説明

塗装乾燥炉

【目的】 塗装乾燥炉に脱臭装置を付加する際の熱効率の低下を防止する。
【構成】 コンベア1で搬送される被塗装物を、昇温ゾーンAにおいてガス遠赤外線ヒータ2a,2bにより加熱したのち、均熱ゾーンBにおいて熱風により加熱するようにした塗装乾燥炉において、昇温ゾーンAからの排気を更に加熱する脱臭用燃焼室3と、この燃焼室3からの排気の脱臭を行う触媒4を設けると共に、脱臭後の高温排気を、遠赤外線ヒータ2a,2bと該ヒ−タを加熱するための燃焼排気を発生する昇温用燃焼室5よりなる循環系に供給するようにした。
【効果】 脱臭後の高温排気を遠赤外線ヒータ2a,2bの加熱に利用することができ、更に遠赤外線ヒータを流れる高温排気の一部を均熱ゾーンBへ分流させることにより、均熱ゾーンBの加熱にも利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プレス成形品やダイカスト成形品等に塗装を施したのち、その塗料を焼付け乾燥するための塗装乾燥炉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は従来のこの種の塗装乾燥炉を示したもので、コンベア1で搬送される被塗装物を、昇温ゾーンAでガス遠赤外線ヒータ2a,2bにより加熱したのち、均熱ゾーンBで熱風により加熱するようにしたものであり、燃焼室5でバーナ6により発生した燃焼排気を、昇温ゾーン循環用ファン13により、放射パネル又はチューブを列設して構成した遠赤外線ヒータ2a,2bに循環供給して、輻射熱により被塗装物の昇温を行うと同時に、その表面塗料層から有機溶剤を揮発させ、次いで均熱ゾーンBにおいて、熱風の対流熱によって被塗装物を均一にむらなく加熱するものである。同図中、14は均熱ゾーン循環用ファン、9及び17は排気口、18は燃焼室5から均熱ゾーンBへ高温排気を供給するための分岐ダクトであり、19は均熱ゾーンBの温度を調節するためのダンパである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし上述の従来構成においては、排気口9より外部に排出される排気中に、昇温ゾーンAにおいて塗料から揮発したシンナー等の有機溶剤を含んでおり、これがその臭気によって周囲に迷惑を及ぼすという問題があった。またその対策として、脱臭用バーナあるいは脱臭触媒により排気の脱臭を行うには、排気を高温に加熱する必要があって、熱効率を著しく低下させるという欠点があった。本発明は上記の点に鑑み、塗装乾燥炉に排気脱臭装置を付加すると共に、脱臭のために費やされる熱を被塗装物の昇温に再利用することにより、炉の熱効率の低下を最少限に抑えることを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、図1の概略系統図に示すように、コンベア1で搬送される被塗装物を、昇温ゾーンAにおいてガス遠赤外線ヒータ2a,2bにより加熱したのち、均熱ゾーンBにおいて熱風により加熱するようにした塗装乾燥炉において、昇温ゾーンAからの排気を更に加熱する脱臭用燃焼室3と、この燃焼室3からの排気の脱臭を行う触媒4を設けると共に、脱臭後の高温排気を、ガス遠赤外線ヒータ2a,2bと該ヒ−タを加熱するための燃焼排気を発生する昇温用燃焼室5よりなる循環系に供給するようにしたものである。
【0005】
【作用】昇温ゾーンAの排気中に含まれる有機溶剤を燃焼により除去するには、通常750〜800℃まで加熱する必要があるが、白金触媒を用いれば約350℃で溶剤の除去が可能であり、しかもこの温度は炉内の平均温度(約150℃)と比較すれば極めて高い。本発明はこの排熱を有効利用するために、遠赤外線ヒータ2a,2bに循環供給されている燃焼排気に脱臭後の高温排気を合流させて、遠赤外線ヒータ2a,2bの加熱に寄与せしめたものであり、また遠赤外線ヒータを流れる燃焼排気の一部を均熱ゾーンBへ分流させることにより、この排熱を均熱ゾーンBの加熱に利用することもできる。
【0006】
【実施例】図2〜3は本発明による塗装乾燥炉の一実施例を示したもので、炉の前半部は昇温ゾーンA、後半部は均熱ゾーンBとなっており、昇温ゾーンAではベルト面が格子状のスラット型コンベア1の上下に、複数のパネル状又はチュ−ブ状のガス遠赤外線ヒータ2a,2bが配設され、昇温用燃焼室5に設けられている遠赤ヒータ用バーナ6からの燃焼排気が、上パネル2aを通ったのち炉の両側壁に設けられた下向き煙道7を通って、下パネル2bを通り、更に上向き煙道8を通って、その一部は排気口9から外部に排出され、残りは遠赤外線ヒータ用燃焼室5へ還流して再循環する。
【0007】昇温ゾーンAにおいて被塗装物から揮発した有機溶剤は、主として昇温ゾーンAの始端部の吸引口10から脱臭用燃焼室3に導入され、ここで脱臭用バーナ12により約350℃に加熱されたのち、脱臭用ファン11により触媒層4に供給されて脱臭されながら昇温用燃焼室5へ送られ、遠赤外線ヒータ2bから戻ってきた低温の排気と合流して、遠赤ヒータ用バーナ6により遠赤外線加熱に適した温度(約350℃)に制御・加熱されたのち、昇温ゾーン循環用ファン13によって再び遠赤外線ヒータ2aへ送り込まれる。また昇温ゾーンAで揮発した有機溶剤の一部が、均熱ゾーン循環用ファン14に吸引されて均熱ゾーンBへ漏出するのを防止するために、均熱ゾーンBの始端部に脱臭用燃焼室3への吸引口15が設けられている。なお図中、16は均熱ゾーンBの温度を昇温ゾーンAとは独立に調節できるようにするための均熱ゾーン加熱用バーナであり、17は均熱ゾーンBの終端部に設けられた排気口である。
【0008】ガス遠赤外線ヒータ2a,2b内を流れる排気の一部は、上パネル2aの終端部から分岐したダクト18により均熱ゾーンBへ放流される。この排気は約300℃で、均熱ゾーンBの平均温度約150℃に比し高温である上に、有機溶剤を含んでいないので、均熱ゾーンBに熱を与えて排気口17から約150℃で外部へ排出されるようにすれば、前記昇温ゾーンAの排出口9から約250℃で排出されるよりも熱効率を向上することができ、またこれが均熱ゾーンBへのガス供給源となるので、昇温ゾーンAから均熱ゾーンBへの有機溶剤の漏出防止にも寄与する。
【0009】なお炉の入口あるいは出口に、外気が侵入して熱効率と脱臭効率を低下させるのを防止するために、図1〜2に示すようなエアカーテン20を設け、このエアカーテンに排気口6,9から外部に排出される排気を供給するようにすれば、総合熱効率の一層の向上を図ることができる。
【0010】
【発明の効果】本発明による塗装乾燥炉は上述のように、昇温ゾーンAの有機溶剤を除去するために脱臭機構を設けると共に、昇温ゾーン加熱用の遠赤外線ヒータ2a,2bに循環供給されている燃焼排気に脱臭後の高温排気を合流させることによって、脱臭に使用した熱を遠赤外線ヒータ2a,2bの加熱に再利用するようにしたものであるから、熱効率をあまり低下させることなく脱臭機構を装備することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を示す概略系統図。
【図2】同上の一実施例を示す側面断面図。
【図3】同上の上面図。
【図4】従来例の側面断面図。
【符号の説明】
1 コンベア
2a,2b 遠赤外線ヒータ
3 脱臭用燃焼室
4 触媒層
5 昇温用燃焼室
6 遠赤ヒータ用バーナ
7 下向き煙道
8 上向き煙道
9 排気口
10 吸引ダクト
11 脱臭用ファン
12 脱臭用バーナ
13 昇温ゾーン循環用ファン
14 均熱ゾーン循環用ファン
15 吸引口
16 均熱ゾーン加熱用バーナ
17 排気口
18 分岐ダクト
19 温度調節用ダンパ
20 エアカ−テン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンベアで搬送される被塗装物を、昇温ゾーンにおいてガス遠赤外線ヒータにより加熱したのち、均熱ゾーンにおいて熱風により加熱するようにした塗装乾燥炉において、昇温ゾーンからの排気を更に加熱する脱臭用燃焼室と、この燃焼室からの排気の脱臭を行う触媒を設けると共に、脱臭後の高温排気を、遠赤外線ヒータと該ヒ−タを加熱するための燃焼排気を発生する昇温用燃焼室よりなる循環系に供給するようにしたことを特徴とする塗装乾燥炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平7−100422
【公開日】平成7年(1995)4月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−269869
【出願日】平成5年(1993)10月2日
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)