説明

塗装体

【課題】
銀薄膜を保護し、長期の耐光性、耐候性及び耐湿熱性試験等に対して銀薄膜との密着性が低下することのない紫外線硬化型トップコート層を設けた塗装体を提供すること。
【解決手段】
基材の表面に直接、または基材上に設けたアンダーコート層の上に、銀薄膜層、トップコート層を順次設けた塗装体において、トップコート層が光重合開始剤と紫外線硬化型樹脂から成り、且つ(メタ)アクリロイル基含有ベンゾトリアゾール型紫外線吸収性化合物を含有することを特徴とする塗装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期保存性に優れた銀薄膜層を持つ塗装体に関する。
【背景技術】
【0002】
銀薄膜層を持つ塗装体は、優れた金属光沢を持つため、金属、あるいはプラスチック表面に加工され、意匠性材料・反射材料等として利用されている。銀薄膜層はその表面が傷つきやすいこと、空気中で変質しやすいことなどから表面にハードコート材をトップコート層として設ける場合が多い。更に、銀薄膜層はハードコート材との密着が難しく、長期間使用による銀薄膜層の変色等が生じる場合がある。そのため、特に光、湿度等に曝される屋外での使用が制限される場合があり、広い用途で自由に使えなかった。
【0003】
銀薄膜層を保護するために銀薄膜層上にハードコート剤として熱硬化型樹脂から成るトップコート層を設けることが知られている。蒸着法で得られる銀薄膜層を保護するトップコート層としては、特許文献1には変性シリコン樹脂を、特許文献2にはアクリル/イソシアネート硬化タイプの透明樹脂を、特許文献3にはアクリル系樹脂にメラミン系樹脂を含有させて用いることが開示されている。また銀鏡反応で得られる銀薄膜層を保護するトップコート層としては、特許文献4に液状エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂及びシリコン樹脂等を使用することが、特許文献5にはシリコンアクリル系樹脂が、特許文献6には2液硬化型ポリウレタン樹脂またはアクリル変性シリコン樹脂を用いることが開示されている。これらはいずれも熱硬化型樹脂であり、乾燥または重合を十分に行うためには、80℃以上で60分程度の長時間高温環境下に置く必要がある。このためトップコート層を形成させるための工程時間が長くなるという問題がある。そこで工程上の時間短縮のためには紫外線硬化型樹脂を用いることが考えられる。特許文献7、特許文献8には、銀薄膜層を保護するトップコート層として紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂を用いても良いとの記載はあるものの、実際に使用された例示はない。これは、紫外線硬化型樹脂が銀薄膜層との密着性に劣るため、耐湿熱性・耐候性・耐光性等の耐久性に劣るなど改善の余地が多く、長期使用も必要な広い用途での使用には至っていないからである。
【0004】
一方、樹脂等の耐光性を改善するためには、一般的に紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定化剤等を添加することが知られているが、これらの材料を用いても樹脂層と銀薄膜層との密着性に関し、耐湿熱性・耐候性・耐光性等の長期試験後の耐久性を改善することはできなかった。また、紫外線吸収部位、酸化防止部位を持つ化合物のブリードアウトを防止するために、紫外線硬化型樹脂に直接反応する(メタ)アクリロイル基を導入した紫外線吸収剤、酸化防止剤も一般に知られている化合物である。
【0005】
(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物の使用例としては、例えば特許文献9には、ハードコート層の紫外線硬化型樹脂中に添加剤として使用すること、即ち紫外線吸収剤として添加し、光または熱による変色、特に、黄色化を抑制する効果が期待できることが記載されている。特許文献10には、(メタ)アクリロイル基を導入したベンゾトリアゾール型、ベンゾフェノン型、ベンゾフェノール型等の重合性紫外線吸収剤単量体と重合性不飽和単量体との共重合で得られる共重合体を配合した光硬化型塗料組成物が用いられ、従来の一般的な低分子の紫外線吸収剤を配合した光硬化型塗料組成物と異なり、紫外線吸収剤のブリードアウトの問題が解消される記述がある。特許文献11には、プラスチック表面に塗装する場合のアンダーコート層が紫外線吸収シリコーンコーティング被膜からなり、その被膜がオルガノシランオリゴマーと、紫外線吸収基を有する(メタ)アクリル酸エステルが共重合してなるアクリル樹脂と、シラノール基含有ポリオルガノシロキサンと、シリカと、硬化触媒とを含む紫外線吸収シリコーンコーティング材樹脂組成物から形成される。特許文献12にはフィルムの組成として、例えば、紫外線吸収性単量体としての2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールと、不飽和単量体としてのシクロヘキシルメタクリレートとを含む単量体組成物を共重合してなるフィルムが開示されている。
【0006】
このように、(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物は一般的に紫外線吸収剤として使用されており、予め重合性不飽和単量体と反応させることで見かけの分子量が大きくなるためブリードアウト防止としての効果は知られているものの、紫外線吸収剤としての効果は他の紫外線吸収剤と大差あるものではなく、それらを含有する樹脂層が銀薄膜層のトップコート層に応用されることや、更には、銀薄膜層との密着性に関し耐久性を改善する効果が言及されたこともなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−106017号公報
【特許文献2】特開2004−77643号公報
【特許文献3】特開2009−286100号公報
【特許文献4】特開2000−129448号公報
【特許文献5】特開2003−155580号公報
【特許文献6】特開2002−256445号公報
【特許文献7】特開2008−110101号公報
【特許文献8】特開2008−176050号公報
【特許文献9】特開2007−58101号公報
【特許文献10】特開2007−238823号公報
【特許文献11】特開2001−270044号公報
【特許文献12】特開平9−3134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、銀薄膜層の上に紫外線硬化樹脂からなるトップコート層を設けることで、製造工程時間が短く、且つ耐光性、耐候性、耐湿熱性等に優れた銀薄膜層を持つ塗装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために種々検討を加えた結果、基材の表面に直接、または基材の表面に設けたアンダーコート層上に、銀薄膜層、トップコート層を順次設けた塗装体において、該トップコート層が光重合開始剤と紫外線硬化型樹脂から成り、且つ(メタ)アクリロイル基含有ベンゾトリアゾール型紫外線吸収性化合物を含有することにより、製造工程時間が短く、且つ耐光性、耐候性等に優れた長期保存に耐える銀薄膜層を持つ塗装体を提供することができ、課題を解決することができた。
【0010】
該銀薄膜層が銀鏡反応によって形成された銀薄膜層から成ることが好ましい。また、(メタ)アクリロイル基含有ベンゾトリアゾール型紫外線吸収性化合物が2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールであることが好ましい。更に、トップコート層中に該紫外線吸収性化合物を紫外線硬化型樹脂に対して1〜10質量%含有させることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により長期の耐候性、耐光性及び耐湿熱性試験に対しても銀薄膜層とトップコート層が安定した密着性を持った塗装体を得ることができた。特に光、湿度に曝される屋外でも制限なく使用することができるようになった。これにより、金属基材、あるいはプラスチック基材表面に優れた金属光沢を持たせた意匠性に優れた材料、また反射材料、電磁波シールド材料等としてより広く屋内外で利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、トップコート層の製造工程時間を短縮できる紫外線硬化型樹脂を用いて、長期保存下でも銀薄膜層との密着性が低下しないトップコート材を検討する中で、紫外線硬化型樹脂に(メタ)アクリロイル基含ベンゾトリアゾール型有紫外線吸収性化合物を併用することにより、一般の紫外線吸収剤では見られなかった長期保存下で銀薄膜層との密着性を維持する効果を見出した。更に耐光試験、耐候試験に加えて耐湿熱試験においても密着性が維持されることは予期せぬ効果であった。
【0013】
本発明に用いる(メタ)アクリロイル基含ベンゾトリアゾール型有紫外線吸収性化合物としては、分子内にベンゾトリアゾール構造と(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、例えば2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(アクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチル−3′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−(2−プロペニル)−5′−t−ブチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−(2−プロペニル)−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−イソプロペニル−5′−t−ブチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−イソプロペニル−5′−t−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−2−(2−メタクリロイルオキシエトキシカルボニル)エチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−2−(2−アクリロイルオキシエトキシカルボニル)エチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)−3′−t−ブチルフェニル]−4−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)−3′−t−ブチルフェニル]−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは適宜使用することができるが、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールが特に好ましく用いられる。その添加量は、紫外線硬化型樹脂に対して0.5〜15質量%含有させることが好ましく、特に1〜10質量%含有させることがより好ましい。0.5質量%未満では、保存下、銀薄膜層とトップコート層との密着性が十分に改善されないことがあり、15質量%より多くても効果としては飽和し大きく向上しないことがある上、余分な材料が使用されることからコスト的にも好ましくない。
【0014】
本発明の銀薄膜層を持つ塗装体を作製する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、基材の表面を必要に応じて表面処理、または基材にアンカー剤を塗布し、密着性を向上させる処理を行った後に、アンダーコート層を設ける。そのアンダーコート層の表面に銀薄膜層を設ける。そして銀薄膜層の表面に本発明によるトップコート層を設けることで長期間安定した銀薄膜層を持つ塗装体を得ることができる。
【0015】
更に詳しく説明する。
本発明に用いられる基材としては、各種のプラスチック類、金属類、ガラス類、ゴム類等が用いられる。プラスチック類としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、及びこれらを複合化した樹脂、またナイロン繊維、パルプ繊維等の有機繊維で強化した繊維強化プラスチック(FRP)等が挙げられるが特に限定されるものではない。金属としては、鉄、アルミ、ステンレススチール、銅、真鍮等が挙げられるが特に限定されるものではない。ガラスも無機ガラスまたはプラスチックガラス等、特に限定されるものではない。
【0016】
これらの基材とアンダーコート層との密着性を向上させるため前処理を施してもよい。前処理法としては、洗剤、溶剤洗浄や超音波洗浄での洗浄処理等の湿式法、コロナ処理、紫外線照射、電子線照射処理等の乾式処理を行う。また基材とアンダーコート層との双方に密着性を持つ塗料(アンカー剤)を設けたりする。
【0017】
アンダーコート層は、基材との密着性が良く、且つアンダーコート層上に設ける銀薄膜との密着性に優れることが要求される。また平滑な表面を形成することも要求される。アンダーコート材としては例えば、アルキッドポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等、末端水酸基を持つポリマーまたはオリゴマーと硬化剤としてイソシアナート化合物を混合したポリオール系塗料、エポキシ樹脂に硬化剤としてアミン化合物を混合したエポキシ系塗料等が、基材、また塗装体として要求される特性に基づき選択される。アンダーコート層の膜厚は5〜30μmが好ましいが特に限定されるものではない。
【0018】
アンダーコート層上に銀薄膜層を形成させる方法としては、真空容器の中で金属銀を加熱し気化もしくは昇華させ、基板の表面に付着させ銀薄膜を形成する蒸着法、真空容器の中にアルゴンガスを満たし、基板とターゲット間に高電圧をかけて、イオン化したアルゴンをターゲットに衝突させて、はじき飛ばされた金属原子を基板に成膜させるスパッタリング法、予め銀薄膜をフィルム等の表面に形成させ、基材に転写させる転写法等の乾式方法と、化学反応で金属を形成させるめっき等の湿式方法がある。用途により最適な方法が選択される。
【0019】
湿式方法は銀薄膜を真空容器内で形成する必要がないため、他の工程と連続させて処理することが可能となり、生産性を向上させることができるため、好ましく用いられる。
【0020】
銀薄膜層の厚さは20〜300nmが好ましく、50〜250nmがより好ましい。20nm未満では、銀の膜厚が十分でないために反射率が十分でないことがあり、膜厚が300nmを超えても、反射率はほぼ一定となり、余分な銀が使用されることからコスト的にも好ましくない。
【0021】
次に、銀薄膜層の形成方法として好ましい、銀鏡反応を利用した化学めっき法(無電解めっき法)による銀薄膜層を形成する方法を説明する。
【0022】
アンダーコート層の表面に銀を析出させるためには、まず触媒として塩化第1スズ等を含有する活性化処理液を用いて第1スズイオンをアンダーコート層の表面に担持させる。その方法としては、アンダーコート層を設けた基材を活性化処理液中に浸漬する方法、アンダーコート層表面に塩化第1スズ等を含む活性化処理液を塗布する方法等がある。基材の形状等によって任意に選択することができるが、塗布方法としては、特に基材の形状を選ばないスプレー塗布が好適である。更にアンダーコート層表面に余分に付着した活性化処理液を脱イオン水または精製蒸留水で洗浄する。
【0023】
次いで、金属塩水溶液による処理を行うことが好ましい。金属としては銀を用いることが好ましく、金属塩水溶液としては硝酸銀水溶液が好ましい。硝酸銀濃度としては0.01mol/L前後の、より希薄な溶液とした上でこれを単独で活性化処理を施した表面に接触させる。この処理工程は、前記金属塩化合物の水溶液に活性化処理を施した基材を浸漬するか、あるいは金属塩化合物の水溶液を活性化処理を施した表面に塗布することにより実施される。特に、スプレー塗布は好適である。
【0024】
次いで硝酸銀及びアンモニアを含むアンモニア性硝酸銀溶液と、還元剤及び強アルカリ成分を含む還元剤溶液の2液を、上記処理を施した表面上で混合されるように塗布し酸化還元反応が生じることにより金属銀が析出し、銀被膜が形成され銀薄膜層となる。
【0025】
前記還元剤溶液としては、グルコース、グリオキサール等のアルデヒド化合物、硫酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジンまたはヒドラジン水和物等のヒドラジン化合物等の有機化合物、亜硫酸ナトリウムまたはチオ硫酸ナトリウム等の水溶液が好適に使用される。
【0026】
前記銀水溶液には、良好な銀を生成させるためにいくつかの添加剤を加えることもできる。例えば、モノエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアミノアルコール化合物、グリシン、アラニン、グリシンナトリウム等のアミノ酸またはその塩等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0027】
前記アンモニア性硝酸銀溶液と還元剤溶液の2液をアンダーコート層表面上で混合されるように塗布する方法としては、2種の水溶液を予め混合し、この混合液をスプレーガン等を用いてアンダーコート層表面に吹き付ける方法、スプレーガンのヘッド内で2種の水溶液を混合して直ちに吐出する構造を有する同芯スプレーガンを用いて吹き付ける方法、2種の水溶液を2つのスプレーノズルを持つ双頭スプレーガンから各々吐出させ吹き付ける方法、2種の水溶液を2つの別々のスプレーガンを用いて、同時に吹き付ける方法等がある。これらは状況に応じて任意に選ぶことができる。
【0028】
続いて、脱イオン水または精製蒸留水を用いて銀薄膜層の表面を水洗し、その表面上に残留する銀鏡反応後の溶液等を取り除いた後、析出した金属銀を安定化させるために、必要に応じて銀と反応もしくは親和性を有する有機化合物を含む溶液に浸漬または該溶液を塗布する等の処理を行うことができる。
【0029】
該有機化合物としてはメルカプト基もしくはチオン基を有する含窒素複素環化合物が有効に用いられる。該含窒素複素環化合物の複素環といえば、イミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、チアゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、ピラゾリン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等があり、中でもイミダゾール、トリアゾール、テトラゾールが好ましい。具体例としては2−メルカプト−4−フェニルイミダゾール、2−メルカプト−1−ベンジルイミダゾール、2−メルカプト−ベンズイミダゾール、1−エチル−2−メルカプト−ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1−ブチル−ベンズイミダゾール、1,3−ジエチル−ベンゾイミダゾリン−2−チオン、1,3−ジベンジル−イミダゾリジン−2−チオン、2,2′−ジメルカプト−1,1′−デカメチレン−ジイミダゾリン、2−メルカプト−4−フェニルチアゾール、2−メルカプト−ベンゾチアゾール、2−メルカプトナフトチアゾール、3−エチル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、3−ドデシル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、2−メルカプト−4,5−ジフェニルオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、3−ペンチル−ベンゾオキサゾリン−2−チオン、1−フェニル−3−メチルピラゾリン−5−チオン、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アセタミド−5−ヘプチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アミノ−5−ヘプタデシル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−n−ヘプチル−オキサチアゾール、2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−ヘプタデシル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−テトラゾール、2−メルカプト−5−ニトロピリジン、1−メチル−キノリン−2(1H)−チオン、3−メルカプト−4−メチル−6−フェニル−ピリダジン、2−メルカプト−5,6−ジフェニル−ピラジン、2−メルカプト−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−メルカプト−6−ベンジル−1,3,5−トリアジン、1,5−ジメルカプト−3,7−ジフェニル−s−トリアゾリノ[1,2−a]−s−トリアゾリン等が挙げられる。
【0030】
このようにして形成された金属銀は傷つきやすいため、更に銀薄膜層の表面にトップコート層を設ける。トップコート層を構成するトップコート樹脂組成物としては熱硬化型樹脂が一般的であるが、本発明では製造工程時間が短い紫外線硬化樹脂が用いられる。トップコート樹脂組成物は基本的には紫外線硬化型樹脂、光重合開始剤、及び本発明による(メタ)アクリロイル基含有ベンゾトリアゾール型紫外線吸収性化合物から成るが、本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で、必要に応じて各種添加剤が樹脂組成物に含まれていてもよい。
【0031】
本発明に用いられる紫外線硬化型樹脂としては、電子硬化型樹脂を含み、紫外線、電子線で硬化する樹脂で、主としてエチレン性不飽和基を有するモノマー及びオリゴマー化合物が好ましく用いられる。具体的には、アミド系モノマー、(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。アミド系モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン等のアミド化合物がある。(メタ)アクリレートモノマーとして2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノールのアルキレンオキシド付加物のアクリレート類及びそのハロゲン核置換体;エチレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート等のグリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオール及びそのアルキレンオキサイドの(メタ)アクリル酸エステル化物、イソシアヌール酸EO変成ジまたはトリ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0032】
ウレタン(メタ)アクリレート類としては、ポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応物に対して、更にヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた反応物等が挙げられる。ここで、ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等があり、低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等が挙げられ、ポリエステルポリオールとしては、これら低分子量ポリオールまたは/及びポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸またはその無水物等の酸成分との反応物が挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
ポリエステル(メタ)アクリレート類としては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物等のポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸またはその無水物等の酸成分とからの反応物等が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレート類としては、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸を付加反応させたもので、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート、フェノールあるいはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテルのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加反応体等が挙げられる。
【0034】
本発明に用いられる光重合開始剤に必要な特性としては安定性がよく、黄変性が少なく低臭であること等が挙げられる。光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のモノアシルホスフィンオキシド類あるいはビスアシルホスフィンオキシド類、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;並びにキサントン類等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で使用することも、安息香酸系、アミン系等の光重合開始促進剤と組み合わせて使用することもできる。上記光重合開始剤の含有量は紫外線硬化型樹脂100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部が特に好ましい。
【0035】
上記組成から成るトップコート層を硬化させるためには電子線、紫外線等を照射すれば良いが、価格的な面からも一般的には紫外線照射が用いられる。紫外線照射に用いる光源は、波長420nm以下に発光分布を有するものが好ましく、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。紫外線照射量は必要に応じて適宜選択される。
【0036】
トップコート層の厚さは1〜15μmの範囲が好ましい。トップコート層が薄すぎると銀薄膜層を保護する役割としての機能が得られず、また逆に厚すぎると光の透過距離が長くなり光のロスが増加し反射率低下の一因となるため好ましくない。
【0037】
更にトップコート層に必要に応じて添加してもよい各種添加剤としては、例えば、色材、微粒子、酸化防止剤、他の紫外線吸収剤、粘度調整剤、シランカップリング剤、上記の銀薄膜を安定化させるメルカプト基もしくはチオン基を有する含窒素複素環化合物、チオール系化合物やホスファイト系化合物、その他含窒素複素環化合物などが挙げられる。
【0038】
色材としては顔料、染料が用いられる。色材の吸収波長が光重合開始剤の吸収波長を含まないことが光重合開始剤の活性を妨げないことからより好ましい。また透明性の高い顔料、染料を用いると鮮やかな色相が得られるためより好ましい。長期保存安定性が望まれる場合には顔料が好ましく用いられる。
【0039】
顔料としては、例えばカーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエロー等の有機顔料;酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、弁柄、複合金属酸化物等の無機顔料が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの顔料から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。顔料は微粒子分散状態で使用することが好ましく、微粒子分散状態にするためには、合成時に直接微粒子で分散状態にする方法、粉末顔料の場合、特に限定するものではないが、例えば一般的なダイノミル、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ニーダー、ディゾルバー、ホモジナイザー、超音波振動、攪拌子等により顔料粉を直接微粒子分散する方法等がある。分散時に分散剤、分散助剤、増粘剤、カップリング剤等の使用が可能である。顔料の添加量は、顔料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、例えば、各組成物全量固形分100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。顔料の添加量が0.01質量部未満の場合は淡色となり鮮やかな色相が得られないことがあり、10質量部を超えると濃色のため鮮やかな色相が得られないことがあると共に塗膜の平滑性が悪くなることがある。
【0040】
染料としては、例えばアゾ系、アントラキノン系、インジコイド系、硫化物系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系等の染料が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの染料から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。染料の添加量は、染料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、例えば、各組成物全量固形分100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。顔料の添加量が0.01質量部未満の場合は淡色となり鮮やかな色相が得られないことがあり、10質量部を超えると濃色のため鮮やかな色相が得られないことがあると共に塗膜の平滑性が悪くなることがある。
【0041】
トップコート層に微粒子を添加することで硬化時の反応熱を抑えたり、硬化被膜の硬化収縮量を低減できるため、銀薄膜層との密着性の面からも好ましい。また表面の硬度も高めることもできる。微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子、有機−無機複合微粒子のいずれも使用できる。
【0042】
無機微粒子としては例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。ただし、微粒子は一般に透明性を低下させる傾向があるために、種々必要特性のバランスの上で充填方法を調整する必要がある。
【0043】
一般に、無機微粒子は本発明に用いる紫外線硬化樹脂等の有機成分との親和性が低いため単に混合するだけでは凝集体を形成したり、硬化後のトップコート層がひび割れやすくなる場合がある。本発明では無機微粒子と有機成分との親和性を増すため、無機微粒子表面を有機成分を含む表面修飾剤で処理することができる。表面修飾剤は、無機微粒子と結合を形成するか無機微粒子に吸着しうる官能基と、有機成分と高い親和性を有する官能基を同一分子内に有するものが好ましい。
【0044】
無機微粒子に結合もしくは吸着しうる官能基を有する表面修飾剤としては、シラン、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシド表面修飾剤や、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等のアニオン性基を有する表面修飾剤が好ましい。
【0045】
更に有機成分との親和性の高い官能基としては単に有機成分と親疎水性を合わせただけのものでもよいが、有機成分と化学的に結合しうる官能基が好ましく、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物が挙げられる。
【0046】
これらの無機微粒子の表面修飾は、溶液中で処理されることが好ましい。無機微粒子を機械的に微細分散する時に、一緒に表面修飾剤を存在させるか、または無機微粒子を微細分散した後に表面修飾剤を添加して攪拌するか、更には無機微粒子を微細分散する前に表面修飾を行って、その後で微細分散を行う方法でも良い。表面修飾剤を溶解する溶液としては、極性の大きな有機溶剤が好ましい。具体的には、アルコール、ケトン、エステル等の公知の溶剤が挙げられる。
【0047】
有機微粒子としては特に制限がないが、エチレン性不飽和基を有するモノマーからなるポリマー粒子が好ましく用いられる。例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。その他に、ポリシロキサン、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アセチルセルロース、ニトロセルロース、ゼラチン等の樹脂粒子が挙げられる。これらの粒子は架橋されていることが好ましい。
【0048】
微粒子を微細化する分散機としては、例えば一般的なダイノミル、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ニーダー、ディゾルバー、ホモジナイザー、超音波振動、攪拌子等を用いることが好ましい。また、分散媒としては前述の表面修飾用の溶媒が好ましく、分散時に分散剤、分散助剤、増粘剤、カップリング剤等の使用も可能である。
【0049】
本発明に用いることのできる微粒子の平均粒子径は1〜20000nmであり、2〜1000nmであることがより好ましく、5〜500nmであることが更に好ましく、10〜200nmであることが最も好ましい。また、架橋微粒子の形状は、球状、棒状、針状、板状など特に制限なく使用できる。微粒子の充填量は、充填後に硬化させた被膜の体積に対して、2〜70体積%が好ましく、10〜60体積%がより好ましい。
【0050】
トップコート層を設けるための方法としては、低粘度の紫外線硬化型樹脂のモノマーを使用し無溶剤型として塗布、硬化させる方法もあるが、紫外線硬化型樹脂等の塗料組成物を有機溶媒に溶解して塗料とし、塗布することが一般的である。塗布方法としては従来公知の塗布方法によればよく、例えばグラビアロール方式、リバースロール方式、ディップロール方式、バーコーター方式、ナイフコーター方式、エアースプレー方式、エアレススプレー方式、ディップ方式等いずれの手法も使用できる。
【0051】
上記有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル(ジエチルカルビトール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類が挙げられるが限定されるものではない。これらの有機溶剤はトップコート組成物の溶解性によって選択されるが、塗布面状態の改善等の観点からも考慮して選択される。単独でも用いられるが、一般的には2種以上混合して使用されることが多い。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、部及び%は質量部、質量%を示す。
【0053】
(実施例1)
ポリカーボネート板の表面を脱脂、水洗、乾燥した。市販のアンダーコート塗料(大橋化学工業製のアンダークリヤーNo.0128)を、硬化剤(大橋化学工業製のアンダークリヤー用硬化剤−N)と共に有機溶剤(メチルエチルケトンとブチルセロソルブを1:1の割合で混合)に、それぞれ10:2:4の割合で混合して得た塗料をスプレーガンを用いてスプレー塗布した。80℃で2時間加熱乾燥して膜厚20μmのアンダーコート層を形成し、銀薄膜層形成表面を得た。
【0054】
この銀薄膜層形成表面に、水1000部あたり、塩化水素として0.15モルの塩酸、0.06モルの塩化第1スズを含む活性化処理液をスプレーガンで吹き付けて活性化処理を行い、精製水にて洗浄した。続いて脱イオン水1000部に硝酸銀10部を溶解した硝酸銀水溶液をスプレーガンで吹き付けて活性化処理を行った。その後、銀鏡反応を利用した化学めっき法により銀鏡めっきを行った。
【0055】
銀鏡めっき液は、次のようにして調製した。脱イオン水1000部に硝酸銀20部を溶解した硝酸銀溶液と、別に、脱イオン水1000部に28%アンモニア水溶液100部、モノエタノールアミン5部を溶解してアンモニア溶液を調液した。使用前に、これらの硝酸銀溶液とアンモニア溶液を1対1で混合してアンモニア性硝酸銀溶液とした。次に、脱イオン水1000部に硫酸ヒドラジン10部、モノエタノールアミン5部及び水酸化ナトリウム10部を溶解して還元剤溶液を調液した。
【0056】
得られた、アンモニア性硝酸銀溶液と還元剤溶液を、上記の活性化処理を施した表面に、双頭スプレーガンを使用して同時に吹き付けて銀薄膜層を形成させ、精製水にて洗浄した後、70℃30分間乾燥機中で乾燥させた。
【0057】
次に、上記銀薄膜層の上にトップコート層を設けた。アクリルシリコン系オリゴマー100部、光重合開始剤(イルガキュアー184)3部、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート1.5部、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール0.8部を有機溶剤(メチルエチルケトンとブチルセロソルブを1:1の割合で混合)280部に十分溶解し、トップコート塗料とし、銀薄膜層上にスプレーガンでスプレー塗布した。80℃15分加熱乾燥してキセノンランプを用いた紫外線照射装置で照射エネルギー約800mJ/cmの紫外線を照射しトップコート塗料を硬化させ、膜厚7μmのトップコート層を形成させた。このようにしてポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0058】
(実施例2)
実施例1のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの添加量0.8部を1.5部に変更した以外は実施例1と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0059】
(実施例3)
実施例1のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの添加量0.8部を3.0部に変更した以外は実施例1と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0060】
(実施例4)
実施例1のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの添加量0.8部を5.0部に変更した以外は実施例1と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0061】
(実施例5)
実施例1のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの添加量0.8部を8.0部に変更した以外は実施例1と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0062】
(実施例6)
実施例1のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの添加量0.8部を10.0部に変更した以外は実施例1と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0063】
(実施例7)
実施例1のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの添加量0.8部を15.0部に変更した以外は実施例1と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0064】
(実施例8)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの添加量1.5部を2−[2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−2−(2−メタクリロイルオキシエトキシカルボニル)エチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0065】
(実施例9)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの添加量1.5部を2−[2′−ヒドロキシ−5′−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)−3′−t−ブチルフェニル]−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0066】
(比較例1)
実施例1のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールを除いた以外は実施例1と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0067】
(比較例2)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部を2−(2H−ベンゾトリアゾール‐2‐イル)−4−tert−オクチルフェノール1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0068】
(比較例3)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部を2‐(2H‐ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0069】
(比較例4)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部を2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェノール1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0070】
(比較例5)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部を3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸−2,4−ジ−tert−ブチルフェニルエステル1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0071】
(比較例6)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部を2−ヒドロキシ−4−(オクチルオキシ)ベンゾフェノン1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0072】
(比較例7)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部を2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェノール1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0073】
(比較例8)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部を(2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−[3−(ドデシルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ]フェノール1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0074】
(比較例9)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部を2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0075】
(比較例10)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部を2−ブチル−2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジル)マロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル)1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0076】
(比較例11)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部をセバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)エステル1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0077】
(比較例12)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部をセバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0078】
(比較例13)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部を2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンジル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェニルアクリレート1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0079】
(比較例14)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部を2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0080】
(比較例15)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部を4,6−ビス(オクチルチオメチル)o−クレゾール1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0081】
(比較例16)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部をペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)フェニル)プロピオネート]1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0082】
(比較例17)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部をチオエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0083】
(比較例18)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部をオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0084】
(比較例19)
実施例2のトップコート配合に用いた2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1.5部をヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]1.5部に変更した以外は実施例2と同様にしてトップコート塗料を調整し、ポリカーボネート板表面に銀薄膜層を形成した塗装体を得た。
【0085】
<評価試験方法>
実施例1〜9及び比較例1〜19で得られた銀薄膜塗装体について、以下の評価試験を行った。この結果を表1に示す。
【0086】
1)評価A(密着性)
評価試験を実施する前の塗装体表面に、カッターで基材に達するようにクロスカットを入れ、セロファンテープを強く押し当てた後、セロファンテープを剥離し、次の基準に基づいて判定した。
○:塗装体の塗膜の剥離が無く良好。
△:塗膜が少し剥がれた。
×:塗膜が全て剥がれた。
【0087】
2)評価B(耐熱試験)
80℃に保持した熱風循環乾燥機の中にサンプルを15日間放置した。試験を行った後の塗装体表面に、カッターで基材に達するようにクロスカットを入れ、セロファンテープを強く押し当てた後、セロファンテープを剥離し評価Aの基準と同様にして判定した。
【0088】
3)評価C(耐湿熱試験)
60℃で相対湿度95%に保持した恒温恒湿機の中にサンプルを10日間放置した。試験を行った後の塗装体表面に、カッターで基材に達するようにクロスカットを入れ、セロファンテープを強く押し当てた後、セロファンテープを剥離し評価Aの基準と同様にして判定した。
【0089】
4)評価D(耐光試験)
キセノンフェードメーターを用いて、槽内温度42℃、相対湿度50%の環境下でキセノン光を10日間照射した。試験を行った後の塗装体表面に、カッターで基材に達するようにクロスカットを入れ、セロファンテープを強く押し当てた後、セロファンテープを剥離し評価Aの基準と同様にして判定した。
【0090】
5)評価E(耐侯試験)
キセノンフェードメーターを用いて、槽内温度42℃、相対湿度50%の環境下でキセノン光の照射と間欠純水噴霧を10日間行った。試験を行った後の塗装体表面に、カッターで基材に達するようにクロスカットを入れ、セロファンテープを強く押し当てた後、セロファンテープを剥離し評価Aの基準と同様にして判定した。
【0091】
【表1】

【0092】
評価結果から明らかなように、本発明により長期の耐候性及び耐光性試験に対して安定な銀薄膜層を持つ塗装体を得ることができ、特に光、湿度に曝される屋外でも制限なく使用することができるようになった。これにより、金属基材、あるいはプラスチック基材表面に優れた金属光沢を持たせた意匠性に優れた材料、また反射材料、電磁波シールド材料等としてより広く屋内外で利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に直接、または基材上に設けたアンダーコート層上に、銀薄膜層、トップコート層を順次設けた塗装体において、該トップコート層が光重合開始剤と紫外線硬化型樹脂から成り、且つ(メタ)アクリロイル基含有ベンゾトリアゾール型紫外線吸収性化合物を含有することを特徴とする塗装体。
【請求項2】
銀薄膜層が銀鏡反応によって形成された銀薄膜層であることを特徴とする請求項1に記載の塗装体。
【請求項3】
(メタ)アクリロイル基含有ベンゾトリアゾール型紫外線吸収性化合物が、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールである請求項1または2に記載の塗装体。
【請求項4】
該トップコート層中の(メタ)アクリロイル基含有ベンゾトリアゾール型紫外線吸収性化合物の含有量が、紫外線硬化型樹脂に対して1〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装体。

【公開番号】特開2012−143955(P2012−143955A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3706(P2011−3706)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】