説明

塗装方法

【課題】建築現場における既設の壁面に対し、安定した斑点模様を付する簡便な塗装方法を提供する。
【解決手段】壁面に対し着色塗料を塗装した後、上塗材を塗装する塗装方法において、着色塗料として鉛筆硬度2H以下の塗膜を形成するものを使用し、上塗材として、合成樹脂エマルション(a)、及びかさ密度が0.8g/ml以下、平均粒子径が0.01mm以上1mm以下であり、前記着色塗料とは異色である軽量着色粒子(b)を必須成分とし、前記合成樹脂エマルション(a)の固形分100重量部に対し、前記軽量着色粒子(b)を0.1重量部以上50重量部以下含有するものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に斑点模様を付与する塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面を構成する材料として、サイディングボード、ALC板等の無機質建材が汎用的に使用されている。このような無機質建材の塗装においては、その意匠性を高めるため、表面に斑点模様を付する手法等が採用されている。例えば特許文献1には、特定粘度に調製した着色塗料を用い、塗装時のパターンや吐出量等を制御しながらスプレー塗装して斑点模様を形成する方法が記載されている。また特許文献2には、ベース塗料を塗装した後、ベース塗料とは異色の着色塗料を不均一に塗装する方法が記載されている。
【0003】
しかし、これらの手法は、いずれも工場内での塗装方法に関するものであり、着色塗料を機械的に制御しながらスパッタ塗装することにより斑点模様を付しているものである。建築現場で壁材として設置された無機質建材については、経時的に劣化が進行するため塗り替えの必要が生じるが、このような建築現場での塗装において上記特許文献の手法を適用しようとしても、所望の大きさの斑点模様を安定して得ることは難しく、実用性に欠くのが現状である。
【0004】
一方、無機質建材に対し、珪砂、雲母等の骨材を樹脂液に分散させた塗料を吹付け塗装することによって、斑点模様を付する方法も知られている。このような方法によれば、使用する骨材の粒度を設定することで、所望の大きさの斑点模様を得ることができる。
しかしながら、このような骨材を含む塗料では、吹付け塗装時に骨材のはね返りや飛び散りが発生しやすく、被塗面に骨材を確実に被着させることは困難である。すなわち、形成される斑点の密度を制御することが難しく、あまり実用的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−186381号公報
【特許文献2】実開平4−77440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、建築現場における既設の壁面に対し、安定した斑点模様を付する簡便な塗装方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定の下塗材を塗装した後、特定のかさ密度、粒子径を有する軽量着色粒子を必須成分とする上塗材を塗装する方法に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0009】
1.壁面に対し下塗材を塗装した後、上塗材を吹付け塗装する塗装方法であって、
前記下塗材として、鉛筆硬度2H以下の塗膜を形成する着色塗料を使用し、
当該上塗材として、合成樹脂エマルション(a)、及びかさ密度が0.8g/ml以下、平均粒子径が0.01mm以上1mm以下である軽量着色粒子(b)を必須成分とし、前記合成樹脂エマルション(a)の固形分100重量部に対し、前記軽量着色粒子(b)を0.1重量部以上50重量部以下含有する上塗材を使用することを特徴とする塗装方法。
2.前記上塗材の粘度が0.1〜15Pa・s、チクソトロピーインデックスが6.0以下であることを特徴とする1.記載の塗装方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建築現場における既設の壁面に対し、安定した斑点模様を形成することができ、美観性の高い仕上りを簡便に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
本発明で塗装対象となる被塗面は、建築物、土木構造物等の壁面であり、壁面を構成する材料としては、例えば、コンクリート、モルタル、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板、珪酸カルシウム板、石膏ボード、プラスチックボード、硬質木片セメント板、塩ビ押出サイディングボード、合板等が挙げられる。これらは、何らかの表面処理(フィラー処理、パテ処理、サーフェーサー処理、シーラー処理等)が施されたもの、あるいは既に塗膜が形成されたものや、壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
【0013】
また、このような壁面は、線状凹部による目地模様を有するもの、例えば、陶磁器タイルで構成された壁面、目地模様を有するテクスチャーが付与された塗膜面、あるいは、目地模様を有する無機質建材で構成された壁面等であってもよい。
【0014】
本発明では、上述のような壁面に対し、下塗材として、鉛筆硬度2H以下の塗膜を形成する着色塗料を塗装する。本発明では、このような下塗材を用いることにより、上塗材塗装時の軽量着色粒子の飛び散り、はね返り等の不具合を抑制することが可能となる。すなわち、本発明の下塗材は、斑点模様の形成安定性、斑点模様による美観性向上に寄与するものである。
本発明で用いる下塗材の鉛筆硬度は2H以下であるが、好ましくはH以下、より好ましくはF以下である。下塗材の鉛筆硬度の下限は、好ましくは4B以上、より好ましくは3B以上である。下塗材の鉛筆硬度がこのような範囲内であれば、上塗材塗膜の割れ等が十分に防止され、斑点模様の美観性を長期にわたり保持することができる。
なお、鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4の方法に従って測定されるものである。試験板としては、アルミニウム板に下塗材を塗装し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)にて14日間乾燥させたものを用いる。
【0015】
着色塗料としては、結合材、及び着色顔料を必須成分として含み、上記条件を満たす塗料を使用すればよい。
このうち結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。合成樹脂としては、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、水溶性樹脂等の水性樹脂が好適である。
結合材のガラス転移温度は、好ましくは50℃以下、より好ましくは−50〜40℃である。なお、ガラス転移温度は、FOXの計算式より求められる値である。
【0016】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等を使用することができる。着色塗料の色調は、このような着色顔料の種類、混合量等を調整することにより適宜設定することができる。
【0017】
下塗材として使用する着色塗料は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、例えば、体質顔料、レベリング剤、湿潤剤、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、艶消し剤、分散剤、吸着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、触媒、架橋剤等を含むものであってもよい。
着色塗料において体質顔料が含まれる場合、上記着色顔料と併せた顔料の総量は、顔料容積濃度で60%以下(好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下)とすることが望ましい。このような顔料容積濃度であれば、所望の硬度を有する着色塗料が得られやすい。
【0018】
着色塗料の塗装には、公知の方法を採用することができる。塗装方法としては、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り等が可能である。着色塗料の塗付け量は、塗料の形態にもよるが、通常は0.05〜0.5kg/m程度である。塗装時には水等の希釈剤を混合して粘性を適宜調製することもできる。着色塗料の乾燥は通常、常温で行えばよい。
【0019】
着色塗料の塗装においては、1種(1色)の着色塗料で壁面全体を塗装することもできるし、色調が異なる2種以上の着色塗料を用いて塗装を行うこともできる。
【0020】
塗装対象となる壁面が、線状凹部による目地模様を有するものである場合は、線状凹部とそれ以外の部分において異なる色に塗り分けることも可能である。このような塗り分けは、線状凹部に現れる色調の着色塗料(第1着色塗料)を全面に塗装した後、その塗料とは異色の着色塗料(第2着色塗料)で線状凹部以外の部分をローラー塗りする方法等により行うことができる。
【0021】
本発明では、上記着色塗料の塗膜が乾燥した後、上塗材を塗装する。
本発明における上塗材は、合成樹脂エマルション(a)と特定の軽量着色粒子(b)を必須成分とするものである。本発明では、このような上塗材を使用することにより、安定した斑点模様を形成することができる。最終的な仕上り外観は、着色塗料の塗膜色を背景とし、その中に軽量着色粒子(b)による斑点模様が付されたものとなる。
【0022】
本発明の上塗材は、通常吹付けにより塗装するものであるが、この際、上塗材に含まれる軽量着色粒子は、むやみに飛び散ったりすることなく被塗面に到達し、被塗面に到達した際には、はね返り等の不具合が起こり難いものである。すなわち、本発明の上塗材では、軽量着色粒子が被塗面に確実に塗着して、美観性の高い斑点模様を安定的に形成することができる。また、上塗材における軽量着色粒子は、その特性に基づき、斑点模様の触感、質感等の向上にも寄与するものである。
【0023】
本発明における軽量着色粒子以外の固体粒子、例えば珪砂、雲母等を使用した場合には、被塗面からのはね返りが生じやすく、被塗面への付着が不完全となる場合もあるため、所望の斑点模様が得られ難い。一方、通常の着色塗料を斑点状に塗装しようとする場合は、塗料の飛び散りを制御することが難しく、大きさの異なる種々の斑点模様が形成されるため、全体的にぼやけた感じの仕上りとなりやすい。
これに対し、本発明では、特定の下塗材を使用するとともに、上塗材における斑点模様形成用粒子として特定の軽量着色粒子を使用するため、このような従来手法の問題を解決することができる。
【0024】
上塗材を構成する成分のうち、合成樹脂エマルション(a)(以下「(a)成分」という)は、結合材として作用するものである。(a)成分としては、通常、透明被膜が形成できるものを使用する。具体的に(a)成分としては、例えば、酢酸ビニル樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。これら合成樹脂エマルションは架橋反応性を有するものであってもよい。
【0025】
上塗材における軽量着色粒子(b)(以下「(b)成分」ともいう)としては、かさ密度が0.8g/ml以下、平均粒子径が0.01mm以上1mm以下であるものを使用する。
(b)成分のかさ密度が0.8g/mlを超える場合は、塗装時における被塗面からのはね返り等を抑制することが困難となる。また、斑点模様の質感向上を図ることが困難となる。
(b)成分のかさ密度は、通常0.8g/ml以下、好ましくは0.01g/ml以上0.5g/ml以下、より好ましくは0.05g/ml以上0.4g/ml以下である。(b)成分のかさ密度がこのような範囲内であれば、上塗材中での(b)成分の分散均一性も高まり、本発明の効果発現の点で好適である。なお、本発明におけるかさ密度は、円筒容器に軽量着色粒子を供給し、容器内の軽量着色粒子のかさ変化が終了するまで上下振動(タッピング振動)を与えることによって測定される値である。
【0026】
(b)成分の平均粒子径が0.01mmよりも小さい場合は、塗装後の仕上面において斑点模様が認識され難くなる。また、(b)成分の平均粒子径が1mmよりも大きい場合は、斑点部分の凸状が目立つようになり、仕上り性、美観性等の点で不利となる。また、塗装作業性が低下するおそれもある。
(b)成分の平均粒子径は、好ましくは0.02mm以上0.5mm以下、より0.03mm以上0.3mm以下である。
【0027】
(b)成分の形状は、特に限定されないが、本発明では粒状のものが好適である。ここに言う粒状とは、平均粒子径と平均厚みが近似した値を示す形状のことである。具体的に、(b)成分としては、平均粒子径と平均厚みの比(平均粒子径/平均厚み)が2以下(好ましくは1.5以下)のものが好適である。このような形状のものを用いることにより、被塗面への塗着が確実となり、良質の斑点模様が形成され、形成塗膜の美観性を高めることができる。平均粒子径と平均厚みの比が大きすぎる場合は、塗着の状態が不揃いとなりやすく、美観性が不十分となるおそれがある。
なお、本発明における平均粒子径は、最も安定な姿勢で水平面に置かれた粒子を上方から観察したときの長径の平均値である。平均厚みは、最も安定な姿勢で水平面に置かれた粒子を水平な面ではさんだときの面間隔の平均値である。
【0028】
上塗材における(b)成分としては、前記着色塗料とは異色であるものを使用することが望ましい。これにより、塗装後の仕上面において(b)成分による斑点模様を視認することが可能となる。上塗材の塗装前に、2種以上の着色塗料を用いて塗り分けを行った場合、(b)成分の色調は、少なくとも1種の着色塗料と異色であればよい。
なお、本発明における異色とは、相互の色調が目視にて異色と認識できる程度のもののことを言う。通常その色差(△E)は5以上(好ましくは10以上、より好ましくは20以上)に設定すればよい。
【0029】
このような(b)成分としては、例えば、ゴム、樹脂、鉱物等、あるいはコルク等の植物等を母体とするものが使用できる。本発明では特にゴムまたは樹脂を母体とする有機質粒子が好適であり、粒子内部に空隙を有する発泡有機質粒子を使用することもできる。
発泡有機質粒子としては、発泡ゴム粒等が挙げられる。発泡ゴム粒は、例えば、各種ゴム成分と、加硫剤、顔料等との混合物を発泡させて得られる発泡ゴム体を破砕することにより得ることができる。ゴム成分としては、特に限定されず、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ハイスチレンゴム、アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム等が挙げられる。本発明では、発泡ゴム体の破砕品をそのまま用いることができるが、必要に応じ着色処理等を行うこともできる。
【0030】
(b)成分の混合量は、(a)成分の固形分100重量部に対し0.1重量部以上50重量部以下(好ましくは0.5重量部以上30重量部以下、より好ましくは1重量部以上20重量部以下)とする。(b)成分の混合量が多すぎる場合は、下層の着色塗膜が隠ぺいされやすくなり、斑点模様形成の点で不利となる。また、塗装時の粒子のはね返り、脱落等が生じやすくなり、斑点模様のムラ等も発生しやすくなる。逆に(b)成分が少なすぎる場合は、斑点模様を付するのに上塗材を多量に塗り重ねばならず、斑点部分の質感が損われるおそれもある。
【0031】
本発明における上塗材は、1種(1色)の軽量着色粒子を含むものであればよいが、必要に応じ色調が異なる2種以上の軽量着色粒子を含むものであってもよい。
【0032】
本発明における上塗材は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、例えば、レベリング剤、湿潤剤、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、艶消し剤、分散剤、吸着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、触媒、架橋剤等を含むものであってもよい。
また、最終的な仕上り外観において着色塗料の塗膜色が視認可能であれば、上塗材には着色顔料等が含まれていてもよい。上塗材における着色顔料の比率は、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下であり、着色顔料を含まない態様も好適である。なお、着色顔料の平均粒子径は、通常5μm以下(好ましくは2μm以下)程度である。
【0033】
本発明における上塗材は、塗装時における粘度を0.1〜15Pa・sに、チクソトロピーインデックスを6.0以下に調製することが望ましい。本発明では、上塗材の粘性特性をこのような条件に設定することで、塗装時における軽量着色粒子のはね返りを抑制する効果等が高まり、塗装作業性、仕上り性向上の点で好適である。
上塗材の粘度は、好ましくは0.5〜10Pa・s、より好ましくは1〜8Pa・sである。また、チクソトロピーインデックスは、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下である。チクソトロピーインデックスの下限は、通常1.0以上(好ましくは2.0以上)である。
なお、本発明における粘度は、BH型粘度計による20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)を測定することにより求められる値である。チクソトロピーインデックス(TI)は、BH型粘度計を用い、下記式により求められる値である。いずれも測定温度は23℃である。
<式>TI=η1/η2
(式中、η1は2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)。η2は20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
【0034】
本発明では、上塗材の粘性特性を上記範囲に調製するため、粘性調整剤を用いることができる。このような粘性調整剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルカリ可溶性エマルション、会合性増粘剤等が挙げられる。このうち本発明では、会合性増粘剤が好適である。会合性増粘剤としては、エチレンオキシドウレタンブロックコポリマーが特に好適である。このような粘性調整剤の混合比率は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、固形分換算で通常0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部程度である。
【0035】
本発明における上塗材は、通常、壁面全体に対し塗装を行うものであり、塗装方法としては吹付け塗装を採用する。塗装の際には、水等を用いて上塗材を希釈することも可能である。上塗材の塗付け量は、通常0.05〜0.8kg/m、好ましくは0.1〜0.5kg/mである。上塗材を塗装した後の乾燥は通常、常温で行えばよい。乾燥時間は、通常1〜5時間程度である。
本発明では、上塗材の塗装後、必要に応じ透明塗料等を塗装することも可能である。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0037】
下塗材としては、以下の着色塗料を用意した。
【0038】
・着色塗料1
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、ガラス転移温度19℃)、酸化チタン、黄色酸化鉄、べんがら、カーボンブラックを主成分とする、顔料容積濃度16%の褐色の着色塗料。この着色塗料1による形成塗膜の鉛筆硬度はFであった。
【0039】
・着色塗料2
アクリルシリコン樹脂エマルション(固形分50重量%、ガラス転移温度24℃)、酸化チタン、黄色酸化鉄、べんがら、カーボンブラックを主成分とする、顔料容積濃度12%の褐色の着色塗料。この着色塗料2による形成塗膜の鉛筆硬度はFであった。
【0040】
・着色塗料3
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、ガラス転移温度12℃)、酸化チタン、黄色酸化鉄、べんがら、カーボンブラックを主成分とする、顔料容積濃度15%の褐色の着色塗料。この着色塗料3による形成塗膜の鉛筆硬度はHBであった。
【0041】
・着色塗料4
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、ガラス転移温度12℃)、酸化チタン、黄色酸化鉄、べんがら、カーボンブラック、体質顔料(クレー)を主成分とする、顔料容積濃度26%の褐色の着色塗料。この着色塗料4による形成塗膜の鉛筆硬度はFであった。
【0042】
・着色塗料5
溶剤可溶型アクリル樹脂(固形分50重量%、ガラス転移温度58℃)、酸化チタン、黄色酸化鉄、べんがら、カーボンブラックを主成分とする、顔料容積濃度15%の褐色の着色塗料。この着色塗料5による形成塗膜の鉛筆硬度は3Hであった。
【0043】
上塗材としては、以下のものを用意した。
【0044】
・上塗材1
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、黒色のゴム粒1(かさ密度0.22g/ml、平均粒子径0.20mm、平均粒子径/平均厚み=1.2)を4重量部、粘性調整剤1(エチレンオキシドウレタンブロックコポリマー、固形分20重量%)を1重量部混合し、さらに水を混合して粘度を3.6Pa・s、チクソトロピーインデックスを4.0に調製した上塗材1を得た。
【0045】
・上塗材2
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、黒色のゴム粒2(かさ密度0.31g/ml、平均粒子径0.25mm、平均粒子径/平均厚み=1.2)を6重量部、粘性調整剤1を1重量部混合し、さらに水を混合して粘度を4.2Pa・s、チクソトロピーインデックスを3.8に調製した上塗材2を得た。
【0046】
・上塗材3
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、黒色のゴム粒3(かさ密度0.14g/ml、平均粒子径0.25mm、平均粒子径/平均厚み=1.3)を3重量部、粘性調整剤1を1重量部混合し、さらに水を混合して粘度を4.0Pa・s、チクソトロピーインデックスを3.9に調製した上塗材3を得た。
【0047】
・上塗材4
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、黒色の樹脂粒1(かさ密度0.69g/ml、平均粒子径0.15mm、平均粒子径/平均厚み=1.0)を10重量部、粘性調整剤1を1重量部混合し、さらに水を混合して粘度を5.3Pa・s、チクソトロピーインデックスを4.0に調製した上塗材4を得た。
【0048】
・上塗材5
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、黒色のゴム粒4(かさ密度0.53g/ml、平均粒子径0.25mm、平均粒子径/平均厚み=1.4)を10重量部、粘性調整剤1を1重量部混合し、さらに水を混合して粘度を4.1Pa・s、チクソトロピーインデックスを4.2に調製した上塗材5を得た。
【0049】
・上塗材6
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、黒色のゴム粒4(かさ密度0.53g/ml、平均粒子径0.25mm、平均粒子径/平均厚み=1.4)を4重量部、粘性調整剤2(セルロース系粘性調整剤、固形分3重量%)を4重量部混合し、さらに水を混合して粘度を3.8Pa・s、チクソトロピーインデックスを6.4に調製した上塗材6を得た。
【0050】
・上塗材7
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、黒色のゴム粒5(かさ密度0.52g/ml、平均粒子径0.3mm、平均粒子径/平均厚み=5)を10重量部、粘性調整剤1を1重量部混合し、さらに水を混合して粘度を4.2Pa・s、チクソトロピーインデックスを4.1に調製した上塗材7を得た。
【0051】
・上塗材8
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、黒色のゴム粒6(かさ密度0.28g/ml、平均粒子径1.2mm、平均粒子径/平均厚み=1.3)を8重量部、粘性調整剤1を1重量部混合し、さらに水を混合して粘度を3.7Pa・s、チクソトロピーインデックスを3.8に調製して、上塗材8を得た。
【0052】
・上塗材9
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、黒色の着色珪砂(かさ密度1.2g/ml、平均粒子径0.25mm、平均粒子径/平均厚み=1.2)を20重量部、粘性調整剤1を1重量部混合し、さらに水を混合して粘度を4.0Pa・s、チクソトロピーインデックスを4.1に調製した上塗材9を得た。
【0053】
・上塗材10
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部に対し、黒色の鱗片状樹脂片(かさ密度0.73g/ml、平均粒子径1.2mm、平均粒子径/平均厚み=25)を10重量部、粘性調整剤1を1重量部混合し、さらに水を混合して粘度を4.5Pa・s、チクソトロピーインデックスを3.9に調製した上塗材10を得た。
【0054】
(試験例1)
窯業系サイディングボートが複数枚併設された壁面を塗装対象の基材とした。窯業系サイディングボートとしては、格子状の目地模様(線状凹部の幅10mm、線状凹部の深さ5mm)が形成されたものを用いた。
この基材の全面に対し、下塗材として着色塗料1を塗付け量0.3kg/mでスプレー塗装した。次いで、24時間養生後、上塗材1を塗付け量0.3kg/mでスプレー塗装し、24時間養生した。このときの塗装作業性及び仕上り性を確認した。なお、以上の工程はすべて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下で行った。ゴム粒1と上記着色塗料1との色差は38であった。
塗装作業性については、粒子のはね返りが少ないものを「A」、はね返りが多いものを「D」とする4段階(優:A>B>C>D:劣)で評価した。また、仕上り性については、良好な斑点模様が形成されたものを「A」、斑点のムラ、凹凸等が目立つ仕上りとなったものを「D」とする4段階(優:A>B>C>D:劣)で評価した。
【0055】
(試験例2)
上塗材1に替えて上塗材2を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。ゴム粒2と着色塗料1との色差は35であった。
【0056】
(試験例3)
上塗材1に替えて上塗材3を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。ゴム粒3と着色塗料1との色差は38であった。
【0057】
(試験例4)
上塗材1に替えて上塗材4を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。樹脂粒1と着色塗料1との色差は33であった。
【0058】
(試験例5)
上塗材1に替えて上塗材5を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。ゴム粒4と着色塗料1との色差は39であった。
【0059】
(試験例6)
上塗材1に替えて上塗材6を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。ゴム粒4と着色塗料1との色差は39であった。
【0060】
(試験例7)
上塗材1に替えて上塗材7を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。ゴム粒5と着色塗料1との色差は39であった。
【0061】
(試験例8)
下塗材として、着色塗料1に替えて着色塗料2を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。ゴム粒1と着色塗料2との色差は39であった。
【0062】
(試験例9)
下塗材として、着色塗料1に替えて着色塗料3を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。ゴム粒1と着色塗料3との色差は38であった。
【0063】
(試験例10)
下塗材として、着色塗料1に替えて着色塗料4を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。ゴム粒1と着色塗料4との色差は40であった。
【0064】
(試験例11)
上塗材1に替えて上塗材8を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。ゴム粒6と着色塗料1との色差は40であった。
【0065】
(試験例12)
上塗材1に替えて上塗材9を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。着色珪砂と着色塗料1との色差は38であった。
【0066】
(試験例13)
上塗材1に替えて上塗材10を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。鱗片状樹脂片と着色塗料1との色差は32であった。
【0067】
(試験例14)
上塗材1として上塗材6、下塗材として着色塗料5を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。ゴム粒4と着色塗料5との色差は39であった。
【0068】
(試験例15)
上塗材1として上塗材10、下塗材として着色塗料5を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。鱗片状樹脂片と着色塗料5との色差は32であった。
【0069】
試験結果を表1〜2に示す。試験例1〜10では、良好な結果が得られた。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に対し下塗材を塗装した後、上塗材を吹付け塗装する塗装方法であって、
前記下塗材として、鉛筆硬度2H以下の塗膜を形成する着色塗料を使用し、
当該上塗材として、合成樹脂エマルション(a)、及びかさ密度が0.8g/ml以下、平均粒子径が0.01mm以上1mm以下である軽量着色粒子(b)を必須成分とし、前記合成樹脂エマルション(a)の固形分100重量部に対し、前記軽量着色粒子(b)を0.1重量部以上50重量部以下含有する上塗材を使用することを特徴とする塗装方法。
【請求項2】
前記上塗材の粘度が0.1〜15Pa・s、チクソトロピーインデックスが6.0以下であることを特徴とする請求項1記載の塗装方法。

【公開番号】特開2011−212675(P2011−212675A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60946(P2011−60946)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】