説明

塗布膜除去装置及び塗布膜除去方法

【課題】浸漬塗布法による円筒状基体下端内面の余剰塗布膜を、塗布膜除去装置への汚れ付着を軽減し、短時間で精度よく除去する塗布膜除去装置および塗布膜除去方法を提供する。
【解決手段】塗布膜除去装置は、支持部材1と支持部材1の側面に取り付けられた内面塗布膜除去部材3と支持部材1の上端に位置するテーパー面2とテーパー面2に設けられた溝6と支持部材の最上端部に位置する溶剤供給孔5を有する。円筒状基体10に支持部材1を挿入し、支持部材1の最上端部の溶剤供給孔5から溶剤をオーバーフローさせ、テーパー面2に設けられた溝6によって内面塗布膜除去部材3に効率的に溶剤を供給する。そして、支持部材1を回転することで、支持部材1に取り付けられた内面塗布膜除去部材3を回転し、基体下端内面の余剰塗布膜を摺擦して除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬塗布法によって塗布膜を形成した円筒状基体の余剰塗布膜を除去する装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、レーザービームプリンタなどに用いられる電子写真感光体の製造方法として、円筒状基体を感光体用塗布液中に浸漬し、その後引き上げることにより塗布膜を形成する浸漬塗布法がその生産性の高さという点から広く採用されている。しかし、浸漬塗布法では、一般に基体を塗料中に浸漬した際に、基体下端の内面に塗料の一部が浸入して付着してしまうため、余分な塗布膜が形成されてしまう。
【0003】
基体下端内面に塗布膜が存在すると、電子写真装置に組み込むためにフランジを挿入する場合や、導通をとる場合に不都合が発生するという問題がある。そこで、円筒状基体に浸漬塗布法によって塗布膜を形成する場合、塗布膜形成後に基体下端内面の余剰塗布膜を除去する工程が必要である。
【0004】
従来の余剰塗布膜の除去装置として、余剰塗布膜を溶解または膨潤しうる溶剤を供給し、ゴムなどの柔軟性のある部材などで摺擦して除去する装置が提案されている。例えば特許文献1では、円筒状基体下端内部に挿入した装置から溶剤を吐出し、ブラシで摺擦することで塗布膜を除去する方法が提案されている。また、特許文献2のように溶剤をノズルから吐出し、多孔性スポンジで摺擦することで塗布膜を除去する装置が提案されている。
【0005】
しかし、上記従来例では、溶剤を最も必要とする塗布膜除去部材の摺擦部に向けて溶剤が供給されていないため、短時間で精度の良い塗布膜の除去ができなかった。また、溶剤を多量に使うと、基体内面の余剰塗布膜は除去されやすいが、基体外面の塗布膜への溶剤の液ハネや染みあがりなど、その他の問題が懸念される。そこで、溶剤の量を少量に抑えても精度よく塗布膜除去が行える必要がある。
【0006】
さらに、上記従来例では余剰塗布膜を除去するための溶剤を側面から吐出するため、溶剤吐出部より上方にある箇所などのように、基体内部に挿入していても溶剤で濡れない箇所があった。このような塗布膜除去装置では、除去した塗布膜が跳ね返ってその箇所に付着した場合、溶剤がかからないために汚れが取れずに溜まりやすいという塗布膜除去装置を汚染するという問題があった。この付着した塗布膜のカスは、乾燥してはがれ、円筒状基体に再付着して感光体不良を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−123243号公報
【特許文献2】特開2000−305292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の目的は、浸漬塗布法による円筒状基体下端内面に生じうる余剰塗布膜を、除去した塗布膜の付着による塗布膜除去装置の汚染を軽減しつつ、短時間で精度よく安定的に除去することができる塗布膜除去装置および塗布膜除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記の目的は、下記構成により達成される。
【0010】
回転可能な支持部材と、浸漬塗布法によって円筒状基体の内面に付着した余剰塗布膜を摺擦することで除去するための内面塗布膜除去部材と、該内面塗布膜除去部材に溶剤を供給する溶剤供給機構からなる塗布膜除去装置において、該支持部材の最上端部に、該溶剤供給機構より送られる溶剤をオーバーフローさせることで円筒状基体内面に溶剤を供給する溶剤供給孔を有し、かつ、該支持部材には、該溶剤供給孔よりも下方に該支持部材と共に回転可能に該内面塗布膜除去部材が取り付けられており、該内面塗布膜除去部材は基体の内面と摺擦しうる摺擦部を有しており、かつ、該支持部材は、下方に向かって漸次径が広くなるテーパー面を該溶剤供給孔と該内面除去部材の間に有し、該支持部材のテーパー面に該内面塗布膜除去部材の摺擦部の方向に向いた溝形状が設けられていることを特徴とする塗布膜除去装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浸漬塗布法によって形成された円筒状基体下端内面の余剰塗布膜を、除去した塗布膜が塗布膜除去装置へ付着して汚れが蓄積することによる汚染を軽減しつつ、短時間で精度良く安定的に除去する塗布膜除去装置および塗布膜除去方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の塗布膜除去装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の塗布膜除去装置の一例を示す概略上面図である。
【図3】溶剤供給孔の内側にも内溝を施した一例を示す概略図である。
【図4】溶剤供給孔の縁部分に溝形状があることで、縁部分の高さが等しくない一例を示す概略上面図である。
【図5】溶剤供給孔の縁部分が水平でなく、縁部分の高さが等しくない一例を示す概略断面図である。
【図6】外面塗布膜除去部材を設置した一例を示す概略断面図である。
【図7】支持部材のテーパー面に溝形状を有さない塗布膜除去装置を示す概略上面図である。
【図8】従来の塗布膜除去装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の塗布膜除去装置の一例を示す概略断面図であり、図2は、本発明の塗布膜除去装置の一例を示す概略上面図である。
【0015】
図1に示すように、支持部材1は余剰塗布膜が形成された被処理物である円筒状基体10内に挿入可能に設けられていて、図示していない回転駆動手段により軸線回りに回転可能となっている。支持部材1の側面には、内面塗布膜除去部材3が取り付けられており、支持部材1と一緒に回転可能となっている。内面塗布膜除去部材3は支持部材1を円筒状基体10内に挿入したときに、円筒状基体内面に接触するようになっており、支持部材1を回転させることで基体内面を摺擦して、基体内面に存在している余剰塗布膜を除去する機能を果たす。支持部材1の最上端部には、余剰塗布膜除去用の溶剤が吐出される上方を向いた溶剤供給機構である溶剤供給孔5が設けられている。溶剤は図示していないポンプによって支持部材1に送られ、支持部材1の内部に設けられた流路4を通って溶剤供給孔5からオーバーフローする。オーバーフローした溶剤は基本的には全方位に向かって溢れて流れだし、溶剤供給孔5より下方の円筒状基体部分の全面を濡らすことができる。使用する溶剤としては、特に限定されないが塗布膜を溶解しうるものが望ましい。
【0016】
さらに、図1に示すように、支持部材1の上端部分は下方に向かって漸次径が広がる形状のテーパー面2を有している。図2に示すように、テーパー面2には、溶剤供給孔5から内面塗布膜除去部材3の摺擦部に向かって伸びた溝6が設けられている。溝6は、溶剤供給孔5からオーバーフローした溶剤が、テーパー面2を流れる際に、溝6に流れ込み、内面塗布膜除去部材3の摺擦部に溶剤が供給されやすくなる機能を果たす。
【0017】
内面塗布膜除去部材3の形状としては、除去部材が円筒状基体の周方向に一周にわたって存在して基体と周方向で接触する場合、摩擦力が高くなりやすく、また、摺擦して除去した余剰塗布膜を逃がす部分がなくなり、除去部材に残渣が溜まって除去の効率が落ちたりするため、そのような接触をしない形状のものが好ましい。
【0018】
また、内面塗布膜除去部材は、単数もしくは複数設けても良い。内面塗布膜除去部材を複数設けたり、摺擦部が複数ある場合は、上記説明した機能を果たすように、図2に示すように、内面塗布膜除去部材の数または摺擦部の数に対応する溝を複数設けることが望ましい。
【0019】
内面塗布膜除去部材3の材質は、耐磨耗性および耐溶剤性を考慮して選択でき、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリイミドのような樹脂、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブチレンゴム、フッ素系ゴムのようなゴムを使用することができる。
【0020】
図3は、溶剤供給孔の内側にも内溝を施した一例を示す概略図である。図3に示すように、溶剤供給孔5の内側に吐出方向に向いた内溝7を設けることがより好ましい。この内溝7は、支持部材1の回転軸である中心軸線から見て、テーパー面2に設けられた溝6とほぼ同一方向(略同方向)に設けられている。溶剤供給孔5から溶剤をオーバーフローさせるときに、溶剤は基本的には全方位に溢れてテーパー面2に流れ出すが、内溝7を設けることで溝6方向へ流れ出る溶剤量が多くなり、その結果内面塗布膜除去部材3への溶剤供給量が多くなるという利点がある。
【0021】
さらに、支持部材1の頂点である溶剤供給孔5の縁部分の高さを等しくして水平にすることが好ましい。こうすることで、オーバーフローした溶剤がテーパー面2の溝6や他の一部分のみに極端に流れることなく、溶剤供給孔5より下方の塗布膜除去装置の円筒状基体内に挿入する部分全体を溶剤で濡らすことができる。余剰塗布膜を摺擦して除去した際に、余剰塗布膜が跳ね返って支持部材1などに付着し、これが円筒状基体に再付着して感光体不良となる場合がある。この問題に対して、溶剤を円筒状基体に対して全体的に流すことで、除去部材や支持部材の汚れを落としたり乾燥を防いだりして、この付着カスが乾燥して剥がれ落ちて付着し、感光体不良が発生する問題を低減させることができる。
【0022】
また、縁部分の高さが水平でない例としては、図4のように溝6が溶剤供給孔の縁にまでかかる場合や、図5のように支持部材上端部が傾いている場合などが挙げられる。すなわち、図4は、溶剤供給孔の縁部分に溝形状があることで、縁部分の高さが等しくない一例の概略上面図であり、図5は、溶剤供給孔の縁部分が水平でなく、縁部分の高さが等しくない一例の概略断面図である。これらの場合でも、溶剤供給孔5からオーバーフローした溶剤が基本的に全方位に向けて溢れて流れ出し、溝6を伝って内面塗布膜除去部材3の摺擦部に溶剤が供給される機能が果たせれば本発明の効果は得られる。
【0023】
したがって溝6としては、内面塗布膜除去部材3の摺擦部に溶剤が流れやすくなる機能を果たせば、どのような形状でも、設置の仕方でもよいが、溶剤供給孔の縁部分の高さを水平にするために溝6が縁部分にまで至らないように設けるのがより好ましい。
【0024】
さらに、円筒状基体下端の外面に形成された余剰塗布膜を除去する場合について、図6を用いて説明する。図6は、外面塗布膜除去部材を設置した一例を示す概略断面図である。
【0025】
浸漬塗布法の場合、基体下端部の外面に塗布膜が必ず形成される。電子写真感光体の端部にコロを当てて、電子写真感光体と現像ローラーとの距離を一定に保つ構成をとるときなどには、基体下端部の外面に形成された余剰塗布膜の除去も必要となる。
【0026】
そこで図6に示すように、支持部材1に外面端部塗布膜除去部材8を設けて基体下端部外面の余剰塗布膜を除去してもよい。外面端部塗布膜除去部材8は支持部材1と一緒に回転可能になっていて、また、基体下端部が差し込める切り込み9が設けてある。例えば、図2、3、4に示すように、外面端部塗布膜除去部材8を支持部材1に内面塗布膜除去部材3と併せて設けて、切り込み9に基体下端部を差込み、支持部材1を回転させて余剰塗布膜を摺擦することで基体下端部内面と外面の余剰塗布膜を同時に除去することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。評価は、アルミニウム製円筒状基体上に下記の実施例および比較例に示す組成からなる電荷発生層用塗布液を浸漬塗布し、下端部の余剰塗布膜除去を実施することで行った。
【0028】
〔実施例1〕
塗布膜除去装置として、図4に示すように、内面塗布膜除去部材3として支持部材1の側面にエチレンプロピレンジエンゴム製のゴムブレードを2つ設け、テーパー面2に溝6を2つ設け、その位置は溶剤が内面塗布膜除去部材3の摺擦部に流れるようにあわせ、また、溝6は溶剤供給孔5の縁部分まで存在するものを用いた。さらに、支持部材1に基体外面の端部の余剰塗布膜を除去する目的で、切り込み9を有したエチレンプロピレンジエンゴムからなる外面端部塗布膜除去部材8を2つ設けた。溶剤供給孔5の出口の内径は1cmのものを使用し、溶剤としてメチルエチルケトンを使用した。
【0029】
まず、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部およびシクロヘキサノン250部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で1時間分散し、次に、酢酸エチル250部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。
【0030】
この電荷発生層用塗布液を、長さ246mm、直径24mmのアルミニウム製円筒状基体に浸漬塗布した。
【0031】
次に、支持体の下端が外面端部塗布膜除去部材8の切り込み9に差し込まれるように円筒状基体を下降して、支持部材1を挿入した。溶剤を送るポンプを調節して、溶剤供給孔5でオーバーフローする液面の高さが約3.5mmになるように溶剤流量を設定し、溶剤供給孔5から溶剤をオーバーフローさせ、支持部材1を12秒回転させて摺擦し、余剰塗布膜の除去を実施した。これを繰り返して合計10本について電荷発生層の塗布と余剰塗布膜の除去を行った。基体内面と外面の除去度合いの目視による確認を行った結果を表1に示す。本実施例において評価した10本の全てについて、除去度合いは非常に良好で、拭き残しは確認できなかった。なお、除去度合いは以下のようにランク付けした。
A:除去精度が非常に良好である。
B:除去精度が良好で、ほとんど拭き残しはみられない。
C:除去精度にばらつきがあり、拭き残しが見られる。
【0032】
〔実施例2〕
塗布膜除去装置として、図2に示すように、テーパー面の溝を溶剤供給孔の縁にかからないようにして縁の高さが等しいものを用い、実施例1と同じ条件で電荷発生層の塗布と余剰塗布膜の除去を行った。基体内面と外面の除去度合いの目視による確認を行った結果を表1に示す。本実施例において除去度合いは非常に良好で、拭き残しは確認できなかった。
【0033】
〔実施例3〕
実施例2と同じ塗布膜除去装置を用い、溶剤供給孔での液面の高さが約2mmとなるようにポンプを調整して溶剤流量を設定した以外は実施例1と同じ条件で電荷発生層の塗布と余剰塗布膜の除去を行った。基体内面と外面の除去度合いの目視による確認を行った結果を表1に示す。本実施例において除去度合いはおおよそ良好で、拭き残しはほとんど確認できなかった。
【0034】
〔実施例4〕
塗布膜除去装置として、図3に示すように、溶剤供給孔の内側に内溝を設けたものを用い、実施例3と同じ条件で電荷発生層の塗布と余剰塗布膜の除去を行った。基体内面と外面の除去度合いの目視による確認を行った結果を表1に示す。本実施例において除去度合いは非常に良好で、拭き残しは確認できなかった。
【0035】
〔比較例1〕
塗布膜除去装置として、図7に示すように、テーパー面に溝形状のないものを用い、実施例1と同じ条件で電荷発生層の塗布と余剰塗布膜の除去を行った。基体内面と外面の除去度合いの目視による確認を行った結果を表1に示す。本比較例において塗布膜除去の精度にばらつきがあり、若干の拭き残しが見られるものがあった。
【0036】
〔比較例2〕
比較例1と同じ塗布膜除去装置を用い、溶剤供給孔での液面の高さが約6mmとなるようにポンプを調整して溶剤流量を設定した以外は比較例1と同じ条件で電荷発生層の塗布と余剰塗布膜の除去を行った。基体内面と外面の除去度合いの目視による確認を行った結果を表1に示す。本比較例において拭き残しはほとんど確認されなかったが、基体外面の電荷発生層への溶剤の染みあがりが発生した。
【0037】
〔比較例3〕
塗布膜除去装置として、図8に示す塗布膜除去装置を用いた。溶剤は支持部材11の周方向に空けられた複数の溶剤供給孔13から基体内面に向けて吐出される。さらに、実施例1と同様のエチレンプロピレンジエン製のゴムブレードである内面塗布膜除去部材3と外面塗布膜除去部材が支持部材11に取り付けられている。これら部材は支持部材11を回転させることで、回転可能となっている。溶剤流量を実施例1と同じになるようにポンプを調整し実施例1と同様にして余剰塗布膜の除去を行った。基体内面と外面の除去度合いの目視による確認を行った結果を表1に示す。本比較例において塗布膜除去の精度にばらつきがあり、若干の拭き残しが見られるものがあった。また、除去した塗布膜の支持部材への付着による汚れが若干確認された。
【0038】
〔比較例4〕
比較例3と同じ塗布膜除去装置を用い、比較例2と同じ溶剤流量になるようにした以外は比較例3と同じ条件で余剰塗布膜の除去を行った。基体内面と外面の除去度合いの目視による確認を行った結果を表1に示す。本比較例において拭き残しはほとんど確認できなかったが、溶剤の染みあがりが発生した。また、除去した塗布膜の支持部材への付着による汚れが確認された。
【0039】
【表1】

【0040】
次に、500本連続で、長さ246mm、直径24mmのアルミニウム製円筒状基体に電荷発生層の塗布と余剰塗布膜の除去を行い、評価を実施した。
【0041】
〔実施例5〕
実施例1と同じ塗布膜除去装置を使用し、実施例1と同じ条件で余剰塗布膜の除去を行った。基体内面と外面の除去度合いの目視による確認を行った結果を表2に示す。本実施例において除去の度合いは概ね良好であったが、除去した塗布膜の支持部材への付着による汚れがみられた。
【0042】
〔実施例6〕
実施例4と同じ塗布膜除去装置を使用し、実施例5と同じ条件で余剰塗布膜の除去を行った。基体内面と外面の除去度合いの目視による確認を行った結果を表2に示す。本実施例において除去の度合いは概ね良好であり、除去した塗布膜の支持部材への付着による汚れはほとんど確認できなかった。
【0043】
〔比較例5〕
比較例3と同じ塗布膜除去装置を使用し、実施例5と同じ溶剤流量で余剰塗布膜の除去を行った。基体内面と外面の除去度合いの目視による確認を行った結果を表2に示す。本比較例において塗布膜除去の精度にばらつきがあり、拭き残しが見られるものがあった。また、除去した塗布膜の支持部材への付着が多くみられ、この付着物が乾燥して剥がれ落ちて再付着する不良が発生した。
【0044】
【表2】

【符号の説明】
【0045】
1‥‥支持部材
2‥‥テーパー面
3‥‥内面塗布膜除去部材
4‥‥流路
5‥‥溶剤供給孔
6‥‥溝
7‥‥内溝
8‥‥外面端部塗布膜除去部材
9‥‥切り込み
10‥‥円筒状基体
11‥‥支持部材
12‥‥流路
13‥‥溶剤供給孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な支持部材と、浸漬塗布法によって円筒状基体の内面に付着した余剰塗布膜を摺擦することで除去するための内面塗布膜除去部材と、該内面塗布膜除去部材に溶剤を供給する溶剤供給機構からなる塗布膜除去装置において、
該支持部材の最上端部に、該溶剤供給機構より送られる溶剤をオーバーフローさせることで円筒状基体内面に溶剤を供給する溶剤供給孔を有し、かつ、該支持部材には、該溶剤供給孔よりも下方に該支持部材と共に回転可能に該内面塗布膜除去部材が取り付けられており、該内面塗布膜除去部材は基体の内面と摺擦しうる摺擦部を有しており、かつ、該支持部材は、下方に向かって漸次径が広くなるテーパー面を該溶剤供給孔と該内面塗布膜除去部材の間に有し、該支持部材のテーパー面に該内面塗布膜除去部材の摺擦部の方向に向いた溝形状が設けられていることを特徴とする塗布膜除去装置。
【請求項2】
前記溶剤供給孔は、その内側に該溶剤供給孔の吐出方向を向いた溝形状を有していて、該溝形状は、該溶剤供給孔の中心から見て、該支持部材のテーパー面に設けられた溝形状の方向と略同方向に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の塗布膜除去装置。
【請求項3】
前記溶剤供給孔の縁は、高さが等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の塗布膜除去装置。
【請求項4】
円筒状基体に浸漬塗布法により塗布膜を形成した後、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の塗布膜除去装置を用いて余剰塗布膜を除去するにあたり、円筒状基体内に該支持部材を挿入する工程と、該溶剤供給孔から溶剤をオーバーフローさせて、該内面塗布膜除去部材と円筒状基体との摺擦部に溶剤を供給し、該支持部材を回転し、該内面塗布膜除去部材で基体内面の余剰塗布膜を摺擦して除去する工程とを含むことを特徴とする塗布膜除去方法。
【請求項5】
円筒状基体に浸漬塗布法により塗布膜を形成する電子写真感光体の製造方法において、円筒状基体に浸漬塗布法により塗布膜を形成した後、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の塗布膜除去装置を用いて余剰塗布膜を除去するにあたり、円筒状基体内に該支持部材を挿入する工程と、該溶剤供給孔から溶剤をオーバーフローさせて、該内面塗布膜除去部材と円筒状基体との摺擦部に溶剤を供給し、該支持部材を回転し、該内面塗布膜除去部材で基体内面の余剰塗布膜を摺擦して除去する工程とを含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−47938(P2012−47938A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189365(P2010−189365)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(502112717)長浜キヤノン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】