説明

塵埃測定方法及びろ過装置

【課題】液体中に含まれる塵埃の量を測定する新規な技術を提供する。
【解決手段】塵埃測定方法は、塵埃を含む第1の液体を、第1のフィルタでろ過し、第1のフィルタに塵埃を捕捉する第1のろ過工程と、第1のフィルタに捕捉された塵埃を、第1のろ過工程でろ過される第1の液体よりも少ない量の第2の液体中に剥離させる工程と、塵埃を含む前記第2の液体を、第1のフィルタよりもろ過面積が狭い第2のフィルタでろ過し、第2のフィルタに塵埃を捕捉する第2のろ過工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃測定方法及びろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば磁気ディスクやマイクロレンズ等の精密機器分野において、例えば精密洗浄など、部品等の洗浄が行なわれている。洗浄された部品等がどの程度清浄であるか評価するために、抜き取り検査が行なわれる。抜き取られた部品等をさらに洗浄して、洗浄水中に剥離した塵埃の個数を測定する。
【0003】
図10に示すように、塵埃測定方法として、例えば、液中パーティクルカウンタ(LPC)を用いるLPC法がある。LPC法は、洗浄水101の全量のうち一部中の塵埃個数を、液中パーティクルカウンタ102で測定し、それに基づいて洗浄水101全量中の塵埃個数を推計する。洗浄水の全量は、例えば3リットルであり、そのうちLPCで測定される量は、例えば50ミリリットルである。塵埃の量は、例えば洗浄水10ミリリットル当たり数個程度と少ない。
【0004】
LPC法は、洗浄水の一部から塵埃の全量を推計するので、塵埃の量が少なくなると、推計の誤差が増える。なお、洗浄水の全量をLPCで測定すれば、塵埃の全量を直接的に測定できるが、これは非常に時間がかかる。
【0005】
洗浄水中の塵埃の全量を、正確に短時間で測定できる技術が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−276760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、液体中に含まれる塵埃の量を測定する新規な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、塵埃を含む第1の液体を、第1のフィルタでろ過し、該第1のフィルタに前記塵埃を捕捉する第1のろ過工程と、前記第1のフィルタに捕捉された前記塵埃を、前記第1のろ過工程でろ過される前記第1の液体よりも少ない量の第2の液体中に剥離させる工程と、前記塵埃を含む前記第2の液体を、前記第1のフィルタよりもろ過面積が狭い第2のフィルタでろ過し、該第2のフィルタに該塵埃を捕捉する第2のろ過工程とを有する塵埃測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
第1のろ過工程で、量の多い第1の液体をろ過面積の広い第1のフィルタでろ過し、第2のろ過工程で、ろ過面積の狭い第2のフィルタに対し量の少ない第2の液体でろ過を行なうことにより、ろ過時間の短縮化が図られる。また、ろ過面積の狭い第2のフィルタに塵埃を回収することにより、塵埃個数を数えるために行なう第2のフィルタ表面の顕微鏡観察が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1(〜第7)の実施例による、第1段階のろ過を行なうろ過装置を示す概略図である。
【図2】図2は、第1の実施例の、第2段階のろ過を行なうろ過装置を示す概略図である。
【図3】図3は、塵埃を回収したフィルタ表面の観察方法を示す概略図である。
【図4】図4は、第2の実施例の、第2段階のろ過を行なうろ過装置を示す概略図である。
【図5】図5は、第3の実施例の、第2段階のろ過を行なうろ過装置を示す概略図である。
【図6】図6は、第4の実施例の、第2段階のろ過を行なうろ過装置を示す概略図である。
【図7】図7は、第5の実施例の、第2段階のろ過を行なうろ過装置を示す概略図である。
【図8】図8は、第6の実施例の、第2段階のろ過を行なうろ過装置を示す概略図である。
【図9】図9は、第7の実施例の、第2段階のろ過を行なうろ過装置を示す概略図である。
【図10】LPC法による塵埃測定方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
LPC法以外の塵埃測定方法として、洗浄水の全量をフィルタでろ過し、洗浄水中に含まれていた塵埃の全量をフィルタに回収し、フィルタ上に回収された塵埃の個数を数える方法(フィルタリング法)が考えられる。フィルタリング法は、洗浄水中の塵埃の全量を直接的に測定できる。本願発明者らは、以下のように、効率的なフィルタリング法について検討を行なった。
【0012】
まず、第1の実施例による塵埃測定方法について説明する。実施例による塵埃測定方法では、2段階のろ過を行う。
【0013】
図1は、第1段階のろ過を行なうろ過装置を示す概略図である。検査のため部品等を洗浄した後の洗浄水1の全量が、ファネル(漏斗)2に入れられる。ろ液を受けるフラスコ6の入口に吸引ベース5(例えば「吸引ベース及び吸引口付きキャップ」として日本ミリポア株式会社から市販されているもの)が取り付けられている。
【0014】
ファネル2の出口と、吸引ベース5の入口との間に、フィルタホルダ4に保持されたフィルタ3が配置されている。ファネル2の出口の縁部と、吸引ベース5の入口の縁部とを、クランプ9が挟み込んで、ファネル2と吸引ベース5の接続の気密性を確保している。
【0015】
吸引ベース5の吸引口に、ホース7を介して吸引ポンプ8が取り付けられている。ホース7に、適宜バルブ等が取り付けられている。吸引ポンプ8が、吸引ベース5内及びフラスコ6内から空気を排出して減圧することにより、吸引ろ過が行なわれる。
【0016】
フィルタ3は、例えば、孔径0.4μm、直径47mmのポリカーボネート製メンブレンフィルタである。フィルタホルダ4が、フィルタ3を挟み込んで保持する。フィルタホルダ4は、塵埃を捕捉する側(表側)で、フィルタ3が洗浄水1に露出する開口(ろ過開口と呼ぶこととする)を画定する。ろ過開口の直径は例えば35mmであり、フィルタ3が洗浄水1に露出する面積、すなわちフィルタ3が洗浄水1をろ過するろ過面積は、例えば962mmとなる。また、フィルタホルダ4は、裏側で、ろ液を透過する多数の孔が設けられた部材によりフィルタ3を支持する。
【0017】
洗浄水1の全量をろ過することにより、洗浄水1中の塵埃11の全量が、フィルタ3の表面に捕捉される。例えば大きさ0.5μm以上の塵埃11を捕捉したい場合、孔径0.4μmのフィルタが用いられる。なお、厳密には、ファネル2の壁面等へ付着する塵埃もごくわずかあると考えられるが、ここでは考慮しない。
【0018】
図2は、第2段階のろ過を行なうろ過装置を示す概略図である。第2段階のろ過装置は、フラスコ6の入口に吸引ベース5が取り付けられ、吸引ベース5にホース7を介して吸引ポンプ8が取り付けられて、吸引ろ過が行なわれる点は第1段階のろ過装置と同様である。
【0019】
第2段階のろ過装置では、ファネル(漏斗)22内に、塵埃回収用の水21(塵埃回収水21と呼ぶこととする)が入れられる。塵埃回収水21として、含まれる塵埃数が非常に少ない(例えば10ミリリットル中に大きさ0.2μm以上の塵埃数が20個以下の)パーティクルフリーな水が用いられる。
【0020】
ファネル22内の、塵埃回収水21中に、第1段階のろ過で塵埃を捕捉したフィルタ3が保持される。フィルタ3は、塵埃11を捕捉した表側の面が下側(ファネル22の出口側)になるように配置される。
【0021】
フィルタ3の上方に、超音波印加機構33が配置される。超音波印加機構33は、例えば圧電素子を用いた超音波振動子31と、それに接続されたホーン32とを含む。ホーン32として、例えば、破砕ホーン等を流用することもできる。ホーン32は、塵埃回収水21中でフィルタ3と対向配置される下面を有し、ホーン32の下面は、フィルタ3の塵埃11を捕捉したろ過領域を内包する程度に広い。
【0022】
ファネル22は、径が上側(入口側)で太く、下側(出口側)で細い形状をしている。径が細くなった肩部に、フィルタホルダ4の縁部が載せられて、フィルタ3が保持される。この保持構造により、フィルタ3及びフィルタホルダ4が、ファネル22の内部を上下に区分し、フィルタ3から下側に剥離した塵埃11が、フィルタ3の上側に回りこむことが抑制される。例えば、フィルタ3の上方に配置されるホーン32等に、塵埃11が付着することが抑制される。なお、ファネル22の出口は、さらに細い径となっている。
【0023】
ファネル22の出口と吸引ベース5の入口との間に、フィルタホルダ24に保持されたフィルタ23が挟まれて保持されている。フィルタ23は、例えば、孔径0.4μm、直径47mmのポリカーボネート製メンブレンフィルタである。
【0024】
フィルタホルダ24が、フィルタ23を挟み込んで保持する。フィルタホルダ24は、塵埃を捕捉する側(表側)で、フィルタ23が塵埃回収水21に露出する開口を画定する。フィルタホルダ24のろ過開口の直径は例えば2mmであり、フィルタ23のろ過面積は、例えば3mmとなる。また、フィルタホルダ24は、裏側で、ろ液を透過する多数の開口が設けられた部材によりフィルタ23を支持する。
【0025】
第1段階のろ過で塵埃11をろ過するフィルタ3のろ過面積に比べて、第2段階のろ過で塵埃11をろ過するフィルタ23のろ過面積は狭い。第1段階、第2段階のろ過で塵埃11をろ過するフィルタ3、23を、以下、それぞれ大面積フィルタ3、小面積フィルタ23と呼ぶ。
【0026】
第2段階のろ過では小面積フィルタ23のろ過面積が狭いので、それに応じてファネル22の出口の径が細くなっている。ファネル22の出口の開口直径は例えば10mmである。ファネル22の出口に、鍔状の部材22aが取り付けられている。ファネル22の出口の鍔状部材22aの縁部と、吸引ベース5の入口の縁部とを、クランプ9が挟み込んで、ファネル22と吸引ベース5の接続の気密性を確保している。
【0027】
次に、第1の実施例の塵埃測定方法について説明する。まず、第1段階のろ過を行なう。塵埃を含む洗浄水1の全量は、例えば3リットルであり、例えば大きさ0.5μm以上の塵埃11の全量は千個程度のオーダ(例えば3000個程度)である。第1段階のろ過は、例えば洗浄水1の全量を3リットルとし大面積フィルタ3としてろ過開口径35mmのものを用いたとき、例えば1時間程度で行われる。
【0028】
そして、第1段階のろ過を行なっている間に、第2段階のろ過装置のファネル22に、大面積フィルタ3が浸かる以上の深さまで、塵埃回収水21を入れて準備しておく。塵埃回収水21の全量は、例えば50ミリリットル程度である。
【0029】
第1段階のろ過が終了したら、大面積フィルタ3を、乾かぬうちに、フィルタホルダ4に保持されたまま裏返して、第2段階のろ過装置のファネル22内に保持する。
【0030】
次に、超音波印加機構33のホーン32を、下面が塵埃回収水21を介してフィルタホルダ4の裏面と対向するように、塵埃回収水21中に配置する。ホーン32の下面と、フィルタホルダ4の裏面とは、例えば1mm程度の距離となるように近接させる。
【0031】
次に、超音波振動子31を駆動してホーン32を振動させ、塵埃回収水21(とフィルタホルダ4と)を介して、大面積フィルタ3に超音波を印加する。例えば、周波数28kHzの超音波を10秒間印加する。超音波印加により、大面積フィルタ3から塵埃回収水21中への塵埃11の剥離が促進される。
【0032】
ホーン32の下面は、平面視上、大面積フィルタ3の塵埃11を捕捉したろ過領域を内包するように配置するのが好ましい。ろ過面積全域に均一に超音波を印加しやすくするためである。
【0033】
次に、第2段階のろ過として、塵埃回収水21を、小面積フィルタ23でろ過する。第2段階のろ過は、例えば塵埃回収水21の全量が50ミリリットルで小面積フィルタ23としてろ過開口径2mmのものを用いたとき、例えば1時間程度で行われる。
【0034】
このようにして、2段階のろ過により、洗浄水1中に含まれる塵埃11の全量が、小面積フィルタ23上に回収される。なお、厳密には、大面積フィルタ3上に残る塵埃や、ファネル22の壁面等へ付着する塵埃もごくわずかあると考えられるが、ここでは考慮しない。
【0035】
次に、図3に示すように、小面積フィルタ23の表面を、例えば電子顕微鏡25で観察する。小面積フィルタ23のろ過面積の全域を走査して観察し、塵埃11の全個数を数える。例えば、走査して多数の写真を撮り、コンピュータによる画像処理で塵埃11の個数を算出する。このようにして、洗浄水1中に含まれる塵埃11の全量が測定される。
【0036】
比較例として、第1段階のろ過のみを行い、大面積フィルタの表面を顕微鏡観察して、洗浄水中の全塵埃個数を数える方法を考える。比較例の方法では、ろ過は1回ですむものの、大面積フィルタの広いろ過面積全域を顕微鏡で走査するのに非常に時間がかかる。
【0037】
一方、実施例の方法では、ろ過は2回行なうが、小面積フィルタの狭いろ過面積を観察するので、比較例に比べ顕微鏡走査の時間が短縮される。また、比較例に比べ、フィルタ上の塵埃の分布密度が増加しており、観察しても塵埃が見つからない領域が減るので、顕微鏡観察が効率的に行なわれる。
【0038】
実施例の方法では、第1段階のろ過工程で、例えば3リットルと量の多い洗浄水をろ過面積の広い大面積フィルタでろ過し、第2段階のろ過工程で、ろ過面積の狭い小面積フィルタに対し例えば50ミリリットルと量の少ない塵埃回収水でろ過を行なうことにより、ろ過時間の短縮が図られる。また、ろ過面積が狭い小面積フィルタに塵埃を回収することにより、顕微鏡観察時間の短縮が図られる。このようにして、塵埃測定方法の効率化が図られる。
【0039】
さらに、大面積フィルタに超音波を印加することにより、大面積フィルタからの塵埃の剥離を促進し、大面積フィルタ上に塵埃が残ることが抑制される。
【0040】
なお、超音波印加終了後に第2段階のろ過を開始する例を説明したが、例えば、ホーンと大面積フィルタとの間に塵埃回収水が残っている状態であれば、ろ過中に超音波印加を行なうこともできる。
【0041】
なお、超音波に限らず、振動の印加により、大面積フィルタからの塵埃の剥離を促進できよう。例えば、周波数1kHz〜500kHz程度の振動を用いることができよう。特に、周波数20kHz〜100kHzの超音波を用いることが好ましい。
【0042】
なお、大面積フィルタは、捕捉した塵埃が剥離されやすいものであることが好ましい。例えば、フィルタ面内に多数の孔が形成され、孔径より大きな塵埃が表面に付着する構造のフィルタ、例えばポリカーボネート製のメンブレンフィルタが好ましい。
【0043】
第1段階のろ過時間を短縮するには、大面積フィルタのろ過面積が広いことが好ましい。フィルタは円形が多いので、ろ過面積を、円の面積に対応させ、当該円の直径(ろ過領域径と呼ぶこととする)で表すこととする。大面積フィルタのろ過領域径は、例えば、10mm以上であることが好ましい。大面積フィルタのろ過領域径の上限は特にないが、例えば、市販のメンブレンフィルタサイズの上限としては、200mm程度の径となる。
【0044】
なお、第2段階のろ過時間を短縮するには、塵埃回収水の量が少ないことが好ましい。大面積フィルタと小面積フィルタのろ過面積の比率にもよるが、第2段階でろ過する塵埃回収水の全量は、第1段階でろ過する洗浄水の全量に対して少なく、例えば1/30以下の量であることが好ましい。塵埃回収水が少ないほど第2段階のろ過時間が短縮できるという観点からは、この比の下限に特に制限はないが、例えば下限は1/200程度である。
【0045】
塵埃の顕微鏡観察を短縮するには、小面積フィルタのろ過面積が狭いことが好ましい。ただし、小面積フィルタのろ過面積が狭すぎると、第2段階のろ過に時間がかかり過ぎる。小面積フィルタのろ過領域径は、例えば、0.1mm以上10mm未満であることが好ましい。
【0046】
大面積フィルタのろ過面積に対して、小面積フィルタのろ過面積が狭いほど、顕微鏡観察が効率化されるといえる。小面積フィルタのろ過面積は、大面積フィルタのろ過面積に対して狭く、例えば1/100以下の狭さ(ろ過領域径の比としては1/10以下の細さ)であることが好ましい。小面積フィルタのろ過面積は、観察の効率化の観点からは狭い方が良いが、ろ過時間の観点からはある程度広いことが求められ、この面積比の下限は、例えば1/10000(ろ過領域径の比で1/100)程度となろう。
【0047】
なお、孔径0.4μmのフィルタを使い、大きさ0.5μm以上の塵埃を測定する例について説明したが、測定したい塵埃の大きさに応じて、フィルタの孔径は適宜選択することができる。例えば、孔径0.05μm〜12μmの範囲のフィルタを用いることができる。
【0048】
なお、小面積フィルタに回収した塵埃を、電子顕微鏡で観察する例について説明したが、塵埃が十分に大きければ、光学顕微鏡で観察してもよい。なお、例えば光学顕微鏡で観察するとき、小面積フィルタのろ過面積が十分に狭ければ、走査なしに一度の観察で塵埃の全個数を数えられる場合も考えられる。なお、電子顕微鏡で観察する場合、小面積フィルタとして、特にポリカーボネート製のものが、チャージアップしにくいので好ましい。
【0049】
次に、第2〜第6の実施例による塵埃測定方法について説明する。第2〜第6の実施例において、第1段階のろ過工程、及び小面積フィルタの顕微鏡観察工程は第1の実施例と同様であり、第2段階のろ過工程における、超音波印加の態様が異なる。
【0050】
まず、図4を参照して、第2の実施例の、第2段階のろ過装置について説明する。第1の実施例と異なるのは、大面積フィルタ3の上方に配置される超音波印加機構43である。超音波印加機構43は、超音波振動子41と、それに接続されたホーン42とを含み、さらに、超音波振動子41及びホーン42を、大面積フィルタ3の面内方向に走査する移動機構44を含む。
【0051】
第1の実施例の超音波印加機構33は、ホーン32の下面が、大面積フィルタ3のろ過領域を内包する程度に広いものであった。第2の実施例の超音波印加機構43は、ホーン42の下面が、大面積フィルタ3のろ過領域よりも狭く、ろ過領域全域へ同時に均一に超音波を印加することが難しい。そのため、移動機構44でホーン42を走査して、ろ過領域全域への超音波印加が行なわれる。
【0052】
次に、図5を参照して、第3の実施例の、第2段階のろ過装置について説明する。第1の実施例と異なるのは、大面積フィルタ3の上方に配置される超音波印加機構53である。超音波印加機構53は、超音波振動子51と、それに接続されたホーン52とを含み、さらに、ホーン52と大面積フィルタ3(フィルタホルダ4)との間に配置された振動伝達部材54を含む。ホーン52の先端と、振動伝達部材54が、塵埃回収水21中に配置される。
【0053】
第3の実施例も、第2の実施例と同様に、ホーン52の下面が、大面積フィルタ3のろ過領域よりも狭く、ろ過領域全域に同時に均一に超音波を印加することが難しい。そのため、振動伝達部材54を用いる。振動伝達部材54は、大面積フィルタ3(フィルタホルダ4の裏面)と対向配置される板状部分54aを含み、例えば、凹型の金属部材である。板状部分54aの下面が、大面積フィルタ3のろ過領域を内包する程度に広い。
【0054】
ホーン52の下面が、板状部分54aの上面と対向配置され、ホーン52から、塵埃回収水21を介して板状部分54aに超音波が印加される。そして、板状部分54aから、塵埃回収水21(及びフィルタホルダ4)を介して、大面積フィルタ3のろ過領域全域に超音波が印加される。第3の実施例では、振動伝達部材を用いることにより、先端が広くないホーンを用いる場合でも、走査のための移動機構が必要ない。
【0055】
次に、図6を参照して、第4の実施例の、第2段階のろ過装置について説明する。第1の実施例と異なるのは、大面積フィルタ3の上方に配置される超音波印加機構63である。超音波印加機構63は、塵埃回収水21中に配置される超音波振動子61を含む。
【0056】
第4の実施例の超音波印加機構63は、ホーンを介さず、超音波振動子61が、(塵埃回収水21、フィルタホルダ4を介して)大面積フィルタ3に超音波を印加する。超音波振動子61の、大面積フィルタ3に対向する面が、大面積フィルタ3のろ過領域を内包する程度に広い。
【0057】
第4の実施例は、大面積フィルタ3のろ過面積が、ホーンで超音波を印加するには広すぎる場合を想定している。通常、ホーンの先端は、超音波振動子の大きさよりも狭く設計されている。そのため、ホーンでなく、大きな超音波振動子61自体から超音波を印加する構造とすることにより、広いろ過領域全域への超音波印加を容易にしている。
【0058】
次に、図7を参照して、第5の実施例の、第2段階のろ過装置について説明する。第1の実施例と異なるのは、超音波印加機構73である。第1の実施例で、大面積フィルタ3の上方に塵埃回収水21を介して超音波印加機構33(のホーン32)を配置した替わりに、超音波印加機構73として、フィルタホルダ4上に直接、超音波振動子71が配置される。
【0059】
第5の実施例では、第1段階のろ過が終了したら、大面積フィルタ3のフィルタホルダ4の例えば裏面の縁部上に、超音波振動子71を貼り合せる。超音波振動子71を貼り合せたフィルタホルダ4を、ファネル22内に保持し、超音波印加を行なう。
【0060】
第5の実施例の超音波印加方法では、塵埃回収水21を介さずに、フィルタホルダ4に直接超音波を印加するので、大面積フィルタ3に印加する振動を強めることが容易になる。
【0061】
次に、図8を参照して、第6の実施例の、第2段階のろ過装置について説明する。第1の実施例と異なるのは、超音波印加機構83である。第1の実施例で、大面積フィルタ3の上方に塵埃回収水21を介して超音波印加機構33(のホーン32)を配置した替わりに、超音波印加機構83として、ファネル22上に超音波振動子81が配置される。
【0062】
ファネル22の外側面の周上に並んで、多数の超音波振動子81が貼り付けられている。超音波振動子81からファネル22に印加された超音波が、塵埃回収水21(とフィルタホルダ4と)を介して、大面積フィルタ3に印加される。
【0063】
第5の実施例では、さらに、外槽84が設けられ、外槽84に入れられた冷却水85に、ファネル22及び超音波振動子81が浸されている。これは、駆動時に超音波振動子81が発する熱を冷却するためである。
【0064】
第6の実施例では、ファネル22に超音波が印加されるので、ファネル22の側壁に塵埃11が付着することの抑制効果が期待される。なお、第5の実施例の超音波印加方法では、ろ過開始前に加え、ろ過終了まで(ファネル22から塵埃回収水21が全て排出されるまで)継続的に超音波印加を行なうのが好ましいであろう。
【0065】
なお、以上説明した第1〜第6の実施例の超音波印加態様は、適宜組み合わせて用いることもできる。例えば、第5の実施例のように大面積フィルタのフィルタホルダに貼り付けた超音波振動子と、第6の実施例のようにファネルに貼り付けた超音波振動子との組み合わせ等である。
【0066】
次に、第7の実施例による塵埃測定方法について説明する。第7の実施例において、第1段階のろ過工程、及び小面積フィルタの顕微鏡観察工程は第1の実施例と同様であり、第2段階のろ過工程が異なる。
【0067】
図9は、第7の実施例の、第2段階のろ過装置を示す概略図である。第1の実施例と異なるのは、加圧ろ過を行える装置となっていることである。図9は、例えば第1の実施例の方法で、大面積フィルタ3に超音波印加を行なった後の状態の、ろ過装置を示す。
【0068】
超音波印加により大面積フィルタ3から塵埃11を剥離させたら、ファネル22に蓋91を被せる。この実施例のファネル22には、蓋91の取り付けに適するよう、入口に鍔状の部材22bが取り付けられている。ファネル22の入口の鍔状部材22bの縁部と、蓋91の下部の縁部とを、クランプ94が挟み込んで、ファネル22と蓋91の接続の気密性を確保している。
【0069】
蓋91の加圧口に、ホース92を介して加圧ポンプ93が取り付けられている。ホース92に、適宜バルブ等が取り付けられている。吸引ポンプ8に接続されたホース7のバルブを開いた状態で、加圧ポンプ93が、蓋91内及びファネル22内に空気を送り込んで加圧することにより、加圧ろ過が行なわれる。
【0070】
このように、第2段階(あるいは第1段階)のろ過に加圧ろ過を用いることも可能である。なお、吸引ろ過と加圧ろ過を組み合わせて行なうことも可能である。
【0071】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。例えば、実施例の技術を必要に応じて水以外の洗浄液、塵埃回収液に応用することも可能であろう。
【符号の説明】
【0072】
1 洗浄水
2 ファネル
3 (大面積)フィルタ
4 フィルタホルダ
5 吸引ベース
6 フラスコ
7 ホース
8 吸引ポンプ
9 クランプ
11 塵埃
21 塵埃回収水
22 ファネル
23 (小面積)フィルタ
24 フィルタホルダ
31 超音波振動子
32 ホーン
33 超音波印加機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵埃を含む第1の液体を、第1のフィルタでろ過し、該第1のフィルタに前記塵埃を捕捉する第1のろ過工程と、
前記第1のフィルタに捕捉された前記塵埃を、前記第1のろ過工程でろ過される前記第1の液体よりも少ない量の第2の液体中に剥離させる工程と、
前記塵埃を含む前記第2の液体を、前記第1のフィルタよりもろ過面積が狭い第2のフィルタでろ過し、該第2のフィルタに該塵埃を捕捉する第2のろ過工程と
を有する塵埃測定方法。
【請求項2】
前記塵埃を第2の液体中に剥離させる工程は、前記第1のフィルタに振動を印加する請求項1記載の塵埃測定方法。
【請求項3】
さらに、前記第2のフィルタを顕微鏡で観察し、前記塵埃の個数を測定する工程を有する請求項1または2に記載の塵埃測定方法。
【請求項4】
塵埃を捕捉する第1のフィルタと、
前記塵埃を捕捉し、前記第1のフィルタよりもろ過面積の狭い第2のフィルタと、
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとの間に配置され、前記第1のフィルタに捕捉された前記塵埃を前記第2のフィルタに捕捉させる接続部材と
を有するろ過装置。
【請求項5】
前記接続部材は、漏斗形状であることを特徴とする請求項4に記載のろ過装置。
【請求項6】
さらに、前記第1のフィルタに振動を印加する振動印加機構を有する請求項4または5に記載のろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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