説明

塗料充填装置

【課題】塗料ロスの量を低減するべく排出経路の開口面積の絞込み量の調整を容易におこなうことができ、且つ絞込み量が経時的に変化することがない絞りバルブを有する塗料充填装置の提供を課題とする。
【解決手段】絞りバルブ43は円環状のバルブシート64と、バルブシート64に近接離間可能に設けられるニードル62とを備え、ニードル62の先端部にはテーパー面62aが形成され、ニードル62をバルブシート64に近接させてテーパー面62aとバルブシート64とを当接することで絞りバルブ43が閉状態に切り換えられ、ニードル62をバルブシート64から離間させてテーパー面62aとバルブシート64との間に隙間を形成することで絞りバルブ43が開状態に切り換えられ、絞りバルブ43の閉状態において、テーパー面62aとバルブシート64との当接部に、当接部の上流側と下流側とを連通する複数のオリフィス74・74が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料カートリッジ内に塗料を充填する塗料充填装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のボディなど(以下、「被塗装部品」と記す)に塗装を施す場合には、塗装装置が用いられる。
前記塗装装置には、着脱可能に装着される塗料カートリッジが備えられる。そして、塗装装置は塗料カートリッジ内に充填される塗料を用いて、被塗装部品の塗装を行う。
一方、塗料カートリッジは複数色ある塗料に対して色ごとに設けられる。そして、塗装装置は、色ごとに設けられた複数の塗料カートリッジの内から任意の塗料カートリッジを選択して用いることで、被塗装部品に塗布する塗料の色替えを行う。
なお、これら塗料カートリッジは、内部に充填される塗料が枯渇すれば、塗料の色の違いに関わらず、共通の塗料充填装置によって塗料の再充填が行われる。
【0003】
ここで、塗料充填装置はカートリッジ装着部や塗料供給装置や塗料供給経路や排出経路などを有して構成される。
そして、塗料充填装置によって塗料カートリッジ内に塗料を充填する場合は、先ず、カートリッジ装着部に塗料カートリッジが装着され、その後、塗料供給装置から供給された塗料が、塗料供給経路を介して塗料カートリッジ内に充填される。
つまり、塗料カートリッジ内に塗料を充填する場合、色の異なる塗料が同じ塗料供給経路内を通過することとなるのである。
【0004】
このようなことから、塗料充填装置によって塗料カートリッジ内に塗料を充填する場合には、色の異なる塗料が塗料供給経路内で混ざることを防止するために、予め塗料供給経路内に残存する塗料を洗浄する洗浄工程が必要となる。
具体的には、前記洗浄工程では、塗料供給経路内にシンナーなどの洗浄液やエアを供給して、塗料供給経路内に残存する塗料や廃液を、前記エアによって排出経路を通じて塗料供給経路の外部に押出す(排出する)ことで、塗料供給経路内に残存する塗料の洗浄が行われる。
【0005】
また、前記洗浄工程が終了し、直ちに塗料カートリッジ内に次色の塗料(新たに塗料カートリッジ内に充填する塗料)を充填すれば、塗料供給経路内に存在するエアが、塗料供給装置から供給される塗料に混じって塗料カートリッジ内に混入してしまう。
このようなことから、洗浄工程の終了後、塗料カートリッジ内に塗料を充填する前には、塗料供給経路内に次色の塗料を圧送し、該塗料によって、塗料供給経路内に存在するエアを排出経路を通じて塗料供給経路の外部に押出す(排出する)、エア抜き工程を行うこととしている。
【0006】
ところで、前記エア抜き工程では、塗料供給経路内に次色の塗料を圧送することで確実にエアを排出しようとするため、次色の塗料が塗料供給経路内に存在するエアとともに、排出経路を通じて該塗料供給経路の外部に排出されることとなり、破棄される塗料(以下、「塗料ロス」と記す)の量が増大するという問題があった。
そこで、従来の塗料充填装置においては、排出経路の中途部に絞りバルブを設け、該絞りバルブによって排出経路の開口面積を絞り込むことで、前記塗料ロスの量の低減化を図っている(例えば、「特許文献1」を参照。)。
【0007】
ここで、従来の塗料充填装置において、排出経路の中途部に設けられる絞りバルブの構成について、図6を用いて説明する。
図6は、従来の絞りバルブ101におけるバルブシート103の近傍を示した図であり、(a)はニードル104の先端部(テーパー面104a)をバルブシート103より離間した状態を示した断面図、(b)はニードル104の先端部(テーパー面104a)をバルブシート103に近接した状態を示した断面図である。
なお、便宜上、図6の上下方向を絞りバルブ101の上下方向と規定して、以下説明する。
【0008】
絞りバルブ101は、筐体102やバルブシート103やニードル104などを有して構成される。
筐体102の内部には、上下方向に貫通する貫通孔102aが穿孔され、貫通孔102aの内部には、ニードル104が貫通孔102aの軸心方向へ移動可能に嵌挿される。
【0009】
貫通孔102aの一方の端部(図6における下側の端部)には、環状部材からなるバルブシート103が嵌設される。
また、貫通孔102aの他方の端部(図6における上側の端部)には、貫通孔102aを閉塞する閉塞部材(図示せず)が配設される。
【0010】
筐体102の上下方向中途部には、貫通孔102aに連通する流通経路(図示せず)が設けられる。
また、絞りバルブ101は、塗料充填装置に備えられる排出経路の中途部に配設されており、前記流通経路および貫通孔102aのバルブシート103側端部が、それぞれ前記排出通路と連通されている。
【0011】
そして、例えばエア抜き工程を行う場合、塗料供給経路に存在するエアは、塗料とともに排出経路を通じて外部に排出されるが、その際に排出経路の中途部に設けられる絞りバルブ101を通過する。つまり、エアおよび塗料は、絞りバルブ101内においては、貫通孔102aを前記流通経路側からバルブシート103側へ向かって流れていく。
なお、再び排出経路内に導かれたこれらエア、および塗料は、該排出経路の端部に配設される排出バルブを介して、前記排出経路の外部に排出される。
【0012】
ニードル104の下端部、即ちバルブシート103側の端部には、軸心方向におけるバルブシート103側へ向かって縮径されるように傾斜するテーパー面104aが形成される。また、ニードル104は、圧縮コイルなどからなる付勢手段(図示せず)によって常に軸心方向の下側に向かって付勢される。
【0013】
一方、バルブシート103は、その内径寸法がテーパー面104aの縮径側端部(下端部)における外径寸法に比べて大きな値となるように、且つテーパー面104aの拡径側端部(上端部)における外径寸法に比べて小さな値となるように形成されている。
従って、絞りバルブ101は、ニードル104をバルブシート103側へ移動させてバルブシート103の内周縁部とテーパー面104aとを当接させることにより閉じられ、ニードル104をバルブシート103から離間する方向へ移動することによって開かれることとなっている。また、絞りバルブ101の開度は、ニードル104のバルブシート103からの離間距離によって決定される。
【0014】
そして、絞りバルブ101は、図6(a)に示すように、ニードル104を移動範囲のなかでバルブシート103から離間する方向へ最大に移動させることにより、ニードル104のテーパー面104aとバルブシート103との隙間が最大となり、完全に開放された状態(以下、「開状態」と記す)となる。
一方、ニードル104を、この開状態から、バルブシート103に近づく方向へ移動させると、ニードル104のテーパー面104aとバルブシート103との隙間が小さくなり、絞りバルブ101の開度が小さくなる。
また、図6(b)に示すように、ニードル104がバルブシート103側へ移動されて、ニードル104のテーパー面104aとバルブシート103とが近接した状態では、テーパー面104aとバルブシート103との間には僅かな隙間があるのみで、絞りバルブ101が僅かに開いた「絞り状態」となる。
【0015】
このように、絞りバルブ101の開度を小さくして絞り状態とすることで、排出経路(図示せず)の開口面積が絞り込まれ、エア抜き工程の際における塗料ロスは低減されるのである。
【0016】
即ち、エア抜き工程を行う場合は、排出経路内に圧出される塗料や該排出経路内に存在するエアは、絞りバルブ101内に導入されると、貫通孔102a内をバルブシート103側へ流れることとなる。
この場合、図6(b)に示すように、絞りバルブ101が絞り状態にあると、貫通孔102a内に導かれたエアについては、ニードル104のテーパー面104aとバルブシート103との隙間を通って、再び絞りバルブ101の外部に排出される(図6(b)の矢印Z2参照)。一方、貫通孔102a内に導かれた塗料については、粘性などの影響によって、ニードル104のテーパー面104aとバルブシート103との隙間を通過することが困難であり、その大部分が貫通孔102a(および、排出経路内)に留まることとなる。これにより、エアを排出しつつ、塗料の排出を抑えることが可能となっている。
【0017】
なお、洗浄工程を行う場合には、図6(a)に示すように、絞りバルブ101を「開状態」とすることで、排出経路内に残存する塗料や廃液は、貫通孔102a内に導かれた後、バルブシート103側(図6(a)の矢印Z1の方向)に向かって流れ込み、その後、ニードル104のテーパー面104aとバルブシート103との隙間を通過して、絞りバルブ101の外部に排出されるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2009−56382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
このような構成からなる絞りバルブ101を排出経路の中途部に設ければ、該排出経路の開口面積を容易に絞り込むことが可能となり、塗料ロスの量を効果的に低減することができるとも思われる。
しかし、前記絞りバルブ101は、以下に示すような問題点を有していた。
【0020】
即ち、排出経路の開口面積の絞り込みは、ニードル104をバルブシート103側へ移動させて、ニードル104のテーパー面104aとバルブシート103との隙間の大きさ、即ち絞りバルブ101の開度を絞ることによって行われる。
しかし、ニードル104の位置を高精度に調節することは困難であり、絞りバルブ101の開度にもバラツキが生じることとなる、という問題点を有していた。
【0021】
また、絞りバルブ101を長期的に使用すると、ニードル104のテーパー面104aがバルブシート103と当接したり、塗料を含むエアがテーパー面104aとバルブシート103との間を通過したりすることにより、テーパー面104aおよびバルブシート103が摩耗して、ニードル104の移動位置を同じ位置に調節したとしても、絞りバルブ101の開度が経時的に変化するという問題点を有していた。
【0022】
本発明は、以上に示した現状の問題点を鑑みてなされたものであり、塗料供給経路内に留まった塗料、およびエアを外部に排出する排出経路を有し、塗料ロスの量を低減するべく、該排出経路の中途部に、該排出経路の開口面積を絞り込むための絞りバルブが配設される塗料充填装置であって、前記開口面積の絞込み量の調整を容易におこなうことができ、且つ、該絞込み量が経時的に変化することがない前記絞りバルブを有する塗料充填装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0024】
即ち、請求項1においては、塗料を塗料貯留部材に充填する際の経路である塗料供給経路内に留まった塗料およびエアを、前記塗料供給経路の外部に排出する排出経路を備える塗料充填装置であって、前記排出経路の中途部には絞りバルブが配設され、前記絞りバルブは、円環状のバルブシートと、前記バルブシートに近接離間可能に設けられるニードルとを備え、前記ニードルの先端部には、先端へ向かって縮径するテーパー面が形成され、前記ニードルをバルブシートに近接させて、前記テーパー面とバルブシートとを当接することで、前記絞りバルブが閉状態に切り換えられ、前記ニードルをバルブシートから離間させて、前記テーパー面とバルブシートとの間に隙間を形成することで、前記絞りバルブが開状態に切り換えられ、前記絞りバルブが閉状態に切り換えられた状態において、前記テーパー面とバルブシートとの当接部に、該当接部の上流側と下流側とを連通する複数のオリフィスが形成されるものである。
【0025】
請求項2においては、前記オリフィスは、前記ニードルのテーパー面に、前記テーパー面の傾斜に沿いつつ、前記ニードルの軸心方向に延出して形成される複数の溝部によって構成されるものである。
【0026】
請求項3においては、前記オリフィスは、前記ニードルのテーパー面が当接するバルブシートの内周縁部に、前記テーパー面の傾斜に沿いつつ、前記ニードルの軸心方向に延出して形成される複数の溝部によって構成されるものである。
【0027】
請求項4においては、前記オリフィスの開口面積は、前記絞りバルブが開状態に切り換えられたときの前記バルブシートの開口面積に対して1/10以下であるものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明における塗料充填装置に拠れば、塗料供給経路内に留まった塗料、およびエアを外部に排出する排出経路を有し、塗料ロスの量を低減するべく、該排出経路の中途部に、該排出経路の開口面積を絞り込むための絞りバルブが配設される塗料充填装置であって、前記開口面積の絞込み量の調整を容易におこなうことができ、且つ、該絞込み量が経時的に変化することがない前記絞りバルブを有する塗料充填装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例に係る塗料充填装置の全体的な構成を示したブロック線図。
【図2】絞りバルブの全体的な構成を示した断面図。
【図3】バルブシートの近傍を示した図であり、(a)はニードルの先端部をバルブシートより離間した状態を示した断面図、(b)はニードルの先端部をバルブシートに当接した状態を示した断面図、(c)は(b)において矢印Xの方向から見た断面図。
【図4】別実施例におけるバルブシートの近傍を示した図であり、(a)はニードルの先端部をバルブシートに当接した状態を示した断面図、(b)は(a)において矢印Yの方向から見た断面図。
【図5】本実施例に係る絞りバルブにおいて、ニードルの先端部をバルブシートに当接した状態における開口比と流量比との関係を示した線図。
【図6】従来の絞りバルブにおけるバルブシートの近傍を示した図であり、(a)はニードルの先端部をバルブシートより離間した状態を示した断面図、(b)はニードルの先端部をバルブシートに近接した状態を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0031】
[塗料充填装置1]
先ず、本発明の一実施例に係る塗料充填装置1の全体構成について、図1を用いて説明する。
【0032】
塗料充填装置1は塗料カートリッジ10に対して着脱可能に構成され、複数色の塗料の中から任意に選択された色の塗料を、塗料貯留部材である塗料カートリッジ10内に充填するための装置である。
塗料充填装置1は、主にカートリッジ装着部2や塗料供給装置3や排出経路4や押出液排出装置5などにより構成される。
【0033】
塗料カートリッジ10は、その内部空間に、塗料が充填されるカートリッジ袋11を備えている。カートリッジ袋11内には塗料移動管13が挿入されており、塗料移動管13を通じてカートリッジ袋11への塗料の充填、およびカートリッジ袋11からの塗料の排出が行われる。
また、塗料カートリッジ10の内部空間(厳密には塗料カートリッジ10の内部空間におけるカートリッジ袋11の外部の部分)には押出液移動管12が挿入されており、押出液移動管12を通じて塗料カートリッジ10の内部空間へ押出し液が充填可能となっている。
【0034】
塗料充填装置1のカートリッジ装着部2は、塗料カートリッジ10を着脱可能に固定保持する部材である。
カートリッジ装着部2の内部には、第一押出液流路21や第二押出液流路22や塗料流路23などが形成される。
【0035】
第一押出液流路21の一端部は、塗料カートリッジ10がカートリッジ装着部2に装着された状態において、押出液移動管12と連通され、第一押出液流路21の中途部にはストップ弁21aが配置される。
第二押出液流路22の一端部は、塗料カートリッジ10がカートリッジ装着部2に装着された状態において、塗料カートリッジ10の内部空間におけるカートリッジ袋11の外側の部分に連通され、第二押出液流路22の中途部にはストップ弁22aが配置される。
塗料流路23の一端部は、塗料カートリッジ10がカートリッジ装着部2に装着された状態において、塗料移動管13と連通され、塗料流路23の中途部にはストップ弁23aが配置される。
【0036】
そして、前記各流路21・22・23のストップ弁21a,22a,23aは、カートリッジ装着部2に塗料カートリッジ10が装着されていない場合には閉状態され、カートリッジ装着部2に塗料カートリッジ10が装着されている場合には開状態とされる。
【0037】
塗料流路23の他端部には、トリガバルブ31が接続される。
前記トリガバルブ31は三方弁に構成され、塗料流路23のほか、塗料供給経路32および排出経路4に接続される。
【0038】
そして、トリガバルブ31は、塗料流路23と塗料供給経路32とを連通するとともに塗料供給経路32と排出経路4とを遮断する状態、および塗料供給経路32と排出経路4とを連通するとともに塗料供給経路32と塗料流路23とを遮断する状態を切り替え可能に構成されている。
なお、トリガバルブ31は、ソレノイド(図示せず)によって作動する切替弁である。
【0039】
塗料供給経路32において、トリガバルブ31と接続される側とは反対側の端部には、塗料供給装置3が接続される。
前記塗料供給装置3は、主に塗料タンク33・33や塗料ポンプ34・34や塗料バルブ35・35などを有して構成される。
【0040】
塗料タンク33は、塗料ポンプ34および塗料バルブ35を介して塗料供給経路32に接続される。
また、塗料バルブ35は、塗料供給経路32と塗料タンク33との連通状態、および塗料供給経路32と塗料タンク33との遮断状態を切り替えるためのものである。
さらに、塗料ポンプ34は、塗料タンク33から塗料供給経路32に向かって塗料を圧送するためのものである。
【0041】
なお、図1においては、塗料タンク33、塗料ポンプ34、塗料バルブ35からなる構成要素群が2組示されている。しかし、これら構成要素群33・34・35は、1組であってもよいし、3組以上であってもよい。
また、複数組の構成要素群33・34・35・・・を塗料充填装置1に配設する場合、複数の塗料タンク33・33・・・には、各々異なる種類の塗料が貯留される。
【0042】
塗料供給装置3は、前述した塗料タンク33や塗料ポンプ34や塗料バルブ35などとともに、洗浄液(例えば、シンナー)タンク36や洗浄液ポンプ37や洗浄液バルブ38やエア源39やエアバルブ40などを備えている。
【0043】
洗浄液タンク36は、洗浄液ポンプ37および洗浄液バルブ38を介して塗料供給経路32に接続される。
また、洗浄液バルブ38は、塗料供給経路32と洗浄液タンク36との連通状態、および塗料供給経路32と洗浄液タンク36との遮断状態を切り替えるためのものである。
さらに、洗浄液ポンプ37は、洗浄液タンク36から塗料供給経路32に向かって洗浄液を圧送するためのものである。
【0044】
エア源39は、エアバルブ40を介して塗料供給経路32に接続される。
エアバルブ40は、塗料供給経路32とエア源39との連通状態、および塗料供給経路32とエア源39との遮断状態を切り替えるためのものである。
【0045】
なお、これら塗料バルブ35や洗浄液バルブ38やエアバルブ40は、いずれもソレノイド(図示せず)によって作動する切替弁である。
【0046】
排出経路4には、トリガバルブ31に近接する位置に塗料センサー41が配設される。
塗料センサー41は、該塗料センサー41が配設される地点において、排出経路4を通過する塗料を検知するためのものである。
塗料センサー41は光電管を用いたセンサーである。
より具体的には、排出経路4の一部には、光透過性の材料からなる透過部が設けられ、塗料センサー41は該透過部を挟んで配設される光源と光電管とを有して構成される。
そして、塗料センサー41は、排出経路4内に流れる塗料を検知すると、後述するコントローラ(図示せず)に信号を送信するのである。
【0047】
排出経路4における、塗料センサー41の下流側には、切替装置42が配設される。
切替装置42は、絞りバルブ43や排出バルブ44などを有して構成される。
なお、排出経路4の下流端(トリガバルブ31に接続される側とは反対側の端部)には、排出経路4から排出される塗料や洗浄液などを受け取る廃液タンク45が配設される。
【0048】
絞りバルブ43は、排出バルブ44よりも上流側(トリガバルブ31側)に配置される。
そして、絞りバルブ43は、排出経路4の開口面積を最大とする「開状態」と、排出経路4の開口面積を絞って開状態よりも小さくする「絞り状態」とに切り替え可能に構成される。また、排出バルブ44は、排出経路4を完全に閉じる「閉状態」と前記「開状態」とに切り替え可能に構成される。
なお、これら絞りバルブ43や排出バルブ44は、いずれもソレノイド(図示せず)によって作動する切替弁である。
【0049】
押出液排出装置5は、第一押出液排出路51や第二押出液排出路52や押出液タンク53などにより構成される。
第一押出液排出路51の一端部は、カートリッジ装着部2の第一押出液流路21の他端部に接続される。また、第一押出液排出路51の他端部は、押出液タンク53に連通される。
そして、第一押出液排出路51は、該第一押出液排出路51の中途部に配設される第一押出液バルブ51aによって開閉される。
【0050】
第二押出液排出路52の一端部は、カートリッジ装着部2の第二押出液流路22の他端部に接続される。また、第二押出液排出路52の他端部は、押出液タンク53に連通される。
そして、第二押出液排出路52は、該第二押出液排出路52の中途部に配設される第二押出液バルブ52aによって開閉される。
【0051】
以上のように、塗料充填装置1は、カートリッジ装着部2や塗料供給装置3や排出経路4や押出液排出装置5などを有して構成される。
また、前述した塗料ポンプ34、塗料バルブ35、洗浄液バルブ38、洗浄液ポンプ37、エアバルブ40、トリガバルブ31、塗料センサー41、絞りバルブ43、排出バルブ44、第一押出液バルブ51a、第二押出液バルブ52aなどには、図示せぬコントローラが電気的に接続され、該コントローラによって、これら各装置群34・35・・・の動作が制御される。
【0052】
そして、このような構成からなる塗料充填装置1によって塗料カートリッジ10内に塗料を充填する場合には、色の異なる塗料が塗料供給経路32内で混ざることを防止するために、先ず、予め塗料供給経路32内に残存する塗料を洗浄する洗浄工程が行われる。
【0053】
具体的には、洗浄工程では、前記コントローラによって洗浄液バルブ38が切り替えられ、洗浄液タンク36と塗料供給経路32とが連通状態とされる一方、切替装置42を構成する絞りバルブ43と排出バルブ44とは、前記コントローラによって各々「開状態」に切り替えられる。
【0054】
そして、これら洗浄液バルブ38や絞りバルブ43や排出バルブ44が切り替えられると、前記コントローラによって洗浄液ポンプ37が起動され、洗浄液タンク36から塗料供給経路32に向かって洗浄液が圧送される。
これにより、塗料供給経路32内にシンナーなどの洗浄液が供給され、塗料供給経路32内に残存する塗料は、前記洗浄液によって洗い流され、廃液として排出経路4を通じて塗料供給経路32の外部に押出される(排出する)。
【0055】
そして、一定時間の経過後、前記コントローラによって洗浄液ポンプ37が停止されるとともに、エアバルブ40が切り替えられ、エア源39と塗料供給経路32とが連通状態とされる。
これにより、塗料供給経路32内にエアが供給され、該塗料供給経路32内に残存する廃液は、前記エアによって排出経路4を通じて塗料供給経路32の外部に押出される(排出する)こととなり、塗料供給経路32内に残存する塗料の洗浄が行われるのである。
なお、塗料供給経路32内にエアが供給され、一定時間が経過すれば、再び前記コントローラによってエアバルブ40が切り替えられ、エア源39と塗料供給経路32とが遮断状態となり、洗浄工程は終了する。
【0056】
洗浄工程が終了すれば、塗料供給経路32内に存在する前記エアが、塗料供給装置3から供給される塗料に混じって塗料カートリッジ10内に混入ことを防止するために、エア抜き工程が行われる。
【0057】
具体的には、エア抜き工程では、前記コントローラによって次色の塗料(新たに塗料カートリッジ10内に充填する塗料)に関する塗料バルブ35が切り替えられ、前記塗料の塗料タンク33と塗料供給経路32とが連通状態とされる一方、切替装置42を構成する絞りバルブ43と排出バルブ44とは、前記コントローラによって各々「絞り状態」と「開状態」とに切り替えられる。
【0058】
そして、これら塗料バルブ35や絞りバルブ43や排出バルブ44が切り替えられると、前記コントローラによって塗料ポンプ34が起動され、塗料タンク33から塗料供給経路32に向かって次色の塗料が圧送される。
このように、塗料供給経路32内に次色の塗料が供給され、塗料供給経路32内に残存するエアは、前記塗料によって排出経路4を通じて塗料供給経路32の外部に押出され(排出する)ようとするが、絞りバルブ43は「絞り状態」となっているため、大部分の前記塗料は前記絞りバルブ43によって堰き止められることとなる。
【0059】
そして、塗料供給経路32内に次色の塗料が供給され、一定時間が経過すれば、前記コントローラによって絞りバルブ43と排出バルブ44とが各々「閉状態」に切り替えられ、排出経路4と塗料供給経路32とが遮断状態となり、エア抜き工程は終了するのである。
【0060】
[絞りバルブ43]
次に、絞りバルブ43の構成について、図2乃至図4を用いて説明する。
なお、便宜上、図2、図3(a)(b)の上下方向を絞りバルブ43の上下方向と規定し、且つ図4(a)の上下方向を絞りバルブ143の上下方向と規定して、以下説明する。
絞りバルブ43は、例えば図2、図3に示すように、ニードル62の軸心方向が上下方向となる姿勢に配置することもできるが、配置姿勢はこれに限定されるものではなく、ニードル62の軸心方向が前後方向となるように配置したり、左右方向となるように配置したりすることができ、任意の配置姿勢とすることができる。
【0061】
絞りバルブ43は、前述の通り、排出経路4(図1を参照)の中途部に設けられ、エア抜き工程時における塗料ロスの量を低減するべく、該排出経路4の開口面積を絞り込むためのものである。
絞りバルブ43は、バルブの開閉部材である略円柱状のニードル62およびニードル62が着座可能な環状のバルブシート64と、ニードル62を支持するホルダー部材67と、ニードル62を駆動する作動部65と、前記ニードル62、バルブシート64、ホルダー部材67、および作動部65を一体的に収容する筐体61とを備えている。
【0062】
筐体61は、軸方向(上下方向)に貫通する貫通孔61aを有する筒状部材にて構成されている。貫通孔61aの軸方向における上端部から途中部にかけてはホルダー部材67が嵌装されており、下端部にはバルブシート64が嵌装されている。
ホルダー部材67の上部には、作動部65を収納する収納空間67aが形成され、ホルダー部材67の下部には、収納空間67aに連続して形成され、軸方向へ貫通する支持孔67dが形成されている。支持孔67dには、ニードル62が軸受72・72を介して軸方向へ摺動自在に支持されている。
【0063】
作動部65は、収納空間67aの上端部においてホルダー部材67に固設される固定板68と、収納空間67aにおける固定板68の下方に、固定板68と所定の距離を隔てて配置される摺動板69と、固定板68と摺動板69との間に介装されるバネ70とを備えている。
摺動板69は、収納空間67aに軸方向へ摺動自在に嵌装されており、ニードル62と一体的に摺動可能に構成されている。具体的には、収納空間67a内にはニードル62の上部が延出しており、ニードル62の前記延出部分に摺動板69が嵌装されている。また、摺動板69は、ニードル62の中途部に形成される段差部に係止するとともに、ニードル62に螺装されるナット部材73により段部側へ締結されることで、ニードルに固定されており、これによりニードル62と摺動板69とが一体的に摺動可能となっている。
バネ70は圧縮バネに構成されており、摺動板69を下方へ付勢している。つまり、ニードル62がバネ70により下方付勢されている。
【0064】
ニードル62は、下方へ摺動するとバルブシート64に当接(着座)して絞りバルブ43が閉じた状態となり、上方へ摺動するとバルブシート64から離間して絞りバルブ43が開いた状態となるように構成されている。
そして、ニードル62がバネ70により下方付勢されて下方へ摺動し、バルブシート64に当接した状態では、収納空間67aの底面67bと摺動板69との間には空間67cが形成された状態となる。
【0065】
ホルダー部材67の下部には、空間部61Aが形成されており、空間部61Aには筐体61に形成されるエア通路61eを通じてエアが圧送可能に構成されている。また、空間部61Aは、前記空間67cと連通している。
従って、エア通路61eを通じて空間部61Aにエアが圧送されると、空間部61Aに圧送されたエアは前記空間67cに案内され、その圧力により摺動板69を上方に付勢する。これにより、摺動板69がバネ70の付勢力に抗して上方へ摺動することとなる。
【0066】
ニードル62の下端部(バルブシート64側端部)には、軸心方向におけるバルブシート64側へ向かって縮径されるように傾斜するテーパー面62aが形成される。テーパー面62aは、バルブシート64に着座する部分である。
【0067】
テーパー面62aには、該テーパー面62aの傾斜面に沿いつつ、該テーパー面62aの縮径方向(ニードル62の軸心方向)に向かって延出する溝部62b・62bが形成される。溝部62b・62bは、軸心方向断面視矩形状に形成されている。前記溝部62b・62bは、図3(c)に示すように、互いに対向する位置に配置されている。
【0068】
ニードル62がバルブシート64に着座した状態では、ニードル62のテーパー面62aの形成部分がバルブシート64の内周部64aに挿嵌されるとともに、前記テーパー面62aが前記内周部64aの上端縁部に当接した状態となる。
このニードル62がバルブシート64に着座した状態においては、筐体61内においてバルブシート64よりもニードル62側の部分に形成される空間部61Bと前記内周部64aとは、ニードル62によって分断されるが、前記溝部62b・62bにより、空間部61Bと前記内周部64aとを連通するオリフィス74・74(図3(c)を参照)が形成されることとなる。
【0069】
なお、本実施例においては、テーパー面62aに二箇所の溝部62b・62bを形成することとしているが、これに限定されるものではなく、テーパー面62aに形成される溝部62b・62b・・・は、三箇所以上であってもよい。
【0070】
バルブシート64は、前述の通り環状部材からなり、筐体61の貫通孔61aの下端部において、筐体61に上下摺動自在に支持されるニードル62と同軸上に嵌設される。
即ち、図2に示すように、バルブシート64は筐体61に嵌装されるホルダー部材67に対して下方側に離間して配設され、筐体61の貫通孔61aにおけるホルダー部材67とバルブシート64との間空間部61Bが形成されている。
【0071】
また、筐体61には、その一端が空間部61Bに連通する流通経路61cが形成される。
そして、流通経路61cの他端部、およびバルブシート64の内周部64aの下端部は、前記排出経路4(図1を参照)の中途部と各々連通される。
【0072】
このような構成を有することで、洗浄工程やエア抜き工程の際に排出経路4内に導かれた洗浄液や廃液やエアや塗料などは、排出経路4の中途部で流通経路61cを通って空間部61Bに流入し、その後、バルブシート64の内周部64aを通って再び排出経路4内に排出されるようになっている。
【0073】
絞りバルブ43は、前記空間部61A内に作動エアを圧送して、ニードル62を軸心方向の上側へ移動すれば、テーパー面62aがバルブシート64の内周部64aから抜脱され、ニードル62のテーパー面62aとバルブシート64の内周部64aとが離間した状態となって、テーパー面62aと内周部64aとの間に隙間が形成され、内周部64aが空間部61Bに対して完全に開放された「開状態」に切り換えられる。
つまり、「開状態」においては、ニードル62のテーパー面62aの下端が、バルブシート64の内周部64aよりも上方に位置しており、バルブシート64の内周部64aの上端面がテーパー面62aにより一切閉塞されていない状態にある。
【0074】
逆に、前述のように、ニードル62がバルブシート64に着座した状態では、バルブシート64の内周部64aの上端縁部がニードル62により閉塞されて、絞りバルブ43は閉じた状態に切り換えられることとなる。この絞りバルブ43が閉じた状態では、テーパー面62aの溝部62b・62bにて形成されるオリフィス74・74により、空間部61Bとバルブシート64との連通状態が、開口面積を絞りつつ維持されることとなる。
つまり、絞りバルブ43が閉状態に切り換えられた状態では、バルブシート64の内周部64aは、テーパー面62aによって閉塞されつつ、テーパー面62aの溝部62b・62bによって部分的に開いた状態となり、絞りバルブ43は、その開口面積が絞られた「絞り状態」となる。
このように、開閉可能に構成される絞りバルブ43では、ニードル62がバルブシート64に着座した閉状態においても、テーパー面62aとバルブシート64との当接部よりも上流側に位置する空間部61Bと、テーパー面62aとバルブシート64との当接部よりも下流側に位置するバルブシート64の内周部64aとが、テーパー面62aとバルブシート64との当接部に形成されるオリフィス74・74により連通している、「絞り状態」となるように構成されている。
【0075】
このような構成からなる絞りバルブ43を排出経路4(図1を参照)の中途部に配設することで、本実施例における塗料充填装置1では、該排出経路4の開口面積を絞り込み、エア抜き工程の際における塗料ロスを確実に低減することを可能としている。
【0076】
即ち、図3(b)に示すように、エア抜き工程を行う場合は、先ず、絞りバルブ43を、ニードル62のテーパー面62aがバルブシート64の内周部64aに着座する「絞り状態」に切り換える。
【0077】
絞りバルブ43が「絞り状態」となれば、塗料供給経路32内に塗料が圧出され、該塗料および塗料供給経路32内に存在するエアは、排出経路4に導かれた後、流通経路61cを介して空間部61B内に流入される。
空間部61B内に流入された前記塗料およびエアは、下流側(図3(b)の矢印Y2の方向)に向かって流れ込み、オリフィス74・74に到達する。
【0078】
そして、前記エアはオリフィス74・74を容易に通過して、再び絞りバルブ43の外部に排出される。一方、前記塗料については、粘性などの影響によって、オリフィス74・74を通過することが困難であり、その大部分が空間部61B(および、絞りバルブ43よりも上流側の排出経路4内)に留まることとなる。
【0079】
ここで、前述の通り、溝部62b・62bは、テーパー面62aの傾斜面に沿いつつ、該テーパー面62aの縮径方向に向かって延出して形成される。
つまり、溝部62b・62bは、空間部61B内に流入された塗料およびエアの流れ方向に沿って直線的に形成されるため、前記エアは流速を落とすことなく確実にオリフィス74・74を通過できるのである。
【0080】
また、前述の通り、オリフィス74・74は、テーパー面62aをバルブシート64の内周部64aに挿嵌し、該テーパー面62aを内周部64aの上端縁部に当接することで形成される。
よって、絞りバルブ43に拠れば従来の絞りバルブ101(図6を参照)のように、ニードル104の移動位置を厳密に調整する必要もなく、容易に排出経路4の開口面積を一定の面積に絞り込み、エア抜き工程の際における塗料ロスを低減することができるのである。
【0081】
さらに、オリフィス74・74を形成する溝部62b・62bは、テーパー面62aに複数個所(本実施例においては、二箇所)設けられる。
よって、例えば、前記エアとともにバルブシート64の内周部64a内を通過する僅かな量の塗料が、一部のオリフィス74内に残留したとしても、前記エアは他部のオリフィス74を通じて前記内周部64a内を通過することとなる。
従って、絞りバルブ43に拠れば、確実に排出経路4の開口面積を絞り込み、エア抜き工程の際における塗料ロスを低減することができるのである。
【0082】
一方、図3(a)に示すように、洗浄工程を行う場合、先ずニードル62のテーパー面62aは、バルブシート64の内周部64aより抜脱され、絞りバルブ43が「開状態」となる。
絞りバルブ43が「開状態」となれば、塗料供給経路32内に洗浄液が圧出され、該塗料および塗料供給経路32内に存在する塗料は、該洗浄液に混じって廃液となり、排出経路4に導かれた後、流通経路61cを介して空間部61B内に流入される。
【0083】
空間部61B内に流入された前記廃液は、ニードル62のテーパー面62aとバルブシート64の内周部64aとの間に形成された隙間を通じてバルブシート64の内周部64a内に流れ込み(図3(a)の矢印Y1の方向参照)、さらにバルブシート64の内周部64aを通過して、再び絞りバルブ43の外部に排出されることとなる。
【0084】
ここで、前述の通り、溝部62b・62bは、テーパー面62aの傾斜面に沿いつつ、該テーパー面62aの縮径方向に向かって延出して形成される。
つまり、溝部62b・62bは、空間部61B内に流入された廃液の流れ方向に沿って直線的に形成されるため、前記廃液は流速を落とすことなく確実にバルブシート64の内周部64aに導かれて、絞りバルブ43の外部に排出されるのである。
【0085】
ところで、図4に示す別実施例としての絞りバルブ143のように、オリフィス174・174を形成する溝部164b・164bは、バルブシート164側に設けてもよい。
【0086】
即ち、バルブシート164の内周部164aの上端部(縁部)、即ちニードル162のテーパー面162aが当接するバルブシート164の内周縁部には、ニードル162のテーパー面162aの傾斜面に平行、且つ該テーパー面162aの縮径方向(ニードル162の軸心方向)に向かって延出する溝部164b・164bが形成される。溝部164b・164bは、軸心方向断面視矩形状に形成されている。
図4(b)に示すように、前記溝部164b・164bは例えば二本形成され、互いに対向する位置に配置されている。
【0087】
そして、図4(a)に示すように、テーパー面162aがバルブシート164の内周部164aに挿嵌され、内周部164aの上端縁部に当接することで、溝部164b・164bにより、前記空間部161Bと前記内周部164aとを連通するオリフィス174・174(図4(b)を参照)が形成される。
【0088】
このような構成からなるニードル162やバルブシート164を備えた絞りバルブにおいても、本実施例における絞りバルブ43と同様の効果を得ることが可能であり、排出経路4の開口面積を絞り込み、エア抜き工程の際における塗料ロスを確実に低減することが可能である。
【0089】
即ち、オリフィス74、あるいはオリフィス174を構成する溝部62b・164bについては、テーパー面62a、あるいはバルブシート164の内周部164aのいずれに形成してもよく、さらに言えば、これら両部材62a・164aに形成してもよい。
【0090】
[実証実験]
次に、本願発明の発明者らが行った、エア抜き工程における塗料ロスの量の低減化に関する実証実験について、図3、および図5を用いて説明する。
【0091】
エア抜き工程において、塗料ロスの量を低減するべく、絞りバルブ43を用いて排出経路4(図1を参照)の開口面積を絞り込む場合、バルブシート64の内周部64aと、テーパー面62aの溝部62b・62bとによって形成されるオリフィス74・74の開口面積が問題となる。
【0092】
即ち、オリフィス74・74の開口面積が大きければ、塗料供給経路32(図1を参照)内に残存するエアとともに、排出経路4内を通過する塗料の量も多くなり、塗料ロスの量が増大する。
また、オリフィス74・74の開口面積が小さければ、該オリフィス74・74を通過する前記エア量が減少し、排出経路4内に留まるエア量が増大することとなる。
【0093】
そこで、本発明者らは、実証実験として、絞りバルブ43におけるオリフィス74・74の開口面積(各オリフィス74の開口面積の合計)を変化させてエア抜き工程を複数回実施し、適切な塗料ロスの量となるオリフィス74・74の開口面積を探り出した。
【0094】
図5は、前記実証実験に関する結果を示した線図であり、縦軸には「流量比」に関する数値を示し、横軸には「開口比」に関する数値を示す。
なお、「流量比」とは、絞りバルブ43を「開状態」とした場合の、該絞りバルブ43より排出される塗料の量(基本流量)を100%とし、絞りバルブ43を「絞り状態」とした場合における、前記塗料の量(基本流量)に対する、絞りバルブ43より排出される塗料の量(変化流量)の割合を示したものである。
また、「開口比」とは、絞りバルブ43を「開状態」とした場合の、バルブシート64の内周部64aの開口面積(内周部64aの上端部における断面積)100%とし、絞りバルブ43を「絞り状態」とした場合における、前記開口面積に対するオリフィス74・74の開口面積の割合を示したものである。
【0095】
図5に示すように、「開口比」が10%以下、即ち、「絞り状態」におけるオリフィス74・74の開口面積が、「開状態」における絞りバルブ43の内周部64aの開口面積に対して1/10以下である場合、「流量比」は半減することが分かる。
【0096】
このような結果から、オリフィス74・74の開口面積を、内周部64aの開口面積に対して1/10以下にすることで、エア抜き工程における塗料ロスの量を効果的に低減することが可能であることが実証できた。
【0097】
また、このような条件に加えて、本発明者らは、以下に示す条件をもって、テーパー面62aに形成される溝部62b・62bを形状することで、エアの前記空間部161Bと内周部164aとの間の通過を妨げることなく、より効果的に塗料ロスの量を低減することができることを導き出した。
【0098】
即ち、図3(b)(c)に示すように、ニードル62のテーパー面62aにおいて、拡径側の外径寸法の値を「d」とし、また各溝部62bの幅寸法の値、および深さ寸法の値をそれぞれ「W」、「D」とする場合、(1/20)×d<W<(1/2)×d、且つ(1/40)×d<D<(1/4)×dなる条件を満たすべく、各溝部62bを形成するのである。
【0099】
以上のように、本実施例における塗料充填装置は、塗料を塗料カートリッジ10に充填する際の経路である塗料供給経路32内に留まった塗料およびエアを、前記塗料供給経路32の外部に排出する排出経路4を備える塗料充填装置1であって、前記排出経路4の中途部には、該排出経路4の開口面積を絞り込む絞りバルブ43(143)が配設され、前記絞りバルブ43(143)は、円環状のバルブシート64(164)と、前記バルブシート64(164)に近接離間可能に設けられるニードル62(162)とを備え、前記ニードル62(162)の先端部には、先端へ向かって縮径するテーパー面62a(162a)が形成され、前記ニードル62(162)をバルブシート64(164)に近接させて、前記テーパー面62a(162a)とバルブシート64(164)とを当接することで、前記絞りバルブ43(143)が絞り状態(閉状態)に切り換えられ、前記ニードル62(162)をバルブシート64(164)から離間させて、前記テーパー面62a(162a)とバルブシート64(164)との間に隙間を形成することで、前記絞りバルブ43(143)が開状態に切り換えられ、前記絞りバルブ43(143)が絞り状態(閉状態)に切り換えられた状態において、前記テーパー面62a(162a)とバルブシート64(164)との当接部に、該当接部の上流側と下流側とを連通する複数のオリフィス74・74(174・174)が形成されるものである。
【0100】
このような構成からなる、本実施例における塗料充填装置1に拠れば、塗料供給経路32内に留まった塗料、およびエアを外部に排出する排出経路4を有し、塗料ロスの量を低減するべく、該排出経路4の中途部に、該排出経路4の開口面積を絞り込むための絞りバルブ43が配設される塗料充填装置1であって、前記開口面積の絞込み量の調整を容易におこなうことができ、且つ、該絞込み量が経時的に変化することがない前記絞りバルブを有する塗料充填装置を提供することができる。
【0101】
即ち、本実施例における絞りバルブ43(143)においては、ニードル62(162)のテーパー面62a(162a)をバルブシート64(164)の内周部64a(164a)に挿嵌して、テーパー面62a(162a)を内周部64a(164a)の上端縁部に当接するだけで、適切な開口面積を有するオリフィス74・74(174・174)が形成されることとなる。
よって、従来の絞りバルブ101(図6を参照)のように、ニードル104の移動位置を厳密に調整する必要もなく、容易に排出経路4の開口面積の絞込み量を一定に調整することが可能となり、エア抜き工程の際における塗料ロスを低減することができる。
【0102】
また、絞りバルブ43(143)の長期的な使用により、ニードル62(162)のテーパー面62a(162a)の先端部が、バルブシート64(164)の内周部64a(164a)を通過する、塗料を含むエアによって経時的に摩耗したとしても、オリフィス74・74(174・174)は、前記テーパー面62a(162a)と前記内周部64a(164a)との当接箇所に形成されるため、前記オリフィス74・74(174・174)の開口面積は変化することはない。
よって、排出経路4の開口面積の絞込み量が経時的に変化することもなく、エア抜き工程の際における塗料ロスを効果的に低減することができる。
【0103】
さらに、ニードル62(162)先端部におけるテーパー面62a(162a)をバルブシート64(164)の内周部64a(164a)より抜脱することで、内周部64a(164a)は「開状態」となるため、洗浄液や塗料からなる廃液を通すことも可能であり、塗料充填装置1全体として、洗浄工程を行うための別系統からなる排出経路を設けることもなく経済的である。
【0104】
また本実施例における塗料充填装置1では、前記オリフィス74・74は、前記ニードル62のテーパー面62aに、前記テーパー面62aの傾斜に沿いつつ、前記ニードル62の軸心方向に延出して形成される複数の溝部62b・62bによって構成されることとしている。
【0105】
このような構成を有することで、溝部62b・62bはテーパー面62a上において、オリフィス74・74を通過するエアの流れ方向に沿って形成されることとなる。
よって、オリフィス74・74を通過するエアは流速を落とすことなく確実に該オリフィス74・74を通過できるのである。
【0106】
また、本実施例における塗料充填装置1では、前記オリフィス174・174は、前記ニードル162のテーパー面162aが当接するバルブシート164の内周縁部に、前記テーパー面162aの傾斜に沿いつつ、前記ニードル162の軸心方向に延出して形成される複数の溝部164b・164bによって構成されることとしている。
【0107】
このような構成を有することで、溝部164b・164bは内周部164aのテーパー面162a側の縁部において、オリフィス174・174を通過するエアの流れ方向に沿って形成されることとなる。
よって、オリフィス174・174を通過するエアは流速を落とすことなく確実に該オリフィス174・174を通過できるのである。
【0108】
また本実施例における塗料充填装置1では、前記オリフィス74・74(174・174)の総開口面積は、前記絞りバルブ43(143)が開状態に切り換えられたときのバルブシート64(164)の内周部64a(164a)の開口面積に対して1/10以下であることとしている。
【0109】
このように、オリフィス74・74の開口面積を、内周部64aの開口面積に対して1/10以下にすることで、塗料充填装置1は、エア抜き工程における塗料ロスの量を効果的に低減することを可能としている。
【符号の説明】
【0110】
1 塗料充填装置
4 排出経路
10 塗料カートリッジ
32 塗料供給経路
43 絞りバルブ
62 ニードル
62a テーパー面
64 バルブシート
64a 内周部
74 オリフィス
143 絞りバルブ
162 ニードル
162a テーパー面
164 バルブシート
164a 内周部
164b 溝部
174 オリフィス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を塗料貯留部材に充填する際の経路である塗料供給経路内に留まった塗料およびエアを、前記塗料供給経路の外部に排出する排出経路を備える塗料充填装置であって、
前記排出経路の中途部には絞りバルブが配設され、
前記絞りバルブは、円環状のバルブシートと、前記バルブシートに近接離間可能に設けられるニードルとを備え、
前記ニードルの先端部には、先端へ向かって縮径するテーパー面が形成され、
前記ニードルをバルブシートに近接させて、前記テーパー面とバルブシートとを当接することで、前記絞りバルブが閉状態に切り換えられ、
前記ニードルをバルブシートから離間させて、前記テーパー面とバルブシートとの間に隙間を形成することで、前記絞りバルブが開状態に切り換えられ、
前記絞りバルブが閉状態に切り換えられた状態において、前記テーパー面とバルブシートとの当接部に、該当接部の上流側と下流側とを連通する複数のオリフィスが形成される、
ことを特徴とする塗料充填装置。
【請求項2】
前記オリフィスは、
前記ニードルのテーパー面に、
前記テーパー面の傾斜に沿いつつ、前記ニードルの軸心方向に延出して形成される複数の溝部によって構成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の塗料充填装置。
【請求項3】
前記オリフィスは、
前記ニードルのテーパー面が当接するバルブシートの内周縁部に、
前記テーパー面の傾斜に沿いつつ、前記ニードルの軸心方向に延出して形成される複数の溝部によって構成される、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の塗料充填装置。
【請求項4】
前記オリフィスの開口面積は、前記絞りバルブが開状態に切り換えられたときの前記バルブシートの開口面積に対して1/10以下である、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3の内の何れか一項に記載の塗料充填装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−189256(P2011−189256A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56568(P2010−56568)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】