説明

塗布機能を有する包装体

【課題】消毒剤、クリーナー、化粧剤、その他の塗布剤を、これらが使用者の手に触れることを防止しつつ、簡単かつ効率的な塗布作業が可能となる包装構造を提供する。
【解決手段】本発明の包装体は、「塗布剤を含浸させた含浸シート13」と「含浸シート13を片面に保持するとともに、当該塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも有する基材シート12」と「含浸シートとは反対側の基材シート面に固定され、基材シート12との間に、使用者の手を挿入する空間を形成する外側シート11」と「基材シートに保持された含浸シート13を覆うとともに、前記塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも有する剥離可能な剥離シート14」と、を備える。この包装体によれば、基材シートと外側シート間の空間に片手を挿入するとともに、他方の手で剥離シートを剥離すれば、それだけで直ぐに塗布作業に取りかかることができるので、極めて使い勝手がよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば消毒液等の塗布剤を含浸したシートを包装し、当該シートを露出させるよう開封して、消毒作業(塗布作業)を行う包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、しばしば、患者の体、あるいは手術台等の消毒が必要となる。そのような場面で使用される消毒手段として、例えば特許文献1、2に開示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1の消毒シート包装体においては、消毒シートが袋体に収容されている。袋体を開封して、ピンセットまたは指で摘んで消毒シートを取り出して使用する。
このような構成では、消毒シートに含浸された薬剤が使用者の手に触れることもあり、衛生上好ましくない。特に、手に触れては好ましくない薬剤に対しては、このような構成の包装体を適用することはできない。
【0004】
特許文献2では、「薬液を吸収可能な綿棒」と「薬液を入れた収納袋」が個別に用意されており、両者が1つの包装体に収容されている。
この構成では、使用に際して、包装体を開封して両者を取り出し、さらに薬液収納袋を開封して、薬液を綿棒に含浸させる、といった面倒な作業が必要となる。また綿棒では、広範囲に薬液と塗布するのが面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−253986号公報
【特許文献2】特開平11−206812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の事情に鑑みて創案されたものであって、例えば、消毒剤、クリーナー、化粧剤、その他の塗布剤を、これらが使用者の手に触れることを防止しつつ、簡単かつ効率的な塗布作業が可能となる包装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、以下の特徴を備えた包装体が提供される。
本発明の包装体は、「塗布剤を含浸させた含浸シート」と「含浸シートを片面に保持するとともに、当該塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも有する基材シート」と「含浸シートとは反対側の基材シート面に固定され、基材シートとの間に、使用者の手を挿入する空間を形成する外側シート」と「基材シートに保持された含浸シートを覆うとともに、前記塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも有し剥離可能な剥離シート」とを備える。
【0008】
本発明において「塗布剤」とは、何らかの対象に塗布されるものを意味しており、その具体的内容は限定されない。代表的な例としては、消毒剤、床用ワックス、洗浄クリーナー、化粧水など、家庭や医療機関、その他において使用されるものである。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を備えた本発明の包装体によれば、基材シートと外側シート間の空間に片手を挿入するとともに、他方の手で剥離シートを剥離すれば、それだけで直ぐに塗布作業に取りかかることができるので、極めて使い勝手がよい。
また、基材シートが塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも備えているため、使用者の手に塗布剤が付着することが防止される。これは、人体に好ましくない塗布剤の場合に、特に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装体の積層構造を説明する図。
【図2】図1の包装体の使用方法を説明する図。
【図3】図1の包装体の使用方法を説明する図。
【図4】基材シートへの剥離シートの固定態様を説明する図。
【図5】図1の包装体およびその変形例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して、以下に詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る包装体10の積層構造を示している。
図1に示したように、包装体10は、次の4つのシート材から構成される。
【0012】
≪含浸シート13≫
含浸シート13は、塗布剤を含浸している。「塗布剤」とは、例えば、消毒剤、床用ワックス、洗浄クリーナー、化粧水など、何らかの対象に塗布されるものを意味する。
含浸シート13は、含浸させた塗布剤を保持し塗布可能とするという目的から、織布または不織布を用いることができ、基材シート12及び剥離シート14とのヒートシール性を考慮するとポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系やポリエステル系等の不織布で構成されることが好ましいが、塗布目的を達成できるものであれば、適宜の材料を使用することが可能である。
【0013】
≪基材シート12≫
基材シート12は、含浸シート13を片面に保持する。含浸シート13は、その全面に渡って、接着剤やヒートシール等を利用して基材シート12に固定されていてもよいが、その周縁部のみを基材シート12にシールして固定することが好ましい(その方が、塗布剤をより多く含浸できる)。
また、基材シート12は、含浸シート13に含浸された塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも有しており、酸素や水分又は水蒸気による塗布剤の劣化を防止することを目的とし酸素バリア性や水蒸気バリア性を有するシートを介在させることが好ましく、さらに塗布剤の吸着を防止することを目的とし塗布剤の非吸着性を備えた樹脂層を塗布剤との接触面に採用することがより好ましい。後に説明するように、使用者は、その手を外側シート11と基材シート12の間に挿入して包装体10を使用する。そのため、基材シート12に塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質をもたせることで、使用者の手に塗布剤が付着するのを防止できる。
基材シート12の具体的な材質は、塗布剤の種類に対応させて、それに対するバリア性を有するよう公知の材料を適宜選択すればよい。例えば、消毒剤に対しては、酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れたアルミニウム箔を介在させることによって塗布剤の揮発や劣化の防止を実現できる。
【0014】
≪外側シート11≫
外側シート11は、含浸シート13とは反対側の基材シート面に固定される。図2、3に示したように、使用者は、外側シート11と基材シート12との間に手を挿入して、包装体10を使用する。
【0015】
≪剥離シート14≫
剥離シート14は、基材シートに保持された含浸シート13を覆う。この剥離シート14は、使用直前(塗布作業直前)に剥離除去されるものであり、含浸シートまたは基材シートとの剥離性を付与するため、片面に易剥離性樹脂層を備えたものであることが必要である。また、剥離シート14は、その内面が含浸シート13に当接するため、含浸シート13に含浸された塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも有しており、酸素や水分又は水蒸気による塗布剤の劣化を防止することを目的とし酸素バリア性や水蒸気バリア性を有するシートを介在させることが好ましく、さらに塗布剤の吸着を防止することを目的とし塗布剤の非吸着性を備えた樹脂層を塗布剤との接触面に採用することがより好ましい。
【0016】
≪使用方法≫
次に、包装体10の使用方法の一例を説明する。
図2、3に示したように、最初に使用者は、外側シート11と基材シート12の間に手を挿入する。このため、外側シート11および基材シート12は、少なくとも、一周辺11a、12aにおいては、互いにシール固定されておらず、開口状態にある。他の三辺については、使用者が両シートの間に手を入れて塗布作業が可能となるように、少なくとも部分的に互いの周辺をシール固定しておく。
【0017】
次に、剥離シート14を剥がして、含浸シート13を露出させる(図3a→図3b)。なお、図示した例では、剥離シート14は透明シートであるので、図3(a)において、剥離シート14の向こう側に存在する含浸シート13が透けて見えている。
図3(b)の状態で、使用者は、含浸シート13に含まれた塗布剤(消毒液、床用ワックス、洗浄クリーナー、化粧水など)を、塗布対象に適用することが可能となる。
【0018】
≪基材シート12への剥離シート14の固定態様:図4≫
剥離シート14は、含浸シート13を覆って保護するとともに、含浸された塗布剤が使用前に揮散等によって減少するのを防いでおり、さらに塗布剤の酸素や水分又は水蒸気により劣化することを防止している。したがって、剥離シート14は、少なくとも、含浸シート13の全体を覆う必要がある。
そして、剥離作業を容易にするための摘み領域24を備えていることが好ましい。すなわち、図4に示したように、剥離シート14は、その4辺14a〜dにおいて基材シート12にシールされ、基材シート12とで含浸シート13を封止している。そして、1辺14dを超えて、剥離シート14は延在し、その部分が摘み領域24を構成している。なお、摘み領域24は、14a〜cのいずれか一辺を超えて延在するように構成してもよい。
また、図4に示した例では、シール領域14dと含浸シート13の間に一定間隔を置いているが、この間隔を無くしてもよい。すなわち、シール領域14dが含浸シート13の一辺に重なるようにしてもよい。
【0019】
≪変形例:図5b≫
図5(a)は、図1〜4に示した包装体10を示しており、図5(b)は、その変形例を示している。図5(a)の包装体10では、使用者が手を挿入する1辺において、外側シート11と基材シート12はシールされておらず、最初から開口している。
これに対して、図5(b)の変形例では、外側シート11と基材シート12は、最初は全周において互いにシール固定されていて、手を挿入する開口は存在しない。重なり合った両シート材11、12の周縁に切込み30が形成されていて、この切込み30から両シート材11、12の一周辺領域31(図5bにおいて、一点鎖線Rよりも手前側の領域)を破断除去することにより、使用者の手を挿入する挿入口が形成される。
このような構成によれば、使用者が手を入れる空間は、包装体の使用直前まで外部から遮断された状態となるので、衛生面でより好ましい。
【0020】
≪各シート材の材質の例示≫
本発明において、各シート材11〜14を構成する具体的な材質は特に限定されず、上に説明した機能を奏するよう、公知の材料を適宜使用することが可能である。以下には、材質の一例を説明する。
【0021】
各シート材の積層構成は、図1の上から順に、以下の通りである。

≪外側シート11≫ PET/印刷層/DL/CPP

≪基材シート12≫ HSOPP/DL/アルミニウム層/DL/LLDPE

≪含浸シート13≫ 不織布(オレフィン系ベース)

≪剥離シート14≫ EP/DL/酸化ケイ素蒸着PET/DL/印刷層/PET

PET :ポリエチレンテレフタレート
DL :接着剤層
CCP :未延伸ポリプロピレン
HSOPP:ヒートシール性延伸ポリプロピレン
LLDPE:線状低密度ポリエチレン
EP :易剥離性樹脂層
【符号の説明】
【0022】
10 包装体
11 外側シート
12 基材シート
13 含浸シート
14 剥離シート
24 摘み領域
30 切込み
31 破断除去される一周辺領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布剤を含浸させた含浸シート(13)と、
含浸シート(13)を片面に保持するとともに、当該塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも有する基材シート(12)と、
含浸シートとは反対側の基材シート面に固定され、基材シート(12)との間に、使用者の手を挿入する空間を形成する外側シート(11)と、
基材シートに保持された含浸シート(13)を覆うとともに、前記塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも有し剥離可能な剥離シート(14)と、を備えた包装体。
【請求項2】
上記含浸シート(13)は、その周縁部を基材シートにシールすることで、基材シート(12)に保持されている、請求項1記載の包装体。
【請求項3】
上記剥離シート(14)は、含浸シート(13)の全体を囲むシール領域(14a〜d)において基材シート(12)に固定されているとともに、当該シール領域の外方に延在する摘み領域(24)を備える、請求項1または2記載の包装体。
【請求項4】
上記基材シート及び剥離シートが、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の包装体
【請求項5】
上記外側シート(11)と基材シート(12)は、互いの全周においてシール固定されており、
重なり合った両シート材の周縁に切込み(30)が形成されていて、当該切込み(30)から両シート材の一周辺領域(31)を破断除去することにより、使用者の手を挿入する挿入口が形成される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−140138(P2012−140138A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292357(P2010−292357)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】