説明

塗装装置

【課題】色替え時に用いた洗浄液を押出す洗浄エアーが、塗料バルブと塗装ガンの間に残留するのを防止する。
【解決手段】色替え時に塗料通路9に洗浄エア供給通路28から洗浄エアを供給した後、次の塗色の塗料を塗装ガン2まで充填後、塗料通路9のうち次の塗色用の塗料バルブ20と塗装ガン2との間に洗浄エアが残留するのを抑制する洗浄エア残留抑制手段10を備え、洗浄エア残留抑制手段10は、塗料通路9のうち塗料供給方向において最上流側部分に接続されて洗浄エアを塗料通路9の外部に排出するリリーフ通路40と、このリリーフ通路40を開閉するリリーフバルブ21と、このリリーフバルブ21を制御するリリーフバルブ制御手段とを有し、リリーフバルブ制御手段は、洗浄エアによる塗料通路9の洗浄後、塗料通路9内に残留した洗浄エアを外部へ排出する為にリリーフバルブ21を開弁させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗色の異なる塗料を供給する複数の塗料バルブが塗料通路に接続された塗装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車体等の製造ラインにおいては、製造ラインに搬送された車体に種々の塗料を塗装する塗装装置として、塗装ガンに供給する塗色の異なる塗料を順次切替えることにより、複数色の塗料を塗装できる色替え可能な塗装装置が実用に供されている。この塗装装置においては、塗色の異なる塗料を供給する複数の塗料バルブが塗料通路に接続され、要求される塗色の塗料に対応する塗料バルブのみを選択的に開弁させることにより、その塗色の塗料が塗料通路から塗装ガンへ供給されるように構成されている。
【0003】
この塗装装置においては、塗色の異なる複数の塗料に対して1本の塗料通路を共通して用いることから、色替え時に塗料通路や塗装ガンに残存した塗料をシンナー等の洗浄液と洗浄用エアを用いて洗い落とす必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1の塗装装置においては、塗料通路のうち塗料供給方向において最上流側部分に、洗浄用シンナーを供給する洗浄用バルブと、塗料を押し出す押出エアを供給する押出エア供給バルブとが接続されている。色替え時に塗料通路に押出エアが供給され、塗料通路内に残存する塗料が押出エアの圧力を受けて下流側の塗装ガンから吐出された後、シンナー等の洗浄液で塗料通路内が洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−8854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の塗装装置においては、色替え時の塗料通路内の洗浄において、洗浄性を高める為に、シンナー洗浄とエア洗浄とが交互に複数回繰返し行われる。この洗浄方法においては、塗装ガンから次の塗色の塗料吐出時に塗料通路内に残留するシンナーにより塗料が希釈されるのを防止する為、最後はエア洗浄で終了する。そのため、洗浄終了時の塗料通路内にはエアが充填された状態となる。
【0007】
この状態で次の塗色用の塗料バルブが開弁され、塗料通路内に次の塗色の塗料が供給されると、下流側の塗装ガン側に向けて塗料の流れが生じるため、塗料通路内のうち次の塗色の塗料バルブよりも上流側通路部分には洗浄エアが残留することになる。エアは圧縮性流体であるので、供給される塗料の圧力により圧縮される。塗装開始時に一時的に塗装ガンが大気開放となると、塗料通路内の圧縮されたエアが元に戻る分だけ塗装ガンから塗料が吐出し、塗料の飛び散りや吐出応答の遅れ等の不具合を引き起こすという問題が生じる。
【0008】
また、塗装中においては、車体の部位によって塗料ガンから吐出される塗料の吐出量が異なるので、塗料バルブから供給される塗料の吐出量に応じて残留エアにかかる圧力が変化し、その度に残留エアの圧縮、膨張が起こるため、塗装ガンから塗料が設定通りの吐出量で吐出されず、車体の塗装面に塗装ムラや膜厚が不均一に形成されて外観品質を確保することができない。
【0009】
特許文献1の塗装装置においては、塗料通路内を洗浄する際、押出エア、シンナーの順序で洗浄が行われるので、塗料通路内に残存したシンナーにより次の塗色の塗料が希釈されてしまうという問題がある。
本発明の目的は、洗浄エアによる塗料通路の洗浄後、塗料通路のうち次の塗色の塗色用の塗料バルブと塗装ガンとの間に洗浄エアが残留するのを抑制でき、次の塗色の塗料吐出時の塗料の飛び散りや吐出応答の遅れを防止できる塗装装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の塗装装置は、塗色の異なる塗料を供給する複数の塗料バルブが接続された塗料通路に、色替えに際して塗料が残存した塗料通路内を洗浄する洗浄エアを供給する為に塗料通路に洗浄エアを供給する洗浄エア供給通路と、塗料バルブから供給される塗料を吐出する塗装ガンとを接続した塗装装置において、色替え時に塗料通路に洗浄エア供給通路から洗浄エアを供給した後、次の塗色の塗料を塗装ガンまで充填後、塗料通路のうち次の塗色用の塗料バルブと塗装ガンとの間に洗浄エアが残留するのを抑制する洗浄エア残留抑制手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
この塗装装置においては、色替え時に洗浄エアにより塗料通路内に残存した塗料が洗浄エアの圧力を受けて塗装ガンから外部へ排出されて塗料通路内が洗浄され、次の塗色の塗料を塗装ガンまで充填後、洗浄エア残留抑制手段により、次の塗色用の塗料バルブと塗装ガンとの間における洗浄エアの残留が抑制される。
【0012】
請求項2の塗装装置は、請求項1の発明において、洗浄エア残留抑制手段は、塗料通路のうち塗料供給方向において最上流側部分に接続されて洗浄エアを塗料通路の外部に排出するリリーフ通路と、このリリーフ通路を開閉するリリーフバルブと、このリリーフバルブを制御するリリーフバルブ制御手段とを有し、リリーフバルブ制御手段は、洗浄エアによる塗料通路の洗浄後、塗料通路内に残留した洗浄エアを外部へ排出する為にリリーフバルブを開弁させることを特徴としている。
【0013】
請求項3の塗装装置は、請求項2の発明において、リリーフバルブ制御手段は、洗浄エアによる塗料通路の洗浄後、リリーフバルブを閉弁し且つ塗装ガンを開状態にして次の塗色の塗料を塗装ガンまで充填した後、リリーフバルブを開弁し且つ塗装ガンを閉状態にして塗料通路内に残留した洗浄エアをリリーフ通路から外部へ排出させるようにリリーフバルブの開閉を制御することを特徴としている。
【0014】
請求項4の塗装装置は、請求項1の発明において、洗浄エア残留抑制手段は、各塗料バルブに対応し且つその各塗料バルブとその上流側に隣接する塗料バルブとの間において塗料通路を遮断可能な複数の遮断バルブと、これら遮断バルブを制御する遮断バルブ制御手段を有し、遮断バルブ制御手段は、次の塗色の塗料を塗装ガンから吐出する間、塗料を供給する塗料バルブに対応する遮断バルブを閉弁状態に制御することを特徴としている。
【0015】
請求項5の塗装装置は、請求項1の発明において、洗浄エア残留抑制手段は、洗浄エア供給通路から供給されて塗料通路内を洗浄後にその塗料通路内に残留する洗浄エアの圧力を調整する圧力調整手段を備え、圧力調整手段は、次の塗色の塗料を塗装ガンから吐出する間、塗装ガンから吐出される塗料の吐出量に応じて塗料通路内に残留する洗浄エアの圧力を調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、次の塗色の塗料を塗装ガンまで充填後、塗料通路のうち次の塗色用の塗料バルブと塗装ガンとの間に洗浄エアが残留するのを抑制する洗浄エア残留抑制手段を備えたので、次の塗料吐出時の塗料の飛び散りや吐出応答の遅れを防止することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、洗浄エア残留抑制手段は、塗料通路のうち塗料供給方向において最上流側部分に接続されたリリーフ通路と、リリーフバルブと、リリーフバルブ制御手段とを有し、リリーフバルブ制御手段は、洗浄エアによる塗料通路の洗浄後、塗料通路内に残留した洗浄エアを外部へ排出する為にリリーフバルブを開閉させるので、塗料通路内のうち次の塗色の塗料バルブよりも上流側通路部分に残留した洗浄エアをリリーフ通路から外部へ排出させることができ、次の塗料吐出時の塗料の飛び散りや吐出応答の遅れを確実に防止することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、リリーフバルブ制御手段は、洗浄エアによる塗料通路の洗浄後、リリーフバルブを閉弁し且つ塗装ガンを開状態にして次の塗色の塗料を塗装ガンまで充填した後、リリーフバルブを開弁し且つ塗装ガンを閉状態にして塗料通路内に残留した洗浄エアをリリーフ通路から外部へ排出させるようにリリーフバルブの開閉を制御するので、次の塗色の塗料の充填に伴い洗浄エアにかかる圧力が高まるため、短時間で洗浄エアをリリーフ通路から外部へ排出することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、洗浄エア残留抑制手段は、各塗料バルブに対応し且つその各塗料バルブとその上流側に隣接する塗料バルブとの間において塗料通路を遮断可能な複数の遮断バルブと、これら遮断バルブを制御する遮断バルブ制御手段を有し、遮断バルブ制御手段は、次の塗色の塗料を塗装ガンから吐出する間、塗料を供給する塗料バルブに対応する遮断バルブを閉弁状態に制御するので、塗料通路内において洗浄エアが残留しても、次の塗色の塗料が残留した洗浄エアの影響を受けないように遮断バルブにより洗浄エアが閉じ込められるため、次の塗色の塗料吐出時の塗料の飛び散りや吐出応答の遅れを確実に防止することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、洗浄エア残留抑制手段は、洗浄エア供給通路から供給されて塗料通路内を洗浄後にその塗料通路内に残留する洗浄エアの圧力を調整する圧力調整手段を備え、圧力調整手段は、次の塗色の塗料を塗装ガンから吐出する間、塗装ガンから吐出される塗料の吐出量に応じて塗料通路内に残留する洗浄エアの圧力を調整するので、塗料通路内に洗浄エアが残留しても、次の塗色の塗料と残留した洗浄エアとの境界位置が変動しないため、次の塗料吐出時の塗料の飛び散りや吐出応答の遅れを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係る塗装装置の全体構成システム図である。
【図2】色替え制御を含む塗装制御のフローチャートである。
【図3】実施例2の塗装装置の要部の構成図である。
【図4】塗装中における塗装装置の要部の構成図である。
【図5】実施例3の塗装装置の要部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0023】
図1に示すように、塗装装置1は、自動車の車体製造ラインに搬送された車体に種々の塗料を塗装する色替え可能な塗装装置であり、塗料を吐出する塗装ガン2と、この塗装ガン2に塗色の異なる塗料を順次切替えて供給するカラーチェンジバルブユニット(CCVユニット)3と、複数の塗料タンク4と、シンナータンク5と、電磁バルブユニット6と、電磁バルブユニット6等を制御する制御ユニット7と、加圧エア供給源8と、CCVユニット3の塗料通路9のうち次の塗色用の塗料バルブ20と塗装ガン2との間に洗浄エアが残留するのを抑制する洗浄エア残留抑制手段10を備えている。
【0024】
エアスプレー型の塗装ガン2の入口側ポートには、加圧エア供給源8のメイン通路11から分岐した霧化エア通路12及びパターンエア通路13と、塗料管14とが夫々接続されている。霧化エア通路12には霧化エア用バルブ15とレギュレータ16が設けられている。パターンエア通路13には、パターンエア用バルブ17とレギュレータ18が設けられている。塗装ガン2の近傍には、塗料管14に介装されたフロントトリガー19aとリアトリガー19bが設けられている。
【0025】
CCVユニット3は、塗装ガン2に塗料管14を介して接続された塗料通路9と、この塗料通路9に接続され塗色の異なる塗料を供給する複数の塗料バルブ20と、塗料通路9のうち塗料供給方向において最上流側部分に接続されたリリーフバルブ21及び洗浄バルブ22と、塗料通路9よりも上流側に設けられた洗浄通路23と、洗浄通路23に接続されたエア洗浄用バルブ24及びシンナー洗浄用バルブ25とから構成されている。
【0026】
各塗料バルブ20はエア駆動の方向切換弁であり、各塗料バルブ20の入口側ポートには塗料供給通路26が接続されている。この塗料供給通路26の最上流側には塗料を貯留する塗料タンク4が設けられている。
【0027】
塗料供給通路26は往路26aと復路26bから構成され、往路26aの最上流側部分にはポンプ27が設けられ、途中部にはレギュレータ28が接続されている。塗料バルブ20の閉弁時、通常、塗料は、ポンプ27の作動により、塗料タンク4から往路26a、塗料バルブ20、復路26bからなる塗料循環回路内を循環している。
【0028】
エア洗浄用バルブ24の入口側ポートには、加圧エア供給源8のメイン通路11から分岐した洗浄エア供給通路28が接続されている。洗浄エア供給通路28の上流側部分にはレギュレータ40が設けられている。
シンナー洗浄用バルブ25の入口側ポートにはシンナー供給通路29が接続されている。シンナー供給通路29のうちシンナー供給方向において最上流側部分にはシンナータンク5が設けられ、途中部にはレギュレータ30が設けられている。
【0029】
電磁バルブユニット6は、複数の塗料バルブ20、リリーフバルブ21、洗浄バルブ22、エア洗浄用バルブ24、シンナー洗浄用バルブ25、霧化エア用バルブ15、パターンエア用バルブ17の夫々に対応する複数の電磁バルブ31〜37を有すると共に、複数の電磁バルブ31〜37に接続された複数のパイロットエア通路38が、複数の塗料バルブ20、エア洗浄用バルブ24、シンナー洗浄用バルブ25、洗浄バルブ22、リリーフバルブ21、霧化エア用バルブ15、パターンエア用バルブ17のパイロット部20a、24a、25a、22a、21a、15a、17aに夫々接続されている。パイロットエア通路38の上流側部分にはレギュレータ41が設けられている。
【0030】
例えば、1つの塗料用電磁バルブ31が開弁されたとき、パイロットエアが、電磁バルブ31を介してパイロットエア通路38から対応する1つの塗料バルブ20のパイロット部20aに供給されるように構成されている。
【0031】
制御ユニット7は、操作パネル39又はホストコンピュータ(図示略)に電気的に接続され、操作パネル39又はホストコンピュータから制御ユニット7へ送信される塗装指令信号や色替え指令信号等の指令信号に基づいて電磁バルブユニット6の各電磁バルブ31〜37の開閉と、パイロットエアを介して要求された塗色の塗料バルブ20の開閉を制御する。
【0032】
制御ユニット7は、CPUとROMとRAMを含むコンピュータと、入出力インタフェース等を有する。ROMには、車体の部位に応じて設定された吐出量で塗装ガン2から塗料を吐出する為の塗料吐出量制御プログラム、色替え時に塗料が残存した塗料通路9内の洗浄とエア洗浄後に塗料通路9内に残留する洗浄エアを塗料通路9から外部へ排出する為の色替え制御プログラム、各電磁バルブ31〜37を作動させる為のバルブ制御プログラム等が格納されている。RAMには、各塗料タンク4に貯留されている塗料の粘性データや、塗装時の塗料の吐出量データ等が記憶されている。
【0033】
次に、本願特有の洗浄エア残留抑制手段10について説明する。
洗浄エア残留抑制手段10は、エア洗浄後に塗料通路9内に残留した洗浄エアを塗料通路9から外部へ排出する為、塗料通路9のうち塗料供給方向において最上流側部分に接続されたリリーフ通路40と、このリリーフ通路40に接続された前記のリリーフバルブ(ダンプバルブ)21と、前記のリリーフ用電磁バルブ32と、リリーフ用電磁バルブ32の開閉とパイロットエアを介してリリーフバルブ21の開閉を制御する制御ユニット7のリリーフバルブ制御手段とで構成されている。
【0034】
ここで、塗装の概要について簡単に説明する。
操作パネル39又はホストコンピュータからの塗装指令信号が制御ユニット7に入力された場合、複数の塗料用電磁バルブ31のうち要求される塗色の塗料バルブ20に対応する塗料用電磁バルブ31と、霧化エア用電磁バルブ36と、パターンエア用電磁バルブ37とが開弁される。塗料用電磁バルブ31が開弁されると、パイロットエアが電磁バルブ31を介してパイロットエア通路38からそれに対応する塗料バルブ20のパイロット部20aに供給され、塗料バルブ20が開弁される。
【0035】
フロントトリガー19aとリアトリガー19bが開弁されて塗装ガン2を開状態にして、塗料バルブ20から塗料が塗料通路9内に供給されて塗料管14を通ってフロントトリガー19aとリアトリガー19bを介して塗装ガン2に充填されると同時に、加圧エア供給源8からの加圧エアが霧化エア通路12とパターンエア通路13を通って塗装ガン2に供給されると、塗装ガン2から塗料が車体に対して所定幅噴霧塗装される。
【0036】
次に、制御ユニット7に実行される色替え制御を含む塗装制御について図2に基づいて説明する。尚、図2において、Si(i=1,2,・・・)はステップを示す。この塗装制御が開始されると、最初に、S1において、操作パネル39又はホストコンピュータから制御ユニット7へ色替え指令信号が入力されたか否か判定される(S1)。その判定がYesの場合は、S2へ移行する。
【0037】
S2において、現在使用中の塗料用電磁バルブ31が閉弁されると共に、それに対応する塗料バルブ20が閉弁されて塗料通路9内への塗料の供給が遮断される。次に、洗浄用電磁バルブ33が開弁されると共に、洗浄バルブ22のパイロット部22aにパイロットエアが供給されて洗浄バルブ22が開弁され(S3)、洗浄カウンタCが「0」に初期設定される(S4)。
【0038】
次に、S5において、シンナー洗浄用電磁バルブ35が開弁されると共に、それに対応するシンナー洗浄用バルブ25のパイロット部25aにパイロットエアが供給されてシンナー洗浄用バルブ25が開弁され、洗浄通路23内にシンナーが供給される。シンナーが洗浄通路23から洗浄バルブ22を経て塗料通路9内に供給され、前回の塗料が残存する塗料通路9から塗装ガン2に至る塗料流路がシンナー洗浄される。
【0039】
シンナー洗浄開始後、予め設定された所定時間が経過したか否か判定され(S6)、その判定がYesの場合は、シンナー洗浄用電磁バルブ35が閉弁されると共に、シンナー洗浄用バルブ25が閉弁されて(S7)、シンナー洗浄を終了する。
【0040】
次に、S8において、エア洗浄用電磁バルブ34が開弁されると共に、エア洗浄用バルブ24のパイロット部24aにパイロットエアが供給されてエア洗浄用バルブ24が開弁され、洗浄通路23内に洗浄エアが供給される。洗浄エアが洗浄通路23から洗浄バルブ22を経て塗料通路9内へ供給され、塗料通路9から塗装ガン2に至る塗料流路がエア洗浄される。
【0041】
エア洗浄開始後、予め設定された所定時間が経過したか否か判定され(S9)、その判定がYesの場合は、エア洗浄用電磁バルブ34が閉弁されると共に、エア洗浄用バルブ24が閉弁されて(S10)、エア洗浄を終了し、洗浄カウンタCがC+1にインクリメントされる(S11)。
【0042】
次に、S12において、洗浄カウンタCが予め設定された回数「A」(例えば、5回)になった否かが判定される。その判定がNoの場合、洗浄カウンタCが設定回数になるまで、シンナー洗浄とエア洗浄とが交互に複数回繰返し行われる(S5〜S11)。洗浄カウンタCが設定回数「A」になった場合(S12;Yes)、洗浄バルブ用電磁バルブ33が閉弁されると共に、それに対応する洗浄バルブ22が閉弁されて(S13)、塗料通路9から塗装ガン2に至る塗料供給流路内の洗浄を終了する。
【0043】
エア洗浄終了後、塗装ガン2の近傍のフロントトリガー19aとリアトリガー19bが開弁され(S14)、塗装ガン2が開状態になる。そして、次の塗色用の塗料用電磁バルブ31が開弁されると共に、それに対応する次の塗色用の1つの塗料バルブ20のパイロット部20aにパイロットエアが供給され、塗料バルブ20が開弁され(S15)、次の塗色の塗料が塗料通路9内に供給されて塗装ガン2まで充填される。
【0044】
塗料充填後、フロントトリガー19aとリアトリガー19bが閉弁され(S16)、塗装ガン2を閉状態にして、塗料の充填に伴い塗料通路9内のうち次の塗色の塗料バルブ20よりも上流側通路部分に残留した洗浄エアにかかる圧力が高まった状態になり、リリーフ用電磁バルブ32が開弁されると共に、それに対応するリリーフバルブ21のパイロット部21aにパイロットエアが供給されてリリーフバルブ21が開弁されると(S17)、洗浄エアがリリーフ通路40からリリーフバルブ21を経て外部へ排出される。
【0045】
洗浄エア排出後、リリーフ用電磁バルブ32が閉弁されると共に、それに対応するリリーフバルブ21が閉弁され(S18)、次の塗色の塗料用電磁バルブ31が開弁されると共に、それに対応する塗料バルブ20のパイロット部20aにパイロットエアが供給されて塗料バルブ20が開弁され(S19)、S1へリターンする。
【0046】
以上説明した塗装装置1の作用効果について説明する。
塗装装置1は、塗料通路9に接続された塗色の異なる塗料を供給する複数の塗料バルブ20を有するCCVユニット3と、洗浄エア残留抑制手段10を有し、洗浄エアによる塗料通路9内の洗浄後、洗浄エア残留抑制手段10により、塗料通路9内のうち次の塗色の塗料バルブ20よりも上流側通路部分に残留した洗浄エアがリリーフ通路40からリリーフバルブ21を経て外部へ排出されるので、次の塗色の塗料流路に洗浄エアの残留が生じることがなく、次の塗色の塗料吐出時の塗料の飛び散りや吐出応答の遅れを確実に防止することができる。
【0047】
洗浄エアによる塗料通路9の洗浄後、リリーフバルブ21を閉弁し且つ塗装ガン2を開状態にして次の塗色の塗料を塗装ガン2まで充填した後、リリーフバルブ21を開弁し且つ塗装ガン2を閉状態にして塗料通路9内に残留した洗浄エアをリリーフ通路40から外部へ排出させるようにリリーフバルブ21を開閉するので、次の塗色の塗料の充填に伴い塗料通路9内に残留する洗浄エアにかかる圧力が高まるため、短時間で洗浄エアをリリーフ通路から外部へ排出することができる。
【実施例2】
【0048】
図3、図4に示すように、本実施例の塗装装置1Aは、CCVユニット42と、電磁バルブユニット43と、制御ユニット44と、塗料通路9のうち次の塗色の塗料バルブ20よりも上流側通路部分に残留した洗浄エアが次の塗色の塗料流路に残留しないように、洗浄エアを遮断する洗浄エア残留抑制手段45を有する。その他の構成要素については、実施例1と同様の構成要素であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
CCVユニット42の塗料通路9には、前記リリーフバルブ21の代わりに塗料通路9を遮断可能な複数の遮断バルブ46が設けられ、各遮断バルブ46は、各塗料バルブ20に対応し且つその各塗料バルブ20とその上流側に隣接する塗料バルブ20との間に夫々設けられている。この遮断バルブ46は、塗料通路9内を遮断する遮断板47と、この遮断板47の下端に固定されたロッド48と、ロッド48の下端に固定されたピストン49と、これらを気密に且つ上下方向に摺動自在に収容するケース50とを備えている。
【0050】
電磁バルブユニット43は、前記リリーフ用電磁バルブ32の代わりに複数の遮断用電磁バルブ51を有し、各電磁バルブ51に接続されたパイロットエア通路52が、各遮断バルブ46のポートに接続されている。
制御ユニット44の遮断バルブ制御手段は、前回の塗料が残存した塗料通路9内を洗浄後、次の塗色の塗料を塗装ガン2に充填後、塗装ガン2からその塗料を吐出する間、その塗料を供給する塗料バルブ20に対応する遮断バルブ46をパイロットエアを介して塗料通路9内を遮断する閉弁状態に制御するように構成されている。
【0051】
洗浄エア残留抑制手段45は、前記の複数の遮断バルブ46と、前記の遮断用電磁バルブ51と、前記の遮断バルブ制御手段とで構成されている。
【0052】
図3に示すように、1色目の塗料の塗装終了後、塗料バルブ20が閉弁された状態で、塗料が残存した塗料通路9内を洗浄する為、塗料通路9内をシンナー洗浄とエア洗浄の順序で交互に複数回繰返し洗浄した後、塗料通路9内は洗浄エアAが充填された状態になる。
【0053】
この状態から、図4に示すように、次の塗色用の塗料バルブ20が開弁されると同時に、その塗料バルブ20に対応する遮断バルブ46が閉弁される。パイロットエアが、電磁バルブ51介してパイロットエア通路52から遮断バルブ20のピストン側のポートに供給され、ピストン49とロッド50が塗料通路側に作動するのに連動して遮断板47が作動して塗料通路9内が遮断される。この状態において、次の塗色の塗料が塗装ガン2から吐出する間、遮断板47により塗料通路9のうち次の塗色用の塗料バルブ20よりも上流側通路部分に残留した洗浄エアAが遮断され、次の塗色の塗料Tの流路への洗浄エアAの残留を防止する。
【0054】
本実施例の塗装装置1Aは、CCVユニット42と、洗浄エア残留抑制手段45を有し、洗浄エアAによる塗料通路9内の洗浄後、次の塗色の塗料Tの塗装時に、洗浄エア残留抑制手段45により、次の塗色の塗料バルブ20に対応する遮断バルブ46が閉弁状態にされ、遮断板47により塗料通路9のうち次の塗色の塗料Tの流路よりも上流側部分に洗浄エアAが閉じ込められるため、次の塗色の塗料が残留した洗浄エアの影響を受けることがなく、次の塗料吐出時の塗料の飛び散りや吐出応答の遅れを確実に防止することができる。
【実施例3】
【0055】
図5に示すように、本実施例の塗装装置1Bは、CCVユニット53と、塗料通路9内に残留した洗浄エアの圧力を調整する洗浄エア残留抑制手段54を有する。その他の構成要素については、実施例1と同様の構成要素であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
CCVユニット53の塗料通路9のうち塗料供給方向において最上流側部分に、エア給排通路57を介して圧力調整器56が接続されている。
洗浄エア残留抑制手段54は、制御ユニット55と圧力調整器56を備え、圧力調整器56は、制御ユニット55で制御される電磁比例ソレノイドを備えた電空レギュレータであり、電空レギュレータは、次の塗色の塗料を塗装ガン2まで充填後、塗装ガン2からその塗料を吐出する間、制御ユニット55に記憶された塗装時の車体の部位により異なる塗料の吐出量データや吐出量の変化に応じて、塗料通路9内に残留した洗浄エアの圧力を調整するように構成されている。
【0057】
図5に示すように、次の塗色の塗料塗装中において、塗料バルブ20から塗料通路9に供給される塗料の吐出量が大きい場合、洗浄エアにかかる圧力が高くなるため、電空レギュレータを介してエア給排通路57から塗料通路9に加圧エアが供給されて洗浄エアAの圧力が高められる。一方、塗料バルブ20から塗料通路9に供給される塗料の吐出量が小さい場合、加圧エアの供給が停止され、塗料通路9からエア給排通路57を介して電空レギュレータを経て外部へエアが排出されて洗浄エアAの圧力が減圧される。
【0058】
本実施例の塗装装置1Bは、CCVユニット55と、制御ユニット55と、圧力調整器56としての電空レギュレータを有し、制御ユニット55で制御される電空レギュレータは、次の塗色の塗料を塗装ガン2まで充填後、塗装ガン2からその塗料を吐出する間、塗装ガン2から吐出される塗料の吐出量に応じて洗浄エアの圧力を調整するので、塗料通路9内に残留した洗浄エアの圧力を一定に保持でき、次の塗色の塗料Tの流路と洗浄エアAとの境界位置が変動しないため、次の塗色の塗料Tの流路へ洗浄エアが残留することがなく、次の塗料吐出時の塗料の飛び散りや吐出応答の遅れを確実に防止することができる。
【0059】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1〕前記実施例の塗装装置は、自動車の車体製造ライン以外に、バスやトラック、建設機械、トラクターなどの農業機械等の製造ラインにも適用可能であり、その適用分野や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
2〕前記実施例2の遮断バルブ46の構造は、実施例の構造のものに限定されず、塗料通路9内を遮断できる構造のものであればよい。
【0060】
3〕前記実施例3の圧力調整器56は、電空レギュレータに限定されるものではなく、その他、残留エアの圧力を調整できるレギュレータ等であればよい。
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0061】
A 洗浄エア
T 塗料
1、1A、1B 塗装装置
2 塗装ガン
7、44、55 制御ユニット
9 塗料通路
10、45、54 洗浄エア残留抑制手段
20 塗料バルブ
21 リリーフバルブ
28 洗浄エア供給通路
40 リリーフ通路
46 遮断バルブ
56 圧力調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗色の異なる塗料を供給する複数の塗料バルブが接続された塗料通路に、色替えに際して塗料が残存した塗料通路内を洗浄する洗浄エアを供給する為に塗料通路に洗浄エアを供給する洗浄エア供給通路と、前記塗料バルブから供給される塗料を吐出する塗装ガンとを接続した塗装装置において、
色替え時に前記塗料通路に洗浄エア供給通路から洗浄エアを供給した後、次の塗色の塗料を前記塗装ガンまで充填後、前記塗料通路のうち次の塗色用の塗料バルブと塗装ガンとの間に前記洗浄エアが残留するのを抑制する洗浄エア残留抑制手段を備えたことを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記洗浄エア残留抑制手段は、前記塗料通路のうち塗料供給方向において最上流側部分に接続されて洗浄エアを前記塗料通路の外部に排出するリリーフ通路と、このリリーフ通路を開閉するリリーフバルブと、前記リリーフバルブを制御するリリーフバルブ制御手段とを有し、
前記リリーフバルブ制御手段は、前記洗浄エアによる塗料通路の洗浄後、塗料通路内に残留した洗浄エアを外部へ排出する為に前記リリーフバルブを開弁させることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記リリーフバルブ制御手段は、前記洗浄エアによる塗料通路の洗浄後、前記リリーフバルブを閉弁し且つ塗装ガンを開状態にして次の塗色の塗料を塗装ガンまで充填した後、前記リリーフバルブを開弁し且つ塗装ガンを閉状態にして塗料通路内に残留した洗浄エアを前記リリーフ通路から外部へ排出させるようにリリーフバルブの開閉を制御することを特徴とする請求項2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記洗浄エア残留抑制手段は、各塗料バルブに対応し且つその各塗料バルブとその上流側に隣接する塗料バルブとの間において前記塗料通路を遮断可能な複数の遮断バルブと、これら遮断バルブを制御する遮断バルブ制御手段を有し、
前記遮断バルブ制御手段は、次の塗色の塗料を前記塗装ガンから吐出する間、前記塗料を供給する塗料バルブに対応する遮断バルブを閉弁状態に制御することを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項5】
前記洗浄エア残留抑制手段は、前記洗浄エア供給通路から供給されて塗料通路内を洗浄後にその塗料通路内に残留する洗浄エアの圧力を調整する圧力調整手段を備え、
前記圧力調整手段は、次の塗色の塗料を塗装ガンから吐出する間、前記塗装ガンから吐出される塗料の吐出量に応じて前記塗料通路内に残留する洗浄エアの圧力を調整することを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−50932(P2011−50932A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204955(P2009−204955)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】