説明

塵芥収集車およびその制御方法

【課題】排出板の前方空間を別の収容空間として有効利用することが可能な塵芥収集車の提供。
【解決手段】車体上に搭載された塵芥収容箱3と、塵芥収容箱3の内部に車体の前後方向に移動自在に設けられ、塵芥収容箱3の内部空間を塵芥収容空間3aとその前方空間3bとに区画する排出板17と、排出シリンダ21であり、塵芥収容箱3の内部に車体の前後斜め方向に配設され、一端が塵芥収容箱3の内部前方に軸支され、他端が排出板17に軸支され、伸縮動作により排出板17を車体の前後方向に移動させる排出シリンダ21と、排出シリンダ21の傾斜の度合を検出する近接センサ61a,61bとを有し、近接センサ61a,61bにより検出される排出シリンダ21の傾斜の度合に応じて排出シリンダ21を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収容箱の内部空間を塵芥収容空間とその前方の空間とに区画する排出板を備えた塵芥収集車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体上に搭載され、後方に後方開口部を有する塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後方開口部に傾動自在に連設される塵芥投入箱と、この塵芥投入箱の内部に装備され、塵芥を、上記後方開口部を介して上記塵芥収容箱に押し込む塵芥押込装置と、上記塵芥収容箱の内部に前方に移動自在に設けられ、塵芥収容箱の内部空間を上記塵芥押込装置により塵芥が押し込まれる塵芥収容空間とその前方の空間とに区画する排出板と、この排出板を収縮時に前方に移動させて塵芥収容空間の容積を変化させる多段式の排出シリンダとを備えた塵芥収集車が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−72903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような塵芥収集車では、塵芥収容箱の内部空間のうち、排出板の後方の塵芥収容空間のみが塵芥を収容するのに利用されている。そして、塵芥の収容量に応じて排出板を前方に移動させて塵芥収容空間の容積を拡大するが、塵芥が収容されない排出板の前方空間は排出板の移動スペースとして確保されているため、デッドスペースとなっている。
【0005】
そこで、本発明においては、排出板の前方空間に別の収容物、例えば可燃物、不燃物、発泡スチロールや空き缶などを分別して回収することが可能な塵芥収集車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塵芥収集車は、車体上に搭載され、前方の前方投入口が開口された塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後方開口部に連設され、後方投入口が開口された塵芥投入箱と、この塵芥投入箱に設けられた塵芥積込装置と、塵芥収容箱の内部に車体の前後方向に移動自在に設けられ、塵芥収容箱の内部空間を塵芥収容空間とその前方の空間とに区画する排出板と、伸縮動作により排出板を車体の前後方向に移動させる排出シリンダと、排出板の位置を検出する検出手段と、この検出手段の検出結果に基づいて排出板を途中位置で停止させる排出板停止手段とを有するものである。
【0007】
また、本発明の塵芥収集車の制御方法は、車体上に搭載され、前方に前方投入口が開口された塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後方開口部に連設され、後方投入口が開口された塵芥投入箱と、この塵芥投入箱に設けられた塵芥積込装置と、塵芥収容箱の内部に車体の前後方向に移動自在に設けられ、塵芥収容箱の内部空間を塵芥収容空間とその前方の空間とに区画する排出板と、伸縮動作により排出板を車体の前後方向に移動させる排出シリンダとを有する塵芥収集車の制御方法であって、排出板の位置を検出すること、位置検出手段の検出結果に基づいて排出板を途中位置で停止させることを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る塵芥収集車では、排出シリンダを縮退動作させて排出板を前方向に移動させる際に、排出シリンダの位置を検出し、この検出結果に基づいて排出板を途中位置で停止させることができる。これにより、排出板は、この停止位置より前方向に移動することがなくなり、排出板の前方空間を別の収容物の収容空間として確保することができる。なお、排出板の途中位置とは、排出板の最前方位置と最後方位置との間の位置をいう。
【0009】
ここで、排出シリンダは、塵芥収容箱の内部に車体の前後斜め方向に配設され、一端が塵芥収容箱の内部前方に軸支され、他端が排出板に軸支されたものであり、検出手段は、排出シリンダの傾斜の度合を検出するものであり、排出板停止手段は、検出手段により検出される排出シリンダの傾斜の度合に応じて排出シリンダを停止させるものであることが望ましい。
【0010】
これにより、塵芥収容箱の内部に車体の前後斜め方向に配設され、一端が塵芥収容箱の内部前方に軸支され、他端が排出板に軸支された排出シリンダの伸縮動作により、排出板を車体の前後方向に移動させると、その前後位置に応じて排出シリンダの傾斜角度が変化する。したがって、排出シリンダを縮退動作させて排出板を前方向に移動させる際に、排出シリンダの傾斜の度合に応じて排出シリンダを停止することで、その排出シリンダの傾斜の度合に対応する位置で排出板を停止させることができる。これにより、排出板は、この停止位置より前方向に移動することがなくなり、排出板の前方空間を別の収容物の収容空間として確保することができる。
【0011】
ここで、検出手段は、排出シリンダの端部に突設された被検出部と、この被検出部の近接を検出する近接センサとを含むものであることが望ましい。これにより、排出板を停止すべき位置に対応する排出シリンダの傾斜の度合を、近接センサで被検出部の近接により容易に検出することができ、その排出シリンダの傾斜の度合に対応する位置で排出板を停止させることができる。
【0012】
また、近接センサは、被検出部の可動範囲に対応するように位置を変えて複数配置されていることが望ましい。これにより、排出シリンダの複数の傾斜の度合を検出することができ、それぞれの傾斜の度合に対応する位置で排出板を停止させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の塵芥収集車は、複数の近接センサのうち、どの近接センサにより被検出部の近接を検出するかを選択するスイッチを有するものであることが望ましい。これにより、スイッチの選択状態に応じた近接センサにより被検出部の近接を検出して、その対応位置で排出シリンダを停止させ、排出板を停止させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
(1)排出板の位置を検出し、位置検出手段の検出結果に基づいて排出板を途中位置で停止させる構成により、排出板は、この停止位置より前方向に移動することがなくなり、排出板の前方空間を別の収容物の収容空間として確保することができる。その結果、排出板の後方空間に後方投入口より回収される収容物と、排出板の前方空間に前方投入口より回収される別の収容物とを分別して回収することが可能となり、例えば可燃物、不燃物、発泡スチロールや空き缶などを分別して回収することができる。
【0015】
(2)排出シリンダの傾斜の度合を検出し、排出シリンダの傾斜の度合に応じて排出シリンダを停止させる構成により、排出シリンダの傾斜の度合に対応する位置で排出板を停止させることができる。これにより、排出シリンダの1箇所で傾斜の度合を検出するだけで排出板の位置を検出することができ、簡単な構成で排出板を途中位置で停止させることが可能となる。
【0016】
(3)検出手段が、排出シリンダの端部に突設された被検出部と、この被検出部の近接を検出する近接センサとを含むものであることにより、簡易な構成で排出板を任意の位置で停止させることが可能となり、低コストで排出板の前方空間を別の収容物の収容空間として分別回収することが可能な塵芥収集車が得られる。
【0017】
(4)近接センサが、被検出部の可動範囲に対応するように位置を変えて複数配置されていることにより、排出シリンダの複数の傾斜の度合を検出することができ、複数の位置で排出板を停止させることが可能となり、排出板の前方空間の容積を変更可能な塵芥収集車が得られる。
【0018】
(5)複数の近接センサのうち、どの近接センサにより被検出部の近接を検出するかを選択するスイッチを有するものであることにより、スイッチの選択状態に応じて排出板を停止させることが可能となり、スイッチにより排出板の前方空間の容積を変更可能な塵芥収集車が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態における塵芥収集車の塵芥収容箱および塵芥投入箱を断面にて示す側面図である。
【図2】図1の塵芥収容箱を斜め前方からみた斜視図である。
【図3】図1の塵芥収容箱内の排出板の動作を示す側面図である。
【図4】図3のA部拡大図である。
【図5】図1の塵芥積込装置の排出板停止装置の回路図である。
【図6】図1の塵芥積込装置の油圧回路構成を示す回路図である。
【図7】図1の塵芥積込装置の上昇終了位置を説明する概略縦断面図である。
【図8】図1の塵芥積込装置の反転終了位置を説明する概略縦断面図である。
【図9】図1の塵芥積込装置の下降終了位置を説明する概略縦断面図である。
【図10】図1の塵芥積込装置の圧縮終了位置を説明する概略縦断面図である。
【図11】回転式の塵芥積込装置を示す塵芥投入箱の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の実施の形態における塵芥収集車の塵芥収容箱および塵芥投入箱を断面にて示す側面図、図2は図1の塵芥収容箱を斜め前方からみた斜視図、図3は図1の塵芥収集箱内の排出板の動作を示す側面図、図4は図3のA部拡大図である。
【0021】
図1において、塵芥収集車1の車体2上には塵芥収容箱3が搭載されている。この塵芥収容箱3の後端の後方開口部4には、塵芥投入箱5が連設されている。塵芥投入箱5は、後方開口部4の上方で投入箱支持ピン6により軸支されており、この投入箱支持ピン6を中心に傾動自在となっている。また、図2に示すように、塵芥収容箱3の前方の前壁3cには、左右に前方投入口3d,3dが設けられている。前方投入口3d,3dには、これらの前方投入口3d,3dを開閉する扉3e,3eが開閉自在に設けられている。
【0022】
塵芥投入箱5の後部には、塵芥を投入する後方投入口7が開口されている。塵芥投入箱5の内部には、圧縮式の塵芥積込装置8が装備されている。塵芥積込装置8は、塵芥投入箱5内に後方投入口7を通じて投入された塵芥を圧縮して、塵芥収容箱3内に積み込むためのものである。
【0023】
塵芥投入箱5の左右両側壁には、溝形鋼で形成された案内溝部材9が補強枠を兼ねて前方上部より後方下部に向かって敷設されている。塵芥投入箱5内には、その横幅いっぱいに広がる摺動板10が収容されている。この摺動板10の左右両測縁の上下には、案内ローラ11が回転可能に設けられている。これらの案内ローラ11は、案内溝部材9の内壁に沿って転動自在に嵌入されている。
【0024】
また、摺動板10の背面上部の左右端部にはボス部12が設けられている。このボス部12には、摺動板支持軸13が挿通されている。この摺動板支持軸13は、塵芥投入箱5の左右両側壁に形成された摺動用開口5aを越えて塵芥投入箱5の内側より外側に突出するように配置されている。
【0025】
また、塵芥投入箱5の左右両側壁からそれぞれ外側に突出した摺動板支持軸13と塵芥投入箱5の下部間には、左右それぞれ塵芥投入箱5の外側に案内溝部材9の傾斜方向に沿って配置された摺動シリンダ14がそれぞれ連結されている。この摺動シリンダ14の伸縮動作によって、摺動板10は案内溝部材9に沿って上下に往復移動する。
【0026】
摺動板10の下端には、塵芥投入箱5の横幅いっぱいに広がる圧縮板15が前後方向に揺動自在に支持されている。この圧縮板15の先端は前方に向かって若干屈曲形成されている。また、圧縮板15の左右両背面には接続部15aが突設されている。この左右それぞれの接続部15aと、摺動板10の背面上部に設けられた摺動板支持軸13の左右両端部との間には、それぞれ揺動シリンダ16が連結されている。この揺動シリンダ16の伸縮作動によって、圧縮板15は前後に揺動する。
【0027】
一方、塵芥収容箱3内には排出板17が車体2の前後方向に摺動自在に配設されている。排出板17は、塵芥収容箱3の横幅および上下高さと略同じ大きさに形成された板状体である。この排出板17によって、塵芥収容箱3の内部空間は、塵芥積込装置8により後方開口部4から積み込まれた塵芥40を収容する塵芥収容空間3aと、その前方の前方空間3bとに区画されている。
【0028】
図3に示すように、排出板17は、塵芥収容箱3内で車体2の前後方向に摺動する支持フレーム18に支持されている。支持フレーム18の左右両測縁には、排出板17の車体2の前後方向への移動をガイドするガイド部を構成する溝形鋼で形成された案内溝部材19が設けられている。一方、塵芥収容箱3の左右内側面には、この案内溝部材19とともにガイド部を構成する案内凸部材20が車体2の前後方向に延設されている。支持フレーム18の案内溝部材19の上下には、パッド37が設けられている。案内溝部材19は、このパッド37を介して案内凸部材20にガイドされて、車体2の前後方向に滑らかに摺動する。
【0029】
また、塵芥収容箱3の前方空間3bには、伸縮動作により排出板17を車体2の前後方向に移動させる排出シリンダ21が、車体2の前後斜め方向に備えられている。排出シリンダ21は、一端が塵芥収容箱3の内部前方の上部位置に軸支され、他端が排出板17に軸支されている。
【0030】
排出シリンダ21は、基部のシリンダチューブ21aと、シリンダチューブ21aの内側でシリンダチューブ21aに対して伸縮自在な第1ピストンチューブ21bと、第1ピストンチューブ21bの内側で第1ピストンチューブ21bに対して伸縮自在な第2ピストンチューブ21cと、第2ピストンチューブ21cの内側で第2ピストンチューブ21cに対して伸縮自在な第3ピストンチューブ21dとから構成される多段伸縮式のテレスコピックシリンダである。
【0031】
排出シリンダ21の下端、すなわちシリンダチューブ21aの基端(下端)は、排出板17の下方に設けられた支持部材22に、軸部材23により回動自在に軸支されている。一方、排出シリンダ21の上端、すなわち第3ピストンチューブ21dの先端(上端)は、前方空間3bの最前部に取り付けられた軸部材24により回動自在に軸支されている。この排出シリンダ21が伸長したときには排出板17を塵芥収容箱3の後方開口部4に近接させて、塵芥収容空間3aの容積を最小にする一方、排出シリンダ21が縮退することにより、塵芥収容空間3aの容積を増大変更するようになされている。
【0032】
また、本実施形態における塵芥収集車1は、排出板17を途中位置で停止させる排出板停止手段としての排出板停止装置60(図5参照。)を備えている。図4に示すように、軸部材24の上方には、排出板17の位置を検出する検出手段としての近接センサ61a,61bが設けられている。また、排出シリンダ21の上端部には、この近接センサ61a,61bにより検出する被検出部としての被検出片62が突設されている。被検出片62は、金属製の板によって略L字状に形成されている。
【0033】
被検出片62は、排出シリンダ21が伸縮することによりその傾斜の度合が変化すると、これに伴って軸部材24周りに回転する。近接センサ61a,61bは、この被検出片62の近接を検出することにより、排出シリンダ21の傾斜の度合を検出することにより、排出板17の位置を検出するものである。
【0034】
近接センサ61aは、常時閉(NC)出力タイプであり、排出板17が塵芥収容箱3の後端部から前方へ移動している間、被検出片62を検出し続け、排出板17が図3に示すXの位置に到達した際に被検出片62を検出しなくなる位置に配置されている。一方、近接センサ61bは、常時開(NO)出力タイプであり、排出板17が塵芥収容箱3の後端部から前方へ移動している間、被検出片62を検出せず、排出板17が図3に示すYの位置に到達した際に被検出片62を検出する位置に配置されている。
【0035】
ここで、図5を参照して排出板停止装置60の回路構成について説明する。図5は図1の排出板停止装置60の回路図である。
【0036】
図5において排出板位置切換スイッチ63は、排出板17を図3のX位置で停止させるか、Y位置で停止させるかを選択するスイッチ、すなわち複数の近接センサ61a,61bのうち、どの近接センサにより被検出片62を検出するかを選択するスイッチであり、塵芥収集車1の運転室内に配置されている。ソレノイド64は、後述する電磁弁29を作動させるアクチュエータである。また、図5において、65aは近接センサ61aに接続されたリレーR20のコイル、66aはリレーR20のb接点である。同様に、65bは近接センサ61bに接続されたリレーR21のコイル、66bはリレーR21のb接点である。
【0037】
次に、本実施形態における塵芥収集車1の油圧回路構成について説明する。図6は図1の塵芥収集車1の油圧回路構成を示す回路図である。
【0038】
図6に示すように、この油圧回路30では、摺動シリンダ14、揺動シリンダ16、排出シリンダ21、塵芥投入箱5のロックシリンダ27および傾動シリンダ28の5種類のシリンダをそれぞれ油圧制御している。摺動シリンダ14は、摺動板10を上下方向に摺動させるためのものである。揺動シリンダ16は、圧縮板15を車体2の前後方向に揺動させるためのものである。
【0039】
ロックシリンダ27は、塵芥投入箱5を閉じた位置でロックするためのものである。このロックシリンダ27は、塵芥処理場において塵芥収容箱3内の塵芥を廃棄する際に伸長させて、塵芥投入箱5のロックを解除し、塵芥投入箱5を開いて後方開口部4を開放することができるようになっている。傾動シリンダ28は、塵芥投入箱5を、投入箱支持ピン6を中心にして上方に傾動させて、塵芥収容箱3の後部を開放状態にするためのものである。
【0040】
各シリンダ14,16,21,27,28は、油圧配管30aを介して油圧切替部31に接続されている。この油圧切替部31は、図示しない複数の電磁弁を備えており、これらの電磁弁の開閉ポートを切り替えることにより、油圧ポンプ32から吐出された作動油が所望のシリンダに対して供給される。これにより、各シリンダ14,16,21,27,28の伸縮動作の切り替えが制御され、または動作が停止される。
【0041】
また、排出シリンダ21を動作させるための油圧配管30aの途中には、近接センサ61a,61bおよび被検出片62とともに排出板停止装置60を構成する切換弁としての電磁弁29が接続されている。電磁弁29はソレノイド64(図5参照。)への通電時には排出シリンダ21の油圧配管30aを開き、非通電時には閉じるようになっている。すなわち、排出板停止装置60は、近接センサ61a,61bおよび被検出片62により検出される排出シリンダ21の傾斜の度合に応じて排出シリンダ21を途中位置で停止させる。
【0042】
油圧回路30は、作動油を貯留する油圧タンク33を備える。油圧回路30は、油圧タンク33内の作動油を油圧ポンプ32で吸い上げて供給側の油圧配管30bに流通させ、油圧切替部31に供給されるように構成されている。そして、油圧切替部31を通過した作動油は、回収側の油圧配管30cに流通させ、リターンフィルタ34で濾過された後、油圧配管30c’を流通させて、再び油圧タンク33に回収されるようになっている。
【0043】
また、油圧切替部31には、油圧切替部31を切り替え制御するためのコントローラ35が接続されている。このコントローラ35は運転席内に設けられている。また、このコントローラ35には、塵芥積込装置8の動作を制御するための操作装置36が接続されている。図示しないが、操作装置36は、塵芥投入箱5の後方投入口7の左側方に設けられている。
【0044】
操作装置36には、摺動板10と圧縮板15とを順次反転、下降、圧縮および上昇させて積込動作させる積込指示手段としての積込指示ボタンと、摺動板10を下降させる下降指示ボタンと、摺動板10を上昇させる上昇指示ボタンと、圧縮板15を反転動作させる反転指示ボタン等の複数のプッシュ式のスイッチが設けられている。
【0045】
操作装置36は、積込指示ボタンが押し込まれた際には、コントローラ35に対して、摺動板10と圧縮板15とを順次反転、下降、圧縮および上昇させて積込動作させる積込信号を出力する。同様に、操作装置36は、下降指示ボタンまたは上昇指示ボタンが押し込まれた際には、コントローラ35に対して、各ボタンが押し込まれている間、それぞれ摺動板10を下降または上昇させる下降信号または上昇信号を出力する。
【0046】
また、操作装置36は、反転指示ボタンが押し込まれた際には、コントローラ35に対して、圧縮板15を反転動作させる反転信号を出力する。コントローラ35は、これらの操作装置36から出力された各種信号を受信すると、油圧切替部31に対し、各種信号に応じて電磁弁の開閉ポートを切り替えて、摺動シリンダ14および揺動シリンダ16を伸縮動作、または停止させるように制御する制御信号を出力する。
【0047】
次に、塵芥積込装置8の運転動作について図7から図10を参照して説明する。図7は塵芥積込装置8の上昇終了位置を説明する概略縦断面図、図8は塵芥積込装置8の反転終了位置を説明する概略縦断面図、図9は塵芥積込装置8の下降終了位置を説明する概略縦断面図、図10は塵芥積込装置8の圧縮終了位置を説明する概略縦断面図である。なお、図7〜図10において、簡略化のために、摺動シリンダ14は省略している。
【0048】
図7に示すように、摺動シリンダ14および揺動シリンダ16がいずれも伸長して摺動板10が上昇終了位置(最上位置)にある状態で、後方投入口7を通して塵芥40を塵芥投入箱5内に投入し、積込指示ボタンを押し込み操作する。積込指示ボタンによる積込指示がなされると、操作装置36はコントローラ35に対して前述の積込信号を出力する。そして、コントローラ35は、この積込信号を受けて、以下の積込動作を行うように油圧切替部31の動作を制御する。
【0049】
まず、図7に示す状態で、揺動シリンダ16が縮退作動して圧縮板15が反転作動し、反転終了位置(図8参照。)に達する(反転工程)。この後、摺動シリンダ14が縮退作動して摺動板10が下降し、これに伴って圧縮板15が下降する(下降工程)。そして、圧縮板15が下降終了位置(図9参照。)に達すると、揺動シリンダ16を伸長させて圧縮板15を前方に揺動させ、圧縮工程に移行する。
【0050】
そして、圧縮板15が圧縮終了位置(図10参照。)まで揺動する(圧縮行程)と、摺動シリンダ14を伸長させて圧縮板15を上昇させる(上昇工程)。この圧縮板15が上昇終了位置に達すると(図7参照。)、一連の積込動作を終了する。これにより反転、下降、圧縮、上昇の各工程を1サイクルとして塵芥積込動作を繰り返して行うことができる。
【0051】
なお、上記のように、塵芥収容箱3内への塵芥40を積み込み開始する際には、排出シリンダ21を伸長させて、排出板17を塵芥収容箱3内の最後方位置に配置しておく。そして、塵芥積込装置8により積込まれる塵芥40が排出板17を押圧する力が所定以上に達した際に、排出シリンダ21を縮退させることで、排出板17が徐々に前方に移動するようにしている。このような排出板17の移動動作によって、塵芥40を圧縮しながら塵芥収容箱3内へ積み込むことができるようになっている。
【0052】
また、塵芥収容箱3が塵芥40で満杯状態になったときには、塵芥投入箱5を傾動して塵芥収容箱3の後方開口部4を開放し、排出シリンダ21を伸長させることで、塵芥収容箱3の前部に位置する排出板17を後方に移動させ、塵芥収容箱3内に収容された塵芥40を排出することができるようになっている。
【0053】
そして、本実施形態における塵芥収集車1では、排出板17を途中位置X,Yで停止させることにより、排出板17の前方の前方空間3bを塵芥収容空間3aとは別の回収物の収容空間として確保することが可能となっている。この収容空間の容積は、排出板位置切換スイッチ63により選択することが可能である。以下に、排出板位置切換スイッチ63の選択による排出板17の動作について説明する。
【0054】
図5において、排出板位置切換スイッチ63が近接センサ61a側に選択されている場合、近接センサ61aが作動している。この近接センサ61aは、常時閉出力タイプであり、排出板17が塵芥収容箱3の後端部から前方へ移動している間、被検出片62を検出し続けるので、リレーR20のコイル65aには通電されない。したがって、b接点66aは閉じたままであり、ソレノイド64が作動しているので、電磁弁29は開いており、排出シリンダ21は前述のように縮退可能である。
【0055】
そして、排出板17が図3に示すXの位置に到達すると、近接センサ61aは被検出片62を検出しなくなり、リレーR20のコイル65aに通電される。これにより、b接点66aが開き、ソレノイド64が作動しなくなるので、電磁弁29が閉じ、排出シリンダ21が停止して動作しなくなる。したがって、排出板17は図3に示すXの停止位置よりも前方へ移動することがなく、Xの位置の排出板17の前方空間3bが別の回収物の収容空間として確保される。
【0056】
一方、排出板位置切換スイッチ63が近接センサ61b側に選択されている場合、近接センサ61bが作動している。この近接センサ61bは、常時開出力タイプであり、排出板17が塵芥収容箱3の後端部から前方へ移動している間、被検出片62を検出しないので、リレーR21のコイル65bには通電されない。したがって、b接点66bは閉じたままであり、ソレノイド64が作動しているので、電磁弁29は開いており、排出シリンダ21は前述のように縮退可能である。
【0057】
そして、排出板17が図3に示すYの位置に到達すると、近接センサ61bは被検出片62を検出し、リレーR21のコイル65bに通電される。これにより、b接点66bが開き、ソレノイド64が作動しなくなるので、電磁弁29が閉じ、排出シリンダ21が停止して動作しなくなる。したがって、排出板17は図3に示すYの停止位置よりも前方へ移動することがなく、Yの位置の排出板17の前方空間3bが別の回収物の収容空間として確保される。
【0058】
以上のように、本実施形態における塵芥収集車1では、排出板17の前後位置の検出を、排出シリンダ21の傾斜の度合を検出することにより行い、排出シリンダ21の傾斜の度合に応じて排出シリンダ21を停止させている。したがって、この塵芥収集車1では、排出シリンダ21の傾斜の度合に対応する排出板17の位置XまたはYを予め設定しておき、これらの位置X,Yを排出板位置切換スイッチ63により選択して排出板17を停止させることができる。
【0059】
これにより、排出板17は、この停止位置より前方向に移動することがなくなり、この排出板17の前方空間3bは、排出板17の後方の塵芥収容空間3aと排出板17により区画されているので、後方投入口7から塵芥収容空間3aに収容される塵芥とは別の収容物、例えば、可燃物、不燃物、発泡スチロールや空き缶などを前方投入口3d,3dから分別して収容することが可能である。
【0060】
また、本実施形態における塵芥収集車1では、排出シリンダ21の傾斜の度合を検出する検出手段が、排出シリンダ21の端部に突設された被検出片62と、この被検出片62の近接を検出する近接センサ61a,61bとにより、簡易な構成で実現しており、低コストで排出板17の前方空間3bを別の収容空間として有効利用することが可能となっている。
【0061】
また、本実施形態における塵芥収集車1では、近接センサ61a,61bが、被検出片62の可動範囲に対応するように位置を変えて複数配置されているので、複数の停止位置を設定して排出板17を停止させることが可能となっており、収容するものの量に応じて、排出板17の前方空間3bの容積を排出板位置切換スイッチ63により容易に変更することが可能である。なお、本実施形態においては、排出板17の停止位置を2カ所で設定しているが、この設定数は変更しても良い。
【0062】
また、本実施形態における塵芥収集車1では、近接センサ61a,61bおよび被検出片62を排出シリンダ21の上端部に設けているが、逆に排出シリンダ21の下端部に設けることも可能である。また、本実施形態においては、排出シリンダ21の傾斜の度合を検出することにより排出板17の前後位置を検出しているが、塵芥収容箱3内に排出板17の位置を直接検出する位置センサを設けて検出するようにすることも可能である。
【0063】
また、本実施形態においては、圧縮式の塵芥積込装置を備えた塵芥収集車について説明したが、回転式の塵芥積込装置を備えた塵芥収集車にも適用可能である。図11は回転式の塵芥積込装置を示す塵芥投入箱の概略縦断面図である。
【0064】
図11に示すように、回転式の塵芥積込装置50は、車体2の前後方向に揺動する押込板51と、この押込板51の下端付近に回転中心を有して正逆転する回転板52とを備えている。押込板51は、塵芥投入箱5の幅方向全体に亘って延設され、かつ後方開口部4に対向するように配設されている。この押込板51の上部は、塵芥投入箱5の左右両側壁の中央付近に、中心軸51aよりも上方に延びる延設部51bが設けられている。
【0065】
延設部51bの先端には、左右一対の押込シリンダ53の先端が連設されている。押込シリンダ53は、その基端が投入箱支持ピン6に回動自在に支持されている。この押込シリンダ53の伸縮動作により、押込板51が中心軸51a周りに車体2の前後方向に揺動するようになっている。
【0066】
一方、回転板52は、押込板51の下側に設けられている。回転板52は、押込板51の下端付近に回転中心としての回転軸52aを有し、塵芥投入箱5の断面略半円弧状に形成された底壁54に沿って回転軸52a周りに回転するように構成されている。また、回転軸52aの一方は、正逆回転可能なモータ(図示せず。)に減速機構を介して駆動連結されており、このモータにより回転力がトルクアップされた状態で、モータと同期して正逆回転するように構成されている。
【0067】
このような構成の回転式の塵芥積込装置50においては、後方投入口7を通して塵芥投入箱5内に投入された塵芥は、回転板52が正回転(図11において右回り)することにより掻き集められ、回転板52の先端が後方開口部4の下縁の対応位置まで持ち上げられる。そして、押込板51が後方位置から前方位置へ揺動することにより、回転板52上の塵芥が後方開口部4を経て塵芥収容箱3内へ押し込まれる。
【0068】
そして、前述と同様に、塵芥積込装置50により積込まれる塵芥40が排出板17を押圧する力が所定以上に達した際に、排出シリンダ21を縮退させることで、排出板17が徐々に前方に移動する。この排出板17の移動動作によって、塵芥40を塵芥収容箱3内へ積み込むことができるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、塵芥収集箱の内部空間に塵芥を積み込んで収集するための塵芥収集車として有用である。特に、本発明は、排出板の前方空間に別の収容物、例えば可燃物、不燃物、発泡スチロールや空き缶などを分別して回収することが可能な塵芥収集車として好適である。
【符号の説明】
【0070】
1 塵芥収集車
2 車体
3 塵芥収容箱
3a 塵芥収容空間
3b 前方空間
3c 前壁
3d 前方投入口
3e 扉
4 後方開口部
5 塵芥投入箱
5a 摺動用開口
6 投入箱支持ピン
7 後方投入口
8 塵芥積込装置
9 案内溝部材
10 摺動板
11 案内ローラ
12 ボス部
13 摺動板支持軸
14 摺動シリンダ
15 圧縮板
15a 接続部
16 揺動シリンダ
17 排出板
18 支持フレーム
19 案内溝部材
20 案内凸部材
21 排出シリンダ
21a シリンダチューブ
21b,21c,21d,21e ピストンチューブ
22 支持部材
23,24 軸部材
27 ロックシリンダ
28 傾動シリンダ
29 電磁弁
30 油圧回路
30a,30b,30c,30c’ 油圧配管
31 油圧切替部
32 油圧ポンプ
33 油圧タンク
34 リターンフィルタ
35 コントローラ
36 操作装置
37 パッド
40 塵芥
50 塵芥積込装置
51 押込板
51a 中心軸
51b 延設部
52 回転板
52a 回転軸
53 押込シリンダ
54 底壁
60 排出板停止装置
61a,61b 近接センサ
62 被検出片
63 排出板位置切換スイッチ
64 ソレノイド
65a,65b コイル
66a,66b b接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上に搭載され、前方に前方投入口が開口された塵芥収容箱と、
この塵芥収容箱の後方開口部に連設され、後方投入口が開口された塵芥投入箱と、
この塵芥投入箱に設けられた塵芥積込装置と、
前記塵芥収容箱の内部に前記車体の前後方向に移動自在に設けられ、前記塵芥収容箱の内部空間を塵芥収容空間とその前方の空間とに区画する排出板と、
伸縮動作により前記排出板を前記車体の前後方向に移動させる排出シリンダと、
前記排出板の位置を検出する検出手段と、
この検出手段の検出結果に基づいて前記排出板を途中位置で停止させる排出板停止手段と
を有する塵芥収集車。
【請求項2】
前記排出シリンダは、前記塵芥収容箱の内部に前記車体の前後斜め方向に配設され、一端が前記塵芥収容箱の内部前方に軸支され、他端が前記排出板に軸支されたものであり、
前記検出手段は、前記排出シリンダの傾斜の度合を検出するものであり、
前記排出板停止手段は、前記検出手段により検出される前記排出シリンダの傾斜の度合に応じて前記排出シリンダを停止させるものである
請求項1記載の塵芥収集車。
【請求項3】
前記検出手段は、
前記排出シリンダの端部に突設された被検出部と、
この被検出部の近接を検出する近接センサと
を含むものである請求項2記載の塵芥収集車。
【請求項4】
前記近接センサは、前記被検出部の可動範囲に対応するように位置を変えて複数配置されていることを特徴とする請求項3記載の塵芥収集車。
【請求項5】
前記複数の近接センサのうち、どの近接センサにより前記被検出部の近接を検出するかを選択するスイッチを有する請求項4記載の塵芥収集車。
【請求項6】
車体上に搭載され、前方に前方投入口が開口された塵芥収容箱と、
この塵芥収容箱の後方開口部に連設され、後方投入口が開口された塵芥投入箱と、
この塵芥投入箱に設けられた塵芥積込装置と、
前記塵芥収容箱の内部に前記車体の前後方向に移動自在に設けられ、前記塵芥収容箱の内部空間を塵芥収容空間とその前方の空間とに区画する排出板と、
伸縮動作により前記排出板を前記車体の前後方向に移動させる排出シリンダと
を有する塵芥収集車の制御方法であって、
前記排出板の位置を検出すること、
前記位置検出手段の検出結果に基づいて前記排出板を途中位置で停止させること
を含む塵芥収集車の制御方法。
【請求項7】
前記排出シリンダが、前記塵芥収容箱の内部に前記車体の前後斜め方向に配設され、一端が前記塵芥収容箱の内部前方に軸支され、他端が前記排出板に軸支されたものであり、
前記排出板の位置の検出は、前記排出シリンダの傾斜の度合を検出することであり、
前記排出板の途中位置での停止は、前記排出シリンダの傾斜の度合に応じて前記排出シリンダを停止させることである
請求項6記載の塵芥収集車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−222093(P2010−222093A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70500(P2009−70500)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】