説明

増幅器及び信号処理装置

【課題】ドレイン変調に用いられる電源電圧の遅延や歪みを軽減した増幅器及び信号処理装置を提供する。
【解決手段】増幅器10は、ドレイン変調を行う増幅器であって、互いに対向する第1主面及び第2主面を有するプリント基板400と、第1主面上に配置された増幅回路100と、ドレイン変調を行うための可変の電源電圧を増幅回路100に供給する変調電源回路200と、を備え、変調電源回路200は、電源電圧を出力する出力部250を有し、増幅回路100は、電源電圧が供給される入力部150を有し、出力部250は、プリント基板400の第2主面側に位置し、プリント基板400を貫通する導体を介して入力部150に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号の包絡線成分を用いて信号増幅を行う増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線基地局に用いられる送信機などの高出力信号を必要とする機器においては、信号増幅のために電力増幅器が用いられている。しかし、高出力の電力増幅器は消費電力が大きく、発熱やエネルギーロスなどの問題点があった。そこで、増幅器の効率を改善するためにET(Envelope Tracking)やEER(Envelope Elimination and Restoration)などのドレイン変調を用いた増幅器が開発されている。
【0003】
送信機が送信する信号の変調方式には、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)などの、搬送波の振幅が時間経過により変化する変調方式が用いられる。このような時間変化により搬送波の振幅が変化する信号を送信する送信機において、送信信号の最大ピーク値まで信号を増幅できる電力を増幅器に常に供給し続けると、最大ピーク値の送信信号が必要でない場合には、エネルギーロスや発熱が発生してしまう。しかし、最大ピーク値の送信信号が必要な場合に不十分な電力の供給を行っていると、増幅器が飽和するなどし、適切に信号増幅を行えなくなる。そこで、ドレイン変調を用いる増幅器は、増幅器の電源電力を入力信号の瞬時ピーク値が描く包絡線成分の変化に合わせて増減させることで、無駄な電力消費を抑え、効率のよい信号増幅を行うことができる。
【0004】
下記特許文献1には、入力信号が所定値より小さい場合は小信号用の増幅器により信号増幅を行い、入力信号が所定値より大きい場合はドレイン変調を行う増幅器により信号増幅を行う増幅器が開示されている。下記特許文献1に係る増幅器によれば、ダイナミックレンジが広く、大信号を増幅する場合は効率がよくて、小信号を増幅する場合にも信号劣化の少ない信号増幅を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−236512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドレイン変調を用いる増幅器においては、入力信号の瞬時ピーク値が描く包絡線成分の時間変化に合わせて、電源電力を変化させる必要がある。しかし、電源からドレイン変調を用いる増幅器へ電力を供給する電力供給経路は分布定数によるインピーダンス成分を持ち、電力供給経路が不必要に長い場合、ドレイン変調に用いられる電源電圧の遅延や歪みの原因となる。ドレイン変調を用いる増幅器は、この電源電圧の遅延や歪みによって適切にドレイン変調を用いる増幅器に電圧が印加されず、増幅器の適切な動作を妨げるという問題点があった。
【0007】
また、この問題の解決のために電力供給経路を短く設定しようとした場合にも、基板上にドレイン変調を用いる増幅器を実装する際、各素子の配置などの設計上の制約や、素子の取り付けなどの製造工程上の制約において、電力供給経路長を自由に設定することが困難な場合があった。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みて成されたものであり、ドレイン変調に用いられる電源電圧の遅延や歪みを軽減した増幅器及び信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る増幅器は、ドレイン変調を行う増幅器であって、互いに対向する第1主面及び第2主面を有する基板と、前記第1主面上に配置された増幅回路と、ドレイン変調を行うための可変の電源電圧を前記増幅回路に供給する電源回路と、を備え、前記電源回路は、前記電源電圧を出力する出力部を有し、前記増幅回路は、前記電源電圧が供給される入力部を有し、前記出力部は、前記基板の前記第2主面側に位置し、前記基板を貫通する導体を介して前記入力部に接続されることを特徴とする。
【0010】
なお、前記基板を貫通する前記導体は、前記出力部及び前記入力部とは別の部材であってもよいし、又は、前記出力部の一部あるいは前記入力部の一部であってもよい。
【0011】
第1の態様に係る増幅器によれば、基板の第1主面側に増幅回路が配置され、基板の第2主面側に電源回路が有する電源電圧を出力する出力部が配置される。そして、増幅回路が有する電源電圧が供給される入力部と当該出力部とが、基板を貫通する導体を介して接続されるので、電源回路から増幅回路までの電力供給経路長を、基板の第1主面に配置される他の素子の実装状況によらずに設定することができる。したがって、電力供給経路の余剰経路を短くできるため、電力供給経路に存在するインピーダンス成分の影響によるドレイン変調に用いられる可変電圧の歪みや遅延などの乱れを軽減し、ドレイン変調を用いた信号増幅を適切に行うことが可能となる。
【0012】
本発明の第2の態様に係る増幅器は、第1の態様に係る増幅器において特に、前記基板の前記第2主面側に配置された、電磁遮断機能を有する構造体をさらに備え、前記出力部は、前記基板と前記構造体とによって規定される密閉空間内に位置することを特徴としている。
【0013】
第2の態様に係る増幅器によれば、基板と基板の第2主面側に配置された電磁遮断機能を有する構造体とによって規定された密閉空間内に、電源回路の出力部が位置することで、電源回路の出力部を電磁遮断することができる。したがって、電源回路の出力部から発生する漏れ信号が妨害波となって、周囲に位置する素子が誤作動するのを防ぐことが可能となる。
【0014】
本発明の第3の態様に係る増幅器は、第1又は第2の態様に係る増幅器において特に、前記出力部は、前記基板を挟んで、前記入力部に接続される導体の直下に位置することを特徴とする。
【0015】
第3の態様に係る増幅器によれば、基板の第2主面側に配置された電源回路の出力部が、基板を挟んで、基板の第1主面側に配置された増幅回路の入力部に接続される導体の直下に位置する。そのため、基板の第2主面上に電力供給経路を配線する必要がないため、電力供給経路長をさらに短くすることが可能となる。
【0016】
本発明の第4の態様に係る信号処理装置は、第1から第3のいずれか一つの態様に係る増幅器と、前記増幅器への入力信号と前記増幅器からの出力信号とに基づいて、前記入力信号を補正する歪補償部と、を備えることを特徴としている。
【0017】
第4の態様に係る信号処理装置によれば、第1から第3のいずれか一つの態様に係る増幅器への入力信号と当該増幅器からの出力信号とに基づいて、歪補償部が当該入力信号を補正するので、当該出力信号は歪補償され、信号歪みに関する入出力特性を改善することが可能となる。また、この歪補償に際しては、第1から第3のいずれか一つの態様に係る増幅器を用いるので、電力供給経路に存在するインピーダンス成分によってドレイン変調
に用いられる可変電圧が乱れ、歪補償部が誤った信号の補正を行うのを防ぐことができる。さらに、電源回路の出力部を、基板と電磁遮断機能を有する構造体とにより規定された密閉空間内に配置した場合は、電源回路の出力部から発生する妨害波によって歪補償部に用いられる回路などが誤作動するのを防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ドレイン変調に用いられる電源電圧の遅延や歪みを軽減した増幅器及び信号処理装置を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る増幅器の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】高周波回路に用いられる本発明の実施の形態に係る増幅器の電気回路の例を概略的に示した図である。
【図3】電源端子が縦型の電源ユニットを用いた増幅器の基板への実装例を模式的に示した断面図である。
【図4】増幅回路をユニット筐体化した増幅ユニットの入力部の構造を模式的に示した図である。
【図5】電源端子が縦型の電源ユニットの出力部の構造を模式的に示した図である。
【図6】電源コネクタが縦型の電源ユニットを用いた増幅器の基板への実装例を模式的に示した断面図である。
【図7】電源コネクタが縦型の電源ユニットの出力部の構造を模式的に示した図である。
【図8】電源端子が横型の電源ユニットを用いた増幅器の基板への実装例を模式的に示した断面図である。
【図9】電源端子が横型の電源ユニットの出力部の構造を模式的に示した図である。
【図10】電源コネクタが横型の電源ユニットを用いた増幅器の基板への実装例を模式的に示した断面図である。
【図11】電源コネクタが横型の電源ユニットの出力部の構造を模式的に示した図である。
【図12】基板の裏面に変調電源回路を構成する素子を実装した増幅器の基板への実装例を模式的に示した断面図である。
【図13】変調電源回路に用いられる電源ICの出力端子が基板を貫いて実装される増幅器の実装例を模式的に示した断面図である。
【図14】電源端子が横型の電源ユニットが基板裏面にない場合の増幅器の実装例を模式的に示した断面図である。
【図15】電源コネクタが横型の電源ユニットが基板の裏面にない場合の増幅器の実装例を模式的に示した断面図である。
【図16】本発明の変形例に係る信号処理装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0021】
本発明の実施の形態に係る増幅器10は、ET(Envelope Tracking)やEER(Envelope Elimination and Restoration)などのドレイン変調を用いた増幅器である。図1は、増幅器10の構成を概略的に示すブロック図である。増幅器10は、増幅回路100、ドレイン変調を行うための可変の電源電圧を供給する変調電源回路200、包絡線取得部300、及びカップラ350を備える。増幅器10に対して入力される入力信号S10は、カップラ350に入力される。カップラ350は、入力信号S10を分配し、増幅回路
100に対して信号S11を入力し、包絡線取得部300に対して信号S12を入力する。包絡線取得部300の出力である包絡線情報信号S13は、変調電源回路200に対して入力される。変調電源回路200の出力であるドレイン変調電圧S14は、増幅回路100に対して入力される。増幅回路100の出力である出力信号S15は、増幅器10の出力となる。
【0022】
次に、増幅器10の基本的な動作の説明をする。増幅器10に対して入力された入力信号S10は、カップラ350によって、増幅回路100に対して入力する信号S11と包絡線取得部300に対して入力する信号S12とに分配される。包絡線取得部300は、信号S12に含まれる信号の瞬時ピーク値の変化から、その包絡線成分を取得し、包絡線情報信号S13として変調電源回路200に向けて出力する。変調電源回路200は、包絡線情報信号S13に基づいて、出力するドレイン変調電圧S14の電圧値を変化させる。増幅回路100は、ドレイン変調電圧S14を電源電圧として用いて信号S11を増幅する。以上のような、増幅器10が有する信号増幅機能については、一般的なドレイン変調を用いた増幅器の信号増幅機能と同様のものであってよい。
【0023】
図2は、高周波回路に用いられる増幅器10の電気回路の例を概略的に示した図である。図2では、変調電源回路200から増幅回路100への電力供給経路は、1/4波長経路410と余剰経路420とから構成される。変調電源回路200は出力部250から電力供給経路に向けて電源電力を出力し、電力供給経路から供給される電源電力は入力部150から増幅回路100に対して入力される。また、1/4波長経路410の終端にはコンデンサ415が接続されており、電力供給経路はコンデンサ415を介して接地されている。
【0024】
図2の高周波回路に用いられる増幅器10は、RF信号である入力信号S10に含まれる搬送波振幅の瞬時ピーク値の包絡線成分を取得し、当該包絡線成分に基づいたドレイン電圧を用いて信号の増幅を行う。このとき、1/4波長経路410は、入力信号S10に含まれる搬送波の波長の1/4に相当する長さとし、1/4波長経路410とコンデンサ415とのインピーダンスを適切に設定することで、増幅回路100で増幅を行う信号の搬送波の周波数において、増幅回路100側から見た電源供給経路をオープン(無限大のインピーダンス)とする。よって、増幅回路100により増幅される信号が変調電源回路200側に影響を与えるのを防ぐことができる。一方、変調電源回路200が電源供給経路に対して入力するドレイン変調電圧S14は、入力信号S10に含まれる搬送波の周波数より十分に低い周波数成分を含んでいる。このドレイン変調電圧S14が含む周波数帯では、1/4波長経路410が持つ長さは無視できる程度に短いものであるが、電源供給経路が1/4波長経路410より長く、余剰経路420が長くなってしまうと、余剰経路420が持つインピーダンス成分によって、ドレイン変調電圧S14が遅延や歪みなどにより乱れることがある。
【0025】
そこで、増幅器10を基板上に実装する際には、増幅回路100を基板の表面(第1主面側)に配置し、変調電源回路200の出力部250を基板の裏面(第2主面側)に配置する。増幅回路100と出力部250とを基板の別の面に配置することにより、基板に実装された他の素子に妨げられることなく電力供給経路を柔軟に基板配線できるようになる。したがって、余剰経路420が可能な限り短くなるように、電力供給経路を設定することができる(余剰経路420がなくてもよい)。
【0026】
次に、増幅器10であって、構成部品の基板への配置方法が異なる増幅器10A〜10Hの基板への実装例を以下に示す。図3は、電源端子が縦型の電源ユニット201Aを用いた増幅器10Aの基板への実装例を模式的に示した断面図である。増幅器10Aは、増幅回路100を内部に含む増幅ユニット101、変調電源回路200を内部に含む電源ユ
ニット201A、プリント基板400、金属シャーシ500、及びシールド650を備えており、図示されていないが、その他の増幅器10Aの動作に必要な構成部品も有している。また、プリント基板400は、基板配線された導体路である1/4波長経路410及びスルーホール450を有している。
【0027】
図4は、増幅回路100をユニット筐体化した増幅ユニット101の入力部150の構造を模式的に示した図である。増幅ユニット101は、内部に増幅回路100を含み、表面に電源電力が供給される入力部150と、入力部150に接続される電源入力端子105とを有しており、電源入力端子105に印加されるドレイン変調電圧S14を電源として動作する。さらに、増幅ユニット101は、信号入力端子106と信号出力端子107とを有しており、信号入力端子106に対して信号S11が入力されると、ドレイン変調を用いた信号増幅を行い、信号出力端子107から出力信号S15を出力する。
【0028】
図5は、電源端子が縦型の電源ユニット201Aの出力部250の構造を模式的に示した図である。電源ユニット201Aは、内部に変調電源回路200を含んでおり、信号S12に基づく包絡線情報信号S13が入力されると、増幅回路100のドレイン変調に用いられるドレイン変調電圧S14を出力する。また、電源ユニット201Aは、電源電力を出力する出力部250を表面に有しており、出力部250から電源端子205を通じて、電力供給経路へとドレイン変調電圧S14を出力する。また、出力部250と電源端子205とは、通常、電源ユニット201を取り付ける際に垂直方向を向く面に備えられている。なお、本実施の形態では、このように出力部250が電源ユニット201の垂直方向を向く面に備わっているものを「縦型の電源ユニット」と称し、逆に出力部250が電源ユニット201の水平方向を向く面(側面)に備わっているものを「横型の電源ユニット」と称している。
【0029】
図3の実装例に示したように、増幅器10Aは、プリント基板400の表面(第1主面)に増幅ユニット101が配置されており、プリント基板400の裏面(第2主面)に電源ユニット201Aが配置されている。そして、電源ユニット201Aの電源端子205は、プリント基板400に空けられたスルーホール450を通してプリント基板400の表面側まで貫通し、1/4波長経路410の終端に、はんだ412によってはんだ付けされている。よって、増幅器10Aにおいては、電源ユニット201Aが有する電源端子205が、出力部250と入力部150とを接続する、プリント基板400を貫く導体となっている。
【0030】
図6は、電源コネクタが縦型の電源ユニット201Bを用いた増幅器10Bの基板への実装例を模式的に示した断面図である。増幅器10Bは、増幅回路100を内部に含む増幅ユニット101、変調電源回路200を内部に含む電源ユニット201B、プリント基板400、金属シャーシ500、及びシールド650を備えており、図示されていないが、その他の増幅器10Bの動作に必要な構成部品も有している。また、プリント基板400は、基板配線された導体路である1/4波長経路410と、プリント基板400の表面から裏面に貫通する導体411とを有しており、裏面には電源ユニット201Bを接続するための基板側コネクタ207を備えている。
【0031】
図7は、電源コネクタが縦型の電源ユニット201Bの出力部250の構造を模式的に示した図である。電源ユニット201Bが出力部250を介してドレイン変調電圧S14を出力する動作は電源ユニット201Aと同じであるが、電源ユニット201Bは、出力部250から基板側コネクタ207に接続される電源コネクタ206を通じて、電力供給経路へとドレイン変調電圧S14を出力する。また、図7は例示であり、電源コネクタ206はオス型コネクタでもメス型コネクタでもよく、基板側コネクタ207と接続できるものであればよい。
【0032】
図6の実装例に示したように、増幅器10Bは、プリント基板400の表面(第1主面)に増幅ユニット101が配置されており、プリント基板400の裏面(第2主面)に電源ユニット201Bが配置されている。また、プリント基板400の裏面には基板側コネクタ207が実装されており、基板側コネクタ207は、導体411を介して1/4波長経路410の終端に接続されている。そして、電源ユニット201Bの電源コネクタ206は、基板側コネクタ207に接続される。
【0033】
図8は、電源端子が横型の電源ユニット201Cを用いた増幅器10Cの基板への実装例を模式的に示した断面図である。増幅器10Cは、増幅回路100を内部に含む増幅ユニット101、変調電源回路200を内部に含む電源ユニット201C、プリント基板400、金属シャーシ500、及びシールド650を備えており、図示されていないが、その他の増幅器10Cの動作に必要な構成部品も有している。また、プリント基板400は、基板配線された導体路である1/4波長経路410と、プリント基板400の表面から裏面に貫通する導体411とを有している。
【0034】
図9は、電源端子が横型の電源ユニット201Cの出力部250の構造を模式的に示した図である。電源ユニット201Cが出力部250を介してドレイン変調電圧S14を出力する動作は電源ユニット201Aと同じであるが、ドレイン変調電圧S14を出力する出力部250と電源端子205とが電源ユニット201Cの筐体の側面部に配置されている。
【0035】
図8の実装例に示したように、増幅器10Cは、プリント基板400の表面(第1主面)に増幅ユニット101が配置されており、プリント基板400の裏面(第2主面)に電源ユニット201Cが配置されている。また、電源ユニット201Cの電源端子205は、プリント基板400の表面から裏面に貫通する導体411に、はんだ412によってはんだ付けされ、導体411を介して1/4波長経路410の終端に接続されている。
【0036】
図10は、電源コネクタが横型の電源ユニット201Dを用いた増幅器10Dの基板への実装例を模式的に示した断面図である。増幅器10Dは、増幅回路100を内部に含む増幅ユニット101、変調電源回路200を内部に含む電源ユニット201D、プリント基板400、金属シャーシ500、及びシールド650を備えており、図示されていないが、その他の増幅器10Dの動作に必要な構成部品も有している。また、プリント基板400は、基板配線された導体路である1/4波長経路410と、プリント基板400の表面から裏面に貫通する導体411とを有しており、裏面には電源ユニット201Dを接続するための基板側コネクタ207が実装されている。
【0037】
図11は、電源コネクタが横型の電源ユニット201Dの出力部250の構造を模式的に示した図である。電源ユニット201Dは、ドレイン変調電圧S14を出力する出力部250と電源コネクタ206とが電源ユニット201Dの筐体の側面部に配置されている。電源ユニット201Dが出力部250を介してドレイン変調電圧S14を出力する動作は電源ユニット201Aと同じであるが、電源ユニット201Dは、出力部250から基板側コネクタ207に接続された電源コネクタ206を通じて、電力供給経路へとドレイン変調電圧S14を出力する。また、図11は例示であり、電源コネクタ206はオス型コネクタでもメス型コネクタでもよく、基板側コネクタ207と接続できるものであればよい。
【0038】
図10の実装例に示したように、増幅器10Dは、プリント基板400の表面(第1主面)に増幅ユニット101が配置されており、プリント基板400の裏面(第2主面)に電源ユニット201Dが配置されている。また、プリント基板400の裏面には基板側コ
ネクタ207が実装されており、基板側コネクタ207は、導体411を介して1/4波長経路410の終端に接続されている。そして、電源ユニット201Dの電源コネクタ206は基板側コネクタ207に接続される。
【0039】
また、本発明の実施の形態に係る増幅器10おいては、増幅回路100及び変調電源回路200は必ずしもユニット筐体化する必要はない。図12は、基板の裏面に変調電源回路200を構成する素子を実装した増幅器10Eの基板への実装例を模式的に示した断面図である。この場合、変調電源回路200を構成する素子のうち、ドレイン変調電圧S14を出力する素子の出力端が変調電源回路200の出力部250となる。プリント基板400の裏面には導体路413が形成されており、出力部250は導体路413に接続されている。導体路413は、プリント基板400の表面から裏面に貫通する導体411を介して1/4波長経路410の終端に接続されている。そして、導体路413、導体411、及び1/4波長経路410が、出力部250から入力部150への電力供給経路となる(このとき、導体路413は余剰経路420となる)。
【0040】
なお、基板に変調電源回路200に用いる素子を実装する場合、ドレイン変調電圧S14を出力する素子は、金属導体の出力端子を有するIC(Integrated Circuit)などの素子であってよい。図13は、変調電源回路200に用いられる電源IC260の電源端子265が基板を貫いて実装される増幅器10Fの実装例を模式的に示した断面図である。増幅器10Fは、プリント基板400の裏面(第2主面)に、電源IC260を含む変調電源回路200を構成する素子が実装されており、電源IC260が有する電源端子265は、プリント基板400に空けられたスルーホール450を通してプリント基板400の表面側まで貫通している。そして、電源端子265は、プリント基板400の表面側において、1/4波長経路410の終端に、はんだ412によってはんだ付けされている。電源IC260は、出力端である出力部250から電源端子265を介し、1/4波長経路410にドレイン変調電圧S14を印加する。よって、増幅器10Fにおいては、電源IC260が有する電源端子265が、出力部250と入力部150とを接続する、プリント基板400を貫く導体となっている。
【0041】
さらに、本発明の実施の形態に係る増幅器10においては、変調電源回路200(又は変調電源回路200を含む電源ユニット201)自体は、プリント基板400の裏面に配置する必要はなく、変調電源回路200(又は変調電源回路200を含む電源ユニット201)の出力部250がプリント基板400の裏面に配置されればよい。図14は、電源端子が横型の電源ユニット201Cがプリント基板400の裏面にない場合の増幅器10Gの実装例を模式的に示した断面図である。図15は、電源コネクタが横型の電源ユニット201Dがプリント基板400の裏面にない場合の増幅器10Hの実装例を模式的に示した断面図である。増幅器10G及び増幅器10Hでは、電源ユニット201C及び電源ユニット201Dの本体はプリント基板400上に実装されてはいないが、出力部250と電源ユニット201が有する電源端子205又は電源コネクタ206とがプリント基板400の裏面に配置されるようになっている。
【0042】
また、プリント基板400、金属シャーシ500、シールド650、及びユニットの筐体は、電磁遮断機能を有する構造体である。これらの構造体は、増幅器10A〜10Hの増幅回路100、入力部150、変調電源回路200、出力部250、及び入力部150と出力部250とに接続する導体(電力供給経路)を密閉することで、電磁遮断を行っている。増幅器10A〜10Hでは(図3、図6、図8、図10、及び図12〜15を参照)、出力部250は、金属シャーシ500、プリント基板400、及び電源ユニット201によって規定される密閉空間600内に位置しており、出力部250から放出される電磁波が密閉空間600の外部に漏洩することを防いでいる(ただし図3に示した増幅器10Aについては、プリント基板400と電源ユニット201Aとが密着することで、出力
部250を密閉しており、プリント基板400と電源ユニット201Aとの接触面が密閉空間600となる)。
【0043】
以上のように、本発明の実施の形態に係る増幅器10によれば、増幅回路100(又は増幅回路100を含む増幅ユニット101)をプリント基板400の表面(第1主面)に配置し、変調電源回路200(又は変調電源回路200を含む電源ユニット201)の出力部250をプリント基板400の裏面(第2主面)に配置し、入力部150と出力部250とをプリント基板400を貫通する導体(電源端子205、265、又は導体411)を介して配線することで、他の素子のプリント基板400への実装状況に関わらず、電力供給経路を柔軟に配線することができる。したがって、電力供給経路である1/4波長経路410の長さを適切に設定することができ、余分な経路である余剰経路420を削減することで、余剰経路420のインピーダンス成分に起因するドレイン変調電圧S14の歪みや遅延などの乱れを軽減して、ドレイン変調を用いた信号増幅を適切に行うことが可能となる。
【0044】
さらに、増幅器10A、10B、及び10F(図3、図6、及び図13を参照)において、電源ユニット201A、201B、及び電源IC260の出力部250は、プリント基板400を挟んで増幅ユニット101の入力部150に接続される導体(1/4波長経路410)の直下に位置している。このとき、1/4波長経路410の終端と出力部250とがプリント基板400を挟んで近接して配置されているので、電力供給経路の余剰経路420を短くする(もしくは余剰経路420をなくす)ことができ、余剰経路420のインピーダンス成分に起因するドレイン変調電圧S14の歪みや遅延などの乱れの軽減を効果的に行うことが可能となる。なお、変調電源回路200(又は変調電源回路200を含む電源ユニット201)の出力部250が、プリント基板400を挟んで増幅回路100(又は増幅回路100を含む増幅ユニット101)の入力部150に接続される導体(1/4波長経路410)の直下となるように設置するのは、余剰経路420のインピーダンス成分に起因するドレイン変調電圧S14の歪みや遅延などの乱れの軽減を効果的に行うためであり、本発明においては、必ずしも変調電源回路200(又は変調電源回路200を含む電源ユニット201)の出力部250を、プリント基板400を挟んで増幅回路100(又は増幅回路100を含む増幅ユニット101)の入力部150に接続される導体(1/4波長経路410)の直下となるような設置にする必要はない。
【0045】
また、増幅器10においてドレイン変調を用いた信号増幅を行う際、増幅回路100(又は増幅回路100を含む増幅ユニット101)及び変調電源回路200(又は変調電源回路200を含む電源ユニット201)等から漏れ信号などの妨害波が放出されることがある。回路をユニット筐体化し、ユニット筐体で囲われている増幅ユニット101及び電源ユニット201から放出される電磁波などの妨害波は、ユニット筐体にて電磁遮断され軽減されるが、その場合にもユニット筐体が有する端子やコネクタから妨害波が放出されることが考えられる。
【0046】
そこで、増幅回路100、入力部150、変調電源回路200、出力部250、及び入力部150と出力部250とに接続した導体(電力供給経路)を、電磁遮断機能を持った構造物であるプリント基板400、金属シャーシ500、シールド650、及びユニットの筐体などによって密閉することにより、増幅器10から放出される妨害波を電磁遮断し、増幅器10及び増幅器10の周辺に位置する素子の誤作動を防ぐことができる。
【0047】
加えて、プリント基板400及び金属シャーシ500は、熱伝導が良いため、熱接触させることで放熱を行うことができる。よって、増幅回路100(又は増幅回路100を含む増幅ユニット101)及び変調電源回路200(又は変調電源回路200を含む電源ユニット201)が電磁遮断機能を有する構造体によって規定される密閉空間600内に位
置していても、プリント基板400及び金属シャーシ500に熱接触させることで、動作時に排出する熱を放熱することが可能である。
【0048】
なお、出力部250に対して、電磁遮断を行うのは漏れ信号などの妨害波が発生した場合に対する予防策であり、本発明において、変調電源回路200(又は変調電源回路200を含む電源ユニット201)の出力部250は、必ずしも電磁遮断機能を有する構造体によって規定される密閉空間600に位置する必要はない。
【0049】
〈変形例〉
本発明の変形例に係る信号処理装置20は、ドレイン変調を用いて信号増幅をする際に、DPD(Digital Pre-Distortion)により増幅器の入出力特性における歪補償を行う増幅器である。図16は、信号処理装置20の構成を概略的に示すブロック図である。信号処置装置20は、増幅回路100、ドレイン変調を行うための可変の電源電圧を供給する電源回路である変調電源回路200、包絡線取得部300、歪補償部であるDPD処理部700、DAC(Digital to Analog Converter)710、LPF(Low Pass Filter)720、周波数変換部730、カップラ740、周波数変換部750、LPF760、及びADC(Analog to Digital Converter)770を備える。
【0050】
次に、信号処理装置20の動作の説明をする。デジタル信号である入力信号S21は、包絡線取得部300とDPD処理部700とに対して入力される。包絡線取得部300は、入力信号S21の包絡線成分を取得し、包絡線情報信号S13として変調電源回路200に対して入力する。変調電源回路200は、入力された包絡線情報信号S13に基づいて、ドレイン変調を行うための可変の電源電圧であるドレイン変調電圧S14を増幅回路100に対して入力する。増幅回路100は、入力されたドレイン変調電圧S14を用いてドレイン変調を用いた信号増幅を行う。
【0051】
さらに、DPD処理部700は、入力信号S21に対し歪み補正を行い、信号S22を出力する。DPD処理部700が行う歪み補正については後述する。信号S22が入力されたDAC710は、デジタル信号である信号S22をアナログ信号である信号S23に変換して出力する。LPF720は、入力された信号S23の不要波低減処理を行い、ベースバンドの信号S24を出力する。周波数変換部730は、入力された信号S24の周波数を変換して、信号処理装置20の目的周波数である信号S11を出力する。増幅回路100は、入力された信号S11に対してドレイン変調を用いた信号増幅を行い、信号S15を出力する。カップラ740は、入力された信号S15を出力信号S16と帰還信号S17とに分配する。そして出力信号S16が信号処理装置20の出力となる。
【0052】
カップラ740によって分配された帰還信号S17は、周波数変換部750に入力される。周波数変換部750は、帰還信号S17の周波数を変換し、ベースバンドの周波数である信号S25を出力する。LPF760は、入力された信号S25に対して不要波低減処理を行い、信号S26を出力する。ADC770は、入力されたアナログ信号である信号S26をデジタル信号である信号S27に変換して、DPD処理部700に向けて出力する。
【0053】
次に、DPD処理部700が行う歪み補正について説明する。DPD処理部700に入力された信号S27には、増幅回路100の出力信号である信号S15が持つ信号の歪み成分が含まれる。DPD処理部700は、信号S27に含まれる歪み成分を取得し、入力信号S21に対し、この歪み成分とは逆の特性を持った逆歪みを与えておくことで、信号S15が持っていた歪みをDPD処理部700が与える逆歪みで相殺し、信号の歪みを補正する。この歪みを補正する回路は、帰還ループになっているため、フィードバック処理
により出力信号S16の歪み特性を軽減する。
【0054】
信号処理装置20の増幅回路100、変調電源回路200、及び包絡線取得部300は、本発明の実施の形態に係る増幅器10と同様のものであり、増幅回路100を基板の表面に配置し、変調電源回路200の出力部250を基板の裏面(第2主面)に配置する。そして、増幅回路100の入力部150と変調電源回路200の出力部250とをプリント基板400を貫通する導体411によって配線することで、適切に電力供給経路を設定でき、ドレイン変調を用いた信号増幅を行いつつ電力供給経路に起因する分布定数によるインピーダンス成分の影響を軽減することが可能である。また、増幅回路100、入力部150、変調電源回路200、出力部250、及び入力部150と出力部250とに接続する導体(電力供給経路)を、電磁遮断機能を持つ構造体で密閉することで、漏れ信号などの妨害波による誤作動を防ぐことができる。
【0055】
そして、信号処理装置20は、増幅回路100から出力された増幅信号S15が持つ信号歪みをDPDによって補正を行う。したがって、信号処理装置20は、ドレイン変調を用いた信号増幅を行いつつ、入出力特性における歪補償を行うことができる。
【0056】
このような、入出力特性における歪補償を行う帰還ループを持つ回路では、歪補償部であるDPD処理部700に入力される信号S27の持つ歪み成分が、信号S11が持つ歪み成分以外の原因で発生した歪みであった場合、正常な歪みの補正を行うことが難しい。特にドレイン変調を用いる信号増幅を行った際、変調電源回路200が出力するドレイン変調電圧S14に遅延や歪みがあった場合、信号増幅された信号S15がドレイン変調電圧S14に起因する歪みを持ってしまうので、入出力特性における歪みの補正を適切に行うことができない場合がある。そこで、本発明の変形例に係る信号処理装置20を用いることで、変調電源回路200のドレイン変調電圧S14の遅延や歪みなどの乱れを軽減し、ドレイン変調を用いた信号増幅を行いつつ入出力特性における歪補償を適切に行うことが可能となる。
【0057】
また、本発明の変形例に係る信号処理装置20は、無線基地局などの送信機の送信出力まで信号を増幅するのに用いることが想定されている。送信機の送信出力の信号増幅においては、非常に高精度な漏洩電力制御が求められることがある(例えば、スプリアス妨害比−50dBc)。このような高い精度の信号を送信する際には信号の歪補償を適切に行う必要があるため、ドレイン変調を用いた増幅を行いつつ電力供給経路に起因する分布定数によるインピーダンス成分の影響を軽減することができる信号処理装置20を用いることで、送信信号の漏洩電力を抑制することが可能となる。
【0058】
さらに、無線基地局などにおいて送信出力の信号増幅を行うとき、送信系の回路と受信系の回路とが隣接している場合が多い。このようなとき、高い出力である送信系から発生した妨害波が受信系に回り込み、誤作動を起こすことがある。そういった場合にでも、信号処理装置20は、妨害波の発生部となる増幅回路100、入力部150、変調電源回路200、出力部250、及び入力部150と出力部250とに接続される導体(電力供給経路)に対し電磁遮蔽を行っているため、回り込み信号による誤作動を防ぐことが可能である。
【0059】
なお、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲にとって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
10 増幅器
20 信号処理装置
100 増幅回路
101 増幅ユニット
150 入力部
200 変調電源回路
201 電源ユニット
205 電源端子
206 電源コネクタ
207 基板側コネクタ
250 出力部
300 包絡線取得部
400 プリント基板
411 導体
500 金属シャーシ
600 密閉空間
700 DPD処理部






【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレイン変調を行う増幅器であって、
互いに対向する第1主面及び第2主面を有する基板と、
前記第1主面上に配置された増幅回路と、
ドレイン変調を行うための可変の電源電圧を前記増幅回路に供給する電源回路と、
を備え、
前記電源回路は、前記電源電圧を出力する出力部を有し、
前記増幅回路は、前記電源電圧が供給される入力部を有し、
前記出力部は、前記基板の前記第2主面側に位置し、前記基板を貫通する導体を介して前記入力部に接続される、増幅器。
【請求項2】
前記基板の前記第2主面側に配置された、電磁遮断機能を有する構造体をさらに備え、
前記出力部は、前記基板と前記構造体とによって規定される密閉空間内に位置する、請求項1に記載の増幅器。
【請求項3】
前記出力部は、前記基板を挟んで、前記入力部に接続される導体の直下に位置する、請求項1又は2に記載の増幅器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の増幅器と、
前記増幅器への入力信号と前記増幅器からの出力信号とに基づいて、前記入力信号を補正する歪補償部と、
を備える、信号処理装置。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−176529(P2011−176529A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38276(P2010−38276)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】