説明

塗液供給用容器および塗液供給方法。

【課題】容器内の塗液の液面を容器外から非接触で測定するに際し、センサ窓への外乱光などの余分な光の入射を防ぐため測定精度に優れ、光学式センサを移動させて塗液の液面を測定する場合において生じる測定誤差の発生の問題がなく、塗液の液面を正確に測定することができる。また、容器が複数用意されても容器が交換される際には、常に容器内の塗液の無駄または損失を最小限とすることができる塗液供給用容器および塗液供給方法を提供する。
【解決手段】塗液を収容する塗液収容部と、該塗液収容部の外部に光学式センサを取り付けるための光学式センサ取り付け部を有し、該塗液収容部上部には該光学式センサから発せられる出射光、および前記塗液の液面からの反射光を透過するセンサ窓を有する塗液供給用容器であって、該光学式センサ取り付け部は該センサ窓を覆う形状であるとともに、該塗液収容部が該光学式センサの高さを調整可能とする高さ調整手段を有する塗液供給用容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト等の塗液を供給する塗液供給用容器および塗液供給方法に係り、特に複数用意されて交換される容器の塗液の液面を容器外から非接触で測定するための塗液供給用容器および塗液供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略称することもある)の製造工程において塗液として使用されるペーストは一般的に高価である。このペーストは比較的小容量の複数の容器に収容してペースト充填室からペースト消費室に運搬されていた。ペースト消費室では、容器内のペースト残量を管理しながら所定箇所に供給して、予め定められた境界液位に達したら容器が交換されていた。所定箇所に供給されたペーストは、塗布装置によって被塗布部材へ塗布される。近年、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略称することもある)の生産量が増えるとともにペースト使用量が多くなり、流通システムの合理化や容器の交換頻度を下げて生産性を向上する上で、従来の小容量より大きい容量を有するペースト供給用容器の使用が考えられている。容器に収容されるペーストは高価であることから、容器が交換される際には、容器内のペースト不使用量を低減し、ペーストの無駄または損失を最小限とすることが強く望まれている。それゆえ、容器が複数用意されても容器ごとの個体間差の影響を受けることなく、常にペーストの無駄または損失を最小限とするペースト残量で容器が交換されるのが望ましい。
【0003】
従来、この種の残量検出方法には、たとえば、ペーストを収容した容器をロードセル等が用いられて構成された重量計に載せて、ペーストの減量に伴う重量変化によるロードセルの信号変化を検出して容器を交換するものであった。しかし、大きい容量を有するペースト供給用容器を重量計に載せる場合、ペーストが収容されていない容器重量、いわゆる風袋重量がペースト供給用容器ごとに異なり、風袋重量の管理が容易ではないため、精度よく予め定められた重量変化でペースト供給用容器を交換することが困難であった。
【0004】
そこで、たとえば、光センサを用いて容器内の液面高さを非接触でかつ直接に測定して液体の残量を検知する方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、別の従来技術として、たとえば、溶湯保持炉に設けられたセンサ用窓を介して、炉外から光学式センサで炉内の一定距離以内にある溶湯表面の存在を検出するとともに、光学式センサの高さ位置を位置検出センサにて検出して、光学式センサ及び位置検出センサの検出結果に基づいてコントローラにより溶湯レベルを算出する方法が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平6−315662号公報
【特許文献2】特開2006−112954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の特許文献1による残量検出方法では、キャップに設けられている光センサでシリンジ内の液面高さを検知する構成を有しているため、シリンジが交換される際は、キャップとシリンジが開放されシリンジは取り外される。その後、新しいシリンジが取り付けられる。このため、シリンジ内に空気や異物が侵入し、液体の品質を悪化させる不具合があった。
【0007】
また、特許文献2の技術においては、溶湯保持炉蓋にはロッドを上下に移動させるアクチュエータが設けられており、そのロッドより横方向へ突設されたアームには、一定距離以内にある物体の存在を検知できる光学式センサが固定されている。ロッドがいっぱいに伸長されて、光学式センサが最も高い位置にセットされた状態を基準として計測される。この基準の位置にある光学式センサが溶湯表面を検出するまでアクチュエータを駆動し、光学式センサと溶湯表面との距離が、光学式センサが検出可能な一定距離にまで縮まって、光学式センサが溶湯表面を検出すると、アクチュエータの駆動が停止される。そして、コントローラは、アクチュエータの駆動開始から停止までの間における移動量を計算し、この移動量を基に溶湯レベルが算出されるものである。この構成によれば、ロッドが上下方向に移動することで光学式センサが溶湯表面を検出するため、溶湯保持炉内の全域を検出するには、溶湯保持炉内の全域をカバーできるロッドのストロークが必要となり、溶湯レベル測定装置の大型化や設置スペースの拡大につながる。また、精度よく溶湯レベルを算出するには、光学式センサが溶湯表面を検出した位置でアクチュエータの駆動を停止させる必要がある。ロッドの移動速度が速い場合、光学式センサが溶湯表面を検出する位置にある程度のバラツキが発生し、それにより光学式センサが溶湯表面を検出した位置と実際の溶湯表面に誤差が生じる。結果として溶湯レベルを正確に測定することが困難である。ロッドの移動速度が遅い場合、溶湯表面の検出に時間がかかる不具合がある。また、センサ用窓に外乱光などの余分な光が入射すると溶湯表面の測定に誤差が生じることがある。
【0008】
本発明は、係る従来の不具合を解決するためになされたもので、ペーストなどの塗液を収容する塗液供給用容器内の塗液の液面を容器外から非接触で測定するに際し、センサ窓に外乱光などの余分な光の入射を防ぐため測定精度に優れ、光学式センサを移動させて塗液の液面を測定する場合において生じるような測定誤差の発生の問題がなく、塗液の液面を正確に測定することができる。また、センサ窓への光学式センサの取り付けが簡単であるため短時間で塗液の液面の測定の再開が可能となる。また、光学式センサ取り付け部の構成が簡易であり、従来構成と比較してコンパクトに構成でき、設置スペースの縮小化が図られる。また、容器が複数用意されても容器が交換される際には、常に容器内の塗液の無駄または損失を最小限とすることができる塗液供給用容器および塗液供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、塗液を収容する塗液収容部と、該塗液収容部の外部に光学式センサを取り付けるための光学式センサ取り付け部を有し、該塗液収容部上部には該光学式センサから発せられる出射光、および前記塗液の液面からの反射光を透過するセンサ窓を有する塗液供給用容器であって、該光学式センサ取り付け部は該センサ窓を覆う形状であり、該塗液収容部が該光学式センサの高さを調整可能とする高さ調整手段を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記光学式センサ取り付け部が前記センサ窓に装着されている際に検知信号を出力する装着センサを有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記塗液収容部下部が傾斜部と液だめ部を有し、前記光学式センサが、該塗液収容部内に塗液が収容されていない時に該傾斜部と該液だめ部の境界部近傍の塗液収容部内壁の高さを測定するよう配されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の塗液供給用容器を用いた塗液供給方法であって、複数の塗液供給容器について、それぞれ前記塗液収容部内に塗液が収容されていない状態で予め該塗液収容部内の前記傾斜部と前記液だめ部の境界部近傍までの高さを測定し、その測定結果が全ての塗液供給用容器において略一定となるように各塗液供給用容器の高さ調整手段を調整することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項2記載の塗液供給用容器を用い、前記装着センサからの検知信号が認識され、かつ前記光学式センサにより測定した塗液の液面高さが予め設定されている最低液位と最高液位との間の液位許容範囲内である場合は前記塗液供給用容器から塗液を取り出すことを許可し、前記検知信号が認識されないか、または前記光学式センサで測定した塗液の液面高さが前記液位許容範囲外である場合は前記塗液供給用容器から塗液を取り出すことを許可しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容器内の塗液の液面を容器外から非接触で測定するに際し、センサ窓に外乱光などの余分な光の入射を防ぐため測定精度に優れ、光学式センサを移動させて塗液の液面を測定する場合において生じる測定誤差の発生の問題がなく、塗液の液面を正確に測定することができる。また、センサ窓への光学式センサの取り付けが簡単であるため短時間で塗液の液面の測定の再開が可能となる。また、光学式センサ取り付け部の構成が簡易であり、従来構成と比較してコンパクトに構成でき、設置スペースの縮小化が図られる。また、容器が複数用意されても容器が交換される際には、常に容器内の塗液の無駄または損失を最小限とすることができる塗液供給用容器および塗液供給方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
【0016】
図1は本発明の塗液供給用容器の構成を断面で示す側面図であり、図2は塗液供給用容器の平面図、図3は塗液収容部に設けられたセンサ窓の構成を示す平面図、図4は図3を断面で示す側面図である。この塗液供給用容器は、塗液収容部1を備えており、この塗液収容部1は塗液4を収容するインナー容器1bとインナー容器1bを収容するアウター容器1aとを有し、前記アウター容器1aの裏周面と前記インナー容器1bの表周面との間に僅かな空間を有しており、この空間により前記インナー容器1bが前記アウター容器1aに収容可能となる。前記インナー容器1bは運搬および保管する都合上、前記アウター容器1aに収容された状態で自立が可能でガタツキがないことが好ましい。そのためには、前記インナー容器1bの厚みが1mm以上であることが好ましい。前記インナー容器1bの材質は、成形が容易で、耐薬液性が高く安価であることから、ポリエチレン製やポリプロピレン製であることが好ましい。また、前記インナー容器1bの形状は円を基本(円柱、円錐、半球)とした形状が組み合わされており、下部側が傾斜部と液だめ部を有し、傾斜部は下部になるにつれて次第に縮径され、その下端部は液だめ部が設けられている。傾斜部が直線の場合、その直線の下端と液だめ部最上端の交差部から水平方向に伸びた線と前記直線とがなす角度は好ましくは15〜60°、より好ましくは30〜45°である。また、傾斜部が曲線の場合、底部が曲面を有し液だめ部最上端と接合される。また、液だめ部はわずかな部分、例えば液だめ部最上端径がφ100mm以下、液だめ部最上端からの深さが120mm以下が適当である。また、前記アウター容器1aの形状は前記インナー容器1bと同様の形状を有するが下端部は開放が可能となっている。また、前記インナー容器1bと前記アウター容器1aは上側を開放とする容器形状とされており、その開放を閉じる蓋2が塗液収容部1に設けられている。また、前記アウター容器1aの頂端には環状溝(図示しない)を有し、前記環状溝のなかには前記蓋2が被さった際の気密性を維持するためのパッキン(図示しない)が嵌め込んでおり、前記アウター容器1aの頂縁には放射状を呈し等距離を置いた複数のノッチ(図示しない)が配設されており、各ノッチ(図示しない)の下にはそれぞれスイングボルト5が設けられている。前記蓋2の周縁には前記アウター容器1aのノッチ(図示しない)と対応した多数のノッチ(図示しない)が配設されており、該ノッチ(図示しない)は前記アウター容器1aのスイングボルト5と対応し、該スイングボルト5を締め付けると、前記蓋2が前記アウター容器1aに固定される。
【0017】
前記蓋2には、後述する光学式センサ20の下方となる位置に、上下方向に貫通孔(図示しない)が配設けられており、該貫通孔の上側開口部(図示しない)の上方には、センサ窓10が設けられている。該センサ窓10は、前記光学式センサ20から発せられる出射光(図示しない)、および前記塗液4の液面4aからの反射光(図示しない)が透過可能なように強化ガラスで構成されている。この強化ガラスは上側フランジ101と下側フランジ102により上下から挟み込んで固定される。前記下側フランジ102は筒体とされ、前記上側開口部(図示しない)を通して前記貫通孔の下側開口部(図示しない)まで挿入されて溶接固定される。そして、前記光学式センサ20は前記センサ窓10を透過した塗液の液面4aからの反射光(図示しない)を検出することで塗液の液面4aの存在を検出するようにしている。なお、前記インナー容器1b内に塗液が収容されていない時に前記光学式センサ20が該インナー容器1bの傾斜部と液だめ部の境界部近傍のインナー容器1bの内壁の高さを測定するよう前記貫通孔(図示しない)は前記蓋2内で予め配するのが好ましい。
【0018】
また、前記光学式センサ20は、前記インナー容器1bの液だめ部底部まで測定可能ないかなる光学式センサでもよいが、光学式センサを移動させることなく塗液の液面4aが測定でき、光学式センサ取り付け部の構成が簡易となるので、好ましくは長距離タイプのレーザ式変位センサがよい。また、前記下側フランジ102には、放射状を呈し等距離を置いた複数のタップ(図示しない)が配設されており、該複数のタップ(図示しない)と対応して、前記上側フランジ101には複数の貫通孔(図示しない)が設けられ、該複数の貫通孔(図示しない)に対応した数の固定ボルト13(図では6本)を用いて、前記上側フランジ101と前記下側フランジ102とを締め付けることで前記強化ガラスは固定される。前記固定ボルト13を締め付ける際は、トルクを管理しながら締め付けるのが、前記強化ガラスにひずみを与えにくいので好ましい。また、前記上側フランジ101と下側フランジ102で前記強化ガラスを挟み込んで固定した際の気密性を維持するためのパッキン(図示しない)が、前記上側フランジ101と前記強化ガラスの間、前記強化ガラスと前記下側フランジ102の間に設けられている。これにより、前記塗液収容部1内の空間は密閉された状態となり、大気中の異物などが塗液収容部1に侵入し塗液4の品質が悪化してしまうことがない。
【0019】
また、前記上側フランジ101の上面に前記光学式センサ20が装着された場合に、該光学式センサ20を前記塗液4の液面4aに対して略垂直方向に上下移動の調整を可能とする高さ調整機構12と、前記光学式センサ20を前記センサ窓10の周方向に対して位置規制させるための位置規制ピン11が、それぞれに放射状を呈し等距離を置いて複数配設されている。前記高さ調整機構12(図では3箇所)は、穴グリが施された基準ワッシャ12aと高さ調整代ワッシャ12bを重ねて、基準ワッシャ12a側から固定ボルト12cで固定することで形成される。また、前記位置規制ピン11(図では3本)は、穴グリが施されたピン11aを固定ボルト11bで固定することでなる。なお、前記位置規制ピン11の外径を1本変えることで誤差し防止が可能となるので好ましい。これにより、塗液供給容器が複数用意されてもそれぞれ前記インナー容器1b内に塗液が収容されていない状態で予め該インナー容器1b内の前記傾斜部と前記液だめ部の境界部近傍までの高さを前記光学式センサ20で測定し、その測定結果が全ての塗液供給容器において略一定となるよう各塗液供給用容器の高さ調整機構12を調整するようにしている。なお、前記インナー容器1b内の前記傾斜部と前記液だめ部の境界部近傍までの高さとは、好ましくは前記傾斜部と前記液だめ部の境界部近傍の前記インナー容器1bの内壁高さを示すがこれに限定されるものではなく、前記アウター容器1aの下端部を閉鎖してその内側に前記インナー容器1bの内壁高さと略同一高さの測定冶具を設置しその上面高さを測定しても構わない。また、前記光学式センサ20が前記インナー容器1bの塗液の液面4aの高さを測定する位置を再現性よく規制するようになされている。
【0020】
図5は図4のセンサ窓に光学式センサ取り付け部が装着されたときの構成を示した概略図である。図5において、前記高さ調整機構12の上面には、前記上側フランジ101、下側フランジ102の直径より僅かに大きい径を有した円筒の片側が閉鎖されて前記センサ窓10を覆う形状を有する光学式センサ取り付け部22が装着されている。この光学式センサ取り付け部22にはブラケット20aで固定(図示しない)された前記光学式センサ20と、前記光学式センサ取り付け部22がセンサ窓10に装着されている際に検知信号を出力する装着センサ21とが配設されている。そして、前記光学式センサ取り付け部22は前記センサ窓10に着脱自在とされるために光学式センサ取り付け部22の厚みが2mm以上で、ダストの発生しにくい材質、例えばステンレス等が好ましい。また、前記光学式センサ取り付け部22には、前記光学式センサ20から発せられる出射光および塗液の液面4aからの反射光が透過可能なように前記光学式センサ20の下部に図示しない貫通部と、前記位置規制ピン11が貫通できる貫通孔22aとが設けられている。この貫通孔22aは誤差し防止のため前記位置規制ピン11の外径と対応がなされている。前記貫通孔22aから突き出した前記位置規制ピン11の1本は前記装着センサ21によって検知される。これにより、前記センサ窓10に前記光学式センサ20が再現性よく簡単に取り付けられて、前記センサ窓10への外乱光などの余分な光が入射するのを防ぐようになされている。なお、前記光学式センサ取り付け部22は円筒の片側が閉鎖されて前記センサ窓10を覆う形状としたがこれに限定されるものではなく、前記センサ窓10を覆う形状を有するものならいかなるものでもよい。また、前記光学式センサ20と装着センサ21の出力信号は図示しない電気制御部に送信されている。これにより電気制御部は、前記光学式センサ20より塗液4の液面4aまでの高さを取得すると共に、前記光学式センサ取り付け部22が前記センサ窓10に装着されたことを認識する。そして、電気制御部は取得した高さに基づいて、塗液供給用容器から塗液4を取り出すことを許可するか否かを判定するようになされている。
【0021】
図1、および図2において、前記塗液収容部1には、さらに、前記塗液4を供給用配管3aにて取り出すための塗液取り出し口3と、塗液充填室において前記塗液収容部1に塗液4を収容するための塗液収容口32と、前記塗液収容部1を加圧するための加圧ポート31と、該加圧をモニターする圧力ゲージ34と、加圧した塗液収容部1内の圧力を大気圧近傍に戻すためのエアベントポート30と、オペレータが前記塗液収容部1内の様子を確認するとき用いるのぞき窓33、33aが配設されている。前記塗液取り出し口3は、前記供給用配管3aの一端をスウエジロックの袋ナット(図示しない)とサニタリークランプ(図示しない)で接続し、前記蓋2に設けられたサニタリークランプ(図示しない)とクランプ(図示しない)により接合固定される。該接合面には気密性を維持するためのパッキン(図示しない)が嵌め込まれている。また、前記供給用配管3aの他端は、前記インナー容器1bに設けられている液だめ部に浸漬される。なお、前記供給用配管3aは、前記インナー容器1bの内面形状に沿う形で前記インナー容器1bの液だめ部まで導かれるのが前記光学式センサ20の出射光(図示しない)、および前記塗液4の液面4aからの反射光を遮りにくいので好ましい。また、前記塗液収容部1の側面からは、この塗液収容部1を支える容器支え40(図では4本)が移動可能にキャスター42(図では4個)を配置された架台41に固定されている。また、前記アウター容器1aの下端部には前記アウター容器1aを洗浄したときの洗浄水の排水口6が設けられている。なお、前記インナー容器1bを用いることで、前記アウター容器1aを洗浄する頻度が低くなり、洗浄溶剤の使用量や廃液量が少なく済む。塗液供給用容器は、塗液や洗浄溶剤の影響を受けず、ダストの発生しにくい材質であることが好ましい(例えば、ステンレス等)。
【0022】
次に上記のように構成される塗液供給用容器の作用について説明する。塗液充填室において、塗液収容部内に塗液を収容して運用される前に、塗液供給用容器ごとの個体間差の影響をなくす。すなわち、塗液の液面を測定する光学式センサ20より塗液収容部内の予め定められた所定位置までの高さあわせを行う。
【0023】
まず、スイングボルト5を緩めて蓋2をアウター容器1aから開放し、アウター容器1aにインナー容器1bを収容する(ステップ1)。次に、蓋2を被せる(ステップ2)。スイングボルト5は締め付けない。これは、蓋2とアウター容器1aの接合面に嵌め込んでいるパッキンによる高さへの影響をなくすためである。ただし、塗液の液面を管理するときは、パッキンのつぶれ具合による容器ごとの高さバラツキが起こらないよう、事前にスイングボルト5の締め付けトルクを管理するのが好ましい。次に、センサ窓10に設けられている高さ調整機構12を基準ワッシャ12aのみの高さに調整する。このとき基準ワッシャ12aから固定ボルト12cの頭が出ていないこと(ステップ3)。次に、光学式センサ20が取り付けられ固定されている光学式センサ取り付け部22をセンサ窓10に装着する。光学式センサ20から発せられた出射光は、インナー容器1bの傾斜部と液だめ部の境界部近傍に出射される(ステップ4)。電気制御部は光学式センサ20より取得した高さ情報を図示しないモニター部に表示する。この値を記録する(ステップ5)。次に光学式センサ取り付け部22をセンサ窓10から取り外す(ステップ6)。そして、このステップ1からステップ6までの操作をすべての塗液供給用容器について順次行う。次に、ステップ5で記録した結果に基づいて高さの基準値Lxを求める(例えば、最も大きい値)。次に、この基準値Lxを逸脱している塗液供給用容器について、基準値Lxとの差をうめる高さ調整代ワッシャ12bを高さ調整機構12に加える。上述の操作によれば、複数用意された塗液供給用容器の高さあわせが行われ、以降、塗液供給用容器が交換されても、容器ごとの個体間差をキャンセルさせるための補正、すなわち境界液位や測定液位の始点の変更をすることなく塗液の液面の測定を行うことができる。また、光学式センサ20から発せられた出射光の位置をインナー容器1bの傾斜部と液だめ部の境界部近傍とすることで、インナー容器1bの液だめ部に浸漬されている供給用配管3aとの干渉を防ぐと共に、塗液の液面4aが降下しすぎて供給用配管3aより空気を噛みこむことを抑制して、常に塗液の無駄または損失を最小限とする塗液の液面4aの測定が可能となる。ところで、高さあわせで用いた塗液収容部1の蓋2とアウター容器1aの組み合わせは維持して運用するようにしている。最後にインナー容器1bをアウター容器1aから取り除く。
【0024】
塗液充填室では、高さあわせが行われた塗液供給用容器に対して、インナー容器1bと供給用配管3aがアウター容器1aに収容され、蓋2が固定される。そして、塗液収容口32から規定量の塗液4が収容される。その後、複数用意された塗液供給用容器は塗液消費室へと運搬される。塗液消費室では、塗液供給用容器に設けられた塗液取り出し口3のスウエジロックの袋ナット(図示しない)に塗液4を所定箇所に供給するための配管(図示しない)が接続される。なお、エアー抜き等は完了されている。また、塗液収容部1を加圧するための配管が加圧ポート31に接続(図示しない)される。
【0025】
次に、塗液供給用容器のセンサ窓10に光学式センサ取り付け部22を位置規制ピン11に従って装着する。電気制御部(図示しない)は、装着センサ21からの検知信号によって光学式センサ取り付け部22がセンサ窓10に装着されたことを認識する。そして、光学式センサ20より塗液4の液面4aの測定を開始する。光学式センサ20で測定した塗液の液面4aの高さが予め設定されている所定の最低液位と所定の最高液位との間の液位許容範囲内にあるかを判定する。なお、所定の最低液位は、先に行った塗液供給用容器の高さあわせで用いた基準値Lxの高さとされる。また、所定の最高液位は、塗液充填室で塗液収容部1に収容した規定量より換算して求めることができる。判定した結果が、液位許容範囲内である場合、塗液取り出し口3から塗液4を取り出すことを許可する。また、装着センサ21からの検知信号が認識されないか、または光学式センサ20で測定した塗液の液面4aの高さが液位許容範囲外である場合、塗液取り出し口3から塗液4を取り出すことを禁止する。そして、塗液4を所定箇所へ供給することが停止されるとともに、塗布装置の停止を促す信号が塗布装置に発せられるようになされている。なお、所定の最低液位より少し(例えば2mm)上昇側にアラームを発生させるためのアラーム液位が設けられていてオペレータに塗液供給用容器の交換が近いことを知らせる。また、最低液位より少し(例えば2mm)下降側に最下限液位が設けられており、この液位に達すると塗布装置を強制的に停止させるための信号が塗布装置に発せられる。また、電気制御部(図示しない)は、液面高さの判定を予め定められた周期毎に行っているのと、塗布装置の塗布条件より所定箇所への一回あたりの供給量が予めわかっているので、塗液4の液面4aの減少率と塗液4を所定箇所へ供給した回数から、塗液4が正常に所定箇所へ供給されているかも判定している。新しい塗液供給用容器に交換する際は、塗液4を所定箇所に供給するための配管(図示しない)の接続と、塗液収容部1を加圧するための配管の接続および、センサ窓10に光学式センサ取り付け部22を位置規制ピン11に従って装着することでなされる。
【実施例】
【0026】
実施例1
本発明の実施の形態に従って、塗液供給用容器における高さあわせの実施例を示す。容器は図1に示したような塗液供給用容器を用いた。
【0027】
容器の容量は90リットル、光学式センサは長距離タイプのレーザ変位式センサを拡散反射モードで使用した。また、インナー容器は厚みが1.5mmのポリエチレン製を使用した。基準ワッシャは厚み12mm、高さ調整代ワッシャは厚み0.5mm、1mm、3mm、5mmを用いた。
【0028】
まず、塗液供給用容器11台についてスイングボルトを緩めて蓋を容器から開放し、アウター容器にインナー容器を収容した。その後、蓋を被せた。そして、塗液収容部に設けられている高さ調整機構を基準ワッシャのみの高さに調整した。次に、1台目の容器のセンサ窓に光学式センサ取り付け部を装着した。このとき、電気制御部は光学式センサより取得したインナー容器の傾斜部と液だめ部の境界部近傍までの高さをモニター部に表示するので、その値を記録した。つづいて、同様にして残りの容器について高さを求め高さあわせ前として記録した。次に、記録した高さの中で最も大きい値を基準値Lxとした。そして、基準値Lxを逸脱している容器において、その差をうめる高さ調整代を容器ごとに求めた。なお、許容値は基準値Lx±0.5mmとした。そして、高さ調整代ワッシャの値を容器ごとに決め、容器ごとの高さ調整機構に加えた。
【0029】
次に、再び塗液塗液供給用容器11台について、センサ窓に光学式センサ取り付け部を順次に装着して電気制御部が光学式センサより取得したインナー容器の傾斜部と液だめ部の境界部近傍までの高さを高さあわせ後として記録した。結果を表1に示す。この結果より、高さあわせ前には容器ごとの高さバラツキがレンジ(R)で4.3mmあったが、高さあわせ後は容器ごとの高さバラツキが許容値であるレンジ(R)1mmに収めることができた。なお、強化ガラスにひずみが発生していないことは予め容器ごとに確認している。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例2
次に、高さあわせが行われた塗液供給用容器10台を用いて、事前に行った塗液収容部内の塗液残量の測定の実施例を示す。
【0032】
まず、塗液充填室で塗液供給用容器10台にインナー容器と供給用配管を収容し、その後、塗液収容口から5リットルのペーストを収容した。
【0033】
次に、最低液位は931.8mm、アラーム液位は929mm、最下限液位は933mmと電気制御部に設定した。そして、加圧ポートに加圧用配管を接続した。次に、容器NO1のセンサ窓に光学式センサ取り付け部を装着した。電気制御部は光学式センサ取り付け部がセンサ窓に装着されたことを認識し、かつ、光学式センサより取得した塗液の液面高さが液位許容範囲内であるので塗液取り出し口よりペーストの取り出しが許可され、ペーストの取り出しが開始された。液面が下降してアラーム液位に達したのでアラームが発することを確認した。さらにペーストの取り出しを行い、最低液位に達したのでペーストの取り出しが禁止された。つづいて、同様にして残りの容器についてペーストの取り出しを行った。
【0034】
次に、容器10台の蓋を開放してインナー容器を取り出した。そして、インナー容器に残ったペーストを回収して重さを量った。結果を表2に示す。結果より、容器ごとのペースト残量にバラツキがほとんどないことを確認した。また、供給用配管より空気が噛みこんでいないことをペーストの取り出し中に確認した。また、従来のロードセルを用いた残量検出方法に比べると、約1000gのペーストの無駄または損失を抑制することができた。なお、ペーストの残量をさらに少なくする場合は、インナー容器の液だめ部の形状寸法を見直すことで可能となる。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例3
次に、容器NO11を用いて上記と同様の操作を行った。ただし、ペーストが最低液位に達してもペーストの取出しを許可した。ペーストが最下限液位に達したら塗布装置を強制的に停止させる信号が発せられることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のペースト供給用容器の構成を断面で示す側面図である。
【図2】塗液供給用容器の平面図である。
【図3】塗液収容部に設けられたセンサ窓の構成を示す平面図である。
【図4】図3を断面で示す側面図である。
【図5】図4のセンサ窓に光学式センサ取り付け部が装着されたときの構成を示した概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1 塗液収容部
2 蓋
3 塗液取り出し口
4 ペースト
5 スイングボルト
6 排水口
10 センサ窓
11 位置規制ピン
11a ピン
11b 固定ボルト
12 高さ調整機構
12a 基準ワッシャ
12b 高さ調整代ワッシャ
12c 固定ボルト
13 固定ボルト
20 光学式センサ
20a ブラケット
21 装着センサ
22 光学式センサ取り付け部
22a 貫通孔
30 エアベントポート
31 加圧ポート
32 塗液収容口
33、33a のぞき窓
34 加圧ゲージ
40 容器支え
41 架台
42 キャスター
101 上側フランジ
102 下側フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗液を収容する塗液収容部と、該塗液収容部の外部に光学式センサを取り付けるための光学式センサ取り付け部を有し、該塗液収容部上部には該光学式センサから発せられる出射光、および前記塗液の液面からの反射光を透過するセンサ窓を有する塗液供給用容器であって、該光学式センサ取り付け部は該センサ窓を覆う形状であり、該塗液収容部が該光学式センサの高さを調整可能とする高さ調整手段を有することを特徴とする塗液供給用容器。
【請求項2】
前記光学式センサ取り付け部が前記センサ窓に装着されている際に検知信号を出力する装着センサを有する請求項1に記載の塗液供給用容器。
【請求項3】
前記塗液収容部下部が傾斜部と液だめ部を有し、前記光学式センサが、該塗液収容部内に塗液が収容されていない時に該傾斜部と該液だめ部の境界部近傍の塗液収容部内壁の高さを測定するよう配されている請求項1に記載の塗液供給用容器。
【請求項4】
請求項3記載の塗液供給用容器を用いた塗液供給方法であって、複数の塗液供給容器について、それぞれ前記塗液収容部内に塗液が収容されていない状態で予め該塗液収容部内の前記傾斜部と前記液だめ部の境界部近傍までの高さを測定し、その測定結果が全ての塗液供給用容器において略一定となるように各塗液供給用容器の高さ調整手段を調整することを特徴とする塗液供給方法。
【請求項5】
請求項2記載の塗液供給用容器を用い、前記装着センサからの検知信号が認識され、かつ前記光学式センサにより測定した塗液の液面高さが予め設定されている最低液位と最高液位との間の液位許容範囲内である場合は前記塗液供給用容器から塗液を取り出すことを許可し、前記検知信号が認識されないか、または前記光学式センサで測定した塗液の液面高さが前記液位許容範囲外である場合は前記塗液供給用容器から塗液を取り出すことを許可しない塗液供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−178667(P2009−178667A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20549(P2008−20549)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】