説明

塗布具

【課題】 塗布の強弱操作を使い分けることにより、塗布タッチ強弱別々の描画表現が出来、塗布の強弱操作で薬液の塗布感作用が異なる塗布具を提供すること。
【解決手段】 内部に塗布液収容室を設けた容器の開口部前方に、多数の塗布片からなる丸刷毛状の塗布部を先端に有する塗布先を取り付けた塗布具において、前記塗布先の各塗布片を細い塗布片と太い塗布片とを混在させて配置し、前記細い塗布片を塗布先の中央部で突出させて配置した塗布具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、絵の具、インキ、修正液、糊、接着剤、化粧液、薬液、補修剤、コーティング剤などの塗布液を内蔵すると共に、刷毛状の塗布先を用いた塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に塗布液収容室を設けた容器の開口部前方に、多数の塗布片からなる塗布部を有する塗布先部材を取り付けた塗布具の例としては、特開2004−25065号公報がある。
その特開2004−25065号公報には、塗布液を収納した容器Aと、容器Aの口筒部1に嵌着され、中央に開孔を穿孔した中栓Bと、該中栓Bに対してばねSを介して上下動自在に嵌着された塗布部材Cと、塗布部材Cを覆い容器Aの口筒部1に螺着されるキャップEとを備えた液塗布容器が開示されている。この液塗布容器の塗布部材Cには、中栓Bの開孔19を開閉するシール筒30を備えた基台20と、該基台20に嵌着され、基端に注出弁孔45を設け、先端に注出孔48を設けた注出筒43とを具えており、シール筒30内に注出弁孔45を開閉するボール弁22が挿入支持され、注出筒43内に上下動してボール弁22と係合する作動杆23が軸支されている。注出筒43には、丸刷毛状の多数の刷毛41を立設した球面状の支持壁42が設けられている。
【特許文献1】特開2004−25065号「液塗布容器」。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
内蔵する塗布液が染料インキで、前記塗布具を描画に用いる場合には、塗布先を軽く描画面に押し付けて軽いタッチの点描のような描画表現をしたり、塗布先を強く描画面に押し付けて力強いタッチの描画表現をと使い分けたいことがある。また、内蔵する塗布液が虫さされ薬のような薬液で、その薬液を患部に塗布する場合には、皮膚の炎症部に塗布先を軽く労るように押し付けて塗布したり、皮膚の炎症部に塗布先を強く押し付けて、この塗布先押し付け力の刺激で痒みを低減させるように塗布したりと、皮膚への塗布先押し付けの強弱を使い分けたいことがある。
しかるに、従来の丸刷毛状の塗布部を先端に有する塗布先では、各刷毛片の太さが均等なため、紙面等への描画表現では、塗布タッチの強弱が描画表現に反映されにくものであった。つまり、軽く塗布した場合は点描風におだやかな描画表現ができる。そして、強く塗布しても各刷毛片太さが均等なため、塗布先全体が接触した状態の塗布となり、塗布先の接触面積が広くなるだけの、塗布強さを反映した描画表現は得られなかった。即ち、軽い塗布タッチと強い塗布タッチを、塗布先の接触面積における差異以外には表現できないものであった。
また、従来の丸刷毛状塗布先では、各刷毛片太さが均等なため、軽く・優しい塗布と、強く皮膚を刺激するような塗布を兼ねることが出来ないものであった。つまり、各刷毛片を弱い押し付け力でしなるように設けた場合は、傷ついた患部には塗布時の痛みが伴わないように、軽く・優しく塗布できる。逆に、蚊にさされた後の痒みのある患部に、痒みを低減するために強く塗布先を押し付けて刺激を伴う塗布をしようとしても、描画の状態と同じく、塗布先全体が面で接触するような塗布となり、塗布先接触の刺激による患部への痒みを低減させることはできなかった。
そこで、本発明は、塗布の強弱操作、即ち、押し付け力を使い分けることにより、塗布タッチの強弱固有の描画表現が出来、塗布の強弱操作で薬液の塗布感作用が異なる塗布具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、内部に塗布液収容室を設けた容器の開口部前方に、多数の塗布片からなる丸刷毛状の塗布部を先端に有する塗布先を取り付けた塗布具において、前記塗布先の各塗布片を細い塗布片と太い塗布片とを混在させて配置し、前記細い塗布片を塗布先の中央部で突出させて配置したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、内部に塗布液収容室を設けた容器の開口部前方に、多数の塗布片からなる丸刷毛状の塗布部を先端に有する塗布先を取り付けた塗布具において、前記塗布先の各塗布片を細い塗布片と太い塗布片とを混在させて配置し、前記細い塗布片を塗布先の中央部で突出させて配置したので、塗布の強弱を使い分けることにより、塗布タッチ強弱別々の描画表現が出来、特に、薬液を内在させた塗布具にあっては塗布タッチの強弱で薬液の塗布感作用が異なる塗布具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について添付図面を参照しながら、更に詳細に説明する。図1〜図3に第一実施例を示す。図1は要部を断面にした正面図を示し、図2は図1の塗布先2の断面図を示し、図3は図1の塗布先2の上面図を示す。
参照符号1は、可撓性材料である熱可塑性樹脂のポリプロピレン樹脂材で形成した先端が開口した容器である。この容器1の内部は塗布液収容室となっており、容器1先端は略円筒状の開口部となっている。この開口部外周には、雄ねじ部を設けている。
容器1前方には熱可塑性樹脂のポリプロピレン樹脂材で形成した、貫通孔を有する全体が略筒状の前軸2を嵌め合わせている。
前軸2の貫通孔には、熱可塑性樹脂の低密度ポリエチレン材で形成した多数の刷毛片からなる塗布部3aと基部3bからなる塗布先3を設けている。塗布先3の先端は前軸2の前方に突出するようにし、塗布先3の基部3bは前軸2の内周面とで嵌め合わせるようにしている。
この塗布先3の塗布部3bには、たわみ変形が可能で横断面が略半円形の多数の細い刷毛片である細片3cと、多数の太い刷毛片である太片3dとが混在するように設けている。塗布先3の細片3cの後方や太片3d後方の根元は基部3bと連設している。その細片3cや太片3dは、図3に示すように、樹木の年輪のように5層の多層筒状に設けている。細片3cは、中央部の2層と外側から2層目の合計3層に設けている。また、前記太片3dは、最外層と外側から3層目の合計2層に設けている。塗布部3aでは細片3cや太片3dが混在するように設けている。さらに、塗布部3a全体が丸刷毛状となし、細片3cが中央部で突出するように設けている。
前記塗布先3の基部3bは、円板状で中心が開孔した板部3eと、塗布部3aの中央で前方に向け延びる円筒状の先筒部3fと、板部3eの開孔部から後方に延びる円筒状の中筒部3gと、中筒部3g外周には円筒状の外筒部3hと、中筒部3g外周から外筒部3h内周に向け放射状に連設した板状の12個の縦板部3iを設けている。前記中筒部3gと先筒部3fは貫通しており、その貫通孔は中筒部3gから縮径して先筒部3fとなるように設け、また、中筒部3gと先筒部3fとの漏斗状の境界部を、弁機構の弁受け部である弁座3jとなるように設けている。
【0007】
上記塗布先3の内部先端から前軸2内部後方に向けては、熱可塑性樹脂のポリプロピレン樹脂材で形成した、弁機能且つ弾撥性機能を有するばね弁4を設けている。
そのばね弁4先端には、円柱部4aを設けている。この円柱部4aの先端は、前記塗布先3の中央部に配置した細片3c先端より少し後方、つまり、先端から突出させない位置に配置し、後方に向け前記塗布先3の先筒部3fを通過するように、また、塗布先3の先筒部3fの先端より少し突出するように設けている。
前記円柱部4a後端には半球状の弁部4bを、前記塗布先3の弁座3jと円周線で当接するように設けている。弁部4b後方は円筒状の先筒部4cとなし、前記塗布先3の中筒部3g内に収まるように設けている。ばね弁4の先筒部4cの後方には、先筒部に連設して縦断面が半円形で全体が螺旋形の弾撥部4dを、前記前軸2の内面後端に向け漏斗状に広がるように設けている。その弾撥部後端には円筒状の後筒部4eを設け、この後筒部を前記前軸2の後方内面に嵌め込むように結合させている。即ち、ばね弁4の弁部4bは弾撥部4dにより前方に付勢され、前記塗布先3の弁座3jと圧接することにより弁機構を形成している。前記塗布先3の中筒部3gの内周面と、ばね弁4の先筒部4c外周面とで微小な間隙となす液量規制部を設けている。尚、塗布時には、容器1の塗布液がバネ弁4後方から、弁機構を介して塗布先3の塗布部3a先端へと流出する。この塗布液の流れにおいて、塗布液の流出量を規制する液流出路の横断面積が最小値となる箇所を液量規制部という。液量規制部は液粘度等により適宜設定するが、粘度が高い場合は液量規制部を大きくし、液粘度が低い場合は液量規制部を小さくする。また、前記塗布先3の縦板部3iは、前記前軸2と前記塗布先3が組み合わされた後、ばね弁4を組み込む時の案内部として設けたものである。
参照符号5は前記容器1と螺合脱着が容易な有底筒状のキャップであり、熱可塑性樹脂のポリプロピレン樹脂材の略透明グレード材で形成したものである。そのキャップ5の内面後方には雌ねじ部を設けている。勿論、そのキャップ5は、塗布先3を保護し、塗布具保管中に塗布先3に付着した塗布液の乾燥を防ぐものである。
尚、本実施例では、容器1は可撓性材料で形成されており、容器1を保持した手の押圧調整で、塗布液の吐出量を調整できるようにしているが、他の吐出構造、例えば、容器後方にポンプ機構を設けて内部加圧構造にしたり、硬質容器にして加圧気体を封入した内部加圧構造を用いても良いものである。
【0008】
本実施例の塗布先3を含む全ての部材は、熱可塑性樹脂や合成ゴムといった合成材を意図している。ここで用いる材料は、塗布具の油性・水性等の内蔵液特性や、外観の質感見栄え・透明材等の使用目的に応じて採用すれば良いものである。
例えば、熱可塑性樹脂の単一樹脂材料では、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂類(PA6・PA66・PA610・PA11・PA12)、ポリアリレート樹脂、熱可塑性エラストマー類(ウレタン系・オレフィン系・スチレン系・ポリアミド系・ポリエステル系・ニトリル系)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂などが挙げられる。又、耐熱性、耐寒性、耐衝撃性などを向上する目的で、これら各種樹脂材料を混合したポリマーアロイ材料を用いたり、各添加剤による特性を改質することもできる。さらに、一旦市場で使われた製品を成形材料毎に分別され、再生されたリサイクル成形材料や、材料メーカーでの規格外の成形材料(オフグレード)を用いることもできる。合成ゴムでは、ジエン系合成ゴムであるブタジェンゴム、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴムや、非ジエン系合成ゴムであるブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴムや、その他ゴムではシリコンゴム、塩素化ポリエチレン、エピクロロヒドリン、多硫化ゴム等が挙げられる。
特に、薬液用塗布具等の雑菌の繁殖を嫌う塗布具に用いる塗布先3やバネ弁4等の個々の部材には、抗菌剤を予め練り込んだ材料を用いて成形することもできる。抗菌剤には、有機物系のものと無機物系のものとがあるが、有機物より無機物の方が好ましく、無機系の物質としては、銀・銅・亜鉛・酸化銅などや、これらの物質を酸化珪素、炭酸カルシウムなどの無機微粒子に吸着固定させたものなどが挙げられる。ちなみに、市販の抗菌剤では、アバタイザーAW((株)サンギ製)、ゼオミック(品川燃料(株)製)などが挙げられる。
【0009】
作用について説明する。前記実施例で、塗布具を描画に用いる場合には、塗布先3を軽く描画面に押し付けると、塗布部3aの中央部に突出するように配置した塗布先3の細片3c先端が少したわむように描画面に接触する。同時に、外側から2層目の細片3c先端や、太片3dの先端が描画面に接触する。その結果、各塗布片先端が略点状に接触するので、多数の細点が集合した点描風の描画表現ができる。また、塗布先3を軽く描画面に押し付けて直線状に移動させた場合は、多数の細い線が平行に引かれたような描画表現ができる。
次に、塗布先3を強く描画面に押し付けると、塗布部3aの中央部に突出するように配置した塗布先3の細片3c先端がかなりたわむように描画面に接触する。同時に、外側から2層目の細片3c先端や、太片3dの先端が少したわむように描画面に接触する。その結果、塗布部3a全体の描画面への接触面積も増すが、塗布部3aの中央部に配置した細片3cの先端側面が短線状の描画跡になるのに加え、太片3dの先端が少したわむので、太片3dの先端側面接触の大きな点からなる描画跡も同時に描画され、全般に軽い塗布タッチよりは大きな点接触跡が多数集合された描画跡が表現される。また、塗布先3を強く描画面に押し付けて直線状に移動させた場合は、多数の太い線と細い線が混在して平行に引かれたような描画表現ができる。
このように、塗布先3の接触面積における差異以外に、軽い塗布タッチでは多数の細点が集合した点描風表現や多数の細い平行線表現を、また、強い塗布タッチでは多数の大きな点接触跡表現や太細混在した平行線表現をと、塗布タッチの強弱別の描画表現が出来るものである。
さらに、描画塗布と同様に、薬液を軽く塗布する場合には、塗布先3の細片3c先端が少したわむように皮膚の炎症部に接触する。同時に、外側から2層目の細片3c先端や、太片3dの先端が患部に接触する。その結果、各刷毛片先端が略点状に軽く接触するので、傷ついた患部には塗布時の痛みが伴わないように軽く・優しく塗布できる。
次に、塗布先3を強く患部に押し付けると、塗布部3aの中央部に突出するように配置した塗布先3の細片3c先端がかなりたわむように患部に接触する。同時に、塗布部3aの最外層と外側から3層目の合計2層に配置した相対的に剛性の高い太片3dの先端が強く患部を窪ますように接触する。その結果、多数の太片3dの各先端は、まとめられた状態で皮膚に押し当てられるのではなく、各先端が個々に離れた状態で押し当てられる。つまり、太片3d先端間には皮膚の隆起が生じる(細片3cは大きく撓んで、皮膚の隆起を妨げない)。このように、太片3dの多数の先端が点状に離間して皮膚に押し当てられるので、皮膚表面には、押し当てられて圧縮される箇所と、押し当て間に生じる隆起による伸ばされた箇所が生じ、同時に容器からの薬液が皮膚表面に供給されることになる。この状態で塗布先3を皮膚上で移動させると、皮膚の圧縮箇所と伸び箇所が逆転したりする。
ここで、虫さされ患部でみると、皮膚の圧縮箇所では弱い痛み感で刺激してかゆみ感を緩和し、皮膚の伸ばされた箇所では、細胞や毛根の拡張により薬液の吸収が促進される。つまり、患部に対して、かゆみ感の緩和と、薬液の沁み込みを早くすることを同時に果たすこととなり、薬効性を早めうるものである。
このように、軽い塗布タッチでは傷ついた患部への塗布時の痛みが伴わないように軽く・優しく塗布でき、強い塗布タッチでは患部へのかゆみ感緩和と薬効性を早めることができるものである。
尚、繰り返して塗布していると各刷毛片が曲がり変形してくるが、塗布先3の塗布部3aは、最外層に太片3dを設け、最外層の太片3dを最も短くしているので、最外層に細片3cを配したり、細片3cを長くするよりは、刷毛片の変形を抑えることができるものである。
前記塗布先3の後方に配置した弁機構は、ばね弁4の弾撥部4dにより常時付勢されて、塗布先3の弁座3jとばね弁4の弁部4bが密閉されているので、キャップ5を閉め忘れて塗布具を横向きや下向きに放置されても、また、可撓性の容器1が押されても、容器1の塗布液の外部への漏れ出しが防止されている。塗布先3の塗布部3bを描画面や皮膚に接触させた時にのみ、容器1内の塗布液が塗布先3の塗布部3aへと供給される。つまり、塗布先3の塗布部3bを塗布面に押し付けると、塗布先3b中央部の細片3cがたわむと同時に、ばね弁4の円柱部4a先端が、ばね弁4の弾撥部4dに抗して押し込まれる。ばね弁4の円柱部4a先端が押し込まれると、ばね弁4の弁部4bが塗布先3の弁座3jから離れ開弁する。
塗布先に容器と連通する開孔を設けて、この開口をキャップの内奥中心から延設した円柱状突起で塞げるようにしていれば、弁機構のばね弁4を省いて、構成部品数を減らした4部材の構造を採用しても良いものである。
【0010】
図4〜図6に第二実施例を示す。図4は要部正面の断面図を示し、図5は図4の塗布先13の断面図を示し、図6は図4の塗布先13の上面図を示す。
容器11の先端開口部の外周には、上下に2本の凸周部を設けている。
容器11の前方には塗布先13を嵌め合わせている。塗布先13は、第一実施例の前軸2と塗布先3とを、略一体に設けたものである。塗布先13の後方には、外側から軸心に向け大、中、小の3個の筒部を設けている。塗布先13外側の大筒部であるL筒部13Kの内周面には、上下に全周の2本の溝を設け、前記容器11の凸周部と嵌め合うようにして、塗布先13が前記容器11から容易に外れないようにしている。L筒部13K内側には、中筒部であるM筒部13lを設けている。このM筒部13lは、前記容器11の先端開口部内面に挿入されるように設けている。また、M筒部13lの内側には、小筒部であるS筒部13mを設けている。M筒部13l前方とS筒部13m前方とを連設し、軸心が開口した板状の板部13eを設けている。この板部13e前方には、多数の刷毛片からなる塗布部13aを設けている。
本実施例の塗布部13aと前記第一実施例の塗布部3aとの差異は以下の3項がある。まず第一項は、細片13cが前方は細く、後方の板部13eと連設した部位では、太片13dと同じ太さになるような、前方から後方に向けテーパーを大きくした形状に設けていることである。差異の第二項は、多数の細い刷毛片である細片13cと、多数の太い刷毛片である太片13dの混在状態は、図6に示すように太片13dが最外層の全てと外側から2層目と3層目の両方に点在させて、細片13cと混在するように設けていることである。差異の第三項は、塗布部13aの5層の各刷毛片基部は、板部13eの外側から中心側に向けて略漏斗状で、且つ、階段状に窪むように連設させていることである。
塗布部以外の本実施例と前記第一実施例との差異は、ばね弁14の弾撥部後端には後筒部を設け、この後筒部を前記塗布先13のM筒部13lの後方内面に嵌め込むように結合させている。前記キャップ15内面後方には、前記塗布先13のL筒部13k外周に設けた突部との脱着が容易になるような、嵌め合い突起部を設けている。そのキャップ15内面の前後途中には、軸心に向け突出した全周状のリブが設けられている。このキャップ15の全周状のリブは、前記塗布先13のL筒部13k外周の前方とで密接させ、キャップ15内の奥部が気密となるようにしている。
本実施例は、前記第一実施例の前軸2と塗布先3を一体に設けたので、弁機構を有した塗布具構造を容器11と塗布先13、バネ弁14、キャップ15の4部材で構成させたものでもある。
また、塗布先13の板部13eを階段状にして、塗布部13aの中央側基部が漏斗状に窪むようにし、塗布部13a前方は凸球状に設けているので、細片13cの太片13dに対する長さ比は、第一実施例で示すよりも大きくすることができる。太細刷毛片の長さ比を大きくした分、太細片のたわみ力差異、即ち、太細片の硬軟差異を大きくすることができる。太細片の基部では同一な太さにしているので、太細片を成形するための成形金型は5層の多層筒状の入れ子構造を採用できるが、この多層構成の入れ子の各型厚を一定にすることができる。尚、成形金型の多層の円筒形状となす入れ子型部品の、型表面仕上げ方で、成形された塗布先の塗布部先端を軸心側にまとまるようにすることができる。円筒状の入れ子型部品の、各塗布片が彫られた彫り込み部は軸方向に#1000程の紙ヤスリ等で型磨き仕上げ(縦磨き)をし、外周面は鏡面仕上げや円筒周方向に#1000程の紙ヤスリ等で型磨き仕上げ(横磨き)をする。金型に溶融樹脂が充填され、型冷却後に塗布先が金型から取り出される時、塗布片の彫り込み部は離型性がよく、逆に、外周面は離型性がややわるくなる。塗布片の離型性がよい面は樹脂収縮傾向となり、逆の離型性がわるい面は伸び傾向となり、結果として、各塗布片の先端が中心方向に変形し、軸心側にまとまるようにすることができる。成形された塗布先の塗布部先端を外周側に広げる場合は、金型表面みがきを、上記と逆にすればよいものである。
【0011】
図7に第三実施例を示し、塗布先23の上面図を示す。
本実施例における塗布先23と第一実施例や第二実施例の塗布先との差異は、塗布部23aの最外層の刷毛片を外側に向け突出した略半円形に設けていることである。その他、塗布部23aの最外層の刷毛片は、太片23dと細片23cとを混在させて並べている。
最外層の略半円形の刷毛片を外側に向け突出させているので、塗布部23aの側面を用いて、軽いタッチの描画では、各塗布片が描画面と線接触し、第一実施例や第二実施例のような塗布片の面接触よりさらに多数の平行した細い線の描画跡を得られる。また、塗布部23aの最外層の刷毛片を太細と混在させているので、第一実施例や第二実施例よりも、太片23dの配置間隔をまばらにできるので、薬液を強く塗布する場合の薬効性を高めうるものとなっている。
尚、第一実施例〜第三実施例の塗布部の刷毛片配置は、全て5層の多層配列で示したが、用途に応じて、少なくしても良く、逆に多くしても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一実施例の正面図。
【図2】図1の塗布先2の正断面図。
【図3】図1の塗布先2の上面図
【図4】第二実施例の要部正面図
【図5】図4の塗布先12の正断面図
【図6】図4の塗布先12の上面図。
【図7】第三実施例の塗布先23の上面図
【符号の説明】
【0013】
1 容器
2 前軸
3、13、23 塗布先
3a、13a、23a 塗布部
3b 基部
3c、13c、23c 細片
3d、13d、23d 太片
3e、13e 板部
3f、13f、23f 先筒部
3g 中筒部
3h 外筒部
3i 縦板部
3j、13j 弁座
13k L筒部
13l M筒部
13m S筒部
4、14 バネ弁
4a 円柱部
4b 弁部
4c 先筒部
4d 弾撥部
4e 後筒部
5、15 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に塗布液収容室を設けた容器の開口部前方に、多数の塗布片からなる丸刷毛状の塗布部を先端に有する塗布先を取り付けた塗布具において、前記塗布先の各塗布片を細い塗布片と太い塗布片とを混在させて配置し、前記細い塗布片を塗布先の中央部で突出させて配置したことを特徴とする塗布具。
【請求項2】
塗布先の各塗布片の根元を基部で連設すると共に、前記各塗布片を多層筒状に配置したことを特徴とする請求項1記載の塗布具。
【請求項3】
前記塗布先内に弁機構を配置したことを特徴とする請求項1、或いは、請求項2に記載の塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−15211(P2006−15211A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194278(P2004−194278)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】