説明

塵芥収集車の消火装置

【課題】内部の塵芥による噴射ノズルの損傷を防止することができるとともに、塵芥による悪影響を受けずに消火剤を良好に噴射することができる塵芥収集車の消火装置を提供する。
【解決手段】車体上に搭載された塵芥収容箱3と、この塵芥収容箱3の後方開口部に連接されるとともに、内部に塵芥積込装置を装備した塵芥投入箱とを備えた塵芥収集車において、塵芥収容箱3と塵芥投入箱との少なくとも一方にはその壁面に内部に通じる開口35が形成されるとともに、開口35を覆うようにして取付ボックス32が設けられ、取付ボックス32にはその内部に消火剤を噴射する噴射ノズル36が開口35と所定距離を隔てて配置されている。噴射ノズル36は、開口35の側方に且つ開口35から所定距離を隔てて配置されている。取付ボックス32の側面には、噴射ノズル36から噴射された消火剤を開口35に導く傾斜面33aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収集車において、塵芥を収容する塵芥収容箱内などで発生した火災を消火するための消火装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体上に搭載された塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後方開口部に連接されるとともに内部に塵芥積込装置を装備した塵芥投入箱とを備え、塵芥投入箱内に投入した塵芥を塵芥積込装置により圧縮しながら塵芥収容箱に積込むようにした塵芥収集車が提供されている。
【0003】
そして、この塵芥収集車には、塵芥収容箱内や塵芥投入箱内で塵芥が発火して火災を起こした場合に当該火災を消火する消火装置が設けられている。具体的には、塵芥収容箱や塵芥投入箱にこれら塵芥収容箱や塵芥投入箱内に臨んで噴射ノズルを設け、この噴射ノズルから不燃性ガスなどの消火剤を塵芥収容箱や塵芥投入箱内に噴射することで、火災を消火するようにしていた(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3634254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の消火装置では、噴射ノズルが塵芥収容箱や塵芥投入箱内に直接露出した状態で配置されているため、内部の塵芥が直接接触することになり、これにより噴射ノズルの損傷や消火剤の噴射を阻害して噴射不良を引き起こすなどの悪影響を及ぼすという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、内部の塵芥による噴射ノズルの損傷を防止することができるとともに、塵芥による悪影響を受けずに消火剤を良好に噴射することができる塵芥収集車の消火装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明の塵芥収集車の消火装置は、車体上に搭載された塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後方開口部に連接されるとともに、内部に塵芥積込装置を装備した塵芥投入箱とを備えた塵芥収集車において、前記塵芥収容箱と塵芥投入箱との少なくとも一方にはその壁面に内部に通じる開口が形成されるとともに、この開口を覆うようにして取付ボックスが設けられ、当該取付ボックスには、その内部に消火剤を噴射する噴射ノズルが上記開口と所定距離を隔てて配置されたものである。
【0007】
請求項2に係る発明の塵芥収集車の消火装置は、前記噴射ノズルが、前記開口の側方に且つ当該開口から所定距離を隔てて配置されたものである。
【0008】
請求項3に係る発明の塵芥収集車の消火装置は、前記取付ボックスの側面には、前記噴射ノズルから噴射された消火剤を前記開口に導く傾斜面が形成されたものである。
【0009】
請求項4に係る発明の塵芥収集車の消火装置は、前記取付ボックスには、着脱自在もしくは開閉自在な蓋体が設けられたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、噴射ノズルを開口と所定距離を隔てて配置したことで、噴射ノズルへの塵芥収容箱内に収容された塵芥の接触を確実に防止することができ、これにより上記塵芥による噴射ノズルの損傷を防止することができるとともに、噴射ノズルによる炭酸ガスの噴射に悪影響を及ぼすのを避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、塵芥収集車の概略の構成を示している。
【0013】
図1において、1は塵芥収集車で、車体2上に塵芥収容箱3が載置されている。この塵芥収容箱3の後方開口部4には、その上方で枢支5された塵芥投入箱6が連接されており、この塵芥投入箱6は、塵芥収容箱3と塵芥投入箱6との間に装設された図示しない傾動シリンダにより枢支5を以て傾動自在に構成されている。
【0014】
また、塵芥投入箱6の後部には投入口7が開口されるとともに、その内部には塵芥積込装置Aが装備されている。
【0015】
塵芥積込装置Aは、塵芥投入箱6内の塵芥を圧縮して塵芥収容箱3内に詰め込むためのもので、以下、この塵芥積込装置Aの構成について説明する。
【0016】
塵芥投入箱6の両側壁には溝型鋼で形成された案内溝部材8が補強枠を兼ねて前方上部から後方下部に向かって傾斜して配設されている。
【0017】
この塵芥投入箱6内にはその横幅一杯に広がる摺動板10が収容され、この摺動板10の両側縁の上下には案内ローラ11が軸着され、これらの案内ローラ11は前記案内溝部材8の内壁に沿って摺動自在に嵌合されている。
【0018】
前記摺動板10の背面上部にはブラケット12aを介して枢軸12が軸支されており、この枢軸12は摺動板10の摺動距離に合致して塵芥投入箱6の側壁に形成された図示しない切欠きを越えて塵芥投入箱6の内側より外側に突出して配置されている。
【0019】
前記塵芥投入箱6の側壁外側には、第1伸縮シリンダ13が案内溝部材8の傾斜方向に沿って配設されており、この第1伸縮シリンダ13の両端部が塵芥投入箱6の側壁を越えて外側に突出した枢軸12と塵芥投入箱6の下部とに連結されている。従って、第1伸縮シリンダ13の伸縮作動によって摺動板10を案内溝部材8に沿って往復移動させることができる。
【0020】
また、前記摺動板10の下端には、塵芥投入箱6の横幅一杯に広がる押込板15の基端部が前後に揺動自在に軸支されている。
【0021】
前記押込板15の先端は前方に向かって若干屈折形成されている。前記押込板15の背面に突設した突片15aと前記摺動板10の背面上部に設けられた枢軸12間には、第2伸縮シリンダ14の両端部が連結され、この第2伸縮シリンダ14の伸縮作動によって前記押込板15を前後に揺動させることができる。
【0022】
一方、塵芥収容箱3の底面下方には、固縛シリンダ17の基端部が枢支されており、この固縛シリンダ17の先端部が塵芥収容箱3の下部に枢支された固縛爪18に連結されている。固縛シリンダ17は、その伸縮作動により固縛爪18を前後に揺動させることで、当該固縛爪18を塵芥投入箱6の前面に固設したUボルト19に係脱させるようにしており、固縛爪18をUボルト19に係止することで塵芥投入箱6を塵芥収容箱3に対して固縛するようにしている。
【0023】
さらに、前記塵芥収容箱3内には排出板20が前後方向に摺動自在に配設されている。排出板20は、塵芥収容箱3の横幅及び上下高さと略同じ大きさに形成された板状体であり、図示しない排出シリンダの伸縮動作により塵芥収容箱3内を前後に摺動する。
【0024】
そして、このように構成された塵芥収集車は次のようにして塵芥を塵芥収容箱内に積込んで行く。
【0025】
まず、図1に示す押込板15は、塵芥の詰め込み終了時もしくは塵芥投入時の状態を示しており、この状態では第1、第2伸縮シリンダ13、14はいずれも伸長され、摺動板10は上昇終了位置に、押込板15は圧縮終了位置にある。
【0026】
この状態で図示しない始動スイッチをON操作すると塵芥積込動作を開始する。具体的には、第2伸縮シリンダ14を縮退させ、これにより押込板15が図1において反時計回りの方向に回動し、当該押込板15のプレス面が略水平になる位置まで反転する(反転行程)。
【0027】
そして、押込板15が反転終了位置に達すると第1伸縮シリンダ13を縮退させる。この第1伸縮シリンダ13の縮退により摺動板10は案内溝部材8に沿って下降し、これに連設されている押込板15もそのプレス面を略水平状態に保持したまま下降し、押込板15と塵芥投入箱6の底面の円弧面との間で塵芥を押し潰す(下降行程)。
【0028】
次に、押込板15が下降終了位置に達すると第2伸縮シリンダ14を伸長させる。この結果、押込板15は、そのプレス面が略垂直状態になる位置まで図1において時計回りの方向に回動し、前工程で押し潰された塵芥を押込板15のプレス面と塵芥投入箱6の底面の平坦面間で圧縮する(圧縮行程)。
【0029】
そして、押込板15が圧縮終了位置に達すると第1伸縮シリンダ13を伸長させる。この結果、押込板15はそのプレス面が略垂直状態を保持したまま上昇し、前行程にて圧縮した塵芥を塵芥収容箱3内に詰め込む(上昇行程)。
【0030】
つまり、上述した反転行程、下降行程、圧縮行程、上昇行程を順次行うことで、押込板15によって塵芥投入箱6内に投入した塵芥を塵芥収容箱3に収容していく。
【0031】
ところで、このようにして構成された塵芥収集車1には消火装置30が設けられている。
【0032】
消火装置30は、図2に示すように、塵芥収容箱3の前面に設けられた貯留部31と、噴射ノズル36(図3参照)を有する取付ボックス32とを備えている。
【0033】
貯留部31は、噴射ノズル36から塵芥収容箱3内に噴射する不燃性ガスを貯留した1本乃至複数本(本例では2本)のボンベ31aから構成されている。上記不燃性ガスとしては、例えば二酸化炭素ガス(炭酸ガス)の他、ヘリウムやアルゴン、窒素などが用いられる。
【0034】
取付ボックス32は、塵芥収容箱3上面の後部寄りに左右に一対設けられており、この取付ボックス32に後述する噴射ノズル36が取付けられている。
【0035】
具体的には、図3に示すように、上記取付ボックス32を設ける塵芥収容箱3の上面には内部に通じる開口35が形成されており、この開口35を覆うようにして取付ボックス32が設けられている。
【0036】
取付ボックス32は、図3に示すように、ボックス本体33と、このボックス本体33に着脱自在な蓋体34とで構成されている。
【0037】
ボックス本体33は、図3及び図4に示すように、底面に形成した通孔33cを通じて前記開口35を囲むようになされた平面視矩形状で且つ上面が開口された所定高さの箱体であって、車両を基準にした場合の後部側底面に上記通孔33cが形成されており、この通孔33cが開口35と合致するように配設されている。そして、この後部側の側面は途中部から上端部にかけて内方に傾斜した傾斜面33aに形成されている。一方、開口35から所定距離を隔てた側方となる前部側の側面33bには噴射ノズル36が配設されている。
【0038】
噴射ノズル36は、その噴射部36aがボックス本体33内に突出するようにして上記側面33bに貫通した状態で且つ上記傾斜面33aと所定の距離を隔てて対峙するように配設されており、前記貯留部31のボンベ31aに例えば銅製の管体37によって連通されている。
【0039】
前記蓋体34は、前記ボックス本体33の上面開口を閉塞するためのもので、図5及び図6に示すように水平板34aと垂直板34bとによってL字状に形成されている。
【0040】
上記水平板34aはボックス本体33の上面開口を覆う部位である。従って、垂直板34bに形成された挿通孔34cを前記噴射ノズル36に通して当該垂直板34bを前記側面33bの内面に沿って配置しながら、まず水平板34aでボックス本体33の上面開口を閉塞する。そして、この状態でボックス本体33側の上面に固設されたナット38aに蓋体34の外側からボルトなどのネジ部材39螺入するとともに、蓋体34側の垂直板34bに固設されたナット38bにボックス本体33の外側から上記ネジ部材39を螺入することで(図3参照)、蓋体34をボックス本体33に固定することができる。この場合、内部への雨水などの浸入を防止するためにボックス本体33と蓋体34との接合部分にはシーリングを施すようにしている。
【0041】
また、塵芥収容箱3の側部前側下方にはスイッチボックス40(図2参照)が設けられている。このスイッチボックス40には図示しないが作動スイッチが設けられており、火災発生時にこの作動スイッチを作業者がON操作することによって、各ボンベ31aから噴射ノズル36に炭酸ガスを圧送し、当該噴射ノズル36からこの炭酸ガスを噴射するようにしている。
【0042】
従って、例えば塵芥収容箱3内で火災が生じた場合には、作動スイッチのON操作によってボンベ31aの炭酸ガスは、取付ボックス32内において所定の距離を隔てて配置されている傾斜面33aに向かって噴射ノズル36から噴射され、この傾斜面33aに当たって下方に導かれ、通孔33c、開口35を通じて塵芥収容箱3内に噴射され、これによって火災を迅速に消火することができる。つまり、傾斜面33aは、噴射ノズル36から噴射した炭酸ガスを開口35を通じて塵芥収容箱3内に導くためのガイドになっている。
【0043】
このように噴射ノズル36を取付ボックス32に設けたことによって、この噴射ノズル36への塵芥収容箱3内に収容された塵芥の接触を確実に防止することができる。これにより上記塵芥による噴射ノズル36の損傷を防止することができるとともに、噴射ノズル36による炭酸ガスの噴射に悪影響を及ぼすのを避けることができるので、火災時には噴射ノズル36から炭酸ガスを塵芥収容箱3内に良好に噴射して消火することができる。
【0044】
図7は、消火装置の他の例を示している。
【0045】
この消火装置30は、噴射ノズル36を前記開口35に対して上方に所定距離を隔てて配置したものである。
【0046】
具体的には、底面が無い箱状体に形成されたボックス本体33の上面に、噴射ノズル36の噴射部36aが開口35から上方に所定距離隔てて配置されるように当該ボックス本体33の内部に突出して配置されている。
【0047】
また、このボックス本体33には、例えば当該ボックス本体33の側面に形成された開口41を開閉自在な蓋体40が設けられており、この開口41を通じてボックス本体33内のメンテナンス等を行うようにしている。
【0048】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれに限定されることなく、その範囲内において種々設計変更可能である。
【0049】
例えば、本例では噴射ノズル36を備えた取付ボックス32を塵芥投入箱6側に設けたものについて説明したが、取付ボックス32を塵芥投入箱6側に、または塵芥収容箱3と塵芥投入箱6の両方に設けてもよい。
【0050】
また、塵芥積込装置Aは本例のような構造に限らず、塵芥投入箱の底部に設けた回転板と、この回転板の上方に前後に揺動自在に設けた揺動板を備え、これら回転板の回転動作と揺動板の揺動動作とによって塵芥を塵芥収容箱に詰め込むタイプのものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】塵芥収集車の消火装置を示す一部破断の側面図である。
【図2】塵芥収集車への消火装置の配設状態を示す概略の平面図である。
【図3】噴射ノズルを設けた取付ボックスを示す側面図である。
【図4】取付ボックスのボックス本体を示す平面図である。
【図5】取付ボックスの蓋体を示す側面図である。
【図6】同じく蓋体を示す正面図である。
【図7】消火装置の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 塵芥収集車
2 車体
3 塵芥収容箱
4 後方開口部
6 塵芥投入箱
30 消火装置
32 取付ボックス
33a 傾斜面
34 蓋体
35 開口
36 噴射ノズル
40 蓋体
A 塵芥積込装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上に搭載された塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後方開口部に連接されるとともに、内部に塵芥積込装置を装備した塵芥投入箱とを備えた塵芥収集車において、
前記塵芥収容箱と塵芥投入箱との少なくとも一方にはその壁面に内部に通じる開口が形成されるとともに、この開口を覆うようにして取付ボックスが設けられ、当該取付ボックスには、その内部に消火剤を噴射する噴射ノズルが上記開口と所定距離を隔てて配置されたことを特徴とする塵芥収集車の消火装置。
【請求項2】
前記噴射ノズルは、前記開口の側方に且つ当該開口から所定距離を隔てて配置されたことを特徴とする請求項1記載の塵芥収集車の消火装置。
【請求項3】
前記取付ボックスの側面には、前記噴射ノズルから噴射された消火剤を前記開口に導く傾斜面が形成されたことを特徴とする請求項2記載の塵芥収集車の消火装置。
【請求項4】
前記取付ボックスには、着脱自在もしくは開閉自在な蓋体が設けられたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の塵芥収集車の消火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−153516(P2007−153516A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349696(P2005−349696)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】