説明

塗装システム

【課題】
充填時に塗料バッグ内の塗料を完全に排出せずに、塗料バッグへの塗料の充填/圧出を繰り返しても、充填量と使用量の誤差分が累積されてその塗料バッグが破裂したり、塗装中に塗料切れを起こさないようにする。
【解決手段】
充填位置に位置決めされた塗料タンク(T)の外部から塗料充填に伴って変化する塗料バッグ(B)の形状変化を非接触測定する形状認識センサ(S)を設け、予め設定された充填量の塗料が塗料バッグ(B)へ充填されたと判断されたときに塗料の供給を停止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料タンクに内蔵された塗料バッグに塗料を充填して、その外側に作動流体圧を作用させることにより塗料を霧化機構に送給して噴霧する塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディの塗装では、有機溶剤を使用した塗料が主流であるが、環境保護及び公害防止の観点から、塗装工程において大量に発生する揮発性有機溶剤を削減することが要請されており、その対策として、水性塗料による塗装が注目を集めている。
【0003】
水性塗料を無駄なく使用するためには、塗着効率の高い静電塗装装置で塗装するのが好ましいが、水性塗料は電気抵抗が低く、塗料供給系を流れる塗料を介して静電塗装機の回転霧化頭とアース側が導通しやすいため、塗料供給系全体に絶縁対策を施して、回転霧化頭に印加される−60〜90kVの高電圧がリークするのを防止しなければならない。
【0004】
このため、従来は塗装機内に形成し、あるいは、塗装機に対して着脱可能に装着される塗料タンクに塗料供給系から塗料を充填した後、塗料供給系と塗装機を物理的に切り離した状態で塗装機に高電圧を印加し、塗料タンクから塗料を圧し出して塗装することにより、塗装機に高電圧を印加してもリークしないようにしている。
【特許文献1】特開2000−317354号公報
【特許文献2】欧州特許第0796665号明細書
【0005】
このような形式の静電塗装機は、通常、シリンダとなる塗料タンクの内周面に沿ってピストンとなる底板が摺動可能に配され、その底板を他のアクチュエータや液圧により圧し込んで塗料を圧し出すようにしている。
【0006】
しかしながら、この場合、底板と内周面のシールを確実に行なわなければならないため、その分摩擦が大きくなって大きな駆動力を必要とし、底板が往復動するたびに、シールが擦れて摩耗するため、液圧駆動の場合にはその作動液が流入して塗装品質に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
また、通常のシールは、ピストンとなる底板の外周面に複数のOリングを平行に配する構成となっているため、そのOリングとOリングの間に塗料が入り込んでしまい、一日の作業が終了して洗浄するときには、底板を取り外して分解洗浄しなければならないという面倒があった。
【0008】
このため、本出願人は、塗料を充填する柔軟性塗料バッグを備えた塗料タンクを試作し、これを回転霧化頭などの霧化機構を備えた塗装機に着脱可能に装着させて塗装実験を行った。
この塗料タンクは、塗料バッグに塗料を予め充填しておき、塗装を行う場合はその外側に作動液を定量供給すると、その液圧により塗料バッグが圧し潰され、塗料が定量で圧し出されて霧化機構へ供給される。
【0009】
したがって、Oリングによる摩擦などの影響がないので、作動液の圧力がそのまま塗料に作用し、比較的小さな駆動力で塗料を霧化機構へ供給することができる。
また、ピストンとなる底板を使用しないので、底板とシリンダとの間に塗料が入り込む隙間もなく洗浄も簡単に行うことができ、洗浄不良や底板のシール漏れに起因する塗装不良もなくなった。
【0010】
しかしながら、このような塗料タンクを用いて塗料の充填/圧出を繰返しながら使用しているうちに、塗料バッグが破裂したり、塗装中に塗料切れを起こすおそれのあることが判明した。
すなわち、塗装の途中で塗料バッグ内の塗料が空になると、品質不具合になり再塗装が必要になるため、塗料バッグの中には、塗装使用量より多くの塗料を充填している。しかし、塗装後に塗料バッグに残っている塗料の量が正確には分からないため、充填と塗装を繰り返すとバッグの容量以上の塗料が塗料バッグ内に充填され、最終的にはバッグが破裂してしまう。
特に、塗料バッグは塗料の充填/吐出を何度も繰り返すため疲労し易いため、充填/吐出に対する耐久性を持たせようとして極めて柔軟な材質で塗料バッグを形成すると、塗料の過充填に対する耐圧が低くならざるを得ない。
逆に、塗料使用料が設定された使用量より多い場合は、その誤差分の塗料が消費されていき、予め余裕を持って充填されている分の塗料を消費した時点で塗料切れを起こしてしまう。
【0011】
このため、塗料充填時に、まず、塗料バッグ内の塗料を完全に排出し、その後、所定量の塗料を充填すれば、塗装開始時の塗料充填量を常に一定にできるので、塗料バッグの破裂や塗料切れを起こすこともないが、この場合は、塗装後にバッグ内の塗料を完全に排出する時間が余分に必要となるだけでなく、外部に排出すると塗料ロスになるので元の配管に戻すなどの工夫が必要になるという問題がある。
また、バッグ内の塗料を完全に排出すると、作動流体経路が閉回路となるため、その配管内の圧力が上昇するため、塗料バッグや塗料容器に作用する圧力変動が大きくなり、これを繰り返すと塗料バッグや塗料容器の破損の原因となるという問題を生ずる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明は、充填時に塗料バッグ内の塗料を完全に排出しないで、塗料バッグへの塗料の充填/圧出を繰り返しても、充填量と使用量の誤差分が累積されて塗料バッグが破裂したり、塗装中に塗料切れを起こさないようにすることを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題を解決するために、本発明は、塗料を充填する塗料バッグが内蔵され、その外側を作動流体で満たした塗料タンクが塗装機本体に一体的に、あるいは、着脱可能に装着され、塗料バッグの外側に作動流体圧を作用させることにより塗料を塗装機本体に形成された霧化機構に送給して噴霧する塗装機と、前記塗料タンクに塗料を充填する塗料充填装置からなる塗装システムにおいて、前記塗料充填装置は、充填位置に位置決めされた塗料タンクの塗料バッグ内に塗料を供給する塗料供給系と、前記塗料タンクの外部から塗料充填に伴って変化する塗料バッグの形状変化を非接触測定する形状認識センサと、該形状認識センサの検出信号に基づき予め設定された充填量の塗料が塗料バッグへ充填されたと判断されたときに前記塗料供給系による塗料の供給を停止させる制御装置を備えていることを特徴とする。
なお、本発明において「塗料」というときは、広く被塗物表面にコーティング膜を形成する塗料、塗油剤、紫外線硬化樹脂、その他の液状コーティング材料を含む概念とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗装システムによれば、塗料充填位置に位置決めされた塗料タンクへ塗料供給系から塗料を供給すると、その塗料は塗料バッグ内に充填されて、塗料バッグが徐々に膨らんでいく。
この塗料バッグの形状変化が、塗料タンクの外部から形状認識センサにより非接触測定されるので、その検出信号に基づき予め設定された充填量の塗料が塗料バッグへ充填されたと判断されたときに塗料の供給が停止される。
塗料バッグへの塗料充填量は1ccレベルの厳密な精度が要求されるものではなく、多過ぎない量が充填されていることが確認できれば足りるので、塗料バッグの形状変化に基づいて形状認識センサにより測定する充填量に多少の誤差を含むものであっても一向に差し支えない。
このように、塗料バッグ内に充填されている塗料の容量を検出しているので、塗料バッグに過不足なく塗料を充填することができ、塗料バッグが破裂したり、塗装中に塗料切れを起こすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本例では、充填時に塗料バッグ内の塗料を完全に排出しないで、塗料バッグへの塗料の充填/圧出を繰り返しても、充填量と使用量の誤差分が累積されてその塗料バッグが破裂したり、塗装中に塗料切れを起こさないようにするという目的を達成するため、充填位置に位置決めされた塗料タンクの外部から塗料充填に伴って変化する塗料バッグの形状変化を非接触測定する形状認識センサを設け、予め設定された充填量の塗料が塗料バッグへ充填されたと判断されたときに塗料の供給を停止するようにした。
【0016】
図1は本発明に係る塗装システムの一例を示す説明図、図2はその要部を示す斜視図、図3は他の実施形態の要部を示す斜視図、図5は他の実施形態を示す説明図、図6はさらに他の実施形態を示す斜視図、図7はその画像を示す説明図、図8はその処理手順を示すフローチャート、図9はさらに他の実施形態の要部を示す説明図である。
【実施例1】
【0017】
図1及び図2に示す塗装システム1は、塗装ロボット2のロボットアーム3に取り付けられた塗装機本体4に塗料タンクTが着脱可能に装着されてなる塗装機5と、その塗料タンクTに塗料を充填する塗料充填装置6とからなる。
塗料タンクTには、一回の塗装で使用するのに十分な量の塗料を充填する塗料バッグBが内蔵され、その外側が作動流体で満たされており、その底面に塗料ポート7P及び作動流体ポート7Dが形成されている。
これにより、作動流体ポート7Dから作動流体を流入させたときにはその圧力により塗料バッグB内の塗料が塗料ポート7Pから圧し出され、塗料ポート7Pから塗料バッグB内に塗料を流入させたときには作動流体が作動流体ポート7Dから排出されるようになっている。
【0018】
塗装ロボット2には、塗料タンクTに作動流体を供給する作動流体供給配管(図示せず)が設けられており、塗装時には、塗料充填済みの塗料タンクTに作動流体を供給することにより、塗料バッグBの外側に作動流体圧を作用させ、塗料バッグB内に充填されている塗料を塗装機本体4に形成された回転霧化頭(霧化機構)8に圧し出して噴霧するようになっている。
また、塗装が終了すると、塗料タンクTが塗装機本体4から外されて、塗料充填装置6にセットされる。
【0019】
塗料充填装置6は、充填位置に位置決めされた塗料タンクTの塗料ポート7Pに係合されて任意の色の塗料を供給する多色塗料供給系9Pと、作動流体ポート7Dに係合されて塗料充填時に塗料タンクTから排出される作動流体を回収する作動流体回収系9Dと、塗料タンクTの外部から塗料充填に伴って変化する塗料バッグBの形状変化を非接触測定する形状認識センサSと、該形状認識センサSの検出信号に基づき予め設定された充填量の塗料が塗料バッグBへ充填されたと判断されたときに塗料供給系9Pによる塗料の供給を停止させる制御装置Cを備えている。
【0020】
塗料バッグBは、例えば、マチ付きの樹脂性スパウトバッグなどが用いられ、作動流体により潰されたときに倒れないようにその中心に支柱13が挿入されている。
これにより、塗料充填時はマチが膨れて塗料バッグBの背が低くなり、塗料が圧し出されたときは塗料バッグBが倒れることなくきれいに折り畳まれて上面のマチ部分が上方に山型に突出して塗料バッグBの背が高くなるようになっている。
【0021】
形状認識センサSとしては、塗料バッグと直交する方向から塗料タンクTを横切る光路Xを形成する発光素子(光源)10X及び受光素子(検出器)11Xからなるホトインタラプタ12が用いられ、ホトインタラプタ12の光路Xは、塗料が未充填の塗料バッグBにより遮られ、予め設定された充填量の塗料を充填して塗料バッグBが横方向に膨らむと同時に高さ方向に縮んだときに導通される位置に形成されている。
例えば、予め設定された充填量の塗料を充填したときの塗料バッグBの高さをHとしたときに、光路Xの高さがHになるようにホトインタラプタ12を設けておけば、塗料バッグBの充填量が設定値を越えたときに光路が導通されて検出信号が出力される。
【0022】
この場合に、ホトインタラプタ12の光としては可視光、赤外光、紫外光など任意の光が使用可能であるが、使用する光に対して、少なくともその光路Xと交差する部分が作動流体及び塗料タンクTが光透過性を有しており、作動流体及び塗料タンクTの光透過率が、塗料バッグB又は充填される塗料に対して高く設定されている。
また、可視光を用いる場合は、塗料タンクTは、少なくともその光路Xと交差する部分が透明部材で形成されていることが好ましい。
さらに、塗料タンクT及び塗料バッグBの双方を透明樹脂で形成し、作動流体に透明の液体を用いれば、外部から使用塗料の色を容易に視認することができる。
透明塗料を充填する場合は、塗料タンクTを透明樹脂で形成し、塗料バッグBを不透明の着色樹脂で形成してもよく、作動流体に透明の液体を用いることにより、外部から塗料バッグBの形状を容易に視認することができる。
また、塗料バッグBは、塗料が未充填のときに光路を遮る部分が、塗料タンクT及び作動流体の光透過率に比して低くなるようにその部分に着色プリントを施すことにより、光路の導通/遮断を検出するようにしてもよい。
なお、光路Xが一本の場合に、発光素子10Xの故障等により、塗料バッグBの形状変化を誤って検知する可能性もあるため、このような誤動作を防ぐために、図3に示すように、発光素子10X、10Yと受光素子11X、11Yからなる複数のホトインタラプタ12,12を設けることも可能である。
この場合に、二本目の光路Yは、1本目の光路Xと直交するように設定しても良い。
さらに、図4に示すように、塗料バッグB及び前述の光路Xや光路Yを、塗料バッグBに塗料が充填される前においては各光路が遮られず(図4(a))、所定量以上の塗料が充填された後においては各光路が遮られる(図4(b))位置に配して、ホトインタラプタ12により光路X,Yが遮断されたときに塗料が充填されたことを検出するようにしても良い。
【0023】
制御装置Cは、例えば図2のように、所定量の塗料が充填される前は光路Xが遮断され、所定量の塗料が充填されたときに光路Xが導通されるように構成されている場合は、塗料充填装置6にセットされた塗料タンクTに塗料を供給開始する際にホトインタラプタ12の光路Xが遮られていることを確認し、光路Xが導通したときのホトインタラプタ12の検出信号に基づき予め設定された充填量の塗料が塗料バッグBへ充填されたと判断して塗料の供給を停止する。
【0024】
以上が本発明の一構成例であって、次にその作用を説明する。
まず、塗装ロボット2のアーム3に取り付けられた塗装機本体4に塗料充填済みの塗料タンクTを装着して、塗料タンクT内に作動流体を供給すると、塗料バッグBの外側に作動流体圧が作用し、塗料バッグB内に充填されている塗料が塗装機本体4に形成された回転霧化頭(霧化機構)8に圧し出されて被塗物に対して噴霧される。
【0025】
そして、塗装が終了すると、ロボットアーム3により塗装機5が塗料充填装置6まで運ばれ、図示しない塗料タンク交換機により使用済の塗料タンクTが塗装機本体4から取り外されて、塗料充填装置6の充填位置にセットされ、図示しない塗料タンクストレージから取り出された塗料充填済みの塗料タンクTが塗装機本体4に装着されて、塗装が行われる。
【0026】
一方、塗料タンクTが塗料充填装置6の充填位置にセットされると、塗料タンクTの塗料ポート7P及び作動流体ポート7Dと、塗料充填装置6の塗料供給系9P及び作動流体回収系9Dが係合される。
また、このとき、塗料バッグBは潰れており、内部には一部の塗料が残っているので、光路Xが遮られることとなる(図2(a)参照)。完全に排出された状態から塗料充填を行う場合は、最初の1〜3秒程度の間、受光素子11Xを無効にして初期充填を行うようにすれば良い。
【0027】
この状態で、塗料供給系9P塗料の供給を開始すると、塗料ポート7Pを介して塗料バッグB内に塗料が充填されて横方向に徐々に膨らむと同時に縦方向に縮んでいき、塗料タンクT内の作動流体は作動流体ポート7Dを介して作動流体回収系9Dに排出される。
そして、塗料バッグB内の塗料が予め設定された充填量に達すると、その高さが光路Xの高さHより低くなるので、光路Xが導通して塗料の供給が停止され、塗料バッグB内に過不足なく塗料が充填されることとなる(図2(b)参照)。
このように塗料充填が完了した塗料タンクTは、図示しない塗料タンクストレージに収容され、必要に応じて取り出されて塗装機本体4に装着され、塗装が行われる。
【実施例2】
【0028】
図5は他の実施形態を示し、図1及び2と共通する部分は同一符号を付して詳細説明は省略する。
本例では、塗料バッグBへの充填量を調整できるように、形状認識センサSとして、ホトインタラプタ21…を多段に設けており、例えば、充填量が200cc、300cc、400cc、500ccのときの塗料バッグBの高さH〜Hに応じて光路X〜Xを設定している。
そして、制御装置Cは、光路X〜Xが導通されたときのホトインタラプタ21の検出信号に基づき、予め設定された充填量の塗料が塗料バッグBへ充填されたと判断して塗料の供給を停止する。
例えば、塗料バッグBの充填量を200ccとしたいときには光路Xが導通した時点で塗料の供給を停止し、充填量を300ccとしたいときには光路X及びXが導通した時点で塗料の供給を停止し、充填量を400ccとしたいときには光路X〜Xが導通した時点で塗料の供給を停止し、充填量を500ccとしたいときには全光路X〜Xが導通した時点で塗料の供給を停止すれば、塗料バッグB内に任意の充填量で過不足なく塗料を充填することができる。
なお、図示はしないが、各光路X〜Xと同じ高さに、これらと直交する方向の光路Y〜Yを形成するようにホトインタラプタを配しても良いことはもちろんである。
【実施例3】
【0029】
図6及び図7はさらに他の実施形態を示し、図1及び2と共通する部分は同一符号を付して詳細説明は省略する。
本例では、形状認識センサSとして塗料バッグBの形状を画像化する撮像装置(画像化手段)31を用い、制御装置Cに、その画像化された塗料バッグBの形状に基づいて塗料充填量を算出する塗料充填量算定手段を備えている。
撮像装置31は、塗料タンクT内の塗料バッグBの形状変化を撮像できるように、例えば塗料充填機6の充填位置にセットされた塗料タンクTの真上に位置するように設けられており、塗料バッグBの横断面の最大形状が撮像されることとなる。
【0030】
制御装置Cは、塗料バッグBに予め設定した容量を充填したときに撮像された塗料バッグBの面積を記憶した面積−充填量変換テーブル32を備えている。
図8は制御装置Cの制御手順を示すフローチャートであって、塗料タンクTが塗料充填装置6にセットされるとスタートし、ステップSTP1で撮像装置31から画像を取り込み、ステップSTP2で画像中の塗料バッグB部分を抽出し、ステップSTP3で塗料バッグ部分の面積を算出し、ステップSTP4で面積−充填量変換テーブル32を参照して充填量を算出し、ステップSTP5で算出された充填量Qと予め設定された目的充填量Qと比較され、Q<Qの場合はステップSTP6で塗料の供給を開始し又は継続する制御信号を出力してステップSTP1に戻り、Q≧Qの場合はステップSTP7に移行して塗料の供給を停止する制御信号を出力して処理を終了する。
上記処理手順中、ステップSTP2〜ステップSTP4の処理が塗料充填量算定手段である。
【0031】
これにより、撮像装置31で撮像した画像に基づいて塗料バッグB内の塗料の充填量を検出することができ、予め設定された充填量に達した時点で塗料の供給が確実に停止され、塗料バッグB内に過不足なく塗料を充填することができる。
【実施例4】
【0032】
図9はさらに他の実施形態を示し、図1及び2と共通する部分は同一符号を付して詳細説明は省略する。
本例では、塗料バッグBの表面に被検出体となる金属片Mが一体的に設けられ、形状認識センサSとして高周波形近接センサ41が用いられており、予め設定された充填量の塗料が塗料バッグBへ充填されて膨らんだときに塗料タンクTの内壁に近付いた前記金属片Mを検出できる位置に当該近接センサ41が配されている。
金属片Mは剥がれたり、塗料や作動流体に悪影響を及ぼさないように、少なくとも外層42と内層43の二層でラミネート加工された塗料バッグBの層間に埋め込まれている。
【0033】
これにより、塗料充填装置6の充填位置にセットされた塗料タンクTに塗料が充填されて、予め設定された充填量に達した時点で近接センサ41により検出信号が出力されることとなるので、その時点で塗料の供給を停止すれば、塗料バッグB内に過不足なく塗料を充填することができる。
【0034】
なお、形状認識センサSは上述したホトインタラプタ12、21や、撮像装置31や、容量式近接センサ41に限られるものでなく、塗料タンクTの外部から塗料充填に伴って変化する塗料バッグBの形状変化を非接触測定し得るものであれば任意のセンサを採用することができ、例えば、塗料が導電性物質であり、作動流体及び塗料タンクが非導電性物質である場合に、塗料バッグBに充填された導電性物質の容積変化に伴う電気容量変化を、塗料バッグBの形状変化として検出するものであっても良い。
また、塗装機5は、塗料タンクTが塗装機本体4に着脱可能に装着されるものに限らず、塗料タンクTが塗装機本体4に一体的に装着されているものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上述べたように、本発明は、塗料タンクに内蔵された塗料バッグに塗料を充填して、その外側に作動流体圧を作用させることにより塗料を霧化機構に送給して噴霧する塗装システムの用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る塗装システムの一例を示す説明図。
【図2】その要部を示す斜視図。
【図3】他の実施形態の要部を示す斜視図。
【図4】他の実施形態の要部を示す平面図。
【図5】他の実施形態の要部を示す説明図。
【図6】さらに他の実施形態の要部を示す斜視図。
【図7】その画像を示す説明図。
【図8】その処理手順を示すフローチャート。
【図9】さらに他の実施形態の要部を示す説明図。
【符号の説明】
【0037】
1 塗装システム
4 塗装機本体
T 塗料タンク
5 塗装機
6 塗料充填装置
B 塗料バッグ
8 回転霧化頭(霧化機構)
9P 塗料供給系
9D 作動流体回収系
S 形状認識センサ
C 制御装置
12 ホトインタラプタ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を充填する塗料バッグが内蔵され、その外側を作動流体で満たした塗料タンクが塗装機本体に一体的に、あるいは、着脱可能に装着され、塗料バッグの外側に作動流体圧を作用させることにより塗料を塗装機本体に形成された霧化機構に送給して噴霧する塗装機と、前記塗料タンクに塗料を充填する塗料充填装置からなる塗装システムにおいて、
前記塗料充填装置は、充填位置に位置決めされた塗料タンクの塗料バッグ内に塗料を供給する塗料供給系と、前記塗料タンクの外部から塗料充填に伴って変化する塗料バッグの形状変化を非接触測定する形状認識センサと、該形状認識センサの検出信号に基づき予め設定された充填量の塗料が塗料バッグへ充填されたと判断されたときに前記塗料供給系による塗料の供給を停止させる制御装置を備えていることを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
前記形状認識センサは、塗料タンク内に光を照射する光源と、この光源から照射された光の量を検出する検出器とを備えており、塗料充填前後の塗料バッグが、前記光源から照射された光のタンク内における光路を遮断または導通することにより前記検出器で検出する光の量を変化させる位置に設けられている請求項1記載の塗装システム。
【請求項3】
前記塗料バッグは、塗料が充填される前においては前記光源から照射される光の光路を遮り、所定量以上の塗料が充填された後においては前記光源から照射される光の光路を遮らない位置に設けられている請求項2記載の塗装システム。
【請求項4】
前記塗料バッグは、塗料が充填される前においては前記光源から照射される光の光路を遮らず、所定量以上の塗料が充填された後においては前記光源から照射される光の光路を遮る位置に設けられている請求項2記載の塗装システム。
【請求項5】
前記光源の光が可視光である請求項2又は3記載の塗装システム。
【請求項6】
前記光源及び検出部が塗料タンクの外部に設けられており、前記光源から照射された光が、塗料タンク内部を通過して前記検出器で検出されるように、塗料タンクの少なくとも一部を透明部材で形成した請求項2乃至4記載の塗装システム。
【請求項7】
前記塗料バッグが透明樹脂で形成された請求項2〜5記載の塗装システム。
【請求項8】
前記形状認識センサとして、塗料充填後の塗料バッグの形状を画像化する画像化手段と、画像化された塗料バッグの形状から塗料充填量を算出する塗料充填量算定手段とを備えた請求項1記載の塗装システム。
【請求項9】
前記形状認識センサとして、高周波形近接センサが用いられ、塗料バッグの表面には予め設定された充填量の塗料が塗料バッグへ充填されて膨らんだときに塗料タンク内壁に近付く部分に被検出体となる金属片が一体的に設けられた請求項1記載の塗装システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−319728(P2007−319728A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149417(P2006−149417)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】