説明

塩化水素を精製するための方法

塩化水素を精製するための方法であって、前記塩化水素を少なくとも1種のクロロヒドリンを含有するスクラビング剤と接触させる少なくとも1つの工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2008年9月12日に出願された仏国特許出願第0856138号の利益を主張しており、参照によりその内容が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、塩化水素(HCl)を精製するための方法に関する。より詳細には、芳香族有機化合物、特に塩素化芳香族化合物を含有する塩化水素ガスを精製するための方法に関する。本発明はまた、本発明に従う精製方法によって得られた塩化水素を用い、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化によりクロロヒドリンを製造するための方法に関する。本発明はまた、得られたクロロヒドリンの脱塩化水素化によりエポキシドを製造するための方法に関し、さらに、そのエポキシドに由来する製品を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの工業化学プロセスが、塩化水素、特に塩化水素ガスを、副生成物として生成する。最も一般的に行われるものの中からは、塩化ビニルの製造、クロロメタン、及び少なくとも2つの炭素原子を分子中に含む塩素化溶媒の製造、イソシアネートの合成、ならびにフッ素化炭化水素の合成が挙げられ得る。
【0004】
大量の塩化水素のこうした生成は、それが他のプロセスの原料として再利用されなければならない場合に、それの精製という問題を引き起こす。
【0005】
塩化水素が、例えば、ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたはヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートの製造プロセスから生ずる場合、この塩化水素は、芳香族有機化合物(例えば、モノクロロベンゼン及びジクロロベンゼン)で汚染されている。
【0006】
したがって、エピクロロヒドリンの生産に関して、グリセロールの塩化水素化によって得られるジクロロプロパノールのアルカリ脱塩化水素化を経る合成方法は、エピクロロヒドリン及び後者に由来する製品中に塩化水素の汚染物質が存在するのを防ぐことが望ましい場合には、塩化水素化工程において前もって精製された塩化水素を使用することを必要とすることが分かっている。
【0007】
先行技術において提案された塩化水素を精製するための方法は、不都合な点をいくつか有している。
【0008】
溶媒スクラビング方法(例えば、特許文献1において言及される方法)は、スクラビングに使用された化合物が今度は塩化水素を汚染してしまい、かつ前記化合物の液相に塩化水素が少なくとも部分的に依然として溶解し得るという事実と関連する問題をこの化合物の処分が引き起こすという不都合な点を有する。
【0009】
1,2−ジクロロエタンでスクラビングすることにより、エチレンオキシ塩素化工程において反応物として使用され得る塩化水素を精製するための別の方法が、特許文献2に記載される。
【0010】
特許文献3に記載されるような、凝縮工程を含む分留、適切な液体または固体による吸着または吸収、及び接触水素化反応または接触酸化反応を利用する方法は、使用されることになる装置の複雑さと時として関連する、または精製されることになる塩化水素中に含まれる不純物が今度は負荷された使用された吸着剤もしくは吸収剤を再生処理する必要性と時として関連する、または使用された高価な水素化もしくは酸化触媒を再生処理する必要性と関連する不都合な点を有する。
【0011】
特許文献4に記載されるような、塩化水素ガスを塩酸に転化すること、次いでこの塩酸をアニオン交換樹脂と接触させることに本質的特徴がある方法は、複雑かつ費用のかかる解決策となる。
【0012】
特許文献5に記載されるような、第2段階から第1段階に最も温度の低い凝縮相を再循環させる2段階凝縮に基づく精製方法は、高いエネルギー消費を必要とする費用のかかる冷凍ユニットを含む複雑なデバイスを利用する。さらに、この種の精製の効率は、凝縮時に到達される温度における除去されることになる化合物の蒸気圧により制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】仏国特許発明第1417388号明細書
【特許文献2】仏国特許発明第2881732号明細書
【特許文献3】欧州特許第0774450号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0618170号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/016411号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、これらの不利な点を有さない、塩化水素を精製するための方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の態様の一実施例を、概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、したがって、第1の態様において、塩化水素を精製するための方法に関し、この方法は、前記塩化水素を少なくとも1種のクロロヒドリンを含有するスクラビング剤と接触させる少なくとも1つの工程を含む。
【0017】
塩化水素は、液体、気体、もしくは水溶液の形態であるか、またはこれらの形態のうちの少なくとも2つの組み合わせの形態であり得る。塩化水素は、多くの場合、気体状態にある。
【0018】
塩化水素は、多様な不純物を含有し得る。これらの不純物は有機化合物、無機化合物、またはそれらの混合物であり得る。塩化水素は、多くの場合に有機化合物を含有し、頻繁には芳香族有機化合物を含有する。
【0019】
塩化水素の不純物含有量は、一般的には100重量ppm以上、通常は1000重量ppm以上、多くは10000重量ppm以上である。この含有量は、通常は10重量%以下、頻繁には5重量%以下、多くの場合に2重量%以下である。
【0020】
本発明に従う方法は、好ましくは、芳香族有機化合物の存在を必要とする合成により生ずる塩化水素の精製に適用される。この起源のため、この塩化水素は、標準的な沸点が概して100℃より高く、かつスクラビング剤に少なくとも部分的に溶解し得るか、またはスクラビング剤と混和し得る化合物である、1種以上の芳香族有機化合物を不純物として含有する。好ましくは、精製されることになる塩化水素は、有機イソシアネートの製造の副生成物である。より好ましくは、精製されることになる塩化水素は、ホスゲンを、通常は芳香族アミンであり好ましくは芳香族ジアミンである有機アミンと反応させることによる有機イソシアネートの製造の副生成物である。この特定の場合において、不純物は、この製造で溶媒として用いられた、最も頻繁には塩素化芳香族化合物(chloroaromatic compound)、典型的にはモノクロロベンゼン及びジクロロベンゼンである。ジクロロベンゼンは、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、及びこれらの異性体のうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。
【0021】
塩化水素の塩素化芳香族不純物含有量は、一般的には100重量ppm以上、通常は1000重量ppm以上、多くは10000重量ppm以上である。この含有量は、通常は10重量%以下、頻繁には5重量%以下、多くの場合に2重量%以下である。
【0022】
本明細書において、表現「少なくとも1種のクロロヒドリンを含有するスクラビング剤」、またはより簡単に「スクラビング剤」は、クロロヒドリンの少なくとも一部が液体状態で含まれる組成物を意味すると理解される。
【0023】
本発明に従って使用され得るスクラビング剤は、多くの場合、主として液体状態である少なくとも1種のクロロヒドリンを含有する。
【0024】
表現「クロロヒドリン」は、異なる飽和炭素原子に結合された少なくとも1つのヒドロキシル基と少なくとも1つの塩素原子とを含む化合物を記載するために、本明細書において使用される。クロロヒドリンは、クロロエタノール、クロロプロパノール、クロロプロパンジオール、ジクロロプロパノール、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。クロロヒドリンは、概して、モノクロロプロパンジオール、ジクロロプロパノール、及びそれらの混合物から選択される。多くの場合、モノクロロプロパンジオールが使用される。ジクロロプロパノールが非常に好適である。とりわけ多く見られるクロロヒドリンは、2−クロロエタノール、1−クロロプロパン−2−オール、2−クロロプロパン−1−オール、1−クロロプロパン−3−オール、1−クロロプロパン−2,3−ジオール、2−クロロプロパン−1,3−ジオール、1,3−ジクロロプロパン−2−オール、2,3−ジクロロプロパン−1−オール、ポリグリセロール(例えば、線状または環状構造のジグリセロール)のクロロヒドリン、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択される。多く見られるクロロヒドリンは、ジグリセロールモノクロロヒドリン、ジグリセロールジクロロヒドリン、ジグリセロールトリクロロヒドリン、1−クロロプロパン−2,3−ジオール、2−クロロプロパン−1,3−ジオール、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物である。頻繁に見られるクロロヒドリンは、1,3−ジクロロプロパン−2−オール、2,3−ジクロロプロパン−1−オール、及びそれらの混合物である。
【0025】
精製されることになる塩化水素中に含まれる不純物(または複数種の不純物)を可溶化し得る、またはそれ(それら)との液体混合物を形成し得る、前記スクラビング剤中の他の化合物の存在が、本発明の文脈から除外されることは全くない。
【0026】
スクラビング剤中のクロロヒドリン含有量は、一般的にはスクラビング剤1kg当たりクロロヒドリン100g以上、通常は200g/kg以上、通例は300g/kg以上、多くの場合に400g/kg以上、しばしば500g/kg以上である。この含有量は、一般的には950g/kg以下、多くは900g/kg以下、頻繁には800g/kg以下、多くの場合に700g/kg以下である。
【0027】
スクラビング剤中のクロロヒドリン含有量はまた、950g/kg以上、時として990g/kg以上、特定の場合に999g/kg以上であり得る。少なくとも1種のクロロヒドリンから主としてなるスクラビング剤が、非常に好適である。ジクロロプロパノールから主としてなるスクラビング剤が、非常に格別に好適である。
【0028】
最も格別には、スクラビング剤は、液体状態のクロロヒドリンから実質的になり、より具体的には、精製されることになる塩化水素が、クロロヒドリンを生成することが意図されたポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化のための方法において使用されることが意図される場合にそうである。この場合、本発明の方法の本質的な利点は、このクロロヒドリンがこの塩化水素化の間に形成される化合物であるため、その存在は少しも問題とならないという事実にある。
【0029】
本発明に従うスクラビング剤は、さらに、水、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、エポキシド、金属状態もしくは塩状態にある金属、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択される少なくとも1種の化合物を含有し得る。クロロヒドリンは、アルコールまたはハロゲン化炭化水素またはエーテルまたはエステルとは考えられない。こうした場合は、スクラビング剤がポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化によるクロロヒドリンの製造のための方法のパージに由来する場合に多く見られる。
【0030】
スクラビング剤中の水含有量は、一般的には0.01g/kg以上、通常は0.1g/kg以上、通例は1g/kg以上、多くは5g/kg以上、頻繁には10g/kg以上、特には20g/kg以上である。この水含有量は、一般的には300g/kg以下、通常は200g/kg以下、通例は150g/kg以下、多くは100g/kg以下、頻繁には70g/kg以下、特には50g/kg以下である。
【0031】
アルコールは、モノアルコール、ジオール、ジオール以外のポリオール、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。
【0032】
モノアルコールは、2−プロパノール、アリルアルコール、クロロエタノール、多くは2−クロロエタノール、クロロプロパノール、多くは3−クロロ−1−プロパノール、クロロプロペノール、多くは2−クロロプロペノール、フェノール、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。
【0033】
スクラビング剤中のモノアルコール含有量は、一般的には0.001g/kg以上、通常は0.005g/kg以上、通例は0.01g/kg以上、多くは0.02g/kg以上、頻繁には0.04g/kg以上、特には0.05g/kg以上である。このモノアルコール含有量は、一般的には20g/kg以下、通常は10g/kg以下、通例は5g/kg以下、多くは2g/kg以下、頻繁には1g/kg以下、特には0.1g/kg以下である。
【0034】
ジオールは、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、ブタンジオール、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。
【0035】
スクラビング剤中のジオール含有量は、一般的には0.001g/kg以上、通常は0.005g/kg以上、頻繁には0.01g/kg以上である。このジオール含有量は、一般的には40g/kg以下、通常は20g/kg以下、通例は10g/kg以下、多くは5g/kg以下、頻繁には1g/kg以下、特には0.5g/kg以下である。
【0036】
ジオール以外のポリオールの一例は、グリセロールである。
【0037】
スクラビング剤中のジオール以外のポリオールの含有量は、一般的には0.001g/kg以上、通常は0.01g/kg以上、通例は0.1g/kg以上、多くは1g/kg以上、頻繁には2g/kg以上、特には5g/kg以上である。このジオール以外のポリオールの含有量は、一般的には100g/kg以下、通常は80g/kg以下、通例は60g/kg以下、多くは50g/kg以下、頻繁には20g/kg以下、特には10g/kg以下である。
【0038】
アルデヒドは、アセトアルデヒド、アクロレイン、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0039】
スクラビング剤中のアルデヒド含有量は、一般的には0.001g/kg以上、通常は0.005g/kg以上、通例は0.01g/kg以上、多くは0.015g/kg以上、頻繁には0.02g/kg以上、特には0.05g/kg以上である。このアルデヒド含有量は、一般的には10g/kg以下、通常は5g/kg以下、通例は2g/kg以下、多くは1g/kg以下、頻繁には0.5g/kg以下、特には0.1g/kg以下である。
【0040】
ケトンは、アセトン、ブタノン、多くは2−ブタノン、ヒドロキシアセトン、クロロアセトン、ペンタンジオン、多くは2,3−ペンタンジオン、シクロペンタノン、メチルシクロペンテノン、多くは2−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。
【0041】
スクラビング剤中のケトンの含有量は、一般的には0.001g/kg以上、通常は0.005g/kg以上、通例は0.01g/kg以上、多くは0.05g/kg以上、頻繁には0.1g/kg以上、特には0.5g/kg以上である。このケトン含有量は、一般的には10g/kg以下、通常は8g/kg以下、通例は6g/kg以下、多くは4g/kg以下、頻繁には2g/kg以下、特には1g/kg以下である。
【0042】
カルボン酸は、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、多くはジカルボン酸、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。酢酸が、モノカルボン酸の一例である。アジピン酸が、ジカルボン酸の一例である。
【0043】
スクラビング剤中のカルボン酸含有量は、一般的には0.001g/kg以上、通常は0.01g/kg以上、通例は0.1g/kg以上、多くは0.5g/kg以上、頻繁には1g/kg以上、特には5g/kg以上である。このカルボン酸含有量は、一般的には100g/kg以下、通常は80g/kg以下、通例は60g/kg以下、多くは40g/kg以下、頻繁には20g/kg以下、特には10g/kg以下である。
【0044】
カルボン酸エステルは、上述の酸とクロロヒドリン及びアルコールとのエステルから選択され得る。とりわけ、これらのエステルは、グリセロール、ジグリセロール、モノクロロプロパンジオール及びジクロロプロパノールのアジピン酸エステル、ならびにそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。
【0045】
スクラビング剤中のカルボン酸エステルの含有量は、一般的には0.01g/kg以上、通常は0.1g/kg以上、通例は1g/kg以上、多くは5g/kg以上、頻繁には10g/kg以上、特には15g/kg以上である。このカルボン酸エステル含有量は、一般的には500g/kg以下、通常は300g/kg以下、通例は150g/kg以下、多くは100g/kg以下、頻繁には50g/kg以下、特には20g/kg以下である。
【0046】
ハロゲン化炭化水素は、モノクロロプロパン、多くは2−クロロプロパン、モノクロロプロペン、多くは塩化アリル、ジクロロプロパン、多くは1,3−ジクロロプロパン、ジクロロプロペン、多くはcis−1,3−ジクロロプロペン、頻繁にはtrans−1,3−ジクロロプロペン、トリクロロプロパン、多くは1,2,3−トリクロロプロパン、クロロブロモプロパン、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。
【0047】
スクラビング剤中のハロゲン化炭化水素含有量は、一般的には0.001g/kg以上、通常は0.005g/kg以上、通例は0.01g/kg以上、多くは0.05g/kg以上、頻繁には0.1g/kg以上、特には0.5g/kg以上である。このハロゲン化炭化水素含有量は、一般的には20g/kg以下、通常は10g/kg以下、通例は5g/kg以下、多くは3g/kg以下、頻繁には2g/kg以下、特には1g/kg以下である。
【0048】
エピクロロヒドリンが、エポキシドの一例である。
【0049】
スクラビング剤中のエポキシド含有量は、一般的には0.001g/kg以上、通常は0.005g/kg以上、通例は0.01g/kg以上、多くは0.05g/kg以上、頻繁には0.1g/kg以上、特には0.5g/kg以上である。このエポキシド含有量は、一般的には10g/kg以下、通常は8g/kg以下、通例は6g/kg以下、多くは4g/kg以下、頻繁には2g/kg以下、特には1g/kg以下である。
【0050】
エーテルは、ポリグリセロール、多くはジグリセロール、頻繁には線状構造または環状構造のジグリセロール、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0051】
スクラビング剤中のエーテル含有量は、一般的には0.005g/kg以上、通常は0.01g/kg以上、通例は0.05g/kg以上、多くは0.1g/kg以上、頻繁には0.5g/kg以上、特には1g/kg以上である。このエーテル含有量は、一般的には50g/kg以下、通常は40g/kg以下、通例は30g/kg以下、多くは20g/kg以下、頻繁には10g/kg以下、特には5g/kg以下である。
【0052】
金属状態または塩状態にある金属は、鉄、ニッケル、クロム、カルシウム、ナトリウム、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。
【0053】
スクラビング剤中の元素金属として表される金属状態または塩状態にある金属の含有量は、一般的には0.001g/kg以上、通常は0.005g/kg以上、通例は0.01g/kg以上、多くは0.05g/kg以上、頻繁には0.1g/kg以上、特には0.5g/kg以上である。この金属含有量は、一般的には20g/kg以下、通常は15g/kg以下、通例は10g/kg以下、多くは5g/kg以下、頻繁には2g/kg以下、特には1g/kg以下である。
【0054】
金属は、金属塩の形態で存在し得る。この塩は、有機塩または無機塩であり得る。表現「無機塩」は、その構成イオンが炭素−炭素結合も炭素−水素結合も含まない塩を意味すると理解される。表現「有機塩」は、その構成イオンのうちの少なくとも一方が少なくとも1つの炭素−炭素結合または1つの炭素−水素結合を含んでいる塩を意味すると理解される。金属塩は、金属塩化物、硫酸塩、硫酸水素塩、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、硝酸塩、またはホウ酸塩、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。
【0055】
様々な不純物が、有利に液滴、固体粒子または気体画分の形態で塩化水素中に存在し得る。
【0056】
本発明に従う方法は、精製されることになる塩化水素の少なくとも一部を気体状態に保つことに適合し得る、多くの場合は、精製されることになる塩化水素を完全に気体状態に保つことに適合し得る任意の圧力で有利に実施される。この圧力は、一般的には1バール以上、多くは5バール以上である。この圧力は、通常は20バール以下、頻繁には15バール以下である。10バール付近の圧力が、非常に好適である。
【0057】
本方法が実施される温度は、スクラビング剤への不純物の溶解及び/または吸収を促進するように、精製されることになる塩化水素中に不純物として含まれる芳香族有機化合物の蒸気圧値を考慮して、当業者により容易に選択され得る。この温度は、一般的には10℃以上、多くは20℃以上、頻繁には50℃以上、多くの場合に75℃以上である。この温度は、通例は120℃以下、多くは100℃以下、時として90℃以下である。周囲温度(約25℃)に近い値が、例えば、スクラビング剤が、主としてクロロヒドリン(例えば、ジクロロプロパノール)からなる場合に非常に好適である。80℃に近い値が、例えば、スクラビング剤が、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化によるクロロヒドリンの製造のための方法のパージに由来する場合に非常に好適である。
【0058】
スクラビング剤及び精製されることになる塩化水素のそれぞれの流量の間の比率は重要ではなく、広範囲にわたって変動し得る。この比率は、実際には、スクラビング剤の実行可能な再生にかかる費用のみによって制限される。精製されることになる塩化水素の流量に対する重量%として表されるスクラビング剤の流量は、一般的には0.5以上、多くは1以上、頻繁には2以上である。この流量は、通常は50以下、頻繁には20以下、多くは10以下である。
【0059】
スクラビング剤及び精製されることになる塩化水素のそれぞれの量の間の比率は重要ではなく、広範囲にわたって変動し得る。この比率は、実際には、スクラビング剤の実行可能な再生にかかる費用のみによって制限される。精製されることになる塩化水素の量に対する重量%として表されるスクラビング剤の量は、一般的には0.5以上、多くは1以上、頻繁には2以上、特には10以上である。この量は、通常は80以下、頻繁には60以下、多くは40以下、特には20以下である。
【0060】
本発明に従う方法の接触工程は、連続方式、半連続方式またはバッチ方式で実施され得る。表現「連続方式」は、気相について連続的であり、液相についても連続的である操作方式を示すと理解される。表現「半連続方式」は、気相については連続的で、液相についてはバッチ方式とする操作方式を示すと理解される。表現「バッチ方式」は、気相についてバッチ方式とし、液相についてもバッチ方式とする操作方式を示すと理解される。半連続方式または連続方式での操作が好ましい。連続方式の方が好ましい。
【0061】
本方法がバッチ方式で実施される場合、スクラビング剤と精製されることになる塩化水素との間の接触工程の実施時間は、一般的には0.01分以上、多くは0.02分以上、頻繁には0.05分以上である。この実施時間は、通常は60分以下、通例は40分以下、頻繁には20分以下である。
【0062】
本方法が連続方式で実施される場合、スクラビング剤と精製されることになる塩化水素との間の接触工程中の気相の滞留時間は、一般的には1秒以上、多くは2秒以上、頻繁には3秒以上である。この滞留時間は、通常は120秒以下、通例は90秒以下、頻繁には60秒以下である。
【0063】
本方法が連続方式で実施される場合、スクラビング剤と精製されることになる塩化水素との間の接触工程中の液相の滞留時間は、一般的には10秒以上、多くは15秒以上、頻繁には20秒以上である。この滞留時間は、通常は60分以下、通例は50分以下、頻繁には45分以下である。
【0064】
本方法が半連続方式で実施される場合、スクラビング剤と精製されることになる塩化水素との間の接触工程中の気相の滞留時間は、一般的には1秒以上、多くは2秒以上、頻繁には3秒以上である。この滞留時間は、通常は120秒以下、通例は90秒以下、頻繁には60秒以下である。
【0065】
スクラビング剤と接触させる工程前の精製されることになる塩化水素中に含まれる不純物と、この工程の終わりにスクラビング剤中に認められる不純物との割合は、一般的には50%以上、多くの場合に60%以上、通例は70%以上、多くは80%以上、通常は90%以上、頻繁には99%以上、より多くは99.99%以上、多くの場合に99.999%以上である。
【0066】
本発明に従う方法は、塩化水素をスクラビング剤と接触させる少なくとも1つの工程を含む。しかしながら、好ましくは、そしてさらに連続方式で操作する場合には、本方法は2工程で実施される。すなわち、それらの工程のうちの一方はスクラビング剤のループ流(再循環)を包含し、もう一方の工程は新しいスクラビング剤の供給を包含する。この場合、精製されることになる塩化水素の流量の重量%として表される新しいスクラビング剤の流量は、一般的には0.1以上、多くは1以上、頻繁には3以上である。この流量は、通例は20以下、多くは10以下、多くの場合に7以下である。5重量%付近のそのような流量が、非常に好適である。
【0067】
精製されることになる塩化水素から抜き出された不純物が負荷されたスクラビング剤と、さらにこの塩化水素の前記スクラビング剤に溶解したまたは前記スクラビング剤と混合した部分とを含む混合液または溶液(以下では画分(f)と呼ぶ)は、次いで、そこから特に塩化水素、及び/または抜き出された不純物を分離するために、例えば、スクラビング、中和、沈降分離、「全量濾過」型の、「クロス濾過」型の、または膜(例えば、セラミックス膜など)による濾過、蒸留、吸収、ストリッピングなどの、任意の公知の手段によって少なくとも部分的に処理され得る。この処理は、これらの手段のうちの1つにまたは少なくとも2つの組み合わせによって実施され得る。これらの手段のうちの1つの特定の実施は、特にそれがストリッピング、沈降分離または濾過処理である場合には、1つ以上のデバイスで行われ得る。ストリッピング処理の場合には、処理は、1基以上のストリッピング塔、多くは数基の塔、頻繁には2基の塔で行われ得る。
【0068】
画分(f)の全てまたは少なくとも一部をストリッピング操作に供することにより、不純物が負荷されたスクラビング剤から塩化水素を分離することが好ましい。好ましくは、画分(f)の一部のみがストリッピング操作に供される。この目的のために、画分(f)は、液体画分(f1)と液体画分(f2)とに有利に分割される。この分割は、液体流を2つに分け、結果として生ずるそれらの流れを調節することで知られる任意のデバイス(例えば、流量制御弁を備えたT字型取付部品など)を用いて行われ得る。本発明に従う精製方法が連続方式で実施される場合には、画分(f1)は、次いで、塩化水素をスクラビング剤と接触させる工程に有利に再循環される。画分(f2)(「パージ流」とも呼ぶ)は、それ自体が上述のストリッピング操作に有利に供され、その操作の間に、この画分(f2)に含まれる(スクラビング剤と接触させる工程に再循環され得る)塩化水素が一方に、不純物が負荷されているスクラビング剤の残留物を本質的に含む以下では残留パージ流と呼ばれるパージ流の残りが他方に分離される。
【0069】
スクラビング剤が液体状態のクロロヒドリンから実質的になる第1の実施形態において、この残留パージ流は、クロロヒドリンと、そのクロロヒドリンの沸点よりも低い沸点を有する汚染物質と、そのクロロヒドリンの沸点よりも高い沸点を有する汚染物質とが蒸留によって分離されるユニットに運ばれることにより、有利に再利用され得る。得られたクロロヒドリンは、任意の目的のために使用され得、好ましくは、エポキシドを生成するために脱塩化水素化反応に供される。
【0070】
スクラビング剤がポリヒドロキシル化炭化水素の塩化水素化方法からの液体状態のパージ流から実質的になる第2の実施形態において、この残留パージ流は、高温酸化が行われるユニットに運ばれることにより、有利に再利用され得る。パージ流の炭化水素ベースの成分はエネルギーの形態で再利用され、パージ流のクロロカーボンベースの成分は塩化水素に転化される。この塩化水素は、塩化水素の水溶液の形態で再利用されるか、またはスクラビング剤と接触させる工程に戻され得る。
【0071】
スクラビング剤がポリヒドロキシル化炭化水素の塩化水素化方法からの液体状態のパージ流から実質的になる第3の実施形態において、パージ流(f2)は、高温酸化が行われるユニットに運ばれることにより、有利に再利用され得る。パージ流の炭化水素ベースの成分はエネルギーの形態で再利用され、パージ流のクロロカーボンベースの成分は塩化水素に転化される。この塩化水素は、塩化水素の水溶液の形態で再利用されるか、またはスクラビング剤と接触させる工程に戻され得る。この場合、パージ流(f2)は、最初にストリッピング操作には供されない。
【0072】
画分(f2)の質量流と新しいスクラビング剤の供給の質量流とのそれぞれの割合は、一般的には50%以上、多くは60%以上、頻繁には70%以上である。この割合は、一般的には500%以下、多くは200%以下、頻繁には160%以下、多くの場合に140%以下である。
【0073】
本発明に従う精製方法は、極めて効率的である。
【0074】
スクラビング剤と接触させる工程前の精製されることになる塩化水素中に含まれる芳香族有機不純物と、この工程の終わりにスクラビング剤中に認められる芳香族有機不純物との割合は、一般的には50%以上、多くの場合に60%以上、通例は70%以上、多くは80%以上、通常は90%以上、頻繁には99%以上、大抵は99.99%以上、多くの場合に99.999%以上である。
【0075】
この方法は、精製された塩化水素中の芳香族有機不純物レベルを、通例は500ppm未満まで、一般的には100重量ppm未満まで、通常は50ppm未満まで、多くの場合に25ppm未満まで、多くは10ppm未満まで、頻繁には5ppm未満まで、とりわけ1ppm未満まで、特には0.5ppm未満まで低下させることを可能にする。このレベルは、概して1ppb以上である。上述の塩素化芳香族化合物の場合は、本発明に従う方法により、精製された塩化水素中、10ppmを超えない残留含有量を達成することが可能である。
【0076】
本発明に従う方法は、塩化水素中に含まれる不純物による、塩化水素を用いる製造からもたらされる製品の汚染を防ぐことを可能にするという利点を有する。
【0077】
塩化水素をスクラビング剤と接触させる工程は、任意の種類のデバイス、特に、気体と液体とを接触させることが意図されたデバイスで行われ得る。この種のデバイスは、「Perry’s Chemical Engineers’Handbook」,第六版,McGraw Hill Inc.,1984,第18節に記載されている。
【0078】
これらのデバイスは、任意の種類の材料(例えば、炭素鋼、非含浸黒鉛及び高分子材料(例えばポリエステル)など)で作製されたかまたは被覆されたものであり得る。
【0079】
これらのデバイスは、概して、塩化水素精製工程の条件下において耐蝕性がある材料で作製されたかまたは被覆されたものである。これらの材料は、エナメル鋼、金属合金、金属、ポリマー、含浸黒鉛、非含浸黒鉛、耐火材料、セラミックス、サーメット、フェノール樹脂、及びエポキシ樹脂から選択され得る。
【0080】
金属合金は、多くの場合、Ni−Mo合金(例えば、Hastelloy B2など)である。
【0081】
金属は、タンタル、金、銀、モリブデン、及びニッケルから選択され、好ましくは、タンタル及びモリブデンから選択され得る。最も格別に好ましくは、金属はタンタルである。
【0082】
ポリマーは、多くの場合、ポリオレフィン、フルオロポリマー、及び硫黄含有ポリマーから選択される。
【0083】
ポリオレフィンは、好ましくは、ポリプロピレン及びポリエチレンから選択され、好ましくは、ポリプロピレンである。
【0084】
フルオロポリマーは、完全にまたは部分的にフッ素化され得る。部分的にフッ素化されたポリマーは、ポリフッ化ビニリデンである。ペルフルオロポリマーは、多くの場合、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(ペルフルオロプロピルビニルエーテル)、ならびにテトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマーから選択される。
【0085】
含浸黒鉛は、フェノール樹脂を含浸させた黒鉛、またはポリテトラフルオロエチレンを含浸させた黒鉛から選択され得る。
【0086】
好ましい材料は、好ましくは、エナメル鋼、タンタル、ペルフルオロポリマー、フェノール樹脂、及び含浸黒鉛から選択される。
【0087】
一つの特定の態様によれば、塩化水素、特に塩化水素ガスを精製するための装置は、精製されることになる塩化水素を一方から、上記で定義されたスクラビング剤を他方から向流させる少なくとも1つのスクラビング塔を備え、前記スクラビング塔は、2つの部分を上下に重ねて備えている。精製された塩化水素ガスが、塔頂から出る。スクラビング剤と、精製されることになる塩化水素から抜き出された不純物(上記で定義される通り)と、スクラビング剤に溶解したかまたはスクラビング剤と混合したこの塩化水素の部分とを含んだ画分(f)が、塔底で回収される。
【0088】
2つの部分を備えたスクラビング塔において、第1部分には、この部分の底部で回収され、ループ内を再循環される、上記で定義された画分(f)の少なくとも一部が有利に供給される。この画分(f)は、それの再循環の間に、塩化水素から抜き出された不純物が負荷されたスクラビング剤をその画分から分離するために、この目的で知られた任意の手段により、完全にまたは部分的に有利に処理され得る。これらの手段は、画分(f)の処理に関連して上記で述べられた手段であり得る。画分(f)は、そこから不純物を抜き出すために、好ましくは、少なくとも1つのストリッピング塔において、スクラビング塔の第1部分の上部に再循環される前に、少なくとも部分的に処理される。
【0089】
2つの部分を備えたスクラビング塔において、第1部分の上に置かれた第2部分には、新しいスクラビング剤が有利に供給される。
【0090】
スクラビング塔には、精製されることになる気体状態の成分(塩化水素)と液体スクラビング剤との間の交流を促進する、任意の公知の種類の充填物が装備され得る。無機充填物、特に、石器、セラミックス、黒鉛または金属炭化物で作られた充填物、好ましくは、石器またはセラミックスで作られた充填物が、有利に使用され得る。最も一般的に使用される材料についての記載は、例えば、Unit Operations II of Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(完全改定第5版、VCHから出版、1988年):第B3巻の第8−20及び8−21頁第3.4.、3.5.及び3.6.節に載っている。石器またはセラミックス充填物の例として、ラシヒリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、セラミックス触媒担体(例えば、Macro Trap型担体及びDenstone型担体)が挙げられ得る。2つの部分を備えたスクラビング塔において、ラシヒリングまたはベルルサドルからなる充填物が有利であることが分かっており、このうち第1部分においては、この部分を多くの場合に極めて大きな液体流量が通過することを考えると、ベルルサドルの方が非常に格別に好ましい。補足的なスクラビング剤しか受け取らない第2部分には、液相と気相の非常に好ましい接触を確実にする泡鐘トレイが有利に装備され得る。
【0091】
本発明はまた、第2の態様において、本発明に従う精製方法により得られた塩化水素を用いるポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、またはそれら2つの混合物のクロロヒドリンへの塩化水素化のための方法に関する。
【0092】
より具体的には、本発明はまた、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、またはそれら2つの混合物と、本発明に従う精製方法によって得られた塩化水素を含む塩素化剤との間の反応によりクロロヒドリンを製造するための方法に関する。
【0093】
表現「ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素」は、2つの異なる飽和炭素原子に結合された少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する炭化水素のことをいう。ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、2個〜60個の炭素原子を含有し得るが、これに限定されない。
【0094】
ヒドロキシル(OH)官能基を有するポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素の各炭素は、1つより多くのOH基を有し得ず、sp3混成のものでなければならない。OH基を有する炭素原子は、第一級、第二級または第三級であり得る。本発明において使用されるポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、OH基を有するsp3混成の炭素原子を少なくとも2つ含んでいなければならない。ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素としては、ビシナルジオール(1,2−ジオール)またはビシナルトリオール(1,2,3−トリオール)(より高次のこれらのビシナルまたは隣接反復単位を包含する)を含んだ任意の炭化水素が挙げられる。ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素の定義はまた、例えば、1つ以上の1,3−、1,4−、1,5−及び1,6−ジオール官能基も包含する。ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素はまた、ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)であり得る。例えばジェミナルジオールは、このクラスのポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素から除外される。
【0095】
ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、芳香族実体、または例えば、ハロゲン、硫黄、リン、窒素、酸素、ケイ素、及びホウ素型のヘテロ原子を包含するヘテロ原子、ならびにそれらの混合物を含み得る。
【0096】
本発明において使用され得るポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素としては、例えば、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1−クロロ−2,3−プロパンジオール(クロロプロパンジオール)、2−クロロ−1,3−プロパンジオール(クロロプロパンジオール)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2,3−プロパントリオール(「グリセロール」または「グリセリン」としても知られる)、及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、本発明において使用されるポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素としては、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、クロロプロパンジオール及び1,2,3−プロパントリオール、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物が挙げられる。より好ましくは、本発明において使用されるポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素としては、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、クロロプロパンジオール、及び1,2,3−プロパントリオール、ならびにそれらのうちの少なくとも2種の混合物が挙げられる。1,2,3−プロパントリオール、すなわちグリセロールが、最も好ましい。
【0097】
ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルは、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素中に含まれ得る、かつ/またはクロロヒドリン製造方法において生成され得る、かつ/またはクロロヒドリン製造方法に先だって製造され得る。ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルの例としては、エチレングリコールモノアセタート、プロパンジオールモノアセタート、グリセロールモノアセタート、グリセロールモノステアラート、グリセロールジアセタート、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0098】
用語「クロロヒドリン」は上記に定義されている。少なくとも2つのヒドロキシル基を含むクロロヒドリンは、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素でもある。したがって、本発明に従う塩化水素化方法において、その反応の出発物質及び生成物は、いずれもクロロヒドリンであり得る。この場合、クロロヒドリン「生成物」は、最初のクロロヒドリンよりもさらに塩素化されている、すなわち、最初のクロロヒドリンよりも塩素原子を多く、ヒドロキシル基を少なく有している。
【0099】
1つの非常に好適な実施形態において、クロロヒドリンはジクロロプロパノールであり、塩化水素は、ジクロロプロパノールを含有するスクラビング剤と接触することにより、多くの場合は、ジクロロプロパノールから実質的になるスクラビング剤と接触することにより精製され、精製された塩化水素は、グリセロールをその精製塩化水素を含有する塩素化剤と反応させるジクロロプロパノール製造方法において使用されることが意図される。
【0100】
同じく非常に好適な別の実施形態において、塩化水素は、前記ジクロロプロパノール製造方法からのパージ流を含有するスクラビング剤と接触すること、多くの場合は、このパージ流から本質的になるスクラビング剤と接触することにより精製される。
【0101】
このパージ流は、典型的に、1kg当たり150〜650gのモノクロロプロパンジオール、1〜70gのグリセロール、50〜350gのジクロロプロパノール、100g以下の水、25〜130gのジグリセロールジクロロヒドリン、5〜25gのジグリセロールモノクロロヒドリン、及び20〜200gのモノクロロプロパンジオールエステルを含む。ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素と精製された塩化水素を含有する塩素化剤と間の反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社による出願である国際公開第2005/054167号の第8頁第25行〜第10頁第10行に記載されるような温度、圧力、実施時間及び滞留時間条件下で行われ得る。
【0102】
第2の態様の好ましい変形例(variant)において、本発明は、本発明に従う精製方法により得られた塩化水素を用いるグリセロール、グリセロールのエステル、またはそれら2つの混合物のジクロロプロパノールへの塩化水素化のための方法に関する。
【0103】
その変形例において、グリセロールは、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の出願である国際公開第2009/077528号の第1頁第31行〜第3頁第24行に記載されるように、概して窒素化合物、通常は少なくとも1種の窒素化合物を含有する。窒素化合物は、有機窒素化合物または無機窒素化合物であり得る。
【0104】
有機窒素化合物は、植物起源の細胞中に存在する有機窒素化合物であり得る。それらは、多くの場合、アミン、尿素、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸、グルコシノレート、それらの分解生成物(例えば、イソチオシアネート、チオシアネート、ニトリル、オキサゾリジンチオン)、窒素含有リン脂質、クロロフィル、フェオフィチン、シナピン、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0105】
窒素含有リン脂質の例には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルエタノールアミンがある。
【0106】
遊離アミノ酸またはペプチドもしくはタンパク質の組成の一部であり得るアミノ酸の例には、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、シスチン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物がある。
【0107】
グルコシノレートの例には、シニグリン、グルコナピン(gluconapine)、グルコブラッシカナピン(glucobrassicanapine)、グリコルシン(glycorucine)、グルコベルテロイン(glucoberteroine)、グルコラファニン(glucoraphanin)、グルコアリッシン(glucoalyssin)、グルコナスツルチイン、プロゴイトリン(progoitrine)、ナポレイフェリン(napoleiferine)、グルコブラッシシン(glucobrassicine)、ネオグルコブラッシシン(neoglucobrassicine)、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物がある。
【0108】
無機窒素化合物は、頻繁には、アンモニア、ヒドラジン、クロラミン、無機アンモニウム塩、硝酸塩、亜硝酸塩、シアン酸塩、イソシアン酸塩、アンモニウムイソチオシアネート、金属イソチオシアネート、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0109】
Ng/kgとして表されるグリセロールの総窒素含有量は、一般的には0.001以上、通常は0.005以上、多くは0.01以上、より多くは0.5以上である。その含有量は、一般的には5以下、頻繁には2以下、より頻繁には1以下である。
【0110】
窒素含有量は、化学ルミネセンス技術によって得られる。
【0111】
その変形例において、グリセロールは、概して、硫黄化合物を含有する。硫黄化合物は、有機硫黄化合物または無機硫黄化合物であり得る。
【0112】
有機硫黄化合物の例には、硫黄含有アミノ酸(例えば、遊離しているか、またはペプチドもしくはタンパク質の組成の一部であるメチオニン、システイン、及びシスチン)、グルコシノレート、その分解生成物(例えば、イソチオシアネート及びチオシアネート)、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物がある。
【0113】
無機硫黄化合物の例には、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硫化物、水硫化物を含有する化合物、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物がある。無機硫黄化合物は、多くの場合、硫酸塩含有化合物がある。
【0114】
Sg/kgとして表されるグリセロールの総硫黄含有量は、通常は0.0001以上、多くは0.001以上、より多くは0.01以上である。その含有量は、一般的には15以下、頻繁には10以下、より頻繁には5以下、さらにより頻繁には1以下である。
【0115】
その変形例において、グリセロールは、概して、リン化合物を含有する。
【0116】
リン化合物は、有機リン化合物または無機リン化合物であり得る。
【0117】
有機リン化合物の例には、グリセロホスホリピド(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ポリホスホイノシチド、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物がある。
【0118】
無機リン化合物の例には、リン酸塩、リン酸水素塩、亜リン酸塩、及び亜リン酸水素塩を含有する化合物、ならびにそれらの混合物がある。無機硫黄化合物は、多くの場合、リン酸塩含有化合物である。
【0119】
Pg/kgとして表されるグリセロールの総リン含有量は、一般的には0.00001以上、より一般的には0.0001以上、通常は0.001以上、多くは0.01以上、より多くは0.5以上である。その含有量は、一般的には20以下、頻繁には15以下、より頻繁には10以下、なお一層頻繁には5以下、より一層頻繁には1以下である。
【0120】
その変形例において、グリセロールは、概して、無機塩素化合物を含有する。
【0121】
無機塩素化合物の例には、塩化物含有化合物がある。
【0122】
塩化物g/kgとして表されるグリセロールの総無機塩素含有量は、一般的には0.001以上、通常は0.05以上、多くは0.1以上、より多くは0.5以上である。その含有量は、一般的には40以下、頻繁には20以下、より頻繁には10以下、なお一層頻繁には5以下、より一層頻繁には1以下である。
【0123】
その変形例において、グリセロールはまた、モノアルコール、通常は、少なくとも1種のモノアルコール(例えば、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の出願である国際公開第2007/144335号の第3頁第26〜31行に記載されるモノアルコール)も含み得る。
【0124】
モノアルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパノール、アリルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、メチルプロパノール、3−メチルブタン−1−オール、2−メチルブタン−1−オール、ペンテノール、ヘキセノール、2−フェニルエタノール、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物がある。
【0125】
メタノールg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのモノアルコール含有量は、通常は0.001以上、多くは0.01以上、より多くは0.1以上、より一層多くは0.5以上、なお一層多くは1以上、特には10以上である。その含有量は、一般的には500以下、頻繁には300以下、より頻繁には200以下、より一層頻繁には100以下、なお一層頻繁には50以下である。モノアルコールは、多くの場合、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0126】
その変形例において、グリセロールは、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の出願である国際公開第2009/000773号の第1頁第30行〜第3頁第21行に記載されるように、概してジオールを、通常は少なくとも1種のジオールを含有する。
【0127】
ジオールの例には、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物がある。
【0128】
ジオールg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのジオール含有量は、通常は0.001以上、多くは0.01以上、より多くは0.1以上、より一層多くは0.5以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には1以下である。ジオールは、頻繁には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0129】
その変形例において、グリセロールは、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の出願である国際公開第2007/144335号の第1頁第33行〜第3頁第25行に記載されるように、概してグリセロールアルキルエーテルを、通常は少なくとも1種のグリセロールアルキルエーテルを含有する。
【0130】
グリセロールアルキルエーテルの例には、アルキル基が独立してメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基からなる群から選択される、グリセロールのモノエーテル、ジエーテル及びトリエーテルがある。
【0131】
グリセロールアルキルエーテルg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのグリセロールアルキルエーテル含有量は、通常は0.001以上、多くは0.01以上、より多くは0.1以上、より一層多くは0.5以上、なお一層多くは1以上である。その含有量は、一般的には15以下、頻繁には10以下、より頻繁には5以下である。グリセロールアルキルエーテルは、多くの場合、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール、2−メトキシ−1,3−プロパンジオール、3−モノプロピレンジオール、またはそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物から選択される。
【0132】
その変形例において、グリセロールは、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2006/100315号の特に第7頁第11行〜第9頁第10行の章句に記載されるように、アルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属を含有し得る。
【0133】
その変形例において、グリセロールは、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2006/100319号の特に第2頁第3〜8行及び第6頁第20行〜第9頁第14行の章句に記載されるように、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の元素を含有し得る。
【0134】
その変形例において、グリセロールはまた、金属、多くの場合、少なくとも1種の金属も含み得る。金属は、金属形態で、または塩として、またはそれらの混合物として存在し得る。金属は、多くの場合、元素の周期表のIA、IIA、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIII、IB、IIB、IIA、IVA、VA、VIA族の元素において見出される。
【0135】
グリセロールのIA族金属含有量は、金属mg/グリセロールkgとして表されて、通常は0.01以上、多くは0.1以上、より多くは1以上、より一層多くは10以上、なお一層多くは100以上、特には500以上である。その含有量は、金属g/グリセロールkgとして表されて、一般的には50以下、通常は30以下、頻繁には10以下、より頻繁には5以下、より一層頻繁には1以下である。IA族金属は、多くの場合、Na、K、及びそれらの混合物からなる群において見出される。
【0136】
金属mg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのIIA族金属含有量は、通常は0.001以上、多くは0.005以上、より多くは0.01以上、より一層多くは0.05以上、なお一層多くは0.1以上、特には1以上である。その含有量は、一般的には200以下、頻繁には150以下、より頻繁には100以下、より一層頻繁には50以下、なお一層頻繁には10以下である。IIA族金属は、多くの場合、Ba、Ca、Be、Mg、及びそれらの混合物からなる群において見出される。
【0137】
金属mg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのIVB族金属含有量は、通常は0.001以上、多くは0.005以上、より多くは0.01以上、より一層多くは0.05以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には1以下、より一層頻繁には0.1以下である。IVB族金属は、多くの場合、Tiである。
【0138】
金属mg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのVB族金属含有量は、通常は0.001以上、多くは0.005以上、より多くは0.01以上、より一層多くは0.05以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には1以下、より一層頻繁には0.1以下である。VB族金属は、多くの場合、Vである。
【0139】
金属mg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのVIB族金属含有量は、通常は0.0001以上、多くは0.001以上、より多くは0.01以上、より一層多くは0.05以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には1以下、より一層頻繁には0.1以下である。VIB族金属は、多くの場合、Crである。
【0140】
金属mg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのVIIB族金属含有量は、通常は0.0001以上、多くは0.001以上、より多くは0.01以上、より一層多くは0.05以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には1以下、より一層頻繁には0.1以下である。VIIB族金属は、多くの場合、Mnである。
【0141】
金属mg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのVIII族金属含有量は、通常は0.0001以上、多くは0.001以上、より多くは0.01以上、より一層多くは0.05以上、なお一層多くは0.1以上である。その含有量は、一般的には50以下、頻繁には30以下、より頻繁には20以下、より一層頻繁には10以下、なお一層頻繁には1以下である。VIII族金属は、多くの場合、Co、Fe、Ni、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物からなる群において見出される。
【0142】
金属mg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのIB族金属含有量は、通常は0.0001以上、多くは0.001以上、より多くは0.01以上、より一層多くは0.05以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には1以下、より一層頻繁には0.1以下である。IB族金属は、多くの場合、Cuである。
【0143】
金属mg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのIIB族金属含有量は、通常は0.0001以上、多くは0.001以上、より多くは0.01以上、より一層多くは0.05以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には1以下、より一層頻繁には0.1以下である。IIB族金属は、多くの場合、Cd、Hg、Zn、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群において見出される。
【0144】
金属mg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのIIIA族金属含有量は、通常は0.0001以上、多くは0.001以上、より多くは0.01以上、より一層多くは0.05以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には1以下、より一層頻繁には0.1以下である。IIIA族金属は、多くの場合、Alである。
【0145】
金属mg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのIVA族金属含有量は、通常は0.0001以上、多くは0.001以上、より多くは0.01以上、より一層多くは0.05以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には1以下、より一層頻繁には0.1以下である。IVA族金属は、多くの場合、Pb、Sn、及びそれらの混合物からなる群において見出される。
【0146】
金属mg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのVA族金属含有量は、通常は0.0001以上、多くは0.001以上、より多くは0.01以上、より一層多くは0.05以上である。その含有量は、一般的には1000以下、頻繁には500以下、より頻繁には100以下、より一層頻繁には10以下、なお一層頻繁には1以下、特には0.1以下である。VA族金属は、多くの場合、As、Sb、P、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群において見出される。
【0147】
金属mg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのIVA族金属含有量は、通常は0.0001以上、多くは0.001以上、より多くは0.01以上、より一層多くは0.05以上である。その含有量は、一般的には20以下、頻繁には10以下、より頻繁には1以下、より一層頻繁には0.1以下である。VIA族金属は、多くの場合、S、Se、Te、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群において見出される。
【0148】
その変形例において、グリセロールはまた、カルボン酸、多くの場合、少なくとも1種のカルボン酸も含み得る。
【0149】
カルボン酸は、通常、酢酸、プロピオン酸、酪酸、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0150】
カルボン酸は、脂肪酸であり得る。脂肪酸は、概して、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、メリシン酸、ドトリアコンタン酸、α−リノール酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ミリストオレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、バクセン酸、ゴンド酸(gondoic)、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸、α−リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、オクタデカペンタエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リシノール酸、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0151】
カルボン酸g/グリセロールkgとして表されるグリセロールのカルボン酸(好ましくは脂肪酸)含有量は、通常は0.001以上、多くは0.01以上、より多くは0.1以上である。その含有量は、一般的には5以下、頻繁には3以下、より頻繁には2以下、より一層頻繁には1以下である。脂肪酸は、多くの場合、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0152】
カルボン酸官能基mmol/kgとして表されるグリセロールのカルボン酸含有量は、通常は0.1以上、多くは0.2以上、より多くは0.5以上である。その含有量は、一般的には50以下、頻繁には40以下、より頻繁には30以下、なお一層頻繁には20以下、より一層頻繁には10以下、特には1以下である。
【0153】
その変形例において、グリセロールはまた、カルボン酸塩、多くの場合、少なくとも1種のカルボン酸塩も含み得る。それらの塩は、通常は、上述のカルボン酸の金属塩である。金属塩は、多くの場合、Na、K、Ba、Ca、Be、Mg、Ti、V、Cr、Mn、Co、Fe、Ni、Cu、Cd、Hg、Zn、Al、Pb、Sn、As、Sb、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群において見出される。
【0154】
カルボン酸塩アニオンg/kgとして表されるグリセロールのカルボン酸塩含有量は、通常は0.01以上、多くは0.05以上、より多くは1以上である。その含有量は、一般的には80以下、頻繁には60以下、より頻繁には40以下、なお一層頻繁には20以下、より一層頻繁には10以下、特には5以下である。カルボン酸塩は、多くの場合、酢酸の塩である。
【0155】
カルボン酸塩アニオン官能基mmol/kgとして表されるグリセロールのカルボン酸塩含有量は、通常は1以上、多くは2以上、より多くは10以上である。その含有量は、一般的には1000以下、頻繁には800以下、より頻繁には600以下、なお一層頻繁には400以下、より一層頻繁には200以下、特には100以下である。
【0156】
その変形例において、グリセロールはまた、ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の出願である国際公開第2007/144335号の第5頁第12〜20行に記載されるように、脂肪酸のアルキルエステル、通常は少なくとも1種の脂肪酸アルキルエステル、グリセロールエステル、概して少なくとも1種のグリセロールエステル、及び塩、通例は少なくとも1種の塩も含み得る。
【0157】
カルボン酸エステル官能基mmol/kgとして表されるグリセロールのカルボン酸エステル含有量は、通常は0.1以上、多くは0.2以上、より多くは0.5以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には1以下である。
【0158】
脂肪酸アルキルエステルは、通常、頻繁には上述の脂肪酸の群から選択される脂肪酸と、多くの場合にメタノール、エタノール、プロパノール、及びそれらのうちの2種の任意の混合物からなる群から選択されるモノアルコールとのエステルである。
【0159】
脂肪酸アルキルエステルg/グリセロールkgとして表されるグリセロールの脂肪酸アルキルエステル含有量は、通常は0.01以上、多くは0.05以上、より多くは0.1以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には2以下、より一層頻繁には1以下である。脂肪酸アルキルエステルは、多くの場合、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチル、ステアリン酸メチル、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0160】
グリセロールエステルは、通常、グリセロールと、頻繁には上述のカルボン酸の群より選択され、多くの場合に酢酸、プロピオン酸、上述の脂肪酸、及びそれらのうちの2種の任意の混合物からなる群から選択されるカルボン酸とのモノエステル、ジエステル、またはトリエステルである。グリセロールと脂肪酸とのより多く見られるエステルは、モノパルミチン酸エステル、モノオレイン酸エステル(monooletae)、モノリノール酸エステル、モノリノレン酸エステル、モノステアリン酸エステル、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物である。
【0161】
脂肪酸アルキルエステルg/グリセロールkgとして表されるグリセロールの脂肪酸アルキルエステル含有量は、通常は0.01以上、多くは0.05以上、より多くは0.1以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には2以下、より一層頻繁には1以下である。
【0162】
その変形例において、グリセロールは、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2005/054167号の特に第1頁第26行〜第4頁第2行の章句に記載されるように、化石原料から出発して、または再生可能原料から出発して、好ましくは再生可能原料から出発して得られ得る。
【0163】
その変形例において、グリセロールはまた、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2009/000773号の特に第10頁第16〜23行及び第11頁第4〜25行の章句に記載されるように、化石原料から出発して、または再生可能原料から出発して、好ましくは再生可能原料から出発して得られ得る。
【0164】
その変形例において、グリセロールは、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2006/1000316号の特に第15頁第32行〜第17頁第33行の章句に記載されるように、1絶対バールの圧力下での沸点がジクロロプロパノールの沸点より少なくとも15℃高い、グリセロール以外のある量の重質化合物を概して含有する。
【0165】
その変形例において、グリセロールは、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際出願PCT/EP2009/053766号明細書の特に第1頁第25行〜第6頁第19行の章句に記載されるように、グリセロールオリゴマーを含有し得る。
【0166】
グリセロールオリゴマーは、概して、ジグリセロール、環状ジグリセロール、2つより多くのグリセロール単位を含むポリグリセロール、環状ポリグリセロール、すなわち、2つより多くのグリセロール単位及び少なくとも1つの環を含むポリグリセロール、ならびにそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0167】
ジグリセロールは、多くの場合、3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−プロパン−1,2−ジオール、3−(2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエトキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−(2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエトキシ)プロパン−1,3−ジオール、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0168】
環状ジグリセロールは、多くの場合、cis−及びtrans−2,5−ビス−(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、cis−及びtrans−2,6−ビス−(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、cis−及びtrans−6−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキセパン、cis−及びtrans−3,7−ジヒドロキシ−1,5−ジオキソカン、ならびにそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0169】
ポリグリセロールは、多くの場合、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ヘキサグリセロール、ヘプタグリセロール、オクタグリセロール、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0170】
グリセロールオリゴマーg/グリセロールkgとして表されるグリセロールのグリセロールオリゴマー含有量は、通常は0.01以上、多くは0.05以上、より多くは0.1以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には2以下、より一層頻繁には1以下である。グリセロールオリゴマーは、多くの場合、ジグリセロール、環状ジグリセロール、好ましくは上記の、ジグリセロール、環状ジグリセロール、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0171】
その変形例において、グリセロールはアルデヒドを含有し得る。アルデヒドは、多くの場合、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、メチルブタナール、グリセリンアルデヒド、アクロレイン、ペンテナール、ヘキセナール、ヘキサジエナール、ヘプテナール、ピルビンアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−プロピオンアルデヒド、3−ヒドロキシ−プロピオンアルデヒド、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択される。
【0172】
アルデヒドg/グリセロールl(リットル)として表されるグリセロールのアルデヒド含有量は、通常は0.01以上、多くは0.05以上、より多くは0.1以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には2以下、より一層頻繁には1以下である。多く見られるアルデヒドは、グリセリンアルデヒドである。
【0173】
その変形例において、グリセロールはケトンを含有し得る。ケトンは、多くの場合、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、ウンデカノン、2,3−ブタンジオン、シクロペンタノン、メチルシクロペンテノン、アセトフェノン、ヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0174】
ケトンg/グリセロールl(リットル)として表されるグリセロールのケトン含有量は、通常は0.01以上、多くは0.05以上、より多くは0.1以上である。その含有量は、一般的には10以下、頻繁には5以下、より頻繁には2以下、より一層頻繁には1以下である。
【0175】
その変形例において、グリセロールは、上述のアルデヒド及びケトンとグリセロールとのアセタール及びケタール(例えば、アセトールグリセロールケタール、3−ヒドロキシ−プロピオンアルデヒドケタール、及びそれらの混合物など)を含み得る。
【0176】
その変形例において、グリセロールは、カロチノイド(例えば、フィトエン、フィトフルエン、cis−β−カロチン、β−カロチン、α−カロチン、cis−α−カロチン、z−カロチン、d−カロチン、g−カロチン、ノイロスポレン、α−ゼアカロチン、β−ゼアカロチン、リコピン、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物など)を含み得る。
【0177】
その変形例において、グリセロールは、芳香族及びヘテロ芳香族誘導体(例えば、トコフェロール(α、β、γ及びδ)、トコトリエノール、プラストクロマノール、ユビキノン、フラン、メチル−フラン、ジメチルフラン、プロピルフラン、ペンチルメチルフラン、一置換及び二置換のチオフェン、ナフタレン、エチルナフタレン、ジメチルナフタレン、アセナフテン、フェナントレン、ピレン、フルオランテン、ベンズアントラセン、クリセン、ペリレン、メトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン、フェノール、フェノール酸、ポリフェノール、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物など)を含み得る。
【0178】
その変形例において、グリセロールは、糖誘導体(例えば、モノガラクトシルジアシルグリセロール、ジガラクトシルグリセロール、ステロールグリコシド、それらの加水分解生成物、及びそれらの少なくとも2種の任意の混合物など)を含み得る。
【0179】
その変形例において、グリセロールは水を含有し得る。
【0180】
水g/グリセロールkgとして表されるグリセロールの水含有量は、通常は0.01以上、多くは0.05以上、より多くは0.1以上である。その含有量は、一般的には200以下、頻繁には100以下、より頻繁には50以下、より一層頻繁には10以下、なお一層頻繁には5以下、特には1以下である。
【0181】
その変形例において、グリセロールは、一般的には0.01より大きな、多くは0.05以上、より多くは0.1以上の、重量%で表される灰分含有量を示し得る。その含有量は、一般的には40以下、頻繁には20以下、より頻繁には10以下、より一層頻繁には5以下、特には1以下である。
【0182】
その変形例において、グリセロールは、一般的には0.01より大きな、多くは0.05以上、より多くは0.1以上の、重量%で表されるMONG(非グリセリン有機物(non glycerinous organic matter))含有量を示し得る。その含有量は、一般的には80以下、頻繁には60以下、より頻繁には30以下、より一層頻繁には20以下、特には10以下である。
【0183】
その変形例において、グリセロールは、他の化合物(例えば、11個〜35個の奇数または偶数の炭素原子を有する式CH(CHCHの直鎖n−アルカン、11個〜35個の奇数または偶数の炭素原子を有する分枝アルカン、34個〜62個の偶数の炭素原子を有する式CH(CHCOO(CHCHのアルキルエステル、22個〜32個の偶数の炭素原子を有する式CH(CHCHOHの脂肪アルコール(第一級)、22個〜32個の偶数の炭素原子を有する式CH(CHCHOの脂肪アルデヒド、23個〜33個の奇数の炭素原子を有する式CH(CHCO(CHCHのケトン、23個〜33個の奇数の炭素原子を有する式CH(CHCHOH(CHCHの脂肪アルコール(第二級)、27個〜33個の奇数の炭素原子を有する式CH(CHCOCHCO(CHCHのβ−ジケトン、トリテルペノール(triterpenol)、ステロール(例えば、コレステロール、カンペステロール、スチグマステノール及びシトステロール、α−アミリン、β−アミリン、ウバオール、ルペオール、エリトロジオール)、トリテルペノイド酸(例えば、ウルソル酸、オレアノール酸など)、ヒドロキシ−β−ジケトン、オキソ−β−ジケトン、アルケン(スクアレン)、分枝カルボン酸、分枝エステル、脂肪族アルコールの酢酸エステル及び安息香酸エステル、メチル、フェニルエチル及びトリテルペノイドエステル、セラミド、ならびにそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物)を含み得る。
【0184】
その変形例において、グリセロールと塩素化剤である塩化水素との間の反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2006/106154号の特に第14頁第15行〜第17頁第10行の章句に記載されるような反応媒体中で行われ得る。
【0185】
その変形例において、塩素化剤との反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の特許出願である国際公開第2005/054167号の第6頁第24行〜第7頁第35行に記載されるように、好ましくはカルボン酸またはカルボン酸誘導体である、触媒の存在下で行われ得る。
【0186】
その変形例において、塩素化剤との反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2005/054167号の特に第8頁第1行〜第10頁第10行の章句に記載されるような、触媒濃度、温度、圧力及び滞留時間で行われ得る。
【0187】
その変形例において、塩素化剤との反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2007/054505号の特に第1頁第24行〜第6頁第18行の章句に記載されるように行われ得る。
【0188】
その変形例において、ジクロロプロパノールを製造するための方法は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2005/054167号の特に第6頁第3〜23行の章句に記載されるように、処理条件下において塩素化剤による腐食に耐性がある材料で作製されたかまたは被覆された装置内で行われ得る。
【0189】
変形例において、ジクロロプロパノールを製造するための方法は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2006/100317号の特に第23頁第22行〜第27頁第25行の章句に記載されるように、処理条件下において塩素化剤による腐食に耐性がある材料で作製されたかまたは被覆された装置内で行われ得る。
【0190】
変形例において、本発明に従うジクロロプロパノールを製造するための方法は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2009/043796号の特に第1頁第30行〜第9頁第17行及び第19頁第25行〜第20頁第33行の章句に記載されるように、処理条件下において塩素化剤による腐食に耐性がある材料で作製されたかまたは被覆された装置内で行われ得る。
【0191】
その変形例において、塩素化剤との反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2008/145729号の特に第1頁第30行〜第2頁第33行及び第6頁第22行〜第14頁第31行の章句に記載されるような攪拌装置で攪拌しながら行われ得る。
【0192】
その変形例において、塩素化剤との反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2006/106154号の特に第1頁第29行〜第2頁第6行及び第14頁第15行〜第17頁第10行の章句に記載されるような液体反応媒体において行われ得る。
【0193】
その変形例において、塩素化剤との反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2008/107468号の特に第1頁第29行〜第4頁第27行及び第5頁第34行〜第9頁第17行の章句に記載される供給がなされる反応器で行われ得る。
【0194】
その変形例において、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2005/054167号の特に第12頁第1行〜第17頁第20行の章句に記載されるように行われ得る。
【0195】
その変形例において、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2006/100313号の特に第2頁第1〜23行及び第21頁第7行〜第25頁第25行の章句に記載されるような方法に従って行われ得る。
【0196】
その変形例において、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2006/100314号の特に第2頁第6行〜第3頁第4行及び第18頁第33行〜第22頁第29行の章句に記載されるような方法に従って行われ得る。
【0197】
その変形例において、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2006/100320号の特に第1頁第30行〜第2頁第23行及び第6頁第25行〜第10頁第28行の章句に記載されるような方法に従って行われ得る。
【0198】
その変形例において、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2006/100315号の特に第2頁第3〜29行及び第23頁第3行〜第24頁第13行の章句に記載されるような方法に従って行われ得る。
【0199】
その変形例において、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2008/110588号の特に第1頁第31行〜第27頁第25行の章句に記載されるような方法に従って行われ得る。
【0200】
その変形例において、ジクロロプロパノールは、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2006/100319号の特に第23頁第34行〜第24頁第29行の章句に記載されるように、概して、1,3−ジクロロプロパン−2−オール異性体及び2,3−ジクロロプロパン−1−オール異性体の混合物として得られる。
【0201】
その変形例おいて、ジクロロプロパノールは、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社の国際公開第2006/100311号の特に第2頁第22〜34行及び第22頁第8行〜第23頁第35行の章句に記載されるように、ハロゲン化ケトンを含有し得る。
【0202】
本発明はまた、第3の態様において、エポキシドを製造するための方法に関し、この方法は、クロロヒドリンを製造するための方法を包含し、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルまたはそれら2つの混合物と、精製された塩化水素を含有する塩素化剤との間の反応により得られるクロロヒドリンが、多くの場合に塩基性物質(basic agent)の存在下で、脱塩化水素化反応に供される。
【0203】
クロロヒドリンは、クロロエタノール、クロロプロパノール、クロロプロパンジオール、ジクロロプロパノール、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。クロロヒドリンは、多くの場合、ジクロロプロパノールである。
【0204】
エポキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシドール、エピクロロヒドリン、またはそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択され得る。エポキシドは、多くの場合、エピクロロヒドリンである。
【0205】
塩基性物質は、アルカリまたはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、及びホウ酸塩、ならびにそれらの混合物から選択され得る。アルカリ及びアルカリ土類金属酸化物及び水酸化物が好ましい。
【0206】
1つの特定の実施形態において、クロロヒドリンはジクロロプロパノールであり、塩基性物質はアルカリ及び/またはアルカリ土類金属水酸化物であり、エポキシドはエピクロロヒドリンである。
【0207】
本発明に従うエポキシドを製造するための方法において、脱塩化水素化反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の国際公開第2005/054167号に、より具体的には第19頁第12行〜第22頁第30行の章句に記載されるように行われ得る。
【0208】
本発明に従うエポキシドを製造するための方法において、脱塩化水素化反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の国際公開第2006/100311号に、より具体的には第2頁第22〜25行及び第22頁第28行〜第23頁第35行の章句に記載されるように行われ得る。
【0209】
本発明に従うエポキシドを製造するための方法において、脱塩化水素化反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の国際公開第2008/101866号に、より具体的には第2頁第1行〜第13頁第16行の章句に記載されるように行われ得る。
【0210】
本発明に従うエポキシドを製造するための方法において、脱塩化水素化反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の国際公開第2008/152045号に、より具体的には第9頁第22行〜第13頁第31行の章句に記載されるように行われ得る。
【0211】
本発明に従うエポキシドを製造するための方法において、脱塩化水素化反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の国際公開第2008/152043号に、より具体的には第7頁第35行〜第8頁第25行の章句に記載されるように行われ得る。
【0212】
本発明に従うエポキシドを製造するための方法は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の国際公開第2006/106155号に、より具体的には第2頁第26〜31行及び第22頁第10行〜第23頁第19行の章句に記載されるように、ジクロロプロパノールを調製するための包括的方法に組み込まれ得る。
【0213】
本発明に従うエポキシドを製造するための方法において、脱塩化水素化反応は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の国際公開第2006/100318号に、より具体的には第2頁第23行〜第3頁第26行及び第24頁第17行〜第31頁第18行の章句に記載されるように行われ得る。
【0214】
本発明に従うエポキシドを製造するための方法はまた、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の国際公開第2009/095429号に、より具体的には第1頁第24行〜第27頁第26行の章句に記載されるような排水(water effluent)を処理する工程も包含し得る。
【0215】
本発明はまた、エポキシ樹脂、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミド、グリシジルイミド、グリシジルアミン;凝析剤、湿潤紙力増強用樹脂、カチオン化剤、難燃剤、洗剤の原料として使用され得る製品;エピクロロヒドリンエラストマー、ハロゲン化ポリエーテル−ポリオール、モノクロロプロパンジオール、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択されるエポキシ誘導体を製造するための方法に関し、この方法は、エポキシドを製造するための方法を包含し、エポキシドは、エピクロロヒドリンであり、エピクロロヒドリンは、モノアルコール、モノカルボン酸、ポリオール、ポリアミン、アミノアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリカルボン酸、アンモニア、アミン、ポリアミノアミド、ポリイミン、アミン塩、リン酸、リン酸塩、オキシ塩化リン、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸のエステル、ホスホン酸の塩、ホスフィン酸、ホスフィン酸のエステル、ホスフィン酸の塩、ホスフィンオキシド、ホスフィン、エトキシ化アルコール、アルキレンもしくはフェニレンオキシド、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択される少なくとも1種の化合物との反応に供されるか、あるいは本発明に従うエピクロロヒドリンは、ホモ重合反応に供されるか、あるいはエピクロロヒドリンは、水との、あるいは任意選択によりハロゲン化され得るかつ/または後に続く段階でのハロゲン化が可能なエーテルオキシド結合及び/もしくは二重結合を有し得るジヒドロキシル化もしくはポリヒドロキシル化化合物との、オリゴマー化、コオリゴマー化、縮合、脱塩化水素化、及び加水分解の反応に供されるか、あるいはエピクロロヒドリンは、水との反応に供される。
【0216】
本発明に従うエポキシ誘導体を製造するための方法は、参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の出願である国際公開第2008/152045号に、より具体的には第32頁第6行〜第63頁第4行の章句、及び参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の出願である国際公開第2008/152044号に、より具体的には第13頁第22行〜第44頁第8行の章句、及び参照によりその内容が本明細書に援用されるソルヴェイ(ソシエテ アノニム)社名義の出願である国際出願PCT/EP2009/053766号明細書に、より具体的には第27頁第10行〜第33頁第7行の章句に記載されるように実施され得る。
【0217】
次に、本発明に従う精製方法及び装置を、図1を参照して説明する。この図は、本発明の態様の一実施例を、概略的に示している。塩化水素ガスは、イソシアネート製造ユニットから生じ、250ppmの量のモノクロロベンゼンから本質的になる不純物で汚染されている。
【0218】
第1の実施形態によれば、スクラビング剤は、塩化水素を用いるグリセロールの塩化水素化によりジクロロプロパノールを製造するためのプラントから生ずるジクロロプロパノールから本質的になる。精製された塩化水素は、グリセロール塩化水素化ユニットに運ばれる。
【0219】
精製されることになる塩化水素を含有する第1ガス流は、ライン(4)によりスクラビング塔(1)の部分(2)に導入される。新しいジクロロプロパノール(グリセロール塩化水素化ユニットへの精製された塩化水素を通してのジクロロプロパノールの蒸気圧による飛沫同伴、及びパージシステム(下記参照)を通してのジクロロプロパノールの除去を考慮すると、供給を増加させるために必要である)から本質的になる第1液体流が、ライン(5)によりスクラビング塔(1)の部分(3)に導入される。スクラビング塔(1)の部分(2)には、好ましくは、ベルルサドルが充填される。スクラビング塔(1)の部分(3)には、好ましくは、泡鐘トレイが充填される。ジクロロプロパノールを含む第2液体流には、精製されることになる塩化水素から抜き出された不純物が溶解され、この塩化水素の一部はライン(6)より塔(1)の底部から取り出され、ポンプ(7)及びライン(8)により部分(2)の上部に向かってループ内を再循環される。この第2液体流の一部は第3液体流を構成し、ライン(9)より引き出され、ストリッピング塔(10)に供給される。第3液体流に溶解した塩化水素の大部分を含む第2ガス流がストリッピング塔(10)から引き出され、ライン(12)によりスクラビング塔(1)の部分(2)に戻される。塩化水素からの不純物が濃縮されたジクロロプロパノールを含む第4液体流が、塔(10)から引き出され、ライン(11)により蒸留塔(16)に送られる。沸点がジクロロプロパノールの沸点よりも低い塩化水素からの不純物が濃縮された第5液体流が、ライン(14)より塔(16)から引き出される。この第5流は、貯蔵ユニットまたは高温酸化ユニットに送られ得る。ジクロロプロパノールが濃縮された第6液体流が、塔(16)から引き出され、ライン(17)によりスクラビング塔(1)の部分(2)に送られる。沸点がジクロロプロパノールの沸点よりも高い塩化水素からの不純物が濃縮された第7液体流が、ライン(15)より塔(16)から引き出される。この第7流は、貯蔵ユニットまたは高温酸化ユニットに送られ得る。
【0220】
精製された塩化水素ガスを含む第3ガス流は、ライン(13)により塔(1)から出てグリセロール塩化水素化ユニットに運ばれる。
【0221】
この装置により、HClのモノクロロベンゼン含有量は、250ppmから、ライン(13)より塔(1)から出る第3ガス流においては10ppm未満にまで減らされ得る。したがって、この操作は、塩化水素からモノクロロベンゼンを効果的に取り除くことを可能にする。このようにして、グリセロール塩化水素化工程に支障なく使用され得る製品が得られる。
【0222】
第2の実施形態によれば、スクラビング剤は、塩化水素を用いるグリセロールの塩化水素化によってジクロロプロパノールを製造するためのプラントから生ずるパージ流から本質的になる。精製された塩化水素は、グリセロール塩化水素化ユニットに運ばれる。
【0223】
第2の実施形態の第1の変形例においては、各ライン及び塔においてジクロロプロパノールの代わりにパージ流を使用すること以外は、第1の実施形態の手順に従う。
【0224】
第2の実施形態の第2の変形例においては、ライン(17)が存在しないこと以外は、第1の変形例の手順に従う。
【0225】
第2の実施形態の第3の変形例においては、蒸留塔(16)及びライン(14)、(15)及び(17)が存在しないこと、及びライン(11)より引き出される流れを高温酸化ユニットに供給すること以外は、第1の変形例の手順に従う。
【0226】
第2の実施形態の第4の変形例において、ストリッピング塔(10)及びライン(11)及び(12)が存在しないこと、ライン(9)より引き出される流れを高温酸化ユニットに供給すること以外は、第2の変形例の手順に従う。
【実施例】
【0227】
実施例1(本発明に従う)
塩化水素を、25℃及び1バールの圧力に維持されたガラスフラスコ中に含まれる液体1,3−ジクロロプロパン−2−オールに、フリットガラスで作られたガス分散管を通じて一定流量で導入した。この塩化水素は、クロロベンゼンを最初は1000重量ppmの濃度で含んでいた。塩化水素の流量を、1.6gのガスが1gの1,3−ジクロロプロパン−2−オールにより2時間で処理されるように設定した。滞留時間は約5秒であった。その処理の結果産出された塩化水素を、処理の間に数回、及び処理の終わりにサンプリングし、分析した。そのガスのクロロベンゼン含有量は、常に、300重量ppmより低かった。
【0228】
実施例2(本発明に従う)
塩化水素の流量を、2.6gのガスが1gの1,3−ジクロロプロパン−2−オールにより2時間で処理されるように設定した以外は、実施例1の条件を用いた。滞留時間は約2.5秒であった。その処理の結果産出された塩化水素を、処理の間に数回、及び処理の終わりにサンプリングし、分析した。そのガスのクロロベンゼン含有量は、常に、300重量ppmより低かった。
【0229】
実施例3(本発明に従う)
塩化水素の流量を、6.5gのガスが1gの1,3−ジクロロプロパン−2−オールにより4時間で処理されるように設定したこと以外は、実施例1の条件を用いた。滞留時間は約2.5秒であった。その処理の結果産出された塩化水素を、処理の間に数回、及び処理の終わりにサンプリングし、分析した。そのガスのクロロベンゼン含有量は、常に、500重量ppmより低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化水素を精製するための方法であって、前記塩化水素を少なくとも1種のクロロヒドリンを含有するスクラビング剤と接触させる少なくとも1つの工程を含む方法。
【請求項2】
前記塩化水素の少なくとも一部が気体状態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩化水素が芳香族有機化合物を含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩化水素が有機イソシアネートの製造における副生成物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記塩化水素が、ホスゲンを有機アミンと反応させることによる有機イソシアネートの製造における副生成物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記芳香族有機化合物が塩素化芳香族化合物である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記クロロヒドリンが、モノクロロプロパンジオール、ジクロロプロパノール、及びそれらの混合物から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記スクラビング剤が、水、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、エポキシド、金属、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択される、少なくとも1種の化合物をさらに含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記スクラビング剤が液体状態のジクロロプロパノールから実質的になる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記スクラビング剤と接触させる工程が、10℃と120℃の間の温度にて、1絶対バールと20絶対バールの間の圧力で実施される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記スクラビング剤の流量が、精製されることになる塩化水素の流量に対して0.5重量%と50重量%の間である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記塩化水素が、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化の反応で使用されることが意図される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法が、精製された塩化水素を得るために実施され、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、またはそれら2つの混合物を、前記精製された塩化水素を含有する塩素化剤と、クロロヒドリンを得るために反応させる、クロロヒドリンを製造するための方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法が、クロロヒドリンを得るために実施され、前記クロロヒドリンが、脱塩化水素化反応に供される、エポキシドを製造するための方法。
【請求項15】
エポキシ樹脂、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミド、グリシジルイミド、グリシジルアミン;凝析剤、湿潤紙力増強用樹脂、カチオン化剤、難燃剤、洗剤の原料として使用され得る製品;エピクロロヒドリンエラストマー、ハロゲン化ポリエーテル−ポリオール、モノクロロプロパンジオール、及びそれらのうちの少なくとも2種の任意の混合物からなる群から選択されるエポキシ誘導体を製造するための方法であって、前記方法は、請求項14に記載される方法を包含し、前記エポキシドは、エピクロロヒドリンであり、前記エピクロロヒドリンは、モノアルコール、モノカルボン酸、ポリオール、ポリアミン、アミノアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリカルボン酸、アンモニア、アミン、ポリアミノアミド、ポリイミン、アミン塩、リン酸、リン酸塩、オキシ塩化リン、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸のエステル、ホスホン酸の塩、ホスフィン酸、ホスフィン酸のエステル、ホスフィン酸の塩、ホスフィンオキシド、ホスフィン、エトキシル化アルコール、アルキレンもしくはフェニレンオキシド、及びそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択される少なくとも1種の化合物との反応に供されるか、あるいは本発明に従うエピクロロヒドリンは、ホモ重合反応に供されるか、あるいはエピクロロヒドリンは、水との、あるいは任意選択によりハロゲン化され得るかつ/または後に続く段階でのハロゲン化が可能なエーテルオキシド結合及び/もしくは二重結合を有し得るジヒドロキシル化もしくはポリヒドロキシル化化合物との、オリゴマー化、コオリゴマー化、縮合、脱塩化水素化、及び加水分解の反応に供されるか、あるいはエピクロロヒドリンは、水との反応に供される、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−501952(P2012−501952A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526495(P2011−526495)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061812
【国際公開番号】WO2010/029153
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】