説明

塗料組成物

本発明は、少なくとも1種の結合剤及び少なくとも1種の硬化剤を含有する塗料組成物に関する。この硬化剤は、脂肪族ポリイソシアナート及びCH酸性化合物を含有する。この組成物は透明塗料での使用のために適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の結合剤及び少なくとも1種の硬化剤を含有する塗料組成物に関する。これはいわゆる二成分系塗料であり、この場合、結合剤成分と硬化剤成分とは適用の直前に初めて混合される。さらに、本発明は、透明塗料におけるこの塗料組成物の使用に関する。
【0002】
DE 27 23117 C2には、OHモノマー、アミノプラスト架橋剤及び「キャップされた」ジイソシアナート単位を含有する成分を有する一成分系焼き付け塗料が記載されている。この組成物を用いて、高い固体含有率を有する液状の焼き付け塗料が準備されるとされている。ブロックドイソシアナートを含有するこのような塗料は、良好な光沢特性及び硬度特性を有する。
【0003】
DE 23 42 603は、マロン酸エステル付加物の製造方法を記載していて、この場合、マロン酸エステルは脂肪族ビウレット化合物と反応させられる。この混合物は、通常の塗料溶剤で透明に希釈することができるという利点を有する。
【0004】
DE 25 50 156は、ブロックドイソシアナートを含有するポリイソシアナート混合物の製造方法を開示している。このような混合物は、ポリウレタン焼き付け塗料中で使用することができる。
【0005】
DE 24 36 872は、触媒量のアルコラートの存在でのマロン酸エステルとジイソシアナートとからの化合物の製造方法を記載している。この方法を用いて、特に塗料中に使用され、かつ良好に加工することができるキャップされたジイソシアナートが製造されるとされている。
【0006】
従って、先行技術から、CH酸性化合物でブロックされたポリイソシアナートを含有する塗料組成物は公知である。ポリイソシアナートとCH酸性化合物との間の反応のために、触媒として好ましくはアルコラート又はフェノラートが使用される。つまり、ポリイソシアナートのCH酸性化合物による成果のあるブロッキングのために常に強塩基が使用される。この反応は、高めた温度で、例えば80℃で実施される。
【0007】
先行技術は、もちろん、(ポリ)イソシアナートとCH酸性化合物との間の反応を行なうことなしに、CH酸性化合物の他に(ポリ)イソシアナートが存在する好ましい特性を有する塗料組成物を述べていない。
【0008】
本発明の課題は、ベース塗料に対する改善された相容性、改善された表面品質(概観)及び良好な硬度を有する塗料組成物を提供することである。
【0009】
上記課題は、独立請求項の技術的教示により解決される。好ましい実施態様は、従属請求項、明細書及び実施例に記載されている。
【0010】
意外にも、少なくとも1種の結合剤(a)及び少なくとも1種の硬化剤(b)を有する塗料組成物において、前記硬化剤が少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアナート(b1)及び少なくとも1種のCH酸性化合物(b2)との混合物からなるか又はこの混合物を含有することを特徴とする塗料組成物が、上記課題を解決することが見出された。
【0011】
(ポリ)イソシアナートとCH酸性化合物との間の反応は、この場合、望ましくなく、可能であれば避けることが好ましい。このことは、塩基性触媒の不在により及び90℃を超える温度の回避により達成することができる。
【0012】
本発明による塗料組成物の成分(a)として、結合剤が使用される。適切な結合剤は、硬化剤混合物のNCO基と反応する。結合剤として、特に、OH基を有する全ての樹脂、例えばポリエステル−ポリオール、ポリエーテル−ポリオール、(メタ)アクリラートポリオール又はこれらの混合物が適している。
【0013】
本発明による硬化剤(b)は、ポリイソシアナート(b1)及びCH酸性化合物(b2)を含有する。CH酸性化合物とは、塩基性の特性を有しないが、塩基の存在で脱プロトンされうる化合物であると解釈される(共同著者、"Organikum", Deutscher Verlag der Wissenschaften, 1990, p. 442 ff.参照)。
【0014】
ポリイソシアナート(b1)として、1分子当たり少なくとも2個のNCO基を有する脂肪族の及び環式脂肪族のポリイソシアナートが使用される。好ましくは、ジイソシアナート、例えば3−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシル−イソシアナート(IPDI)及びヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)が使用される。IPDI及びHDIの構造式は下記に示されている。
【0015】
【化1】

【0016】
ポリイソシアナートの誘導体、例えばイソシアヌラートをベースとする、1つ又は複数の脂肪族ポリイソシアナートのオリゴマー又はポリマーの誘導体、好ましくはイソシアヌラートをベースとする、ヘキサメチレンジイソシアナート及び/又はイソホロンジイソシアナートのオリゴマー又はポリマーの誘導体を使用することもできる。
【0017】
このCH酸性化合物(b2)は、β−ジカルボニル化合物のグループから選択することができる。例えば、この化合物のグループについての限定ではないが、アセチルアセトン、エチルアセトアセタート、マロン酸及びその誘導体、メチル−2−シアノアセタート、エチル−3−オキソブタノアート及びプロパンジニトリルが挙げられる。これらの化合物のpKs値は、5〜15の範囲内、特に好ましくは9〜13の範囲内にある(このためにK. P. C. Vollhardt著, Organische Chemie, VCH-Verlag, 1990, p. 1038中の物質のリストも参照)。本発明の範囲内で好ましい化合物は、特にマロン酸の誘導体、例えばジメチルマロナート、ジエチルマロナート及びエチルアセトアセタートである。
【0018】
この少なくとも1種のCH酸性化合物(b2)は、90〜400g/mol、好ましくは90〜200g/mol、特に好ましくは120〜200g/molの分子量を有する。
【0019】
結合剤の反応性の基対ポリイソシアナートの反応性の基とのモル比は、0.9:1〜1:0.9である。塗料組成物の硬化の際に全ての反応性の基のできる限り完全な反応を達成するために、1:1のモル比が特に好ましい。
【0020】
成分(b1)と(b2)との質量割合の比率は、(b1):(b2)=15:1〜(b1):(b2)=1.5:1、好ましくは(b1):(b2)=12:1〜(b1):(b2)=2:1である。
【0021】
この組成物は、他の成分(c)として、さらに少なくとも1種のポリマーのアミンを含有することができる。ポリマーのアミンとは、分子量のMw(Mw=質量平均)として測定して、1000g/mol〜50000g/molのモル質量を有するアミンであると解釈される。このポリマーのアミンのモル質量は、好ましくは、1000g/mol〜30000g/mol及び、特に好ましくは1000g/mol〜20000g/molである。
【0022】
この質量平均分子量の計算のために、GPCを用いて:B. Tierke著, Makromolekulare Chemie, VCH-Verlag, Weinheim, 1997, S.206 ff.が参照される。この分子量は、慣用の文献では、主に1つの分子からなりかつ分子量分布を有しない物質について調査することができる。モル質量分布を有する物質の場合には、分子量の質量平均、Mwを、静的光散乱法を用いて測定され、分子量として考慮される(これについて"Die Grundlagen der statischen Lichtstreuung", M. D. Lechner, K. Gehrke, E. H. Nordmeier著, "Makromolekulare Chemie", Birkhaeuser Verlag, 1993, p. 208 ffを参照)。両親媒性の特性を有するポリマーのアミンを使用するのが好ましい。
【0023】
このポリマーのアミン(c)は、好ましくは脂肪酸基、シロキサン基又はポリシロキサン基又はポリオレフィン基を含有する。このアミンは、シロキサン基又はポリシロキサン基を含有するのが特に好ましい。
【0024】
ポリマーのアミンのアミン価は、2mg KOH/g〜40mg KOH/g、好ましくは4mg KOH/g〜30mg KOH/g、特に好ましくは5mg KOH/g〜30mg KOH/gである。
【0025】
アミン価の定義及び計算のために、ここでは、Th. Brock, M. Groteklaes, P. Mischke著, "Lehrbuch der Lacktechnologie", Vincentz Verlag, p. 78を参照する。アミン価の決定は、DIN 53176に従って、電位差滴定を用いて決定される。
【0026】
このアミン(c)は、塗料組成物中で、硬化剤の全体の調製物に対して、好ましくは1〜4質量%、特に好ましくは1.5〜2.5質量%で含有される。
【0027】
本発明による塗料組成物は、好ましくは透明塗料中で使用される。この透明塗料は、硬化可能な透明塗料である。
【0028】
本発明による塗料組成物を含有する透明塗料は、熱により又は熱により及び化学線により硬化可能である。この場合、熱により又は熱により及び化学線により行われる硬化は、物理的硬化によって促進することができる。
【0029】
本発明の範囲内で、「物理的硬化」の概念は、ポリマー溶液又は分散液からの溶剤の放出による塗膜の形成を意味する。このために、通常では、架橋剤は必要ない。場合により、この物理的硬化は、空気酸素により又は化学線の照射により促進させることができる。
【0030】
本発明による範囲内で、「熱による硬化」の概念は、通常では別個に存在する架橋剤が適用された被覆材料からなる層の、熱を用いて開始される硬化を意味する。この架橋剤は、ポリウレタン中に存在する反応性官能基と相補的である反応性官能基を含有する。通常では、これは、専門分野から外部架橋として表される。すでに相補的な反応性官能基又は自己反応性官能基、つまり「自分自身と」反応する基が、ポリウレタン中に存在する場合には、このポリウレタン自体が架橋性である。適切な相補的な反応性官能基及び自己反応性官能基の例は、ドイツ国特許出願DE 199 30 665 A1、第7頁、28行〜第9頁、24行から公知である。
【0031】
本発明の範囲内で、化学線とは、電磁線、例えば近赤外線(NIR)、可視光線、UV線、X線又はγ線、特にUV線、及び粒子線、例えば電子線、β線、α線、陽子線又は中性子線、特に電子線であると解釈される。UV線による硬化は、通常ではラジカル性又はカチオン性の光開始剤により開始される。
【0032】
本発明による被覆材料の場合に熱による硬化と化学線による硬化とを一緒に適用する場合に、「デュアルキュア」とも言われる。
【0033】
本発明の組成物を含有する透明塗料は、自動車ボディ又は自動車ボディ部分の塗装のために特に適している。
【0034】
本発明を、次に実施例を用いて詳説する。
【0035】
実施例
実施例1
硬化剤H−1の製造
まず、撹拌機を備えた反応器を窒素ガスでパージした。その後に、ヘキサメチレンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナート1209.9質量部と、ジエチルマロナート259.5質量部を添加した。室温で20分間撹拌した後に、ポリアミン付加物31.5質量部を添加し、室温でさらに20分間撹拌した。
生じた硬化剤の固体含有率は、17.8%のNCO割合で、81.2%であった。
【0036】
実施例2
硬化剤H−2の製造
まず、撹拌機を備えた反応器を窒素ガスでパージした。その後に、ヘキサメチレンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナート1162.3質量部、ジエチルマロナート108.9質量部、芳香族溶剤114.4質量部及び酢酸ブチル114.4質量部を添加した。この混合物を室温で20分間撹拌した。
生じた硬化剤の固体含有率は、17.1%のNCO割合で、77.5%であった。
【0037】
実施例3
硬化剤H−3の製造
まず、撹拌機を備えた反応器を窒素ガスでパージした。その後に、ヘキサメチレンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナート1138.1質量部、ジエチルマロナート213.3質量部、芳香族溶剤74.3質量部及び酢酸ブチル74.3質量部を添加した。この混合物を室温で20分間撹拌した。
生じた硬化剤の固体含有率は、16.8%のNCO割合で、75.9%であった。
【0038】
実施例4
硬化剤H−4の製造
まず、撹拌機を備えた反応器を窒素ガスでパージした。その後に、ヘキサメチレンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナート1091.1質量部と、ジエチルマロナート408.9質量部を添加した。この混合物を室温で20分間撹拌した。
生じた硬化剤の固体含有率は、16.1%のNCO割合で、72.7%であった。
【0039】
実施例5
硬化剤H−5の製造
まず、撹拌機を備えた反応器を窒素ガスでパージした。その後に、ヘキサメチレンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナート1209.0質量部、ジエチルマロナート226.5質量部及びアセトニトリル64.5質量部を添加した。この混合物を室温で20分間撹拌した。
生じた硬化剤の固体含有率は、17.8%のNCO割合で、80.6%であった。
【0040】
実施例6
硬化剤H−6の製造
まず、撹拌機を備えた反応器を窒素ガスでパージした。その後に、イソホロンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナート278.3質量部及びジエチルマロナート290.6質量部を添加し、室温で6時間撹拌してポリイソシアナートを溶解させた。その後で、ヘキサメチレンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナート834.3質量部及びアセトニトリル96.9質量部を添加し、室温で20分間撹拌した。
生じた硬化剤の固体含有率は、15.5%のNCO割合で、74.2%であった。
【0041】
実施例7
比較例1−硬化剤H−7の製造
まず、撹拌機を備えた反応器を窒素ガスでパージした。その後に、ヘキサメチレンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナート1209.0質量部、芳香族溶剤145.5質量部及び酢酸ブチル145.5部を添加し、室温で20分間撹拌した。
生じた硬化剤の固体含有率は、17.8%のNCO割合で、80.6%であった。
【0042】
実施例8
比較例2−硬化剤H−8の製造
まず、撹拌機を備えた反応器を窒素ガスでパージした。その後に、イソホロンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナート879.0質量部、芳香族溶剤310.5質量部、酢酸ブチル310.5質量部を添加した。この反応混合物を120℃に加熱し、イソホロンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナートを溶解させた。その後で、このバッチを室温に冷却し、さらに20分間撹拌した。
生じた硬化剤の固体含有率は、10.0%のNCO割合で、58.6%であった。
【0043】
実施例9
比較例3−硬化剤H−9の製造
まず、撹拌機を備えた反応器を窒素ガスでパージした。その後に、ヘキサメチレンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナート831.0質量部、イソホロンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナート207.0質量部、芳香族溶剤231.0質量部及び酢酸ブチル231.0質量部を添加し、この反応混合物を120℃に加熱し、イソホロンジイソシアナートをベースとするポリイソシアナートを溶解させた。その後で、このバッチを室温に冷却し、さらに20分間撹拌した。
生じた硬化剤の固体含有率は、14.6%のNCO割合で、69.2%であった。
【0044】
ポリアクリラート−ポリオールPA−1の製造
まず、冷却器を備えた反応器を窒素ガスでパージした。その後に、芳香族溶剤720.9質量部を撹拌しながら140℃に加熱した。
【0045】
並行して2つの別個のバッチを製造した。バッチ1は、スチレン230.1質量部、ブチルメタクリラート613.5質量部及び4−ヒドロキシブチルアクリラート690.2質量部を含有していた。バッチ2は、芳香族溶剤92.0質量部及びTBPEH153.4質量部を含有していた。
【0046】
140℃の温度に達成した際に、バッチ2をゆっくりとかつ285分間に均一に溶剤を含む反応器中に注ぎ込んだ。バッチ2を添加して15分後に、バッチ1を240分間に均一に添加した。このバッチ2の添加が完了後に、後重合の目的でこの反応混合物をさらに120分間140℃で撹拌した。生じた生成物の固体含有率は、61%を、OH価は175mg KOH/g(固体に基づく)を、粘度は23℃で14dPa・sを測定することができた。
【0047】
ポリアクリラート−ポリオールPA−2及びPA−3の製造
PA−2及びPA−3の製造は、PA−1の手法に従って行った。出発材料を適合させただけである:
【表1】

【0048】
PA−2の固体割合は65.0%であり、酸価は7.8mg KOH/gであり、OH価は175mg KOH/g(酸価及びOH価は固体に関している)、粘度は23℃で25dPa・sであった。
【0049】
PA−3の固体割合は64.0%であり、酸価は7.8mg KOH/gであり、OH価は203mg KOH/g(酸価及びOH価は固体に関している)、粘度は23℃で18dPa・sであった。
【0050】
SCA樹脂の製造
SCA樹脂は流れ抵抗性を有する。SCAは、垂れ調節剤を表す。
【0051】
加熱ジャケット、温度計、撹拌機及び載置された冷却器を備えた10LのJuvo反応容器に、芳香族溶剤1512.5gを添加した。撹拌しながら、かつ保護ガス雰囲気(窒素200cm3/min)下で、この芳香族溶剤を加圧(最大3.5bar)下で160℃で加熱した。計量ポンプを用いて、ジ−tert−ブチルペルオキシド80.5g及び芳香族溶剤201.0gからなる混合物を4.75時間内に均一にかつ少しずつ添加した。添加を開始して0.25時間後に、計量ポンプを用いて、スチレン1283.5g、n−ブチルアクリラート1115.0g、ヒドロキシエチルアクリラート693.5g、メタクリル酸70.5g及びドデシルメタクリラート43.5g(Roehm Methacrylate / Evonik社の"Methacrylsaeureester 13(メタクリル酸エステル13)"の商品名で市販)を4時間内に均一に添加した。添加の完了後に、この温度をさらに2時間保持し、次いでこの生成物を60℃に冷却し、5μmGAFバッグを通して濾過した。この生じた樹脂は、15mg KOH/gの酸価(DIN 53402による)、65%±1の固体含有率(60分、130℃)及びDIN ISO 2884-1による試験規定により測定して5.0dPa・s(ソルベントナフサ中55%)の粘度を有していた。
【0052】
尿素沈殿:1Lの反応器に樹脂溶液84.7gを充填し、酢酸ブチル5.88gで希釈した。その後で、ベンジルアミン2.24gを添加し、この混合物を30分間撹拌した。この時間の後に、高い剪断力をかけてヘキサメチレンジイソシアナート1.76g及び酢酸ブチル3.42gの混合物を、40℃の反応温度を超えないように添加した。この得られた混合物は、>800mPasの粘度(10s-1)(Z3)(DIN ISO 2884-1)及び58.6〜59.6%の固体含有率(60分、130℃)を有していた。
【0053】
チキソトロピーペーストの製造
加熱ジャケット、温度計、撹拌機及び載置された冷却器を備えた10LのJuvo反応容器に、芳香族溶剤3166.1gを添加した。保護ガス雰囲気(窒素200cm3/分)下で、撹拌しかつ156℃に加熱しながら、ジ−tert−ブチルペルオキシド155.9g及び芳香族溶剤297.4gからなる混合物を、滴下漏斗を介して4.75時間内で均一に少しずつ添加した。0.25時間の添加の後に、滴下漏斗を介してスチレン829.5g、n−ブチルアクリラート2041.8g、n−ブチルメタクリラート893g、ヒドロキシエチルアクリラート1276.1g、アクリル酸63.8g及び4−ヒドロキシブチルアクリラート1276.1gの混合物を4時間にわたり均一に滴加した。添加の完了後に、この温度をさらに2時間保持し、次いでこの生成物を80℃に冷却し、5μmGAFバッグを通して濾過した。この結果として生じる樹脂は、10mg KOH/g(DIN 53402)の酸価、固体含有率65%±1(60分、130℃)及びDIN ISO 2884-1により測定して20.0dPa・sの粘度を有していた。
【0054】
1Lの反応器に樹脂溶液43.8gを添加し、この樹脂溶液をキシレン24.7g及びブタノール23.4gを希釈した。10分後に、アエロジルR812(Aerosil R812)11.1gを、剪断力を使用して添加し、この混合物をさらに30分間剪断力をかけた。得られた混合物は、130mPa・sの粘度(10s-1)(Z3)(DIN ISO 2884-1)を有していた。
【0055】
透明塗料組成物CC−1〜CC−9
成分1
2成分透明塗料の第1の成分を提供するために、次のバッチを準備した。
【0056】
【表2】

【0057】
成分2
第2の成分として、実施例1〜9により合成された硬化剤H1〜H9を、第1の成分と組み合わせて、下記の表による透明塗料CC1−CC9にした。
【0058】
【表3】

【0059】
この場合、成分1それぞれ100質量部を、上記の表に記載された質量部の成分2と均質化し、引き続き、基材上に最上層の透明塗料層として塗布することを行った。
【0060】
本発明による組成物の特性を、その視覚的な表面品質(概観)及び硬化特性に関して試験した。このために、金属試験プレートを、まず市販の陰極電気メッキされ、次いで熱により硬化させた塗料を被覆した。この上に、市販のプライマーを塗布し、熱的に硬化させた。BASF Coatings AGの市販の黒色ベース塗料を、プライマー上に塗布し、80℃で10分間排気した。本発明による透明塗料をその上に塗布し、このベース塗料と一緒に140℃で22分間硬化させた。この生じたベース塗料は7.5μmの層厚を有し、生じた透明塗料は約35μmの層厚を有していた。層厚の測定は、この場合、ElektroPhysik社のMiniTest 4100-装置を用いて行った。塗装された鋼基材の測定を、DIN 50981に準拠する磁気誘導法によって行った。この試験プレートを、その表面品質及び硬度に関して試験した。
【0061】
透明塗料CC−1〜CC−6の透明塗料特性
【表4】

1 硬化した塗料の視覚的点検により測定:0=平坦でない表面、悪い視覚的表面品質;1=極めてマットな表面、悪い視覚的表面品質;2=平滑な表面、極めて良好な視覚的表面品質
2 BYK-Chemie社のWavescan-DOI-装置を用いた測定
3 DIN EN ISO 14577と同じ測定。Fischer Messtechnik社のFischerscope-装置を25.6mNの極限力で使用した
4 DIN 67530により20°の配置で測定
【0062】
透明塗料CC−7〜CC−9の透明塗料特性
【表5】

1 硬化した塗料の視覚的点検により測定:0=平坦でない表面、悪い視覚的表面品質;1=極めてマットな表面、悪い視覚的表面品質;2=平滑な表面、極めて良好な視覚的表面品質
2 BYK-Chemie社のWavescan-DOI-装置を用いた測定
3 DIN EN ISO 14577と同じ測定。Fischer Messtechnik社のFischerscope-装置を25.6mNの極限力で使用した
4 DIN 67530により20°の配置で測定。
【0063】
本発明による透明塗料CC1〜CC6は優れた光沢を示し、極めて良好な硬度特性を有する。比較塗料CC7〜CC9は、不十分な光沢を有するだけであり、この光沢は近年の透明塗料の要求を満たさない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のOH基を有する結合剤(a)及び
少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアナート(b1)を有する少なくとも1種の硬化剤(b)
を有する塗料組成物において、前記結合剤成分(a)及び/又は硬化剤成分(b)は少なくとも1種のCH酸性化合物(b2)を含有することを特徴とする、塗料組成物。
【請求項2】
前記硬化剤は、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアナート(b1)及び少なくとも1種のCH酸性化合物の混合物からなるか又は前記混合物を含有することを特徴とする、請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記硬化剤は、他の成分(c)として少なくとも1種のポリマーのアミンを含有する、請求項1又は2記載の塗料組成物。
【請求項4】
成分(c)の割合は、前記硬化剤の全調製物に対して、1〜4質量%、好ましくは1.5〜2.5質量%であることを特徴とする、請求項3記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記結合剤の反応性のOH基対前記ポリイソシアナートのブロックされていない反応性のNCO基のモル比は、0.1:1〜1:0.9であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記成分(b1)と(b2)との質量割合の比率は、(b1):(b2)=15:1〜(b1):(b2)=1.5:1、好ましくは(b1):(b2)=12:1〜(b1):(b2)=2:1であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアナートは、イソシアヌラートをベースとする、1種又は数種の脂肪族ポリイソシアナートのオリゴマー又はポリマーの誘導体、好ましくは、イソシアヌラートをベースとする、ヘキサメチレンジイソシアナート及び/又はイソホロンジイソシアナートのオリゴマー又はポリマーの誘導体であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のCH酸性化合物(b2)は、90〜400g/mol、好ましくは90〜200g/mol、特に好ましくは120〜200g/molの分子量を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のCH酸性化合物(b2)は、ベータ−ジカルボニル化合物のグループから選択されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種のポリマーのアミン(c)は、1000−50000g/mol、好ましくは1000−30000g/mol、特に好ましくは1000−20000g/molの分子量Mwを有することを特徴とする、請求項3から9までのいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のポリマーのアミン(c)は、2〜40mg KOH/g、好ましくは4〜30mg KOH/g、特に好ましくは5〜30mg KOH/gのアミン価を有することを特徴とする、請求項3から10までのいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項12】
透明塗料中での、請求項1から11までのいずれか1項記載の塗料組成物の使用。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の塗料組成物により得られる透明塗料。
【請求項14】
前記透明塗料は、熱により硬化可能な透明塗料であるか、又は熱により及び化学線により硬化可能な透明塗料であることを特徴とする、請求項13記載の透明塗料。
【請求項15】
前記透明塗料は、2成分透明塗料又は多成分透明塗料であることを特徴とする、請求項13及び14までのいずれか1項記載の透明塗料。
【請求項16】
自動車ボディ又は自動車ボディ部分の塗装のための、請求項13から15までのいずれか1項記載の透明塗料の使用。
【請求項17】
請求項13から15までのいずれか1項記載の透明塗料からなる被覆が設けられている、自動車ボディ又は自動車ボディ部分。

【公表番号】特表2012−514054(P2012−514054A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542718(P2011−542718)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009254
【国際公開番号】WO2010/072412
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】