説明

塩製基材及び塩製基材の製造方法

【課題】外観が損ねられず、しかも多数枚の塩製タイルを容易かつ確実に保持することができるようにした塩製基材及び塩製基材の製造方法を提供する。
【解決手段】塩製基材は、多数本のグラスファイバーから生地状に形成された裏地10上に、塩で形成された塩製タイル20,20,…が複数枚、目地間隙24を設けて並列され、裏地10と塩製タイル20との間及び目地間隙24内に熱硬化性樹脂30が介在し、塩製タイル20が熱硬化性樹脂30によって裏地10に固着されている。この塩製基材は、平坦上、樋状、又は筒状などに形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩で成形された塩製タイルを多数保持し、側壁、床、天井又はこれらのコーナ部などを形成する塩製基材及びこの塩製基材を製造するための塩製基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、美容や健康維持などを図るための塩製パネル及びこの塩製パネルを使用したサウナ風呂を発明し、この発明について特許出願している(特許文献1参照)。この塩製パネル(以下、「塩製タイル」という。)は、精製塩又は天然塩を融点以上沸点以下の温度で加熱溶融し、この加熱溶融物を成形型に流し込み、冷却固化させたもので、ほぼ六角形状その他の多角形状の薄肉板に形成されている。
【0003】
そして、サウナ風呂(以下、「ソルトルーム」という。)は、鉄筋コンクリートなどによって構成された側壁、床、天井の基礎構造体の内貼りとして多数枚の塩製タイルを貼り合わせ、塩内装側壁、塩内装床、塩内装天井を形成し、側壁と塩内装側壁との間、及び床と塩内装床との間に発熱手段を配置したものとされている。
【0004】
このソルトルーム内は、体温よりも僅かに高温(例えば41℃)、低湿度(例えば45%)と一般的なサウナ風呂や岩塩サウナ風呂よりも非常に低く設定されている。したがって、このソルトルームは、利用者への負担が小さく、利用者が不快に感じることなく、長時間滞在できる上に、前記温度及び湿度が塩の効能を最大限に発揮させることのできる最適条件とされ、新陳代謝や免疫力の活性化を非常に高めることができるため、美容分野や医療分野などの多岐に亘る分野で脚光を浴びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−92514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ソルトルームにおいて、塩製タイルは、コンクリート釘が表面から側壁、床、及び天井の基礎構造体に打ち込まれることによって、あるいは接着剤によって固定される。しかし、塩製タイルがコンクリート釘によって固定されると、コンクリート釘の頭部が塩製タイルの表面に露出するため、外観が損ねられるだけでなく、多数枚の塩製タイルをいちいちコンクリート釘によって打ち込むのは面倒であり、作業性が悪いものとなっている。
【0007】
また、塩製タイルの裏面に凹凸が形成されたり、塩の粉が付着したりしていると、接着剤が付きにくく、接着剤によっては塩製タイルを基礎構造体に確実に固定することができないことがある。そうすると、塩製タイルが壁や天井から落下し、ソルトルーム内の利用者に危険が及ぶ虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、外観が損ねられず、しかも多数枚の塩製タイルを容易かつ確実に保持することができるようにした塩製基材及び塩製基材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る塩製基材は、多数本のグラスファイバーから生地状に形成された裏地上に、塩で形成された塩製タイルが複数枚、目地間隙を設けて並列され、裏地と塩製タイルとの間及び目地間隙内に熱硬化性樹脂が介在し、塩製タイルが熱硬化性樹脂によって裏地に固着されていることを特徴としている。
【0010】
この塩製基材によれば、熱硬化性樹脂によって、外観を損ねることなく、塩製タイルを裏地に確実に固着することができる。すなわち、熱硬化性樹脂は、加熱される前において流動性を有しているため、多数本のグラスファイバーから必要な強度を有する生地状に形成された裏地内に滲み込んだ状態となるとともに、塩製タイルの裏面の形状に沿いつつ、塩製タイル間に設けられた目地間隙にも充填される。したがって、熱硬化性樹脂が加熱されることによって硬化したときに、塩製タイルが熱硬化性樹脂によって裏地に固着される。
【0011】
また、前記本発明に係る塩製基材において、前記裏地は、平坦状に形成されていてもよい。平坦状に形成された塩製基材は、ソルトルームの側壁、床、天井として使用することができる。
【0012】
また、前記本発明に係る塩製基材において、前記裏地は、樋状又は筒状に形成されていてもよい。樋状に形成された塩製基材は、ソルトルームの隣り合っている側壁と側壁との境界線に形成されるコーナー部や隣り合っている側壁と天井との境界線に形成されるコーナー部などに柱や廻り縁を設けたようにすることができる。また、筒状に形成された塩製基材は、ソルトルーム内又はソルトルーム外の床上に寝かした状態又は立てた状態に置くようにすることができる。
【0013】
なお、裏地は、グラスファイバーを織り込んだり編み込んだりして生地状に形成されるため、熱硬化性樹脂が硬化する前の状態において、可撓性を有しており、したがって、塩製基材は、樋状や筒状など任意の形状に成形することができる。
【0014】
また、本発明に係る塩製基材の製造方法は、多数本のグラスファイバーを生地状に形成した裏地上に流動性のある熱硬化性樹脂を塗布し、該熱硬化性樹脂上に塩で形成された複数枚の塩製タイルを目地間隙を設けて並列し、熱硬化性樹脂が裏地内に滲み込むとともに目地間隙内に充填された状態となって加熱することにより、熱硬化性樹脂を硬化させ、塩製タイルを裏地に固着することを特徴としている。
【0015】
この塩製基材の製造方法によれば、グラスファイバーを生地状に形成した裏地上に流動性のある熱硬化性樹脂を塗布することにより、熱硬化性樹脂が裏地内に滲み込み、しかも、裏地上に塗布された状態となり、この熱硬化性樹脂上に複数枚の塩製タイルを目地間隙を設けて並列し、熱硬化性樹脂を加熱することによって塩製タイルを裏地に固着することができるため、作業効率がよいだけでなく、塩製タイルが外観を損ねることなく、しかも、裏地から脱落しないようにすることができる。
【0016】
また、前記本発明に係る塩製基材の製造方法において、前記塩製タイルは、予め加熱された状態で熱硬化性樹脂上に並列されることが好ましい。この塩製基材の製造方法によれば、予め加熱された塩製タイルが裏地上に塗布された熱硬化性樹脂上に並列され、その後、熱硬化性樹脂が加熱されることにより、熱硬化性樹脂中に気泡が生じないようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数枚の塩製タイルが熱硬化性樹脂によってグラスファイバーを生地状に形成した裏地上に固着されることにより、塩製タイルが外観を損ねることなく、裏地に確実に固着され、しかも、容易に製造することができるため、生産性及び作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る塩製基材の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る塩製基材の製造方法の一実施形態を示し、(a)は最初の状態を示す要部断面側面図、(b)は途中の状態を示す要部断面側面図、(c)は最終の状態を示す要部断面側面図である。
【図3】本発明に係る塩製基材を使用するソルトルームの一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る塩製基材及び塩製基材の製造方法の一実施形態について図1ないし図3を参照しながら説明する。この塩製基材は、図1に示すように、多数本のグラスファイバーから生地状に形成された裏地10上に、複数枚の塩製タイル20,20,…が熱硬化性樹脂30によって固着されていることを特徴としている。
【0020】
裏地10は、グラスファイバー製の縦糸と横糸とを1本おきに上下織りした平織り、グラスファイバー製の縦糸か横糸の一方が何回か浮いて一回沈む朱子織り、グラスファイバー製の縦糸と横糸が交互に交錯せず、斜線がはっきり見える綾織、グラスファイバー製の縦糸を互いに絡み合わせながら、横糸を打ち込んだ絡み織り、その他の織物、あるいは編物などによって生地状に形成される。
【0021】
いずれにしても、裏地10は、多数本のグラスファイバーによって必要な強度と可撓性を有する半透明の生地状に形成される。なお、後記のように、樋状や筒状の塩製基材を形成する場合は、変形性に優れた朱子織りや柔軟性がある綾織などを選択することが好ましい。
【0022】
そして、塩製タイル20は、岩塩から所定の形状に削り出して成形され、あるいは、精製塩や天然塩などの塩を溶融固化して白色半透明の所定形状に成形される。なお、高温で溶融された塩は、含有されていた不純物が気化するため、塩を溶融固化した塩製タイル20は、残存する不純物が少ない、換言すれば、高純度の塩によって成形されたものとなっている。
【0023】
このような塩製タイル20は、平面視ほぼ六角形状をなす基本的な第1の塩製タイル21と、第1の塩製タイル21の対向する平行な二辺の中間点同士を結ぶ線上で切断した五角形状の第2の塩製タイル22と、第1の塩製タイル21の隣り合っている二辺の接合点同士を結ぶ線上で切断した台形状の第3のタイル23とが組み合わされる。
【0024】
また、第1の塩製タイル21にあっては、裏面20bに円形の凹曲面状の窪み部21aが形成され、この窪み部21aの中心が第1の塩製タイル21の裏面20bの中心と一致するようにされている(図2(b)(c)参照)。そして、第2、第3の塩製タイル22,23にあっては、裏面に楕円形又は半円形の凹曲面状の窪み部(図示せず)が形成される。楕円形の窪み部は、中心が第2、第3の塩製タイル22,23の裏面の中心と一致する位置に形成され、半円形の窪み部は、弦が第2、第3の塩製タイル22,23の裏面の長辺と一致するように形成されてもよい。
【0025】
さらに、いずれの塩製タイル20も表面20aが裏面20bよりも僅かに小さくされ、側面20cが僅かに傾斜した形状とされている(図2(b)(c)参照)。ただし、塩製タイル20は、側面20cに段差を設けたものとしてもよいし、単なる垂直な面としてもよい。
【0026】
そして、熱硬化性樹脂30は、常温において流動性を有し、加熱されることによって硬化するものであるが、無臭の脱アルコールタイプのシリコーン系樹脂を使用することが好ましい。
【0027】
ここで、塩製基材の製造方法について、図2を参照しながら説明する。まず、所定のサイズに形成され、又は切断された裏地10上に、図2(a)に示すように流動性のある熱硬化性樹脂30を塗布する。すると、裏地10がグラスファイバーによって生地状に形成されたものであることから、熱硬化性樹脂30は、裏地10内に滲み込んだ上で、裏地10上に塗布された状態となる。なお、熱硬化性樹脂30が滲み込み、塗布された状態の裏地10は、可撓性を有するものとなっている。
【0028】
次に、図2(b)に示すように、裏地10に塗布された熱硬化性樹脂30の上に、予め加熱された塩製タイル20を並列する。すなわち、裏地10の一方の平行な一対の側辺を除いた中心部には、六角形状の第1の塩製タイル21が並列され、裏地10の一方の平行な一対の側辺には、第2の塩製タイル22が並列され、裏地10の他方の平行な一対の側辺には、第3の塩製タイル23が第1の塩製タイル21を挟むように配置される(図1参照)。したがって、多数の塩製タイル20,20,…は、ハニカム構造となる。
【0029】
また、このように並列された各塩製タイル20,20,…間には、目地間隙24が設けられている。したがって、常温において流動性を有している熱硬化性樹脂30は、図2(c)に示すように、目地間隙24内に充填された状態となる。なお、熱硬化性樹脂30は、各塩製タイル20の裏面20bに形成された窪み部21a内にも入り込む状態となる。
【0030】
その後、裏地10を例えば熱板上に載せ、熱硬化性樹脂30を140〜150℃に加熱する。すると、熱硬化性樹脂30が硬化して、塩製タイル20を裏地10上に固着した塩製基材が完成する。この塩製基材は、塩製タイル20が予め加熱された状態で熱硬化性樹脂30上に置かれるため、熱硬化性樹脂30が硬化したときに、熱硬化性樹脂30中に多数の気泡が生じないものとされている。
【0031】
また、熱硬化性樹脂30が裏地10内に滲み込んでいることから、裏地10は硬質な板状に変質する。さらに、熱硬化性樹脂30が塩製タイル20間の目地間隙24においても硬化するため、塩製タイル20は、裏面20bから側面20cにおいても熱硬化性樹脂30に固着された状態となる。したがって、塩製基材は、塩製タイル20が外観を損ねることなく、裏地10から脱落しないものとされている。
【0032】
特に、塩製タイル20の裏面20bに窪み部21aが形成されている場合において、熱硬化性樹脂30が接着する面は、平坦な場合よりも広くなり、また、塩製タイル20の側面が傾斜した形状や段差を設けたものとされている場合において、目地間隙24内で硬化した熱硬化性樹脂30は、楔のようになって塩製タイル20を保持する状態となる。このように熱硬化性樹脂30によって固着された多数の塩タイル20,20,…は、ハニカム構造であることとも相俟って、横ずれや縦ずれが生じにくいものとなっている。
【0033】
このようにして製造された塩製基材は、平坦状に形成されることにより、図3に示すようなソルトルームRの側壁W、床F、天井Cの全て又はいずれかを構成するものとして使用される。
【0034】
また、熱硬化性樹脂30が加熱されないで流動性を有している状態において、裏地10が可撓性を有していることから、裏地10を樋状又は筒状に変形させて熱硬化性樹脂30を硬化させると、樋状又は筒状の塩製基材を形成することもできる。
【0035】
この樋状又は筒状に成形された塩製基材にあっては、各塩製タイル20,20,…が裏地10の膨らんだ外側の面に固着され、各塩製タイル20,20,…間の目地間隙24が塩製タイル20の裏面20b側よりも表面20a側で広がる状態となる。したがって、目地間隙24内に充填された状態の熱硬化性樹脂30は、硬化すると、塩製タイル20の側面20cを表面20a側から裏面20b側に楔のように押さえる状態となり、塩製タイル20が裏地10から脱落することがない。
【0036】
なお、樋状又は筒状に成形された塩製基材にあっては、塩製タイル20の側面20c側の裏面と裏地10との間が広がる状態となるため、目地間隙24内及び裏面20bと裏地10との間に熱硬化性樹脂30が充填された状態を維持することができるように、小さめの塩製タイル20が使用される。
【0037】
そして、樋状に成形された塩製基材は、ソルトルームRにおいて、図3に示すように、隣り合っている側壁Wと側壁Wとの境界線に形成されるコーナー部Aに柱のように設置され、あるいは、隣り合っている側壁Wと天井Cとの境界線に形成されるコーナー部Bに廻り縁のように設置され、あるいは、図示しないが隣り合っている側壁Wと床Fとの境界線に形成されるコーナー部に設置される。また、筒状に成形された塩製基材は、図示しないが、ソルトルームR内の床F上又はソルトルームR外の床上に寝かした状態又は立てた状態に設置される。
【0038】
そして、ソルトルームR内に入室した利用者は、塩の効能により、新陳代謝や免疫力が高められる。また、塩製基材が熱硬化性樹脂30によって塩製タイル20を裏地10に固着しているため、塩製基材からは臭気が発生せず、ソルトルームR内は快適な状態とされる。さらに、裏地10が多数本のグラスファイバーによって形成され、ほぼ透明であることから、塩製基材は塩製タイル20の白色半透明の色調が醸し出される。
【0039】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定することなく、種々変更することができる。例えば、この塩製基材は、ソルトルームRのコーナー部A,Bとして使用する以外に、置物として使用することができる。置物として使用される塩製基材は、波形や円錐形など任意の形状に形成することができる。
【0040】
また、置物として使用する塩製基材を製造する場合などにおいては、高品質である必要がないため、塩製タイル20を予め加熱しないで熱可塑性樹脂上に載せて、製造してもよい。さらに、塩製タイル20は、六角形状だけでなく、三角形状、四角形状、円形状など任意の形状のものを使用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…裏地
20…塩製タイル
24…目地間隙
30…熱硬化性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本のグラスファイバーから生地状に形成された裏地上に、塩で形成された塩製タイルが複数枚、目地間隙を設けて並列され、裏地と塩製タイルとの間及び目地間隙内に熱硬化性樹脂が介在し、塩製タイルが熱硬化性樹脂によって裏地に固着されていることを特徴とする塩製基材。
【請求項2】
前記裏地は、平坦状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塩製基材。
【請求項3】
前記裏地は、樋状又は筒状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塩製基材。
【請求項4】
多数本のグラスファイバーを生地状に形成した裏地上に流動性のある熱硬化性樹脂を塗布し、該熱硬化性樹脂上に塩で形成された複数枚の塩製タイルを目地間隙を設けて並列し、熱硬化性樹脂が裏地内に滲み込むとともに目地間隙内に充填された状態となって加熱することにより、熱硬化性樹脂を硬化させ、塩製タイルを裏地に固着することを特徴とする塩製基材の製造方法。
【請求項5】
前記塩製タイルは、予め加熱された状態で熱硬化性樹脂上に並列されることを特徴とする請求項4に記載の塩製基材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−229743(P2010−229743A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79729(P2009−79729)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(503314716)
【Fターム(参考)】