説明

塗料供給方法

【課題】静電塗装機に着脱可能に着装される塗料カートリッジにおいて、該塗料カートリッジへの塗料の供給時に発生する塗料ロスを、他に機械的な遮断機構などを設けることもなく、安価かつ確実に低減することができる技術の提供を課題とする。
【解決手段】塗料カートリッジ10内に塗料を供給するための供給部11に連通可能な塗料供給経路3と、前記供給部11と前記塗料供給経路3との連通箇所近傍にて前記塗料供給経路3より分岐する分岐経路6と、前記塗料供給経路3における前記連通箇所の上流部に配設される、前記塗料供給経路3の開閉弁としてのトリガーバルブ9と、を有する充填弁1によって、塗料カートリッジ10内に塗料を供給する塗料供給方法であって、前記分岐経路6の内部に充填液52を充填した後に前記トリガーバルブ(開閉弁)9を開き、前記塗料供給経路3を介して前記塗料カートリッジ10内に塗料を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料カートリッジへの塗料供給方法の技術に関する。
より具体的には、静電塗装機に着脱可能に着装される塗料カートリッジに対して、機械的な遮断機構など設けることもなく、安価かつ確実に塗料ロスを低減することが可能な塗料供給方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車のボディなどの塗装については、高品質な塗装状態が要求されることから、塗装表面における塗料の塗着効率や、塗装後の塗膜の平滑性などに優れた静電塗装機が用いられ、該静電塗装機の一例として、従来から回転霧化頭型塗装機が広く知られている。
ここで、回転霧化頭型塗装機には、水性塗料を霧化するための回転霧化頭や、複数色の塗料が色ごとに充填された複数の塗料カートリッジなどが具備される。そして、被塗装物に対する塗装を行うときには、指定された色の塗料が充填される塗料カートリッジを選択し、該塗料カートリッジ内に充填される塗料を、回転する回転霧化頭を介して噴出することで、塗料粒子が霧化されて塗装が行われる。
そして、塗料カートリッジ内の塗料が枯渇した場合には、塗料カートリッジを塗料充填装置(塗料供給装置)に装着し、再び塗料カートリッジ内に塗料を供給することで、回転霧化頭型塗装機による塗装が再び実施されるようになっている。
【0003】
ところで、空の状態となった塗料カートリッジ内へ塗料を供給するための塗料供給装置としては、従来から様々な構成のものが提案されており、その一例として、充填弁を備える塗料供給装置が知られている。
【0004】
ここで図4を用いて、充填弁1の概略構成について説明する。
充填弁1の内部には、塗料カートリッジ10の内部に通じる供給部11に対して着脱可能に連通される塗料供給経路3や、該連通箇所において、塗料供給経路3の開閉弁として機能するトリガーバルブ9などが設けられる。
そして、トリガーバルブ9の近傍においては、洗浄液供給経路7、及び廃液排出経路8が塗料供給経路3と連通されており、前記洗浄液供給経路7を介して、供給部11と塗料供給経路3との連通箇所近傍を洗浄する洗浄液や圧縮空気などが、前記連通箇所近傍に供給されるとともに、前記連通箇所近傍を洗浄した後の廃液が、前記廃液排出経路8を介して充填弁1の外部に排出されるようになっている。
【0005】
このような充填弁1を用いた、従来の塗料カートリッジ10への塗料供給方法では、充填弁1から塗料カートリッジ10へ塗料を供給する際に、トリガーバルブ9が移動して(図4(a)に示す矢印Q1の方向へ)、塗料供給経路3が「開」状態となれば、塗料供給経路3は供給部11に加えて洗浄液供給経路7、及び廃液排出経路8とも連通状態となる。
その結果、図4(b)に示すように、塗料供給経路3の内部を流動する塗料51の一部は、洗浄液供給経路7や廃液排出経路8に流れ出し、これら両供給経路7・8内に残留していた空気は塗料51によって圧縮され、両供給経路7・8内の略全領域に渡って、塗料51が充填されることとなっていた。
そして、洗浄液供給経路7や廃液排出経路8の内部に充填された塗料51については、充填弁1を通じて供給する塗料の色替え時に、洗浄液により洗浄されて充填弁1の外部に排出されるため、その後に塗料カートリッジ10に再び送り込まれることもなく、塗料ロスとなっていた。
【0006】
このような問題点を踏まえて、塗料カートリッジへの塗料供給時に発生する塗料ロスを極力低減するべく、以下「特許文献1」乃至「特許文献3」に示すような技術が提案されている。
【0007】
即ち、「特許文献1」では、塗料が充填されるボンベと該ボンベの軸心方向に伸びたフィードチューブとによって構成されたカートリッジに塗料を充填するカートリッジ用塗料充填装置であって、前記フィードチューブが挿通されるフィードチューブ挿通孔が軸方向に伸びて設けられ、該フィードチューブ挿通孔の先端開口側が前記ボンベを支持するボンベ支持部となった充填台と、前記フィードチューブ挿通孔よりも奥部に位置して該充填台に設けられ、前記フィードチューブの先端を塗料供給源に連なる塗料流路と接続する接続部材と、前記塗料流路に設けられ、該接続部材を介して前記カートリッジに対し塗料の供給、停止を行う充填弁と、によって構成したカートリッジ用塗料充填装置に関する技術が開示されている。
【0008】
そして、前記充填弁の内部には、塗料供給源に繋がる塗料供給通路(塗料供給経路)や、ドレンタンクに繋がるドレン通路(廃液排出経路)が形成され、これら両通路は一本の連通通路を介して連通されるとともに、塗料カートリッジへ塗料を供給する場合は、ドレン通路の中途部に設けられる残圧抜き弁によって該ドレン通路を塞ぐ(閉じる)ことで、塗料の一部がドレン通路(廃液排出経路)に流入するのを防止するようになっている。
【0009】
また、「特許文献2」においては、複数のカラーバルブを有する塗料マニホールドと、塗料カートリッジが着脱可能に取り付けられるカートリッジ取り付け部と、前記塗料カートリッジの取付時に塗料を前記塗料マニホールドから前記塗料カートリッジ内に導く前記塗料充填経路(塗料供給経路)と、前記塗料充填経路内に溜まった塗料及びエアを外部に排出する排出経路(廃液排出経路)と、を備えた塗料充填装置(塗料供給装置)であって、前記排出経路(廃液排出経路)上において直列に配置された複数のエレメントを有する絞り装置を、前記排出経路(廃液排出経路)上に設ける技術が示されている。
【0010】
また、「特許文献3」においては、塗料カートリッジが着脱可能なカートリッジ装着部と、カートリッジ装着部に装着された塗料カートリッジと接続する塗料供給経路と、塗料供給経路とカートリッジ装着部に装着された塗料カートリッジの連通と遮断を切り替える第一切替装置(トリガーバルブ)と、塗料供給経路に塗料を送出する塗料供給装置と、塗料供給経路と連通している排出経路(廃液排出経路)と、排出経路(廃液排出経路)を全開状態と全閉状態に切り替える第二切替装置と、排出経路(廃液排出経路)内の塗料を検知する塗料センサと、塗料センサと第二切替装置とに接続されており、塗料センサが塗料を検知すると第二切替装置によって排出経路を全閉状態とする制御装置と、を備える塗料充填装置(塗料供給装置)に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−176328号公報
【特許文献2】特開2008−212869号公報
【特許文献3】特開2009−56382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような、前記「特許文献1」乃至「特許文献3」に示される技術に拠れば、塗料カートリッジへの塗料供給時に発生する塗料ロスを極力低減することができるとも思われる。
しかし、「特許文献1」による技術では、前記残圧抜き弁を閉弁方向に保持する力は、予め充填弁内に内装されるコイルバネなどの付勢手段によって与えられる付勢力からなり、塗料供給経路内に発生する背圧の高まり具合によっては塗料の一部がドレン通路に流入し、塗料ロスを完全に防止することは困難であった。
また、前記「特許文献2」、及び「特許文献3」における技術では、塗料供給経路と連通される廃液排出経路などへの塗料の流出を防ぐための技術については示されておらず、塗料ロスを低減するべく抜本的な解決には至っていない。
【0013】
以上のような問題点を改善すべく、本発明においては、静電塗装機に着脱可能に着装される塗料カートリッジにおいて、該塗料カートリッジへの塗料の供給時に発生する塗料ロスを、他に機械的な遮断機構などを設けることもなく、安価かつ確実に低減することができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0015】
即ち、請求項1においては、塗料カートリッジ内に塗料を供給するための供給部に連通可能な塗料供給経路と、前記供給部と前記塗料供給経路との連通箇所近傍にて前記塗料供給経路より分岐する分岐経路と、前記塗料供給経路における前記連通箇所の上流部に配設される、前記塗料供給経路の開閉弁と、を有する充填弁によって、塗料カートリッジ内に塗料を供給する塗料供給方法であって、前記分岐経路の内部に充填液を充填した後に前記開閉弁を開き、前記塗料供給経路を介して前記塗料カートリッジ内に塗料を供給するものである。
【0016】
請求項2においては、前記分岐経路は、前記連通箇所を洗浄するための洗浄液と、洗浄後の廃液を排出するための圧縮空気と、を供給する洗浄液供給経路と、前記連通箇所の洗浄後の廃液、及び前記圧縮空気を前記分岐経路の外部に排出する廃液排出経路と、から構成され、前記充填液は前記洗浄液供給経路を介して供給されるものである。
【0017】
請求項3においては、前記洗浄液供給経路と廃液排出経路とには、それぞれ各経路の途中部を開閉する開閉弁が配設され、前記洗浄液供給経路と廃液排出経路とに前記充填液が充填されると、前記開閉弁を閉じて前記充填液を洗浄液供給経路及び廃液排出経路の内部に密封し、前記充填液の密封後に、前記塗料供給経路を介して前記塗料カートリッジに塗料を供給するものである。
【0018】
請求項4においては、前記充填液は純水からなるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
即ち、本発明における塗料供給方法に拠れば、静電塗装機に着脱可能に着装される塗料カートリッジにおいて、該塗料カートリッジへの塗料の供給時に発生する塗料ロスを、他に機械的な遮断機構などを設けることもなく、安価かつ確実に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例に係る塗料供給システムの全体的な構成を示した断面図。
【図2】塗料カートリッジに塗料を充填するときの、充填弁の動作の流れを示したフローチャート。
【図3】塗料カートリッジに塗料を充填するときの、充填弁の動作を示した図であり、(a)は塗料カートリッジを充填弁に装着した直後の状態を示した断面図、(b)は充填弁の洗浄経路内に充填液を流した状態を示した断面図、(c)は充填弁の塗料経路に塗料を流した状態を示した断面図。
【図4】塗料カートリッジに塗料を充填するときの、従来の充填弁の動作を示した図であり、(a)は塗料カートリッジを充填弁に装着した直後の状態を示した断面図、(b)は充填弁の塗料経路に塗料を流した状態を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0023】
[充填弁1の構成]
まず、本発明に係る塗料供給方法を具現化するために用いられる充填弁1の構成について、図1を用いて説明する。
なお、便宜上、図1の上下方向を充填弁1の上下方向とし、かつ図1における矢印Aの方向を前方と規定して、以下説明する。
【0024】
充填弁1は、塗料カートリッジ10に塗料を供給する塗料供給装置100に具備され、該塗料カートリッジ10の内部に適量の塗料を充填するためのバルブ機構として設けられるものである。
充填弁1は、その上面中央部において、塗料カートリッジ10を着脱可能に保持する支持部2を具備するとともに、その内部において、該支持部2と連通する塗料供給経路3や、該塗料供給経路3より分岐する分岐経路6などを具備するように構成される。
【0025】
まず、支持部2を説明する。
支持部2は、上方に突出する円筒形状の突片として形成され、その内周部にはOリングなどのパッキン部材30が固設される。
【0026】
一方、塗料カートリッジ10の下部には、下方に延出する円筒形状の供給部11が設けられ、該供給部11の内径部は塗料カートリッジ10の内部に連通されている。また、供給部11の外形部は下端部にて他部よりも幾分縮径されており、縮径された下端部と他部との境界部分には段部11aが形成される。
そして、前記供給部11は、充填弁1から塗料カートリッジ10内に塗料を供給するための供給口として構成されている。
【0027】
平面視において、支持部2の内径部の断面形状は、供給部11下端部の外径部の断面形状に比べて幾分大きくなるように形成され、かつ側面視において、支持部2の内径部の高さ寸法(図1における寸法X)は、供給部11の下端面から段部11aまでの長さ寸法(図1における寸法Y)に比べて幾分大きくなるように形成される。
【0028】
そして、支持部2の上方より下方に向かって、供給部11下端部の外径部を該支持部2の内径部に挿入することで、塗料カートリッジ10は充填弁1に装着される。このとき、供給部11の下端面が支持部2の内径部の下面と当接するより先に、供給部11の段部11aと、支持部2の上端面とが当接し、供給部11の下方に対する位置規制がなされるようになっている。
つまり、支持部2の内径部に供給部11が装着された状態において、支持部2の内径部の底面と、供給部11の下端面との間には、幾分かの空間2a(図3(a)を参照)が形成されるようになっている。
【0029】
なお、塗料カートリッジ10の充填弁1への装着が完了すれば、供給部11下端部の外周面と、支持部2の内周面との間隙は、パッキン部材30によって閉塞されることとなり、これら供給部11、及び支持部2の内径部は、充填弁1外部の雰囲気に対して完全な密閉状態となる。
【0030】
次に、塗料供給経路3を説明する。
塗料供給経路3は、塗料カートリッジ10に塗料を供給するための経路として、充填弁1の内部に形成される。
塗料供給経路3は、支持部2と連通する第一供給経路4と、塗料の供給源である塗料タンク16と繋がる第二供給経路5とにより構成される。
【0031】
第一供給経路4は平面視において、支持部2の中心部に設けられ、充填弁1を上下方向に貫通するようにして形成される。
即ち、第一供給経路4は支持部2と同軸上に形成されるとともに、その平面視断面形状は円形状に構成され、その上端部において、支持部2の内径部と連通される。なお、第一供給経路4の上下方向略中央部から上端部にかけては、他の領域(第一供給経路4の上下方向略中央部から下端部にかけての領域)に比べて拡径された拡径部4aが形成され、該拡径部4aの下端部には段部4bが形成される。
【0032】
第二供給経路5は第一供給経路4の近傍に形成され、前記拡径部4aの下方において、第一供給経路4と連通される。
即ち、第二供給経路5は、第一供給経路4の近傍において、充填弁1の下面より一旦上方に向かって延出するよう形成され、該延出端にて第一供給経路4側に向かって屈曲して延出し、第一供給経路4と連通するようになっている。
【0033】
なお、第一供給経路4において、第二供給経路5との連通箇所の下方には、軸受部材12が挿嵌される。前記軸受部材12は、平面視中央部において、上下方向に貫通する貫通孔12aが形成されており、該貫通孔12aには、後述するトリガーバルブ9が上下摺動可能に挿通されている。
【0034】
第二供給経路5の下端部には配管部材19が接続される。
前記配管部材19は、一方の端部において塗料タンク16と繋がり、他方の端部において第二供給経路5と連結される。また、配管部材19の中途部には、塗料ポンプ17や塗料バルブ18が配設される。
【0035】
そして、塗料バルブ18が「開」状態となることで、塗料ポンプ17によって吐出された塗料タンク16内の塗料が、配管部材19を介して第二供給経路5へと供給されるようになっている。
【0036】
このように、塗料供給経路3は、第一供給経路4の上端部(拡径部4aの上端部)において、塗料カートリッジ10の供給部11を着脱可能に装着する支持部2と連通されるとともに、第二供給経路5の下端部において、塗料供給源としての塗料タンク16と繋がるように構成される。
【0037】
即ち、塗料供給経路3は供給部11に連通可能に構成されており、塗料タンク16内の塗料が塗料供給経路3を通じて支持部2へと供給され、さらに該支持部2を介して塗料カートリッジ10の供給部11へと供給されるようになっている。
【0038】
なお、第一供給経路4の上部には、後述するトリガーバルブ9のバルブ本体部9aが収納され、該トリガーバルブ9によって塗料供給経路3の開閉状態を制御するようになっている。
【0039】
即ち、例えば充填弁1に塗料カートリッジ10が未装着の場合は、塗料が支持部2に供給されないように、塗料供給経路3の出口部(塗料供給経路3と支持部2との連通箇所、より詳細には、拡径部4aの底面において、段部4bの内径部)を塞ぐ必要があり、逆に、充填弁1に塗料カートリッジ10が装着された場合は、塗料が支持部2に供給されるように、塗料供給経路3の出口部を開口する必要がある。
【0040】
このような、支持部2への塗料の供給に関する塗料供給経路3の出口部の開閉制御を、トリガーバルブ9によって行うようになっている。
つまり、塗料供給経路3と供給部11との連通箇所に、塗料供給経路3の開閉弁としてトリガーバルブ9を設け、該トリガーバルブ9によって、塗料供給経路3の開閉状態を制御するのである。詳しくは、トリガーバルブ9は、塗料供給経路3における前記連通箇所の上流部に配設される。
なお、塗料供給経路3においては、塗料タンク16と繋がる側が塗料の流れの上流側となっており、支持部2と連通される側が塗料の流れの下流側となっている。
【0041】
ここで、トリガーバルブ9の詳細について説明する。
トリガーバルブ9は、バルブ本体部9aと、ガイド部9bとにより構成される。
バルブ本体部9aは円柱形状の中実部材からなり、軸心方向を上下方向に向けて、塗料供給経路3の第一供給経路4と同軸上に配設される。
【0042】
平面視において、バルブ本体部9aの断面形状は、第一供給経路4上部の拡径部4aの断面形状に比べて小さく、かつ第一供給経路4下部の断面形状に比べて大きくなるように形成される。また、バルブ本体部9aの下部には、下方に向かって徐々に縮径されるテーパー部9cが形成され、該テーパー部9cの下端面の断面形状は、第一供給経路4下部の断面形状に比べて小さな値となるように形成される。
【0043】
一方、ガイド部9bは丸棒部材からなり、バルブ本体部9aの下面において、該バルブ本体部9aと同軸上に、かつ下方に垂下するようにして固設される。また、平面視において、ガイド部9bの断面形状は、第一供給経路4下部に挿嵌される軸受部材12の貫通孔12aと略同形状に形成される。
【0044】
そして、このような構成からなるトリガーバルブ9を、第一供給経路4に対して上方より下方に向かって挿入していくと、まず、ガイド部9bが軸受部材12の貫通孔12aに挿入され、続いて、バルブ本体部9aのテーパー部9cが拡径部4aの段部4bに嵌挿される。つまり、塗料供給経路3と、分岐経路6(洗浄液供給経路7や廃液排出経路8)との連通箇所となる拡径部4aにおいて、塗料の流動方向に対する上流部、即ち前記拡径部4aの底部の段部4bに、開閉弁としてのトリガーバルブ9が配設される。
【0045】
そして、バルブ本体部9aのテーパー部9cが拡径部4aの段部4bに当接することで、トリガーバルブ9の下方へのそれ以上の移動が規制されるとともに、塗料供給経路3の出口部がトリガーバルブ9の本体部9aによって塞がれることとなるのである。
【0046】
そして、塗料供給経路3の出口部を開口する場合は、バルブ本体部9aのテーパー部9cが拡径部4aの段部4bに当接している状態から、トリガーバルブ9を上方へ移動すればよく、このとき、ガイド部9bは軸受部材12の貫通孔12a内を摺動移動することとなり、トリガーバルブ9の水平方向に関するブレが規制されるようになっている。
【0047】
ところで、塗料カートリッジ10の供給部11には、該供給部11が支持部2に装着された状態で、トリガーバルブ9の上下方向の移動に連動して開閉動作を行う開閉弁13が設けられる。
開閉弁13は主に弁体14や、付勢手段15などにより構成される。
【0048】
弁体14は円柱形状の中実部材からなり、供給部11の下端内部において、軸心方向を上下方向に向けて、該供給部11と同軸上に配設される。また、弁体14の下部には、下方に向かって徐々に縮径されるテーパー部14aが形成される。
【0049】
ここで、平面視において、供給部11の下端面に設けられる貫通孔11bの断面形状は、該供給部11の内径部の断面形状に対してやや小さくなるように形成されており、その結果、供給部11内径部の下端面には段部11cが形成される。
【0050】
そして、弁体14の平面視断面形状は、供給部11内部の平面視断面形状に比べて小さく、かつ貫通孔11bの平面視断面形状に比べて大きくなるように形成され、また、テーパー部14aの下端面の平面視断面形状は、貫通孔11bの断面形状に比べて小さくなるように形成される。
【0051】
このような形状からなる弁体14を供給部11の内径部に挿入し、かつ該弁体14の上端部に付勢手段15を該弁体14と同軸上に配設することで、供給部11の開閉弁13は構成されている。
【0052】
即ち、弁体14は付勢手段15によって常時下方へ向かって付勢されており、テーパー部14aが供給部11の段部11cに当接することで、供給部11の下端面に形成される貫通孔11bが弁体14により塞がれることとなる。
【0053】
また、充填弁1の支持部2に供給部11が挿入され、塗料カートリッジ10が充填弁1に装着された状態において、トリガーバルブ9が上方に摺動移動すると、弁体14の下端面は、バルブ本体9aの上端面と当接されることとなる。
【0054】
そして、さらにトリガーバルブ9が上方に摺動移動すると、弁体14は付勢手段15の下方に向かう付勢力に抗して上方へと移動され、供給部11の下端面に形成される貫通孔11bは開口されることとなるのである(図3(c)を参照)。
【0055】
このように、トリガーバルブ9の上下方向に対する摺動移動によって、塗料供給経路3と、供給部11との連通箇所に関する開閉状態が制御されることとなり、塗料カートリッジ10の内部には、前記塗料供給経路3を介して適量の塗料が供給される。
つまり、充填弁1は、トリガーバルブ9によって、塗料カートリッジ10の内部に適量の塗料を充填するためのバルブ機構としての機能を有するのである。
【0056】
次に、分岐経路6を説明する。
分岐経路6は、塗料カートリッジ10への塗料の供給が完了した後に、充填弁1と塗料カートリッジ10との連通箇所に付着した塗料を洗浄するための洗浄液や圧縮空気などを供給し、洗浄後の廃液などを充填弁1の外部に排出するための経路である。
分岐経路6は、洗浄液の供給源である洗浄タンク20や、圧縮空気の供給源であるエア源23などと繋がる洗浄液供給経路7と、廃液タンク25などと繋がる廃液排出経路8と、により構成される。
【0057】
洗浄液供給経路7はクランク状に形成され、塗料供給経路3の第一供給経路4と連通される。
即ち、洗浄液供給経路7は、充填弁1の前方下部より水平後方に向かって延出し、該延出端にて垂直上方に延出し、再び水平後方に向かって延出して、第一供給経路4の拡径部4aの側面と連通される。
【0058】
洗浄液供給経路7の中途部には、該洗浄液供給経路7内の開閉弁としての洗浄バルブ27が配設される。
洗浄バルブ27はピン形状の部材からなり、該洗浄バルブ27が自身の軸心方向へ摺動移動することで、洗浄液供給経路7の中途部は該洗浄バルブ27の先端部により塞がれるようになっている。
【0059】
洗浄液供給経路7の前端部には配管部材26が接続される。
前記配管部材26は、一方の端部において洗浄液供給経路7と連通されるとともに、他方の端部は二系統に分岐され、各々洗浄タンク20やエア源23と繋がっている。また、これら二系統に分岐される配管部材26の中途部において、洗浄タンク20の近傍には洗浄ポンプ21や、洗浄バルブ22が配設され、エア源23の近傍にはエアバルブ24が配設される。
【0060】
そして、エアバルブ24が「閉」状態、かつ洗浄バルブ22が「開」状態となることで、洗浄ポンプ21によって吐出された洗浄タンク20内の洗浄液が、配管部材26を介して洗浄液供給経路7へと導かれ、第一供給経路4の拡径部4aへと供給されるようになっている。
また、洗浄バルブ22が「閉」状態、かつエアバルブ24が「開」状態となることで、エア源23より供給される圧縮空気が、配管部材26を介して洗浄液供給経路7へと導かれ、第一供給経路4の拡径部4aへと圧送されるようになっている。
【0061】
廃液排出経路8は第一供給経路4を間に挟み、洗浄液供給経路7と対向して設けられる。
廃液排出経路8はクランク状に形成され、塗料供給経路3の第一供給経路4と連通される。
即ち、廃液排出経路8は、充填弁1の後方下部より水平前方に向かって延出し、該延出端にて垂直上方に延出し、再び水平前方に向かって延出して、第一供給経路4の拡径部4aの側面と連通される。
【0062】
廃液排出経路8の中途部には、該洗廃液排出経路8内の開閉弁としての廃液バルブ28が配設される。
廃液排出経路8はピン形状の部材からなり、該廃液排出経路8が自身の軸心方向へ摺動移動することで、廃液排出経路8の中途部は該廃液排出経路8の先端部により塞がれるようになっている。
【0063】
なお、本実施例においては、洗浄バルブ27や廃液バルブ28の配設箇所を、洗浄液供給経路7における、充填弁1の前方下部より水平後方に向かって延出した延出端や、廃液排出経路8における、充填弁1の後方下部より水平後方に向かって延出した延出端などとしているが、これに限定されるものではない。
【0064】
即ち、洗浄液供給経路7や廃液排出経路8の中途部であれば、洗浄バルブ27や廃液バルブ28を何れの配設箇所に設けてもよいが、後述する充填液の充填量が少なくなることからすれば、洗浄バルブ27や廃液バルブ28の配設箇所は第一供給経路4の拡径部4aの近傍に設けることがより好ましい。
【0065】
また、洗浄バルブ27や廃液バルブ28の構造についても、本実施例におけるものに限定されるものではなく、例えば洗浄液供給経路7や廃液排出経路8の断面積と同形状の板部材を、該洗浄液供給経路7や廃液排出経路8の内径部に回動可能に設けたバタフライ方式のバルブなどであってもよい。
【0066】
廃液排出経路8の後端部には配管部材29が接続される。
前記配管部材29は、一方の端部において廃液タンク25と繋がり、他方の端部において廃液排出経路8と連結される。
【0067】
そして、洗浄液供給経路7を介して第一供給経路4の拡径部4aに供給された洗浄液は、充填弁1と塗料カートリッジ10との連通箇所に付着した塗料を洗い流した後、廃液として廃液排出経路8へと導かれ、配管部材29を介して、廃液タンク25へ排出されるようになっている。
【0068】
このように、分岐経路6を構成する洗浄液供給経路7や廃液排出経路8は、塗料カートリッジ10の供給部11と連通する、塗料供給経路3の拡径部4aに各々連通される。
換言すれば、分岐経路6は、塗料カートリッジ10の供給部11と、塗料供給経路3との連通箇所近傍にて前記塗料供給経路3より分岐するように形成される。
【0069】
そして、このような複数の経路(塗料供給経路3や、洗浄液供給経路7や、廃液排出経路8など)やバルブ(トリガーバルブ9や、洗浄バルブ27や、廃液バルブ28など)などを内部に具備して充填弁1は構成され、該充填弁1や、上述の各供給源(洗浄タンク20や、エア源23や、塗料タンク16や、廃液タンク25など)を含む配管系統などにより、塗料供給装置100は構成される。
【0070】
なお、分岐経路6を構成する洗浄液供給経路7や廃液排出経路8については、本実施例における形状の経路(クランク状の経路)に限定されるものではない。
即ち、これら洗浄液供給経路7や廃液排出経路8については、一方の端部において塗料供給経路3の拡径部4aと連通し、他方の端部において充填弁1の外部へと開口されていれば、如何なる形状の経路であってもよい。
【0071】
[充填弁1の動作]
次に、塗料カートリッジ10に塗料を充填するときの、充填弁1の動作について、図2、及び図3を用いて説明する。
なお、便宜上、図3の上下方向を充填弁1の上下方向とし、かつ図3における矢印Aの方向を前方と規定して、以下説明する。
【0072】
まず、空の状態となった塗料カートリッジ10が、塗料供給装置100にセットされる。
即ち、塗料カートリッジ10の供給部11が充填弁1の支持部2の内径部に挿入され、塗料カートリッジ10が充填弁1に装着される(ステップS101)。
【0073】
この時点においては、図3(a)に示すように、トリガーバルブ9は最下位置(バルブ本体部9aのテーパー部9cが拡径部4aの段部4bに当接された状態、図1を参照。)に移動されており、塗料供給経路3の出口部は塞がれている。また、洗浄液供給経路7に配設される洗浄バルブ27や廃液排出経路8に配設される廃液バルブ28も、これら両経路7・8を塞ぐ位置に移動されている。
なお、塗料供給経路3の経路内においては、トリガーバルブ9によって塞がれた出口部まで塗料51が充填されている。
【0074】
塗料カートリッジ10が充填弁1に装着されると、洗浄バルブ27と廃液バルブ28とが移動し(図3(a)に示す、矢印P1の方向に)、該洗浄バルブ27と廃液バルブ28とに閉塞されていた洗浄液供給経路7と廃液排出経路8とがそれぞれ開口される(ステップS102)。
【0075】
そして、洗浄液供給経路7の前端部(充填弁1の外部と連通する上流側端部)より充填液52が供給され、塗料供給経路3の拡径部4aに到達した充填液52は、さらに廃液排出経路8へと送られ、充填弁1の外部に排出される。
【0076】
ここで、図3(b)に示すように、洗浄液供給経路7より供給される充填液52は、これら洗浄液供給経路7や塗料供給経路3の拡径部4aや廃液排出経路8だけでなく、塗料カートリッジ10の供給部11の下端面と、支持部2の内径部の底面との間に形成される幾分かの空間2a内にも十分に行き渡るようになっている。
【0077】
このように、洗浄液供給経路7や塗料供給経路3の拡径部4aや廃液排出経路8に加えて、空間2aに対しても充填液52を満たすことで、充填弁1の各経路内や充填弁1と塗料カートリッジ10との接続部における空間内に残留する空気を完全に排除することができるようになっている。
【0078】
そして、充填液52は液体であるため非圧縮性であり、洗浄液供給経路7や廃液排出経路8の内部に一度充填されれば、もはや塗料51は、充填液52を押しやって、これら両経路7・8内に流入することもなく、塗料カートリッジ10への該塗料51の供給時に発生する塗料ロスを確実に低減することができるのである。
【0079】
洗浄液供給経路7や塗料供給経路3の拡径部4aや廃液排出経路8に充填液52が十分に行き渡れば、洗浄バルブ27と廃液バルブ28とが移動し(図3(b)に示す、矢印P2の方向に)、洗浄液供給経路7と廃液排出経路8とが再び塞がれる。これにより、洗浄液供給経路7と廃液排出経路8との内部に、充填液52が密封される(ステップS103)。
【0080】
その後、トリガーバルブ9が上方(図3(b)に示す、矢印Q1の方向)に摺動移動することで、塗料供給経路3の出口部は開口されるとともに、供給部11の弁体14が、トリガーバルブ9によって上方へと押しやられ、供給部11の貫通孔11bが開口される。
即ち、支持部2内部に形成される空間2aを介して、塗料供給経路3と供給部11とが連通される(ステップS104)
【0081】
塗料供給経路3と供給部11とが連通されれば、該塗料供給経路3を介して塗料51が供給部11に供給され、塗料カートリッジ10の内部に塗料51が供給される(ステップS105)。つまり、分岐経路を構成する洗浄液供給経路7や廃液排出経路8の内部に充填液52が充填された後に、トリガーバルブ9によって塗料供給経路3の出口部が開口され、該塗料供給経路3を介して塗料カートリッジ10に塗料51が供給される。
【0082】
このとき、図3(c)に示すように、洗浄液供給経路7や廃液排出経路8には充填液52が満たされているため、塗料供給経路3内を流動する塗料51の一部が、拡径部4aから洗浄液供給経路7内や廃液排出経路8内に流出することもなく、供給部11内に供給されることとなる。
【0083】
つまり、図4に示すように、従来の塗料カートリッジ10への塗料供給方法では、塗料供給経路3内を塗料51が流動する前に、洗浄液供給経路7や廃液排出経路8に充填液52(図3を参照)を充填することはなく(図4(a)を参照)、塗料カートリッジ10を充填弁1に装着した後、直ちにトリガーバルブ9を作動させて、供給部11の塗料を送り込んでいた。
【0084】
その結果、図4(b)に示すように、塗料供給経路3の拡径部4aに到達した塗料51の一部は、洗浄液供給経路7や廃液排出経路8に流れ出し、これら両供給経路7・8内に残留する空気は塗料51によって圧縮され、両供給経路7・8内の略全領域に渡って、塗料51が充填されることとなっていた。
【0085】
このような、洗浄液供給経路7や廃液排出経路8の内部に充填された塗料51については、その後、塗料カートリッジ10に再び送り込まれることもなく、塗料ロスとなっていたが、本実施例における塗料供給方法によれば、このような塗料ロスをなくすことができ、経済的なのである。
【0086】
なお、本実施例における充填液52は、洗浄液供給経路7や廃液排出経路8への塗料51の流出を確実に低減するべく、非圧縮性の液体を用いることが必要であり、例えば、洗浄液として用いられるシンナーなどが考えられるが、純水を用いることが好ましい。
【0087】
即ち、塗料カートリッジ10の供給部11内に塗料51を供給するときは、僅かな量ではあるが、塗料供給経路3の拡径部4aとトリガーバルブ9のバルブ本体9aとの隙間や、支持部2の内径部の底面と供給部11の下端面との間の空間2aなどに充填される充填液52が、塗料51に混入されることとなる。
このようなことから、本実施例における塗料51が、静電塗装に用いられる水性塗料であることに鑑み、充填液52は純水であることが好ましいのである。
【0088】
塗料カートリッジ10への塗料の供給が完了すれば、トリガーバルブ9は下方(図3(c)に示す、矢印Q2の方向)に摺動移動し、塗料供給経路3の出口部は塞がれるとともに、供給部11の弁体14が付勢手段15によって下方へと押しやられ、供給部11の貫通孔11bが塞がれる。
つまり、塗料供給経路3と供給部11との連通状態が遮断される(ステップS106)。
【0089】
その後、洗浄バルブ27と廃液バルブ28とが移動し、洗浄液供給経路7と廃液排出経路8とがそれぞれ開口され、洗浄液供給経路7の前端部より洗浄液が供給される。供給された洗浄液は、塗料供給経路3の拡径部4aに到達し、更に廃液排出経路8へと送られ、充填弁1の外部に排出される。
これによって、洗浄液は充填液52を充填弁1の外部に押出して排出するとともに、塗料供給経路3と供給部11との連通箇所、即ちトリガーバルブ9の上端部や、供給部11の下端部や、支持部2の内径部などに付着した塗料を洗浄する。
【0090】
そして、予め定められた量の洗浄液が、洗浄液供給経路7に供給された後は、圧縮空気が洗浄液供給経路7内に圧送され、これら洗浄液供給経路7や廃液排出経路8などの内部に残留する洗浄液(洗浄後の廃液としての洗浄液)が充填弁1の外部に排出される。
【0091】
このように、洗浄液供給経路7への洗浄液の供給と圧縮空気の圧送とを行うことで、トリガーバルブ9の上端部や、供給部11の下端部などに関する洗浄作業が実行される(ステップS107)。
【0092】
そして、洗浄作業が完了すれば、塗料カートリッジ10は充填弁1より離脱され(ステップS108)、別途空の状態となった塗料カートリッジ10が再び充填弁1に装着される。
【0093】
以上のように、本実施例における塗料供給方法は、塗料カートリッジ10内に塗料を供給するための供給部11に連通可能な塗料供給経路3と、前記供給部11と前記塗料供給経路3との連通箇所近傍にて前記塗料供給経路3より分岐する分岐経路6と、前記塗料供給経路3における前記連通箇所の上流部に配設される、前記塗料供給経路3の開閉弁としてのトリガーバルブ9と、を有する充填弁1によって、塗料カートリッジ10内に塗料を供給する塗料供給方法であって、前記分岐経路6の内部に充填液52を充填した後に前記トリガーバルブ(開閉弁)9を開き、前記塗料供給経路3を介して前記塗料カートリッジ10内に塗料を供給することとしている。
【0094】
このような塗料供給方法を用いることで、本実施例においては、塗料カートリッジ10への塗料51の供給時に発生する塗料ロスを、他に機械的な遮断機構などを設けることもなく、安価かつ確実に低減することができるようになっている。
【0095】
即ち、塗料ロスは、塗料供給経路3を介して塗料カートリッジ10に塗料51を供給するときに、一部の塗料51が分岐経路6に流れ出すことによって発生する。
ここで、本実施例においては、他に機械的な遮断機構などを設けることもなく、塗料カートリッジ10に塗料51を供給する前に、分岐経路6内に充填液52を充填することとしている。
【0096】
このような比較的安価に実行可能な、分岐経路6内への充填液52の充填を行うことで、塗料51の分岐経路6内への流出を防止でき、塗料ロスの低減を図ることができるのである。
【0097】
また、本実施例における塗料供給方法では、前記分岐経路6は、前記連通箇所を洗浄するための洗浄液と、洗浄後の廃液を排出するための圧縮空気と、を供給する洗浄液供給経路7と、前記連通箇所の洗浄後の廃液、及び前記圧縮空気を前記分岐経路6の外部に排出する廃液排出経路8と、から構成され、前記充填液52は前記洗浄液供給経路7を介して供給されることとしている。
【0098】
このように、本実施例における塗料供給方法では、洗浄液供給経路7と廃液排出経路8とに充填される充填液52は、前記洗浄液供給経路7によって供給されることとしており、他に別途充填液52の供給経路など設けることもなく、塗料カートリッジ10への塗料51の供給時に発生する塗料ロスの低減を、安価に実現することができる。
【0099】
また、本実施例における塗料供給方法では、前記洗浄液供給経路7と廃液排出経路8とには、それぞれ各経路7・8の中途部を開閉する洗浄バルブ27や廃液バルブ28からなる開閉弁が配設され、前記洗浄液供給経路7と廃液排出経路8とに充填液52が充填されると、前記洗浄バルブ27及び廃液バルブ28を閉じて前記充填液52を洗浄液供給経路7及び廃液排出経路8の内部に密封し(ステップS103)、前記充填液52の密封後に、前記塗料供給経路3を介して前記塗料カートリッジ10に塗料を供給する(ステップS105)こととしている。
【0100】
このような塗料供給方法を用いることで、本実施例においては、塗料カートリッジ10への塗料51の供給時に発生する塗料ロスを確実に低減することができるようになっている。
【0101】
即ち、塗料カートリッジ10への塗料51の供給は、洗浄液供給経路7と廃液排出経路8とに充填された充填液52を、これら両経路7・8に設けられる洗浄バルブ27と廃液バルブ28とによって確実に密封された後に実行することとしている。
【0102】
従って、塗料供給経路3内に塗料51が流動するときは、これら洗浄液供給経路7と廃液排出経路8との内部に充填される充填液52が外部に漏れることもなく、前記塗料51の一部が、これら両経路7・8内へ流れ出すことを確実に防ぐことができる。
【0103】
また、本実施例における塗料供給方法では、前記充填液52は純水からなることとしている。
【0104】
このような性質からなる充填液52を用いることで、本実施例においては、塗料カートリッジ10に供給する塗料51に対して悪影響を与えることなく、該塗料51の供給時に発生する塗料ロスを確実に低減することができるようになっている。
【0105】
即ち、本実施例における塗料51は静電塗装に用いられる水性塗料であるところ、塗料カートリッジ10に塗料51を供給するときに、たとえ僅かな量の充填液52が前記塗料51に混入されても、前記塗料51は化学反応などによる悪影響を受けないようになっている。
【符号の説明】
【0106】
3 塗料供給経路
6 分岐経路
7 洗浄液供給経路
8 廃液排出経路
9 トリガーバルブ(開閉弁)
10 塗料カートリッジ
11 供給部
27 洗浄バルブ
28 廃液バルブ
52 充填液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料カートリッジ内に塗料を供給するための供給部に連通可能な塗料供給経路と、
前記供給部と前記塗料供給経路との連通箇所近傍にて前記塗料供給経路より分岐する分岐経路と、
前記塗料供給経路における前記連通箇所の上流部に配設される、前記塗料供給経路の開閉弁と、
を有する充填弁によって、
塗料カートリッジ内に塗料を供給する塗料供給方法であって、
前記分岐経路の内部に充填液を充填した後に前記開閉弁を開き、前記塗料供給経路を介して前記塗料カートリッジ内に塗料を供給する、
ことを特徴とする塗料供給方法。
【請求項2】
前記分岐経路は、
前記連通箇所を洗浄するための洗浄液と、洗浄後の廃液を排出するための圧縮空気と、を供給する洗浄液供給経路と、
前記連通箇所の洗浄後の廃液、及び前記圧縮空気を前記分岐経路の外部に排出する廃液排出経路と、
から構成され、
前記充填液は前記洗浄液供給経路を介して供給される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の塗料供給方法。
【請求項3】
前記洗浄液供給経路と廃液排出経路とには、それぞれ各経路の途中部を開閉する開閉弁が配設され、
前記洗浄液供給経路と廃液排出経路とに前記充填液が充填されると、前記開閉弁を閉じて前記充填液を洗浄液供給経路及び廃液排出経路の内部に密封し、
前記充填液の密封後に、前記塗料供給経路を介して前記塗料カートリッジに塗料を供給する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の塗料供給方法。
【請求項4】
前記充填液は純水からなる、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のうちのいずれか一項に記載の塗料供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−88056(P2011−88056A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242833(P2009−242833)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】