説明

壁つなぎ除去跡の補修方法

【課題】壁つなぎ除去跡の補修に使用したシーリング材に含まれる可塑剤のブリードに起因する塗膜汚染や造膜性の問題を解決し、壁つなぎ部の周辺の塗膜外観との完全な均一化を可能にする壁つなぎ除去跡の補修方法を得る。
【解決手段】ポリエチレンシート上に微弾性フィラーを塗付し、その上に下塗塗料の1層目と上塗塗料の2層目を塗付し、塗膜が乾燥した時点で、ポリエチレンシートから塗膜を剥がして壁つなぎの径のサイズに合わせて切断し、足場解体と並行してポリエチレンシートから剥がしたフリーフィルムをシーリング材面へ貼付することを特徴とする壁つなぎ除去跡の補修方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁つなぎ除去跡の補修方法に関し、より詳しくは集合住宅やビルなどの建築物の外壁塗装における壁つなぎ除去跡の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種建築物の外壁塗装においては、その外壁への塗料塗装後、目地部や足場の壁つなぎ跡にシーリング材を施工することで補修することが行われている。
図1は、集合住宅、あるいはビルその他の建築物の外壁に対する“壁つなぎ”部分を説明する図である。図1(a)は“壁つなぎ”を配した足場の断面図、図1(b)は“壁つなぎ”の断面図、図1(c)は“壁つなぎ”を配した足場の平面図である。図1中の各数値は各部のmm単位の寸法例である。
【0003】
図1中、1は建築物、2は建築物に設けられたアンカー、3は壁つなぎである。壁つなぎ3は、アンカー2に対するボルト4と下記建枠7に対する係止部分5を備えている。6は足場、すなわち作業者用の外部足場であり、外壁に対して間隔を置いて仮設される。
【0004】
7は足場6を構成する建枠であり、通常鋼管により構成される。壁つなぎ3は、そのボルト4をアンカー2に対してねじ込むとともに、その係止部分5により足場6の建枠7に対して固定する。これにより、足場6が建築物1に対して間隔を置いて固定され、これにより塗装作業の準備段階が終了する。この状態で、塗装作業者は建築物1の外壁に対して塗装作業をする。
【0005】
こうして、塗装作業が終わると、足場の解体段階となる。壁つなぎ3のボルト4をアンカー2から外すとともに、壁つなぎ3の係止部分5による足場6の建枠7に対する固定を解く。このとき、アンカー2から壁つなぎ3のボルト4が抜かれることになるので、そのアンカー2の開孔にシーリング材を施すことで補修する。そして、建枠7を解体することで、準備段階、塗装段階、壁つなぎ3の取外し段階、シーリング材の施工段階、足場解体段階までの一連の塗装作業が終了する。
【0006】
ところで、従来、建築物の外壁塗装において、目地部及び上記のような足場の壁つなぎ跡の塗膜汚染がしばしば問題になっている。その塗膜汚染は、目地部及び壁つなぎ跡の補修に使用したシーリング材に含まれる可塑剤が時間の経過(通常、1年から2年程度)とともに塗膜表面に滲み出て、すなわち塗膜表面に可塑剤がブリードして、空気中の塵埃を吸着することによって生じる。
【0007】
そして、シーリング材中の可塑剤移行による塗膜表面の汚染の問題は、時代の要求に応じて水系塗料の使用が溶剤系塗料に比べて多くなるにつれて顕在化してきた。水系塗料は、溶剤系塗料に比べて塗膜の緻密性がなく、可塑剤がブリードし易いからである。
【0008】
このような事情から、シーリング材のメーカー各社は、ノンブリードタイプのシーリング材の開発に着手し、これは5年程度前から使われはじめ、実用化されている。このタイプのシーリング材は、コーキングガンを使って施工する2液型ポリウレタン樹脂系であり、ホットライフに制約があるため、壁つなぎ除去跡の処理には作業性の面から使用できない。
【0009】
このため、その後、おおよそ2年ほど前に、壁つなぎ除去跡へのシーリング材として、カートリッジを用いた1液型のノンブリードポリウレタン樹脂系のシーリング材が開発され、現在ではこのタイプのシーリング材が使用されている。ただ、現在、「ノンブリードシーリング材」として市販されている製品も、ブリードしにくい可塑剤を使っているだけであり、そのノンブリード効果も、メーカーによってかなりバラツキがあり、また、使い方によっては、本来の性能が発揮されないこともある。
【0010】
壁つなぎ跡の処理の場合は、前述のとおり、作業時間に制約があるため、未硬化のシーリング材の上に上塗塗料の1回塗りのみで補修することになる。しかし、未硬化のシーリング材は、補修塗りした上塗塗料の乾燥、硬化を阻害し、塗膜の造膜を妨げる。その結果、正常塗膜であれば防止できたはずである、シーリング材に含まれる可塑剤のブリードをもたらす可能性が出てくる。補修塗りが終わった後に降雨、結露等があれば更に造膜性が悪くなる。
【0011】
一方、塗料メーカーも前述のような可塑剤移行を防止するため、未硬化のシーリング材の上に塗るプライマー(ブリードオフプライマー、バリアプライマーなどと称されている。)を開発し、この問題に対処してきた。しかしながら、これらのプライマーは、目地部には有効であっても、前述のように作業時間に制約がある壁つなぎ処理には適していない。
【0012】
このように、壁つなぎ部の塗装は、作業時間に制約があるため、上塗塗料の1回塗りのみであり、厳密に言えば、仕様書通り施工されなかったことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、壁つなぎ除去跡の補修に使用したシーリング材に含まれる可塑剤のブリードに起因する塗膜汚染や造膜性の問題を解決し、壁つなぎ部の周辺の塗膜外観との完全な均一化を可能にする、新規且つ有用な壁つなぎ除去跡の補修方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ポリエチレンシート上に微弾性フィラーを塗付し、その上に下塗塗料の1層目と上塗塗料の2層目を塗付し、塗膜が乾燥した時点で、ポリエチレンシートから塗膜を剥がして壁つなぎの径のサイズに合わせて切断し、足場解体と並行してポリエチレンシートから剥がしたフリーフィルムをシーリング材面へ貼付することを特徴とする壁つなぎ除去跡の補修方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、予め塗膜すなわちフリーフィルムを作っておくことに着目し、下記の工程で補修することにより、壁つなぎ除去跡補修に係る前記問題点の解決を図ったものである。
【0016】
〈(1)ポリエチレンシートによるフリーフィルムの作製〉
上塗塗料の1層目と上塗塗料の2層目を、微弾性フィラーを介して、ポリエチレンシートの上に塗る。図2は、本発明を説明する図で、その状態を示している。図2中、11はポリエチレンシート、12は微弾性フィラー(下塗)、13は上塗塗料の1層目、14は上塗塗料の2層目である。上塗塗料としては、1層目、2層目とも、アクリル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料またはシリコーン樹脂系塗料が用いられる。
【0017】
〈(2)フリーフィルムを所定サイズに切断〉
塗膜が乾燥したら、ポリエチレンシートから塗膜を剥がし、その塗膜すなわちフリーフィルムを壁つなぎ部の広さサイズに合わせて切断する。
【0018】
〈(3)フリーフィルム片のシーリング材面への貼付〉
足場解体と並行してポリエチレンシートから剥がし、壁つなぎ部の広さサイズに合わせて切断たフリーフィルムを、壁つなぎ部周辺のシーリング材面へ貼付する。未硬化のシーリング材の粘着は、塗装する際にはマイナスになるが、この場合は、フリーフィルムの接着剤としてプラスに作用する。
【0019】
このように、本発明によれば、シーリング材面の上に正常な塗膜が形成されることになり、可塑剤のブリードが防止できる。また、従来の上塗塗料の1回塗りしかできなかった場合と異なり、仕様書通りの施工がされることになり、壁つなぎ部の周辺の塗膜外観との、完全な均一化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】建築物の外壁に対する“壁つなぎ”部分を説明する図
【図2】本発明を説明する図
【符号の説明】
【0021】
1 建築物
2 建築物に設けられたアンカー
3 壁つなぎ
4 アンカー2に対するボルト
5 建枠7に対する係止部分
6 足場
7 建枠
11 ポリエチレンシート
12 微弾性フィラー(下塗)
13 上塗塗料の1層目
14 上塗塗料の2層目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンシート上に微弾性フィラーを塗付し、その上に上塗塗料の1層目と上塗塗料の2層目を塗付し、塗膜が乾燥した時点で、ポリエチレンシートから塗膜を剥がして壁つなぎの径のサイズに合わせて切断し、足場解体と並行してポリエチレンシートから剥がしたフリーフィルムをシーリング材面へ貼付することを特徴とする壁つなぎ除去跡の補修方法。
【請求項2】
前記上塗塗料の1層目及び上塗塗料の2層目が、アクリル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料またはシリコーン樹脂系塗料であることを特徴とする請求項1に記載の壁つなぎ除去跡の補修方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−138410(P2007−138410A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329865(P2005−329865)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(505423542)株式会社サカクラ (1)
【Fターム(参考)】