説明

塗工装置

【課題】塗工液を間欠的に吹き付けて基板に塗工液層を間欠的に形成する際の塗工液の吹き付け開始当初と吹き付け完了の際の塗工液調整を行う上で、塗工液のロスの軽減と構成の簡略化の両立を図る。
【解決手段】間欠塗工部110は、ダイヘッド112から基材Kに向けて触媒ペーストを間欠的に吹き付け、基材Kに塗工液層Sを間欠形成する。塗工支援部130は、タンク114から延びてペースト圧送管路116に合流する塗工液サブ管路132に、支援ユニット140を有する。支援ユニット140は、塗工液室筐体142をギヤポンプ144にてダイヘッド側の第1液室146とタンク側の第2液室148に液密に区画する。そして、ギヤポンプ144のギヤ145の回転数を含めた正逆転制御を、触媒ペーストの間欠的な吹き付けタイミングに合わせて実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工液を吹き付けた吹き付け痕を塗工液層として基材に間欠的に形成する塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料とその酸化剤の電気化学反応によって発電する燃料電池では、プロトン伝導性を有する電解質膜(例えば、固体高分子膜)の両膜面にアノードとカソードの両電極を備える。この両電極は、電解質膜の膜面に薄膜層であることから、電極形成には、触媒を担持したカーボン粒子等を電解質樹脂と共にバインダーに分散させた触媒ペーストを塗工液とし、電解質膜を基材とする間欠吹き付け塗工手法が採用されつつある(例えば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−38276号公報
【特許文献2】特開2003−340338号公報
【0004】
特に、特許文献2では、塗工液の吹き付け特性を考慮した工夫がなされている。塗工液の吹き付け開始当初は、塗工液の管路通過抵抗やダイヘッドまでの圧送圧力の伝達遅れ等のため、基材に吹き付けられる塗工液が不足しがちとなる。その反面、塗工液の吹き付け完了の際には、ポンプと言った圧送機器による圧送を停止しても、停止直前までの圧送の継続により、基材に吹き付けられる塗工液が余剰となりがちである。このため、特許文献2では、塗工液の吹き付け開始当初には、ダイヘッドに供給する塗工液をダイヘッドに到る管路に補充し、塗工液の吹き付け完了時には、ダイヘッドに供給される塗工液をダイヘッドに到る管路から吸引して低減させ、間欠的な塗工液の吹き付けにより形成される吹き付け痕の厚みの均一化を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献2では、ダイヘッドに到る管路に対しての塗工液の吸引と補充をピストンの往復動作で行っている都合上、次のような問題点が指摘されるに到った。
【0006】
特許文献2では、塗工液の吹き付け完了時のピストン移動により吸引した塗工液を、次回の塗工液の吹き付け開始当初のピストン移動による補充に用いている。その一方、特許文献2にも既述されているように、塗工液の吹き付け開始当初の塗工液補充量は、塗工液の吹き付け完了時の塗工液吸引量より少ないため、その差分の塗工液を別系統の塗工液経路として構成された逃がし路を経てタンクに戻している。このため、塗工液の経路が増える分だけ、塗工液のロスを招きがちとなる。しかも、逃がし路には、塗工液の吹き付け開始当初のピストン移動に限って塗工液が流れ込み、塗工液の吹き付け完了時のピストン移動では流れ込まないようにするための管路構成や、バルブ構成或いは逆止弁構成が必要となり、機器構成が煩雑となる。
【0007】
本発明は、上述した従来の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、塗工液を間欠的に吹き付けて基板に塗工液層を間欠的に形成する際の塗工液の吹き付け開始と吹き付け完了の際の塗工液調整を行う上で、塗工液のロスの低減と構成の簡略化を両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決することを目的としてなされたものであり、以下の構成を採用した。
【0009】
[適用1:塗工装置]
塗工液を吹き付けた吹き付け痕を塗工液層として基材に間欠的に形成する塗工装置であって、
前記基材に対向して前記塗工液を吹き付けるダイヘッドと前記塗工液のタンクとを有し、前記ダイヘッドに到る塗工液管路を経て前記タンクから前記ダイヘッドに前記塗工液を間欠的に圧送することで、前記ダイヘッドに対して相対的に移動する前記基材に向けて前記ダイヘッドから前記塗工液を間欠的に吹き付ける間欠塗工手段と、
前記タンクから延びて、前記ダイヘッドの上流で前記塗工液管路に合流する塗工液サブ管路と、
該塗工液サブ管路の管路途中に設けられ、塗工液を貯め置く中空の塗工液室と、
該塗工液室を前記ダイヘッドの側の第1液室と前記タンクの側の第2液室に液密に区画すると共に、前記第2液室から前記第1液室に塗工液を圧送する塗工液第1圧送と前記第1液室から前記第2液室に塗工液を圧送する塗工液第2圧送とを回転体の正逆回転により選択的に実行する液室内圧送手段と、
該液室内圧送手段が有する前記回転体の正逆回転を制御して、前記間欠塗工手段による前記塗工液の吹き付け開始のタイミングに合わせて前記塗工液第1圧送を実行し、前記塗工液の吹き付け完了のタイミングに合わせて前記塗工液第2圧送を実行する制御手段とを備える
ことを要旨とする。
【0010】
上記構成を備える塗工装置では、基材への塗工液層の間欠的な形成を、ダイヘッドとタンクとを有する間欠塗工手段で担う。つまり、この間欠塗工手段は、ダイヘッドに到る塗工液管路を経てタンクからダイヘッドに塗工液を間欠的に圧送する。これにより、ダイヘッドに対して相対的に移動する基材には、ダイヘッドから塗工液が間欠的に吹き付けられ、その吹き付け痕が塗工液層として間欠的に形成される。こうした塗工液の間欠的な吹き付けに際しての吹き付け当初と吹き付け完了の際の塗工液調整は、次のようになる。
【0011】
上記構成の塗工装置は、基材への塗工液層の間欠的な形成を担う間欠塗工手段の他に、タンクから延びてダイヘッドの上流で塗工液管路に合流する塗工液サブ管路を備える。この塗工液サブ管路の管路途中に設けられた塗工液室は、塗工液を貯め置いた上で、液室内圧送手段により、ダイヘッドの側の第1液室とタンクの側の第2液室に液密に区画される。液室内圧送手段は、第2液室から第1液室に塗工液を圧送する塗工液第1圧送と第1液室から第2液室に塗工液を圧送する塗工液第2圧送とを回転体の正逆回転により選択的に実行可能であり、液室内圧送手段のこれら第1、第2の塗工液圧送は、制御手段による回転体の正逆回転の制御により実行される。
【0012】
この塗工液第1圧送は、間欠塗工手段による塗工液の吹き付け開始のタイミングに合わせて実行されるので、塗工液の吹き付け開始の際には、塗工液第1圧送により第2液室から第1液室に圧送された塗工液を、第1液室および塗工液サブ管路を経て塗工液管路に到達させて、ダイヘッドからの塗工液吹き付け量の補充調整を図る。また、塗工液第2圧送は、間欠塗工手段による塗工液の完了のタイミングに合わせて実行されるので、塗工液の吹き付け完了の際には、塗工液第2圧送による第1液室から第2液室への塗工液圧送により、第1液室および塗工液サブ管路を経て塗工液管路から塗工液を吸引して、ダイヘッドからの塗工液吹き付けの低減調整を図る。
【0013】
こうした塗工液の吹き付け開始と吹き付け完了の際の塗工液調整を行うに当たり、上記構成の塗工装置では、管路途中に塗工液室を有する塗工液サブ管路しか必要としないので、当該サブ管路とは別系統の管路を必要としない分だけ、塗工液のロスを低減できる。また、塗工液第2圧送の際の塗工液吸引量が塗工液第1圧送の際の塗工液補充量より多くても、その差分の塗工液は、支障なく第2液室に留まる、もしくはその一部がタンクに戻るので、塗工液サブ管路にはバルブや逆止弁等が不要となり、機器構成の簡略化を図ることができる。
【0014】
上記した塗工装置では、次のような態様とすることができる。例えば、前記制御手段により、回転体の正逆回転速度をそれぞれ制御することで、塗工液第1圧送の際の塗工液圧送量と、塗工液第2圧送の際の塗工液圧送量とを個別に調整するようにすることができる。こうすれば、例えば、塗工液の粘度等の性状に応じた速度制御により、その性状に適った塗工液補充や塗工液吸引を図ることができる。
【0015】
また、間欠塗工手段による塗工液の吹き付け当初の吹き付け痕としての塗工液層の厚みを増すような塗工液第1圧送の際の塗工液圧送量調整や、塗工液の吹き付け完了の際の吹き付け痕としての塗工液層の厚みを減ずるような塗工液第2圧送の際の塗工液圧送量調整を、行うようにすることもできる。こうすれば、吹き付け痕としての塗工液層の厚みをより均一とできる。
【0016】
また、塗工液室を、第1液室と第2液室の少なくとも一方の内容積を変更可能とすれば、次のような利点がある。例えば、塗工液の粘度が低いと、塗工液は、第1液室からダイヘッドの側に到る塗工液サブ管路、および第2液室からタンクに到る塗工液サブ管路を、比較的容易に流れる。よって、第1、第2の液室の内容積が小さくても、塗工液補充や吸引に支障はないと共に、内容積低減により塗工液のロスも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例の塗工装置100の概略構成を示すブロック図である。
【図2】ギヤポンプ144の制御タイミングを示すタイムチャートである。
【図3】液室内容積を可変可能な変形例の支援ユニット140Aを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。図1は本実施例の塗工装置100の概略構成を示すブロック図である。本実施例では、燃料電池の発電単位となるセルに組み込まれる膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly/MEA)の製造を意図しており、基材Kは、プロトン伝導性を有する電解質膜である。そして、この基材K(電解質膜)に形成する塗工液層Sを電極とすべく、基材Kに対向するダイヘッド112から吹き付ける塗工液を、触媒ペーストとする。この触媒ペーストは、触媒を担持したカーボン粒子等を電解質樹脂と共にバインダーに分散させたものである。
【0019】
図示するように、塗工装置100は、間欠塗工部110と塗工支援部130と制御装置200とを備える。間欠塗工部110は、基材Kに対向したダイヘッド112と触媒ペーストのタンク114とを有し、タンク114からダイヘッド112に掛けてペースト圧送管路116を有する。この他、間欠塗工部110は、ペースト圧送管路116の管路途中に、タンク114の側からポンプ118と第1バルブ120を備え、ポンプ下流で分岐してタンク114に戻るリターン管路122に第2バルブ124を備える。ポンプ118は、タンク114から触媒ペーストを吸引して、その触媒ペーストをダイヘッド112に向けて圧送する。
【0020】
制御装置200は、ポンプ118を定常状態で運転制御する一方、第1バルブ120と第2バルブ124とについては、一方のバルブを開弁すれば他方を閉弁し、これを繰り返す。これにより、ダイヘッド112は、第1バルブ120が開弁の間(第2バルブ124は閉弁)において、図中に白抜き矢印で示すように所定速度で移動する基材Kに触媒ペーストを吹き付け、基材Kに触媒ペーストの吹き付け痕としての塗工液層Sを形成する。塗工液層Sが形成されると、制御装置200は、第1バルブ120を閉弁して第2バルブ124を開弁するので、ダイヘッド112への触媒ペースト圧送および触媒ペーストの吹き付けは停止し、触媒ペーストは、リターン管路122を経てタンク114に戻る。この間にも、基材Kは移動し、制御装置200は、上記した弁制御を繰り返すので、間欠塗工部110は、触媒ペーストの吹き付け痕としての塗工液層Sを基材Kに間欠的に形成する。なお、第1バルブ120と第2バルブ124は、上記したように弁の開閉を相対的に行うことから、リターン管路122の分岐点に三方弁を組み込むようにすることもできる。
【0021】
塗工支援部130は、タンク114から延びて、ダイヘッド112の上流でペースト圧送管路116に合流する塗工液サブ管路132を備え、当該管路に、支援ユニット140を有する。この支援ユニット140は、触媒ペーストを貯め置く中空の塗工液室筐体142に、ギヤポンプ144を組み込んで備える。ギヤポンプ144は、塗工液室筐体142の液室をダイヘッド112の側の第1液室146とタンク114の側の第2液室148に液密に区画する。区画された第1液室146は、ダイヘッド112の側の上流側サブ管路132Dと連通し、第2液室148は、タンク114の側の下流側サブ管路132Tと連通する。
【0022】
また、このギヤポンプ144は、内蔵するギヤ145の正逆転により、図中に示す矢印x1のように第2液室148から第1液室146に向けて触媒ペーストを圧送する(以下、これを第1圧送と称する)と共に、図中に示す矢印x2のように第1液室146から第2液室148に向けて触媒ペーストを圧送する(以下、これを第2圧送と称する)。こうした第1、第2の圧送の際の触媒ペーストの圧送量は、ギヤ145の正逆回転数によって定まり、回転数が高いほど多くの圧送量となる。制御装置200は、このギヤポンプ144の回転数を含めた正逆転制御、詳しくはギヤ駆動用のモーター150の駆動制御を、第1バルブ120と第2バルブ124の開閉弁制御に伴う触媒ペーストの間欠的な吹き付けタイミングに合わせて実行する。図2はギヤポンプ144の制御タイミングを示すタイムチャートである。
【0023】
この図2に示すように、制御装置200は、交互に第1バルブ120と第2バルブ124とを開閉制御することで、基材Kに既述したように触媒ペーストの吹き付け痕としての塗工液層Sを間欠的に形成する。そして、制御装置200は、第1バルブ120を開弁制御した触媒ペーストの吹き付け開始のタイミングに合わせてギヤポンプ144を例えば正転制御して第1圧送を実行し、触媒ペーストの吹き付け完了のタイミングに合わせてギヤポンプ144を逆転制御して第2圧送を実行する。こうした正逆制御の際、制御装置200は、ギヤポンプ144の正逆回転速度をそれぞれ制御して、第1、第2の圧送の際の触媒ペーストの圧送量を個別に調整し、第1圧送の際の圧送量については、触媒ペーストの吹き付け開始の不足量を補う補充量とする。これにより、触媒ペーストの吹き付け開始の際には、塗工支援部130の支援ユニット140における第1圧送により第2液室148から第1液室146に圧送された触媒ペーストを、第1液室146および上流側サブ管路132Dを経てペースト圧送管路116に到達させて、ダイヘッド112からの触媒ペーストの吹き付け量の補充調整を図る。よって、図示するように、吹き付け開始においては、塗工液層Sは上記補充量でエッジ部Shが補われることになる。
【0024】
第2圧送の際の圧送量については、触媒ペーストの吹き付け完了の際の余剰量に相当する圧送量(吸引量)とする。これにより、触媒ペーストの吹き付け開始の際には、塗工支援部130の支援ユニット140における第2圧送により第1液室146から第2液室148に触媒ペーストを圧送することで、第1液室146および上流側サブ管路132Dを経てペースト圧送管路116から触媒を吸引して、ダイヘッド112からの触媒ペーストの吹き付け量の低減調整を図る。よって、図示するように、吹き付け完了の際には、塗工液層Sは上記圧送量(吸引量)で余剰エッジ部Skが取り除かれることになる。これらの結果、基材Kに間欠形成されたそれぞれの塗工液層Sは、その層の範囲に亘ってほぼ均一の厚さとなり、膜電極接合体における電極となる。
【0025】
以上説明したように、本実施例の塗工装置100では、均一厚さの塗工液層S(電極)を基材K(電解質膜)に間欠的に形成するに当たり、吹き付け開始と完了の際の触媒ペーストの吹き付け量調整を塗工支援部130にて行うようにした。そして、この塗工支援部130は、管路途中に支援ユニット140を有する塗工液サブ管路132しか必要としない。よって、本実施例の塗工装置100によれば、塗工液サブ管路132とは別系統の管路を必要としない分だけ、触媒ペーストのロスを低減できる。また、触媒ペーストの吹き付け完了の際の第2圧送において吸引した触媒ペーストは、その吸引量が吹き付け開始の際の第1圧送の際の補充量より多いとしても、何の支障もなく、第2液室148に留まる、もしくはその一部が下流側サブ管路132Tを経てタンク114に戻る。このため、本実施例の塗工装置100によれば、塗工液サブ管路132にはバルブや逆止弁等を必要としないので、機器構成の簡略化を図ることができる。
【0026】
また、本実施例の塗工装置100では、支援ユニット140におけるギヤポンプ144のギヤ145の正逆回転速度をそれぞれ制御することで、第1圧送の際の触媒ペースト補充量と、第2圧送の際の触媒ペースト吸引量とを個別に調整できる。よって、ギヤ145の正逆回転速度を、例えば、触媒ペーストの粘度等の性状に応じて制御することで、その性状に適った補充量や吸引量での補充・吸引を図ることができることから、触媒ペーストの性状に拘わらず、厚みのほぼ均一の塗工液層Sを容易に基材Kに間欠形成できる。
【0027】
本実施例では、ほぼ均一の厚さの塗工液層Sを得ることを前提に説明したが、仮に塗工液層Sの両端に図2の拡大図に示したような余剰エッジ部Skを残したい場合には、次のように対処できる。この場合、制御装置200は、触媒ペーストの吹き付け開始のタイミングに合わせた第1圧送に際して、ギヤポンプ144を上記した場合より高い回転数で回転制御する。こうすれば、第1圧送の際の圧送量は増加するので、図2の拡大図に示したエッジ部Shを、吹き付け完了の際の余剰エッジ部Skのように隆起したエッジ部とできる。その一方、制御装置200は、第2圧送の際には、既述した吸引量が少なくなるようギヤポンプ144を回転制御することで、塗工液層Sに余剰エッジ部Skを残すことができると共に、この余剰エッジ部Skの形状を吹き付け開始の側の隆起済みエッジ部Shとほぼ同様の形状とすることもできる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、上記の実施例では、第1液室146と第2液室148お内容積を一定のものとしたが、いずれかを可変容積とすることもできる。図3は液室内容積を可変可能な変形例の支援ユニット140Aを説明する説明図である。
【0029】
図示するように、この変形例の支援ユニット140Aは、上記の実施例の支援ユニット140と同じサイズの塗工液室筐体142を有するものの、第2液室148の側に筐体周壁と液密に摺動可能な仕切壁160を備え、ギヤポンプ144についても液密に摺動可能とする。この仕切壁160は、連結シャフト162によりギヤポンプ144と繋がっており、ギヤポンプ144とともに図中の左右方向に移動(摺動)する。よって、この変形例の支援ユニット140Aでは、仕切壁160とギヤポンプ144の移動により、第2液室148の内容積を維持したまま、第1液室146の内容積を拡大・縮小できる。
【0030】
例えば、触媒ペースト等の塗工液の粘度が低いと、その塗工液は、第1液室146からダイヘッド12の側に到る上流側サブ管路132D、および第2液室148からタンク114に到る下流側サブ管路132Tを、比較的容易に流れる。よって、変形例の支援ユニット140Aでは、このような場合には、ギヤポンプ144と仕切壁160とを図3における左方側に摺動させて第1液室146の内容積を小さくしても、塗工液補充や吸引に支障はないと共に、内容積低減により塗工液のロス低減を進めることができる。なお、ギヤポンプ144と仕切壁160とを個別に移動させ、第1液室146と第2液室148を同時にその内容積を変更するようにすることもできる。
【0031】
また、触媒ペーストを塗工液として燃料電池用の膜電極接合体を製造する場合を例に上げて説明したが、触媒ペースト以外の塗工液を間欠的に吹き付けて塗工液層を基板に間欠的に形成するようにすることもできる。
【0032】
この他、ギヤポンプ144に代えてスクリューポンプ等を用いたり、モーター150とギヤ145との間に、回転向きを正逆に切り換えるクラッチを設け、当該クラッチによりギヤ145の正逆を切り換えるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0033】
12…ダイヘッド
100…塗工装置
110…間欠塗工部
112…ダイヘッド
114…タンク
116…ペースト圧送管路
118…ポンプ
120…第1バルブ
122…リターン管路
124…第2バルブ
130…塗工支援部
132…塗工液サブ管路
132D…上流側サブ管路
132T…下流側サブ管路
140…支援ユニット
140A…支援ユニット
142…塗工液室筐体
144…ギヤポンプ
145…ギヤ
146…第1液室
148…第2液室
150…モーター
160…仕切壁
162…連結シャフト
200…制御装置
K…基材
S…塗工液層
Sh…エッジ部
Sk…余剰エッジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工液を吹き付けた吹き付け痕を塗工液層として基材に間欠的に形成する塗工装置であって、
前記基材に対向して前記塗工液を吹き付けるダイヘッドと前記塗工液のタンクとを有し、前記ダイヘッドに到る塗工液管路を経て前記タンクから前記ダイヘッドに前記塗工液を間欠的に圧送することで、前記ダイヘッドに対して相対的に移動する前記基材に向けて前記ダイヘッドから前記塗工液を間欠的に吹き付ける間欠塗工手段と、
前記タンクから延びて、前記ダイヘッドの上流で前記塗工液管路に合流する塗工液サブ管路と、
該塗工液サブ管路の管路途中に設けられ、塗工液を貯め置く中空の塗工液室と、
該塗工液室を前記ダイヘッドの側の第1液室と前記タンクの側の第2液室に液密に区画すると共に、前記第2液室から前記第1液室に塗工液を圧送する塗工液第1圧送と前記第1液室から前記第2液室に塗工液を圧送する塗工液第2圧送とを回転体の正逆回転により選択的に実行する液室内圧送手段と、
該液室内圧送手段が有する前記回転体の正逆回転を制御して、前記間欠塗工手段による前記塗工液の吹き付け開始のタイミングに合わせて前記塗工液第1圧送を実行し、前記塗工液の吹き付け完了のタイミングに合わせて前記塗工液第2圧送を実行する制御手段とを備える
塗工装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記回転体の正逆回転速度をそれぞれ制御して、前記塗工液第1圧送の際の塗工液圧送量と、前記塗工液第2圧送の際の塗工液圧送量とを調整する請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記間欠塗工手段による前記塗工液の吹き付け当初の前記吹き付け痕としての前記塗工液層の厚みを増すように前記塗工液第1圧送の際の塗工液圧送量を調整し、前記間欠塗工手段による前記塗工液の吹き付け完了の際の前記吹き付け痕としての前記塗工液層の厚みを減ずるように前記塗工液第2圧送の際の塗工液圧送量を調整する請求項2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記塗工液室は、前記第1液室と前記第2液室の少なくとも一方の内容積を変更可能とされている請求項1ないし請求項3いずれかに記載の塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−91149(P2012−91149A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242911(P2010−242911)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】