説明

塩化ビニル系樹脂の製造方法

【課題】塩化ビニル系単量体を微細懸濁重合するにあたって、塩化ビニル系重合体水性分散液中の固形分濃度が高く、且つ重合スケールが少ない塩化ビニル形重合体水性分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】塩化ビニル系単量体を微細懸濁重合するに際し、塩化ビニル系単量体を含む分散液に、更に、体積基準の平均粒子径が0.15μm以上0.5μm以下である塩化ビニル系重合体の水性分散液(A)を添加して重合反応を行うことで達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリ塩化ビニル樹脂を用いたペースト加工は、塩化ビニル系樹脂に可塑剤を必須成分とし、炭酸カルシウムなどの充填剤、発泡剤、安定剤、減粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、表面処理剤、チキソトロープ剤、接着性付与剤等の部剤を必要に応じて適当量用い、これらを混合して、プラスチゾルと称する流動体の状態で賦形し、加熱溶融後冷却してフィルム等の各種成形品を製造する方法である。用途分野は非常に広範囲であり、壁紙や床材等の住宅内装関係、アンダーボディーコートやシーラントなどの自動車関係、鋼板コートや帆布コート等の分野で使用されている。
【0003】
このペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得る目的で、塩化ビニル系単量体の微細懸濁重合が広く行われている。微細懸濁重合は、水を分散媒として、塩化ビニル系単量体、乳化剤、分散助剤、油溶性の重合開始剤等の混合物を、微細な乳化分散液にして重合する方法である。この重合反応が終了した後に、未反応単量体を回収して得られる重合反応生成物は、通常、0.1〜10μmの塩化ビニル系重合体が水媒体中に分散した水性分散液(以下水性分散液と略記する)であり、水性分散液中の塩化ビニル系重合体の平均粒子径は1〜3μm程度である。ペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、この水性分散液を脱水乾燥、或いは噴霧乾燥することにより得られる。
【0004】
一般に、塩化ビニル系樹脂は、製造するに際して、重合スケール、粗粒が少ないことが求められる。また、重合反応は通常バッチ式で行われるため生産性向上の手段として、重合時間の短縮や、塩化ビニル系単量体の仕込割合を増やすことが行われる。しかし、後者については、得られる水性分散液の固形分濃度が高くなるのにつれて、重合スケールや粗粒が増加する傾向にあり、場合によっては凝集等により正常な水性分散液が得られなくなるという課題があった。
【0005】
重合スケールを低減させる手段としては、重合が不安定となる重合転化率60%以降に重合攪拌数を低下させる方法(特許文献1参照)が知られているが、攪拌数低下によりジャケットによる除熱効率が低下するので、重合液を安全に除熱する為には、重合転化率60%以降の重合発熱を抑制する必要があり、それに伴い重合時間が遅延するという問題があった。
【0006】
また重合時に特定の乳化剤を使用することにより、水性分散液中の粗粒を減少させる方法(特許文献2参照)、さらに特定の炭化水素類を添加することにより、凝集物の少ない塩化ビニル系重合体を得る方法(特許文献3参照)が知られているが、高濃度の水性分散液を得るには効果が充分ではないという問題があった。
【0007】
また重合時にVCMを添加することにより高濃度な水性分散液を得る方法が知られている(特許文献4参照)が、リフラックスコンデンサー使用時の泡立ちを防ぐため重合処方上に制約があり、またVCMを下部から戻すことは設備的に煩雑であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−265511
【特許文献2】2007−182472
【特許文献3】特開平11−279211
【特許文献4】特開平5−140206
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
塩化ビニル系単量体を微細懸濁重合するにあたって、水性分散液中の固形分濃度が高く、且つ重合スケール及び粗粒が少ない水性分散液の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らはこのような背景に鑑み鋭意検討した結果、塩化ビニル系単量体を微細懸濁重合するに際し、体積基準の平均粒子径が0.15μm以上0.5μm以下である塩化ビニル系重合体の水性分散液(A)を添加して、重合反応を行うことにより、固形分濃度が高く且つ重合スケール及び粗粒が少ない水性分散液を製造できることを見出した。
【0011】
すなわち本発明は、塩化ビニル系単量体を微細懸濁重合するに際し、塩化ビニル系単量体を含む分散液に、更に、体積基準の平均粒子径が0.15μm以上0.5μm以下である塩化ビニル系重合体の水性分散液(A)を添加して、重合を行うことを特徴とする塩化ビニル系樹脂の製造方法である。
【0012】
上記水性分散液(A)の添加量が、塩化ビニル系単量体100重量部に対して、水性分散液中の塩化ビニル系重合体として3重量部以上20重量部以下であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、水性分散液中の固形分濃度が高く、且つ重合スケールの少ない水性分散液が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の塩化ビニル系樹脂の製造方法は、塩化ビニル系単量体を微細懸濁重合するに際して、塩化ビニル系単量体を含む分散液に、更に、体積基準の平均粒子径が0.15μm以上0.5μm以下である塩化ビニル系重合体の水性分散液(A)を、添加して重合反応を行う。(以下、体積基準の平均粒子径が0.15μm以上0.5μm以下である塩化ビニル系重合体の水性分散液(A)を単に水性分散液(A)と略記する)
添加する側の水性分散液(A)については、組成及び製造方法に特に制限は無いが、同じ塩化ビニル系樹脂であれば、例えば乳化重合法や微細懸濁重合法等で作成し使用することができる。また必要に応じて本発明の重合完了後に、この重合体の水性分散液(A)を追加添加することもできる。
【0015】
水性分散液(A)の添加時期及びその添加方法は特に限定されるものではないが、重合反応容器内で添加する水性分散液(A)が乳化分散液に対して均一に分散する方法が好ましい。水性分散液(A)の乳化分散液に対する不均一化が進むと、所定の添加量を満たさない部分が発生するため、本発明の効果が得られにくくなる。
添加時期については、単量体や水等の混合物の均質化処理により乳化分散液を作成した後、この乳化分散液を所定温度まで昇温して重合を開始するまでの間が好ましい。重合開始後は重合反応容器の内圧が高くなるため、重合体の水性分散液の添加が行いにくくなる。また重合機や攪拌機の形状によっては、重合機内での均質化も行いにくくなる。
【0016】
水性分散液(A)を乳化分散液に対して添加して均質化するための方法としては、例えば乳化分散液作成後、これを有する重合反応容器等の圧力容器に対して添加し、充分な混合を行った後に重合反応を行う。あるいは乳化分散液を作成後、これを重合反応容器等の圧力容器に移送する際に、その移送配管中、或いは移送先の圧力容器に対して、重合体の水性分散液を連続的に添加する等の方法があげられる。
【0017】
添加する重合体の体積基準の平均粒子径が0.15μm未満及び0.5μmより大きくなると、高濃度重合時の重合スケール量が増加する傾向にある。
【0018】
水性分散液(A)を添加することによる実質的な重合体の添加量については、特に制限は無いが、これを増やすと高濃度とはいえ重合バッチ当たりの生産性が低下し、またプラスチゾルとしたときの粘度が高くなる傾向にある。一方、重合体添加量が少ないとスケール量が増加する傾向にあるため、重合体添加量としては、塩化ビニル系単量体あたり3重量部以上20重量部以下が好ましい。例えば前記水性分散液(A)中の固形分が43.8重量%の場合は、水性分散液(A)として6.8重量部以上45.7重量部以下を添加するのが好ましい。
【0019】
塩化ビニル系単量体の微細懸濁重合は、通常、水を分散媒とし、単量体、乳化剤、油溶性重合開始剤等の混合物を、ホモジナイザー等を用いて微細な乳化分散液に均質化した後、所定温度にて重合する方法であるが、均質化方法については特に制限は無く、例えば均質化装置としては、1段または多段の高圧ホモジナイザー、コロイドミル、1段又は多段の遠心ポンプおよびパイプラインミキサー等の機械的分散装置が挙げられ、これらは単独または組み合わせて用いられ、吸入側と吐出側の圧力差は0.1から20MPaの範囲で調整することにより所望の粒子径を持つ水性分散液(ラテックス)が得られる。
【0020】
本発明で用いられる塩化ビニル系単量体は、塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な単量体の混合物を示す。
塩化ビニルと共重合可能な単量体の例としては、特に制限はないが、例えばエチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のカルボン酸のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のアルキル基を有するビニルエーテル類、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその酸無水物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ブチルベンジル等の不飽和カルボン酸エステル類、スチレン、αーメチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、更にはジアリルフタレート等の架橋性モノマー等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。該塩化ビニルと共重合可能な単量体は、塩化ビニル単量体に対して、50重量%以下の範囲で使用するのが好ましい。
【0021】
本発明に用いられる界面活性剤は特に限定されるものではないが、通常アニオン性界面活性剤が単量体100重量部当たり0.1〜3重量部程度用いられる。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、α-オレフィンスルホン酸、アルキルエーテルリン酸エステル等のカリウム、ナトリウム、アンモニウム塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明では重合時及び又は重合終了後にノニオン性乳化剤を併用しても良い。特に制限はないが、たとえばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックコポリマー等のポリオキシアルキレンブロックコポリマー類、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、シリコン系乳化剤、などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の分散助剤としては、特に制限はないが、たとえばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類や、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。使用量について特に制限はないが、通常塩化ビニル系単量体100重量部に対して0〜2重量部の範囲で用いられる。
【0024】
本発明の油溶性開始剤としては、特に制限はないが、たとえばジラウロイルペルオキシド、ジ−3、5、5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート等のパーオキシエステル類等の有機過酸化物系開始剤および2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。使用量に特に制限はないが、使用する場合は塩化ビニル系単量体100重量部に対して、0〜3重量部の範囲で用いる。
【0025】
また水溶性開始剤として過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素等などを用いても良い。必要に応じて亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート(ロンガリット)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等の還元剤が併用される。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。使用量に特に制限はないが、使用する場合は塩化ビニル系単量体100重量部に対して、0〜3重量部の範囲で用いる。
【0026】
本発明により得られる水性分散液の乾燥方法に制限は無く、スプレー乾燥など種々の公知の方法により粉体として、また必要に応じて種々の公知の方法により粉砕処理を行うことにより、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得ることができる。
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂に可塑剤を必須成分とし、炭酸カルシウムなどの充填剤、発泡剤、安定剤、減粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、表面処理剤、チキソトロープ剤、接着性付与剤等の部剤を必要に応じて適当量用い、これらを混合して、プラスチゾルと称する流動体の状態で賦形し、加熱溶融後冷却してフィルム等の各種成形品を製造することができる。ペースト加工用塩化ビニル樹脂の用途分野は非常に広範囲であり、壁紙や床材等の住宅内装関係、アンダーボディーコートやシーラントなどの自動車関係、鋼板コートや帆布コート等の分野で使用されている。
【0027】
本発明の塩化ビニル系樹脂は特に塩化ビニル系壁紙用途、例えばパルプ紙、ガラス不繊布、難燃紙などの基材上にプラスチゾルを塗布し、その後加熱ゲル化して発泡加工する用途に好適である。
【0028】
本発明に用いる可塑剤について特に制限は無いが、1次可塑剤としては、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタル酸エステル、トリクレジルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート等のリン酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等のアジピン酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート等のアゼライン酸エステル、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル、ポリエステル系可塑剤等を用いることができる。これらは、単独で使用しても、2種以上併用してもよく、またクエン酸エステル、グリコール酸エステル、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、エポキシ系可塑剤等の2次可塑剤を併用してもよい。その他の配合剤も公知のものを使用することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
(1)重合スケールの確認
得られた水性分散液を、JIS Z8801:2000に記載の、目開き1.7ミリメートルの試験用ふるいで全量ろ過し、採取した重合スケール量の乾燥重量を測定した。
【0031】
(2)粗粒量測定
重合スケールを除いて得られた水性分散液をよく混合した後に4kg計量し、目開き150μmの篩に通して、篩上に残った粗粒の乾燥重量を測定した。粗粒の単位は篩を通した塩化ビニル系重合体水性分散液の固形分に対する重量%として表記した。なお、水性分散液中の固形分濃度(塩化ビニル系重合体)は、直径6.5cmのアルミケースを精秤し、これに水性分散液約5gを精秤した後に、熱風循環式乾燥機(TABAI HIGH TEMP OVEN HPS−212)を用いて、105℃、Fan Speed 5 ダンパー開度30%で2時間の乾燥を行った後に、室温まで冷却精秤することにより求めた。
【0032】
(3)塩化ビニル系重合体水性分散液中の塩化ビニル系重合体粒子径の測定方法
水性分散液中の塩化ビニル系重合体の粒子径は マイクロトラックHRA MODEL9320−X100(日機装株式会社)を用いて、粒子径分布を測定し、体積基準の中位径をもって、平均粒子径とした。測定条件としては、温度25℃、物質情報は透明で屈折率1.51、球形粒子のチェックはなし、キャリアーは水を用い屈折率は1.33とした。またSET ZERO 10秒、計測10秒、DRY CUT計算なしとした。
【0033】
(4)プラスチゾル作成方法
500mlSUSカップに塩化ビニル系樹脂100g、DOP(ジ−2−エチルヘキシルフタレート)50g、Ba−Zn系安定剤(FL103N:旭電化工業株式会社製)3g、炭酸カルシウムBF200S(備北粉化工業株式会社製)、100g発泡剤AZL30(永和化成工業株式会社製)4.5g、酸化チタンJR600A(テイカ株式会社製)15g、シェルゾールS(シェルケミカルズジャパン株式会社製)10gを加え、ディゾルバー型混練機(ROBO MICS/TOKUSHU KIKA社製、ディゾルバー翼5cm直径)を用い、室温下、1000rpmで3.5分間混練して、プラスチゾルを作製した。
【0034】
(5)プラスチゾル粘度測定
作成したプラスチゾルを25℃の恒温水槽に1時間及び3日漬けた後に、ブルックフィールド型粘度計(TOKIMEK製)を用い、No.4スピンドルV6の測定開始1分後の値を読み取ってプラスチゾル粘度とした。
【0035】
(6)発泡性
プラスチゾルを難燃紙上にコーティングし、140℃で30秒間加熱することにより、難燃紙上にゲル化フィルムを得た。この時のゲル化フィルム厚みは150μmであった。次にこのゲル化フィルムを難燃紙とともに適度な大きさに切断し、熱風循環式オーブン(TABAI社製、HIGHTEMPOOVEN PHH−100型)、220℃、風量;最大、ダンパー;全開の条件下で30秒あるいは40秒間発泡を行い、表面およびセル断面を目視観察し、以下の基準にて評価を行なった(○:良好、×:荒れている)。
【0036】
(製造例1)添加用水性分散液(A)[E1]の製造
ステンレス製攪拌機付き耐圧容器(重合器)に、脱イオン水15Kg、ラウリル硫酸ナトリウム5.25g、30%過酸化水素水6.75g、1重量%塩酸水溶液1.1gを仕込んで脱気した後に、塩化ビニル単量体を15Kg仕込み、攪拌機の回転数を45rpmに設定して昇温し、缶内温が60℃に到達した時点から内温をカスケード制御で60℃に保ちながら、重合反応缶の直胴部の下端に位置する追加口から、耐圧ポンプを用いてロンガリットの0.1重量%水溶液を、反応の最初から1.2時間までは20ppm/総単量体量/時間の速度で、それ以降は8ppm/総単量体量/時間の速度で連続追加し重合を進行させた。
ついで反応開始30分目から5.5時間目にかけて、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの6重量%水溶液3Kgを、ロンガリットと同じ追加口を通して等速で追加した。
反応開始から5.5時間目、所定量の単量体を追加終了すると同時に内圧の降下が見られたのでその時点で重合終了と判断し、重合系内の残留単量体を回収して塩化ビニル系重合体水性分散液を得た(以下E1と記載する)。得られたE1の固形分濃度は43.8重量%、平均粒子径は0.28μmであった。
【0037】
(製造例2)添加用水性分散液(A)[E2]の製造
ラウリル硫酸ナトリウムを9gとした他はE1と同様の手法で重合反応を行った。得られた水性分散液(A)(以下E2と記載する)の固形分濃度は43.9重量%、平均粒子径は0.15μmであった。
【0038】
(製造例3)添加用水性分散液(A)[E3]の製造
ラウリル硫酸ナトリウムを2gとした他はE1と同様の手法で重合反応を行った。得られた水性分散液(A)(以下E3と記載する)の固形分濃度は43.9重量%、平均粒子径は0.5μmであった。
【0039】
(製造例4)添加用水性分散液(A)[E4]の製造
ステンレス製攪拌機付き耐圧容器(重合器)に、水17kg、15%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1Kg、ラウロイルペルオキシド75gを仕込んで脱気した後に、塩化ビニル単量体を15Kg仕込み、耐圧ホモジナイザーにより均質化し、均質化分散液を得た。攪拌機の回転数を30rpmに設定して昇温し、缶内温が50℃に到達した時点から内温をカスケード制御で50℃に保ちながら、重合反応を行った。得られた水性分散液(A)(以下E4と記載する)の固形分濃度は43.7重量%、平均粒子径は0.7μmであった。
【0040】
(実施例1)
予め脱気したステンレス製攪拌機付き耐圧容器(重合器)にて、塩化ビニル系単量体100重量部(16kg)、脱イオン水65重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.80重量部、セチルアルコール0.7重量部、重合開始剤として、t−ヘキシルペルオキシピバレート0.01重量部、ラウロイルペルオキシド0.03重量部を仕込み、耐圧ホモジナイザーにより均質化し、乳化分散液を得た。
この乳化分散液に固形分として3重量部相当のE1(1.1kg)を添加し、その後、攪拌機の回転数を30rpmに設定し、ジャケット温度を上げて内温を上昇させ、内温が60℃に到達した時点からカスケード制御で内温を60℃に保ちながら重合反応を進めた。ジャケット温度が上昇して内圧が降下した時点を重合反応の終了として未反応の塩化ビニル単量体を回収し、内容物の水性分散液を取出した。これにポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー0.1重量部を添加し、スプレー乾燥機(三菱化工機株式会社製)を用い、乾燥入口温度105℃、出口温度50℃の条件で噴霧乾燥した。この塩化ビニル系樹脂を用い、先に示した方法でプラスチゾルを作成した。得られた水性分散液の固形分濃度、重合スケール量及びプラスチゾル粘度等の結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
(実施例2)
実施例1のE1を、固形分として5重量部相当の添加に変更した以外は、実施例1と同様の手法で重合反応を行った。その結果を表1に示す。
【0043】
(実施例3)
実施例1のE1を、固形分として10重量部相当の添加に変更した以外は、実施例1と同様の手法で重合反応を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
(実施例4)
実施例1のE1を、固形分として20重量部相当の添加に変更した以外は、実施例1と同様の手法で重合反応を行った。その結果を表1に示す。
【0045】
(実施例5)
実施例1のE1をE2に変更し、固形分として5重量部相当の添加に変更した以外は、実施例1と同様の手法で重合反応を行った。その結果を表1に示す。
【0046】
(実施例6)
実施例1のE1をE3に変更し、固形分として5重量部相当の添加に変更した以外は、実施例1と同様の手法で重合反応を行った。その結果を表1に示す。
【0047】
(比較例1)
実施例1のE1の添加を行わなかった以外は実施例1と同様の手法で重合反応を行った。その結果を表1に示す。固形分濃度が58.7重量%と濃いものであったが、重合スケールと粗粒量が著しく多いものであった。
【0048】
(比較例2)
実施例1のE1を、固形分として25重量部相当の添加に変更した以外は、実施例1と同様の手法で重合反応を行った。その結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
高濃度で重合スケールと粗粒量の少ないものであったが、経時変化でゾル粘度が高くなり使い辛いものであった。
【0051】
(比較例3)
実施例1のE1をE4に変更し、固形分として5重量相当の添加に変更した以外は、実施例1と同様の手法で重合反応を行った。その結果を表2に示す。重合スケールと粗粒量が多いものであった。
【0052】
(参考例1)
実施例1の脱イオン水を90重量部とし、E1の添加を行わなかった以外は実施例1と同様の手法で重合反応を行い、平均粒子径が1.5μmの水性分散液を得た。その結果を表2に示す。重合スケールと粗粒量は少ないものの、固形分濃度が48.9重量%と薄いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細懸濁重合法による塩化ビニル系単量体の重合において、塩化ビニル系単量体を含む分散液に、更に、体積基準の平均粒子径が0.15μm以上0.5μm以下である塩化ビニル系重合体の水性分散液(A)を添加して、重合を行うことを特徴とする塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記水性分散液(A)の添加量が、塩化ビニル系単量体100重量部に対して、水性分散液中の塩化ビニル系重合体として3重量部以上20重量部以下である、請求項1記載の塩化ビニル系樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2010−254873(P2010−254873A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108703(P2009−108703)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】