説明

填料改質剤、填料スラリー及び製紙方法

【課題】填料を直接に添加して調製されて成るパルプスラリーを用いて抄紙された紙と同様の紙力、サイズ度を維持したまま、前記のようにして抄紙された紙よりも優れた不透明度向上効果を示し、更には印刷後のインクの裏抜けを抑制させることができる填料に改質することのできる填料改質剤、填料スラリー、及び製紙方法を提供すること
【解決手段】特定のポリアミドポリアミン樹脂(A)、ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂(B)、ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)、及びポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂(D)から選択される少なくとも一種の樹脂を含み、パルプスラリーに添加される填料スラリーに填料と共に含まれる填料スラリー成分であることを特徴とする填料改質剤、この填料改質剤と填料とを含有する填料スラリー及びこの填料スラリーを配合して成るパルプスラリーを用いて抄紙する製紙方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、填料改質剤、填料スラリー及び製紙方法に関し、更に詳しくは、従来使用されている填料を、それをパルプスラリーに添加する以前に、あらかじめ填料改質剤と混合しておくことにより、紙力、サイズ度を維持したまま、優れた不透明度向上効果を示し、更には、印刷後のインクの裏抜けを抑制させることができる填料改質剤、この填料改質剤を含有する填料スラリー及びこの填料スラリーが混合されて成るパルプスラリーを使用する製紙方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の原木供給事情の悪化や環境保全の立場から、少ないパルプ量で、従来の品質を維持した紙が求められている。しかし、単にパルプ量を減らしただけでは、紙が薄くなって、不透明度が低下してしまう。特に新聞用紙、書籍用紙等に代表される印刷用紙においては、印刷後の不透明度、いわゆる印刷面と反対の面より印刷が透けて見える裏抜けが問題となり、さらには近年の紙の低坪量化、高品質化に伴い、不透明度、裏抜けに対する要求が高くなっている。
【0003】
不透明度を向上させる、あるいは裏抜けの抑制には、填料を多く添加する方法が一般的であるが、紙の強度が低下するため、填料の添加量には限界があった。このような背景のもと、填料に添加剤を予め加えた後に、パルプへ添加することで、填料のパルプへの定着改善や、強度低下を抑制する方法が検討されている。この添加剤として具体的には、ガラス転移温度が30℃以下の重合体を用いる方法、カチオン化澱粉やカチオン化グアーガムを用いる方法、アクリル系ラッテクスを用いる方法などが知られている。(特許文献1〜3参照)
しかしながら、これらの方法によって得られる効果、特に不透明度、裏抜けに関しては、満足されるレベルではなく、更なる向上が求められている。また、水溶性陽イオン性ポリマーを使用することも開示されている(特許文献4参照)が、不透明度、裏抜けに関しての記載はない。さらには、炭酸カルシウムの歩留りを改善する方法として、ハロ低級アルキルジ低級アルキルアミン塩及び/又はポリアミドエピクロロヒドリン樹脂などで炭酸カルシウムを処理する方法が記載されている(特許文献5参照)が、不透明度、裏抜けに関しては、満足されるレベルではないという問題がある。さらに、セルロース反応性サイズ剤とカチオン性分散剤を含む無機顔料についての記載があるが(特許文献6参照)、紙のサイズ度を改良することを目的とする内容である。なお、填料改質剤として、いわゆる脂肪酸アミド−エピクロロヒドリン樹脂が知られている(例えば、特許文献7参照)が、不透明度、裏抜けとしての効果、は不十分であった。
【0004】
【特許文献1】特開平8−41798号公報
【特許文献2】特開平10−60794号公報
【特許文献3】特開2004−100119号公報
【特許文献4】特表2000−504794号公報
【特許文献5】特許第2668529号公報
【特許文献6】特許第3032601号公報
【特許文献7】特開2003−166195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、従来から使用されている填料が直接に添加されることにより調製されたパルプスラリーで抄紙するのではなく、前記填料と填料改質剤とを混合することにより填料スラリーを予め調製しておき、そのようにして得られる填料スラリーを用いて調製されたパルプスラリーで抄紙すると、紙力、サイズ度を維持したまま、優れた不透明度向上効果を示し、更には印刷後のインクの裏抜けを抑制させることができる紙を製造し得ることを基礎にして完成された。この発明は、填料を直接に添加して調製されて成るパルプスラリーを用いて抄紙された紙と同様の紙力、サイズ度を維持したまま、前記のようにして抄紙された紙よりも優れた不透明度向上効果を示し、更には印刷後のインクの裏抜けを抑制させることができる填料に改質することのできる填料改質剤、これを含有する填料スラリー、及びこれらを使用する製紙方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、
(1) 下記(A)〜(D)の樹脂より選ばれる少なくとも一種である樹脂を含み、パルプスラリー調製用の填料スラリーに填料と共に含まれる填料スラリー成分であることを特徴とする填料改質剤、
(A)二塩基性カルボン酸化合物とポリアルキレンポリアミン化合物とを加熱縮合させたポリアミドポリアミン樹脂
(B)二塩基性カルボン酸化合物とポリアルキレンポリアミン化合物とを加熱縮合させたポリアミドポリアミン樹脂と、ポリアミドポリアミン樹脂中のアミノ基1モルに対して0.5モル以下のエピハロヒドリンとを反応させることにより得られるポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂
(C)二塩基性カルボン酸化合物とポリアルキレンポリアミン化合物と尿素化合物とを加熱縮合させたポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂
(D)二塩基性カルボン酸化合物とポリアルキレンポリアミン化合物と尿素化合物とを、加熱縮合させたポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂と、ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂中のアミノ基1モルに対して0.5モル以下のエピハロヒドリンとを反応させることにより得られるポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂
(2) pH3におけるカチオン化度が少なくとも1.5meq/g・solidsであり、かつ、pH10におけるカチオン化度が多くとも0.5meq/g・solidである前記(1)の填料改質剤、
(3)前記(1)又は(2)の填料改質剤を含有することを特徴とする填料スラリー、
(4)前記(3)の填料スラリーが混合されて成るパルプスラリーを用いて抄紙することを特徴とする製紙方法である。
【発明の効果】
【0007】
この発明によると、従来から使用されている填料とこの発明の填料改質剤とを混合して得られる填料スラリーを用いて調製されるパルプスラリーを用いて抄紙すると、得られた紙が優れた不透明度向上効果を示すと共に、更には印刷後のインクの裏抜けを抑制させることができるという優れた効果を有する填料改質剤、及び填料スラリーを提供することができ、これらを使用することで高い不透明度、印刷後不透明度を向上させることのできる製紙方法を提供することができる。この発明に係る填料改質剤は、パルプスラリーを調製する以前に、填料と混合することにより填料スラリーを調製することにより、前記技術的効果が奏されるのであって、填料、填料改質剤及びその他のパルプスラリー形成成分を混合することにより調製されるパルプスラリーでは前記技術的効果が達成されることができないという点において特異的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明に係る填料改質剤に用いられるポリアミドポリアミン樹脂(A)、ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂(B)、ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)及びポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂(D)を製造するにあたり、二塩基性カルボン酸化合物(a)、ポリアルキレンポリアミン化合物(b)、エピハロヒドリン(c)、及び尿素化合物(d)は、前記ポリアミドポリアミン樹脂(A)、ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂(B)、ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)及びポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂(D)の種類に拘わらずに共通の原料である。
【0009】
二塩基性カルボン酸化合物(a)としては、二塩基性カルボン酸及びその誘導体を挙げることができる。二塩基性カルボン酸は、分子中に2個のカルボン酸を有する。二塩基性カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカン二酸などが挙げられ、工業的には炭素数5〜10の二塩基性カルボン酸が好ましい。二塩基性カルボン酸の誘導体としては、例えば、それら二塩基性カルボン酸のモノ又はジエステル、或いは酸無水物を挙げることができる。又、二塩基性カルボン酸のモノ又はジエステルとしては、好ましくは炭素数1〜5、特に好ましくは炭素数1〜3の低級アルコールのエステル、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、及びプロピルアルコールのエステルを挙げることができる。前記酸無水物としては、遊離酸の分子内脱水縮合物のほか、低級カルボン酸、好ましくは炭素数1〜5の低級カルボン酸との縮合物などが挙げられる。二塩基性カルボン酸化合物で工業的に特に好ましいものとしては、アジピン酸、グルタル酸ジメチルエステル、アジピン酸ジメチルエステルが挙げられる。上記各種の二塩基性カルボン酸化合物はその一種を選択して使用し、又は選択された二種以上を併用することができる。また、二塩基性カルボン酸化合物と共に、クエン酸など、分子中に3個以上のカルボン酸及び/又はそのカルボン酸エステル、或いはその酸無水物を有する誘導体を使用することもできる。
【0010】
ポリアルキレンポリアミン化合物(b)としては2個以上のアミノ基を有していればよく、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミンなどを挙げることができ、工業的には、ジエチレントリアミンが好ましい。この発明においては、これら一種又は二種以上を使用することができる。また、ポリアルキレンポリアミン化合物と共に、エチレンジアミン、プロピレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミンの一種又は二種以上を使用することもできる。
【0011】
エピハロヒドリン(c)としては、エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリンなどが挙げられ、その中でもエピクロロヒドリンが好ましい。
【0012】
尿素化合物(d)としては、尿素、チオ尿素、グアニル尿素、フェニル尿素、メチル尿素、ジメチル尿素などを挙げることができる。この中でも尿素が特に工業的に好ましい。これら尿素化合物(d)と共に、アミノ基とアミド交換反応し得るN−無置換アミド基を1個以上有する化合物、例えば、アセトアミド、プロピオンアミドなどの脂肪族アミド化合物、或いはベンズアミド、フェニル酢酸アミドなどの芳香族アミド化合物なども使用することもできる。
【0013】
この発明におけるポリアミドポリアミン樹脂(A)は、前記二塩基性カルボン酸化合物(a)と前記ポリアルキレンポリアミン化合物(b)とを任意の順序または同時に反応させることにより得られる。
【0014】
上記ポリアミドポリアミン樹脂(A)を得る際のポリアルキレンポリアミン化合物(b)、及び二塩基性カルボン酸化合物(a)の反応比として、ポリアルキレンポリアミン化合物(b)と二塩基性カルボン酸化合物(a)とのモル比を0.8〜1.4:1、特に0.8〜1.2:1の範囲とすることで、有用な不透明度向上効果を示す填料改質剤が得られやすい。上記のモル比が0.8より小さい場合には不透明度向上効果が奏されるものの、十分な保存安定性が得られない場合がある。上記のモル比が1.4より大きい場合は、不透明度向上効果が奏されるもののモル比を大きくするに見合った効果を期待することができない場合がある。
【0015】
この発明におけるポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂(B)は、前記ポリアミドポリアミン樹脂(A)とエピハロヒドリン(c)とを反応させることにより得られる。
【0016】
ポリアミドポリアミン樹脂(A)に対するエピハロヒドリン(c)の反応比は、ポリアミドポリアミン樹脂(A)のアミノ基1モルに対して、0.5モル以下、好ましくは0.01〜0.5、更に好ましくは0.01〜0.35である。0.5モルより多いと、不透明度向上効果がある程度奏されるものの、填料のパルプへの歩留りが低下する。なお、ポリアミドポリアミン樹脂(A)におけるアミノ基は1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基のいずれであってもよい。
【0017】
この発明におけるポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)は、前記ポリアルキレンポリアミン化合物(b)と二塩基性カルボン酸化合物(a)と尿素化合物(d)とを任意の順序で又は同時に反応させることにより得ることができる。例えば、ポリアルキレンポリアミン化合物(b)と二塩基性カルボン酸化合物(a)とを反応させた後に尿素化合物(d)を反応させる方法、ポリアルキレンポリアミン化合物(b)と尿素化合物(d)とを反応させた後に二塩基性カルボン酸化合物(a)と反応させる方法、ポリアルキレンポリアミン化合物(b)と二塩基性カルボン酸化合物(a)と尿素化合物(d)を同時に反応させる方法のいずれでもよい。
【0018】
この発明におけるポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂(D)は、前記ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)とエピハロヒドリン(c)とを反応させることにより得られる。
【0019】
ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)を合成するに際し、ポリアルキレンポリアミン化合物(b)0.8〜1.4モルに対して二塩基性カルボン酸化合物(a)1.0モルとなる反応比、及びポリアルキレンポリアミン化合物(b)のアミノ基1モルに対して尿素化合物(d)0.05〜1.0モルとなる反応比が好ましい。この反応比で不透明度向上効果に優れた樹脂を得ることができる。
【0020】
ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)に対するエピハロヒドリン(c)の反応比は、ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)のアミノ基1モルに対して、0.5モル以下、好ましくは0.01〜0.5、更に好ましくは0.01〜0.35である。0.5モルより多いと、不透明度向上効果が奏されるものの、填料のパルプへの歩留りが低下することがある。なお、ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)のアミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基のいずれであってもよい。
【0021】
ポリアルキレンポリアミン化合物(b)のアミノ基と、二塩基性カルボン酸化合物(a)が有するカルボン酸基(−COOH)及び/その誘導基(例えばエステル基、酸無水物基等)とを反応させるときは、原料仕込み時に発生する反応熱を利用するか、外部より加熱して脱水及び/又は脱アルコール反応を行い、その反応温度は110℃〜250℃、特に120℃〜180℃に調整されることが好ましい。反応温度条件は出発原料の二塩基性カルボン酸化合物(a)がカルボン酸であるのか、その誘導体であるのかによって適宜変更する。この際、重合反応の触媒として、硫酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などのスルホン酸化合物を使用することもできる。その使用量は、ポリアルキレンポリアミン化合物(b)1モルに対して0.005〜0.1モル、特に0.01〜0.05モルが好ましい。
【0022】
例えば、ポリアミドポリアミン樹脂(A)が有するアミノ基と尿素化合物(d)とを反応させる場合、発生するアンモニアを系外に除去しながらアミド交換反応を行う。このときの反応温度は80〜180℃、特に90℃〜160℃とすることが、急激な粘度の上昇が伴いにくく、適度に反応が進行しやすくなるので好ましい。また、反応時間は反応温度に依存するものの、通常30分〜10時間である。
【0023】
この発明におけるポリアミドポリアミン樹脂(A)及びポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)中に存在するアミノ基の量は、下記の式によって試料1g中に含まれるアミンを中和するのに必要な塩酸量を測定することによって求めることができる。
アミノ基の量(ミリモル/g)=V×F×0.5/S
V:1/2規定の塩酸液の滴定量
F:1/2規定の塩酸液の力価
S:採取した試料の固形分量(g)
ポリアミドポリアミン樹脂(A)又はポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)とエピハロヒドリン(c)との反応は反応液の濃度が10〜80質量%、反応温度は反応濃度に依存するものの5〜90℃で行うことが好ましい。
【0024】
特に、ポリアミドポリアミン樹脂(A)又はポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)とエピハロヒドリン(c)との反応は、ポリアミドポリアミン樹脂(A)又はポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)にエピハロヒドリン(c)を付加させる工程(1次工程と称することがある)と、さらに架橋反応により粘度を増加させる工程(2次工程と称することがある)を経ることが好ましい。
【0025】
前記1次工程におけるポリアミドポリアミン樹脂(A)又はポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)とエピハロヒドリン(c)との反応は、ポリアミドポリアミン樹脂(A)又はポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)の濃度が30〜80質量%、特に40〜70質量%の水溶液で行われることが、前記水溶液の急激な粘度上昇を伴わずに適度に反応が進行しやすいので好ましい。この1次工程における反応温度は急激な粘度の上昇を伴わないように、またエピハロヒドリン(c)の付加の効率が低下しないようにすることが好ましく、反応温度が5〜50℃、特に10〜45℃、さらに好ましくは15〜35℃の範囲で反応を進めることが好ましい。また、反応時間は1〜10時間とすることが好ましい。
【0026】
前記2次工程として、前記1次工程で得られた反応液を希釈して、又は希釈することなく、反応温度を30〜90℃、特に50〜75℃に加熱し、反応を続けることが好ましい。通常、2次工程における前記反応温度が前記温度範囲を越えて高くなると反応混合物の粘度が急激に上昇して反応の制御が困難になることがあるので、2次工程においては、反応混合液における、前記第1次工程で生成したポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂(B)又はポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂(D)の濃度を10〜70%に、特に10〜50%に調整しておくのが好ましい。
【0027】
前記2次工程の反応は、架橋反応による生成物の固形分が15質量%の濃度となる水溶液の25℃における粘度が10〜100mPa・s、好ましくは15〜80mPa・sに達するまで前記架橋反応を続けることにより、保存安定性に優れたポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂(B)及びポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂(D)が得られやすいので、好ましい。
【0028】
前記2次工程において架橋反応が進行している反応生成液に水を加えて架橋反応を停止させ、その反応生成液を冷却すると同時に固形分を10〜50%に調節することが好ましい。固形分の濃度は、水の添加量により調整することができる。更に、塩酸、硫酸、硝酸、及びリン酸などの無機酸、特にハロゲンを含まない無機酸、及びギ酸、及び酢酸などの有機酸から選択される少なくとも一種の酸を架橋反応の停止した反応生成液に加えて、好ましくはpHを1〜6、特にpH2〜5に調整することにより、得られるポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂(B)及びポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂(D)の保存安定性を向上させることが好ましい。
【0029】
ポリアミドポリアミン樹脂(A)及びポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)とエピハロヒドリン(c)との反応物であるポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂(B)及びポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂(D)のカチオン化度は、pH3におけるカチオン化度が少なくとも1.5meq/g・solidsであることが好ましく、さらに少なくとも2.5meq/g・solidsあることが好ましい。pH3におけるカチオン化度が1.5meq/g・solidsより小さい場合、充分なカチオン性が得られないので、填料のパルプへの定着が低下する場合がある。さらに、pH10におけるカチオン化度が多くとも0.5meq/g・solidであることが好ましい。pH10におけるカチオン化度が0.5meq/g・solidよりも多い場合、填料の過度の凝集を引き起こし、これにより不透明度の向上効果が低くなることがある。
【0030】
カチオン化度は、コロイド滴定法(ポリビニル硫酸カリウム(PVSK)による滴定)により測定することができる。
【0031】
この発明に係る填料改質剤は、前記ポリアミドポリアミン樹脂(A)、ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂(B)、ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)及びポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂(D)から選択される少なくとも一種である特定の化合物そのものであってもよく、またこの発明の目的を阻害しない限り、前記特定の化合物と他の添加剤あるいは溶剤とを含有しても良い。
【0032】
前記他の添加剤としては分散剤、消泡剤、防腐剤などを挙げることができる。
【0033】
前記溶媒としては例えば水、及びイソプロピルアルコール等のアルコール等を挙げることができる。
【0034】
この発明に係る填料改質剤と填料との接触は、パルプスラリー内で行わずに、パルプスラリーを調製する以前に行う必要がある。この発明に係る填料改質剤と填料とその他のパルプスラリー形成成分とを混合してパルプスラリーを調製しても、十分な効果が得られないからである。この発明に係る填料改質剤と填料との接触は、填料スラリーの調製という形で行うことができる。
【0035】
前記填料スラリーの調製は、公知の任意の方法により行うことができ、湿潤あるいは乾燥のいずれかの雰囲気下において填料と填料改質剤とを混合することにより、行うことができる。混合に際しては、適宜の溶媒例えば水を使用するのが好ましい。
【0036】
前記、填料としては一般的に使用されているものであれば良く、特に制限はないが例えば、粉砕した天然の石灰石、沈降性炭酸カルシウム(PCC)、クレー、焼成クレー、カオリン、タルク、シリカ、沈降性シリカ、アルミノ珪酸塩、二酸化チタン、ホワイトカーボンなどが挙げられ、特に好ましくは、沈降性炭酸カルシウム(PCC)、タルク、ホワイトカーボンを挙げることができる。
【0037】
この発明に係る填料スラリーにおける填料改質剤の填料に対する混合比率は、特に制限はないが、好ましくは、一般的な填料に対して填料改質剤を固形分換算で0.02〜5%、更に好ましくは0.1〜3%が好ましい。填料改質剤の量が0.02%よりも少ない場合には、不透明度向上効果が得られるものの実用的ではない場合があり、また、5%よりも多い場合には、使用する填料によっては過度の凝集を引き起こし、一方、紙の地合いが悪化することがあり、填料改質剤を増量したことに見合う不透明度向上効果を期待することができない場合がある。
【0038】
この発明の填料スラリーは、前記のようにこの発明の填料改質剤と前記填料とを混合することにより得ることができる。混合方法は、これらが均一に混合されていればよく公知の方法が用いられる。
【0039】
この発明の製紙方法は、前記のようにして得られるこの発明の填料スラリーとパルプスラリーを形成する他の成分とを混合して得られるパルプスラリーを抄紙する方法である。
【0040】
この発明の製紙方法に使用されるパルプスラリーは、パルプを含有し、前記パルプが水溶媒で分散されることによりスラリー状になった形態を有する。この発明におけるパルプスラリーは、硫酸アルミニウムを用いる酸性系、または、硫酸アルミニウムを全く用いないかあるいは少量用いる中性系のいずれのパルプスラリーであっても良い。
【0041】
前記パルプとしては、クラフトパルプ、及びサルファイトパルプの晒並びに未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプ、及びサーモメカニカルパルプ等の晒並びに未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙及び脱墨古紙等の古紙パルプを挙げることができ、これらの一種又は二種以上を使用することができる。また、パルプスラリーにはパルプ以外の種々の添加剤も必要に応じて用いることができる。
【0042】
前記種々の添加剤としては、この発明の填料改質剤で改良された改質填料以外の填料、サイズ剤、湿潤紙力向上剤、乾燥紙力向上剤、紙厚向上剤、歩留り向上剤、及び濾水性向上剤等を挙げることができ、各々の紙種に要求される物性に応じて各種の添加剤が適宜に選択され、使用される。
【0043】
前記填料としては、クレー、タルク、及び炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。サイズ剤としては、ステアリン酸ナトリウムのような脂肪酸石鹸のサイズ剤、ロジン、強化ロジン、及びロジンエステル系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸の水性エマルション、2−オキセタノンの水性エマルション、パラフィンワックスの水性エマルション、カルボン酸と多価アミンとの反応により得られるカチオン性サイズ剤及び脂肪族オキシ酸と脂肪族アミン又は脂肪族アルコールとの反応物の水性エマルション、カチオン性スチレン系サイズ剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0044】
乾燥紙力向上剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、及び両性澱粉等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用しても良い。湿潤紙力向上剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、及び尿素・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、アニオン性ポリアクリルアミドを併用しても良い。紙厚向上剤としては、脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物、脂肪酸、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミド、脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとのアミドのエピクロロヒドリン付加物、長鎖アルキル基を有するイミダゾリン系化合物、カチオン系界面活性剤等が挙げられ、これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。歩留り向上剤としては、アニオン性、カチオン性、又は両性の高分子量ポリアクリルアミド、シリカゾルとカチオン化澱粉の併用、及びベントナイトとカチオン性高分子量ポリアクリルアミドの併用等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。濾水性向上剤としては、ポリエチレンイミン、カチオン性又は両性又はアニオン性ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、カレンダーなどで、澱粉、ポリビニルアルコール及びアクリルアミド系ポリマー等の表面紙力向上剤、染料、コーティングカラー、表面サイズ剤、並びに防滑剤などを必要に応じて塗布しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0045】
この発明において、填料改質剤と共に填料スラリーの形態で添加された填料のパルプスラリーにおける含有量は、この発明の目的を達成することができる限り特に制限はなく、製造しようとする紙質に応じて適宜選択することができる。パルプスラリー中に含まれる填料の含有量は、パルプスラリー乾燥重量に対して通常0.5〜40%であり、好ましくは1〜30%である。パルプスラリーにおける填料の含有量が0.5%未満では不透明度向上効果があるもののそれが現れにくく、40%を越えると紙力、サイズ効果等の紙質へ悪影響を及ぼす可能性がある。
【0046】
前記、パルプスラリーのpHは3〜8であることが好ましく、特にpH6〜8であることが好ましい。
【0047】
この発明の填料スラリーを添加してパルプスラリーを形成する場合に、従来のパルプスラリーを調製する手順において填料の添加の代わりに填料スラリーが添加されることができ、より具体的には、パルプの水性分散液に又はファンポンプ部の白水中に填料スラリーを添加することができる。
【0048】
この発明の製紙方法によって得られる紙としては、特に制限されないが、各種の紙、及び板紙が挙げられる。紙の種類としては、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等の記録用紙、印画紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、ティシュペーパー、トイレットペーパー、タオルペーパー、キッチンペーパーなどの家庭用薄葉紙、その他壁紙原紙、ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー、石膏ボード原紙等の板紙が挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下、この発明の実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、この発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各例中、%は特記しない限りすべて質量%である。
【0050】
(実施例1)(ポリアミドポリアミン樹脂(A)を有する填料改質剤の製造例)
温度計、冷却器、撹拌機及び窒素導入管を備えた500mL四つ口丸底フラスコにジエチレントリアミン105.3g(1.02モル)を仕込み、攪拌しながらアジピン酸146.1g(1モル)を加え、生成する水を系外に除去しながら昇温し、170℃で3時間反応を行った。次いで、水を徐々に加えて固形分50%のポリアミドポリアミン樹脂水溶液1を得た。これを填料改質剤1とした。填料改質剤1のコロイド滴定法によるカチオン化度は、pH3で4.9meq/g・solids、pH10で0.01meq/g・solidsであった。
【0051】
(実施例2)(ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂(B)を有する填料改質剤の製造)
温度計、還流冷却器、撹拌機及び窒素導入管を備えた500ml四つ口フラスコに、実施例1で得られたポリアミドポリアミン樹脂水溶液を200g(アミノ基として0.49モルを)を仕込み、20℃でエピクロロヒドリン17g(アミノ基に対して0.37モル)を加えた後、30℃に加熱して1時間同温度で保持した。次いで、水233gを加えて50℃まで加熱し、粘度が200mPa・s(25℃)に到達するまで同温度で保持した後、30%硫酸と水とを加えてpHを6、固形分を30%に調整したポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂水溶液2を得た。これを填料改質剤2とした。填料改質剤2のコロイド滴定法によるカチオン化度は、pH3で4.2meq/g・solids、pH10で0.34meq/g・solidsであった。
【0052】
(実施例3)(ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂(C)を有する填料改質剤の製造)
温度計、冷却器、撹拌機及び窒素導入管を備えた500mL四つ口丸底フラスコにジエチレントリアミン105.3g(1.02モル)を仕込み、攪拌しながらアジピン酸146.1g(1モル)を加え、生成する水を系外に除去しながら昇温し、170℃で3時間反応を行った。次いで、反応液を130℃まで冷却し、尿素12g(0.2モル)を加えて同温度で2時間脱アンモニア反応を行った後、水を徐々に加えて固形分50%のポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂水溶液3を得た。これを填料改質剤3とした。填料改質剤3のコロイド滴定法によるカチオン化度は、pH3で3.8meq/g・solids、pH10で0.01meq/g・solidsであった。
【0053】
(実施例4)(ポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂(D)を有する填料改質剤の製造)
温度計、還流冷却器、撹拌機及び滴下ロートを備えた別の500ml四つ口フラスコに、実施例1で得られたポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂水溶液を200g(アミノ基として0.38モル)を仕込み、20℃でエピクロロヒドリン5.5g(アミノ基に対して0.2モル)を加えた後、30℃に加熱して10分間同温度で保持した。次いで、水122gを加えて、50℃まで加熱して粘度が200mPa・s(25℃)に到達するまで同温度で保持した後、30%硫酸と水を加えてpHを6、固形分を30%に調整したポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂水溶液4を得た。これを填料改質剤4とした。填料改質剤4のコロイド滴定法によるカチオン化度は、pH3で3.6meq/g・solids、pH10で0.15meq/g・solidsであった。
【0054】
(実施例5)(ポリアミドポリアミン樹脂(A)を有する填料改質剤の製造)
前記実施例1におけるジエチレントリアミンとアジピン酸との比を2:1と変えたこと以外は実施例1と同様にしてポリアミドポリアミン樹脂水溶液5を得た。これを填料改質剤5とした。填料改質剤5のコロイド滴定法によるカチオン化度は、pH3で12.6meq/g・solids、pH10で0.01meq/g・solidsであった。
【0055】
(実施例6)(ポリアミドポリアミン樹脂(A)を有する填料改質剤の製造)
前記実施例1におけるジエチレントリアミンとアジピン酸の比を0.69:1と変えたこと以外は実施例1と同様にしてポリアミドポリアミン樹脂水溶液6を得た。これを填料改質剤6とした。填料改質剤6のコロイド滴定法によるカチオン化度は、pH3で0.40meq/g・solids、pH10で0.01meq/g・solidsであった。
【0056】
(実施例7)(ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂(B)を有する填料改質剤の製造)
前記実施例2におけるポリアミドポリアミン樹脂水溶液を実施例5のポリアミドポリアミン樹脂水溶液に変えたこと以外は実施例2と同様にして填料改質剤を得た。これを填料改質剤7とした。填料改質剤7のコロイド滴定法によるカチオン化度は、pH3で10.8meq/g・solids、pH10で0.38meq/g・solidsであった。
【0057】
(実施例8)ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂(B)を有する填料改質剤の製造)
前記実施例2におけるポリアミドポリアミン樹脂水溶液を実施例6のポリアミドポリアミン樹脂水溶液に変えたこと以外は実施例2と同様にして填料改質剤を得た。これを填料改質剤8とした。填料改質剤8のコロイド滴定法によるカチオン化度は、pH3で0.34meq/g・solids、pH10で0.05meq/g・solidsであった。
【0058】
(比較例1)(比較例用填料改質剤の製造)(特許文献5の実施例に相当する)
前記実施例2におけるエピクロロヒドリンの量を、アミノ基に対して1モルに変えたこと以外は実施例1と同様にして填料改質剤を得た。これらを填料改質9とした。填料改質剤9のコロイド滴定法によるカチオン化度は、pH3で3.4meq/g・solids、pH10で1.8meq/g・solidsであった。
【0059】
(比較例2)(比較例用填料改質剤の製造)(特許文献7の実施例に相当する)
温度計、冷却器、撹拌機、及び窒素導入管を備えた5リットル四つ口丸底フラスコに、テトラエチレンペンタミン1000g(5.28モル)を仕込み、130℃に昇温した後、ステアリン酸/パルミチン酸混合物(混合重量比 65:35 ) 3011g( 10.96モル)を徐々に加えた。170℃にまで昇温し、生成する水を除去しながら5時間反応させ、ワックス状のアミド系化合物を得た。このアミド化合物50.0g(残存アミノ基量0.16モル)とイソプロピルアルコール(以下、IPAと略記する)5.5gと水290.4gとを温度計、還流冷却器、撹拌機、及び滴下ロートを備えた1000mLの四つ口フラスコに仕込み(固形分50%)、80℃にまで昇温した後、1時間攪拌した。アミド化合物が、サスペンジョンとなったことを確認した後、50℃まで冷却し、エピクロロヒドリン14.8g(0.16モル)を加え、50℃にて30分反応させた後、次いで、80℃にて4時間反応させた後、冷却して固形分15%のアミド系樹脂を得、これを填料改質剤10とした。填料改質剤10のコロイド滴定法によるカチオン化度は、pH3で0.48meq/g・solids、pH10で0.15meq/g・solidsであった。
【0060】
(実施例9)(填料スラリーの調製)
填料改質剤として実施例1で得られた填料改質剤1(固形分50%)0.4gを沈降性炭酸カルシウムスラリー(奥多摩工業(株)製TP121の水分散液。固形分20%)200gに添加し、均一に攪拌することにより、実施例1で得られた填料改質剤1にて処理した填料スラリーを得た(填料改質剤1:沈降性炭酸カルシウム=0.5:100(質量比))。この填料スラリーを填料スラリー1とした。
【0061】
(実施例10〜16)(填料スラリーの調製)
前記実施例9にて使用した填料改質剤を表1に記載の種類に変えたこと以外は実施例9と同様にして填料改質剤により処理した填料スラリーを得た。この填料スラリーを填料スラリー2〜8とした。
【0062】
【表1】

【0063】
(比較例3,4)(填料スラリーの調製)
前記実施例9にて使用した填料改質剤を表1に記載の種類に変えたこと以外は実施例9と同様にして填料改質剤により処理した填料スラリーを得た。この填料スラリーを填料スラリー9、10とした。
【0064】
(実施例17)(填料スラリーの調製)
前記実施例10にて使用した沈降性炭酸カルシウムをタルクに代えたこと以外は実施例10と同様にして填料改質剤により処理した填料スラリーを得た。この填料スラリーを填料スラリー11とした。
【0065】
(実施例18)(填料スラリーの調製)
前記実施例10にて使用した沈降性炭酸カルシウムをホワイトカーボンに代えたこと以外は実施例例10と同様にして填料改質剤により処理した填料スラリーを得た。この填料スラリーを填料スラリー12とした。
【0066】
(実施例19)(抄紙操作)
脱墨パルプ(以下において、DIPと略することがある。)を、カナディアン・スタンダード・フリーネス220に調整した濃度2.4%のパルプスラリーに、硫酸バンドをパルプに対して0.5%加えた後、カチオン性澱粉(日本NSC(株)製、CATO304)をパルプに対して0.5%添加し、アルキルケテンダイマー系サイズ剤(星光PMC(株)製AD1604)を0.05%添加した。攪拌した後、pH7.5に調整した水道水を用いてパルプ濃度を0.6%に調整し、次いで実施例9の填料スラリー(填料スラリー1)をパルプに対して20%になるように添加した後、角型シートマシンにて抄紙して、坪量40g/mの手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、紙中灰分量、不透明度、印刷後不透明度内部結合強度、ドロップテストを下記方法により測定した。なお、前記薬品の添加率はパルプ絶乾重量に対する固形分重量比である。
【0067】
紙中灰分量:JIS P8251 灰分試験方法(525℃燃焼法)
不透明度:JIS P8149 不透明度試験方法
印刷後不透明度:JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.45 新聞用紙−印刷後不透明度試験方法
内部結合強度…JAPAN −TAPPI 紙パルプ試験法No. 18−2 紙及び板紙−内部結合強さ試験方法−第2部:インターナルボンドテスタ法
ドロップテスト…JAPAN −TAPPI 紙パルプ試験法No. 32−2 紙−吸水性試験方法−第2部:滴下法(5μl)
【0068】
(実施例20〜26、比較例5、6)(抄紙操作)
前記実施例19の填料スラリー1を填料スラリー2〜10(実施例10〜16、比較例3、4で調製された填料)に代えたこと以外は実施例19と同様にして手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、実施例19と同様にして紙中灰分量、不透明度、印刷後不透明度、内部結合強度、ドロップテストの測定を行った。測定結果を表2に示した。
【0069】
(比較例7)
前記実施例19におけるのと同じ種類の填料を、填料改質剤による処理をしていない沈降性炭酸カルシウムに代えたこと以外は実施例19と同様にして手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、実施例19と同様にして紙中灰分量、不透明度、印刷後不透明度、内部結合強度、ドロップテストの測定を行った。測定結果を表2に示した。
【0070】
(比較例8)
前記比較例7における沈降性炭酸カルシウムのパルプに対する添加量を20%から、21%に代えたこと以外は実施例19と同様にして手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を 23℃、RH 50%の条件下に 24時間調湿した後、実施例19と同様にして紙中灰分量、不透明度、印刷後不透明度、内部結合強度、ドロップテストの測定を行った。測定結果を表2に示した。
【0071】
(比較例9)(抄紙操作)
DIPを、カナディアン・スタンダード・フリーネス220に調整した濃度2.4 %のパルプスラリーに、硫酸バンドをパルプに対して0.5%加えた後、カチオン性澱粉(日本NSC(株)製、CATO304)をパルプに対して0.5%添加し、アルキルケテンダイマー系サイズ剤(星光PMC(株)製AD1604)を0.05%添加した。攪拌した後、pH7.5に調整した水道水を用いてパルプ濃度を0.6%に調整し、次いで実施例1のポリアミドポリアミン樹脂水溶液をパルプに対して固形分換算で0.1%添加し、その後、填料改質剤による処理をしていない沈降性炭酸カルシウムスラリー(固形分30%)をパルプに対して20%添加した後、角型シートマシンにて抄紙して、坪量40g/mの手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、実施例19と同様にして紙中灰分量、不透明度、印刷後不透明度、内部結合強度、ドロップテストの測定を行った。測定結果を表2に示した。なお、前記薬品の添加率はパルプ絶乾重量に対する固形分重量比である。
【0072】
(比較例10〜12)
前記比較例9において実施例1の填料改質剤を表1に記載の実施例2のポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂水溶液、実施例3のポリアミドポリアミン尿素樹脂水溶液、実施例4のポリアミドポリアミン尿素−エピハロヒドリン樹脂水溶液に代えたこと以外は比較例6と同様にして手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、実施例19と同様にして紙中灰分量、不透明度、印刷後不透明度、内部結合強度、ドロップテストの測定を行った。測定結果を表2に示した。
【0073】
(実施例27)(抄紙操作)
DIPを、カナディアン・スタンダード・フリーネス220に調整した濃度2.4 %のパルプスラリーに、硫酸バンドをパルプに対して0.5%加えた後、カチオン性澱粉(日本NSC(株)製、CATO304)をパルプに対して0.5%添加し、アルキルケテンダイマー系サイズ剤(星光PMC(株)製AD1604)を0.05%添加した。攪拌した後、pH7.5に調整した水道水を用いてパルプ濃度を0.6%に調整し、次いで実施例17の填料スラリー11をパルプに対して10%添加した後、角型シートマシンにて抄紙して、坪量40g/mの手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、実施例19と同様にして紙中灰分量、不透明度、印刷後不透明度の測定を行った。測定結果を表3に示した。なお、前記薬品の添加率はパルプ絶乾重量に対する固形分重量比である。
【0074】
(実施例28)(抄紙操作)
前記実施例27の填料スラリー11を填料スラリー12(実施例18で調製された填料スラリー)に代えたこと以外は実施例27と同様にして手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に 4時間調湿した後、実施例19と同様にして紙中灰分量、不透明度、印刷後不透明度の測定を行った。測定結果を表3に示した。
【0075】
(比較例13,14)
前記実施例27における填料スラリー11を填料改質剤による処理をしていない填料スラリー11で用いているタルクに代えたこと(比較例13)、前記実施例28における填料スラリー12を填料改質剤による処理をしていない填料スラリー12で用いているホワイトカーボンに代えたこと(比較例14)以外は実施例27と同様にして手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、実施例19と同様にして紙中灰分量、不透明度、印刷後不透明度の測定を行った。測定結果を表3に示した。
【0076】
(実施例29)(抄紙操作)
DIPを、カナディアン・スタンダード・フリーネス220に調整した濃度2.4%のパルプスラリーに、硫酸バンドをパルプに対して0.5%加えた後、カチオン性澱粉(日本NSC(株)製、CATO304)をパルプに対して0.5%添加し、アルキルケテンダイマー系サイズ剤(星光PMC社製AD1604)を0.05%添加した。攪拌した後、pH7.5に調整した水道水を用いてパルプ濃度を0.6%に調整し、次いで実施例9の填料スラリー1をパルプに対して15%添加し、さらに実施例17の填料スラリー11をパルプに対して5%になるように添加した後、角型シートマシンにて抄紙して、坪量40g/mの手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、実施例19と同様にして紙中灰分量、不透明度、印刷後不透明度の測定を行った。測定結果を表3に示した。なお、前記薬品の添加率はパルプ絶乾重量に対する固形分重量比である。
【0077】
(実施例30)(抄紙操作)
前記実施例29の填料スラリー11を填料スラリー12(実施例18で調製された填料スラリー)に代えたこと以外は実施例29と同様にして手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、実施例19と同様にして紙中灰分量、不透明度、印刷後不透明度の測定を行った。測定結果を表3に示した。
【0078】
(比較例15,16)
前記実施例29における填料スラリー1を填料改質剤による処理をしていない沈降性炭酸カルシウムの填料スラリー及び填料スラリー11を填料改質剤による処理をしていないタルクの填料スラリーに代えること(比較例15)以外は実施例29と同様にして、前記実施例30における填料スラリー1を填料改質剤による処理をしていない沈降性炭酸カルシウムの填料スラリー及び填料スラリー12を填料改質剤による処理をしていないホワイトカーボンの填料スラリーに代えること(比較例16)以外は実施例30と同様にして手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、実施例19と同様にして紙中灰分量、不透明度、印刷後不透明度の測定を行った。測定結果を表3に示した。
【0079】
【表2】

【0080】
(*1)実施例19〜22は、填料改質剤1〜4で処理した沈降性炭酸カルシウムを含有する填料スラリーを添加することによりパルプスラリーを調製したのに対して、比較例9〜12においては、沈降性炭酸カルシウムスラリーと樹脂水溶液1〜4(填料改質剤1〜4と樹脂水溶液としては同じ)を予め混合して填料スラリーを調整することなく、沈降性炭酸カルシウムと樹脂水溶液1〜4とを別々に添加してパルプスラリーを調製した。
【0081】
【表3】

【0082】
表2,3に示される結果から明らかなように、この発明における填料改質剤は、従来の填料を改質することにより紙力、サイズ度を維持したまま、不透明度、印刷後不透明度向上効果を奏することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)の樹脂より選ばれる少なくとも一種である樹脂を含み、パルプスラリー調製用の填料スラリーに填料と共に含まれる填料スラリー成分であることを特徴とする填料改質剤。
(A)二塩基性カルボン酸化合物とポリアルキレンポリアミン化合物とを加熱縮合させて成るポリアミドポリアミン樹脂
(B)二塩基性カルボン酸化合物とポリアルキレンポリアミン化合物とを加熱縮合させて成るポリアミドポリアミン樹脂と、ポリアミドポリアミン樹脂中のアミノ基1モルに対して0.5モル以下のエピハロヒドリンとを反応させることにより得られるポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂
(C)二塩基性カルボン酸化合物とポリアルキレンポリアミン化合物と尿素化合物とを加熱縮合させて成るポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂
(D)二塩基性カルボン酸化合物とポリアルキレンポリアミン化合物と尿素化合物とを加熱縮合させて成るポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂と、ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂中のアミノ基1モルに対して0.5モル以下のエピハロヒドリンとを反応させることにより得られるポリアミドポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン樹脂
【請求項2】
pH3におけるカチオン化度が少なくとも1.5meq/g・solidsであり、かつ、pH10におけるカチオン化度が多くとも0.5meq/g・solidであることを特徴とする請求項1記載の填料改質剤。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の填料改質剤を含有することを特徴とする填料スラリー。
【請求項4】
前記請求項3に記載の填料スラリーが混合されて成るパルプスラリーを用いて抄紙することを特徴とする製紙方法。

【公開番号】特開2007−332510(P2007−332510A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168152(P2006−168152)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】