説明

塗布装置

【課題】応答性が向上した空圧式の塗布装置を提供する。
【解決手段】軸部33に固定された第1及び第2プランジャ31,32、を含むピストン30と、塗布剤を吐出するための吐出口を有した充填室11、前記第1プランジャにより前記充填室と仕切られた制御室12、前記第2プランジャにより互いに仕切られた第1及び第2調整室21,22、前記制御室と前記第1調整室とを仕切ると共に前記軸部が移動可能に貫通した仕切部25、を含むハウジング10,20と、前記制御室、前記第1及び第2調整室に空気を供給可能な空気供給部と、前記第1及び第2調整室内の空気をそれぞれ調整室外に開放可能な第1及41び第2弁42と、前記第1及び第2弁が閉じ前記第1及び第2調整室の各内圧が所定圧を超えた状態で、前記第1弁を開き前記空気供給部により前記制御室へ空気を供給させることにより前記ピストンを始動させる制御部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出口が形成されたハウジング内に充填された塗布剤を押し出すことにより、塗布剤を吐出口から吐出する塗布装置がある。このような塗布装置には、塗布剤を押し出すピストンをアクチュエータなどにより駆動する機械式、空気圧を利用してピストンを駆動する空圧式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−47898号公報
【特許文献2】特開2002−102766号公報
【特許文献3】特開2000−135465号公報
【特許文献4】特開平10−118546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空圧式の塗布装置は、例えばハウジング内に、塗布剤が充填された充填室と空気が供給される制御室とに仕切るピストンを配置する。制御室内へ空気を供給又は空気の供給を停止することにより制御室の内圧を増減させてピストンを移動、停止させる。
【0005】
制御室内に空気が供給されることによって制御室の内圧が増大し、これによりピストンが圧力を受けて始動する。これにより、充填室に充填された塗布剤が吐出される。また、制御室内への空気の供給を停止することにより制御室の内圧が減少し、これによりピストンが停止する。これにより、塗布剤の吐出が停止される。
【0006】
制御室に空気の供給が開始されてから制御室の内圧が所望の内圧に至るまでには、所定の期間を要する。このため、この期間ではピストンの移動速度は徐々に増大し、塗布剤の吐出量も徐々に増加していくことになる。従ってこの期間が長いと、塗布開始時から直ちに塗布剤の吐出量を所望の吐出量にすることは困難である。
【0007】
また、制御室への空気の供給が停止されてから塗布剤が吐出されなくなる程度にまで制御室内の内圧が低下するまでには、所定の期間を要する。このため、この期間ではピストンの移動速度が徐々に低下し、塗布剤の吐出量も徐々に減少してから塗布剤の吐出が停止する。従って、塗布終了時においても直ちに塗布剤の吐出を停止させることは困難である。
【0008】
このように、ピストンを駆動する作動流体として空気を用いた場合には、ピストンの応答性が悪化するおそれがある。
【0009】
本発明は、応答性が向上した空圧式の塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に開示の塗布装置は、軸部、前記軸部に固定された第1及び第2プランジャ、を含むピストンと、塗布剤を吐出するための吐出口を有した充填室、前記第1プランジャにより前記充填室と仕切られた制御室、前記第2プランジャにより互いに仕切られた第1及び第2調整室、前記制御室と前記第1調整室とを仕切ると共に前記軸部が移動可能に貫通した仕切部、を含むハウジングと、前記制御室、前記第1及び第2調整室に空気を供給可能な空気供給部と、前記第1及び第2調整室内の空気をそれぞれ調整室外に開放可能な第1及び第2弁と、前記第1及び第2弁が閉じ前記第1及び第2調整室の各内圧が所定圧を超えた状態で、前記第1弁を開き前記空気供給部により前記制御室へ空気を供給させることにより前記ピストンを始動させる制御部と、を備えている。
【0011】
また、本明細書に開示の塗布装置は、軸部、前記軸部に固定された第1及び第2プランジャ、を含むピストンと、塗布剤を吐出するための吐出口を有した充填室、前記第1プランジャにより前記充填室と仕切られた制御室、前記第2プランジャにより互いに仕切られた第1及び第2調整室、前記制御室と前記第1調整室とを仕切ると共に前記軸部が移動可能に貫通した仕切部、を含むハウジングと、前記制御室、前記第1及び第2調整室に空気を供給可能な空気供給部と、前記第1及び第2調整室内の空気をそれぞれ調整室外に開放可能な第1及び第2弁と、前記第1及び第2弁が閉じ前記第1及び第2調整室の各内圧が所定圧を超え前記空気供給部が前記制御室に空気を供給している状態で、前記第2弁を開き前記空気供給部による前記制御室への空気の供給を停止させることにより前記ピストンを停止させる制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
応答性が向上した空圧式の塗布装置を提供することを課題とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、塗布装置の説明図である。
【図2】図2は、ハウジングへ塗布剤を充填する方法の説明図である。
【図3】図3は、コントローラが実行するフローチャートの一例を示した図である。
【図4】図4は、コントローラが実行するフローチャートの一例を示した図である。
【図5】図5は、タイミングチャートの一例の図である。
【図6】図6A、6bは、ノズルの状態の説明図である。
【図7】図7A、7bは、ノズルの状態の説明図である。
【図8】図8は、ノズルの状態の説明図である。
【図9】図9A、9Bは、塗布剤の吐出状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、塗布装置100の説明図である。塗布装置100は、ノズル1、コントローラ50、空気供給装置60、空気供給源70を含む。ノズル1は、ハウジング10、20、ピストン30を有している。ピストン30は、軸部33、軸部33に固定されたプランジャ31、32を有している。軸部33の下端にプランジャ31が固定され、軸部33の上端にプランジャ32が固定されている。プランジャ31は、第1プランジャの一例である。プランジャ32は、第2プランジャの一例である。ハウジング10の軸方向での断面積は、ハウジング20の軸方向での断面積よりも小さいが、このような構成に限定されない。
【0015】
ハウジング10は、プランジャ31によって仕切られた充填室11、制御室12を有している。充填室11には塗布剤Mが充填されている。塗布剤Mは、例えば接着剤などであるがそれ以外であってもよい。充填室11の先端には塗布剤Mを吐出するための吐出口OPが形成されている。充填室11は、塗布剤を吐出するための吐出口を有した充填室の一例である。制御室12は、第1プランジャにより充填室と仕切られた制御室の一例である。制御室12には制御室12内の圧力に応じた検出信号をコントローラ50に出力するセンサSが設けられている。
【0016】
制御室12内には、空気供給装置60から空気が供給され、制御室12の内圧が制御される。コントローラ50は空気供給装置60の動作を制御する。空気供給装置60は、例えば、空気を圧送可能なコンプレッサを備えたものであってもよいし、ポンプを備えたものであってもよい。空気供給装置60は、制御室に空気を供給可能な空気供給部の一例である。
【0017】
ハウジング20は、プランジャ32によって仕切られた調整室21、22を有している。調整室21、22は、それぞれ、第2プランジャにより互いに仕切られた第1調整室及び第2調整室の一例である。ハウジング20は仕切壁25を有し、仕切壁25は、ハウジング10の制御室12とハウジング20の調整室21とを仕切っている。仕切壁25には貫通孔26が設けられており、貫通孔26には筒状部材27が嵌合している。ピストン30の軸部33は、筒状部材27を昇降可能に係合している。筒状部材27は例えば金属製である。調整室21、制御室12は互いに気密性が確保されており、軸部33が筒状部材27内を摺動しても調整室21、制御室12間で空気が流れない。仕切壁25は、制御室と第1調整室とを仕切ると共に軸部が移動可能に貫通した仕切部の一例である。このように、ノズル1は、軸方向下方から上方にかけて充填室11、制御室12、調整室21、22の4つの室を有している。
【0018】
調整室21、22のそれぞれには、チューブ81、82がそれぞれ設けられている。チューブ81、82のそれぞれには、弁41、42が設けられている。コントローラ50は、弁41、42の開閉を制御する。弁41、42は、それぞれ、第1及び第2調整室内の空気をそれぞれ調整室外に開放可能な第1及び第2弁の一例である。
【0019】
空気供給源70は、調整室21、22のそれぞれに空気を供給する。具体的には、空気供給源70と調整室21とは、空気供給源70に接続されたチューブ87、チューブ87から分岐したチューブ87a、により接続されている。空気供給源70と調整室22とは、空気供給源70に接続されたチューブ87、チューブ87から分岐したチューブ87b、により接続されている。チューブ87a、87bには、それぞれ供給弁47a、47bが設けられている。空気供給源70は、チューブ87、87a、87bを介してハウジング20内に空気を継続して供給する。空気供給源70は、例えば、ポンプなどである。
【0020】
コントローラ50は、供給弁47a、47bの開閉を制御する。供給弁47a、47bの開閉が制御されることにより、空気供給源70からの調整室21、22への空気の供給が制御される。供給弁47aは、制御部により制御され空気供給部と第1調整室との連通状態を切り替える第1供給弁の一例である。供給弁47bは、制御部により制御され空気供給部と第2調整室との連通状態を切り替える第2供給弁の一例である。
【0021】
空気供給源70は、コントローラ50の制御によらずに常に調整室21、22へ空気が供給されるが、これに限定されない。例えば、空気供給源70の代わりに、供給弁47a、47bが設けられておらずコントローラ50によって調整室21、22への空気の供給が制御される装置であってもよい。空気供給源70は、第1及び第2調整室に空気を供給可能な空気供給部の一例である。尚、調整室21、22には、同一の空気供給源70から空気が供給されるが、調整室21、22ごとに異なる空気供給源を設けてもよい。
【0022】
調整室21、22は、チューブ85により連通している。チューブ85には連通弁45が設けられている。コントローラ50は、連通弁45の開閉を制御する。これにより、調整室21、22の連通状態又は遮断された状態にすることができる。連通弁45は、制御部により制御され第1及び第2調整室を連通可能な連通弁の一例である。
【0023】
以上のように、コントローラ50は、弁41、42、連通弁45、供給弁47a、47bの開閉を制御すると共に空気供給装置60の動作を制御する。コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えたコンピュータである。
【0024】
ハウジング10へ塗布剤Mを充填する方法について説明する。図2は、ハウジング10へ塗布剤Mを充填する方法の説明図である。尚、図2においてはノズル1を簡略化して示している。図2に示すように、ハウジング10はハウジング20から取外し可能である。具体的には、ハウジング10の上端部と仕切壁25の下部とには、互いに嵌合するネジ部などが設けられており、ハウジング20に対してハウジング10を回転させることにより、ハウジング10をハウジング20から着脱可能である。また、ピストン30はハウジング20側に保持されている。図2に示すように、ハウジング20からハウジング10を取外してハウジング10内に塗布剤Mを充填させることができる。以上のように、ノズル1のハウジングは、分離可能な2つのハウジング10、20を含むが、単一のハウジングのみを含んでもよい。ノズル1のハウジングが単一のハウジングのみを含む場合、充填室に塗布剤を充填するための開閉可能な開口などが設けられていればよい。
【0025】
次に、コントローラ50が実行する塗布制御について説明する。図3、4は、コントローラ50が実行するフローチャートの一例を示した図である。図5は、タイミングチャートの一例の図である。図5には、弁41、42、供給弁47a、47b、連通弁45の状態、プランジャ31の位置、調整室21、22、制御室12の内圧、空気供給装置60の状態を示している。図6A〜8は、ノズル1の状態の説明図である。尚、図6A〜8においては、調整室21、22、制御室12の内圧のそれぞれを内圧Pa、Pb、Pcとして示している。
【0026】
塗布開始前は、コントローラ50は、供給弁47a、47b、連通弁45を開き、弁41、弁42を閉じる(ステップS1)。供給弁47a、47bが開くことにより調整室21、22内には空気供給源70から空気が供給され、内圧Pa、Pbは大気圧P0より大きくなる。連通弁45が開くことにより調整室21と調整室22とは連通し、内圧Paと内圧Pbとは同じ値になる。
【0027】
次に、コントローラ50は、塗布開始要求があるか否かを判定する(ステップS2)。否定判定の場合には、再度本ステップS2の処理を実行する。肯定判定の場合には、コントローラ50は、空気供給装置60を駆動させ、連通弁45、供給弁47aを閉じ、弁41を開く(ステップS3、t0)。
【0028】
空気供給装置60が駆動することにより、制御室12内に空気が供給されて内圧Pcは大気圧よりも大きくなる。連通弁45を閉じることにより、調整室21と調整室22との連通は遮断され調整室21の内圧Paと調整室22の内圧Pbとを独立して制御することが可能になる。この状態で供給弁47aを閉じ弁41を開くことにより、空気供給源70から調整室21への空気の供給が停止され調整室21内の空気が調整室外に放出される。これにより、図5、図6Bに示すように、内圧Paは大気圧P0と等しくなる(t1)。このようにしてピストン30が始動して塗布が開始される。尚、ステップS3における各弁の開閉タイミングや空気供給装置60の駆動タイミングの順番は特に問わず、略同時の行ってもよい。
【0029】
以上のように、コントローラ50は、弁41、42が閉じ調整室21、22の各内圧が大気圧を超えた状態で、弁41を開き空気供給装置60により制御室12へ空気を供給させることによりピストン30を始動させる。空気供給装置60により制御室12に空気を供給することにより、制御室12の内圧が増大しプランジャ31には下方に力が作用する。また、弁41を開くことにより、調整室21の内圧Paは直ちに大気圧P0となる。調整室22の内圧Pbは大気圧を超えた状態に維持されているので、弁41を開いた直後に調整室21、22の内圧差が生じる。この調整室21、22の内圧差により、プランジャ32には下方に力が作用する。このように、制御室12の内圧と、調整室21、22の内圧差とにより、ピストン30が始動する。
【0030】
ここで、図5に示すように、空気供給装置60により制御室12内に空気が供給され始めてから内圧Pcは徐々に増加する。制御室12内に空気が供給された始めてから内圧Pcが所望の定常圧力に至るまでに所定の期間を要する。従って、調整室21、22の内圧差を利用せずに制御室12の内圧Pcの作用のみに基づいてピストン30を駆動する場合、ピストン30の移動速度が徐々に増大し、塗布剤の吐出量も徐々に増加する。このため、塗布開始時から直ちに塗布剤を所望の吐出量だけ吐出することは困難である。
【0031】
本実施例の場合、調整室21内の空気を調整室外に開放することにより、直ちに調整室21、22の内圧差を生じさせる。この内圧差を利用してピストン30を直ちに下降させる。このため、始動時のピストン30の応答性が向上している。
【0032】
尚、図5に示すように、実際には弁41を開いてから調整室21の内圧Pcが大気圧P0に至るまでの期間(t0からt1の期間)において、ピストン30の下降速度は増加する。内圧Pcが大気圧P0に至ってから(t1)、ピストン30は略等速で下降する。
【0033】
次に、コントローラ50は、供給弁47aを開いて再び弁41を閉じる(ステップS4、t1)。これにより、空気供給源70から調整室21に再び空気が供給され、図7Aに示すように、調整室21の内圧Paは再び大気圧よりも増大する。尚、この間も空気供給装置60は制御室12内に空気を供給して内圧Pcは増大する。
【0034】
ここで、弁41が閉じてからその後に連通弁45が開くまでの期間(t1からt2までの期間)では、ピストン30は略等速度で下降する。この期間においては、制御室12の内圧Pcは徐々に増大している。このため、制御室12の内圧Pcによるプランジャ31に作用する下方の力は徐々に増大する。また、この期間では調整室21の内圧Paは増大し調整室22の内圧Pbは一定であるため、調整室21、22の内圧差は減少する。従って、調整室21、22の内圧差によりプランジャ32に作用する下方の力は徐々に減少する。よって、t1からt2までの期間において、プランジャ31に作用する下方の圧力は増大しプランジャ32に作用する下方の圧力は減少する。これにより、ピストン30全体に作用する下方の圧力は略一定となり、ピストン30は、略等速で下降する。
【0035】
次に、コントローラ50はセンサSからの出力信号に基づいて、制御室12の内圧Pcが所定圧力以上か否かを判定する(ステップS5)。否定判定の場合には、コントローラ50は本ステップS5の処理を実行する。制御室12の内圧Pcが所定圧力以上の場合、コントローラ50は、連通弁45を開く(ステップS6、t2)。ここで、所定圧力とは、空気供給装置60の性能上、制御室12に空気を供給しても原理上それ以上増大しない定常状態での内圧Pcを意味する。所定圧力は、予め実験などにより算出され、コントローラ50のROMに記憶されている。このようにコントローラ50は、センサSからの検出信号に応じて連通弁45を開く可否を判定する。連通弁45を開くことにより、図7Bに示すように、調整室21、22は連通し内圧Paと内圧Pbとは同じ値になる。尚、図5では、内圧Paが内圧Pbと略同一の値にまで回復してから連通弁45が開かれているが、制御室12の内圧Pcが所定圧力以上であれば内圧Paと内圧Pbとが同一に至る前であっても連通弁45を開く。
【0036】
連通弁45が開いている間(t2からt3の期間)、空気供給装置60により制御室12への空気の供給が継続されピストン30は下降を継続する。ここで、連通弁45が開いている間は、調整室21の内圧Paと調整室22の内圧Pbとは同一である。このため、内圧Paがプランジャ32に作用する上方への力と内圧Pbがプランジャ32に作用する下方への力は釣り合う。このため、内圧Pa、Pbは、ピストン30の下降を妨げるようにも作用せず、ピストン30の下降を助長するようにも作用しない。従って、連通弁45が開いている期間においては、ピストン30は、制御室12の内圧Pcの作用のみに基づいて下降が継続する。また、空気供給装置60から制御室12への空気の供給は継続されるが、上述したように内圧Pcは定常値に維持される。これにより塗布剤Mの吐出が継続される。
【0037】
このように、連通弁45は、ピストン30の始動時には閉じており、ピストン30の移動中に開く。連通弁45を開くことにより調整室21、22の内圧差をゼロにすることができる。従って、ピストン30の移動中に制御室12の内圧Pcの作用にのみに基づいてピストン30を移動させたい場合には、連通弁45を開くことにより対応できる。
【0038】
上述したように内圧Pcが定常値になった場合、即ち、内圧Pcは一定の値に維持される場合に連通弁45を開く。これにより一定の値に維持されている内圧Pcの作用のみに基づいてピストン30が下降し、この結果ピストン30は略等速で下降する。
【0039】
例えば、内圧Pcが定常値であっても連通弁45が閉じられ調整室21、22に空気が供給され調整室21、22の内圧差が変動している場合には、この内圧差の変動によりピストン30を等速度で移動させることができないおそれがある。上述したように、内圧Pcが定常値に到達したことを検出した場合に連通弁45を開くことにより、調整室21、22の内圧差をゼロにし、内圧Pcの作用のみに基づいてピストン30を略等速度で下降させることができる。これにより、塗布剤Mの吐出量を一定に維持することができる。
【0040】
次に、コントローラ50は、塗布停止要求があるか否かを判定する(ステップS7)。否定判定の場合には、コントローラ50はステップS6の処理を実行する。肯定判定の場合には、コントローラ50は、空気供給装置60を停止し、連通弁45を閉じ、供給弁47bを閉じ、弁42を開く(ステップS8t3)。
【0041】
空気供給装置60を停止することにより、図5に示すように、制御室12の内圧Pcは徐々に大気圧P0に向けて減少する。連通弁45を閉じることにより、調整室21の内圧Paと調整室22の内圧Pbとを独立して制御することが可能になる。この状態で供給弁47bを閉じ弁42を開くことにより、空気供給源70から調整室22への空気の供給が停止され調整室22内の空気が調整室外に放出される。これにより、図5、図8に示すように、内圧Pbは大気圧P0と等しくなる(t4)。尚、ステップS7における各弁の開閉タイミングや空気供給装置60の駆動タイミングの順番は特に問わず、略同時の行ってもよい。
【0042】
以上のように、コントローラ50は、弁41、42が閉じ調整室21、22の各内圧が大気圧を超え空気供給装置60が制御室12に空気を供給している状態で、弁42を開き空気供給装置60による制御室12への空気の供給を停止させることにより、ピストン30を停止させる。弁42を開くことにより、調整室22の内圧Pbは直ちに大気圧P0となる。調整室21の内圧Paは大気圧を超えた状態に維持されているので、弁42を開いた直後に調整室21、22の内圧差が生じる。この調整室21、22の内圧差により、プランジャ32には上方に力が作用する。これにより、直ちにピストン30の下降が停止される。
【0043】
ここで、図5に示すように、空気供給装置60が停止してから内圧Pcは徐々に低下して大気圧P0に至る。従って、制御室12内への空気の供給が停止してから内圧Pcが大気圧P0に戻るまで所定の期間を要する。従って、調整室21、22の内圧差を利用せずに空気供給装置60を停止した場合には、この期間においてピストン30の移動速度は徐々に低下し、塗布剤の吐出量も徐々に減少し、その後に塗布剤の吐出が停止する。従って、塗布終了時においても直ちに塗布剤Mの吐出を停止させることは困難である。
【0044】
本実施例の場合、調整室22内の空気を調整室外に開放することにより、直ちに調整室21、22の内圧差を生じさせる。この内圧差を利用してピストン30の下降を直ちに停止させる。このようにして、停止時のピストン30の応答性が向上している。
【0045】
尚、図5に示すように、実際には弁42を開いてから調整室22の内圧Pbが大気圧P0に至るまでの期間において、ピストン30の下降速度は徐々に低下し、内圧Pbが大気圧P0に至るとの略同時にピストン30は停止する(t4)。
【0046】
また、上述したようにピストン30を停止させる際には、コントローラ50は連通弁45を閉じる。従って、連通弁45は、ピストン30の移動中に開き、ピストン30の停止時には閉じる。ステップS8の実行後、コントローラ50は、供給弁47bを開き弁42を閉じる(ステップS9)。これにより、調整室22の内圧Pbが増大し、内圧Pbと内圧Paとが略同じになる。
【0047】
尚、ピストン30は、弁41が開いて内圧Paが大気圧P0に至ってから弁42が開いたときまでの間(t1からt3までの期間)、略一定の速度で下降する。また、塗布剤Mが吐出される期間は、塗布画開始されてからピストン30が完全に停止するまでの間(t0からt4までの期間)である。以上にように、コントローラ50はピストン30を駆動する。
【0048】
図9A、9Bは、塗布剤Mの吐出状態の説明図である。図9Aは、制御室12の内圧のみの作用によってピストン30を駆動させた場合での塗布剤Mの吐出の状態を示している。図9Bは、制御室12の内圧と調整室21、22の内圧差との作用によってピストン30を駆動させた場合での塗布剤Mの吐出の状態を示している。図9A、9Bは、ノズル1を水平右方向に等速度で移動させた場合での塗布剤Mの吐出の状態を示している。図9A、9Bは、所定の部材上に塗布された塗布剤Mを示している。
【0049】
図9Aに示すように、塗布の開始位置である塗布剤Mの一端M1xでは、塗布剤Mの吐出量が減少している。上述したように、制御室12の内圧の作用のみではピストン30の応答性が悪いからである。ノズル1が水平右方向に移動するにつれて塗布剤Mの吐出量は一定となり、塗布の終了位置である他端M2xでは吐出量が増大している。これは、塗布の終了位置でノズル1の水平右方向の移動を停止させたと同時に空気供給装置60による制御室12への空気の供給を停止したからである。上述したように空気供給装置60による制御室12への空気の供給を停止してもピストン30は直ちに停止しないため、他端M2xで塗布剤Mが所望の吐出量よりも多く吐出される。このように、制御室12の内圧の作用のみではピストン30の応答性が悪く、塗布剤Mの吐出量を一定に維持することは困難である。
【0050】
前述したように制御室12の内圧の作用と調整室21、22の内圧差の作用とによってピストン30を駆動させる場合にはピストン30の応答性が向上し、図9Bに示すように、一端M1及び他端M2においても塗布剤Mの吐出量を一定に維持することができる。さらに、ピストン30の移動を、空気圧で制御するため、ノズル1の重量がモータなどのアクチュエータを利用する場合よりも軽くすることができる。その結果、ノズル1をロボットで把持および移動させる時に、高速かつ高精度に制御することが可能になる。
【0051】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記実施例において調節室内の圧力の制御の基準を大気圧P0と記述したが、大気圧以外のなんらかの所定圧を基準にすることもできる。
【0052】
尚、ステップS4、S5において、センサSの検出信号に基づいて調整室21の内圧が所定圧力以上になった場合にコントローラ50は連通弁45を開く。しかしながらこのような処理に限定されず、例えば、センサSの検出信号に基づいて調整室21の内圧の変化量が所定値以下になった場合にコントローラ50は連通弁45を開いてもよい。即ち、調整室21の内圧が一定となる定常状態にあるか否かをセンサSによって検出し、この検出された場合に連通弁45を開けばよい。このように、コントローラ50はセンサSからの検出信号に応じて、連通弁45の開閉の可否を決定する。
【0053】
空気供給装置60、空気供給源70の代わりに、例えば、制御室12、調整室21、22にそれぞれ空気を供給する単一の装置を採用してもよい。センサSは、充填室11の内圧を検出してもよい。制御室12の内圧と充填室11の内圧とは略等しいとみなせるからである。
【符号の説明】
【0054】
1 ノズル
10、20 ハウジング
11 充填室
12 制御室
21、22 調整室
25 仕切壁
30 ピストン
31、32 プランジャ
33 軸部
41、42 弁
45 連通弁
47a、47b 供給弁
50 コントローラ
60 空気供給装置
70 空気供給源
100 塗布装置
S センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部、前記軸部に固定された第1及び第2プランジャ、を含むピストンと、
塗布剤を吐出するための吐出口を有した充填室、前記第1プランジャにより前記充填室と仕切られた制御室、前記第2プランジャにより互いに仕切られた第1及び第2調整室、前記制御室と前記第1調整室とを仕切ると共に前記軸部が移動可能に貫通した仕切部、を含むハウジングと、
前記制御室、前記第1及び第2調整室に空気を供給可能な空気供給部と、
前記第1及び第2調整室内の空気をそれぞれ調整室外に開放可能な第1及び第2弁と、
前記第1及び第2弁が閉じ前記第1及び第2調整室の各内圧が所定圧を超えた状態で、前記第1弁を開き前記空気供給部により前記制御室へ空気を供給させることにより前記ピストンを始動させる制御部と、を備えた塗布装置。
【請求項2】
軸部、前記軸部に固定された第1及び第2プランジャ、を含むピストンと、
塗布剤を吐出するための吐出口を有した充填室、前記第1プランジャにより前記充填室と仕切られた制御室、前記第2プランジャにより互いに仕切られた第1及び第2調整室、前記制御室と前記第1調整室とを仕切ると共に前記軸部が移動可能に貫通した仕切部、を含むハウジングと、
前記制御室、前記第1及び第2調整室に空気を供給可能な空気供給部と、
前記第1及び第2調整室内の空気をそれぞれ調整室外に開放可能な第1及び第2弁と、
前記第1及び第2弁が閉じ前記第1及び第2調整室の各内圧が所定圧を超え前記空気供給部が前記制御室に空気を供給している状態で、前記第2弁を開き前記空気供給部による前記制御室への空気の供給を停止させることにより前記ピストンを停止させる制御部と、を備えた塗布装置。
【請求項3】
前記制御部により制御され前記第1及び第2調整室を連通可能な連通弁を備え、
前記ピストンの始動時には前記連通弁は閉じ、前記ピストンの移動中で前記連通弁が開く、請求項1の塗布装置。
【請求項4】
前記制御部により制御され前記第1及び第2調整室を連通可能な連通弁を備え、
前記ピストンの移動中に前記連通弁を開き、前記ピストンの停止時には前記連通弁を閉じる、請求項2の塗布装置。
【請求項5】
前記充填室又は前記制御室の内圧に応じた検出信号を前記制御部に出力するセンサを備え、
前記制御部は、前記ピストンの移動中での前記検出信号の値に応じて前記連通弁を開く可否を判定する、請求項3又は4の塗布装置。
【請求項6】
前記制御部により制御され前記空気供給部と前記第1調整室との連通状態を切り替える第1供給弁と、
前記制御部により制御され前記空気供給部と前記第2調整室との連通状態を切り替える第2供給弁と、を備え、
前記第1弁が開いている間は前記第1供給弁は閉じ、
前記第2弁が開いている間は前記第2供給弁は閉じている、請求項1乃至5の何れかの塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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