説明

塗膜補修方法、およびそれに用いる被覆材料、並びに補修された自動車

【課題】パテ付け作業のみならず、それ以降の作業も効率的に行うことのできる塗膜補修方法を提供する。また、研磨作業によって生じた塵埃を効率的に回収することができ、かつ研磨製品の設置が容易で、更に研磨製品の研磨効率を低下させることのない研磨製品用のバックアップパッド、及びこれを用いた研磨具を提供する。
【解決手段】キズ等の損傷部分を2層以上の被覆材料でカバーし、この多層構造の被覆材料層ごとキズ部分の塗膜を除去してパテを充填し、余分なパテを第一層目の被覆材料ごと除去し、硬化したパテの研磨に際して、第二層目の被覆材料で補修対象となっていない旧塗装面を保護しながら、研磨作業を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜面に発生したキズや凹みを補修する方法、およびそれに使用する被覆材料、並びに当該補修方法によって補修された自動車に関する。特に線条または点状のキズや凹みを補修するのに適した補修方法および被覆材料並びに補修された自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車外板、家庭電気製品などに塗装された塗膜面が他の物体と接触または衝突して、該塗膜面に線条または点状のキズが発生することが多く見受けられ、それによって外観が著しく低下する。
【0003】
従来、塗膜に発生したこれらのキズ等の補修方法として、例えば自動車外板(塗膜面)の補修では、キズ等の損傷を受けた領域、およびその近傍の塗膜(旧塗膜)を剥がしてから、旧塗膜のエッジ部を調整してフェザーエッジを形成し、その後金属表面処理剤、パテ類、下塗り塗料、中塗り塗料等を適当に組み合わせて損傷箇所を被覆する下地を形成し、硬化した下地を研磨してその表面を平滑にしてから、その上に上塗り塗料による仕上げ塗装を行う方法が一般的である。
【0004】
特に旧塗膜を剥がす際には、キズ等の部分を中心に、その周囲の広い面積にわたってサンディングを行う必要があり、この広い面積にわたって行ったサンディング部分に補修用パテを充填していた。この為、サンディング工程に長時間を要し、またサンディングによってパテ付け面積が広くなってパテ付け作業やその後の研磨作業も煩雑となり、多大の時間と労力を必要とし、コストも高かった。しかも、小さなキズを補修する場合でも、このような工程で行われる為に、損傷面積の割りにその補修作業が煩雑になっていた。
【0005】
そこで、短時間でかつ簡単に塗膜のキズを補修するべく、特許文献1(特開平8−196990号公報)では、透明もしくは半透明の粘着テ−プを利用する塗膜補修方法が提案されている。
【特許文献1】特開平8−196990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている塗膜補修方法では、パテ充填時における課題、即ちサンディング面積の狭小化、使用するパテ量の削減等を解決することはできても、車輌の塗膜を補修する方法としては未だ十分なものとはなっていない。
【0007】
具体的には、車輌の塗装面の損傷を補修する場合には、キズや凹みを目立たなくする為に、パテを充填し、これが硬化・乾燥した後に、パテの表面が他の塗装面と面一になるように研磨・調整する必要があり(パテ砥ぎ作業)、またパテ以外の樹脂材料、例えばプライマーサフェーサ等を使用する必要もある。しかしながら、前記特許文献1に記載された方法は、これら車輌塗装面の補修作業全体における1部(パテ付け)を改良しているに過ぎず、それ以外の工程(パテ付け以外の工程)を含む、車輌塗装面の補修作業全体の改善を成し得るものではない。
【0008】
よって本発明は、第1に、パテ付け作業のみならず、それ以降の作業も効率的に行うことのできる塗膜補修方法を提供するものである。
【0009】
また、車輌塗装面の補修などのように、硬化したパテを研磨する必要があり、さらに損傷領域以外の塗装面をそのままに保つような補修方法では、パテの研磨に際して、損傷領域以外への研磨作業の影響が現れない様に配慮する必要もある。
【0010】
よって本発明は、第2に、全体における一部分だけを補修する方法であり、補修領域以外に存在する塗幕はそのまま使用し、且つ硬化したパテの研磨作業を伴う補修方法において、これを効果的且つ低コストで行うことのできる塗膜補修方法を提供する。
【0011】
更に、本発明では最初の塗装面を可能な限り維持することのできる塗膜補修方法並びに、最初の塗装面が可能な限り維持されている補修後の自動車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、キズ等の損傷部分を、2層以上の被覆材料でカバーして、この多層構造の被覆材料層ごとキズ部分の塗膜を除去して、この塗膜を除去した部分に補修用パテを充填して、余分なパテを第一層目の被覆材料ごと除去し、硬化したパテの研磨に際して、第二層目の被覆材料で補修対象となっていない旧塗装面を保護しながら、研磨作業を行うことにより、旧塗膜(即ち、補修対象以外の領域における塗膜)への影響をなくすことができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
即ち、前記課題を解決する塗膜補修方法として、本発明では、塗膜面の損傷部分を補修する方法であって、当該損傷部分を含む範囲を2層以上の被覆材料で被覆する被覆工程、損傷部分の塗膜を被覆材料と共に除去して補修対象部分を露出させる塗膜除去工程、補修部分に第一の材料を充填又は塗布する第一材料充填・塗布工程、前記被覆材料の最も上にある第一層を分離して補修対象部分以外の領域に存在する第一の材料を除去する第一層除去工程、除去した第一層の下に存在する第二層の上から、前記補修対象部分に充填又は塗布した第一の材料を研磨して、第二層の表面と略面一にする第一材料研磨工程、被覆材料における第二層を分離してこれを除去する第二層除去工程、とを含む塗膜補修方法を提供する。
【0014】
上記被覆材料としては、望ましくは透明又は半透明に形成されているものを使用することができる。塗膜除去工程において、損傷部分の見極めを容易且つ確実に行い得るようにするためである。但し、その凹凸形状を視認することのできるものであれば、光透過性の有無に関係なく使用することができ、例えば有彩色のものであっても、金属色のものであっても使用することができる。よって、本発明においては様々な材料からなる被覆材料を使用することができ、例えば樹脂製の被覆材料のほか、紙製、布帛製、或いはアルミニウムなどの金属箔を用いて形成したものでも使用することができる。
【0015】
また、かかる被覆材料は、テープ状、シート状、フィルム状、或いは板状など、薄く形成されているものであれば様々な形態に形成したものを使用することができる。このように薄く形成された被覆材料は、その何れかの一方の面が粘着剤を塗布してなる接着面として形成されていることが望ましい。使用時の利便性を向上させるためである。
【0016】
また、この被覆材料としては、塗布して硬化させて使用する塗布・硬化型のマスキング材を使用することもできる。特にこのような塗布・硬化型の被覆材料は、多層構造を形成する際、最も上の層を形成し、余分なパテを除去するために使用される被覆材料(即ち第一層を形成する被覆材料)として使用することができる。なお、当該塗布・硬化型のマスキング材を使用する場合は、その除去を任意に行い得る事が条件となる。
【0017】
上記被覆工程では、被覆材料を多層構造とし、これで損傷部分を覆う方法としては、(1)各層毎に分離可能な多層構造の被覆材料で、前記損傷部分を含む範囲を覆うか、又は(2)被覆材料を順次重ね合わせて2層以上とし、前記記損傷部分を含む範囲を覆うことができる。これらの何れの方法を行うかは、損傷部分にける損傷の程度や、補修に使用するパテの材質などを考慮しながら、適宜選択すれば良い。
【0018】
また前記被覆工程では、重なり合う上下の被覆材料同士が、相互に異なる材質及び/又は厚さとなるようにして前記損傷部分を含む範囲を被覆する事が望ましい。即ち、多層構造に設置される被覆材料は、各層毎にその作用・目的が異なっており、例えば最上層を形成する第一層は、余分なパテを除去するため、その下に形成される第二層は第一層の厚さ分以上に突起しているパテ材料を研磨する際、周囲に存在する塗膜を損傷しないようにするために機能する。即ち、このような第一層および第二層に限ってみても、第一層目は第二層目との剥離が容易であることが望ましく、第二層目はパテ研磨に際しての耐摩耗性を有することが望ましい。よって、本発明に係る補修方法の実施に際しては、被覆工程を実施する際、多層構造を形成する被覆材料の材質や厚さなどを各層ごとに異ならせる事が望ましい。具体的にどの様な材質の被覆材料を使用するかについては、本明細書に開示されている作用・効果に基づけば、樹脂工業分野等における背景技術を参酌すれば容易に理解できることから、その詳細な説明は省略する。
【0019】
上記被覆材料からなる多層構造は、例えば相互に粘着剤層を有する保護層と剥離層とからなる二層構造として形成することができる。この場合、前記被覆工程では、損傷部分を含む範囲に第二層としての保護層を貼付し、当該保護層の上であって、且つ損傷部分を含むように第一層としての剥離層を貼付することができる。その際、保護層(第二層)と剥離層(第一層)とは、同じ大きさに形成し、同じ範囲を被覆するものして形成する他、何れか一方を大きく形成し、損傷部分を含む何れか一部の領域において重複するように形成することもできる。例えば第二層を大きく(広い面積で)形成すると共に、その上に設けられる第一層は、損傷部分とその近傍だけを覆うように形成することもできる。このように形成すれば、より確実にパテ砥ぎ作業時における旧塗膜への影響を極力少なくすることができる。
【0020】
上記本発明に係る塗膜補修方法は、パテ砥ぎ作業に際して、補修対象範囲外の塗膜に研磨キズなどを付けない様にする為の塗膜補修方法であり、その為に、パテ付けに際しては2層以上の被覆材料層を設けるものである。そして、従前においては、パテ砥ぎに際して、パテの近傍に存在する塗膜を保護する補修方法は行われていない。よって、本発明は、もう一方の側面から見れば、パテ砥ぎ(パテの研磨)作業に際して、研磨するパテの周辺を被覆(マスキング)して行う、塗膜補修方法と捉えることもできる。かかる補修方法は、補修対象外の塗膜に対する補修作業の影響(例えば研磨キズの発生など)を無くし、より限定された範囲内における補修によって、補修作業を完結できるのであるから、補修作業を簡易にし、作業時間を短縮し、且つ補修費用を大幅に削減することができる。
【0021】
而して本発明は、別の観点では、以下の塗膜補修方法と規定することもできる。
【0022】
即ち、塗膜面の損傷部分を補修する方法であって、当該損傷部分の塗膜を除去して補修対象部分を出現させ、当該補修部分にパテ材料を充填又は塗布してこれを硬化・乾燥させるパテ材料充填・塗布工程、およびこの硬化・乾燥したパテを研磨するパテ材料研磨工程を含み、当該パテ材料研磨工程で研磨対象となる硬化・乾燥したパテ材料の周辺がマスキング(被覆)されている塗膜補修方法である。
【0023】
この方法を実施する際には、硬化・乾燥したパテの周囲を別途マスキングして塗膜を保護することもできるが、硬化・乾燥したパテの輪郭が確定されている事が望ましいことから、上記2層以上の被覆材料層を形成する塗膜補修方法との組み合わせで実施することが望ましい。
【0024】
上記本発明に係る塗膜補修方法で使用できるパテ材料には特に制限は無く、光硬化型のパテ材料であっても、熱硬化型のパテ材料であっても使用することができる。
【0025】
また、本発明の方法によって補修できる塗膜の損傷の程度や大きさに制限は無いが、簡易に、かつ迅速に補修することができる点を考慮すれば、例えば線条、点状などである事が望ましく、線状のキズの場合には、その最大幅が10mm以下、特に5mm以下であることが望ましく(長さは問わない)、点状のキズの場合には、その直径が約100mm以下、特に50mm以下であることが望ましい。また、この補修方法を適用する損傷部分に関して、その損傷の深さは特に問題にはならないが、10mm以下、特に5mmであることが望ましい。
【0026】
また、上記補修方法において、パテなどの第一の材料の上に、プライマー又はプライマーサフェーサが塗布され、且つ乾燥されることになるが、この工程は、第一材料研磨工程の後であって、第二層除去工程の前に行うことができる。この段階で行えば、補修領域に設けられるプライマー又はプライマーサフェーサの量も極力少なくすることができる。但し、パテなどの第一の材料と板金面との段差を無くす上では、当該プライマー又はプライマーサフェーサの塗布・乾燥は、第二層除去工程の後に行うのが望ましい。
【0027】
また本発明では、上記塗膜補修方法によって補修された自動車を提供し、従前に置ける課題を解決する。
【0028】
即ち、従来方法によって補修された自動車では、線キズが補修された場合であっても、当該キズ以上の面積で塗膜を剥し、パテ塗りなどが行われてきたことから、当該車輌の製造時における板金面や塗装を極力残したい場合(例えば、既に生産が中止されているビンテージカーなど)でも、そのような車輌(補修済み車輌)は提供されていなかった。そこで本発明では、上記の補修方法により補修された車輌を提供することにより、多様なユーザーに対して、最適なものを提供することが可能になる。
【0029】
更に本発明では、上記塗膜補修方法において好適に使用することのできる被覆材料を提供し、前記課題を解決する。
【0030】
即ち、塗膜面の損傷部分を補修する方法に使用する被覆材料であって、最上層となる第一層とその下に存在する第二層とを含んで構成されており、当該被覆材料は、その厚さ方向に透明または半透明である塗膜補修用の被覆材料である。
【0031】
この被覆材料は第一層と第二層とを相互に異なる材質及び/又は厚さに形成することが望ましい。各層毎に用途・機能が異なるので、それに応じた最適なものを得るためである。同じような理由から、第一層と第二層とは共にその下面に粘着層が設けられており、当該接着層は各層毎に粘着力が異なっている事が望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下では、図面に基づいて本発明に係る塗膜補修方法の1つの実施の形態、及びこれに使用することのできる被覆材料10を具体的に説明する。
【0033】
図1〜2は、本実施の形態に係る塗膜補修方法の工程を示す略図であり、図3は、本実施の形態に係る塗膜補修方法で好適に使用することのできる被覆材料10を示す斜視図である。
【0034】
〔実施の形態1〕
先ず図1〜2に基づいて、本実施の形態に係る塗膜補修方法の作業工程を具体的に説明する。図1は損傷部分1にパテ30を埋め込み硬化・乾燥させるまでの作業工程を示しており、図2はこの硬化・乾燥させたパテ材料30を研磨する工程から、最終的に上塗り塗装を行う迄の作業工程を示している。また、図1および2において、鎖線で示した円内には、損傷部分1の要部断面図を示している。
【0035】
図1(A)に示すように、車輌のドアパネル等のような外板に、線状または点状の損傷(損傷部分1)が生じた場合、先ずこの損傷部分1をカバーするように2層構造の被覆材料10を設置する(被覆工程:図2(B))。この被覆材料10の大きさ(平面形状)は、その周縁を構成する輪郭が、損傷部分1の外周から3mm以上、更に5mm以上、特に10mm以上外側に位置するような大きさであることが望ましい。但し、この損傷部分1と被覆材料10の輪郭との間の最短距離は、損傷部分1のキズの深さや凹み具合によって適宜調整されるべきである。なお、本実施の形態において、損傷部分1の範囲は、正常な状態(損傷を受けていない状態)よりも凹んでいる範囲をいい、例えば損傷が線キズである場合、車体パネルの塗膜3(クリアーを含む)が剥がれている範囲のみならず、その近傍であって、線キズの発生に伴い、正常な状態よりも凹んでいる範囲を含ませることが望ましい。但し、純粋に塗膜3(クリヤーを含む)が削り取られる等の損傷を受けている領域だけを対象とすることもできる。
【0036】
また、被覆材料10は粘着テ−プであることが望ましく、例えば厚さ約30μ〜約2mmの範囲が好ましい。かかる被覆材料10は、線キズなどの存在位置を簡易に視認することができるように、透明に形成されている事が望ましく、例えば塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などからなる樹脂材料を用いて形成することが望ましい。また、かかる被覆材料10は、損傷部分1の要部断面図(鎖線円内)に示すように、損傷部分1を凹凸で認識できる場合には、不透明のものであってもよく、またアルミテープであっても良い。
【0037】
次に図1(C)に示すように、被覆材料10の上から損傷部分1とその近傍の塗膜3を剥離して補修対象部分20を出現させる(塗膜除去工程)。この状態において、できるだけ凹みを解消するためにプーラー等を用いて引き出し作業をすることも可能であるが、特に深さのない損傷を補修する場合には、そのままパテ埋めを行う方が作業効率上有利である。また、この実施の形態では、損傷部分1(線キズ等)の周辺の塗膜3も剥離させているが、損傷部分1(線キズ等)の塗膜3だけを剥離して作業を行うことも当然に可能である。被覆材料10と塗膜3の剥離には、バイブレペン、マイクログラインダ、サンダー、彫刻刀、ヤスリなど、各種の切削工具を使用することができ、損傷部分1の幅や大きさ或いは面積や深さなどに応じて適宜選択することができる。
【0038】
そして図1(C)のと膜除去工程で出現した補修対象部分20には、図1(D)に示すように、第一材料3してのパテ材料30を充填する(第一材料充填・塗布工程)。ここで使用できるパテ30には何ら制限は無く、光硬化型、熱効果方など各種のパテ材料を使用することができる。補修対象部分20にパテ30を充填する際には、空気などが入り込むことの無いように充填する事が望ましく、またパテ30の充填に際してはヘラ等を用いて、第一層11の上のパテ30を削ぎ取っておくことが望ましい。但し、本実施の形態に示す塗膜補修方法では、後述の第一材料(本実施の形態におけるパテ材料30)除去工程を行い、第二層12(保護層)の上に第一層11の厚さ分だけ突出するパテ30を除去することから、第一層上のパテ30を削ぎ取り作業は省略するか、簡易に行うことができる。
【0039】
パテ30を充填した後、埋め込んだパテ30が乾燥ないし硬化する前に、図1(E)に示すように、多層構造を形成している被覆材料10のうちの最上層に存在する剥離層(第一層11)だけを剥がして、補修対象部分以外に存在するパテ材料30を、当該剥離層(第一層11)ごと取り除く(第一層除去工程)。
【0040】
剥離層(第一層11)を取り除いた後においては、これをそのまま硬化させる(図2(A))。通常、パテ30の硬化・乾燥に際してはパテ痩せと云われる収縮が発生することから、保護層(第二層12)の表面から、第一層11の厚さ分だけ突出しているパテ材料30も、硬化・乾燥を減ることにより目減りすることになる。
【0041】
そして、パテ材料30が十分に硬化・乾燥した後においては、第二層12(保護層)から突出しているパテ材料30を、図2(B)に示すように、サンダーやバフなどの研磨具5を用いて研磨し、当該第二層12(保護層)と略面一になるまで研磨する(第一材料30研磨工程)。これにより硬化・乾燥したパテ30の表面における凹凸をなくし、平坦なパテ30面を得ることができる。このパテ30の研磨(パテ砥ぎ)作業に際しては、硬化・乾燥したパテ30の周りには第二層12(保護層)が存在し、車輌本体の塗膜3を保護していることから、損傷を受けていない領域(補修対象領域以外の領域)に、研磨キズなどを生じさせること無く、かつ本来の塗膜3を使用することができる。
【0042】
その後、本実施の形態では、第二層12(保護層)をマスキングとして使用し、硬化・乾燥したパテ30の表面に上塗り塗装40を行っている(図2(C))。この上塗り塗装40に先立ち、必要に応じてシリコンオフ等の脱脂溶剤を用いた脱脂作業や、プライマーサフェーサなどを塗布することもできる。これらを塗布する場合にも、当該第二層12(保護層)をマスキングとして使用することができる。
【0043】
そして最後に第二層12(保護層)を車輌パネル5から剥離し、任意にバフなどで磨いて塗膜補修方法を完了することができる(第二層除去工程)。
【0044】
なお、他の実施の形態においては、図2(C)に示す上塗り塗装作業は、第二層12(保護層)を車輌パネル5から剥離してから行うこともできる。
【0045】
〔実施の形態2〕
図3は、上記実施の形態1に示した塗膜補修方法において好適に使用することのできる被覆材料10の積層状態を示しており、何れも被覆材料10を2層に積層させた状態を示している。2層に積層されている各被覆材料10は、その何れも下面に粘着剤13が設けられており、上層側から第一層11(剥離層)、その下に第二層12(保護層)が設けられている。
【0046】
特に、図3(A)に示す態様では、第一層11(剥離層)と第二層12(保護層)とが同じ幅で、かつ同じ厚さに形成されており、このような層構造に形成する場合には、同じ粘着テープを重ね合わせて貼付することにより積層構造を形成することができる。
【0047】
また図3(B)に示す態様では、第一層11(剥離層)と第二層12(保護層)とは、幅および厚さが共に異なる様に形成されている。被覆材料10の層構造をこのように形成した場合には、下側に存在する第二層12(保護層)を形成する被覆材料10は、幅が広いのであるから、前記の塗膜補修方法において、パテ砥ぎ作業を行う際、より広い範囲を保護しながら行うことができる。また、この第二層12(保護層)を形成する被覆材料10は、薄く形成されていることから、研磨した後のパテ30の、車体パネル面からの突出具合を極力小さくすることができる。
【0048】
かかる2層構造の被覆材料10は、シート状にして提供するほか、ロール状に巻いて提供することもできる。
【0049】
上記図3に示す何れの態様においても、第一層11の第二層12に対する粘着強度は、第二層12の金属パネル(補修面)に対する粘着強度よりも弱くなるように、各層(第一層及び第二層)に設けられる粘着剤は調整乃至は選択されている事が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】損傷部分へのパテの埋め込み硬化・乾燥までの作業工程を示す工程図。
【図2】パテの研磨から上塗り塗装迄の作業工程を示す工程図。
【図3】被覆部材の実施態様を示す斜視図
【符号の説明】
【0051】
1 損傷部分
3 塗膜
5 車輌パネル
10 被覆材料
11 第一層(剥離層)
12 第二層(保護層)
20 補修対象部分
30 パテ材料(第一材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜面の損傷部分を補修する方法であって、
当該損傷部分を含む範囲を、被覆材料によって2層以上の層構造に被覆する被覆工程、
損傷部分の塗膜を被覆材料と共に除去して補修対象部分を露出させる塗膜除去工程、
補修部分に第一の材料を充填又は塗布する第一材料充填・塗布工程、
前記被覆材料の最も上にある第一層を分離して補修対象部分以外の領域に存在する第一の材料を除去する第一層除去工程、
除去した第一層の下に存在する第二層の上から、前記補修対象部分に充填又は塗布した第一の材料を研磨して、第二層の表面と略面一にする第一材料研磨工程、
被覆材料における第二層を分離してこれを除去する第二層除去工程、
とを含む塗膜補修方法。
【請求項2】
前記被覆工程は、
(1)各層毎に分離可能な多層構造の被覆材料で前記損傷部分を含む範囲を覆うか、
又は
(2)被覆材料を順次重ね合わせて2層以上とし、前記記損傷部分を含む範囲を覆う
請求項1に記載の塗膜補修方法。
【請求項3】
前記被覆工程では、重なり合う上下の被覆材料同士が、相互に異なる材質及び/又は厚さとなるように前記損傷部分を含む範囲を被覆する請求項1又は2に記載の塗膜補修方法。
【請求項4】
前記被覆材料は相互に粘着剤層を有する保護層と剥離層とからなり、
前記被覆工程は、損傷部分を含む範囲に第二層としての保護層を貼付し、当該保護層の上であって、且つ損傷部分を含むように第一層としての剥離層を貼付する、請求項1に記載の塗膜補修方法。
【請求項5】
前記第一材料研磨工程の後であって、第二層除去工程の前に、プライマー又はプライマーサフェーサを塗布し且つ乾燥する工程が行われる請求項1〜4の何れか一向に記載の塗膜補修方法。
【請求項6】
塗膜面の損傷部分を補修する方法であって、
当該損傷部分の塗膜を除去して補修対象部分を出現させ、当該補修部分にパテ材料を充填又は塗布してこれを硬化・乾燥させるパテ材料充填・塗布工程、および
この硬化・乾燥したパテを研磨するパテ材料研磨工程を含み、
当該パテ材料研磨工程で研磨対象となる硬化・乾燥したパテ材料の周辺がマスキングされている塗膜補修方法。
【請求項7】
損傷した塗膜が補修された自動車であって、
当該自動車において損傷した塗膜は、請求項1〜6の何れか一項に記載の塗膜補修方法によって補修されていることを特徴とする自動車。
【請求項8】
塗膜面の損傷部分を補修する方法に使用する被覆材料であって、
最上層となる第一層とその下に存在する第二層とを含んで構成されており、
当該被覆材料は、その厚さ方向に透明または半透明である塗膜補修用の被覆材料。
【請求項9】
前記第一層と第二層とは相互に異なる材質及び/又は厚さに形成されている請求項8に記載の塗膜補修用の被覆材料。
【請求項10】
前記第一層と第二層とは共にその下面に粘着層が設けられており、当該接着層は各層毎に粘着力が異なっている請求項8又は9に記載の塗膜補修用の被覆材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−275699(P2007−275699A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101829(P2006−101829)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(507085195)カーコンビニ倶楽部株式会社 (3)
【Fターム(参考)】