説明

塩化第一スズ組成物

本発明は、c)微粒子の塩化第一スズ源d)二酸化ケイ素(水酸化ケイ素又はシリカとも呼ばれる)を含む微粒子固体組成物に関する。本発明は更に、シリカと混合することによる、微粒子の塩化第一スズの流動性を改善する方法に関する。本発明の組成物は、欧州薬局方に詳述されている粉末特徴付け方法を用いて評価したとき、固化防止剤の不在と比べて、塩化第一スズに改善された流動性を付与することが見出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スズ(II)塩及び固化防止剤を含む微粒子口腔用組成物に関する。組成物は、口腔用組成物の調製における使用に有用である。
【背景技術】
【0002】
塩化第一スズ及び/又はその他の第一スズ塩により口腔用組成物に供給されるスズ(II)(第一スズ)イオンは、これによって得られる複数の利点(抗菌効果、息の悪臭の制御、歯垢増加及び代謝の制御、歯肉炎の減少、歯周病の進行の抑制、象牙質過敏症の抑制、並びに歯冠及び歯根の虫歯及び齲食の減少を含む)のため、重要なものとして活用されている。
【0003】
原材料としての塩化第一スズの使用は問題を提起することがある。二水和物型及び無水物型の両方の塩化第一スズ(II)は吸湿性物質であるため、吸収及び吸着の両方を通して空気から水蒸気を引きつける。これにより粉末化化合物が粘着質になる。粒子は共に結合する恐れがあり、輸送及び保存中に粒塊が形成される恐れがあり、したがって加工中の流動性が問題である。
【0004】
上記取扱上の問題により、第一スズ(II)イオン塩の輸送、保存、及び取扱い分野で問題になっている。貯蔵容器から第一スズイオン塩を流下させることは困難であることが証明されている。理想的な流動設計は、質量流を促進するのに十分な程度、壁角度が傾斜している単純な貯蔵容器である。しかし、塩化第一スズは非常に急速に固化するため単純な質量流設計は機能しない。Peschl剪断力試験機及び容器の設計計算は、容器の壁角度がほぼ垂直である必要があり大きな出口寸法を有することを示している。
【0005】
固化防止剤の使用は、流動性を改善し、圧縮を低減し、それにより加工中の流動制限を減少させることができる。固化防止剤は、過剰な水分を吸着することにより、又は粒子を被覆して水吸着の傾向を抑えることにより機能する。例えば、硝酸カリウム等の他の化合物も、塩化第一スズと類似の問題を抱えていることが知られている。国際特許公開第2007/136381号は、リン酸水素二カリウム及びリン酸二水素カリウムを硝酸カリウムに添加することにより易流動性状態が維持されることを開示している。
【0006】
第一スズを含有している研磨剤入り練り歯磨き製品は、適合性の問題も提示している。シリカ研磨剤は練り歯磨きで広く用いられているが、シリカ粒子上の表面ヒドロキシル基は、例えばpH及び水等の他の因子と組み合わせられて第一スズイオンを不活化する恐れがある。シリカと第一スズイオンとの組み合わせは、練り歯磨きの貯蔵寿命にわたって第一スズの生物学的利用能を損なわせることを示している。本発明は、塩化第一スズと固化防止剤としてのシリカとを含む組成物を開示している。簡単に述べると、流動性を改善するための固化防止剤として歯磨剤等級のシリカを使用することは、製造のしやすさと、世界的に十分認められている安全性及び規制プロファイルの両方の面で有益である。塩化第一スズ二水和物は、二酸化シリカと混合されたとき自由流動状態で維持され得ることが見出されているが、これは用いられるシリカが少量であり、第一スズイオンのシリカへの移動を阻害する水の活性が低いので、塩化第一スズの活性喪失が最小限に抑えられるためである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
a)微粒子の塩化第一スズ源、
b)二酸化ケイ素(水酸化ケイ素又はシリカとも呼ばれる)を含む微粒子固体組成物、
及び練り歯磨き等の口腔用組成物の製造における前記微粒子組成物の使用に関する。
【0008】
本発明は更に、シリカを微粒子の塩化第一スズと混合することにより、微粒子の塩化第一スズの流動性を改善する方法に関する。本発明の組成物は、欧州薬局方に詳述されている粉末特徴付け方法を用いて評価したとき、固化防止剤の不在と比べて、塩化第一スズに改善された流動性を付与することが見出されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特に指示がない限り、本明細書の全ての百分率及び比率は合計微粒子組成物の重量により、全ての測定は25℃で行われる。
【0010】
本発明は、練り歯磨き又はジェル等の口腔用組成物の調製で使用する中間体を形成するための塩化第一スズ原材料及びそのシリカとの混合物に関する。本発明の必須成分は、塩化第一スズ及びシリカである。
【0011】
塩化第一スズ
他の第一スズ塩に比べて口腔ケア効果を提供する塩として塩化第一スズ(II)を使用するという選択は、材料のコスト、その純度、及び第一スズ負荷を各国の規制内に調節する能力によって駆り立てられる塩化第一スズは、二水和物型及び無水物型の両方で入手可能である。無水物等級は、粉末、フレーク、及びペレット等の種々の形態で供給することができる。塩化第一スズ二水和物は、種々の供給元から入手可能である。物理的特性としては、僅かに特徴的な臭気、乏しい流動特性、及び比較的短い貯蔵寿命を有する無色結晶質物質が挙げられる。しかし、二水和物型又は無水物型のいずれかの塩化第一スズを使用する問題点は、輸送及び取扱いにおける製造上の制約である。二水和物及び様々な無水物型の両方は、多かれ少なかれ吸湿性であり、このため加工中の流動が困難になり、物質の貯蔵寿命にわたって活性が低下する。塩化第一スズはまた、幾つかの金属に対する攻撃的還元剤である。物質は固化し、貯蔵容器のデッドスポットに留まるため、この特性は、好ましくない化合物の形成をまねく場合がある。
【0012】
塩化第一スズ(II)は、シリカと混合されたとき自由流動状態で維持され得ることが見出されているが、これは用いられるシリカが少量であり、第一スズイオンのシリカへの移動を阻害する水の活性が低いので、塩化第一スズの活性喪失が最小限に抑えられるためである。研究は、シリカを、混合シリカの0.5重量%超の塩化第一スズ二水和物と混合したとき分離が全く生じないことを示した。得られる混合物は、微粒子固体組成物である。好ましくは、シリカは、混合シリカの0.5〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲内の塩化第一スズ二水和物と混合される。シリカの塩化第一スズに対する比は、0.5:99.5〜10.0:90.0、好ましくは1.0:99.0〜5.0:95.0、より好ましくは2.0:98.0〜3.0:97.0の範囲内である。本発明の微粒子固体組成物は一般的に、少なくとも90%の塩化第一スズ(II)、好ましくは少なくとも95%の塩化第一スズ(II)を含む。
【0013】
シリカは、適切な粉末混合、即ち混転混合を介して塩化第一スズ二水和物又は無水物のいずれかと低濃度でブレンドされる。均一なブレンドは、市販の単独形塩化第一スズ材料と比べて、材料の貯蔵寿命にわたって塩化第一スズの取扱い及び輸送を改善する、安定な自由流動材料を提供する。更に、シリカの塩化第一スズに対する比率を低く保つと、シリカに対して第一スズの濃度が高いため及び水利用性が低いため、練り歯磨きにおけるシリカ及び第一スズで見られる通常非活化を引き起こさない。
【0014】
シリカ
優れた歯牙清掃及び過度に歯のエナメル質又は象牙質を研磨することのない研磨性能という独自の利点と、固化防止剤としての特性の両方により、シリカが本明細書で利用されている。本明細書におけるシリカ砥粒研磨物質は一般に、0.5〜30μm、及び好ましくは5〜15μmの範囲の平均粒度を有する。シリカの粒度を測定するための代表的な方法は、粒度の体積分布が得られるMalvern Mastersizer(登録商標)S粒度分析機を使用することであり、これはMalvern Instruments Ltd.,Worcestershire,WR14 1XZ,UKから市販されている。機器は、装置のマニュアルに規定されている、以下のMalvern標準手順及びガイドラインに従って操作すべきである。他の同等機器を用いてもよい。研磨剤は、米国特許第3,538,230号及び同第3,862,307号に記載されている沈殿シリカ又はシリカキセロゲルのようなシリカゲルであり得る。例としては、W.R.Grace & Company,Davison Chemical Divisionにより商品名「Syloid」として販売されているシリカキセロゲル、及びJ.M.Huber Corporationにより商品名ゼオデント(登録商標)として販売されているような沈殿シリカ材料、特にゼオデント(登録商標)119、ゼオデント(登録商標)118、ゼオデント(登録商標)109及びゼオデント(登録商標)129という表示を有するシリカが挙げられる。本発明の組成物で有用なシリカ歯科用研磨剤の種類は、米国特許第4,340,583号、同第5,603,920号、同第5,589,160号、同第5,658,553号、同第5,651,958号、及び同第6,740,311号に更に詳細に記述されている。本発明に最も好ましいのは、平均粒径6〜15μmのゼオデント(登録商標)119である。
【0015】
本発明の組成物は、以下に詳述する他の成分と混合され、口腔用組成物を形成することができる。好ましい口腔用組成物は、フッ化物イオン源、更なる歯科用研磨剤、香料、湿潤剤、1種以上のキレート剤、及びこれらの混合物から選択される1種以上の口腔ケア剤を含む。
【0016】
フッ化物イオン
歯磨剤及び他の口腔用組成物には、齲食予防効果を提供するのに十分なフッ化物イオン濃度を得るのに十分な量で存在する水溶性フッ化物化合物を有するのが一般的である。本明細書の口腔用組成物は、口腔用組成物の0.01重量%〜0.35重量%(100〜3500ppm)、好ましくは0.03重量%〜0.2重量%(300〜2000ppm)のフッ化物イオンを供給するのに十分なフッ化物イオン源を含むことが好ましい。多種多様なフッ化物イオン生成物質が、本組成物中の可溶性フッ化物源として使用され得る。代表的なフッ化物イオン源としては、フッ化スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化インジウム及び他の多くのものが挙げられる。好ましいフッ化物イオン源は、フッ化第一スズ及びフッ化ナトリウム、並びにこれらの混合物である。
【0017】
研磨剤
歯科用研磨剤は、表面の汚れ及び菌膜を除去する能力と歯の研磨のために、練り歯磨又は歯磨用ジェルなどの口腔用組成物に有用である。シリカに加えて、更なる歯科用研磨剤が口腔用組成物に含まれてもよい。口腔用組成物で有用な歯科用研磨剤には、多くの異なる物質が含まれている。好適な研磨剤としては、例えば、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、水和アルミナ、並びに尿素とホルムアルデヒドとの微粒子縮合生成物のような樹脂性研磨剤物質が挙げられる。微粒子熱硬化性重合樹脂、例えばメラミン、フェノール樹脂、尿素、メラミン−尿素、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−尿素−ホルムアルデヒド、架橋エポキシド、及び架橋ポリエステルもまた好適である。研磨剤の混合物を使用することが可能である。
【0018】
キレート剤
本発明の口腔用組成物は、1000未満の分子量(MW)を有する1つ以上のキレート剤(キレート化剤としても知られる)を含んでもよい。「キレート剤」という用語は、本明細書で使用するとき、二価金属イオンに結合することができる少なくとも2つの基を有する二座又は多座リガンドを意味する。
【0019】

使用される用語「口腔用に許容できる担体」は、口腔用組成物の活性成分を含み、口腔に送達するための液体又は半固体のビヒクル(例えばペースト又はジェル)を意味する。水は口腔用組成物におけるキャリア物質として一般的に使用される。それは加工助剤として有用であり、口に対して害が無く、及び練り歯磨きの迅速な発泡を助ける。水はそれ自体で成分として加えられてもよく、又はソルビトール及びラウリル硫酸ナトリウムのような他の一般的な原料中の担体として存在してもよい。担体は更に、例えば減感剤、歯ホワイトニング剤(過酸化物源など)、ハーブ剤、緩衝剤、汚れ防止剤、増粘剤、保湿剤、界面活性剤、香味剤、甘味剤、及び着色剤などの、他の従来の添加物を口腔ケア組成物に含んでもよい。
【0020】
口腔用組成物のpHは、好ましくは4.5〜7、より好ましくは5〜6.5である。歯磨組成物のpHは、3:1の歯磨剤の水性スラリー、即ち3部の水対1部の歯磨剤で測定される。
【0021】
他の成分
口腔用組成物は、下記により詳しく述べるように、通常及び従来の補助的構成成分を更に含み得る。
【0022】
保湿剤は本明細書の組成物の任意であるが好ましい構成成分である。保湿剤は、歯磨剤が空気に曝されて硬化しないようにしたり、口に潤い感を与えたり、特定の保湿剤については香味料の所望の甘さを付与する役目をする。保湿剤は、純粋な保湿剤を基準として、一般に口腔用組成物の5重量%〜70重量%、好ましくは15重量%〜45重量%含まれる。好適な保湿剤には、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールのような食用多価アルコール、特にソルビトール及びグリセリンが挙げられる。
【0023】
本発明の組成物はまた、一般に界面活性剤を含む。有用な界面活性剤の種類としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性、及びベタイン界面活性剤類が挙げられる。アニオン性界面活性剤は、洗浄性及び発泡性を提供するために含むことができ、典型的には口腔用組成物の0.1重量%〜2.5重量%、好ましくは0.3重量%〜2.5重量%、最も好ましくは0.5重量%〜2.0重量%の量で使用される。カチオン性界面活性剤も使用されてよいが、他の成分とのそれらの相容性について注意をする必要がある。カチオン性界面活性剤は、典型的に、追加のアニオン性界面活性剤と同様のレベルで使用され、ベタイン界面活性剤も同じように使用される。
【0024】
練り歯磨き又はジェルの調製においてはしばしば、組成に望ましい稠度をもたらすため、使用時の所望の活性放出特性を付与するため、貯蔵安定性を高めるため、組成物の安定性をもたらすためなどの目的で、増粘剤又は結合剤を添加する必要がある。増粘剤には、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、非イオン性セルロース誘導体(例えばヒドロキシエチルセルロース(HEC))、及びセルロース誘導体の水溶性塩(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC))が含まれ得る。ガムカラヤ、キサンタンガム、アラビアゴム及びトラガカントガム等の天然のゴムも本明細書で使用されてよい。好適な増粘剤の濃度は、口腔用組成物の0.1〜5重量%の範囲であってもよく、必要に応じて更に高くてもよい。
【0025】
口腔用組成物の他の任意成分は、過敏症を制御するための象牙質減感剤、特にカリウム及びストロンチウムの塩(硝酸カリウムなど)である。
【0026】
有機抗菌剤もまた使用することができる。こうした剤の中に含まれるのは、非水溶性非カチオン性抗菌剤、例えばハロゲン化ジフェニルエーテル、特にトリクロサン、及びチモールのような精油である。水溶性抗菌剤には、塩化セチルピリジニウムのような第四級アンモニウム塩が挙げられる。酵素は、本発明の組成物に使用されてもよい別の種類の活性物質である。無機抗菌剤を使用してもよい。かかる源の1つは亜鉛イオンである。好ましい亜鉛源は、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、及びグリシン酸亜鉛である。更なる第一スズイオン源を導入してもよい。適切な第一スズイオン源としては、フッ化第一スズ、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズが挙げられる。
【0027】
着香剤及び甘味剤も好ましくは口腔用組成物に含まれる。好適な着香剤及び甘味剤は、当該技術分野において周知である。本明細書における口腔用組成物中の好適な着香剤濃度は、口腔用組成物の0.1重量%〜5.0重量%、より好ましくは0.5重量%〜1.5重量%である。広範囲の人々に受け入れられるバランスのとれた香りを提供するため、通常、着香油は、別々の工程で製造され、天然及び/又は合成由来の複数の構成成分を含む。着香剤構成成分は、ミント、香辛料、果物、柑橘類、薬草、薬用及び一般的な食品用着香剤の種類(例えば、チョコレート)から選択されることができる。生理学的冷却剤もまた着香油に組み入れることができる。冷却剤は、多種多様な物質のいずれかであることができる。このような物質に含まれるのは、カルボキサミド、メントール、アセタール、ケタール、ジオール、及びこれらの混合物である。
【0028】
使用できる甘味剤としては、スクロース、グルコース、サッカリン、スクラロース、ブドウ糖、果糖、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、マルトース、キシリトール、サッカリン塩類、タウマチン、アスパルテーム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン類、アセスルファム及びシクラメート塩類、特にシクラミン酸ナトリウム、スクラロース及びサッカリンナトリウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。口腔用組成物は好ましくは、0.1重量%〜3重量%、より好ましくは0.1重量%〜1重量%のこれら剤を含有する。
【0029】
組成物は、通常の顔料、染料、及び二酸化チタンのような不透明化剤を更に包含してもよい。組成物のために選択された成分は、互いに、化学的かつ物理的に適合性でなければならないことが理解されよう。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
以下の実施例は、シリカの存在下における可溶性第一スズの利用能の喪失を示す。溶液に基づく実験は、異なる濃度の2種の異なるシリカ;ゼオライト(登録商標)109及びゼオライト(登録商標)119と混合したときの相互作用及び遊離第一スズ利用能の割合を示す。36重量%のグリセリン(液体)及び0.6重量%のグルコン酸塩(固体)(第一スズイオンの酸化及び加水分解を防ぐため)を含有する溶液を作製し、種々の量のシリカ(0〜25重量%の範囲)に個別に添加した。したがって、シリカの量は1つの実験変数であった(以下の表参照)。合計重量を水で調節し、次いで最後にフッ化ナトリウム及び塩化第一スズ(それぞれ0.243及び0.654重量%)を添加した。混合物を24時間混合し、次いで遠心分離した水で1:3に希釈した後、誘導結合型プラズマを介して可溶性第一スズ(遊離非結合第一スズ)を分析した。
【表1】

【0031】
図1のグラフは、溶液中の第一スズとシリカの相互作用の影響が大きいことを示す。これらの結果は、第一スズとシリカとの組み合わせが第一スズの利用能の治療効果に影響を与え得るという確証をもたらす。
[図1]

【0032】
(実施例2)
本発明の固体微粒子組成物中の第一スズイオンの安定性を決定するために、原材料安定性アッセイを実施し、塩化第一スズ二水和物単独と、3%のシリカ・ゼオライト(登録商標)119と混合した塩化第一スズ二水和物とを比較した。可溶性第一スズの濃度は原子吸光を用いて測定した。25℃、相対湿度60%、及び40℃、相対湿度75%で、第一スズ−シリカブレンドと、シリカ無しの第一スズとを4週間にわたって比較したとき、第一スズの安定性に有意差は存在しなかった。これは、実施例1に記載した溶液アッセイにおいて、25℃、3%のシリカの存在下で遊離第一スズイオンが85%減少したのと同程度である。それ故本発明の固体微粒子組成物の比較安定性は予想外であった。
【表2】

【0033】
(実施例3)
最適な材料ブレンドを保証し、塊の形成を最小限に抑えるために、塩化第一スズとシリカとの混合は、原材料の製造プロセスの開始時に実施すべきである。これは均一なブレンドを保証する。具体的には、塩化第一スズ(二水和物又は無水物)が形成されるプロセス後、粒度6〜15μmの1%水酸化ケイ素Z119を、混転混合を介してブレンドし、均一な混合物を形成し、次いでそれを練り歯磨き製品に組み込むために供給する。練り歯磨きの製造で使用するために、ブレンドした材料を貯蔵容器に移し排出する、又は必要な量に従って直接使用する。
【0034】
混合したシリカの有り無しで塩化第一スズを研究期間中30℃、相対湿度60%の制御された環境に曝露し、材料の活性及び流動性の両方を評価した。
【表3】

欧州薬局方2.9.16−1に詳述されている説明書に従ってCopely流動性試験機モデルBEP
【0035】
塩化第一スズアッセイを決定するための分析方法論は、各サンプルにつき3回ずつ実験を行った平均に基づく。データは、第一スズ二水和物と、塩化第一スズ二水和物及びZ119水酸化ケイ素とのブレンドを参照して試験期間中の材料の安定性を示す。しかし、アッセイにおいて方法偏差が≦5%の相対標準偏差を構成する2つのサンプル間で差はないが、流動特性には有意差が存在する。参照第1塩化第一スズ二水和物は3日後流動せず、一方塩化第一スズ二水和物とZ119水酸化ケイ素とのブレンドは試験期間中良好な流動性を有する。更に、ブレンドした塩化第一スズ二水和物はまた、混合したシリカが0.5〜5重量%である範囲内で視覚的分離を示さない。
【0036】
(実施例4)
次の実施例は、練り歯磨き実施形態における本発明の使用について更に説明して実証するものである。これらの実施例は単に例示することが目的であり、これらの変更の多くは可能であるので、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0037】
練り歯磨き組成を、重量%による成分の量と共に以下に示す。これらの組成物は従来の方法を用いて作製する。
【表4】

【0038】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく制限されるものとして理解されるべきでない。それよりむしろ、特に指定されない限り、各こうした寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)微粒子の塩化第一スズ源、
b)及びシリカを含む微粒子固体組成物。
【請求項2】
前記塩化第一スズ源が、塩化第一スズ二水和物又は塩化第一スズ無水物のいずれかであり、好ましくは前記塩化第一スズ源が塩化第一スズ二水和物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
シリカが0.5〜30ミクロン、好ましくは5〜15ミクロンの粒径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
シリカが、混合シリカの0.5重量%超で塩化第一スズ二水和物と混合され、より好ましくは混合シリカの0.5〜5重量%の範囲内で塩化第一スズ二水和物と混合される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記シリカと塩化第一スズの比率が、0.5:99.5〜10.0〜90:0、好ましくは1.0:99.0〜5.0:95.0、より好ましくは2.0:98.0〜3.0:97.0の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、少なくとも90%の塩化第一スズ、好ましくは少なくとも95%の塩化第一スズを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
フッ化物イオン源、付加的歯科用研磨剤、着香剤、保湿剤、1種以上のキレート剤、及びこれらの混合物から選択される1種以上の口腔ケア剤を更に含む口腔用組成物の製造における、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微粒子組成物の使用。
【請求項8】
前記組成物が練り歯磨きである、請求項7に記載の口腔用組成物。
【請求項9】
シリカを混合することにより、微粒子の塩化第一スズの流動性を改善する方法。

【公表番号】特表2011−522049(P2011−522049A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512554(P2011−512554)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/045771
【国際公開番号】WO2009/151986
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】