説明

塗布装置

【課題】流動性材料の非塗布時に、流動性材料が塗布装置外に垂れ落ちることを防止することが可能な塗布装置を提供する。
【解決手段】回転可能に支持され、かつ、流動性材料を噴出するノズル孔11cが形成されるロータ11を備え、ロータ11におけるノズル孔11cが形成される箇所であるノズル孔11c形成箇所がワーク1に形成されるワーク穴2に進入した状態でロータ11を回転することによりワーク穴2の内周に流動性材料を塗布する塗布装置10であって、ノズル孔11c形成箇所の周囲を囲む姿勢及びノズル孔11c形成箇所の周囲を囲まない姿勢の間で移動可能に支持され、ロータ11がワーク穴2に進入した状態のときにノズル孔11c形成箇所の周囲を囲まない姿勢になり、ロータ11がワーク穴2から退出した状態のときにノズル孔11c形成箇所の周囲を囲む姿勢になるカバー部材14を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに形成されるワーク穴の内周に接着剤、シール剤等の流動性材料を塗布する塗布装置は公知となっている。例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の塗布装置は、シール剤(流動性材料)を噴出するロータを備えている。ロータは、円柱形状を有する回転体であり、その外周面にノズル孔が複数形成されている。前記塗布装置は、ロータを回転し、ロータにシール剤を供給することにより、シール剤をノズル孔から遠心力で噴出する構成である。また、ロータを回転駆動可能に支持する本体が、径の異なる複数のガイド部材を有する。
前記塗布装置は、ロータがワークのワーク穴に進入している状態で、ロータを回転し、ロータにシール剤を供給することにより、シール剤をノズル孔から噴出してワーク穴の内周に塗布する。このとき、前記ガイド部材が、ワーク穴に係合することによって、塗布時のシール剤の飛散を防止している。
【0004】
例えば、前記塗布装置を用い、ラインを流れる複数のワークの各ワーク穴の内周にシール剤を塗布する場合、以下の(1)〜(4)の一連の作業を行うことにより、各ワークに対してシール剤を順次塗布する形態を実現できる。
(1)ロータをワーク穴に進入させるとともに、ガイド部材をワーク穴に係合させ、(2)ロータを回転し、ロータにシール剤を供給することにより、ワーク穴内周へのシール剤の噴出(塗布)を開始し、(3)所定時間経過後、ロータへのシール剤の供給を停止し、さらにロータの回転を停止することにより、シール剤の塗布を停止し、(4)ガイド部材とワーク穴との係合を解除するとともに、ロータをワーク穴から退出させる。
【0005】
しかし、(4)の作業を終了してから、ラインを流れてくる次のワークに対して(1)の作業を開始するまでの間、つまりシール剤の非塗布時に、ロータ内に残留しているシール剤が重力の作用を受けて下方に位置するノズル孔から流出し、塗布装置外に垂れ落ちることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−134458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、流動性材料の非塗布時に、流動性材料が塗布装置外に垂れ落ちることを防止することが可能な塗布装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の塗布装置は、回転可能に支持され、かつ、流動性材料を噴出するノズル孔が形成されるロータを備え、前記ロータにおける前記ノズル孔が形成される箇所であるノズル孔形成箇所がワークに形成されるワーク穴に進入した状態で前記ロータを回転することにより前記ワーク穴の内周に流動性材料を塗布する塗布装置であって、前記ノズル孔形成箇所の周囲を囲む姿勢及び前記ノズル孔形成箇所の周囲を囲まない姿勢の間で移動可能に支持され、前記ロータが前記ワーク穴に進入した状態のときに前記ノズル孔形成箇所の周囲を囲まない姿勢になり、前記ロータが前記ワーク穴から退出した状態のときに前記ノズル孔形成箇所の周囲を囲む姿勢になるカバー部材を備えるものである。
【0009】
請求項2に記載の塗布装置は、前記カバー部材の内周面で囲まれる空間と前記流動性材料を回収する手段とを連通する戻り通路を備えるものである。
【0010】
請求項3に記載の塗布装置においては、前記カバー部材は、先端部の形状が前記ワーク穴の開口の形状に応じた形状であり、前記ロータが前記ワーク穴に進入した状態のときに前記先端部が前記ワーク穴の開口周縁部に当接した姿勢になるものである。
【0011】
請求項4に記載の塗布装置は、回転可能に支持され、かつ、流動性材料を噴出するノズル孔が形成されるロータを備え、前記ロータにおける前記ノズル孔が形成される箇所であるノズル孔形成箇所がワークに形成されるワーク穴に進入した状態で前記ロータを回転することにより前記ワーク穴の内周に流動性材料を塗布する塗布装置であって、前記ロータに固定されることにより前記ロータと共に回転し、前記ロータの軸を中心にして前記ロータにおける前記ノズル孔が形成される側とは反対側に配置され、前記ロータの非回転時に自重で回転軌跡上の最下点にくる錘を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、流動性材料の非塗布時に、流動性材料が塗布装置外に垂れ落ちることを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る塗布装置の第一実施形態である塗布装置の断面図であり、(a)は塗布装置のカバー部材がロータ収納姿勢にあるときを示す図であり、(b)はカバー部材がロータ露出姿勢にあるときを示す図である。
【図2】図1の塗布装置を用いてワークに形成されるワーク穴にロックタイトを塗布するときの塗布装置の姿勢を示す図であり、(a)及び(c)はロックタイトの非塗布時における塗布装置の姿勢を示す図であり、(b)はロックタイトの塗布時における塗布装置の姿勢を示す図である。
【図3】本発明に係る塗布装置の第二実施形態である塗布装置の断面図である。
【図4】単位時間当たりのロータの回転数とノズル孔の数とロックタイトの塗布量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
以下に、本発明に係る塗布装置の第一実施形態である塗布装置10について、図面を参照して説明する。
【0015】
塗布装置10は、ワーク1に形成される有底穴であるワーク穴2の内周に、流動性材料の一例であるロックタイト(商品名:日本ロックタイト株式会社製)を塗布する(例えば、シリンダーヘッド及びシリンダーブロックのプラグ及びチューブユニオン圧入前にロックタイトを塗布する)。ロックタイトは、空気が遮断されることにより常温硬化する嫌気性接着剤であり、本実施形態においては、比較的粘度が低い、液状のロックタイトを用いることとする。
【0016】
図1(a)及び図1(b)に示すように、塗布装置10は、ロータ11、回転装置12、本体13、カバー部材14、弾性部材15、及び戻り通路16を備える。
【0017】
塗布装置10は、ロータ11がワーク穴2に進入している状態で、ロータ11からロックタイトが噴出することにより、ワーク穴2の内周にロックタイトが塗布するものである。
【0018】
ロータ11は、ロックタイトを噴出するものである。ロータ11は、噴出部11a、及び軸部11bを有する。
【0019】
噴出部11aは、円柱形状を有する回転体として軸部11bの先端に形成されている。また、噴出部11aの内部にはロックタイトが供給される供給路が形成されている。噴出部11aの側部には供給路と噴出部11a外周部とを連通するノズル孔11cが形成されている。ロックタイトが供給路に供給されている状態で噴出部11aが回転することにより、ロックタイトに遠心力が作用し、ノズル孔11cから噴出するように構成されている。
本実施形態では一つのノズル孔11cを形成しているが、噴出部11aの外周部に複数のノズル孔11c・11c・・・を形成してもよく、例えば複数のノズル孔11c・11c・・・を噴出部11aの周方向に等間隔を空けて形成してもよい。
軸部11bは、水平方向に延在しており、一端が噴出部11aの底面に固定されており、他端が回転装置12に接続されている。回転装置12によって軸部11bを駆動することにより、噴出部11aが回転する。なお、噴出部11aと軸部11bとは同心上に配置されている。
【0020】
回転装置12は、モータ等を有し、ロータ11を回転させる駆動源である。回転装置12は、軸部11bに接続されており、回転装置12で発生する回転駆動力によりロータ11が軸部11bの軸周りに回転する。
なお、ロータ11の軸(軸部11bの軸)と直交する方向にノズル孔11cの中心線(ノズル孔11cの開口の中心を通る線)が存在する。
【0021】
本体13は、ロータ11を回転可能に支持しており、内部にロータ11を回転駆動する回転装置12を収納している。
本体13には、円筒形状のガイド部材14が摺動可能な穴として形成される摺動部13aが設けられている。摺動部13aは、ロータ11の軸方向(水平方向)に垂直な面の形状がロータ11を中心にしたリング状に形成されている。摺動部13aは、軸部11bと同方向、つまり水平方向に延在しており、一端が本体13の端面13bにて開口しており、他端が閉塞して底部をなしている。
【0022】
本体13は、移動装置(不図示)に接続されている。前記移動装置は、本体13を所定位置に移動させるものであり、油圧シリンダ又はモータ等のアクチュエータを含む。前記移動装置は、本体13をロックタイトの塗布対象であるワーク1に対して近接/離間する方向に移動することが可能に構成されている。
前記移動装置により本体13を移動させると、本体13と共にロータ11が移動する。そして、ロータ11をワーク1に近接することにより、ロータ11におけるノズル孔11cが形成されている箇所(ノズル孔形成箇所)がワーク穴2に進入し、ロータ11をワーク1から離間することにより前記ノズル孔形成箇所がワーク穴2から退出する。つまり、前記移動装置の作動により、ロータ11がワーク穴2に進入する方向/ワーク穴2から退出する方向に移動することができる。
【0023】
カバー部材14は、ロータ11の周囲を覆うことにより、塗布時に噴出部11aから噴出するロックタイトの飛散を防止し、かつ、非塗布時にノズル孔11cからロックタイトが垂れ落ちることを防止する部材である。
カバー部材14は、両端が開口する円筒形状に形成されている。より具体的には、カバー部材14は、ロータ11の周囲を囲む形状を有し、軸部11bの軸方向(水平方向)に垂直な面の形状がロータ11を中心にしたリング状に形成されており、カバー部材14の内径がロータ11の径よりも大きく設定されている。
カバー部材14の一端側が摺動部13a内に挿入され、他端側が本体13から突出しており、カバー部材14は摺動部13aに沿って摺動可能に構成されている。つまり、カバー部材14は、摺動部13a内を摺動することにより、本体13からの突出量を変更可能に構成されている。
また、カバー部材14の他端部(先端部)の形状は、ワーク穴2の開口の形状に応じた形状を有し、ワーク穴2の開口に沿いつつ、当該開口よりも僅かに大きい形状を有する。これにより、カバー部材14の先端部は、ワーク穴2の開口周縁部に当接してワーク穴2に進入不能に構成されている(図1(b)参照)。
【0024】
弾性部材15は、コイルバネであり、本体13の摺動部13aに嵌装されている。弾性部材15は、摺動部13aの底部とカバー部材14の底部側端部との間に介装されており、カバー部材14を本体13から突出する方向に付勢している。
非塗布時には、弾性部材15がカバー部材14を付勢することにより、カバー部材14が本体13から突出した状態となり、カバー部材14がノズル孔11cの周囲を囲む姿勢となる(図1(a)参照)。
また、カバー部材14を介して弾性部材15の付勢力に抗した押圧力が加えられることによって、弾性部材15が収縮してカバー部材14の本体13からの突出量が小さくなる。塗布時には、このようにしてカバー部材14が摺動部13a内に押し込まれることにより、ロータ11のノズル孔11cがカバー部材14の先端部よりも突出した状態となり、カバー部材14がノズル孔11cの周囲を囲んでいない姿勢となる(図1(b)参照)。
【0025】
戻り通路16は、カバー部材14内部に飛散して又は垂れ落ちて、カバー部材14内に溜まるロックタイトを外部へ流出させるための流路であり、一端がカバー部材14内部の下端部に接続されており、他端が図示せぬ回収装置に接続されており、カバー部材14内の空間と前記回収装置とを連通している。カバー部材14内部のロックタイトは、重力、ポンプ等の作用により戻り通路16を通じて回収装置に流れ、回収装置に回収される。
なお、回収装置によって回収された後のロックタイトは適宜の処理を経て、再度ロータ11に供給可能な状態とされて再利用される。
【0026】
以下では、塗布装置10を用い、ラインを流れる複数のワーク1・1・・・の各ワーク穴2内周にロックタイトを塗布するときの手順について説明する。
ラインを流れる各ワーク1に対して以下の(1)〜(4)の作業を行い、各ワーク1のワーク穴2の内周面にロックタイトを順次塗布する。
【0027】
(1)図2(a)に示すように、塗布装置10が非塗布状態(ロータ11及びカバー部材14がワーク1から離間しており、カバー部材14がロータ11のノズル孔11cよりも突出している状態)にある場合において、ワーク1が所定位置まで流れてくると、前記移動装置を作動させて本体13をワーク1に近接させ、カバー部材14をワーク1に当接させて、カバー部材14を摺動部13a内に押し込むことでロータ11をカバー部材14よりも突出させて、ワーク穴2にロータ11を進入させる。
【0028】
(2)図2(b)に示すように、ワーク穴2にロータ11が進入した状態において、ロータ11を回転させ、さらにロータ11にロックタイトが供給される。これにより、ロックタイトがロータ11の回転による遠心力でノズル孔11cから噴出し、ワーク穴2内周へ塗布される。
このとき、カバー部材14は、ワーク穴2の開口周縁部に当接してワーク穴2と本体13との間の隙間を覆うこととなるので、塗布時のロックタイトの飛散を防止できる。
【0029】
(3)所定時間経過後、ロックタイトの供給が停止され、さらにロータ11の回転が停止され、ロックタイトの塗布が停止される。
【0030】
(4)図2(c)に示すように、前記移動装置を作動させて本体13をワーク1から離間させ、ワーク穴2からロータ11を退出させる。
このとき、カバー部材14が弾性部材15に付勢されて本体13から突出する方向に力を受け、カバー部材14の開口部がワーク穴2の開口周縁部に当接している状態が保持される。これにより、ロータ11をワーク穴2から退出させる際(塗布状態から非塗布状態に遷移する際)に、ノズル孔11cからロックタイトが垂れ落ちたとしても、カバー部材14によってノズル孔11cの周囲が覆われているため塗布装置10からのロックタイトの垂れ落ちを防止できる。
また、本体13をさらに移動させて、ロータ11がワーク穴2から完全に退出した後は、弾性部材15の付勢力によりカバー部材14の先端部がロータ11のノズル孔11cよりも突出しているため、非塗布時の塗布装置10からのロックタイトの垂れ落ちを防止できる。
【0031】
そして、(4)の作業が終了すると、ラインを流れてくる次のワーク1に上記(1)〜(4)の作業を行っていく。
【0032】
以上のように、(4)の作業を終了してから次にラインを流れてくるワーク1に(1)の作業を開始するまでの間、つまりワーク穴2内周へのロックタイトの非塗布時に、カバー部材14がロータ11のノズル孔11cよりも突出した位置にある。これにより、ロータ11に残留しているロックタイトが、ノズル孔11cを通じて流出してもカバー部材14内部に落ちるので、塗布装置10外(床、ワーク1等)に垂れ落ちることを防止することが可能である(図2(c)参照)。
また、カバー部材14内部に落ちたロックタイトは、戻り通路16を通じて前記回収装置に流れていき、再利用される。これにより、ロックタイトの浪費を抑制することが可能である(図2(c)参照)。
【0033】
また、上記(2)でロータ11のノズル孔11cからロックタイトが噴出しているとき、カバー部材14の側端部がワーク穴2の開口周縁部に当接しており、ワーク穴2とカバー部材14内部とが連続的に繋がっている状態となっている(図2(b)参照)。
これにより、ノズル孔11cから噴出したロックタイトがワーク穴2外部に飛散した場合、ワーク穴2に連続的に繋がるカバー部材14内部に飛散していく。従って、ワーク穴2外部に飛散したロックタイトが、ワーク1におけるロックタイトの塗布を予定している領域(ワーク穴2内周)以外の領域に飛散して付着することを防止でき、ワーク1の品質を確保することが可能である。さらに、ワーク穴2外部に飛散したロックタイトについて、カバー部材14内部に飛散するので、戻り通路16を通じて回収することができ、ロックタイトの浪費を抑制することが可能である。
【0034】
[第二実施形態]
以下に、本発明に係る塗布装置の第二実施形態である塗布装置20について、図面を参照して説明する。
なお、塗布装置20は、第一実施形態の塗布装置10と略同じ構成であるため、以下では異なる部分について詳細に説明し、同様の部材に対しては同一符号を付し、詳細な説明およびそれに付随する効果等の記載は省略する。
【0035】
図3に示すように、噴出部11aの内部には錘11dが固定されており、錘11dは噴出部11aと共に回転する。錘11dは、所定の重量を有し、ロータ11の軸を中心にして噴出部11aにおけるノズル孔11cが形成されている側とは反対側に配置されている。本実施形態では、錘11dは、ノズル孔11cとはロータ11の軸を挟んで対向する位置に配置されている。
また、噴出部11aは、回転装置12により回転駆動されていないときには、軸部11bを中心に自由回転可能に構成されている。
このように構成すると、回転装置12によるロータ11の回転駆動が停止しているとき、錘11dに重力が作用することによって、錘11dが回転軌跡上の最下点にくるように自然に回転する。これにより、ロータ11のノズル孔11cがノズル孔11cの回転軌跡上の最上点にきて、ノズル孔11cが噴出部11aの上端部にくる。このときのロータ11の姿勢を停止姿勢とする(図3参照)。
【0036】
塗布装置20を用い、ラインを流れてくる各ワーク1に対して第一実施形態に記載の(1)〜(4)の工程を経て順次ロックタイトを塗布していったとする。
このとき、(4)の作業を終了してから次にラインを流れてくるワーク1に(1)の作業を開始するまでの間、つまりワーク穴2内周へのロックタイトの非塗布時に、ロータ11の回転が停止しており、ロータ11が前記停止姿勢になる。これにより、非塗布時に、噴出部11aの側面における上端にノズル孔11cの開口が位置しているので、ロータ11に残留しているロックタイトがノズル孔11cを通じて流出することを防止でき、ロックタイトが垂れ落ちることを防止することが可能である。
さらに、ロータ11に残留しているロックタイトがノズル孔11cを通じて流出することを防止できることにより、ロータ11に残留しているロックタイトをラインを流れてくる次のワーク1のワーク穴2内周への塗布に利用でき、ロックタイトの浪費を抑制することが可能である。さらに第一実施形態のように戻り通路16を用いなくてもロックタイトの浪費を抑制することができ、装置構成を簡素化できる。
【0037】
なお、前述のようにノズル孔11cを噴出部11aに一つしか形成していないが、単位時間当たりのロータ11の回転数を適宜上げることにより、噴出部11aに複数のノズル孔11cを形成したときと同等のロックタイトの噴出量を確保でき、確実にロックタイトを塗布できる(図4参照)。
【0038】
また、第一実施形態の塗布装置10の構成と、第二実施形態の塗布装置20の構成と、を適宜組み合わせ、ロータ11、回転装置12、本体13、カバー部材14、弾性部材15、及び戻り通路16を備える塗布装置を構成してもよい。この場合、ロータ11の噴出部11aには、錘11dが固定されている。
この塗布装置によると、上記(4)の作業を終了してからラインを流れてくる次のワーク1に(1)の作業を開始するまでの間、カバー部材14がロータ11のノズル孔11cより突出した状態にあり、さらにロータ11が前記停止姿勢にあるので、ロータ11に残留しているロックタイトが垂れ落ちることをより確実に防止することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ワーク
2 ワーク穴
10・20 塗布装置
11 ロータ
11c ノズル孔
14 カバー部材
11d 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持され、かつ、流動性材料を噴出するノズル孔が形成されるロータを備え、
前記ロータにおける前記ノズル孔が形成される箇所であるノズル孔形成箇所がワークに形成されるワーク穴に進入した状態で前記ロータを回転することにより前記ワーク穴の内周に流動性材料を塗布する塗布装置であって、
前記ノズル孔形成箇所の周囲を囲む姿勢及び前記ノズル孔形成箇所の周囲を囲まない姿勢の間で移動可能に支持され、前記ロータが前記ワーク穴に進入した状態のときに前記ノズル孔形成箇所の周囲を囲まない姿勢になり、前記ロータが前記ワーク穴から退出した状態のときに前記ノズル孔形成箇所の周囲を囲む姿勢になるカバー部材を備える塗布装置。
【請求項2】
前記カバー部材の内周面で囲まれる空間と前記流動性材料を回収する手段とを連通する戻り通路を備える請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、先端部の形状が前記ワーク穴の開口の形状に応じた形状であり、前記ロータが前記ワーク穴に進入した状態のときに前記先端部が前記ワーク穴の開口周縁部に当接した姿勢になる請求項1又は請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
回転可能に支持され、かつ、流動性材料を噴出するノズル孔が形成されるロータを備え、
前記ロータにおける前記ノズル孔が形成される箇所であるノズル孔形成箇所がワークに形成されるワーク穴に進入した状態で前記ロータを回転することにより前記ワーク穴の内周に流動性材料を塗布する塗布装置であって、
前記ロータに固定されることにより前記ロータと共に回転し、前記ロータの軸を中心にして前記ロータにおける前記ノズル孔が形成される側とは反対側に配置され、前記ロータの非回転時に自重で回転軌跡上の最下点にくる錘を備える塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−264407(P2010−264407A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119175(P2009−119175)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】