説明

塗布装置及び塗布方法

【課題】塗布対象物の移動や搬送装置の停止等を必要とせず、円筒物体に対して効率的に物質を塗布する塗布装置を提供する。
【解決手段】搬送手段であるコンベアの途中に配置した回転昇降機構1の備えるリム体が上下に可動することで搬送中のタイヤTを搬送手段から離脱させ、タイヤTの内周部を支持しながら上昇し、所定の高さに到達したときに、回転部のリム体はタイヤTとともに回転を開始し、塗布ロボット51によってトレッド部はもとより、ショルダー部、サイドウォール部に至るまで外面の全てに塗布物を塗布し、塗布が終了したタイヤTは、リム体の回転停止とともに下降し、タイヤTはリム体から離脱し、コンベア上に再び戻り搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置等に関し、特に搬送される円筒物体の外面に塗布物を塗布する塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばタイヤの製造工程においては、タイヤの表面等に例えば、部材間の接着剤や離型剤、成型後の塗布剤等の物質が塗布される。しかし、例えば円筒物体であるタイヤを横置きに載置したままでは、上端面や下端面を含めた外面全体に一度に上記物質を塗布することが困難であった。
【0003】
そのため、タイヤの内径部分を複数の内掛けアームを用いてタイヤを持ち上げ、搬送装置から離れた塗布位置まで移動して外面に塗布物を塗布し、乾燥を施した後に搬送装置に戻す方法が提案されている。
【0004】
また、塗布装置を其々独立した搬送装置と搬送装置との間に設け、上下方向からタイヤを挟持してタイヤを回転させながら塗布する装置及び方法も提案されている。
【特許文献1】特開昭48−47584号公報
【特許文献2】特開2007−83511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の方法では、タイヤを一旦搬送経路上から取出した後、塗布スペースに移動し、塗布完了後に搬送経路上に復帰させるなどの時間を要し、生産性を阻害する問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の装置では、2つの搬送装置の間に塗布装置を配置することによって塗布に要する時間を短縮しているが、搬送装置から塗布装置へのタイヤの移動は、上流側に位置する搬送装置のみによって塗布装置に渡され、塗布装置の支持機構の上下によって位置決めがされる構成であるため、物質が塗布された後に搬送経路に復帰させるためには、タイヤ塗布後に上流側の搬送装置を一旦停止し、停止後に下流側の搬送装置のみを駆動して再び搬送経路上に復帰させる必要があり、生産効率が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、塗布対象物の移動や搬送装置の停止等を必要とせず、円筒物体に対して効率的に物質を塗布する塗布装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る第一の構成として、一方向に円筒物体を搬送する搬送体の搬送経路上に設置され、搬送される円筒物体に塗布物を塗布する塗布装置であって、前記塗布装置は、前記円筒物体を搬送経路より上昇させて離脱させた後、下降して搬送経路上に復帰させる昇降機構と、前記円筒物体の上昇時に塗布物を塗布する塗布機構とを備え、前記円筒物体は、昇降機構の上昇に伴い前記搬送経路から離脱されてから、前記塗布機構により前記塗布物が塗布された後、前記昇降機構の下降に伴い搬送経路に復帰して一方向に搬送される構成とした。
本構成によれば、一方向に搬送される円筒物体の外面に対して効率的に塗布物を塗布することができる。
さらに、昇降機構の上昇に伴い前記搬送経路から離脱されてから、前記塗布機構により前記塗布物が塗布された後、前記昇降機構の下降に伴い搬送経路に復帰させることにより、搬送されるタイヤに塗布物を塗布するときに、上流側の搬送装置を一旦停止したり、停止後に下流側の搬送装置のみを駆動したりしたのちに、再び搬送経路上に復帰させるなどの複雑な操作を行う必要がない。このため塗布装置の維持管理がし易く、生産及び維持にかかるコストを安価に抑えることができる。また、搬送装置を停止させずに昇降機構により搬送経路から離脱させるため、タイヤに対して円滑な塗布物の塗布処理が可能となり生産性が向上する。
【0009】
本発明に係る他の構成として、前記昇降機構は、上方に向かって縮経する支持部を備え、該支持部が円筒物体の内周を支持する構成とした。
本構成によれば、被塗布対象たる円筒物体の内径を問わず円筒物体の内周面を適切に支持することができる。
【0010】
本発明に係る他の構成として、前記昇降機構は、上方に向かって段階的に縮経する支持部を備え、該支持部が円筒物体の内周を支持する構成とした。
本構成によれば昇降機構が段階的に縮径する支持部を備えることにより被塗布対象たる円筒物体の内径が予め設定されている場合等に円筒物体を略水平状態に保ったまま支持することができる。
【0011】
本発明に係る他の構成として、前記支持部は、円筒物体の周方向に回転する構成とした。
本構成によれば、円筒物体の外面を1つ位置から外面全体に対して例えば塗布物を塗布することが可能となる。
【0012】
本発明に係る他の構成として、前記塗布機構は、円筒物体の回転に伴い塗布物を塗布する。
本構成によれば、塗布機構が1つ位置から塗布物を噴霧等することで円筒物体の外面に対して均一に塗布することができる。
【0013】
本発明に係る他の形態として、一方向に搬送される円筒物体に塗布物を塗布する塗布方法であって、前記塗布方法は、前記円筒物体を昇降機構により上昇させる工程と、塗布物を前記円筒物体に塗布する工程と、前記円筒物体を昇降機構により下降させる工程を含み、前記円筒物体は、前記昇降機構の上昇に伴い搬送経路から離脱し、前記塗布機構により外面に塗布物が塗布され、前記昇降機構の下降に伴い搬送経路に復帰する。
本形態によれば、搬送される円筒物体の外面に対して効率的に塗布物を塗布することができる。
さらに、昇降機構の上昇に伴い前記搬送経路から離脱されてから、前記塗布機構により前記塗布物が塗布された後、前記昇降機構の下降に伴い搬送経路に復帰させることにより、搬送されるタイヤに塗布物を塗布するときに、上流側の搬送装置を一旦停止したり、停止後に下流側の搬送装置のみを駆動したりしたのちに、再び搬送経路上に復帰させるなどの複雑な操作を行う必要がない。このため塗布装置の維持管理がし易く、生産及び維持にかかるコストを安価に抑えることができる。また、搬送装置を停止させずに昇降機構により搬送経路から離脱させるため、タイヤに対して円滑な塗布物の塗布処理が可能となり生産性が向上する。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
図1は、塗布装置の概略構成図である。塗布装置は、回転昇降機構1と、塗布機構5とにより構成される。
前記回転昇降機構1と、塗布機構5とは、閉じた空間を形成する塗布チェンバー9内に設置される。
塗布チェンバー9内にはこの他、タイヤTを横倒しの状態、即ちタイヤTの回転軸を上下の方向に向けた状態で搬送する塗布体としての塗布用コンベア4と、塗布チェンバー9内に飛散する塗布物質を排出し空間内をクリーンに保つ換気扇91等が設置される。塗布チェンバー9の外部には回転昇降機構1及び塗布機構5を制御する制御装置7が設置される。
【0016】
前記塗布チェンバー9内に設置される塗布用コンベア4の上流側には塗布体としての搬送用コンベア6が連接して設置される。搬送用コンベア6は、バーコードリーダ61と、整列装置62とを備える。バーコードリーダ61は、搬送用コンベア6により搬送されるタイヤTに取り付けられた図外のバーコードからタイヤTの情報を読み取る。
タイヤTの情報としては例えばタイヤTの外径、内径、幅等の情報である。バーコードリーダ61に読み取られた情報は制御装置7に出力される。
制御装置7は、予め記憶されたバーコードに対応するタイヤTの情報に基づいて後述の回転昇降機構1及び塗布機構5を制御する。
整列装置62は、搬送用コンベア6の下流側近傍から塗布用コンベア4の上流側へと延出する一対のアーム体であり、一端部を回転中心として自由端が開閉自在となるように固定される。整列装置62は、上流側から搬送されてくるタイヤTを搬送用コンベア6の中央に位置させ、塗布チェンバー9内に設けられる塗布用コンベア4の略中央とタイヤTの中心軸とが略等しくなるように整列させる。整列したタイヤTは、搬送用コンベア6から塗布チェンバー9内の塗布用コンベア4上に移送される。なお、搬送用コンベア6としては図示のローラーコンベアの他、ベルトコンベア、パイプコンベア等種々の搬送装置が適用できる。
【0017】
塗布用コンベア4は、一対のベルトコンベア40,40によって構成される。一対のベルトコンベア40,40は、互いに平行となるように設置され、駆動速度が同期するように制御される。一対のベルトコンベア40,40は、後述する回転昇降機構1の備える回転部2が通過可能な距離離隔して設置される。つまり、搬送用コンベア6から塗布用コンベア4に移送されたタイヤTは、一対のベルトコンベア40,40間に掛け渡される如く搬送される。なお、タイヤTとベルトコンベア40との接触面積を減じるため、一対のベルトコンベア40を搬送方向から視認してV字状となるように傾斜させる構成としてもよい。これによりタイヤTのショルダー部の範囲がベルトコンベア40と接する状態で搬送される。さらに例えば塗布用コンベア4にローラーコンベアを用いる場合には、単一のローラーコンベアのローラー列の一部に空間を設け、後述の回転部2がローラーコンベアの上下方向に通過可能なようにしてもよい。
また、塗布用コンベア4の側方には位置センサ63,63が設けられ、タイヤTが塗布用コンベアに移送されたことを示す信号及び位置情報を制御装置7に出力する。センサとしてはフォトカプラなど位置センサ63,63の間を物体が横切った場合などに信号を出力する方法があり、他にも搬送中のタイヤTがスイッチに直接接触するようにして位置を出力する方法などでもよい。
【0018】
図2は、回転昇降機構1の構成を示す。
回転昇降機構1は、昇降部3と回転部2とからなり、塗布用コンベア4の搬送経路上に設置される。具体的には、塗布用コンベア4の搬送方向略中央に位置し、一対のベルトコンベア40,40の離隔距離の中心と後述の回転部2の回転中心が合致するように設置される。なお、本例では便宜上塗布用コンベア4の搬送方向略中央に設置したが、一対のベルトコンベア40,40の離隔距離の中心と回転部2の回転中心が合致する位置であればベルトコンベア40の搬送方向における上流側や下流側へ設置してもよい。
【0019】
図2において昇降部3は、台座39と支持ケース35と、油圧アクチュエータ31と加圧ポンプ32及び加圧モータ33とを備える。
台座39は、略正方形の金属の平板からなり、平面の4隅には孔39aが設けられ、アンカーなどで床面に固定される。台座39の上面には、支持ケース35と加圧ポンプ32と加圧モータ33とオイルタンク32fと高さセンサ36とが設置される。
【0020】
支持ケース35は、台座39の略中央に立設され、切り込み部35fが形成された断面C字状の筒体であり、筒体の周面と台座39とが複数の補強板35bを介して溶接等により固定される。支持ケース35の周面には、スプリングハンガー35dが突設されリターンスプリング38の一端が係止される。リターンスプリング38の他端は後述の回転ベース10を構成する回転ベース10の下面に備わるスプリングハンガー16に係止される。
【0021】
台座39に固定された支持ケース35には、油圧アクチュエータ31が内装される。油圧アクチュエータ31は支持ケース35の内径と略等しい外径を有するシリンダ31aと、シリンダ31a内に印加される油圧によって昇降駆動するピストン31bとからなる。
シリンダ31aの周面には、ピストン31bを昇降駆動する作動油の入出口31cを備える。入出口31cは、支持ケース35に設けられた切り込み部35fと一致する位置に形成される。
【0022】
支持ケース35内に内装された油圧アクチュエータ31は、トーラス状の固定キャップ35aと、支持ケース35の上端部に形成されたネジ部35cとが螺合することにより固定される。
【0023】
シリンダ31aの備える入出口31cと、加圧ポンプ32とは配管37を介して接続される。配管37は、加圧ポンプ32側に設けられる制御バルブ32aと、油圧アクチュエータ31側に設けられる制御バルブ32bとを有する。制御バルブ32aには、バイパスチューブ32eが接続され、加圧ポンプ32からオイルタンク32fへと至る流路が形成される。当該制御バルブ32aによって加圧ポンプ32からシリンダ31aへ至る流路と、オイルタンク32fへ至る流路とを切替えることができる。制御バルブ32bは、ドレンチューブ32dが接続され、シリンダ31aからオイルタンク32fへと至る流路が形成される。当該制御バルブ32bによって加圧ポンプ32からシリンダ31aへと至る流路と、シリンダ31aからオイルタンク32fへと至る流路とを切替えることができる。オイルタンク32fは、作動油が常に循環可能な量を蓄えるタンクであって、台座39上に固定される。
【0024】
上記構成からなる油圧系において、ピストン31bを上昇させるときには、制御バルブ32aと制御バルブ32bとを切替えて加圧ポンプ32からシリンダ31aに至る流路を開放する一方、バイパスチューブ32eとドレンチューブ32dへの流入を阻止する。ピストン31bの上昇が停止し、高さを維持するときには、制御バルブ32aを切替えて、加圧ポンプ32からオイルタンク32fへと至る流路を開放する一方、加圧ポンプ32からシリンダ31aに至る流路を閉鎖する。このとき、制御バルブ32bはシリンダ31aへと至る流路を開放した状態に維持する。ピストン31bを降下させるときには、制御バルブ32bを切替えて、ドレンチューブ32dへと至る流路を開放する一方、油シリンダ31aへと至る流路を遮断する。このとき、制御バルブ32aは流路をオイルタンク32fに至る流路を開放した状態に維持する。なお、前記制御バルブ32a,32bの切替えは後述の制御装置7により制御される。
【0025】
加圧ポンプ32は、加圧モータ33とカップリング34によって各々の回転軸が結合されることにより駆動される。加圧モータ33は、例えば電動モータであって、制御装置7によって回転のオン・オフを制御される。加圧モータ33の回転により加圧ポンプ32は作動油をシリンダ31aに圧送し、ピストン31bを押し上げる。
ピストン31bの上昇は、高さセンサ36によって測定され設定値に達したところで停止する。
高さセンサ36は、台座39に設置され測定方向を上方に向けピストン31bと結合する回転ベース10の変位を測定する。高さセンサ36の測定により回転ベース10が規定位置に達すると制御装置7が加圧モータ33を停止制御することにより回転ベース10の上昇が停止する。
【0026】
なお、本実施の形態において、回転昇降機構1の昇降部3は油圧を用いた油圧アクチュエータ31により昇降するものとしたが、例えば昇降部3に構造部材を用いリンク機構を介して油圧アクチュエータ31で作動させてもよく、空圧機器やチェーン或いは歯車などを使用した昇降装置によって昇降部3を構成してもよい。
【0027】
図3は、回転部2の構成を示す。
回転部2は、回転ベース10と、回転ベース10に取り付けられるリム体20とからなり、制御装置7の駆動信号により回転を開始又は停止する。回転ベース10は、結合部12と回転支持軸13とを備える。
【0028】
回転ベース10は、円盤形状を成し上面に回転センサ14が取り付けられ、下面に前述のスプリングハンガー16とモータ固定部11が形成される。回転センサ14は、後述のリム体20の備えるドリブン歯車26の回転数を監視し、検出した回転数を制御装置7へ出力する。
モータ固定部11は、回転ベース10の下面から上面側に向かう凹部として形成され、凹部に回転モータ15の一部が固定される。回転モータ15の出力軸は、回転ベース10の上面に設けられた貫通孔から突出する。出力軸には、ドライブ歯車15aが固着され、後述の回転体の備えるドリブン歯車26と噛み合う。
【0029】
結合部12は、回転ベース10の下面から下方に突出する円筒形状を成し、ピストン31bの上端部に嵌装されることにより、ピストン31bと連結され、回転ベース10はピストン31bの昇降に伴って昇降可能である。
回転支持軸13は、回転ベース10の上面から上方に突設される棒体であり、中心軸は下方に位置する結合部12の中心軸と同軸である。
【0030】
図3(a)を参照し、リム体20の構成を説明する。
リム体20は、中空の円盤体であって、中央に前記回転ベース10の回転支持軸13が嵌挿され得る回転支持孔22が開設される。回転支持孔22の内壁の上端と下端には挿入部が開設され、上端の挿入部には、ラジアル方向の力を支持可能なラジアル軸受け28が嵌挿され、下端の挿入部には、スラスト方向の力を支持可能なスラスト軸受け27が嵌挿される。回転支持軸13が回転支持孔22内に嵌挿されるとラジアル軸受け28は、回転支持軸13の上端部13cと結合し、スラスト軸受け29は、回転支持軸13の下端部13aの上面によって支持される。本構成によればリム体20は、回転ベース10の回転支持軸13を回転中心として回転自在に回転ベース10に取り付けられる。
【0031】
回転支持孔22の外面には、ドリブン歯車26が固着される。ドリブン歯車26は、リム体20を回転ベース10に取り付けたときに、回転ベース10から突出する回転モータ15の出力軸に取り付けられたドライブ歯車15aと噛み合うことにより減速機構を構成する。
なお、減速機構は上記歯車による減速方法以外の減速方法を用いてもよい。
【0032】
リム体20の外面形状は、同心円状に形成された複数の周面が組み合わされる如き形状である。具体的には、最も上方に位置し、水平面として形成される上面20aと、当該上面20aの周縁から垂直に垂下する周面20bと、当該周面20bの下端縁から拡径して垂下するテーパ面20cと、当該テーパ面20cの下端縁から垂直に垂下する周面20dと、当該周面20dの下端縁から拡径して垂下するテーパ面20eとから形成される。換言すれば、リム体20の外面形状は、テーパ面20c及びテーパ面20eとを備えることにより上方に向かうに従って段階的に縮径する形状である。
【0033】
前記支持体としてのリム体20によれば、例えば塗布用コンベア4により連続して搬送されるタイヤTの内径が異なる場合であっても、リム体20を交換することなく、最下段に位置するリム体20の直径を限度として小径なタイヤTから大径なタイヤTの内周面を適切に支持することができる。
【0034】
リム体20の形状は、図3に示す形状に限られず図4(a),(b)に示す形状としてもよい。図4(a)のリム体50は、最も上方に位置し、水平面として形成される上面50aと、当該上面50aの周縁から連続的に拡径して垂下するテーパ面50bとから形成される。換言すれば、リム体50は、テーパ面50bを備えることにより上方に向かって連続的に縮径する形状である。図4(b)のリム体60は最も上方に位置し、水平面として形成される円盤体60aと、当該円盤体60aを最小の径として一定の比率又は任意の比率により段階的に漸次拡径する円盤体60bが積層される如き形状である。換言すれば、リム体60は、図3に示すリム体20をより細かい階段状として、上方に向かうに従って段階的に縮径する形状である。なお、上記リム体20,50,60は、円盤状のものとしたが、それ以外の多角形状等であっても良くタイヤTをはじめとして、支持対象の形状に合わせて形状を変更することが可能である。
【0035】
図5は、塗布機構5としての塗布ロボット51の構成を示す。
塗布ロボット51は、制御装置7から出力される情報に基づき制御される。塗布ロボット51は、床面に固定される基台52に立設された固定板53に回動自在に取り付けられた下アーム54と、該下アーム54の端部に回動自在に取り付けられた上アーム55と、該上アーム55の端部に回動自在に取り付けられたノズル機構57とからなる。本構成からなる塗布ロボット51によれば、仮想線で示すような2次元の動きが可能となり、ベルトコンベア40,40間に掛け渡されて横置き状態で搬送されるタイヤTが、回転昇降機構1の昇降部3の駆動に伴い上昇した状態で、ノズル機構57が塗布物を噴射、噴霧等の方法で塗布するとタイヤTのトレッド部はもとより、ショルダー部,サイドウォール部に至るまで外面の全ての領域に任意の塗布物を塗布することができる。なお、塗布物とは、例えば、離型剤、接着剤等の多様な物質を含み、液状体、粉状体、粒状体等その態様も問わない。また、ノズル機構を備えた3次元の動きが可能なロボットや、自由度のない固定されたノズル機構から塗布物を塗布してもよい。
【0036】
以下、図1及び図6,図7を参照し上記タイヤTに塗布物が塗布されるまでの各機構の動作を説明する。
搬送用コンベア6に横置きに搬送されるタイヤTは、バーコードリーダ61によりタイヤTに取り付けられたタイヤTの情報を示すバーコードを読み取り、その情報を出力する制御装置7に出力する。制御装置7は、前記出力された情報に基づいて塗布機構5としての塗布ロボット51にタイヤTの塗布パターンを出力し待機させる。タイヤTは、前記バーコードリーダ61を通過した後、整列装置62の一対のアーム体により搬送用コンベア6の中心に位置するように整列され、搬送用コンベア6から塗布用コンベア4に移送される。
【0037】
タイヤTが塗布用コンベア4に移送されると位置センサ63は、搬送されるタイヤTを検出し、制御装置7に検出信号を出力する。前記検出信号を受けた制御装置7は、ベルトコンベア40,40の搬送速度から回転昇降機構1の駆動タイミングを演算する。
【0038】
位置センサ63を通過したタイヤTは、回転昇降機構1の駆動により搬送経路上から離脱する。具体的には制御装置7が前記駆動タイミングの演算結果に基づいて、上昇信号を昇降部3を構成する制御バルブ32a,32bに出力する。制御バルブ32aと32bとは前記出力された信号に基づき、加圧ポンプ32からシリンダ31aへと至る流路を開放し、シリンダ31a内に作動油が圧送され、ピストン31bが上昇を開始する(図6参照)。ピストン31bが上昇すると、上方に位置する支持体としてのリム体20がベルトコンベア40,40に掛け渡されるように横置きされたタイヤTの下方からタイヤTの内周面(ビード部)に嵌り込むように持ち上げる。即ち、タイヤTは回転昇降機構1の昇降動作によってベルトコンベア40,40から離脱する。
【0039】
上昇を開始したピストン31bは、高さセンサ36によって高さが測定され、高さセンサ36は、ピストン31bが上昇限度位置に達したことを検知して、上昇停止信号を制御装置7に出力する。制御装置7は、前記上昇停止信号に基づいて制御バルブ32aに切替え信号を出力するとともに、回転部2に設けられた回転モータ15に駆動開始信号を出力する。
【0040】
回転モータ15の駆動に伴いリム体20に支持されたタイヤTが回転を開始すると、塗布ロボット51は、待機位置から予め入力されたタイヤTの情報に基づいて、タイヤTの外面に塗布物を塗布する。これによって、タイヤTのサイズ如何に関らず塗布物を均一に塗布することができる。タイヤTの回転数は回転部2に設けられた回転センサ14によって検知され、回転数信号が制御装置7に出力される。制御装置7は、前記回転数信号に基づいて、所定の回転数に達したときに回転停止信号を回転モータ15へ出力するとともに、塗布終了信号を塗布ロボット51へ出力する。その後、制御装置7は、制御バルブ32bに切替え信号を出力する。前記切替え信号に基づいて制御バルブ32bはシリンダ31aからオイルタンク32fへと至る流路を開放する。
【0041】
油圧アクチュエータ31への油圧の供給が解除されると、ピストン31bはタイヤTの重量及びリターンスプリング38の引張り力により下降を開始する。
ピストン31bが下降を開始するとタイヤTは下面がベルトコンベア40,40の高さと同一位置に達したときにリム体20から離脱して、再びベルトコンベア40,40に掛け渡されるように復帰し、塗布用コンベア4によって搬送される。
【0042】
即ち、上記塗布装置は、複数の搬送体の間に位置し、前記複数の搬送体に掛け渡されて搬送される円筒物体の内径に嵌り込む支持部を備え、円筒物体を昇降させる昇降機構と、前記昇降機構により上昇した円筒物体の外面に塗布物を塗布する塗布機構とを備える。
【0043】
本発明によれば、搬送体を停止させることなくタイヤTの外面に塗布物を塗布し、塗布終了後直ちに搬送を継続することが可能となり生産効率を向上させることができる。
【0044】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係る塗布装置の概略構成図。
【図2】本発明の実施形態に係る回転昇降機構構成図。
【図3】本発明の実施形態に係る回転部構成図。
【図4】本発明の実施形態に係るリム体の形状図。
【図5】本発明の実施形態に係る塗布機構作動図。
【図6】本発明の実施形態に係る回転昇降機構作動図。
【図7】本発明の実施形態に係る制御装置の制御に関するブロック図。
【符号の説明】
【0046】
1 回転昇降機構、2 回転部、3 昇降部、4 塗布用コンベア、5 塗布機構、
6 搬送用コンベア、7 制御装置、9 塗布チェンバー、10 回転ベース、
11 モータ固定部、12 結合部、13 回転支持軸、14 回転センサ、
20 リム体、22 回転支持孔、31 油圧アクチュエータ、31a シリンダ、
31b ピストン、32a 制御バルブ、32b 制御バルブ、36 高さセンサ、
40 ベルトコンベア、51 塗布ロボット、61 バーコードリーダ、
62 整列装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に円筒物体を搬送する搬送体の搬送経路上に設置され、搬送される円筒物体に塗布物を塗布する塗布装置であって、
前記塗布装置は、
前記円筒物体を搬送経路より上昇させて離脱させた後、下降して搬送経路上に復帰させる昇降機構と、
前記円筒物体の上昇時に塗布物を塗布する塗布機構とを備え、
前記円筒物体は、昇降機構の上昇に伴い前記搬送経路から離脱されてから、前記塗布機構により前記塗布物が塗布された後、前記昇降機構の下降に伴い搬送経路に復帰して一方向に搬送されることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記昇降機構は、上方に向かって縮経する支持部を備え、該支持部が円筒物体の内周を支持することを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記昇降機構は、上方に向かって段階的に縮経する支持部を備え、該支持部が円筒物体の内周を支持することを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記支持部は、円筒物体の周方向に回転することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記塗布機構は、円筒物体の回転に伴い塗布物を塗布することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項6】
一方向に搬送される円筒物体に塗布物を塗布する塗布方法であって、
前記塗布方法は、
前記円筒物体を昇降機構により上昇させる工程と、
塗布物を前記円筒物体に塗布する工程と、
前記円筒物体を昇降機構により下降させる工程を含み、
前記円筒物体は、前記昇降機構の上昇に伴い搬送経路から離脱し、前記塗布機構により外面に塗布物が塗布され、前記昇降機構の下降に伴い搬送経路に復帰することを特徴とする塗布方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−42645(P2010−42645A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210069(P2008−210069)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】