説明

塗料供給装置、塗料供給方法、及び、塗装方法

【課題】 塗装環境に応じて希釈率を容易かつ正確に調整することができる塗料供給装置、塗料供給方法、及び、塗装方法を提供する。
【解決手段】 原料塗料を輸送する塗料ライン3と、塗料ライン3に分岐接続され、原料塗料に希釈液を混合する希釈液ライン4と、塗料ライン3に原料塗料を送出する原料ポンプ30と、希釈液ライン4に希釈液を送出する希釈液タンク6とを備える塗料供給装置1であって、入力信号に基づいて希釈液ライン4を開閉する開閉バルブ40と、開閉バルブ40の作動を制御する制御装置41とを備え、制御装置41は、開閉バルブ40を開閉制御することにより、原料塗料に混合される希釈液の流量を調整可能に構成されている塗料供給装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料塗料を希釈液で希釈し、希釈塗料を塗装装置に供給する塗料供給装置及び塗料供給方法、並びに、希釈塗料により被塗装物を塗装する塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板などの被塗装物を塗装する場合、原料塗料を希釈液で希釈して希釈塗料を生成し、得られた希釈塗料を用いて塗装する。希釈塗料においては、被塗装物の周囲の温度や湿度などの塗装環境変化により溶媒の揮発速度が変動するので、そのままにすると目標とする仕上りを有する塗装物が得られなくなる。そこで、塗装環境の変化に対応して揮発速度を調整するために、原料塗料の希釈において、希釈率を調整する必要がある。これは、水を溶媒とする水性塗料の場合には、水の量が揮発速度に大きく影響するので特に重要である。
【0003】
従来、原料塗料を希釈液で希釈するときは、人力により、まず液体を撹拌するための撹拌タンクを用意し、次に撹拌タンクに原料塗料及び希釈液を投入し、2液をディスパーで撹拌していた。しかし、このような方法では、希釈率を調整するときに、希釈作業に人手を要すると共に多大な労力がかかるという問題があった。この問題は、多量(約10L〜100L)の原料塗料を希釈する場合に特に顕著であった。
【0004】
また、従来、原料塗料を人力によらずに希釈するものとして、例えば、特許文献1に開示されているような装置が知られていた。図4に示すように、この装置100は、原料塗料を輸送する塗料ライン101と、塗料ライン101に分岐接続され、原料塗料に希釈液を混合する希釈液ライン102と、塗料ライン101に原料塗料を送出する塗料送出手段103と、希釈液ライン102に希釈液を送出する希釈液送出手段104と、希釈液送出手段104の圧力を制御する制御手段105とを備え、制御手段105が希釈液送出手段104の圧力を調整することにより、原料塗料に混合される希釈液の流量を調整可能に構成されている。
【特許文献1】特開平3−137956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような装置100では、希釈率を下げるために、希釈液送出手段104の圧力を下げ、希釈液の流量を減少させると、希釈液ライン102を通過する希釈液の圧力が塗料ライン101を通過する原料塗料の圧力に対して低下し、原料塗料が希釈液ライン102に流入することがあった。この結果、希釈率を正確に調整することができないという問題が生じていた。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、塗装環境に応じて希釈率を容易かつ正確に調整することができる塗料供給装置、塗料供給方法、及び、塗装方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、原料塗料を輸送する塗料ラインと、前記塗料ラインに分岐接続され、原料塗料に希釈液を混合する希釈液ラインと、前記塗料ラインに原料塗料を送出する塗料送出手段と、前記希釈液ラインに希釈液を送出する希釈液送出手段とを備える塗料供給装置であって、入力信号に基づいて前記希釈液ラインを開閉する開閉バルブと、前記開閉バルブの作動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記開閉バルブを開閉制御することにより、原料塗料に混合される希釈液の流量を調整可能に構成されている塗料供給装置により達成される。
【0008】
上記塗料供給装置において、前記希釈液ラインは、前記塗料ラインに挿入されたニードルを先端に備えており、該ニードルから希釈液を前記塗料ラインに導入することが好ましい。
【0009】
また、前記制御手段は、希釈塗料の固形分又は希釈液の流量とデューティ比との相関を表すテーブルを格納する記憶手段を備えており、入力された希釈塗料の固形分又は希釈液の流量に対応するデューティ比に基づいて前記開閉バルブを開閉制御することが好ましい。
【0010】
また、本発明の前記目的は、塗料送出手段から送出された原料塗料を塗料ラインにより輸送する輸送ステップと、前記塗料ラインに分岐接続された希釈液ラインへ希釈液送出手段から希釈液を送出し、原料塗料に希釈液を混合する混合ステップとを備える塗料供給方法であって、前記混合ステップは、入力信号に基づいて前記希釈液ラインを開閉する開閉バルブを開閉制御することにより、原料塗料に混合される希釈液の流量を調整する塗料供給方法により達成される。
【0011】
また、本発明の前記目的は、塗料送出手段から送出された原料塗料を塗料ラインにより輸送する輸送ステップと、前記塗料ラインに分岐接続された希釈液ラインへ希釈液送出手段から希釈液を送出し、原料塗料に希釈液を混合する混合ステップと、前記混合ステップで得られた希釈塗料により被塗装物を塗装する塗装ステップとを備える塗装方法であって、前記混合ステップは、入力信号に基づいて前記希釈液ラインを開閉する開閉バルブを開閉制御することにより、原料塗料に混合される希釈液の流量を調整する塗装方法より達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗料供給装置、塗料供給方法、又は、塗装方法によれば、塗装環境に応じて希釈率を容易かつ正確に調整することができる。
【0013】
また、本発明の塗料供給装置、塗料供給方法、及び、塗装方法は、高粘度、高固形分の水性塗料に低粘度の水を少量混合して希釈する場合に特に好適である。また、急な塗装環境の変化に対しても希釈率を容易かつ正確に調整可能であり、目標とする仕上りを有する塗装物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る塗料供給装置1の概略構成図である。
【0015】
この塗料供給装置1は、原料塗料を希釈液により希釈する装置であって、図1に示すように、原料塗料を輸送する塗料ライン3と、塗料ライン3に希釈液を導入する希釈液ライン4とを備えている。また、塗料供給装置1は、希釈塗料を用いて被塗装物(図示せず)を塗装する塗装装置2に接続されており、希釈塗料を塗装装置2に供給する。
【0016】
原料塗料としては、例えば、水を溶媒とした水性塗料であって、粘度が1000mPa・s〜3000mPa・sであるものを用いることができる。希釈液としては、本実施形態では、脱イオン水を用いている。
【0017】
塗料ライン3は、一端部が原料塗料を収容する原料タンク5に接続されており、他端部が塗装装置2に接続されている。原料タンク5としては、内部の原料塗料を密閉状態で保持可能な静置タンクを例示することができる。また、塗料供給装置1は、原料タンク5内の原料塗料を塗料ライン3に一定圧力(すなわち、一定流量)で送出する原料ポンプ30を備えており、原料塗料を原料タンク5から塗装装置2に輸送可能に構成されている。原料ポンプ30としては、例えば、回転数を制御可能なモーターで駆動するギアポンプであって、モーターに印加する電圧に応じて原料塗料の送出圧力(すなわち、送出流量)を調整可能なポンプを用いることができる。原料ポンプ30は、コスト及び耐久性に優れ、大きな流量を得られる観点から選択することができ、ギアポンプ以外に、プランジャーポンプ等が好適である。塗料ライン3に原料塗料を送出するときは、塗料ライン3に流量計を設置し、計測した流量に基づいてフィードバック制御を行ってもよい。塗料ライン3は、原料塗料が詰まるのを防止すると共に、洗浄性を良好にする観点、また、顔料凝集物等のコンタミを防止する観点から、直径が4mm〜10mmの管であることが好ましい。
【0018】
また、塗料ライン3は、塗料ライン3から分岐する循環ライン52に接続されており、分岐部分には、原料塗料の流路を塗料ライン3又は循環ライン52に切り換える三方バルブ31が設置されている。循環ライン52は、一端部が原料タンク5に接続されており、循環ライン52に流入した原料塗料を原料タンク5に送り返し、循環させるように構成されている。この循環ライン52は、必ずしも必要ではなく、原料塗料を循環させずに塗料ライン3に供給してもよい。この場合、原料タンク5としては、例えば、鋼製家具用の塗料等に一般的に用いられているリザーバタンクや、公知の塗料缶を用いることができる。
【0019】
また、塗料ライン3は、希釈液ライン4が合流する合流部32を備えている。図2は、図1に示す塗料供給装置1の部分拡大断面図である。図2に示すように、合流部32は、台形状のプラスチック塊33の内部をくり抜くことにより形成された塗料流路34を備えている。塗料流路34は、塗料ライン3の一部を構成している。塗料流路34は、原料塗料の流れ方向に対して傾斜した方向に延びる合流口35を備えている。
【0020】
塗料ライン3は、更に、塗料ライン3を通過する原料塗料の圧力を計測する原料圧力ゲージ36と、原料塗料と希釈液とを混合するミキサー37とを備えている。ミキサー37は、本実施形態ではスタティックミキサーとした。
【0021】
希釈液ライン4は、一端部が希釈液を収容する希釈液タンク6に接続され、他端部が塗料ライン3に分岐接続されており、原料塗料に希釈液を混合するように構成されている。希釈液タンク6としては、例えば、内部に密閉状態で保持した希釈液を空気の圧力により一定圧力(すなわち、一定流量)で希釈液ライン4に送出可能な圧送タンクを用いることができる。この場合、加圧空気は図示しない空気供給源から一定圧力で供給されている。また、希釈液タンク6を圧送タンクとせずに、圧送ポンプにより希釈液タンク6内の希釈液を希釈液ライン4に送出してもよい。この場合、圧送ポンプとしては、上述したギアポンプや、シリンジポンプ等を例示することができる。希釈液ライン4に希釈液を送出するときは、希釈液ライン4に流量計を設置し、計測した流量に基づいてフィードバック制御を行ってもよい。
【0022】
また、希釈液ライン4は、希釈液ライン4を開閉する開閉バルブ40と、開閉バルブ40の作動をパルス信号により制御する制御装置41とを備えている。開閉バルブ40は、入力されるパルス信号のオン/オフに応じて開閉する電磁弁から構成されている。制御装置41は、パルス信号のオン/オフに基づいて開閉バルブ40を開閉制御することにより、希釈液ライン4から塗料ライン3に導入される希釈液の流量を調整可能に構成されている。パルス信号のオン/オフの時間間隔を調整することにより、開閉バルブ40の開閉の時間間隔を調整することができる。パルス信号のオン/オフの時間間隔は、パルス信号の周期やデューティ比を変更することにより、調整することができるが、希釈液ライン4から塗料ライン3に導入される希釈液の流量の変動を大きくする観点からデューティ比を変えることにより調整することが好ましい。制御装置41としては、発生させたパルス信号を出力するファンクションジェネレータを例示することができる。また、制御装置41としては、パソコンを用いることもでき、電磁弁ドライバを介してパルス信号を開閉バルブ40に出力し、開閉バルブ40を開閉制御する構成であってもよい。
【0023】
また、希釈液ライン4は、図2に示すように、先端部にノズル42を備えている。ノズル42は、塗料流路34の合流口35に挿入されており、先端から希釈液を吐出することにより、塗料ライン3に希釈液を導入することができる。ノズル42としては、希釈液の導入圧力を高める観点から、先端から液体を吐出可能な金属製の中空のニードル(針)を用いることが好ましい。また、ノズル42の直径は、希釈液の導入圧力を高めると共に詰まりを防止する観点から、0.4mm〜1mmが好ましく、0.7mm〜1mmがより好ましい。また、長さは、1.5cm程度が好ましい。また、希釈液ライン4は、希釈液ライン4を通過する希釈液の圧力を計測する圧力ゲージ43を備えている。
【0024】
塗装装置2は、希釈塗料を貯留する希釈塗料タンク20と、希釈塗料を噴射する塗装ガン21と、希釈塗料を希釈塗料タンク20から塗装ガン21に供給する供給ライン22とを備えている。希釈塗料タンク20は、塗料ライン3に接続されており、塗料ライン3により輸送された希釈塗料を収容する。また、塗装装置2は、希釈塗料タンク20内の希釈塗料を供給ライン22に送出する塗装ポンプ23を備えている。
【0025】
塗装ガン21としては、例えば、回転するベルカップにより塗料を霧状に噴出する公知の回転霧化方式の塗装ガンや、空気の圧力により塗料を霧状に噴出する公知のエアースプレーなどを用いることができる。
【0026】
次に、以上のように構成された塗料供給装置1を用いて原料塗料を希釈する方法を説明する。
【0027】
まず、原料塗料を希釈する前段階として、三方バルブ31の切り換えにより塗料ライン3を開状態とした状態で、原料ポンプ30を作動させることにより、原料タンク5内の原料塗料を一定圧力(すなわち、一定流量)で塗料ライン3に供給しておく。また、希釈液タンク6内に圧縮空気を導入することにより、希釈液タンク6内の希釈液を希釈液ライン4に一定圧力(すなわち、一定流量)で供給しておく。また、開閉バルブ40は、閉状態としておく。
【0028】
この状態で、塗料供給装置1を作動させると、制御装置41がパルス信号を開閉バルブ40に出力する。そして、このパルス信号が開閉バルブ40に入力されると、開閉バルブ40はパルス信号のオン/オフに基づいて、希釈液ライン4を開閉する。図3に示すように、パルス信号がオンのとき、開閉バルブ40が開状態になり、希釈液ライン4が開かれる。そして、希釈液ライン4が開状態になると、希釈液が塗料ライン3に導入されることにより、原料塗料が希釈される。
【0029】
原料塗料の希釈における希釈率を調整するときは、パルス信号の周期(T)やデューティ比(τ/T)を調整することにより、希釈液ライン4から塗料ライン3に導入される希釈液の流量を調整する。このとき、パルス信号を調整しても、開閉バルブ40の開閉の時間間隔が変動するだけであり、希釈液ライン4を通過する希釈液の圧力は変化しないので、希釈液の導入圧力はほぼ一定に保たれる。希釈率は、例えば1重量%〜10重量%の間で変更することができる。
【0030】
その後、塗料ライン3内の原料塗料及び希釈液は、ミキサー37に送られ、ミキサー37で混合されることにより希釈塗料となる。また、希釈塗料は、希釈塗料タンク20に供給され、貯留される。また、被塗装物を塗装するときは、塗装装置2を作動させることにより、希釈塗料を塗装ガン21から噴出する。
【0031】
本実施形態に係る塗料供給装置1によれば、入力信号に基づいて希釈液ライン4を開閉する開閉バルブ40と、開閉バルブ40の作動を制御する制御装置41とを備え、制御装置41は、開閉バルブ40を開閉制御することにより、原料塗料に混合される希釈液の流量を調整可能に構成されているので、入力信号を変えるだけで原料塗料の希釈における希釈率を調整することができる。したがって、原料塗料を希釈するときに人手を必要とせず、塗装環境に応じて容易に希釈率を調整することができる。また、原料塗料に混合される希釈液の流量を調整しても、希釈液ライン4を通過する希釈液の圧力は変化しないので、塗料ライン3を通過する原料塗料が希釈液ライン4に流入することがない。したがって、希釈率を正確に調整することができる。
【0032】
上述した塗料供給装置、塗料供給方法、及び、塗装方法は、高粘度、高固形分の水性塗料に低粘度の水を少量混合して希釈する場合に特に好適である。また、急な塗装環境の変化に対しても希釈率を容易かつ正確に調整可能であり、目標とする仕上りを有する塗装物を得ることができる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0034】
例えば、本実施形態では、合流部32は、プラスチック塊33を備える構成であったが、希釈液ライン4が塗料ライン3に合流する構成であればその構成は特に限定されない。
【0035】
また、本実施形態では、希釈液は脱イオン水であったが、原料塗料を希釈できる希釈溶媒であれば、特に限定されない。また、原料塗料以外の塗料であってもよい。
【0036】
また、制御装置41は、デューティ比を決定するためのテーブルを格納する記憶手段を備えており、デューティ比に基づいて開閉バルブ40を開閉制御する構成であってもよい。この場合、テーブルには、例えば、予めデューティ比と希釈液の流量とを対応させて格納することや、デューティ比と希釈塗料の固形分とを対応させて格納することができる。テーブルに基づいてデューティ比を決定するときは、制御装置41に希釈液の流量や希釈塗料の固形分を入力することにより、それぞれ対応するデューティ比を求めることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
試験の概要
実施例として、図1に示す塗料供給装置1により原料塗料を希釈し、比較例として、人足により原料塗料を希釈し、実施例および比較例について、希釈に要する労力、及び、希釈率を評価した。
【0039】
また、実施例および比較例において得られた希釈塗料をそれぞれ用いて、塗装装置2により被塗装物を塗装し、被塗装物の塗装状態を評価した。
【0040】
原料塗料は、自動車用の水性中塗り塗料である「WP306」(関西ペイント株式会社製)とした。原料塗料を100gf(130ml)用い、原料塗料の固形分を58.5重量%とした。原料塗料の固形分は、塗料を110℃の室内に1時間放置して乾燥させた後に残存する固形成分の重量を測定することにより求めた。希釈塗料の固形分も原料塗料の固形分と同様に求めることができる。原料塗料の粘度は、3000mPa・s(ブルックフィールド粘度計を用いて、回転数60rpmで測定)であった。希釈液は、脱イオン水とした。希釈液の粘度は、1mPa・sであった。
【0041】
被塗装物は、化成処理した冷延ダル鋼板にカチオン電着塗料である「エレクロンT10」(関西ペイント株式会社製)を塗装したものとした。電着塗料の膜厚は25μmとした。
【0042】
塗料供給装置の概要
実施例の塗料供給装置1において、原料タンク5は、静置タンクとした。原料ポンプ30は、吐出量が3.5cc/revのギアポンプとし、原料タンク5内の原料塗料を300ml/minの流量で、塗料ライン3に供給した。原料ポンプ30の送出圧力は、0.23MPaとした。ミキサー37は、スタティックミキサー、T6−12R−3PT(株式会社ノリタケカンパニーリミテッド社製)とし、これを2つ用いて直列に連結した。
【0043】
希釈液タンク6は、圧送タンクとし、希釈液タンク6内の希釈液を30ml/minの流量で、希釈液ライン4に供給した。圧送タンクによる希釈液の送出圧力は、0.35MPaとした。開閉バルブ40は、INKX0514300AA(The Lee Company社製)とした。開閉バルブ40の応答時間は、0.25m秒である。ノズル42は、金属ニードル、SNA−19G−C(武蔵エンジニアリング株式会社製)とした。
【0044】
比較例における希釈作業
比較例における希釈作業は、塗料供給装置1を用いず、人力で行った。この作業では、まず液体を撹拌するための撹拌タンクを用意し、次に撹拌タンクに原料塗料及び希釈液を投入し、2液をディスパーで撹拌することにより、原料塗料を希釈した。得られた希釈塗料を希釈塗料タンク20に貯留した。
【0045】
塗装装置及び塗装方法の概要
塗装装置2における塗装ガン21は、回転霧化方式のベル塗装機であるG1ベルカップ(ABB株式会社製)とした。塗装ポンプ23は、吐出量が3.5cc/revのギアポンプとし、希釈塗料タンク20内の希釈塗料を300ml/minの流量で、供給ライン3に吐出した。
【0046】
被塗装物の塗装は、塗装ブース内で行った。塗装ブースの内部の風速は0.5m/sとした。被塗装物を希釈塗料で塗装した後、塗装ブース内に5分放置し、80℃の室内に10分放置して塗着膜を乾燥させ、その後、150℃の室内に30分放置して焼付けを行った。焼付け後の膜厚は、28μmである。被塗装物に塗着しない塗料はブース循環水により捕集した。
【0047】
塗装状態の評価項目
被塗装物の塗装状態の評価項目は、被塗装物を希釈塗料で塗装した後における塗着膜のタレ性、及び、塗着膜を焼付けした後における塗膜面の仕上り肌を評価するウェーブスキャン値とした。
【0048】
希釈塗料のタレ性の評価では、板状の被塗装物に直径が1cmの貫通孔を形成した後、被塗装物を希釈塗料で塗装し、貫通孔の周縁部からの希釈塗料のタレ長さを測定することにより、良好又は不良の判定を行った。タレ長さは、貫通孔の周縁部における下端部からタレ先端部までの長さとした。タレ先端部とは、貫通孔が形成され、希釈塗料で塗装された被塗装物を立設した状態で、貫通孔の周縁部における下端部から希釈塗料が重力により下方にたれたときに、たれた希釈塗料の重力と希釈塗料の弾性抵抗が釣り合っている部分であり、塗着膜が僅かに盛り上がった部分である。希釈塗料のタレ長さが5mm以下である場合は、タレ性が良好であるとした。
【0049】
ウェーブスキャン値の評価では、塗着膜を焼付けした後、ウェーブスキャン(BYK−Gardner社製)を用いて塗膜の表面をスキャンすることにより、塗膜面のウェーブスキャン値を測定した。ウェーブスキャンは、被測定物の表面におけるラウンドを光学的に数値化するものであり、ウェーブスキャン値が小さいほどラウンドが少ないことを示す。
【0050】
実施例1
塗料供給装置1により、制御装置41におけるパルス信号の周期を0.1秒、デューティ比を37%として、原料塗料を希釈した。これにより、固形分が55重量%の希釈塗料を得た。この希釈における希釈率は、6.36重量%である。
【0051】
塗料供給装置1で得られた希釈塗料を用いて、塗装装置2により、塗装ブースの温度を25℃、湿度を70%として、被塗装物を塗装した。塗装後のタレ性は、良好であった。塗着膜を焼付けした後のウェーブスキャン値は、21であった。
【0052】
比較例1
実施例1で用いた塗料供給装置1の代わりに、1Lの撹拌タンクを用い、1人足で、0.5時間の希釈作業を行うことにより、原料塗料を希釈した。これにより、固形分が55重量%の希釈塗料を得た。この希釈における希釈率は、6.36重量%である。
【0053】
実施例1と同様の条件で、被塗装物を塗装した。塗装後のタレ性は、良好であった。塗着膜を焼付けした後のウェーブスキャン値は、21であった。
【0054】
実施例2
塗料供給装置1により、制御装置41におけるパルス信号の周期を0.1秒、デューティ比を70%として、原料塗料を希釈した。これにより、固形分が52重量%の希釈塗料を得た。この希釈における希釈率は、12.5重量%である。
【0055】
塗料供給装置1で得られた希釈塗料を用いて、塗装装置2により、塗装ブースの温度を33℃、湿度を50%として、被塗装物を塗装した。塗装後のタレ性は、良好であった。塗着膜を焼付けした後のウェーブスキャン値は、23であった。
【0056】
比較例2
実施例2で用いた塗料供給装置1の代わりに、1Lの撹拌タンクを用い、1人足で、0.5時間の希釈作業を行うことにより、原料塗料を希釈した。これにより、固形分が52重量%の希釈塗料を得た。この希釈における希釈率は、12.5重量%である。
【0057】
実施例2と同様の条件で、被塗装物を塗装した。塗装後のタレ性は、良好であった。塗着膜を焼付けした後のウェーブスキャン値は、22であった。
【0058】
表1は、実施例及び比較例における、希釈に要する労力、希釈塗料の固形分、希釈率、塗装ブースの塗装環境、タレ性、ウェーブスキャン値を示したものである。
【0059】
【表1】

表1に示すように、実施例では、希釈作業の労力を要さずに希釈率を変えることができた。また、被塗装物の塗装状態において実施例と比較例とが同様の結果を示していることから、塗料供給装置1により正確に希釈を行えることが確認できた。
デューティ比の決定方法
実施例においてパルス信号のデューティ比を決定する方法の一例を説明する。制御装置41におけるパルス信号のデューティ比は、デューティ比と希釈塗料の固形分との関係式を予めプレ実験から求めておき、求めた関係式に基づいて決定することができる。
【0060】
プレ実験ではまず、塗料供給装置1により、パルス信号のデューティ比を任意に設定して原料塗料を希釈し、得られた希釈塗料の固形分を求める。この希釈作業を複数のデューティ比について行い、それぞれのデューティ比に対応する希釈塗料の固形分を求める。例えば、実施例において、デューティ比を10%とすると、希釈塗料の固形分は57.2重量%であり、デューティ比を100%とすると、希釈塗料の固形分は49.4重量%である。このとき、パルス信号の周期は0.1秒とした。
【0061】
次に、任意に設定した複数のデューティ比と、それらにそれぞれ対応する希釈塗料の固形分とから、デューティ比と希釈塗料の固形分との関係を一次式で近似し、両者の関係式を求める。実施例では、デューティ比をX(%)、及び、希釈塗料の固形分をY(重量%)とすると、両者の関係式は、Y=−0.090X+58.2で示される。
【0062】
その後、希望する希釈塗料の固形分に応じて、上記の関係式からデューティ比を決定する。
【0063】
なお、同様の方法により、デューティ比と希釈液の流量との関係式を求め、その関係式からデューティ比を決定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗料供給装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す塗料供給装置の部分拡大断面図である。
【図3】図1に示す塗料供給装置における制御の一例を示す図である。
【図4】原料塗料を希釈するための従来の装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0065】
1 塗料供給装置
2 塗装装置
3 塗料ライン
4 希釈液ライン
5 原料タンク
6 希釈液タンク
20 希釈塗料タンク
21 塗装ガン
30 原料ポンプ
32 合流部
37 ミキサー
40 開閉バルブ
41 制御装置
42 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料塗料を輸送する塗料ラインと、
前記塗料ラインに分岐接続され、原料塗料に希釈液を混合する希釈液ラインと、
前記塗料ラインに原料塗料を送出する塗料送出手段と、
前記希釈液ラインに希釈液を送出する希釈液送出手段とを備える塗料供給装置であって、
入力信号に基づいて前記希釈液ラインを開閉する開閉バルブと、
前記開閉バルブの作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記開閉バルブを開閉制御することにより、原料塗料に混合される希釈液の流量を調整可能に構成されている塗料供給装置。
【請求項2】
前記希釈液ラインは、前記塗料ラインに挿入されたニードルを先端に備えており、該ニードルから希釈液を前記塗料ラインに導入する請求項1に記載の塗料供給装置。
【請求項3】
前記制御手段は、希釈塗料の固形分又は希釈液の流量とデューティ比との相関を表すテーブルを格納する記憶手段を備えており、入力された希釈塗料の固形分又は希釈液の流量に対応するデューティ比に基づいて前記開閉バルブを開閉制御する請求項1又は2に記載の塗料供給装置。
【請求項4】
塗料送出手段から送出された原料塗料を塗料ラインにより輸送する輸送ステップと、
前記塗料ラインに分岐接続された希釈液ラインへ希釈液送出手段から希釈液を送出し、原料塗料に希釈液を混合する混合ステップとを備える塗料供給方法であって、
前記混合ステップは、入力信号に基づいて前記希釈液ラインを開閉する開閉バルブを開閉制御することにより、原料塗料に混合される希釈液の流量を調整する塗料供給方法。
【請求項5】
塗料送出手段から送出された原料塗料を塗料ラインにより輸送する輸送ステップと、
前記塗料ラインに分岐接続された希釈液ラインへ希釈液送出手段から希釈液を送出し、原料塗料に希釈液を混合する混合ステップと、
前記混合ステップで得られた希釈塗料により被塗装物を塗装する塗装ステップとを備える塗装方法であって、
前記混合ステップは、入力信号に基づいて前記希釈液ラインを開閉する開閉バルブを開閉制御することにより、原料塗料に混合される希釈液の流量を調整する塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−302284(P2008−302284A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150593(P2007−150593)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】