説明

塗工紙

【課題】米坪が85〜95g/mとA2グレード中、米坪が低い塗工紙でありながら、米坪が10g/m以上高い塗工紙と比較して、十分な紙厚を有し、白色度及び白紙光沢度が良好であり、加えて印刷適性及び剛性(腰)が低下しない塗工紙を提供すること。
【解決手段】基紙上に、顔料および接着剤を含む塗工層を設けた塗工紙であって、米坪が85〜95g/m、紙厚が75〜85μm、白紙光沢度が65%以上であり、前記塗工紙をJIS P 8220:1998「パルプ−離解方法」で離解して得られたパルプ繊維を、繊維長0.05mmごとに分類して得られる繊維長分布曲線において、繊維長0.10mm以上0.65mm未満の範囲に、最も大きな値を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工紙において1斤量下(約15g/m低減)であっても見栄えが低下せず、白色度、白紙光沢度、剛度及び印刷適性に優れた塗工紙に関する。特に、米坪が85〜95g/mの厚物塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源化による環境負荷の低減、二酸化炭素排出量の削減の取り組みから、紙分野においては、従来と同程度の品質(白色度、白紙光沢度、剛度)でありながら、より軽量である紙が求められている。塗工紙分野においては、高精細な印刷物を得るために印刷光沢度や不透明度についても満足する必要がある。
【0003】
塗工紙は、塗工液の塗工量や塗工層表面の平坦化処理の度合い、要求品質に応じて、アート紙(A1グレード)、塗工紙(A2グレード)、軽量塗工紙(A3グレード)、微塗工紙に分類され、A1グレードの塗工紙は、高級美術書や、雑誌の表紙、口絵、カレンダー、ポスター、ラベル、煙草包装用などの、高精細な印刷を要求されるものに使用され、A2グレードの塗工紙はカタログ、パンフレット等の見栄えが必要とされる商業印刷等に使用され、A3グレードの塗工紙および微塗工紙は、チラシ等の商業印刷等に利用されている。
【0004】
近年の不況下において、より安価な塗工紙に対する要求が高くなっている。より安価な紙とは、単位面積あたりの重量(米坪)が少ない紙である。しかしながら単に紙の米坪を低下させると、特に紙の厚み(紙厚)、剛性(紙腰)が低下する問題があり、さらには見栄え(白色度および白紙光沢度)、印刷適性も低下する。
【0005】
特にA2グレードの塗工紙においては、現在84.9g/m、104.7g/m、127.9g/m、157g/mの米坪が一般的であるが、これら厚物の塗工紙においては、例えば104.7g/mの塗工紙の代替として84.9g/mを使用し、米坪を約20g/m低減すると、上述した紙の厚み、剛性(紙腰)が大幅に低下しやすく、また、見栄え(白紙光沢および白色度)、印刷適性も低下する。
【0006】
このため、これら従来の米坪製品と比較して、厚み、剛性、見栄え(白紙光沢および印刷光沢)さらには印刷適性が同程度でありながら、米坪を低減した塗工紙に対する要求が高くなっているが、上記品質を維持したまま単に米坪を低減する方法では、米坪を約5g/m程度低減することが限界であった。
【0007】
塗工紙の見栄えと白紙光沢度を向上させる技術としては、塗工層に金属ロールや弾性ロールからなる平坦化設備にて平坦化処理(カレンダー処理)を施して塗工紙の印刷面を平坦にする方法が一般的だが、この方法によると、塗工紙が潰れやすくなり、紙厚が低下するだけでなく剛性も低下する。
【0008】
紙厚の低下を防止する技術としては、嵩高剤を含有させて紙厚を向上させる方法があるが(引用文献1を参照)、嵩高剤は繊維の繊維間結合を阻害する薬品であるため、印刷時にブリスター(火ぶくれ)が発生しやすくなる問題がある。特にA2コート紙のごとく比較的高級印刷に用いられる塗工紙においてブリスターは重大な品質欠陥であり、また、一般にブリスターは米坪が高くなるほど発生しやすいため、米坪の高いA2コート紙においては、米坪の低いA3コート紙や微塗工紙に比べてブリスターが発生しやすい問題があり、嵩高剤を含有させることは好ましくない。紙厚を向上させるため機械パルプを含有させる方法もあるが、機械パルプは剛直であり、毛羽立ちやラフニング(印刷後に繊維が浮き出る)が発生しやすくなり、印刷適性が低下しやすい。
【0009】
印刷適性が良い塗工紙を得るためには、塗工層を増加させることが一般的であるが、無機粒子からなる塗工層はパルプからなる基紙に比べて密度が高く嵩が低いため、十分な紙厚を達成しにくい。
【0010】
上述のとおり、特に紙の見栄え、紙厚、白紙光沢度、さらには印刷適性、剛性(腰)を維持しながら米坪を低減するためには、5g/m程度の低下が限界であった。例えば10g/m以上、特に15g/m程度米坪を低下させても上記品質を維持した塗工紙は、未だ得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−248379号公報
【特許文献2】特開2009−079327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする主たる課題は、米坪が85〜95g/mとA2グレード中米坪が低い塗工紙でありながら、米坪が10g/m以上(特に15g/m以上)高い塗工紙と比較して、十分な紙厚を有し、白色度及び白紙光沢度が良好であり、加えて印刷適性及び剛性(腰)が低下しない塗工紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基紙上に、顔料および接着剤を含む塗工層を設けた塗工紙であって、米坪が85〜95g/m、紙厚が75〜85μm、白紙光沢度が65%以上であり、前記塗工紙をJIS P 8220:1998「パルプ−離解方法」で離解して得られたパルプ繊維を、繊維長0.05mmごとに分類して得られる繊維長分布曲線において、繊維長0.10mm以上0.65mm未満の範囲に、最も大きな値を有することを特徴とする、塗工紙である。
【0014】
前記基紙に対する前記塗工層の質量割合が、0.34〜0.53であることが好ましい。
【0015】
前記顔料として、少なくともクレーを含有し、前記クレーが粒子径分布において0.1μm以上1.0μm未満および1.0μm以上10.0μm未満の範囲それぞれに極大値を有することが好ましい。
【0016】
前記基紙が填料を含み、前記填料の配合量が、前記基紙100質量%に対して2〜8質量%であり、前記填料が、シリカとシリカ以外の無機粒子とからなる複合粒子であることが好ましい。
【0017】
前記塗工層が少なくとも2層であり、前記基紙に接する下塗り塗工層の塗工量に対する、前記基紙から最も遠い最表層塗工層の塗工量の質量割合が、1.5〜1.9であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、米坪が85〜95g/mとA2グレード中、米坪が低い塗工紙でありながら、米坪が10g/m以上(特に15g/m以上)高い塗工紙と比較して、十分な紙厚を有し、白色度及び白紙光沢度が良好であり、加えて印刷適性及び剛性(腰)が低下しない塗工紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る塗工紙について説明する。なお、本発明は必ずしも以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内において、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【0020】
本形態の塗工紙は、原紙の表面及び/又は裏面上に顔料及び接着剤を主成分とする塗工層が設けられたものである。
【0021】
本発明では、塗工紙をJIS P 8220:1998「パルプ−離解方法」で離解して得られたパルプ繊維について、FiberLab.(Kajaani社)を用いて測定した中心線繊維長を、繊維長とした。
【0022】
ルンケル比についてもFiberLab.(Kajaani社)により測定された繊維幅、繊維壁厚より算出されたものである。本発明で用いるルンケル比は、R.O.H.Runkelが1940年にWachbl.Papierfabr.誌上で発表したパラメータであり、(ルンケル比)=(繊維壁厚の2倍)/(繊維内腔径)で算出される。ルンケル比が大きいほど剛直な繊維であることを示している。
【0023】
(パルプ)
本発明に用いるパルプは、塗工紙をJIS P 8220:1998「パルプ−離解方法」で離解して得られたパルプ繊維について、繊維長0.05mmごとに分類して得られる繊維長分布曲線において、繊維長0.10mm以上0.65mm未満の範囲に、最も大きな値を有する必要がある。好ましくは0.15mm以上0.60mm未満の範囲、より好ましくは0.20mm以上0.55mm未満の範囲である。パルプ繊維の繊維長分布における最大値をこの範囲内とすることで、紙の白色度、紙厚、白紙光沢度、さらには印刷適性、剛性(腰)を維持しながら、米坪を約10g/m程度、低減することができる。
【0024】
繊維長0.10mm未満の繊維が多く、繊維長0.10mm以上0.65mm未満の範囲に最も大きな値を有していない場合は、微細繊維が多いため基紙が密に詰まり紙厚が低下するだけでなく、充分な剛度が得られないため好ましくない。繊維長0.65mmを超過する繊維が多く、繊維長0.10mm以上0.65mm未満の範囲に最も大きな値を有していない場合は、長繊維が多く部分的に紙厚が増加しやすく、毛羽立ちやラフニングが発生して印刷適性(印刷後の見栄え)に劣るため好ましくない。加えて、塗工層表面に長繊維が浮き出しやすくなるため白紙光沢度が低下しやすい。
【0025】
繊維長分布曲線で繊維長0.10〜0.65mmの範囲に最大値を有するパルプ繊維を好適に得るには、従来一般に使用されている叩解方法を用いてフリーネスを調整すれば良く、例えばビーター、コニカルリファイナー、円筒型リファイナー、ディスクリファイナー(SDR、DDR)を用いることができる。例えばDDRを用いてフリーネスを約30〜300mlにまで叩解すれば良い。叩解して得られたパルプ繊維は、異なる繊維長を有する他のパルプと混合して用いることもでき、その場合は混合後のパルプ繊維が、離解後の繊維長で0.10〜0.65mmの範囲に最大値を有するよう、繊維長の異なる他のパルプとの配合割合を調整すれば良い。
【0026】
本発明においては、更に、離解パルプのルンケル比が0.4〜2.0であることが好ましく、0.6〜1.0であることが更に好ましい。ルンケル比が大きい(壁厚が大きい)ほど、剛直な繊維であり紙厚は高くなるが、一方で毛羽立ちおよびラフニングが悪化して印刷適性や白紙光沢度が低下しやすくなり、ルンケル比が小さい(壁厚が小さい)と、十分な紙厚や剛度が得られにくい。本発明においては、ルンケル比を好ましくは0.4〜2.0、より好ましくは0.6〜1.0とすることで、紙厚、白紙光沢度、剛度が高く、毛羽立ちおよびラフニングが少なく印刷適性に優れる塗工紙が得られやすくなる。例えばルンケル比が0.4未満であったり、2.0を超過する場合に比べて、米坪を10g/m程度低減しても、見栄えが低下せず、白色度、白紙光沢度、剛度、及び、印刷適性に優れた塗工紙が得られる。ルンケル比が0.4を下回ると、米坪が85〜95g/mの塗工紙では紙厚が75μm未満となりやすく、剛度も低下するため好ましくない。ルンケル比が2.0を超過すると紙厚が高くなりやすいものの、塗工層表面に毛羽立ちやラフニングが発生しやすくなるため好ましくない。
【0027】
ルンケル比は、パルプの原料として用いる木材の樹種を選別することで調整できる。
【0028】
針葉樹では、クロマツやツガは繊維幅が小さく壁厚が大きいためルンケル比が大きく(約4以上)、一方、モミ、トドマツ、アカマツ、ヒメコマツは繊維幅が大きく壁厚が小さいためルンケル比が小さく(約1〜2)、カラマツ、エゾマツ、スギ、ヒノキ、ヒバは更に小さい(約1以下)。
【0029】
広葉樹では、ブナ、アカガシはルンケル比が大きく(約4以上)、マカンバ、ミズナラ、カツラ、ハリギリ、ヤチダモはルンケル比が小さく(約1〜2)、ドロノキ、シナノキ、キリ、アスペン、バーチ、メープルは更に小さい(約1以下)。
【0030】
本発明に用いるパルプは、離解パルプの繊維長が0.10〜0.65mmの範囲に、最も大きな値を有する必要があるが、さらには、ルンケル比が0.4〜2.0、好ましくは0.6〜1.0となるよう、繊維長が長い針葉樹を用いることが好ましい。本発明においては、米坪が85〜95g/mと低いにもかかわらず、紙厚が75〜85μmと十分な紙厚を有するので、引張強度や引裂強度などの強度が低くなりやすくなる問題がある。強度の低下を防止するために、本発明においては、離解後パルプのルンケル比が0.4〜2.0(より好ましくは0.6〜1.0)のパルプを用いることが好ましい。
【0031】
上記樹種からパルプを製造する方法は、従来一般に製紙用途で使用される方法を用いることができ、パルプとしては化学パルプ、機械パルプ等を使用することができる。
【0032】
化学パルプとしては、例えば、未晒針葉樹パルプ(NUKP)、未晒広葉樹パルプ(LUKP)、晒針葉樹パルプ(NBKP)、晒広葉樹パルプ(LBKP)等を原料パルプとして使用することができるが、より白色度の高い塗工紙を得るためには、晒パルプであるNBKP、LBKPを用いることが好ましい。
【0033】
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等が挙げられる。この中でもサーモメカニカルパルプを用いると、異物が少なく紙の強度(剛性)も高いため好ましい。
【0034】
また、化学パルプや機械パルプを使用した古紙から再生される古紙パルプも使用することができ、例えば、雑誌古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、上白古紙等から製造される離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。
【0035】
上記パルプの中でも機械パルプを用いると、短繊維長の繊維が得られやすく、離解後の繊維長が0.10〜0.65mmの範囲となりやすいため好ましい。特にサーモメカニカルパルプやケミサーモメカニカルパルプを用いると、離解後の繊維長が0.10〜0.65mmの微細繊維が多い一方でシャイブ(結束繊維)が少なく、見栄えに優れるパルプおよび塗工紙が得られるため好ましい。
【0036】
本発明の原料パルプには、例えば、内添サイズ剤、紙力増強剤、紙厚向上剤、歩留向上剤等の、通常塗工紙に配合される種々の添加剤を、その種類及び配合量を適宜調整して内添することができる。
【0037】
(填料)
上記原料パルプに、内添の填料として従来製紙用途で用られている填料を添加することができる。填料としては、例えば軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、クレー、焼成クレー、合成ゼオライト、シリカ等の無機填料や、ポリスチレンラテックス、尿素ホルマリン樹脂等が挙げられる。本発明では、填料として、シリカとシリカ以外の無機粒子とからなる複合粒子を配合することが好ましい。
【0038】
(再生粒子)
本発明では填料として、不透明度に優れた再生粒子や再生粒子凝集体、更にはシリカ被覆再生粒子凝集体を使用すると、填料使用量を低減でき、より剛度に優れた塗工紙が得られるため好ましい。
【0039】
(再生粒子および再生粒子凝集体の製造工程)
再生粒子は、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て得られる。製造方法は、例えば特許第3869455号公報の記載の製法を用いることができる。内添填料として用いる場合は、公知の粉砕方法により粒子径を5〜十数μmにまで粉砕して粒子径を調整することが好ましい。粒子径が5μmよりも小さいと歩留りが悪く抄紙機系内において異物化しやすいため好ましくなく、十数μmよりも大きいと地合が悪化したり、強度(引張強度や引裂強度)が低下する可能性があるため好ましくない。
【0040】
上記方法で製造した再生粒子は、個々の粒子が幾つか集まって凝集した再生粒子凝集体を形成しており、ランチュウの肉瘤状のような、不定形な形をしている。この不定形性により、基紙に含有させた場合は紙厚が出やすく、また、高不透明度の粒子であるため填料含有量を低減でき剛度が高くなりやすいため好ましい。
【0041】
これら再生粒子または再生粒子凝集体は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含む。好ましくは、40〜82:9〜30:9〜30の質量割合、より好ましくは、60〜82:9〜20:9〜20の割合である。
【0042】
焼成工程において、再生粒子凝集体のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの酸化物換算割合を調整するための方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが本筋ではあるが、乾燥・分級工程、焼成工程において、出所が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で工程内に含有させる手段や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる手段にて調整することも可能である。
【0043】
例えば、無機粒子凝集体中のカルシウムの調整には、中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、ケイ素の調整には、不透明度向上剤として多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、タルク使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを適宜用いることができる。
【0044】
〔付帯工程〕
製造設備において、より品質の安定化を求めるには、再生粒子凝集体の粒度を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
【0045】
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、更には、造粒物の粒度を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用でき、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
【0046】
製造設備においては、再生粒子凝集体以外の異物を除去することが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化により微粒子の白色度低下の起因物質になるため、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが推奨され、各工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、磨滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、更に、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
【0047】
〔シリカ被覆再生粒子、シリカ被覆再生粒子凝集体〕
本発明においては、一般に製紙用途で使用する填料、すなわち、炭酸カルシウム(重質および軽質)、クレー、タルクなどをシリカで被覆したシリカ被覆無機粒子を用いることが好ましく、特に、上述の再生粒子または再生粒子凝集体の表面をシリカで被覆したシリカ被覆再生粒子凝集体を用いると、より嵩高で不透明度が高い粒子となるため、填料含有量を低減させることができ、高い紙厚および剛性を得ることができる。特に本発明のごとく、紙の剛性(腰)の低下を防止するためには、パルプ繊維同士の繊維間結合を阻害する填料を少なくする必要があるが、填料が減少すると不透明度が低下し易くなるだけでなく、パルプ繊維の毛羽立ちやラフニングが発生して印刷適性が低下しやすい問題があり、剛性および印刷適性の両立を図ることが困難であった。しかしながら本発明においては、填料として不透明性に優れたシリカ被覆無機粒子を用いると、填料配合量を低減できるため、剛性、紙厚および印刷適性の双方に優れた塗工紙が得られやすくなる。
【0048】
再生粒子凝集体にシリカを析出させる好適な方策としては、特許第3907688号公報や、特許第3935496号公報に記載の方法で行うことが出来る。但し、次のとおり行うことで、より不透明性に優れたシリカ被覆粒子が得られるため好ましい。
【0049】
以下に、被覆したい粒子が再生粒子凝集体である場合を例に、シリカ被覆する方法を記述する。
【0050】
前記製造工程で得られた再生粒子または再生粒子凝集体を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーを調製した後に、加熱攪拌しながら、液温70〜100℃で硫酸、塩酸または硝酸などの鉱酸の希釈液を添加し、シリカゾルを生成させ、最終反応液のpHを8.0〜11.0の範囲に調整することにより、再生粒子表面に粒子径10〜20nmのシリカゾル粒子を生成させて、シリカ被覆再生粒子またはシリカ被覆再生粒子凝集体を得る。このシリカ被覆した粒子は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜62:29〜55:9〜35の質量割合とすることにより、シリカ析出効果による不透明性を更に向上させることができる。
【0051】
被覆したい粒子(再生粒子凝集体など)および珪酸アルカリを9:1の質量割合で混合した水溶液を調整し、加熱攪拌しながら液温を昇温させた後、酸を添加してシリカゾルを生成させることで、被覆したい粒子(再生粒子凝集体)の表面にシリカを析出させることができる。
【0052】
使用する珪酸アルカリ溶液は特に限定されないが、珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が入手性の点で望ましい。珪酸アルカリ溶液の濃度は水溶液中の珪酸分(SiO2換算)で3〜10質量%が好適である。10質量%を超えるとホワイトカーボンが析出しやすくなるため、再生粒子凝集体表面にシリカが析出しにくくなり、不透明性が充分に向上できないため好ましくない。また、3質量%未満であっても再生粒子凝集体にシリカが析出しにくいため好ましくない。
【0053】
液温は、70〜100℃が好ましく、80〜100℃が更に好ましく、90〜100℃が最も好ましい。液温が70℃未満では粒子径が成長せず、填料として使用できる数μm程度にまで粒子が大きくならない可能性があるため好ましくない。液温を70℃以上、好ましくは80℃以上、最も好ましくは90℃以上とすることで、1〜2μmにまで粉砕した再生粒子または再生粒子凝集体を、内添填料として使用できる5〜十数μm程度にまで成長させることができる。
【0054】
再生粒子または再生粒子凝集体の粒子径が2μmよりも大きい場合、シリカ被覆再生した後に粒子径が数十μmと大きくなりやすく、得られる塗工紙の地合が悪化したり、強度(引張強度や引裂強度)が低下する可能性があるため好ましくない。また、シリカ被覆前の粒子が2μm以上と大きく、かつ70℃未満でシリカ被覆した場合は、粒子径は5〜十数μm程度に収まる可能性はあるが、シリカゾルの生成が緩やかとなるため、得られるシリカ被覆粒子は、充分な不透明度が得られない可能性があるため好ましくない。また、後工程において粉砕等、機械的に粒子径を調整すると、シリカの被覆状態が壊れて不透明殿が向上しにくくなる。
【0055】
最終反応液のpHは8.0〜11.0が好ましく、8.3〜10.0がより好ましく、8.5〜9.0が最も好ましい。通常、シリカ粒子(ホワイトカーボン)の製造においては、水和珪酸と鉱酸の反応を完了させるため、pH5.5〜7.0になるまで鉱酸を添加する方法が一般的だが、pHが7以下と酸性領域になると、再生粒子または再生粒子凝集体に含まれる炭酸カルシウムが水酸化カルシウムおよび炭酸に分解しやすくなり、粒子径が低下して紙への歩留りが低下しやすくなったり、充分な不透明性が得られにくいため好ましくない。pHが11.0を超過すると、シリカが析出しにくく、粒子が充分にシリカにより被覆されにくくなるため、充分な不透明性が得られにくい。
【0056】
このようにして得られたシリカ被覆した粒子は、粒子表面がシリカで被覆されているためワイヤー磨耗度が低くでき、填料として好適に使用することができる。紙に内添する無機粒子においては、粒子が硬いと抄紙機のワイヤー(網部)を傷つけやすくなり、ワイヤー寿命を縮めるだけでなく、抄紙機系内に異物が堆積しやすいため好ましくない。しかしながら本発明のごとく、シリカで被覆した無機粒子、好ましくはシリカ被覆再生粒子凝集体を用いることで、ワイヤーを傷つけにくい柔らかい無機粒子を得ることができる。
【0057】
ワイヤー磨耗度は、フィルコン式ワイヤー磨耗度試験で評価することができる。磨耗度が約80mgの再生粒子凝集体では、シリカ被覆により磨耗度を約20mgにまで低下させることができ、内添填料として充分に使用可能な粒子を得ることができる。尚、重質炭酸カルシウムのワイヤー磨耗度は100mg以上、軽質炭酸カルシウムは約50mg、ホワイトカーボンは約15mgであり、おおむね50mg以下であれば、内添填料として使用できる。
【0058】
上述のとおり、填料として、シリカ被覆した無機粒子、好ましくはシリカ被覆再生粒子凝集体を用いると、高い不透明性を有する塗工紙を得ることができるため好ましい。とくに剛性(腰)が必要とされる塗工紙においては、填料の含有量を低減しても、毛羽立ちやラフニングが発生しにくく、白紙光沢度に優れる塗工紙が得られるため好ましい。
【0059】
これら填料の含有量は特に限定されないが、基紙100質量%に対して2〜8質量%となるよう添加することが好ましく、3〜7質量%がより好ましい。填料の配合量が8質量%を超過すると、パルプ繊維同士の結合が阻害されやすく剛度が低下しやすくなるだけでなく、印刷時に湿し水を吸収して断紙が発生し易くなるため好ましくない。特に填料としてシリカ被覆した無機粒子を含有した場合、基紙の吸液性が向上しやすいため、断紙し易い傾向にある。填料の含有量を2質量%未満とすると、毛羽立ちやラフニングが発生しやすくなる問題がある。尚、上記填料の含有量は、JISP8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準じて測定した灰分含有量である。
【0060】
本発明においては、上述のとおり、パルプ繊維が繊維長分布曲線で繊維長0.10〜0.65mmの範囲に最も大きな値を有する必要があり、加えてルンケル比が0.4〜2.0(より好ましくは0.6〜1.0)であることが好ましい。更に填料として、上述のシリカ被覆無機粒子を、基紙100質量%に対して2〜8質量%(より好ましくは3〜7質量%)含有させることで、より嵩高性、白色度、白紙光沢度、印刷適性、剛性および不透明性のいずれをも向上させることができるため好ましい。すなわち、無機粒子(再生粒子や再生粒子凝集体等)および珪酸アルカリを9:1の質量割合で混合し、70〜100℃、好ましくは90〜100℃まで昇温させた後に、pHが8.0〜9.5、好ましくはpHが8.5〜9.0になるまで酸を添加し、粉砕等の機械的手段を用いずに得られた粒子径5〜10μm程度のシリカ被覆無機粒子を、填料として含有させることで、紙厚、不透明度および剛性に優れた塗工紙が得られるため好ましい。特に、米坪が85〜95g/mの塗工紙において、米坪が10g/m以上(特に15g/m以上)高い塗工紙と比較して、紙の白色度、紙厚、白紙光沢度、印刷適性、及び、剛性(腰)が同程度の塗工紙を得ることができるため好ましい。
【0061】
また、シリカ被覆を施す粒子としては、再生粒子、再生粒子凝集体に限定されず、従来一般に製紙用途で使用する填料を用いることができる。すなわち、炭酸カルシウム(重質および軽質)、クレー、タルクなどを用いても良い。本発明においては、これら無機粒子を上述の方法でシリカ被覆して得られたシリカ被覆無機粒子を用いることができる。
【0062】
本形態において使用できる抄紙設備としては、特に限定されないが、ギャップフォーマからなるワイヤーパート、オープンドローのないストレートスルー型からなるプレスパート、シングルデッキドライヤーからなるドライヤーパート、フィルム転写型のロール塗工によるコーターパート(下塗り塗工)、ソフトカレンダーからなるプレカレンダーパート、ブレードコーターによるコーターパート(上塗り塗工)を組み合わせることが好ましい。上記構成では、例えば1300m/分以上の高速抄造においても、地合いが良好で、かつ、幅方向、流れ方向の乾燥ムラが少なくなり、また、フィルム転写型の下塗り塗工を行い、プレカレンダーで平坦化処理するため、特に平滑性に優れた塗工原紙となる。これにより、後に続く上塗り工程における塗工ムラを低減でき、塗工層最表層表面の平滑性が向上する結果、印刷後に印刷面と白紙面とが重なった場合、接触部が均等となり、局所的なコスレ汚れが発生し難いため、白紙面全体としてコスレ汚れが目立たず、高級感を損ねにくい塗工紙が得られる。各パートで得られる効果は次の通りである。
【0063】
(ワイヤーパート)
ワイヤーパートとしては、長網フォーマや、長網フォーマにオントップフォーマを組み合わせたもの、あるいはツインワイヤーフォーマなどを使用することが出来るが、ヘッドボックスから噴出された紙料ジェットを2枚のワイヤーで直ちに挟み込むギャップタイプのギャップフォーマが、両面から脱水するため表裏差が少なく、コスレ汚れに表裏差が発生し難いため好ましい。
【0064】
(プレスパート)
ワイヤーパートでの紙層は、プレスパートに移行され、さらに脱水が行われる。プレス機としては、ストレートスルー型、インバー型、リバース型のいずれであってもよく、またこれらの組み合わせも使用することができるが、オープンドローを無くしたストレートスルー型が、紙を保持しやすく、断紙などの操業トラブルが少ないため、好ましい。脱水方式としては、通常行われているサクションロール方式やグルーブドプレス方式等の方法を使用することができるが、脱水性と平滑性とを向上できるシュープレスが、より好ましい。
【0065】
(ドライヤーパート)
プレスパートを通った湿紙は、シングルデッキ方式のプレドライヤーパートに移行し、乾燥が図られる。プレドライヤーパートは、断紙が少なく、嵩を落とすことなく高効率に乾燥を行える、ノーオープンドロー形式のシングルデッキドライヤーが好ましい。ダブルデッキ方式にて乾燥する方式も可能だが、キャンバスマーク、断紙、シワ、紙継ぎ等の操業性の面、また、幅方向、流れ方向のいずれでも均一な乾燥が得られる点で、シングルデッキ方式に劣る。
【0066】
(下塗り塗工)
以上のようにして製造された原紙に、表面の平滑性および白色度を向上させる目的で、顔料および接着剤を含む顔料塗工液を下塗り塗工する。下塗り塗工層は、単層でも良く、複数層であっても良い。
【0067】
下塗り塗工層に用いる顔料は特に制限は無く、一般的に製紙用途に使用できるものを用いることができる。例えば、クレー(カオリン、ろう石)や炭酸カルシウム、タルク、サチンホワイト、亜硫酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、焼成カオリン、構造化カオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ベントナイト、セリサイト等の無機顔料や、ポリスチレン樹脂微粒子、尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子、多孔質微粒子等の有機顔料等の中から、一種又は二種以上を適宜選択して配合しても良い。
【0068】
以上の顔料とともに塗工液に配合される接着剤の種類についても特に限定はないが、例えば、カゼイン、大豆蛋白等の蛋白質類;スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系ラテックス、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体ラテックス若しくは共重合体ラテックス等のアクリル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系ラテックス、あるいはこれらの各種共重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解性又は非溶解性のラテックス等のラテックス類;ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂系接着剤;酸化澱粉、陽性化澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等の、通常塗工紙に用いられる接着剤が挙げられ、これらの中から一種又は二種以上を適宜選択して使用することができる。
【0069】
下塗り塗工液中の顔料と接着剤との割合には特に限定がないが、好ましくは顔料100質量部に対して接着剤が固形分比で3〜17質量部であり、より好ましくは5〜15質量部である。接着剤の量が3質量部未満では、下塗り塗工層の形成性が低下し、表面強度が低下し、印刷時に紙表面がインキに取られて、白抜けが発生する。他方、17質量部を超えると、接着剤の量が多すぎて塗工層が硬くなるため、印刷適性が悪化する。
【0070】
さらに下塗り塗工液(顔料塗工液)には、例えば、蛍光増白剤や蛍光増白剤の定着剤、消泡剤、離型剤、着色剤、保水剤等の、通常使用される各種助剤を適宜配合することもできる。
【0071】
原紙への下塗り塗工層の塗工量(固形分量)は、両面合計で、好ましくは7.8〜12.2g/m、より好ましくは8.5〜11.5g/m、特に好ましくは9.3〜10.7g/mである。下塗り塗工層の塗工量が7.8g/m未満では、原紙表面に未塗工部分が生じ易く、平滑性にムラが生じ、上塗り塗工後に白紙光沢度および印刷適性に劣るため好ましくない。12.2g/mを超えると、上塗り塗工層との合計塗工量が多くなりやすく、基紙米坪が低下するため剛性に劣るため好ましくない。
【0072】
形成される下塗り塗工層の厚さは特に限定されないが、上塗り塗工層を設けた後の緊度や平滑性、印刷ムラを考慮すると、8〜12μmであることが好ましい。
【0073】
このような下塗り塗工は、例えば、2ロールサイズプレスコーターやゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、又はシムサイザーやJFサイザー等のフィルム転写型ロールコーターや、ブレードコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター等の塗工装置を設けたオンマシンコーター又はオフマシンコーターによって、原紙上に一層又は多層に分けて塗工液が塗工される。但し、より下塗り塗工後の表面性を改善し、上塗り塗工後のコスレ汚れを低減するためには、被覆性が高く均一に塗工できる、フィルム転写型ロールコーターが好ましい。
【0074】
(プレカレンダーパート(平坦化処理))
下塗り塗工後の原紙は、上塗り塗工を行う前に、プレカレンダーによる平坦化処理を行うことが好ましい。平坦化処理を行うことで、下塗り塗工後の平滑性のムラを低減でき、上塗り塗工後の平滑性をも向上できる。特に本形態においては、離解パルプの繊維長が0.10mm以上0.65mm未満のパルプ繊維を多く含み、加えてルンケル比が0.4〜2.0のパルプ繊維を多く含むため、毛羽立ちやラフニングが発生して印刷適性が低下しやすいが、下塗り塗工後にプレカレンダー処理を行った後に上塗り塗工層を設けることで印刷適性を改善することができる。
【0075】
(上塗り塗工)
次に、原紙の一方又は双方の面に、顔料及び接着剤を含む塗工液を上塗り塗工して上塗り塗工層を設ける。なお、この上塗り塗工層を1層設ける場合は、下塗り塗工層を設けるか否かにかかわらず、この上塗り塗工層が最表層であり、この上塗り塗工層を2層以上設ける場合は、その中の最も外側に形成される層が最表層である。以下では、上塗り塗工層が1層の場合を例に説明する。
【0076】
上塗り塗工層に用いる顔料としては、下塗り塗工層で例示した顔料を用いることができるが、この中でもクレーを多く含有すると、より白紙光沢度、印刷適性に優れた塗工紙が得られるため好ましい。
【0077】
クレーの含有量は上塗り塗工層に含まれる顔料100質量部のうち40〜90質量部が好ましく、50〜80質量部がより好ましい。40質量部を下回ると、充分な白紙光沢度、印刷適性が得られない可能性があるため好ましくない。90質量部を超過すると、塗料の流動性が悪くなりやすく、塗工ムラが発生し、毛羽立ちやラフニングを充分に防止しにくいため好ましくない。
【0078】
クレーは、粒子径が小さく細かい粒子と、粒子径が大きく板状の粒子を併用することが好ましい。小粒子径のクレーを配合することで、塗工層表面が充填されやすくなり、白紙光沢度、印刷適性が向上するが、一方で充填しやすいことで得られる塗工紙の比重が大きくなりやすく、嵩高な塗工紙が得られにくい。一方で板状の粒子を配合すると、塗工層表面の被覆性が高くなりやすく緊度の上昇を防止できるが、一方で表面が充填されにくく、白紙光沢度、印刷適性が低下しやすいため好ましくない。しかしながらこれら小粒子径のクレーおよび板状のクレーを併用すると、塗工紙の緊度を上昇させずに塗工層表面の被覆性および充填性を向上できるため、白紙光沢度、印刷適性に優れた塗工紙が得られる。
【0079】
小粒子径のクレーとしては、粒子径分布で粒子径0.1μm以上1.0μm未満の範囲に極大値を有することが好ましい。
【0080】
板状のクレーとしては、アスペクト比(粒子の厚みに対する板直径の割合)が5以上であれば特に問題ないが、粒子径分布で粒子径が1.0μm以上10.0μm未満の範囲に極大値を有することが好ましい。
【0081】
なお、本発明の粒子径とは、塗工層表面の顔料粒子を電子顕微鏡で撮影し、撮影した粒子の直径を測定して得られた粒子径を指す。
【0082】
これらの範囲に極大値を有する小粒子径のクレーおよび板状クレーは、質量割合で2:1〜1:2の割合で使用することが好ましい。小粒子径のクレーが上記範囲より多いか板状クレーが上記範囲より少ない、特に板状クレーを含有しないと、塗工紙の被覆性が低下して印刷適性が低下するだけでなく、毛羽立ちやラフニングを充分に防止しにくいため好ましくない。小粒子径のクレーが上記範囲より少ない、特に小粒子クレーを含有しないか、板状クレーが上記範囲より多いと、塗工紙の表面粗さが低下して白紙光沢度が低下するだけでなく、毛羽立ちやラフニングを充分に防止しにくいため好ましくない。
【0083】
上記以外にも、顔料としては上述したものを、本発明の作用を阻害しない範囲で添加することができる。
【0084】
上塗り塗工層の塗工量(固形分量)は、両面合計で、好ましくは13.2〜20.8g/m、より好ましくは14.5〜19.5g/m、特に好ましくは15.7〜18.3g/mである。上塗り塗工層の塗工量が13.2g/m未満では、塗工層表面を充分に被覆できず、毛羽立ちやラフニングが発生して印刷適性に劣るだけでなく、白紙光沢度も低下しやすいため好ましくない。20.8g/mを超えると、塗工紙に占める塗工層の割合が多くなり剛性が低下しやすいだけでなく、緊度および米坪が増大しやすくなるため好ましくない。
【0085】
本発明の塗工紙における上塗り塗工層および下塗り塗工層の合計塗工量(固形分量)は、23〜31g/mが好ましく、25〜29g/mがより好ましい。合計塗工量が23g/m未満では、塗工層表面を充分に被覆できず、毛羽立ちやラフニングが発生して印刷適性に劣るだけでなく、白紙光沢度も低下しやすいため好ましくない。31g/mを超えると、塗工紙に占める塗工層の割合が多くなり剛性が低下しやすいだけでなく、緊度および米坪が増大しやすくなるため好ましくない。
【0086】
また、下塗り塗工層および上塗り塗工層を合計した塗工量(固形分量)、または塗工層が1層の場合はその1層の塗工量(固形分量)は、基紙に対して質量割合で0.34〜0.53が好ましく、0.38〜0.48がより好ましい。割合が0.34を下回ると、塗工層の割合が少なくなるため、毛羽立ちやラフニングを充分に防止しにくいだけでなく白紙光沢度も低下しやすく、0.53を超過すると剛性が低下しやすいため好ましくない。
【0087】
加えて、下塗り塗工層の塗工量に対する上塗り塗工層の塗工量の割合は、質量換算で1.5〜1.9とすることが好ましい。下塗り塗工量が多いか、上塗り塗工量が少なく、割合が1.5未満になると、白紙光沢度が得られにくいだけでなく、より光沢性を出すためにカレンダー等の線圧を増加させる必要があり、紙厚および剛度が低下しやすいため好ましくない。割合が1.9を超過すると、下塗り塗工層およびプレカレンダー処理による平坦化効果が得られにくく、毛羽立ちやラフニングを充分に防止しにくくなり、印刷適性に劣るだけでなく、クレーを多く含む上塗り塗工層が多いため白色度が低下しやすくなるため好ましくない。
【0088】
特に本発明のごとく、離解パルプの繊維長が0.10mm以上0.65mm未満のパルプ繊維を多く含む場合、塗工量は、基紙に対して質量割合で0.34〜0.53(より好ましくは0.38〜0.48)とすることで、毛羽立ちやラフニングを防止でき、印刷適性を向上できるため好ましい。これらに加えて、塗工層表面に顔料、好ましくはクレーとして、粒子径分布で粒子径0.1μm以上1.0μm未満の範囲に極大値を有する粒子、および、粒子径分布で粒子径1.0μm以上10.0μm未満の範囲に極大値を有する粒子を併用することにより、紙厚、剛度、白紙光沢度、印刷適性を向上できる。更にはそれら粒子の質量割合が2:1〜1:2であることが好ましい。これらに加えて、填料としてシリカ被覆した無機粒子を用いることで、さらに剛度および紙厚を向上でき、更には、下塗り塗工層の塗工量に対する上塗り塗工層の塗工量の割合を、質量換算で1.5〜1.9とすることで、特に紙厚、白色度、白紙光沢度、剛度、印刷適性に優れた塗工紙を得ることができる。
【0089】
上述のごとく、繊維長0.10mm以上0.65mm未満の範囲に最も大きな値を有する繊維長分布を有することに加え、離解パルプのルンケル比が0.4〜2.0(更には0.6〜1.0)であることが好ましく、更に填料として、上述のシリカ被覆無機粒子を、基紙100質量%に対して2〜8質量%(好ましくは3〜7質量%含有させた基紙上に、塗工層としてクレーを顔料のうち40〜90質量部(好ましくは50〜80質量部)含み、クレーとして小粒子径および板状構造の2種類のクレーを併用し、小粒子径のクレーを使用することで塗工層表面に粒子径分布で粒子径0.1μm以上1.0μm未満の範囲に最大値を有する粒子を含有させ、かつ、板状のクレーを使用することで塗工層表面に粒子径分布で粒子径が1.0μm以上10.0μm未満の範囲に最大値を有する粒子を含有させ、小粒子径のクレーおよび板状クレーを、質量割合で2:1〜1:2の割合で使用し、更に、塗工量は、原紙に対して質量割合で0.34〜0.53、好ましくは0.38〜0.48とし、更に、下塗り塗工層および上塗り塗工層を有する少なくとも2層の塗工層を有する塗工紙においては、下塗り塗工層の塗工量に対する上塗り塗工層の塗工量の割合は、質量換算で1.5〜1.9とすることで、米坪が低い塗工でありながら、紙厚であり、白色度、白紙光沢度、剛性、及び、印刷適性に優れた塗工紙が得られる。
【0090】
上塗り塗工層に用いる接着剤としては、モノマー成分としてブタジエン成分を40〜65質量%含む重合体ラテックスを使用することが好ましく、より好ましくは43〜63質量%、さらに好ましくは45〜60質量%である。ブタジエン成分が40質量%を下回ると、顔料への接着性が劣り、上述した粒子径0.1〜1.0μmと小さい粒子を充分に接着しにくいため好ましくない。65%を超過すると、塗工層表面のラテックス量が多くなり、塗工紙製造工程において各種ロールに汚れが付着し操業性が低下しやすくなる。ブタジエン成分を上記範囲に納めることで、接着性と操業性の双方を満足することができる。また、上記ブタジエン成分を40〜65質量%含むラテックスと、上記平均粒子径0.1〜1.0μmのクレーとを塗工層に含有させることで、白紙光沢度および印刷光沢度に優れた塗工層を得ることができる。
【0091】
ブタジエン以外のモノマー成分としては、スチレン成分を20〜35質量%含むことが好ましく、より好ましくは23〜30質量%である。スチレン成分は塗工層に耐水性を付与する効果があるため、本発明のごとく緊度が1.05〜1.20g/cmと小さい塗工紙においては、印刷時の湿し水を吸収したことに起因する断紙を防止する観点から、上述の割合とすることが好ましい。特に上述のごとく、填料として吸液性の高いシリカ被覆した無機粒子を含有する場合は、断紙防止のためスチレン成分を20〜35質量%含むことが好ましい。スチレン成分が20質量%を下回ると塗工層の耐水性が劣るため、オフセット印刷では断紙以外にも、湿し水を吸って塗工層強度が低下し、白抜けや断紙などのトラブルが発生する傾向がある。35質量%を超過すると、塗工層が硬くなり、印刷適性が悪化する傾向がある。上記のごとく、白色度、白紙光沢度、印刷光沢度、印刷適性を効果的に向上させるには、テラックス中のブタジエン成分及びスチレン成分を所定の範囲内に納めることが好ましい。
【0092】
上塗り塗工層中の顔料と接着剤との割合は、顔料100質量部に対して、接着剤5〜15質量部であることが好ましく、7質量部〜13質量部であることが更に好ましい。含有量が5部を下回ると、塗工層強度が低下し、印刷時の白抜けが発生するだけでなく、製造工程においても顔料が塗工紙から脱落しやすくなって系内を汚すなど、紙品質および操業性の双方が悪化するため好ましくない。含有量が15質量部を超えると、ロール汚れが発生するだけでなく、ブリスター等のトラブルも発生しやすくなるため好ましくない。
【0093】
ブタジエン成分を含有する共重合体ラテックス以外にも、通常塗工用途に用いることができる接着剤を併用することができる。例えば、カゼイン、大豆蛋白等の蛋白質類;スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系ラテックス、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体ラテックス若しくは共重合体ラテックス等のアクリル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系ラテックス、あるいはこれらの各種共重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解性又は非溶解性のラテックス等のラテックス類;ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂系接着剤;酸化澱粉、陽性化澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等の、通常製紙用途に用いられる接着剤が挙げられ、これらの中から一種又は二種以上を適宜選択して併用することができる。
【0094】
さらに本塗工液には、例えば、蛍光増白剤や、蛍光増白剤の定着剤、消泡剤、離型剤、着色剤、保水剤等の、通常使用される各種助剤を適宜配合することもできる。
【0095】
上塗り塗工は、例えば、複数段階、通常はプレドライヤーパートとアフタードライヤーパートとの2段階で行われるドライヤーパートの間のコーターパートにおいて行われることが好ましい。このコーターパートにおいては、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、トランスファーロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、カーテンコーター等の塗工装置を設けたオンマシンコーター又はオフマシンコーターによって、原紙上に一層又は多層に分けて塗工液が塗工される。中でも、塗工直後であっても、塗工層表面に高い平坦性があり、後の平坦化工程において、緩やかなカレンダー条件で、光沢度を上昇させずに表面の平滑性を向上でき、紙厚を低減させずに白紙光沢度および印刷適性を向上できるという点から、ブレードコーターを用いることが好ましい。なお、ドライヤーパートでの乾燥方法としては、例えば、熱風加熱、ガスヒーター加熱、赤外線ヒーター加熱等の各種加熱乾燥方式を適宜採用することができる。
【0096】
本発明塗工紙を得るための塗工方法としては、フィルム転写型ロールコーターにより下塗り塗工を行い、プレカレンダー処理した後に、ブレードコーターを用いて上塗り塗工することが好ましい。上記塗工方法を用いることにより、塗工層表面に高い平滑性を付与できるため、後述するカレンダー処理を緩やかな条件で実施でき、より紙厚の大きい光沢調塗工紙が得られるのである。
【0097】
(カレンダーパート(平坦化処理))
本形態では、塗工層に光沢性や平坦性、印刷適性を付与する目的で、熱ロールを用いて平坦化処理を施すことが好ましい。一般に平坦化処理は、弾性ロールと金属ロールとの間に塗工紙を通し、塗工紙にニップ圧をかけて摩擦力により塗工紙表面を磨き、光沢性を付与するものである。紙厚に優れた塗工紙においては、光沢度を向上するためにニップ圧を高くすると、紙厚が低下しやすくなる可能性があるが、本発明においては、繊維長0.10〜0.65mmの範囲に、最も大きな値を有する繊維長分布を有することに加え、離解パルプのルンケル比が0.4〜2.0、更には0.6〜1.0であるため、高ニップ圧(200〜500kN/m)で平坦化処理を行っても、紙厚が75〜85μmと高く、かつ白紙光沢度、印刷光沢度、印刷適性、剛度に優れた塗工紙が得られる。
【0098】
熱ロール(金属ロール)の表面温度は、100〜160℃が好ましい。熱ロールの温度が100℃未満では平坦化が進まず白紙光沢度に劣る可能性があり、160℃を超えると、繊維焼けが発生したり、熱と圧力により、塗工紙自体が黄変化(退色)したりするため、高い白色度が得られない可能性がある。
【0099】
平坦化工程を行う熱ロールを含むニップ段数について制限はないが、好ましくは2〜10段、より好ましくは2〜8段である。10段を超過すると、大掛かりな設備が必要となるため好ましくなく、1段では表裏両面の平滑性を充分に向上できない。
【0100】
平滑化処理を行う設備としては、従来のマシンカレンダーや、ソフトカレンダーを使用しても良いが、好ましくは、ニップごとに線圧を調整できるマルチニップカレンダーを用いることが好ましい。
【0101】
また、カレンダーの設置場所としては、抄紙機及び塗工機と一体になったオンマシンタイプが好ましい。オンマシンタイプでは、塗工後すぐ、紙面温度が高い状態で平坦化処理できるため、平滑性が向上しやすく、紙厚の低下を最小限に抑えつつ、白紙光沢度および印刷光沢度を向上させることができるため好ましい。
【0102】
上記条件で平坦化処理された、米坪が85〜95g/mの塗工紙は、白紙光沢度が65%以上と高いにもかかわらず、紙厚が75〜85μmと高く嵩に優れた塗工紙でありながら、毛羽立ちやラフニングが発生しにくい、見栄えの良い塗工紙となる。
【実施例】
【0103】
次に、本発明の塗工紙を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0104】
まず、原料パルプとして、表に記載の樹種から製造したNBKP、LBKP、BTMPを表に記載の割合(質量比)で混合し、表に記載の填料、および、このパルプ100質量部(絶乾量)に対して、各々固形分で、内添サイズ剤(品番:AK−720H、ハリマ化成(株)製)0.02質量部、カチオン化澱粉(品番:アミロファックスT−2600、アベベジャパン(株)製)1.0質量部、及び歩留向上剤(品番:NP442、日産エカケミカルス(株)製)0.02質量部を添加してパルプスラリーを得た。尚、NBKPのフリーネスは500ml、LBKPのフリーネスは400ml、BTMPのフリーネスは表に記載の値に調整した。
【0105】
次に、ギャップフォーマからなるワイヤーパート、オープンドローのないストレートスルー型のプレスパート、シングルデッキドライヤーからなるプレドライヤーパートを経て基紙を製造した。基紙の坪量は表に記載のとおり。
【0106】
基紙の両面に、重質炭酸カルシウム(品番:ハイドロカーブ90、備北粉化工業(株)製、平均粒子径1.3μm)100質量部に対して接着剤(スチレン−ブタジエンラテックス、品番:PA−6082、日本A&L社製、Tg:−6℃、ブタジエン:46質量%、スチレン:25質量%)8質量部を混合した下塗り塗工液を、両面合計で、表に記載の塗工量(固形分量)となるようフィルム転写型ロールコーターで塗工した。その後、シングルデッキドライヤーからなるアフタードライヤーパートで乾燥し、プレカレンダーパートで、ニップ圧100kN/mで平坦化処理を行った。
【0107】
引き続き、表に記載の顔料合計で100質量部に対して接着剤(スチレン−ブタジエンラテックス、品番:PA−6082、日本A&L社製、Tg:−6℃、ブタジエン:46質量%、スチレン:25質量%)8質量部を混合した上塗り塗工液を、両面合計で、表に記載の塗工量(固形分量)となるようブレードコーターを用いて塗工した。乾燥後にマルチニップカレンダーを用い、ニップ圧250kN/m、ロール温度80℃で平坦化処理を行い、塗工紙を得た。なお、填料および顔料の詳細は、次の通りである。
【0108】
(填料)
・再生粒子凝集体
特許第3869455号公報の製法に準じて粒径を調整して製造した。具体的には、古紙の処理工程から排出される脱墨フロスを水分率60%まで脱水し(脱水工程)、120℃で乾燥して(乾燥工程)焼成工程入口での水分率が3%になるようにし、第1焼成工程で未燃分が7%となるように550℃で焼成し、第2焼成工程で未燃分が12質量%となるように焼成し(焼成工程)、粒子径500μmの再生粒子凝集体を製造した。その後、湿式粉砕機(品番:プラネタリーミル、セイシン企業製)を用いて、平均粒子径(d50)が1.5μmとなるよう粉砕した。
【0109】
・シリカ被覆再生粒子凝集体
前記製造工程で得られた再生粒子凝集体および珪酸アルカリを、9:1の質量割合で混合しスラリーを調製した後に、攪拌しながら液温を90〜95℃に昇温させて硫酸を添加し、シリカゾルを生成させ、最終反応液のpHを9.0に調整した。このシリカ被覆再生粒子凝集体は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合が、酸化物換算で31:52:17であり、粒子径(d50)は8.0μmであった。
【0110】
・炭酸カルシウム
軽質炭酸カルシウム、品番:TP121―6S、奥多摩工業社製。
【0111】
(顔料)
・炭カル
重質炭酸カルシウム、品番:ハイドロカーブ90、備北粉化工業(株)製、平均粒子径1.3μm
・微粒クレー
品番:アマゾンプラス、CADAM社製、平均粒子径0.3μm
・板状クレー
品番:センチュリーHC、パラピグメントス社製、平均粒子径2.8μm
表に記載した、塗工紙表面の粒子径分布の極大値は、次のとおり測定した。塗工紙をA4サイズに切り出し、用紙短辺を上辺として、上辺から下にAcm、左辺からAcmの地点で、縦横5mm角のサンプルを切り出した。ここでAは1〜20の整数であり、合計20サンプルを採取した。切り出したサンプルの表面を、走査電子顕微鏡(型番:S−2150、(株)日立製作所製)を用いて倍率12000倍で写真撮影した。写真の上辺から下にBcm、左辺からBcmの地点に最も近く、かつ粒子全体が撮影されているクレーについて、粒子径を測定した。ここでBは1〜5の整数であり、1サンプルから5個のクレー粒子の粒子径を求め、合計100点のクレー粒子について粒子径を求めた。また、極大値は、クレー粒子の数を面積粒子径0.1μmごとに集計して粒子径分布を求め、極大値の有無を判断した。再生粒子、炭酸カルシウム、カオリンクレー等、複数種類の顔料を併用した場合には、どの粒子がいずれの顔料であるかを、粒子形状で判断することができる。再生粒子は脱墨フロス由来のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムからなる、凝集塊状の粒子であり、炭酸カルシウムは不定形の球状粒子であり、カオリンクレーは板状である。上記形状は、倍率12000倍で充分判別可能である。
【0112】
離解パルプの繊維長分布の極大値は、次のとおり測定した。塗工紙をJIS P 8220:1998「パルプ−離解方法」で離解して得られたパルプ繊維について、FiberLab.(Kajaani社)を用いて中心線繊維長を測定し、繊維長とした。繊維長0.05mmごとに繊維の数を集計して繊維長分布曲線を求め、極大値がどの領域に含まれるかを判断した。
【0113】
離解パルプのルンケル比は、上述の繊維長分布の測定により得られた平均繊維幅および平均繊維壁厚から、次の式に従って算出した。
(ルンケル比)=(繊維壁厚の2倍)/(繊維内腔径)
(繊維内腔径)= 繊維幅−(繊維壁厚の2倍)
得られた塗工紙について、各物性を以下の方法にて調べた。結果は、表に示す。
【0114】
(a)米坪
JISP8124:1998「紙及び板紙−坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0115】
(b)紙厚および緊度
JISP8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0116】
(c)白色度
JIS P 8148:2001「紙、板紙及びパルプ‐ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。なお、本発明においては、白色度が87%以上であれば見栄えに優れ、84%以上であれば見栄えが良好であり、84%未満であれば見栄えに劣る塗工紙となる。
【0117】
(d)白紙光沢度
JIS P 8142:2005「紙及び板紙‐75度鏡面光沢度の測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。なお、本発明においては、白紙光沢度が68%以上であれば見栄えに優れ、65%以上であれば見栄えが良く、65%未満であれば見栄えに劣る塗工紙となる。
【0118】
(e)剛度(縦)
JISP8143:1996「紙−こわさ試験方法−クラークこわさ試験機法」に記載の方法に準拠して測定した。なお、本発明においては、剛度が62以上であれば剛性に優れ、60以上であれば剛性が良好であり、58以上であれば剛性が僅かに良く、58未満であれば剛性に劣る。剛度が58以上であれば、米坪85〜95g/mの塗工紙としては実用に耐える。
【0119】
(f)印刷適性
オフセット印刷機(型番:リソピアL‐BT3‐1100、三菱重工業(株)製)を使用し、カラーインク(品番:ADVAN、大日本インキ化学工業(株)製)にてカラー4色オフセット印刷を5000部行った。この印刷面について、目視及びルーペ(10倍)にて毛羽立ちおよびラフニングの程度を観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0120】
(評価基準)
◎:毛羽立ちおよびラフニングが確認できず、印刷適性に優れる。
○:毛羽立ちおよびラフニングが若干確認でき、印刷適性が若干劣る。
△:毛羽立ちおよびラフニングが多少確認でき、印刷適性が多少劣る。
×:毛羽立ちおよびラフニングがはっきり確認でき、印刷適性に劣る。
なお、前記評価基準のうち、◎、○、△を実使用可能と判断する。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
なお、市販品のA2塗工紙(105g/m)を参考例1として表1に記載した。
【0124】
実施例の塗工紙はいずれも、白色度、白紙光沢度、剛度、印刷適性に優れた塗工紙である。これに対して、比較例の塗工紙は、白色度、白紙光沢度、剛度、印刷適性のいずれかまたは複数の項目に劣り、本発明の目的を満足しない塗工紙である。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明によれば、米坪が比較的低いものでありながら、十分な紙厚を有し、白色度及び白紙光沢度が良好であり、加えて印刷適性及び剛性(腰)が低下しない塗工紙を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙上に、顔料および接着剤を含む塗工層を設けた塗工紙であって、
米坪が85〜95g/m、紙厚が75〜85μm、白紙光沢度が65%以上であり、
前記塗工紙をJIS P 8220:1998「パルプ−離解方法」で離解して得られたパルプ繊維を、繊維長0.05mmごとに分類して得られる繊維長分布曲線において、繊維長0.10mm以上0.65mm未満の範囲に、最も大きな値を有することを特徴とする、塗工紙。
【請求項2】
前記基紙に対する前記塗工層の質量割合が、0.34〜0.53である、請求項1に記載の塗工紙。
【請求項3】
前記顔料として、少なくともクレーを含有し、前記クレーが粒子径分布において0.1μm以上1.0μm未満および1.0μm以上10.0μm未満の範囲それぞれに極大値を有する、請求項1または2に記載の塗工紙。
【請求項4】
前記基紙が填料を含み、前記填料の配合量が、前記基紙100質量%に対して2〜8質量%であり、前記填料が、シリカとシリカ以外の無機粒子とからなる複合粒子である、請求項1〜3いずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項5】
前記塗工層が少なくとも2層であり、前記基紙に接する下塗り塗工層の塗工量に対する、前記基紙から最も遠い最表層塗工層の塗工量の質量割合が、1.5〜1.9である、請求項1〜4いずれか1項に記載の塗工紙。

【公開番号】特開2011−12365(P2011−12365A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158504(P2009−158504)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】