2層以上形成することも可能であり、塗工層に平滑性、光沢、印刷インクの受理性などの機能を付与することができるため、2層以上(通常は2層)の塗工層を形成するのが好ましい。また、塗工層を原紙の両面に形成することも可能である。この際、どの層に再生粒子からなる顔料を添加しても差し支えない。なお、本発明では、使用する再生粒子からなる顔料の白色度が60%を下回らないことが好ましいが、これは、これよりも白色度が低い場合には蛍光染料の添加によっても所望する白色度を有する印刷用塗工紙を得難いためである。蛍光染料は多層塗工の各塗料に分割添加することも可能である。
【0132】
顔料塗工層を形成するための塗料の固形分濃度は、一般に40〜75重量%程度であるが、操業性を考慮すると45〜70重量%の範囲が好ましい。
【0133】
上記の如き条件で調製された塗料は、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーターカーテンコーター、ダイスロッドコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ゲートロールコーター、サイズプレス等公知の塗布装置を設けたオンマシン或いはオフコーターによって塗布する。なお、光沢度の高い塗工紙に仕上げる場合はブレードコーターやロッドブレードコーター等を採用するのが好ましい。
【0134】
塗料の原紙への塗工量は、通常、乾燥重量で片面あたり2〜50g/m2 程度の範囲で適宜調節することができる。なお、かかる塗工量は、多層塗工を含めた合計の塗工量である。顔料塗工層は、乾燥した後にスーパーキャレンダー、グロスキャレンダー等の仕上げ装置を経て仕上げられる。
【0135】
〔原紙〕
原紙を構成するパルプ原料には古紙パルプが使用でき、原料古紙としては、新聞古紙、印刷古紙、雑誌古紙、OA古紙等が挙げられる。この他にバージンパルプも使用することができ、広葉樹材、針葉樹材の制限はなく両者の原料から得られるパルプを任意に配合できる。また、かかるパルプの製造方法においても、蒸解液によって脱リグニンされる化学的パルプ化法であるクラフトパルプ(KP)やサルファイトパルプ(SP)の他、機械的に砕木される砕木パルプ(GP)、リファイナーパルプ砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)等の機械パルプ化法の何れでもかまわない。なお、古紙パルプを配合する場合には、任意の配合率にすることができるが、原紙の白色度と再生粒子からなる顔料を含む塗工層を構成する全顔料の白色度との差の絶対値が、10ポイント以内になるように配合するのが白色度むらのない塗工紙を得るうえで望ましい。
【0136】
一般に、古紙から脱墨パルプを製造する方法としては、(印刷)古紙の離解工程、アルカリソーキング(アルカリ浸漬)工程、フローテーション工程、洗浄工程を適宜組合せて処理し、パルプとインキを分離している。本形態においては、このような脱墨工程に、さらに酵素叩解処理された酵素叩解パルプを用いることが好ましい。
【0137】
酵素叩解処理が酵素として、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、及び、β‐グルコシダーゼを含む複合セルラーゼと、キシラナーゼを含むヘミセルラーゼと、を含む複合酵素を含むことで、繊維表面のセルロースを叩解し、繊維間の強度を高める。
【0138】
従来の古紙パルプに用いられる酵素は、脱墨処理工程における脱インキの効率向上を目的に、脱インキ処理工程の中でも特にフローテーション設備にて添加されることが慣用技術と紹介されている。
【0139】
本件発明者らは、パルプ繊維表面のセルロース構造を酵素により分解し、パルプ繊維表面にあたかも毛羽立たせる酵素処理を施すこと、特に脱インキ処理を施した後工程の製紙工程への流送ポンプ設備又は流送ポンプ前段のストックタンクに添加することで、効率的にパルプ繊維の毛羽立たせが行え、古紙パルプの強度向上効果が得られることを見出し、本形態の一端を構成することができたものである。
【0140】
特に、従来の脱墨工程で使用される酵素と異なり、流送ポンプまたはストックタンクにおける酵素叩解においては、理由は定かではないが、緩慢な持続性の高いセルロース分解を行うことができる、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、及び、β‐グルコシダーゼを含む複合セルラーゼと、キシラナーゼを含むヘミセルラーゼと、を含む複合酵素が最も好ましいことを見出している。
【0141】
更には、本発明者らの鋭意検討により、古紙パルプの製造工程の古紙パルプ完成前工程であるストック工程、及び、搬送工程の少なくとも一方で、対象パルプに酵素を添加することで、古紙に含まれる機械パルプやアニオン性物質、懸濁コロイド物質などの影響を受けずに安定してパルプ強度の向上を図ることができる古紙パルプの製造方法を見出したものである。
【0142】
ここで、酵素を添加する際の対象パルプの温度は、30〜55℃とするのが好ましく、40〜50℃とするのがより好ましい。通常の化学反応であれば温度が高くなるほど活性化するが、酵素の場合は至適温度の上限である55℃を超えると熱変性を起こし活性が失われる。酵素を添加する際の対象パルプの温度が30℃未満では、酵素が反応活性を示し難いため、酵素添加によるパルプ強度向上効果が得られない。
【0143】
また、酵素を添加する際の対象パルプのpHは、通常5.5〜8.5、好ましくは6.7〜8.0である。pH5.5を下回り又はpH8.5を上回ると、酵素活性部位の立体構造が変化して基質(繊維中のセルロース、ヘミセルロース)との結びつきが低下し、酵素添加による効果が低下する。また、pH8.5を上回ると、得られる古紙パルプを原料パルプとして用いる場合に濾水性が低下して脱水性が悪くなり操業性が低下するとともに、抄紙工程で一般的に使用される凝集剤や凝結剤の効果阻害を招く場合がある。さらに、pHが、5.5を下回ると、古紙パルプ中に含有する炭酸カルシウムの分解を生じ、二酸化炭素の発生、水酸化カルシウムの発現によるスケール発生の問題が生じるとともに、凝集剤や凝結剤の効果阻害を招く場合がある。
【0144】
本形態において、酵素の添加量は、対絶乾パルプ10〜1000質量ppmとするのが好ましく、25〜500質量ppmとするのがより好ましい。添加量が10質量ppm未満では効果が得られないおそれがあり、他方、1000質量ppmを超えて添加してもさらなる効果の改善は少なく、不経済であり、系内に汚れが出るおそれもある。
【0145】
さらに、酵素としては、水で膨潤した非結晶セルロース(水和セルロース)をランダムに切断するエンドグルカナーゼ(EG)、結晶セルロースの非還元末端から順次切断するセロビオヒドロラーゼ(CBHI)、EG、CBHI,IIで切断されたセロオリゴ糖を単糖まで分解するβ‐グルコシダーゼを含む複合セルラーゼと、キシラナーゼを含むヘミセルラーゼと、を含む複合酵素を使用するのが好ましい。この複合酵素は、単糖まで分解する生成速度が遅いため繊維の力学的強度を低下させることなく安定してセルロース繊維の改質を行うことができ、本形態においては、パルプ強度の改善、繊維の改質も期待できる。パルプ中に酵素を添加すると、繊維の細胞壁に微細なフィビリル化(毛羽立ち)を生じさせるとともに、離解工程や除塵工程等の物理的な剪断力により生じた繊維のフィブリルに対し、酵素が選択的に作用し、幾度となく繰り返され脆くなっている古紙パルプ繊維に対しても、繊維壁に生じたフィブリル状態を維持しながら、さらにミクロ状にフィブリル化する効果が発現すると考えられる。そして、このフィブリル化した微細繊維は比表面積が広いので、必然的に水素結合数も多くなり、紙になるときの繊維間結合が強くなることで接着性能に優れ、繊維間接着面積の増加、紙の密度上昇などにより機械的強度が向上する。また、物理的な剪断力を受け難い長繊維に対してもフィブリル化を醸し出すことができ、微細繊維が接着するため、得られる古紙パルプのパルプ強度向上を図ることができる。
【0146】
また、一般に、酵素は、1つの基質にしか反応しないという基質特異性、及び、1つの反応のみに限局され、その他の副反応を惹き起こさないという反応特異性を有する。したがって、本形態の好適な製造方法においては、複合された酵素を用い、さらには、本発明者等の知見では、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、及び、β‐グルコシダーゼを含む複合セルラーゼと、キシラナーゼを含むヘミセルラーゼと、を含む複合酵素を使用することで、セルロース及びヘミセルロースのみと反応し、サイズ剤やパルプ強度剤等の他の薬品と反応し難い特性を有することから、サイズ剤やパルプ強度剤等の他の薬品の効果を阻害するおそれがない。
【0147】
また、前記の複合酵素は、ノニオン物質であり、界面活性剤や無機イオン等は含有していないため、ロジンサイズ剤の性能に影響を与えるおそれがない。逆に、以上の複合酵素を添加することによって、ロジンサイズ剤の使用量を削減できる可能性、古紙由来の持ち込み灰分が高い古紙パルプであっても、高いパルプ強度、高白色度の古紙パルプが得られる可能性を有する。
【0148】
酵素として前記の複合酵素を使用する場合、より好適には、複合酵素に用いられるそれぞれの酵素の成分含有量が20%(対全酵素質量)以下であることが好ましい。酵素の多用は、パルプ繊維を構成するセルロースの切断につながり、かえってパルプ繊維の微細化、パルプ強度の低下を招くためである。
【0149】
本形態の古紙パルプの製造方法においては、古紙を離解工程でパルパーにて離解してパルプスラリーとする。このパルプスラリーは、除塵工程でスクリーンにて除塵し、脱墨工程で高級アルコール、脂肪酸等の脱墨剤を添加した後フローテーターによるフローテーション処理にてインクを浮遊分離して除去し、次いで精選工程でクリーナーにて精選した後、漂白工程で過酸化水素、ホルムアミジンスルフィン酸等の漂白剤、珪酸ソーダ等の緩衝剤及び苛性ソーダ等のアルカリ性薬品を添加した後アルカリソーキングタワーにて漂白及びアルカリソーキングを行い、続く脱墨工程でフローテーターにてインクをフローテーション処理して分離除去する。
【0150】
これらの工程に続き、洗浄工程及び脱水工程では、脱水機にて洗浄液たる水を供給しながら洗浄及び脱水を行い、得られた脱水パルプをストック工程に備わるストックタワーに送る。ストックタワーから脱水パルプを投入し、この投入した脱水パルプを希釈水で希釈化して、スラリーとする。この希釈化したパルプのスラリーは、搬送工程を介して図示しない抄紙工程に流送する。本形態において、搬送工程には、内部をストックタワーからの希釈化されたパルプスラリーが流送される管路と、この管路の途中に設けられて希釈化されたパルプスラリーを流送する流送ポンプとが備わる。
【0151】
ここで、本形態の古紙パルプの製造方法においては、ストック工程、及び、搬送工程の少なくとも一方においてパルプに酵素を添加する。この酵素を添加する場所としては、各種考えることができるが、代表的には、ストックタワーの上段部内に添加する形態、管路を通すなどしてストックタワーの下段部に添加する形態、管路を通すなどして流送ポンプ上流の管路内に添加する形態の単独又は組み合わせが考えられる。例えば、パルプ強度をタイムリーに把握して添加量を最適としたい場合は、抄紙工程とのタイムラグが少ない形態が好ましい。
【0152】
パルプ濃度が高い段階で酵素を添加する際のパルプ濃度は、脱水機によって、好ましくは15〜35%、より好ましくは20〜30%に調節する。パルプ濃度が15%を下回ると添加した酵素が希釈化されて酵素添加による効果が発現し難くなるおそれがある。そこで、酵素を対パルプ原料に対し比較的多めに添加する必要があるが、酵素を多めに添加するとパルプ強度の低下につながるおそれが生じる等、品質のバラツキが生じやすい問題が生じる場合がある。他方、パルプ濃度が35%を上回ると、パルプと酵素との均一な分散、反応が生じ難くなり、パルプ強度のムラが生じるおそれがある。
【0153】
以上に対し、パルプ濃度が低い段階で酵素を添加する際のパルプ濃度は、希釈水の量を調節することによって、好ましくは2.5〜5.0%、より好ましくは3.0〜4.5%に調節する。パルプ濃度が2.5%を下回ると酵素の効果が発現し難くなり、また、原料パルプの流送濃度低下により抄紙工程での作業性低下を招くおそれがある。他方、パルプ濃度が5.0%を上回ると、酵素とパルプとの接触反応が阻害され、パルプ強度向上効果にムラが生じるおそれがあるとともに、フィブリル化された繊維が脱落しやすくなり、かえって強度低下の要因となる。
【0154】
酵素と対象パルプとの反応時間は、好ましくは0.3〜2.5時間、より好ましくは0.5〜2.0時間である。0.3時間未満であると、反応が十分に進まないおそれがあり、他方、2.5時間を超えると反応が過剰に進み、かえってパルプ強度の低下を招くおそれがある。
【0155】
本形態において、古紙は、使用済みの紙製品であり、一般の板紙、紙、板紙の裁断屑などであり、損紙も含まれるが、通常、印刷古紙が主体である。
【0156】
以上のように、本形態においては、離解工程、除塵工程、脱墨工程、漂白工程、洗浄工程、脱水工程、ストック工程、及び、搬送工程を経た古紙パルプが、抄紙工程に供される。そして、抄紙工程に供される前のストック工程及び搬送工程の少なくとも一方において、ストックタンク内のパルプ(脱水パルプ)に又は搬送されているパルプ(通常、パルプスラリー)に酵素タンクから酵素を添加すると好適である。
【0157】
本形態で使用する原紙の填料としては、通常の紙製造に使用される重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子から適宜選択して使用できるが、本形態の塗工層に使用する再生粒子からなる顔料を用いることもできる。勿論、これらのうちの2種以上を併用することもできる。填料の添加量は全紙料の固形分に対して1〜30重量%程度が望ましい。また、パルプと填料を含む紙料中には、必要に応じて、紙力増強剤、サイズ剤、染料、蛍光染料、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等を適宜添加することもできる。
【0158】
かかる紙料を用い、公知の抄紙機によって抄紙して原紙が製造される。原紙には、必要に応じて、澱粉などの表面処理剤をサイズプレスすることもできる。原紙の坪量については特に限定するものではないが、通常、30〜100g/m2程度の坪量の原紙を用いる場合に、本発明の所望する効果が顕著に発揮される。勿論、この範囲を越えたカードや板紙等の厚紙に塗工することも可能である。
【実施例】
【0159】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
まず、表1及び表2に記載の条件で再生粒子を製造した。得られた再生粒子の品質も表1及び表2に示した。
【0160】
【表1】

【0161】
【表2】

【0162】
なお、表中の測定条件及び品質評価は、以下のとおりとした。
【0163】
(未燃率)
電気マッフル炉を予め600℃に昇温後、ルツボに試料を入れ約3時間で完全燃焼させ、燃焼前後の重量変化から算出した。
(ワイヤー摩耗度)
プラスチックワイヤー摩耗度(日本フィルコン製 3時間)、スラリー濃度2重量%で測定した。
(生産性)
原料の脱水効率、生産性、粉砕に必要な電力を4段階評価し、最も効率の良かった条件を◎、良かったものを〇、水効率、生産性、粉砕のいずれかに問題を見出したものを△、実操業困難なものを×とした。
(品質安定性)
所定の方法で得られた微粒子の、白色度、粒子径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、変動が少ない順にランク付けを行い、上位3位までを◎、4位から12位を〇、13位から14位を△、それ以下を×とした。
(見た目)
目視で再生粒子の色を比較判断し、区分した。
【0164】
次に、この再生粒子を使用して塗工紙を製造した。製造条件及び得られた塗工紙の物性を表3及び表4に示した。
【0165】
【表3】

【0166】
【表4】

【0167】
なお、表中の製造条件及び評価方法は、下記のとおりとした。
【0168】
<古紙パルプ>
新聞とチラシを含む混合古紙を、予め離解処理した。離解処理に用いる離解設備としては、例えばパルパーが例示される。パルパーには特に限定がなく、どのような構造のものでも用いることができるが、例えば、タブ内に原料と水とを投入し、タブ下部又は側面に設けたローターの攪拌力によって離解を行うタブ式パルパーが好適であり、タブ式低濃度パルパー(処理濃度:3.0〜5.5質量%)、タブ式中濃度パルパー(処理濃度:5.5〜13.0質量%)、タブ式高濃度パルパー(処理濃度:13.0〜20.0質量%)のいずれも使用可能である。なお、タブ式パルパーの代わりに、より高濃度での離解を目的とした、異物排出能力に優れた横型ドラム式パルパー等のドラム式パルパーも使用可能であり、未離解の紙そのものに強い機械的せん断力を加える離解方式のパルパーでなければよい。また、バッチ式パルパー及び連続式パルパーのいずれも使用可能である。本実施例及び比較例では、バッチ式パルパーを使用した。
【0169】
離解処理においては、温度70℃で、脱墨剤の添加量は、対パルプ換算で固形分として、苛性ソーダ0.8%、珪酸ソーダ2.5%、過酸化水素1.2%、界面活性剤0.1%とした。次に、離解処理設備から取り出した離解パルプを希釈水で希釈し、この希釈懸濁液を洗浄機で洗浄し、濃度25%に脱水して離解パルプを得た。次いで、かかる離解パルプをパルプ濃度1%に希釈し、フローテーターに入れ、脱墨した。
【0170】
脱墨後のパルプに、対パルプ換算で固形分として、苛性ソーダ2.0%、珪酸ソーダ5.0%、界面活性剤0.15%、過酸化水素1.5%を順次添加し、パルプ濃度10%にて過酸化水素漂白を過酸化水素漂白塔で60℃、120分間実施した。得られた、過酸化水素漂白後パルプに、表中に記載の条件で酵素を添加し、酵素叩解パルプを得た。
【0171】
<原紙>
次に、上記で得た古紙パルプと、白色度が83%で不透明度が78%の広葉樹晒しパルプ(自製LBKP)とを、表3に記載の割合で配合し、さらに対パルプ換算で固形分として、表3に記載の填料、サイズ剤(ファイブラン81/王子ナショナル社)、カチオン化澱粉(エースK100/王子コーンスターチ社)、アクリルアマイド系高分子(ハイモロックNR12MLS/ハイモ社)を添加して紙料とし、長網抄紙機で坪量48.0g/m2の塗工用原紙を製造した。
【0172】
なお、表中の填料の種類について、製造例は表1及び表2の製造例番号を示すものであり、重質炭酸カルシウムとしては、(商品名;FMT−97、ファイマテック社製)を使用した。
【0173】
<顔料塗工層用塗液>
上記製造方法で得られた粉砕処理後の再生粒子、軽質炭酸カルシウム及びクレーを表3に記載の割合で配合したスラリーに、酸化澱粉(エースA/王子コーンスターチ社)を表4に記載の配合割合(固形分換算)、スチレンブタジエン共重合体ラテックス(JSR−0613/ジェイエスアール社)を表4に記載の配合割合(固形分換算)で加えて、塗液を得た。
【0174】
<印刷用塗工紙>
前記の古紙パルプを含む塗工用原紙に、上記で得られた顔料塗工層用塗液を乾燥固形分で片面あたり表4に記載の塗工量となるように卓上ブレードコーターにて両面塗工し乾燥して印刷用塗工紙を得た。
【0175】
「坪量」とは、JIS−P8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した値である。
【0176】
「熱水抽出pH」とは、JIS P 8133に記載の「紙、板紙およびパルプ−水抽出液pHの試験方法」に基づいて測定した値である。
【0177】
「白色度(%)」とは、JIS−P8123に記載の「紙及びパルプのハンター白色度試験方法」に準拠して測定した値である。
【0178】
「白紙不透明度」とは、印刷時の裏抜けが発生し難いという点から不透明度が高いものが求められるが、JIS−P8138に記載の「紙の不透明度試験方法」に準拠して測定した値である。
【0179】
「印刷不透明度」とは、次の方法によって求めた値である。
RI印刷適正試験機を使用し、墨色インクのインク量を変えて印刷を行った。印刷面の反射率が10%のときの、印刷前の裏面反射率(印刷面と反対側の面の反射率)に対する印刷後の裏面反射率の割合を以下の式に基づいて求めた。なお反射率の測定には、分光白色度測色機(スガ試験機(株)製)を使用した。
印刷不透明度(%)=(印刷後の裏面反射率/印刷前の裏面反射率)×100
【0180】
「不透明度差」とは、前記印刷不透明度と白紙不透明度との差異の絶対値である。
【0181】
「光沢度(%)」とは、JIS−P8142に定める75度鏡面光沢度試験方法に基づき測定した値である。
【0182】
「表面強度」とは、紙試料の表面にRIテスター(株式会社明製作所製)で、インキタック6(東洋インキ製造株式会社製)を用いて印刷した紙について、10cm2あたりの塗工層の状態を目視にて観察して点数評価したものである。その評価基準は「1」の「塗工層の剥れがかなり有る」、「2」の「塗工層の剥れが有る」、「3」の「塗工層の剥れがやや有る」、「4」の「塗工層の剥れが僅かに有る」、「5」の「塗工層の剥れが殆どない」の5段階評価とした。なお、実用上の最低限度のグレードは「3」である。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明は、脱墨フロスを主原料とし、所定の製造方法にて得た再生粒子を、塗工用顔料として用いた塗工層を有する塗工紙として適用可能である。
【符号の説明】
【0184】
10…原料、14…内熱キルン炉(第1燃焼炉)、32…外熱(電気)キルン炉(第2燃焼炉)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程して得た再生粒子を、塗工用の顔料として用いた塗工層を有する塗工紙であって、
前記燃焼工程が、第1燃焼炉と第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する、後の第2燃焼炉とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、
前記第1燃焼炉では、300℃以上〜500℃未満で燃焼処理が行われている、
ことを特徴とする塗工紙。
【請求項2】
前記第1燃焼炉が、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉であり、前記脱水工程後の原料の水分率が40%以上とされている、
請求項1記載の塗工紙。
【請求項3】
前記内熱キルン炉内の酸素濃度が0.2%〜20%となるように、300℃以上500℃未満の熱風が吹き込まれている、
請求項1又は請求項2記載の塗工紙。
【請求項4】
前記第2燃焼炉が、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉であり、前記キルン炉内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び軸心と平行な平行リフターの少なくとも一方が配設されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項5】
塗工紙基材の原料パルプとして、古紙パルプが主原料として用いられ、当該古紙パルプが複合酵素によって酵素処理された酵素処理古紙パルプである、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗工紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−236155(P2010−236155A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87288(P2009−87288)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】