説明

塗装ブースにおける噴霧飛沫の回収および乾燥処理のための装置および方法

液体塗料塗装ブース(10)は、その内側で液体塗料が噴霧される塗装チャンバー(11)を具え、このチャンバーにはここから空気流を吸引するための格子配列床(15)が設けられ、吸引された空気流は次にフィルターユニット(20,26)まで搬送され、このフィルターユニットは、空気をろ過すると共にその上流の空気流に導入される中和粉末の助けを借りて噴霧飛沫を分離する。空気流はチャンバーから少なくとも1本の導管(17)を介して吸引され、入口が格子配列床の下に近接し、これによって入口を横切る粉末の層流のための出口(23)がチャンバーの格子配列床とほぼ平行に導管の入口の両側の近傍に設けられ、導管を通ってチャンバーを出る前記空気流が層流を通り抜けるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、革新的スプレー飛沫除去システムを持った吹付け塗装ブースに関する。この発明はまた、除去方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
液体塗料を用いた吹き付け塗装に関する技術において、いわゆる「噴霧飛沫」、すなわちブースの雰囲気内で浮遊したままの過剰に霧化された塗料の問題は、良く知られている。
【0003】
この理由のため、塗料の噴霧飛沫を床の適当な格子を介してブースの外側に搬送するように、作業領域を通過する空気流を与えた液体塗料塗装ブースが広く用いられている。しかしながら、引き出される空気は、これが周囲に放出可能またはブース内に再導入可能になる前に、塗料を除去されなければならない。この目的のため、例えば静電型か、あるいは液体粒子をろ過するのに適した一体型フィルターを使用したさまざまな分離システムが提案されている。これらのシステムは概ね複雑であって、そして塗料の粘着性質に起因する大量の保守を必要とする。
【0004】
適当な粉末タイプの中和剤が吹き込まれるチャンバーと、通常の粉末フィルターとからなるろ過システムを通って空気流が搬送される粉末中和システムもまた、提案されている。要するに、チャンバーに入る塗料の液体粒子は、チャンバー雰囲気に浮遊状態で充満する粉末粒子によって吸収および封入され、次いでフィルターにより保持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このシステムは、チャンバー雰囲気を適切に飽和させるために比較的大量の粉末を必要とする。これは、フィルターを頻繁に手入れしてその完全な目詰まりを阻止するための必要性を結果として生ずる。さらに、生成される大量の使用済み粉末は、高い廃棄経費のきっかけを作る。
【0006】
しかしながら、チャンバー内の粉末の実質的に不揃いな分散は、チャンバーの壁に対する塗料の付着を充分に阻止することができない。
【0007】
ブースから粉末を収容するチャンバーまで通過しなければならない空気流に浮遊する液体塗料があらかじめ充分に中和されない場合、この粉末はまた、排気移送管に堆積する噴霧飛沫塗料の量に起因したさらなる保守整備の問題を引き起こす可能性がある。これはまた、粉末が加えられた吹き込み空気クッションをもたらし、液相のままの塗料を含んだ空気流を壁に沿って搬送する。これは管壁に対する塗料の付着を低減するが、用いられる粉末の量をさらに大量に増大させると共にシステムの効率を低減させる。さらに、これらの追加の流れは、塗装チャンバーからの空気を排出する主たる空気流を乱す可能性があり、これは噴霧飛沫の不完全な除去および/または塗装チャンバーへの粉末の戻りを結果として生ずる可能性がある。
【0008】
本発明の主たる目的は、少ない粉末消費量と、高い効率と、設備の保守整備の削減とを確実にすることができる除去方法および塗装ブースを粉末中和が用いられる噴霧飛沫除去システムと共に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的に照らし、本発明により創作された思想は、液体塗料が内部で噴霧される塗装チャンバーであって、このチャンバーから次にフィルターユニットへと搬送される空気流を吸引するための格子配列床が設けられ、前記フィルターユニットがその上流の空気流に導入される中和粉末の助けを借りて前記空気をろ過し、そして塗料噴霧飛沫を分離する塗装チャンバーを具えた液体塗料塗装ブースであって、前記空気流が前記チャンバーから少なくとも1本の導管を介して吸引され、入口が前記格子配列床の下に近接し、これにより前記入口を横切る粉末の層流のための出口が前記チャンバーの前記格子配列床とほぼ平行に前記導管の入口の両側の近傍に設けられ、前記導管を通って前記チャンバーを出る前記空気流が前記層流を通り抜けるようになっていることを特徴とするブースを提供することである。
【0010】
本発明により創作された他の思想は、液体塗料塗装ブースにおいて、ブースの格子配列床を通って吸引される空気流中の噴霧飛沫を除去するための方法は、前記床を通って前記ブースを出た空気流が通り抜け、次に粉末フィルターを使ってろ過される中和粉末のバリヤーを形成するように、前記中和粉末を前記ブースの前記格子配列床の下で平行に吹き込むステップを具えたことを特徴とする方法を提供することである。
【0011】
本発明の革新的な原理およびその利点を従来技術と比較してより明瞭に例示するため、これらの原理を適用した実施形態の一例が添付図面を用いて以下に記述されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明により与えられた塗装ブースの概略断面図を示す。
【図2】図1によるチャンバーの床下にあるシステムの一部の立体投影概略図を示す。
【図3】チャンバーの床下にあるシステムの結合に関して可能な変形例の概略平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照し、図1は本発明により与えられ、概ね10で表示される塗装ブースを示す。
【0014】
このブースは、対象物12(例えば車体)を塗装するためのチャンバー11を具えている。塗装されるこの対象物は、周知の搬送システム13によってチャンバー11の内部に都合良く移送される。
【0015】
このチャンバー11は、作動した場合に塗装される対象物の表面全体に亙って液体塗料を噴霧する塗装装置14を収容する。都合が良いことに、この塗装装置を末端がスプレーガンまたカップとなった周知の種類のロボットアームによって形成することができる。
【0016】
チャンバー11の床15は、噴霧飛沫をチャンバーから排出するためにチャンバーの空気が通過して吸引される格子にて構成されている。このチャンバーの天井には空気入口16が設けられ、これが格子とフィルターとによって都合良く形成され、塗装処理中にチャンバーを上から下まで垂直に通り抜ける連続空気流を有するようになっている。
【0017】
格子配列床15の下方には、これら格子の下方領域を排出導管18に接続する漏斗状導管17(上下を逆にした角錐の形態を有することが有利である)が設けられ、排出導管は、空気流(吸引装置19により動かされる)を粉末のろ過に適したろ過ユニット20へと接続導管35を介して搬送する。
【0018】
空気は、浄化された状態でろ過ユニット20を去り、次に導管21を通って外部に排出および/または導管22を介して再びチャンバーの天井に搬送されるようになっている。周知の空調装置と関連付けて装備可能である空気供給システム25は、空気の再循環または完全な更新を行うことができるように設けられている。
【0019】
図2にもまた、明瞭に見ることができるように、それぞれの導管17は、長方形の上端入口を有し、その反対側には上端入口の水平面へと中和粉末を吹き込むための口23が設けられている。これらの口は、床の格子の直下に吹き込まれた粉末の水平な層を作り出すように配される。この吹き込み方向と床を通って流入する空気流とは、塗装チャンバーが粉末で汚染されることを阻止する。
【0020】
都合が良いことに、これらの導管は、格子配列床の全体を占める導管表面を形成する一般的な横列および縦列の碁盤構成で床の下方に配される。導管の横列全体は、これらの長手方向に沿って前記粉末送出口23が設けられた一対の配管24により機能する導管モジュールを形成する。都合が良いことに、これらの口は、それぞれの配管の壁に形成された1つ以上の長いスリットからなり、それぞれの導管の側面全体を占めるようになっている。配管の両側に口を有することができ、隣接する縦列の導管の表面に配された2本の導管が機能するようになっている。従って、このシステムはモジュール設計を都合良く有することができ、これは1つのモジュールおよびいくつかのモジュールにおいて、単にいくつかの導管を相互に横並びで構成することにより、さまざまな領域のブースに適合させることができるようになっている。配管は、ポンプ装置を持つ給送ユニット31から粉末を供給する配管30によって相互に接続される。
【0021】
従って、粉末の効果的な横断遮蔽膜の形態を可能にするため、それぞれの導管の上端入口の寸法を十分に小さく選択することができる。
【0022】
本発明の原理によると、実質的に水平かつブースの床を通って吸引される主たる空気流に対して横切る粉末の薄い遮蔽膜を形成して噴霧飛沫を除去するため、粉末を十分な量の移送空気流によって供給することができる。この解決の結果、粉末の遮蔽膜を通る噴霧飛沫および液体塗料の浮遊滴を移送する空気流のすべては、これらが除去システムの中の何からと接触状態になる前に、中和粉末遮蔽膜によって実質的に捕捉される。本発明によるシステムに関し、限定された量の粉末が必要であり、大きな中和チャンバーの大気を飽和させることおよび/または噴霧飛沫を搬送する空気流にさらされる壁に沿って粉末を含む空気クッションを作り出すことが不要である。
【0023】
さらに、導管を通ってろ過ユニットに達する空気流は、液体噴霧飛沫塗料を吸収した粉末のみを実質的に含んでいる。
【0024】
従って、ろ過ユニット20を個体粒子のための単純なフィルター26、例えば袋状,カートリッジ状,板状または硬質膜状の類で都合良く構成することができる。希望するのであれば、配管32によってろ過ユニットの入口に粉末の小さな流れを直接導入することもまた、可能である。
【0025】
図1で再び見ることができるように、ろ過ユニットは、ホッパー27の上に配されて空気流が垂直上方向に貫通するフィルターを有することが有利である。
【0026】
従って、フィルターの上流に蓄積する粉末をホッパーへと容易に落下させることができ、例えば粉末を収容サイロ(図示せず)に搬送するための移送手段29が設けられた下方配備収容容器28によって除去する。
【0027】
フィルターを清浄に保つのを助けるため、フィルターの下流に加圧配管33により導入される加圧空気の逆流を用いた浄化サイクルを都合良く行うことができる。この浄化サイクル中、噴霧飛沫に対してフィルターをより一層確実に保護するため、粉末流34をフィルターの上流に導入することもまた可能である。
【0028】
図3は、フィルターの配管および粉末供給口に対する導管の接続の構成の可能な変更を示す。この変更において、配管18は配管24と平行に配される。これは、配管30および35がこの設備の同じ側に配されることを可能にし、従って、床面積が増大した場合により大きなモジュール容積と、碁盤構成におけるより大量の導管の必要性とを結果として生ずる。
【0029】
この時点で、予め規定された対象物がどのようにして目的を達成されているのかは明確である。本発明による方法および発明によるブースの結果として、最小限の中和粉末が必要である。さらに、空気流に分散する液体塗料にて除去プラントを汚す危険性が最小限に低減される。極めて少ない回数の保守整備が設備全体に対し必要とされ、空気流を間欠的に停止させることなく、相対的に長くすることもできる間隔にて浄化サイクルを自動的に行うことができる。フィルターユニットがブースの架台から分かれて配管により接続されるという事実は、フィルターがより容易にアクセスおよび保守できることを意味する。明らかに、本発明の革新的な原理を適用した一実施形態の上の説明は、これらの革新的な原理の例示により与えられ、従って、ここで請求した権利範囲を制限するように見なしてはならない。例えば単一の隣接ノズル,多数の供給配管,接線方向供給方式などを具えた種々の別な形式にて粉末送出口を例えば設計することができる。粉末を微粉状の炭酸カルシウムに都合よく準拠させることができるが、液体塗料を中和するための他の種類の粉末もまた用いることができる。設備の寸法および大きさを特定の要求事項に応じて異ならせることができることは明らかである。導管の数もまた、床の寸法に応じて1本からより多数本まで変動させることができる。導管のモジュール構造体は、何かが液体噴霧飛沫の粉末中和を行う周知の設備にて達成することを困難または不可能にする異なる寸法のブースに対してこの設備の容易な適用を可能にする。
【0030】
ろ過ユニットの数もまた、導管のサブアセンブリーを出る空気流にそれぞれ作用する1つ以上であってよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体塗料が内部で噴霧される塗装チャンバー(11)であって、このチャンバーから次にフィルターユニット(20,26)へと搬送される空気流を吸引するための格子配列床(15)が設けられ、前記フィルターユニットがその上流の空気流に導入される中和粉末の助けを借りて前記空気をろ過し、そして塗料噴霧飛沫を分離する塗装チャンバーを具えた液体塗料塗装ブース(10)であって、
前記空気流が前記チャンバーから少なくとも1本の導管(17)を介して吸引され、入口が前記格子配列床の下に近接し、これにより前記入口を横切る粉末の層流のための出口(23)が前記チャンバーの前記格子配列床とほぼ平行に前記導管の入口の両側の近傍に設けられ、前記導管を通って前記チャンバーを出る前記空気流が前記層流を通り抜けるようになっていることを特徴とするブース。
【請求項2】
前記粉末出口が粉末供給管(24)に形成されたスリット(23)からなり、前記導管(17)の入口の両側に平行に配されていることを特徴とする請求項1に記載のブース。
【請求項3】
このブースの前記格子配列床と平行な平面内で縦横に相互に並んで配される複数の導管(17)を具え、それぞれの導管(17)が前記入口を横切る個々の粉末の層流を与える出口(23)を有することを特徴とする請求項1に記載のブース。
【請求項4】
前記導管に粉末を放出するための出口(23)の両側に有し、前記粉末を供給するための共通の管(24)が隣接する導管の間にあることを特徴とする請求項2および請求項3に記載のブース。
【請求項5】
前記フィルターユニット(20,26)が前記導管(17)から分かれ、管によってこれらに結合されていることを特徴とする請求項1に記載のブース。
【請求項6】
前記空気流が前記フィルター(26)を垂直上方向に通り抜けることを特徴とする請求項1に記載のブース。
【請求項7】
前記フィルターによって捕捉された粉末を捕集するため、ホッパー(27)が前記フィルターの下に配されていることを特徴とする請求項5に記載のブース。
【請求項8】
浄化周期中にフィルターを通る圧縮空気の逆流を伝えるように、圧縮空気入口(33)がフィルターの下流にあることを特徴とする請求項1に記載のブース。
【請求項9】
前記フィルター(26)が袋状か、カートリッジ状か、板状か、または硬質の膜状であることを特徴とする請求項1に記載のブース。
【請求項10】
前記中和粉末が微粉状の炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1に記載のブース。
【請求項11】
液体塗料塗装ブースにおいて、ブースの格子配列床を通って吸引される空気流中の噴霧飛沫を除去するための方法は、前記床を通って前記ブースを出た空気流が通り抜け、次に粉末フィルターを使ってろ過される中和粉末のバリヤーを形成するように、前記中和粉末を前記ブースの前記格子配列床の下で平行に吹き込むステップを具えたことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記中和粉末が微粉状の炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−512770(P2013−512770A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541601(P2012−541601)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054992
【国際公開番号】WO2011/067689
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512141781)ガイコ ソシエタ ペル アチオニ (1)
【Fターム(参考)】