説明

塗料組成物

【課題】 本発明は、缶用塗料の上塗塗料であって、加工性と耐ブロッキング性に優れ、且つ高い光沢を有する塗膜を形成できる塗料組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 ポリエステル樹脂(A)と硬化剤(B)とを含有し、(A)と(B)との配合比率は、固形分質量比で(A)/(B)が50/50〜95/5であり、(A)と(B)との合計100質量部に対して、平均粒子径0.1〜10μmの有機高分子微粒子(C)を0.005〜1質量部含有することを特徴とする塗料組成物。硬化剤(B)としてはメラミン樹脂、ベンゾグアンミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂が好適であり、これらを単独又は混合して使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は缶用塗料の上塗塗料であって、加工性と耐ブロッキング性に優れ、光沢が高く意匠性の良好な塗膜を形成できる塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶用塗料としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂又はエポキシ樹脂を主体樹脂として硬化剤及び硬化触媒を配合した塗料が多く用いられている。これらの塗料を塗装した塗装板を家電製品などの器物に加工する場合、一般にプレス成型などによって成型加工されるが、冬季の低温時においては塗膜の加工性は低下する傾向があり、塗膜がひび割れたりしやすくなる。例えば、冬季では成型加工は5℃以下で行われることもあり、塗膜のガラス転移温度は、60℃以下くらいにしないと十分な加工性が得られない。
【0003】
しかし塗膜のガラス転移温度を低下させて加工性を高めると、その塗料を塗装した鋼板を積層して堆積したり、あるいはコイル状に巻き取ったりした場合に、特に夏季の高温時には、その荷重や圧力により塗膜にブロッキング(塗膜面の粘着性により塗膜同士や塗膜と鋼板等とがくっつくトラブル)を生じやすくなるという問題がある。
【0004】
耐ブロッキング性(ブロッキングの起こりにくさの程度)を改善する方法としては、シリカや沈降性バリウム等の無機顔料を添加する方法が一般的であるが、ブロッキング防止に効果がある量を添加すると、加工性が悪くなる傾向にあり、耐ブロッキング性と加工性の両方を満足させることは難しい。
【0005】
加工性及び耐ブロッキング性の両方を改善する方法として、有機高分子微粒子を添加する方法がある。例えば、特許文献1には平均粒子径0.2〜80μmの有機高分子微粒子を含有する塗料組成物が記載されている。該文献の塗料は凹凸仕上げ用を目的とするので、樹脂成分の合計100質量部に対して、実施例では微粒子は3〜20部とかなり多めに添加されている。凹凸仕上げを得るには問題ないが、塗装面に高光沢を付与することは難しいと考えられる。
【0006】
特許文献2には架橋弾性樹脂微粒子をフィルム形成樹脂の必須成分として含有する、硬くて柔軟性のある被覆膜の形成方法が記載されている。該微粒子はフィルム形成成分の1〜50%含有するとされ、また実施例では20%含有する配合が示されている。被膜の光沢については記載されていないが、前記したように高光沢を得ることは難しいと考えられる。
【0007】
上記のように、高温での耐ブロッキング性及び低温での加工性の両者を満足し、更に光沢が高く意匠性に優れる塗膜を形成できる上塗塗料が要望されている。
【0008】
【特許文献1】特開平5−132636号公報
【特許文献2】特開平9−87580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は缶用塗料の上塗塗料であって、加工性と耐ブロッキング性に優れ、且つ高い光沢を有する塗膜を形成できる塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、適切に選択された有機高分子微粒子を塗料に添加することによって目的とする塗膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明の塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)と硬化剤(B)とを含有し、(A)と(B)との配合比率は、質量比で(A)/(B)が50/50〜95/5の範囲であり、(A)と(B)との合計100質量部に対して、平均粒子径0.1〜10μmの有機高分子微粒子(C)を0.005〜1質量部含有することを特徴とする。尚、前記のポリエステル樹脂や硬化剤はその取り扱いを容易にするために、通常溶剤分を40〜60%程度含んだ形で供給される。前記の配合比率は、その溶剤分を除いた固形分について表す。また部や%は質量基準である。
【0012】
上記硬化剤(B)としてはメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂が好適であり、これらを単独又は混合して使用できる。
【0013】
有機高分子微粒子(C)の材質としては、好ましくは、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、尿素・ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル系架橋物などが挙げられる。
【0014】
また本発明の塗料組成物には滑剤(D)として天然ワックス又は合成滑剤を含有してもよい。ワックス及び滑剤は滑性及び耐磨耗性を付与するために添加する。滑剤(D)の配合量は、好ましくは、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.05〜4質量部の範囲である。
【0015】
また本発明の塗料組成物には硬化触媒(E)として強酸や強酸の中和物を含有してもよい。硬化触媒は硬化促進作用のために添加する。硬化触媒(E)の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.01〜3質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜1質量部の範囲である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗料組成物は、ポリエステル−硬化剤系上塗塗料であって、低温時の加工性と高温時の耐ブロッキング性の両方を、有機高分子微粒子を配合することにより改善したものである。この塗料を塗装した塗装鋼板は、冬季の寒冷地における5℃以下での加工性と、夏季の高温下で積層して堆積したりコイル状に巻き取ったりした場合の耐ブロッキング性との両方おいても優れた性能を示す。本発明の塗料組成物は、光沢のある意匠性に優れた塗膜を形成できるので、缶用塗料などの意匠性を要求される器物に加工される塗装鋼板用の上塗塗料として特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の塗料組成物はポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)および有機高分子微粒子(C)を含有する。(A)および(B)の配合比率は、固形分の質量比で(A)/(B)が50/50〜95/5の範囲が好ましく、より好ましくは60/40〜80/20の範囲である。(A)成分と(B)成分との合計100質量部中、(A)成分が50質量部未満になると塗膜の加工性が低下し、一方、(A)成分が95質量部を超えると、塗膜の耐ブロッキング性、耐汚染性、硬度、耐溶剤性などが低下する。
【0018】
前記のポリエステル樹脂(A)は数平均分子量が300〜30000、ガラス転移温度が−10〜60℃、水酸基価が2〜100mgKOH/gの範囲が好ましく、より好ましくは数平均分子量が500〜20000、ガラス転移温度が−10〜40℃の範囲である。加工性を高めるためには数平均分子量は300以上が良く、また塗料化するためには溶解性の点で数平均分子量は30000以下が良い。
【0019】
上記のポリエステル樹脂は水酸基を含有するものであり、オイルフリーポリエステル樹脂、アルキド樹脂、又は、これらの変性物等いずれであってもよい。前記のポリエステル樹脂は主に多価アルコールと多塩基酸とのエステル化合物である。多塩基酸と多価アルコールの結合を骨格とし、油脂(脂肪酸)で変性していないものをオイルフリーポリエステル樹脂と言い、油脂(脂肪酸)で変性したものをアルキド樹脂と言う。その脂肪酸としては、しなきり油脂肪酸、ぬか油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、キリ油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸などが挙げられる。アルキド樹脂の油長は35%以下が好ましい。
【0020】
前記の多価アルコールとしては、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。塗膜の硬度と加工性を考慮して適宜選択して使用できる。
【0021】
前記の多塩基酸としてはセバシン酸、ヘット酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸コハク酸、フマル酸、アジピン酸、無水マレイン酸、安息香酸、クロトン酸、P−tert−ブチル安息香酸などの1塩基酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが挙げられる。塗膜の硬度と加工性を考慮して、適宜選択して使用できる。多価アルコールと多塩基酸のエステル化反応は公知の方法で行える。
【0022】
前記の硬化剤(B)はメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂から選ばれ、これらを単独又は混合して使用しても良い。好ましくはエーテル化メラミン樹脂、エーテル化ベンゾグアナミン樹脂である。
【0023】
前記のエーテル化メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの付加反応生成物(メチロール化)である、メチロール化メラミン樹脂の中のメチロール基の一部又は、全部をアルコール類でエーテル化したものである。硬化性と加工性の点から数平均分子量が300〜4000の範囲であることが好ましく、400〜3000の範囲にあることがより好ましい。
【0024】
前記のエーテル化ベンゾグアナミン樹脂は、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの付加反応生成物(メチロール化)であるメチロール化ベンゾグアナミン樹脂の中のメチロール基の一部又は全部をアルコール類でエーテル化したものである。硬化性と加工性の点から数平均分子量が300〜4000の範囲であることが好ましく、400〜3000の範囲にあることがより好ましい。
【0025】
前記の有機高分子微粒子(C)は、その平均粒子径が0.1〜10μmであることが好ましく、その配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.005〜1質量部の範囲であり、好ましくは0.02〜0.5質量部の範囲である。(C)成分の配合量が0.005質量部未満だと耐ブロッキング性を改善する効果が期待できない。また(C)成分の配合量が1質量部を超えると、塗面が凹凸になって光沢が低下し、意匠性が低下するとともに塗膜の加工性が低下する。
【0026】
(C)成分の平均粒子径が10μmを超えると塗面が凹凸になり、意匠性が低下する。好ましくは0.1〜5μmである。
【0027】
有機高分子微粒子(C)の材質としては、好ましくは、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、尿素・ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル系架橋物などが挙げられる。
【0028】
また本発明の塗料組成物には滑性及び耐磨耗性付与の目的で滑剤(D)を添加することができる。この滑剤としては天然ワックス又は合成滑剤が好適である。天然ワックスは動物系、植物系いずれでも良い。また、合成滑剤はシリコ−ン系滑剤、フッ素系滑剤、ポリオレフィン系滑剤、その他ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化合物を用いることができる。又、滑剤は2種類以上を併用することもできる。好ましくは、天然系ワックス、シリコーン系滑剤、及びフッ素系滑剤を併用することである。
【0029】
滑剤(D)の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.05〜4質量部の範囲である。好ましくは0.2〜3質量部の範囲である。(D)成分の配合量が0.05質量部未満だと、滑性が低下し、耐磨耗性が低下する。(D)成分の配合量が4質量部を超えると、ワックス又は滑剤が浮上し、塗膜が白く濁り、意匠性が低下する。
【0030】
また本発明の塗料組成物には硬化促進作用の目的で硬化触媒(E)を添加することができる。硬化触媒(E)としては、強酸、強酸の中和物などがあり、例えば、P−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸などの強度の酸であるスルホン酸化合物、これらのスルホン酸化合物のアミン中和物、リン酸及びリン酸化合物などを挙げることができる。
【0031】
硬化触媒(E)の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.01〜3質量部の範囲であり、好ましくは0.1〜1質量部の範囲である。(E)成分の配合量が0.01未満であると、硬度、耐ブロッキング性などが低下する。(E)成分の配合量が2質量部を超えると、加工性が低下する。
【0032】
本発明の塗料組成物は、上記(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)成分に加えて、塗装に適した粘度に調整して塗装しやすくするなどの目的で通常、有機溶剤が加えられる。有機溶剤としては、キシレン、トリメチルベンゼン、トルエン、高沸点石油系炭化水素などの炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、などのエステル系溶剤;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、などのプロピレン系溶剤;ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、2-エチルヘキサノールなどのアルコール系溶剤などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0033】
本発明の塗料組成物はクリヤー塗料として使用することができるが、着色顔料を含有する着色塗料としても使用できる。着色顔料としては、例えばカーボンブラック、黒鉛などの黒色顔料;フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、キナクリドン系やアゾ系などの有機着色顔料;群青、ベンガラ、チタン白、チタンエローなどの無機着色顔料が使用できる。更に、カオリン、クレー、タルク、マイカ、シリカ、アルミナなどの体質顔料、充填材、添加剤などを併用してもよい。
【0034】
本発明の塗料組成物を塗装する各種基材としては合金メッキ鋼板、ステンレス鋼、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム板、銅板、銅メッキ鋼板、錫メッキ鋼板、クロムメッキ鋼板などの金属板又はこれらの金属板にジルコニウム系、リン酸塩系、クロム酸塩系などの表面処理を施した金属板などを挙げることができる。またプラスチック、セメント、木材などにも適用できる。
【0035】
本発明の塗料組成物は、これらの被塗装物に直接に塗装してもよい。又サイズ(下塗り)塗装、ホワイトコーチング(中塗り)塗装の後に、上塗クリヤ−塗料として塗装しても良い。また絵柄や意匠等を印刷した後に上塗クリヤー塗料として塗装することもできる。上塗クリヤー塗料は中塗り塗装の皮膜の保護または印刷デザインなどの意匠性を保護するために使用する。
【0036】
サイズ用の塗料としては、エポキシ系、ポリエステル系、アクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系及びこれらの変性系などが挙げられ、加工性の面からポリエステル系サイズ塗料が特に好適である。サイズ塗膜の膜厚は通常1〜10μmであり、好ましくは2〜5μmの範囲である。
【0037】
ホワイトコーチング(中塗り)塗料としては、エポキシ系、ポリエステル系、アクリル系及びこれらの変性系などの塗料が用いられるが、加工性の面からポリエステル系ホワイトコーチング(中塗り)塗料が好適である。ホワイトコーチング(中塗り)塗膜の膜厚は特に限定されるものではないが、通常5〜30μmであり、好ましくは6〜20μmの範囲である。
【0038】
本発明の塗料組成物は通常の塗料の製造と同様に、前記の溶剤で樹脂やその他の原料を溶解及び分散して塗料化する。本発明の塗料組成物の塗装方法は、曲面塗装、ロール塗装、カーテンフロー塗装、浸漬塗装、コイルコーティング塗装、及びスプレー塗装などが適用可能であり、一般的には、乾燥後の塗膜厚が3〜10μmとなるように塗装される。また本発明の塗料の焼付け条件は、塗料が硬化する温度及び焼付け時間の範囲から適宜選択できる。ロール塗装分野では、基材の到達温度が140〜220℃で5分〜15分の範囲が好ましく、特に150〜180℃で7分〜12分の範囲が好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
後記の表1〜表4に示す組成配合にて塗料化を行い、実施例11種及び比較例8種の上塗用塗料組成物を得た。これらの塗料の被塗装材(基材)として、厚さ0.23mmのクロメート処理鋼板上に大日本インキ化学工業株式会社製金属平版インキKC1097墨−3をRIテスターにて無分割で4μmの膜厚で転写(印刷)し、基材到達最高温度150℃で10分間焼付けた印刷塗装板を用意した。この印刷塗装板を基材として上塗用塗料組成物を塗装する。この印刷塗装板を準備する目的は、下地が墨(黒色)であると、その上に塗る塗料のブツや塗膜外観を評価しやすいからである。
【0040】
この印刷塗装板に実施例及び比較例の上塗用塗料をバーコーターにて乾燥膜厚が約6μmとなるように塗装し、基材到達高温度が160℃で10分間焼付けて各上塗塗装板を得た。これらの塗装板について表6及び表7に示す項目の試験を行った。試験結果を同じく表6及び表7に示す。
【0041】
なお表1〜4におけるポリエステル樹脂及びアミノ樹脂の量は、固形分質量による表示であり、硬化触媒の量は、それぞれのスルホン酸化合物の量に換算して質量表示した。滑剤の量は固形分による質量表示である。塗料化に際しては、エチレングリコールモノブチルエーテル(エーテル系)、ソルべッソ150(エッソスタンダ−ド石油株式会社製、高沸点石油系炭化水素系溶剤)を使用した。塗装に際しては、塗料粘度をフォードカップ#4で約70秒(25℃)に調整した。
【0042】
[表6の番号9の補足説明]
前記の金属平版墨インキによる印刷をしていないクロメート処理鋼板上に、直接表1の番号1に記載の配合の塗料組成物を塗装し、上塗塗膜を形成した上塗塗装板を得た。
[表6の番号10の補足説明]
クロメート処理鋼板上に大日本インキ化学工業社製6E−050プライマー(ポリエステル系プライマー)を乾燥膜厚が2μmとなるよう塗装し、基材到達温度170℃で10分間焼付け、プライマー塗装板を得た。このプライマー塗装板上に前記したように金属平版墨インキを転写し、基材到達温度150℃で10分間焼付け、得られた印刷塗装板に表1の番号1に記載の配合の塗料組成物を塗装し、上塗塗膜を形成した上塗塗装板を得た。
[表6の番号11の補足説明]
クロメート処理鋼板上に大日本インキ化学工業社製WP-003中塗り塗料(白色のポリエステル系中塗り)を乾燥膜厚が8μmとなるよう塗装し、基材到達温度190℃で10分間焼付け、中塗り塗装板を得た。この中塗塗装板上に前記したように金属平版墨インキを転写し、基材到達温度150℃で10分間焼付け、得られた印刷塗装板に表1の番号1に記載の配合の塗料組成物を塗装した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
表1〜表4中の(註)は、それぞれ下記のとおりである。
(*1〜*4)のポリエステル樹脂は、いずれも東洋紡績株式会社製のポリエステル樹脂であり、表5に性状値を示す。
(*5)スーパーベッカミン TD−126:大日本インキ化学工業株式会社製、n−ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂。
(*6)ユーバン 20SE60 :三井サイテック株式会社製、n−ブチルエーテル化メラミン樹脂。
(*7)有機フィラーJT:日本化成株式会社製、平均粒子径約2μmの尿素ホルムアルデヒド樹脂の微粒子。
(*8)エポスターM14:日本触媒株式会社製、平均粒子径約1μmのベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物の微粒子。
(*9)エポスターS:日本触媒株式会社製、平均粒子径約0.2μmのメラミン・ホルムアルデヒド縮合物の微粒子。
(*10)エポスターL15:日本触媒株式会社製、平均粒子径約15μmのベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物の微粒子。
(*11)PTSA:明友産業株式会社製、パラトルエンスルホン酸。
(*12)NACURE 5225:キング社製、ドデシルベンゼンスルホン酸アミン塩。
(*13)BYK−370:ビックケミー株式会社製、シリコ−ン滑剤。
(*14)ハイディスパー1260:岐阜セラック株式会社製、マイクロクリスタリンワックス。
【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
表6及び表7における試験は下記に示す方法に従って行った。
[塗面外観]
塗装面30cm×22cm(縦×横)の光沢及び凹凸等を目視判定した。
◎:光沢感があり、凹凸感がないもの
○:光沢感があるが、凹凸が僅かあるもの
△:光沢感が若干劣り、凹凸があるもの
×:塗膜がざらざらしているもの
[折り曲げ性]
室温において、塗装面を外側にして試験板を180度折曲げて、折曲げ部分にワレが発生しなくなるT数を示した。評価結果は折曲げる内側に試験板と同じ厚さの板を1枚はさんで折曲げしてワレが発生しない場合を1T、2枚の場合2T、5枚の場合5Tのように表す。何もはさまない場合は0Tとした。T数が小さいほど加工性は優れている。
[耐衝撃性]
JIS K−5400 8.3.2(1990)デュポン式耐衝撃性試験に準じて、質量1000gを30cmの高さから撃ち型の上に落とす。撃芯の尖端直径は1/2インチを使用。塗面に衝撃を加えた。塗膜の剥離程度を目視判定した。
○:塗装面に剥がれがない。
△:塗装面に僅かの剥がれがある。
×:塗装面にかなりの剥がれがある。
[密着性]
JIS K-5400 8.5.2(1990)
試験板の塗膜表面にカッターナイフで素地面に到達するように、切り傷を碁盤目状につける。縦横11本ずつの平行な直線を2mm間隔で引き、2×2mmのます目を100個作成する。この塗装面にセロハン粘着テープをはり、セロハン粘着テープを急に剥がした後の塗装面を目視によって観察し、下記基準で判定した。
○:塗膜の剥離が全くない。
△:ますめが50以上残存している。
×:多く剥離し、ますめの残存数が50未満。
[耐ブロッキング性]
2枚の試験板を用意して、一方の塗装面と他方の未塗装面との間にティシュペーパーをはさんで、1セットとし、温度60℃、荷重3kg/cmの条件で1時間密着させた後、ティシュペーパーの塗装面からの剥がし易さを評価した。
○:ティシュペーパーが塗装面に全くくっつかず板が容易にとれる。
△:ティシュペーパーが塗装面に僅かにくっついているが、ティシュペーパーが容易にとれる。
×:ティシュペーパーが塗装面に強くくっつき、ティシュペーパーがなかなかとれない。
【0052】
[表6、表7について]
(1)塗膜外観について
実施例の番号4、5は有機微粒子の添加量が他の実施例に比べ若干多い為、塗膜外観は○であるが実用レベルである。
比較例の番号4は有機微粒子径が大きいため塗膜外観が悪い。
比較例の番号5は有機微粒子の添加量が多い為、塗膜外観が悪い。
比較例の番号6はワックスの添加量が多い為、塗膜外観が悪くなる。
(2)折り曲げ性について
実施例の番号7、8はポリエステル樹脂のTgが若干高い為、2Tとなっている。
比較例の番号1はポリエステル樹脂のTgが高く、折り曲げ性が悪い。
比較例の番号7は硬化触媒の添加量が多い為、硬化が促進され、折り曲げ性が悪い。
比較例の番号8は、無機微粒子を添加しているため、折り曲げ性が悪い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(A)と硬化剤(B)とを含有し、その配合比率が固形分の質量比で(A)/(B)が50/50〜95/5の範囲であり、(A)と(B)の合計100質量部に対して、平均粒子径が0.1〜10μmの有機高分子微粒子(C)を0.005〜1質量部含有する塗料組成物。
【請求項2】
前記のポリエステル樹脂(A)の数平均分子量が300〜30000、ガラス転移温度が−10〜60℃及び水酸基価が2〜100mgKOH/gである請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記の硬化剤(B)が、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂及びフェノール樹脂から成る群から選ばれる一つ以上である請求項1に記載の塗料組成物
【請求項4】
前記の有機高分子微粒子(C)の材質が、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、尿素・ホルムアルデヒド縮合物及びポリメタクリル酸メチル系架橋物から成る群から選ばれる一つ以上である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項5】
滑剤を含有し、その含有量が前記のポリエステル樹脂(A)と前記の硬化剤(B)成分との合計100質量部に対して、0.05〜4質量部の範囲である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項6】
硬化触媒の含有量が前記のポリエステル樹脂(A)と前記の硬化剤(B)との合計100質量部に対して0.01〜3質量部の範囲である請求項1に記載の塗料組成物。

【公開番号】特開2006−16485(P2006−16485A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195435(P2004−195435)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】