説明

塵芥収集車

【課題】塵芥収容箱に収容した塵芥から生じた汚水を回収、貯留し、路面の傾斜に関わらず排出することが可能な塵芥収集車の提供。
【解決手段】車体上に車体後方の傾動軸9を中心に傾動可能に搭載され、後方開口部4を有する塵芥収容箱3と、後方開口部4に連設され、後方開口部4の上方に傾動自在に軸支された塵芥投入箱5とを備える塵芥収集車であって、塵芥収容箱3が、塵芥を収容する塵芥収容室10と、塵芥収容室10の前方側に車体幅方向に延設され、底面に開口を設けた集水溝13と、塵芥収容室10の下方に、集水溝13に集水された汚水を収容する汚水収容室11とを有し、汚水収容室11が、汚水収容室11の後方壁面に汚水を排出する汚水排出口15を有し、汚水排出口15には開閉自在なドレン弁17が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収容箱に収容した塵芥から生じる汚水を回収、貯留し、排出することが可能な塵芥収集車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塵芥収容箱内の塵芥から出る汚水を回収し、貯留する汚水貯留装置を備えた塵芥収集車が知られている。例えば、特許文献1には、床板の中央部分に汚水が貯留される凹部が形成されるとともに、塵芥収容箱の前方に汚水貯留部と兼用に構成された断面口形状の補強部材が塵芥収容箱の前方横方向に延びて配置された塵芥収集車が記載されている。この塵芥収集車では、塵芥収容箱内に圧縮収納された塵芥から出る汚水を凹部に貯留し、さらに汚水貯留部の後部に穿設された穴を通じて汚水貯留部内と連通するようになっている。
【0003】
そして、汚水貯留部に貯留された汚水は必要に応じて汚水貯留部の左右側面の開口部の少なくとも一方の蓋の止金具を外すことにより、汚水貯留部の内部を開放して適宜外部へ排出することができるようになっている。なお、特許文献1には、デッキ形状がフラットタイプの場合には、床板は上床と同一平面状に形成されており、汚水貯留部の上部に汚水回収用の多数の穴を穿設すれば良いことも記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、塵芥収容箱内が隔壁によって上層収容室と下層収容室とに区画されており、塵芥から発生した汚水が、隔壁に全体に渡って形成された複数の排水孔を通って下層収容室に至り、下層収容室に貯留される塵芥収集車が記載されている。なお、この塵芥収集車は、下層収容室の前方の底面に水抜き孔が形成されており、この水抜き孔に連結されたパイプおよびバルブから下層収容室内の汚水を外部に排出できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−31401号公報
【特許文献2】特開2003−160205号公報(段落0015〜0017、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の塵芥収集車では、塵芥収容箱の前方の汚水貯留部に貯留された汚水は、この汚水貯留部の左右側面の開口部から排出するようになっているが、汚水は塵芥処理場の床面に垂れ流されており、塵芥処理場に汚水を回収する設備が必要になる。また、この汚水貯留部は小形であるので、汚水貯留部より床板に溢れ出る。また、この汚水排出時に塵芥収集車が停車している路面の傾斜によっては、汚水貯留部の汚水の一部を排出できないという問題がある。
【0007】
特許文献2に記載の塵芥収集車では、塵芥処理場でごみを排出すると同時に汚水も排出され、排出ごみに水分を含ませることになる。その結果、ごみを燃焼処分する際の燃焼効率が悪く、余分に重油などの燃料が必要となる。また、下層収容室前方の水抜き孔より汚水を排出することも可能であるが、塵芥処理場の路面の傾斜によっては、下層収容室の底面に形成された水抜き孔の位置へ汚水をうまく集められず、貯留された汚水の一部を排出できないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明においては、塵芥収容箱に収容した塵芥から生じた汚水を回収、貯留し、路面の傾斜に関わらず排出することが可能な塵芥収集車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の塵芥収集車は、車体上に車体後方の傾動軸を中心に傾動可能に搭載され、後方開口部を有する塵芥収容箱と、後方開口部に連設され、後方開口部の上方に傾動自在に軸支された塵芥投入箱と、塵芥投入口に搭載され、投入された塵芥を塵芥収容箱に積み込む塵芥積込装置とを備える塵芥収集車であって、塵芥収容箱が、塵芥を収容する塵芥収容室と、塵芥収容室の前方側に車体幅方向に延設され、底面に開口を設けた集水溝と、塵芥収容室の下方に、集水溝に集水された汚水を収容する汚水収容室とを有し、汚水収容室が、汚水収容室後方の壁面に汚水を排出する汚水排出口を有し、汚水排出口には、開閉自在なドレン弁が接続されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の塵芥収集車では、塵芥は塵芥収容箱の塵芥収容室に収集され、塵芥から生じた汚水は集水溝の底面の開口を通じて汚水収容室内に回収、貯留される。塵芥収容室に収集された塵芥は、塵芥収容箱を車体後方の傾動軸を中心に傾動(ダンプ動作)することで排出される。一方、汚水収容室内に貯留された汚水は、同様にダンプ動作し、汚水排出口に接続されたドレン弁を開くことで、この汚水収容室後方の壁面の汚水排出口から排出することができる。
【0011】
ここで、集水溝の上には、塵芥と汚水とを分離し、かつ取り付けおよび取り外し自在な板状の蓋体を有することが望ましい。この蓋体により塵芥収容室内の塵芥が集水溝内に侵入するのを防止することができるとともに、容易に蓋体を取り外して清掃した後、再び取り付けることができるため、蓋体による塵芥と汚水との分離性能を維持することができる。
【0012】
また、汚水収容室後方の壁面は、汚水排出口に向かって車体前方側から車体後方側へ傾斜させ、汚水排出口に、車体側方まで汚水を導く汚水ガイドパイプが連通され、汚水ガイドパイプの先端部に、ドレン弁を備えたものであることが望ましい。これにより、塵芥収容箱を車体後方の傾動軸を中心に傾動した際に、汚水収容室内の汚水が壁面の傾斜に沿って車体前方側から車体後方側へ流れ、汚水排水口に向かって集中し、ドレン弁を開くと、汚水排出口から汚水ガイドパイプを通じて車体側方から排出される。
【0013】
あるいは、汚水収容室後方の側壁面に汚水排出口を設け、この汚水排出口には、開閉自在なドレン弁が接続された構成とすることが可能である。かかる構成により、汚水収容室後方の側壁面に接続されたドレン弁を開くと、このドレン弁から汚水を排出することが可能となる。あるいは、汚水収容室後方の床壁面に汚水排出口を設け、この汚水排出口には、開閉自在なドレン弁が接続された構成とすることが可能である。かかる構成により、汚水収容室後方の床壁面に接続されたドレン弁を開くと、このドレン弁から汚水を排出することが可能となる。
【0014】
本発明の塵芥収集車は、さらに汚水収容室の前方側面に清掃口を有し、清掃口は開閉自在な蓋体を有することが望ましい。これにより、汚水収容室の前方側面の清掃口を開いて汚水収容室内を清掃することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
(1)車体上に車体後方の傾動軸を中心に傾動可能に搭載され、後方開口部を有する塵芥収容箱と、後方開口部に連設され、後方開口部の上方に傾動自在に軸支された塵芥投入箱と、塵芥投入口に搭載され、投入された塵芥を塵芥収容箱に積み込む塵芥積込装置とを備える塵芥収集車であって、塵芥収容箱が、塵芥を収容する塵芥収容室と、塵芥収容室の前方側に車体幅方向に延設され、底面に開口を設けた集水溝と、塵芥収容室の下方に、集水溝に集水された汚水を収容する汚水収容室とを有し、汚水収容室が、汚水収容室の後方壁面に汚水を排出する汚水排出口を有し、汚水排出口には、開閉自在なドレン弁が接続されていることにより、汚水収容室内に貯留された汚水は、塵芥収容箱を車体後方の傾動軸を中心に傾動し、汚水排出口に接続されたドレン弁を開くことで、路面の前後の傾斜に関わらず、汚水収容室後方の壁面の汚水排出口から排出することが可能となる。また、塵芥収容箱に収容された塵芥をダンプ動作により排出する際には、汚水が塵芥と同時に排出されることはなく、その結果、塵芥に再び水分を含水させることがないので、塵芥処理場での焼却効率を悪化させない。
【0016】
(2)集水溝の上に、塵芥と汚水とを分離し、かつ取り付けおよび取り外し自在な板状の蓋体を有することにより、この蓋体によって塵芥収容室内の塵芥が集水溝内に侵入するのを防止することができるとともに、容易に蓋体を取り外して清掃した後、再び取り付けることができるため、蓋体による塵芥と汚水との分離性能を簡単なメンテナンスによって維持することが可能となる。
【0017】
(3)汚水収容室後方の壁面が汚水排出口に向かって車体前方側から車体後方側へ傾斜させ、汚水排出口に、車体側方まで汚水を導く汚水ガイドパイプが連通され、汚水ガイドパイプの先端部に、ドレン弁を備えたものであることにより、塵芥収容箱を車体後方の傾動軸を中心に傾動した際に、汚水収容室内の汚水が壁面に沿って汚水排水口に向かって集中するので、ドレン弁を開くと、路面の左右の傾斜に関わらず、汚水を汚水排出口から汚水ガイドパイプを通じて車体側方から排出することが可能となる。
【0018】
(4)汚水収容室後方の側壁面に汚水排出口を設け、この汚水排出口には、開閉自在なドレン弁が接続された構成とすることにより、汚水収容室後方の側壁面に接続されたドレン弁を開くと、このドレン弁から汚水を排出することが可能となる。
【0019】
(5)汚水収容室後方の床壁面に汚水排出口を設け、この汚水排出口には、開閉自在なドレン弁が接続された構成とすることにより、汚水収容室後方の床壁面に接続されたドレン弁を開くと、このドレン弁から汚水を排出することが可能となる。
【0020】
(6)さらに汚水収容室の前方側面に清掃口を有し、清掃口は開閉自在な蓋体を有することにより、汚水収容室の後方壁面の汚水排出口とは反対側の汚水収容室の前方側面の清掃口を開いて汚水収容室内を清掃することが可能となるので、汚水収容室内を清浄に保つことが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態における塵芥収集車の側面図である。
【図2】図1の塵芥収容箱および塵芥投入箱の縦断面図である。
【図3】図1の塵芥収容箱内部の集水溝付近の斜視図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】図2の縦断面図において汚水が汚水収容室に収容された状態を示す図である。
【図6】汚水排出口の別の例を示した図2のA−A断面図である。
【図7】汚水排出口のさらに別の例を示す図であって、(a)は図2のA−A断面図、(b)は(a)のドレン弁部分の拡大正面図、(c)は(a)のドレン弁部分の拡大右側面図である。
【図8】圧縮式の塵芥積込装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の実施の形態における塵芥収集車の側面図、図2は図1の塵芥収容箱および塵芥投入箱の縦断面図、図3は図1の塵芥収容箱内部の集水溝付近の斜視図、図4は図2のA−A断面図、図5は図2の縦断面図において汚水が汚水収容室に収容された状態を示す図である。
【0023】
図1において、本発明の実施の形態における塵芥収集車1は、車体2上に搭載された塵芥収容箱3と、この塵芥収容箱3の後端の後方開口部4(図2参照。)に連設された塵芥投入箱5とから構成される。塵芥投入箱5内には、この塵芥投入箱5内に投入された塵芥を塵芥収容箱3に積み込む塵芥積込装置6が搭載されている。塵芥収容箱3は、車体2上のサブフレーム2aと塵芥収容箱3のフレーム3a間に設けられた傾動装置としてのダンプシリンダ7(図2参照。)を伸縮させることにより、車体2のサブフレーム2aの後方の傾動軸8(図2参照。)を中心に傾動可能(ダンプ可能)に構成されている。図1に想像線にて示す塵芥収容箱3Aは、塵芥収容箱3の最大傾動状態(フルダンプ状態)を示している。
【0024】
また、塵芥投入箱5は、後方開口部4の上方で投入箱支持ピン9(図2参照。)により軸支されており、塵芥収容箱3と塵芥投入箱5との間に配設されたシリンダ(図示せず。)を伸縮させることにより、この投入箱支持ピン9を中心に傾動自在となっている。図1に想像線にて示す塵芥投入箱5Aは、塵芥投入箱5の最大傾動状態を示している。また、図1に想像線にて示す塵芥投入箱5Bは、最大傾動状態の塵芥収容箱3Aにおける塵芥投入箱5の最大傾動状態を示している。
【0025】
図2に示すように塵芥収容箱3は、塵芥積込装置6により積み込まれた塵芥を収容する塵芥収容室10と、塵芥収容室10の下方に塵芥から発生する汚水を収容する汚水収容室11とを有する。塵芥収容室10と汚水収容室11とは底板12によって区分されている。底板12の車体前方側には、車体幅方向に延設された集水溝13が設けられている。集水溝13の底面には、汚水収容室11に繋がる複数の開口13aが設けられている。
【0026】
また、集水溝13の上には、図3に示すように取り付けおよび取り外し自在な板状の蓋体14が設けられている。蓋体14は、パンチングメタルやエキスパンドメタル等の多数の小孔が設けられたものであり、塵芥と汚水とを分離し、すなわち塵芥から発生した汚水のみを通し、塵芥を通さないようになっている。また、蓋体14は取り付けおよび取り外し自在であるため、小孔が目詰まりした際には、清掃または交換することが可能である。
【0027】
汚水収容室11は、車体2の左右中心部の後方壁面11aに、この汚水収容室11内の汚水を排出するための汚水排出口15が設けられている。図4に示すように、汚水収容室11の車体後方側の壁面11aは、この汚水排出口15に向かって車体前方側から車体後方側へ傾斜させて設けられている。汚水排出口15には、車体の左右両側方まで汚水を導く汚水ガイドパイプ16が連通されている。また、汚水ガイドパイプ16の左右両先端部には、それぞれドレン弁17が設けられている。
【0028】
また、汚水収容室11内には車体の前後方向に補強フレーム11bが設けられている。この補強フレーム11bの前端部は、汚水収容室11前方の壁面より間隔を設けて取り付けられている。このように補強フレーム11bが構成されていることで、汚水収容室11の前方壁面の清掃が容易となっている。また、この補強フレーム11bの後端部には、壁面11aに沿って汚水排出口15に向かって流れる汚水を通過させるための切欠き11c(図2参照。)が設けられている。また、汚水収容室11の前方側面には、汚水収容室11内を清掃するための開口である清掃口18が設けられている。この清掃口18には、開閉自在な蓋体19が設けられている。汚水収容室11の清掃時には、蓋体19を開くことにより、この清掃口18から汚水収容室11内を清掃することができるようになっている。
【0029】
図2に示すように、塵芥積込装置6は、塵芥投入箱5の後部に開口された塵芥投入口5aの内部に装備されている。塵芥積込装置6は、車体前後方向に揺動する押込板61と、この押込板61の下端付近に回転中心を有して正逆転する回転板62とを備えている。
【0030】
押込板61は、塵芥投入箱5の幅方向全体に亘って延設され、かつ後方開口部4に対向するように配設されている。この押込板61の上部は、塵芥投入箱5の左右両側壁の中央付近に、中心軸63を介して回動自在に支持されている。押込板61には、その中心軸63よりも上方に延びる延設部64が設けられている。この延設部64の先端には、左右一対の押込シリンダ65の先端が連設されている。押込シリンダ65は、その基端が投入箱支持ピン9に回動自在に支持されている。この押込シリンダ65の伸縮動作により、押込板61が中心軸63周りに車体前後方向に揺動するようになっている。
【0031】
一方、回転板62は、押込板61の下側に設けられている。回転板62は、押込板61の下端付近に回転中心としての回転軸66を有し、塵芥投入箱5の断面略半円弧状に形成された底壁67に沿って回転軸66周りに回転するように構成されている。また、回転軸66の一方は、正逆回転可能なモータ(図示せず。)に減速機構を介して駆動連結されており、このモータにより回転力がトルクアップされた状態で、モータと同期して正逆回転するように構成されている。
【0032】
上記構成の塵芥収集車1では、まず、図2に示す状態で、塵芥投入口5aを通して塵芥(図示せず。)を塵芥投入箱5内に投入し、塵芥積込装置6により積込動作を行う。積込動作は、まず、回転板62が正回転(図2において右回り)し始める。これより遅れて、回転板62が押込板61と干渉しない位置まで回転すると、押込シリンダ65が縮退作動して押込板61が後方位置(図2の2点鎖線参照。)に位置する。
【0033】
その間、回転板62の正回転により塵芥が掻き集められ、回転板62の先端が後方開口部4の下縁に対応する対応位置に達すると、回転板62が停止する。次に、この回転板62を停止させた状態で、押込シリンダ65を伸長させることによって、押込板61が後方位置から前方位置(図2参照。)へ揺動する。これにより、掻き集められた塵芥は後方開口部4を経て塵芥収容箱3内に押し込まれ、一連の積込動作が終了する。
【0034】
そして、塵芥収容箱3に収容した塵芥から生じた汚水は、底板12上を伝って、車体前方側に設けられた集水溝13に集まる。なお、塵芥収容箱3は、底板12の上面、すなわち塵芥収容室10の底面は、車体後方側よりも車体前方側が低くなるように1〜2°程度傾斜した状態で車体2上に搭載されているので、この傾斜によっても汚水は車体前方側の集水溝13に集まる。集水溝13に集められた汚水は、集水溝13の底面の複数の開口13aを通じて汚水収容室11内に回収され、貯留される(図5参照。)。
【0035】
そして、塵芥処理場で塵芥収容室10に収集された塵芥は、塵芥収容箱3を車体後方の傾動軸8を中心に傾動(ダンプ動作)することで排出される。また、この汚水収容室11に貯留された汚水は、同様にダンプ動作することで、図5の塵芥収容箱3Aに示すように汚水収容室11の車体後方側へ集まる。ここで、ドレン弁17の先端に可撓性のパイプ(図示せず。)を接続し、ドレン弁17を開くと、汚水収容室11内の汚水は、汚水収容室11の車体後方側に設けられた汚水排出口15から汚水ドレンパイプ16および可撓性パイプを通じて塵芥処理場に付設の汚水処理施設へ排出される。
【0036】
以上のように、本実施形態における塵芥収集車1によれば、汚水収容室11内に貯留された汚水は、塵芥収容箱3を車体後方の傾動軸8を中心に傾動することで、車体後方側へ集まる。そして、汚水排出口15に接続されたドレン弁17を開くと、路面の前後の傾斜に関わらず、汚水収容室11の車体後方側の汚水排出口15から汚水処理施設へ排出することが可能である。また、塵芥収容箱3に収容された塵芥をダンプ動作により排出する際には、汚水は塵芥処理場に排出されることはない。すなわち、塵芥処理場で汚水は塵芥と同時に排出されることはなく、その結果、塵芥に水分を含水させることがないので、塵芥処理場での焼却効率を悪化させない。
【0037】
また、この塵芥収集車1では、集水溝13の上に着脱可能な蓋体14を有するので、塵芥収容室3内の塵芥が集水溝13内に侵入しないようになっている。また、この蓋体14は着脱して容易に清掃または交換することができるため、蓋体14の目詰まりを防止することができ、メンテナンスが簡単である。
【0038】
また、この塵芥収集車1では、汚水排出口15が汚水収容室11の車体後方側の壁面11aに設けられており、この壁面11aは汚水排出口15に向かって車体前方側から車体後方側へ傾斜させて設けられているため、塵芥収容箱3を車体後方の傾動軸8を中心に傾動した際に、汚水収容室11内の汚水が壁面11aに沿って汚水排水口に向かって集中するようになっている。そのため、路面の左右の傾斜に関わらず、汚水収容室11の車体後方側の汚水排出口15から排出することが可能である。
【0039】
また、この塵芥収集車1では、汚水排出口15が車体の左右中心部に設けられており、汚水ガイドパイプ16が車体の左右両側方まで汚水を導き、ドレン弁17が汚水ガイドパイプ16の左右両先端部にそれぞれ備えられているため、車体の左右のいずれかのドレン弁17を開くことで、車体の左右両側方のどちらからでも容易に汚水を排出することが可能であり、作業が容易である。
【0040】
なお、汚水排出口15は車体の左右中心部でなく左右のどちらか一方に寄せた位置に設けた構成とすることも可能である。この場合も汚水収容室11の壁面11aは、この一方に寄せた位置に設けた汚水排出口15に向かって車体前方側から車体後方側へ傾斜させて設ける。また、汚水ガイドパイプ16は、車体の一方の側方に汚水を導く構成とすることも可能である。あるいは、汚水排出口15そのものを、図6に示すように汚水収容室11の後方の左右両側壁面や一方の側壁面に設ける構成とすることも可能である。これにより、汚水ガイドパイプ16を省略することが可能となる。また、汚水排出口15を図7に示すように汚水収容室11の床壁面に設け、この汚水排出口にドレン弁20を設ける構成とすることも可能である。
【0041】
なお、上記塵芥収集車1は、回転板式の塵芥積込装置6を備えたものであるが、これに代えて図8に示す圧縮式の塵芥積込装置70を備えた構成とすることも可能である。
【0042】
図8に示すように、塵芥投入箱5の左右両側壁には、溝型鋼で形成された案内溝部材71が補強枠を兼ねて前方上部より後方下部に向かって敷設されている。塵芥投入箱5内には、その横幅一杯に広がる摺動板72が収容されている。この摺動板72の左右両側縁の上下には、案内ローラ73が回転可能に設けられている。これらの案内ローラ73は、案内溝部材71の内壁に沿って摺動自在に嵌入されている。
【0043】
摺動板72の背面上部の左右端部にはボス部74aが設けられている。このボス部74aには、摺動板支持軸74が挿通されている。この摺動板支持軸74は、塵芥投入箱5の左右両側壁に形成された摺動用開口75を越えて塵芥投入箱5の内側より外側に突出するように配置されている。
【0044】
また、塵芥投入箱5の左右両側壁からそれぞれ外側に突出した摺動板支持軸74と塵芥投入箱5の下部間には、左右それぞれ塵芥投入箱5の外側に案内溝部材71の傾斜方向に沿って配置された摺動シリンダ76がそれぞれ連結されている。この摺動シリンダ76の伸縮動作によって、摺動板72は案内溝部材71に沿って上下に往復移動する。
【0045】
摺動板72の下端には、塵芥投入箱5の横幅一杯に広がる圧縮板77が前後方向に揺動自在に支持されている。この圧縮板77の先端は前方に向かって若干屈折形成されている。また、圧縮板77の左右両背面には接続部77aが突設されている。この左右それぞれの接続部77aと、摺動板72の背面上部に設けられた摺動板支持軸74の左右両端部との間には、それぞれ揺動シリンダ78が連結されている。この揺動シリンダ78の伸縮作動によって、圧縮板77は前後に揺動する。
【0046】
上記構成の圧縮式の塵芥積込装置70では、摺動シリンダ76および揺動シリンダ78がいずれも伸長して摺動板72が上昇終了位置(最上位置)にある状態で、塵芥投入口5aを通して塵芥を塵芥投入箱5内に投入し、塵芥積込動作を行う。
【0047】
まず、図8に示す状態で、揺動シリンダ78が縮退作動して圧縮板77が反転作動し、反転終了位置に達する(反転工程)。この後、摺動シリンダ76が縮退作動して摺動板72が下降し、これに伴って圧縮板77が下降する(下降工程)。そして、圧縮板77が下降終了位置に達すると、揺動シリンダ78を伸長させて圧縮板77を前方に揺動させ、圧縮工程に移行する。
【0048】
そして、圧縮板77が最前方位置まで揺動する(圧縮行程)と、摺動シリンダ76を伸長させて圧縮板77を上昇させる(上昇工程)。この圧縮板77が上昇終了位置に達すると、一連の積込動作を終了する。これにより、塵芥積込装置70では、反転、下降、圧縮、上昇の各工程を1サイクルとして塵芥積込動作を繰り返して行う。この塵芥積込装置70により塵芥は圧縮処理されるので、さらに汚水が多量に絞り出され、塵芥と分離されて汚水収容室11に収容される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の塵芥収集車は、塵芥収容箱の内部空間に塵芥を積み込んで収集する車両として有用である。特に、本発明は、塵芥収容箱に収容した塵芥から生じる汚水を回収、貯留し、排出することが可能な塵芥収集車として好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 塵芥収集車
2 車体
3 塵芥収容箱
4 後方開口部
5 塵芥投入箱
5a 塵芥投入口
6 塵芥積込装置
61 押込板
62 回転板
65 押込シリンダ
7 ダンプシリンダ
8 傾動軸
9 投入箱支持ピン
10 塵芥収容室
11 汚水収容室
11a 壁面
11b 補強フレーム
11c 切欠き
12 底板
13 集水溝
13a 開口
14 蓋体
15 汚水排出口
16 汚水ガイドパイプ
17 ドレン弁
18 清掃口
19 蓋体
70 塵芥積込装置
71 案内溝部材
72 摺動板
73 案内ローラ
74 摺動板支持軸
76 摺動シリンダ
77 圧縮板
78 揺動シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上に車体後方の傾動軸を中心に傾動可能に搭載され、後方開口部を有する塵芥収容箱と、
前記後方開口部に連設され、前記後方開口部の上方に傾動自在に軸支された塵芥投入箱と、
前記塵芥投入箱に搭載され、投入された塵芥を前記塵芥収容箱に積み込む塵芥積込装置と
を備える塵芥収集車であって、
前記塵芥収容箱は、塵芥を収容する塵芥収容室と、前記塵芥収容室の前方側に車体幅方向に延設され、底面に開口を設けた集水溝と、前記塵芥収容室の下方に、前記集水溝に集水された汚水を収容する汚水収容室とを有し、
前記汚水収容室は、前記汚水収容室後方の壁面に汚水を排出する汚水排出口を有し、
前記汚水排出口には、開閉自在なドレン弁が接続されている
ことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
前記集水溝の上に、塵芥と汚水とを分離し、かつ取り付けおよび取り外し自在な板状の蓋体を有する請求項1記載の塵芥収集車。
【請求項3】
前記汚水収容室後方の壁面は、前記汚水排出口に向かって車体前方側から車体後方側へ傾斜させ、
前記汚水排出口に、車体側方まで汚水を導く汚水ガイドパイプが連通され、
前記汚水ガイドパイプの先端部に、ドレン弁を備えた請求項1または2に記載の塵芥収集車。
【請求項4】
前記汚水収容室後方の側壁面に汚水排出口を設け、
この汚水排出口には、開閉自在なドレン弁が接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載の塵芥収集車。
【請求項5】
前記汚水収容室後方の床壁面に汚水排出口を設け、
この汚水排出口には、開閉自在なドレン弁が接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載の塵芥収集車。
【請求項6】
さらに前記汚水収容室の前方側面に清掃口を有し、
前記清掃口は開閉自在な蓋体を有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の塵芥収集車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−1362(P2012−1362A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140805(P2010−140805)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】