説明

壁パネルおよび該壁パネルを取り付けるための壁下地材、並びにそれらを用いた壁面構造

【課題】 工具等を用いることなく、また、壁面を損傷することなく、住宅や店舗内部の壁面を自由自在に、かつ、容易に取り替えることができ、住宅や店舗内部の雰囲気を一新することができる壁パネルおよび該壁パネルを取り付けるための壁下地材、並びにそれらを用いた壁面構造を提供することである。
【解決手段】 化粧ボードの背面上部に取付具を備えた壁パネルであって、前記取付具は化粧ボードに固着される板状固定部と該板状固定部からその先端が上方を向くように略垂直方向に突出する断面弧状の板状挿嵌部とからなることを特徴とする壁パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅や店舗内部の壁面を、書画を展示したようなイメージを与えるギャラリー(美術品陳列室)的な壁面とするための壁パネルおよび該壁パネルを取り付けるための壁下地材、並びにそれらを用いた壁面構造に関し、さらに詳しくは、ギャラリーが定期的に書画を入れ替えるように、壁面を自由自在に入れ替えて、内部の雰囲気を一新することができる壁パネルおよび該壁パネルを取り付けるための壁下地材、並びにそれらを用いた壁面構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅や店舗内部の壁面を装飾する方法としては、壁面表面に壁紙や化粧シートを貼着する方法、あるいは、壁紙や化粧シートを貼着した壁パネルを用意しておき、これを壁面に釘打ち法、ビス止め法または接着剤等により取り付ける方法等により行われているが、いずれの方法においても、模様替えや老朽化により貼り替えや交換は素人では困難であると共に工期や工費がかかるという問題があった。
【0003】
そこで、簡単に取り外しや取り付けが可能な壁パネルの取り付け方法として、たとえば、特殊な嵌合金具や螺子止め金具等を使用する方法が各種提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された技術は、モジュール化したパネルを予め裏打ち材の所定の位置に埋め込まれたナットを利用してパネルに形成された貫通孔と前記ナットとを対応させてつまみ付きボルトを貫通孔に挿入しながら前記ナットに螺合させることによりパネルを裏打ち材に取り付けるものであり、パネルの取り付けや取り外しがつまみ付きボルトで可能であり、工具を用いることなく手指で容易にパネルを着脱することができる点で有用な技術であり、機能面では優れている反面、パネルを取り付けた壁面につまみ付きボルトが表出するために、意匠面においては表出する見つまみ付きボルトの見苦しさが拭えないものであった。
【特許文献1】特開平06−341207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、工具等を用いることなく、また、壁面を損傷することなく、住宅や店舗内部の壁面を自由自在に、かつ、容易に取り替えることができ、住宅や店舗内部の雰囲気を一新することができる壁パネルおよび該壁パネルを取り付けるための壁下地材、並びにそれらを用いた壁面構造を提供することであり、特に住宅や店舗内部の壁面を書画で飾ったようなイメージを演出することができる壁パネルおよび該壁パネルを取り付けるための壁下地材、並びにそれらを用いた壁面構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明は、化粧ボードの背面上部に取付具を備えた壁パネルであって、前記取付具は化粧ボードに固着される板状固定部と該板状固定部からその先端が上方を向くように略垂直方向に突出する断面弧状の板状挿嵌部とからなることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2記載の本発明によれば、請求項1記載の壁パネルにおいて、前記断面弧状の板状挿嵌部が前記板状固定部の上端から突出していることを特徴とすることができる。
【0008】
また、請求項3記載の本発明によれば、請求項1または2に記載の壁パネルにおいて、化粧ボードの背面下部にダボないしダボ穴が設けられていることを特徴とすることができる。
【0009】
また、請求項4記載の本発明によれば、請求項1記載の壁パネルにおいて、前記化粧ボードが木質系基材に化粧シートを貼着したものであることを特徴とすることができる。
また、請求項5記載の本発明によれば、請求項1から3のいずれかに記載の壁パネルにおいて、前記板状固定部の下端にその一端が延設され、その他端に前記板状挿嵌部側に突出する突出部を有する板状支持部が設けられていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、請求項6記載の本発明の壁下地材は、断面弧状でその下端に挿入口を備えた少なくとも一つの挿嵌溝が形成された挿嵌部を有するレール状係合型材を壁体表面に水平方向に一本ないし間隔をあけて複数本を取り付けると共に前記レール状係合型材の下部ないし前記レール状係合型材間に基板を設け、該基板にダボ穴ないしダボを設けてなることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項7記載の本発明の壁面構造は、壁パネルに設けた板状挿嵌部を壁下地材のレール状係合型材の挿入口から挿嵌溝に挿嵌すると共に壁パネルに設けたダボないしダボ穴を壁下地材の基板に設けたダボ穴ないしダボに挿入することにより壁パネルを壁下地材に取り付けたことを特徴とするものである。
また、請求項8に記載の本発明の壁面構造は、断面弧状でその下端に挿入口を備えた少なくとも一つの挿嵌溝が形成された挿嵌部を有し、壁体表面に水平方向に取り付けられる少なくとも一つのレール状係合型材と、前記レール状係合型材の下部に取り付けられる基板と、請求項1から5のいずれかに記載の壁パネルと、を備え、前記壁パネルの板状挿嵌部は、前記レール状係合型材の挿嵌溝に嵌合している。
また、請求項9に記載の本発明の壁面構造によれば、上記壁面構造において、前記化粧ボードの背面下部と前記基板とを着脱自在に固定する固定機構がさらに設けることができる。
また、請求項10に記載の本発明の壁面構造は、断面弧状でその下端に挿入口を備えた少なくとも二つの挿嵌溝が上下方向に並ぶように形成された挿嵌部を有し、壁体表面に水平方向に取り付けられる少なくとも一つのレール状係合型材と、前記レール状係合型材の下部に取り付けられる基板と、請求項5に記載の壁パネルと、棚板、当該棚板の後端部に設けられ、その先端が上方を向くように略垂直方向に突出する断面弧状の板状挿嵌部、及び前記棚板の下面の一点とこの棚板の後端より下方の一点とを結び当該棚板を支持する補強部を有する棚体と、を備え、前記壁パネルの板状挿嵌部は、前記レール状係合型材の下方の挿嵌溝に嵌合し、前記棚体の板状挿嵌部は、前記レール状係合型材の上方の挿嵌溝に嵌合することで、前記壁パネル上に配置され、前記棚体の補強部において前記壁パネルと当接する下端部と、前記壁パネルの板状支持部とは、前記化粧ボードを挟んで対向する位置に配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、予め化粧ボードの背面上部に板状挿嵌部を有する取付具とさらには背面下部にダボないしダボ穴を有する壁パネルを用意すると共に、予め挿嵌溝が形成された挿嵌部を有するレール状係合型材を壁体表面に水平方向に一本ないし間隔をあけて複数本を取り付けると共にレール状係合型材の下部ないしレール状型材間に基板を設け、さらに前記基板にダボ穴ないしダボを設けた壁下地材を用意し、壁パネルに設けた板状挿嵌部を壁下地材のレール状係合型材の挿嵌溝に挿嵌すると共に壁パネルに設けたダボないしダボ穴を壁下地材の基板に設けたダボ穴ないしダボに挿入することにより壁パネルを壁下地材に取り付けた壁面構造としたことにより、(1)壁パネルの取り付け・取り外しを壁パネルに設けた板状挿嵌部をレール状係合型材に設けた挿嵌溝に着脱すればよいので、工具等を用いることなく誰でも容易に行うことができ、また、(2)壁体表面に壁下地材が予め設けてあるために、壁体を損傷することがなく、また、(3)壁パネルは木質系基材の壁面とした際に表出する面に木目調、石目調、布目調、ヘアーライン調等の化粧シートや布を貼着した構成、あるいは、鏡を取り付けた構成、あるいは、天然木、天然石そのものを用いた構成など種々の構成が可能であると共に組み合わせも自在であり、興趣に富んだ壁面とすることができ、また、(4)壁パネルが壁体表面から壁下地材を介して前面に突出した状態で設けられるために、住宅や店舗内部の壁体表面に書画を飾ったようなイメージを演出することができるという数々の優れた効果を奏するものである。
さらに、壁パネルを覆うように棚体を設ける場合、壁パネルにおける板状固定部から突出する支持部と、棚体の支持板部の下端部とが、化粧ボードを挟んで対向する位置に配置されるように構成すると、次の効果を得ることができる。棚板に物品をのせた場合、棚板には、下向きの荷重が作用する。これを支持するのが上述した補強部であるが、この荷重は補強部の下端、つまり棚板の後端より下方の点に作用するため、その押圧力によって化粧ボードが損傷する恐れがある。これに対して、上述したように構成すると、補強部の下端に作用する力を、取付具の板状支持部で受け止めることができるため、化粧ボードが損傷するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳述する。なお、以下の説明では、壁面から突出する方向を「前」、その反対方向を「後」と称することとする。図1は本発明にかかる壁パネルの構成部材の取付具の一実施例を示す(a)は斜視図,(b)は断面図、図2は本発明にかかる壁パネルの構成部材の取付具の他の実施例を示す(a)は斜視図,(b)は断面図、図3は本発明にかかる壁パネルの一実施例を示す斜視図、図4は本発明にかかる壁パネルの他の実施例を示す斜視図、図5は本発明にかかるレール状係合型材の第1実施形態を示す(a)は斜視図,(b)は断面図、図6は本発明にかかるレール状係合型材の第2実施形態を示す(a)は斜視図、(b)は断面図、図7は本発明にかかるレール状係合型材の第3実施形態を示す(a)は斜視図,(b)は断面図、図8は本発明にかかる壁下地材の取付状態の一実施例を示す(a)は平面図,(b)は(a)のX−X線断面図,(c)は(a)のY−Y線の要部断面図、図9は本発明にかかる壁面構造の一実施例を示す(a)は斜視図,(b)は(a)の上下方向の要部断面図、図10は本発明にかかる壁面構造の他の実施例を示す図9(b)に対応する図、図11は本発明にかかる壁面構造に用いる棚受け用係止型材の一実施例を示す(a)は斜視図,(b)は断面図,(c)は棚受け用係止型材に棚板を装着した状態を示す図であって、図中の1,1’は上板、2,2’,2”は下板、3は上段挿嵌溝、3aは上段挿入口、3bは挿入口、4は下段挿嵌溝、4aは下段挿入口、6は垂直状突起、7,7’は垂下状突起、8,8’,8”は板状取付縁、9は支持縁、10は板状固定部、11は板状挿嵌部、12は板状突起部、13は支持部、15は棚板挿嵌部、16は棚板挟持用上板部、17は支持板部、18は棚板挟持用下板部、19は板状挿入突起、20は化粧ボード、21,21’は挿入溝、22はダボ穴、33は挿嵌溝、34は板状突起、35は嵌合凸部、36はL字状切欠部、37は断面略コの字状凹部、38はエンドカバー、39はダボ、A,S,Tはレール状係合型材、B,B’は壁パネル、Cは棚受け用係止型材、D,D’は取付具、Eは棚部材、Fは基板、Lは挿嵌部、Mは壁下地材、N1,N2は壁面構造、Qは螺子、Rは螺子孔、Vは棚板、Wは壁体をそれぞれ示す。
【0014】
最初に、壁パネルについて説明する。図1は本発明にかかる壁パネルの構成部材の取付具の一実施例を示す(a)は斜視図,(b)は断面図であって、取付具Dはアルミニウム等の金属、あるいは、合成樹脂で形成された板状固定部10と、該板状固定部10の一方の端部からその先端が前記板状固定部10から乖離するように略垂直方向に突出する断面弧状の板状挿嵌部11と、前記板状固定部11の前記一方の端部から前記板状挿嵌部11と反対側に略垂直方向に突出する板状挿入突起部12とからなるものである。図中の符号Rは螺子孔を示すが、これ以後の各図に示す符号Rも同じ意味である。
【0015】
図2は本発明にかかる壁パネルの構成部材の取付具の他の実施例を示す(a)は斜視図,(b)は断面図であって、取付具D’は図1に示した取付具Dにおいて、前記板状固定部10の他方の端部にその一方の端部が連接し、その他方の端部に前記板状挿嵌部11側に突出する断面T字状突出部を有する支持部13とからなるものであって、これ以外は図1に示した取付具Dと同じである。
【0016】
図3は本発明にかかる壁パネルの一実施例を示す斜視図であって、壁パネルBは化粧ボード20の背面上部に挿入溝21が設けられると共に背面下部にダボ穴22が設けられ、前記挿入溝21に前記取付具Dに設けた前記板状挿入突起部12を挿入すると共に前記板状固定部10に設けた螺子孔R(図1参照)に螺子Qを螺着して化粧ボード20の背面上部に前記取付具Dを取り付けたものである。なお、化粧ボード20は、壁面とした際の、たとえば、一般木材、中密度繊維板(いわゆる、MDF)、合板、パーティクルボード等の木質系基材の表出面に、たとえば、木目調、石目調、布目調、ヘアーライン調等の化粧シートや布等が貼着された、あるいは、鏡を取り付けた、あるいは、天然木や天然石そのものからなるものである。
【0017】
図4は本発明にかかる壁パネルの他の実施例を示す斜視図であって、壁パネルB’は図3に示した取付具Dに代えて取付具D’を同様にして取り付けたものである。
【0018】
次に、壁下地材について説明する。壁下地材は壁体表面に取り付けられるものであって、レール状係合型材と基板とから構成されるものである。
【0019】
図5は本発明にかかるレール状係合型材の第1実施形態を示す(a)は斜視図,(b)は断面図であって、レール状係合型材Aはアルミニウム等の金属で形成され、壁体表面に専ら水平方向に所定幅に亘って1本ないし複数本が一定の間隔をあけて取り付けられるもので、上板1と下板2とからなり、前記上板1と下板2との間に、それぞれ断面が上向き円弧状で下端にそれぞれ上段挿入口3aと下段挿入口4aを有する上段挿嵌溝3と下段挿嵌溝4とからなる上下二段の2条の挿嵌溝が形成された挿嵌部Lと、前記上板1の前記上・下段挿入口3a、4aと対向する側の端縁に前記上・下段挿入口3a、4a側に開口する断面コの字状の板状取付縁8と前記下板2の前記上・下段挿入口3a、4aと対向する側の端縁近傍に前記下板2から垂下形成された逆L字状の支持縁9と、前記上板1に前記取付縁8に対して間隔をあけて前記取付縁8に平行に設けられた垂直状突起6と前記下板2に前記支持縁9に対して間隔をあけて前記支持縁9に平行に設けられた垂下状突起7とからなるものである。前記レール状係合型材Aは後述する壁下地材Mにおいて、基本的には中間部に用いられるレール状係合型材である。なお、図5においては、前記レール状係合型材Aを上下二段の2条の挿嵌溝が形成されたものを示したが、基本的には1条の挿嵌溝が形成されていればよいものである。2条の挿嵌溝を設ける理由については後述する。また、後述するが、前記取付縁8と前記垂直状突起6との間、および、前記支持縁9と前記垂下状突起7との間に基板Fが嵌合される。
【0020】
図6は本発明にかかるレール状係合型材の第2実施形態を示す(a)は斜視図,(b)は断面図であって、レール状係合型材Sはアルミニウム等の金属で形成され、図5で説明したレール状係合型材Aの上方に位置し、かつ、水平方向に取り付けられるものであって、後述する壁下地材Mにおいて、基本的には最上部に用いられるレール状係合型材である。レール状係合型材Sは上板1’と下板2’との間に、断面が上向き円弧状で下端に挿入口3bを有する挿嵌溝33が形成された挿嵌部Lと、前記下板2’の前記挿入口3bと対向する側の端縁に垂下形成された逆コの字状の取付縁8’と、前記下板2’に前記取付縁8’に対して間隔をあけて前記取付縁8’に平行に設けられた板状の垂下状突起7’とからなるものである。なお、後述するが前記逆コの字状の取付縁8’と前記垂下状突起7’との間に基板Fが嵌合される。
【0021】
図7は本発明にかかるレール状係合型材の第3実施形態を示す(a)は斜視図,(b)は断面図であって、レール状係合型材Tはアルミニウム等の金属で形成され、図5で説明したレール状係合型材Aの下方に位置し、かつ、水平方向に取り付けられるものであって、後述する壁下地材Mにおいて、基本的には最下部に用いられるレール状係合型材である。レール状係合型材Tは下板2”の長手方向の一方の端辺に垂直上方に突出する板状突起34を備えた断面h字状の突起部と、他方の端辺に垂直上方に起立形成された断面略柄杓(ひしゃく)状の取付縁8”と、前記板状突起34と前記取付縁8”との間に断面T字状の嵌合凸部35が設けられたものである。一方の端部がT字状に切り欠かれたT字状溝を有する基板Fが前記嵌合凸部35に前記T字状溝を嵌入させて前記板状突起34と前記取付縁8”との間に嵌合される。なお、今まで説明したレール状係合型材A、S、Tはいずれも、後述する壁下地材Mとして用いられるものであるが、図5〜7においてはいずれも螺子孔Rを取付縁8,8’,8”に穿設したものを示したが、たとえば、材料がアルミニウムの押出し型材からなる場合は、予め螺子孔Rを設けることなく取り付け時に前記取付縁8,8’,8”に直接に螺子を螺着してもよいものである。また、T字状溝を有しない基板Fを、嵌合凸部35に嵌合するようにしてもよいものである。
【0022】
図8は本発明にかかる壁下地材の取付状態の一実施例を示す(a)は平面図,(b)は(a)のX−X線断面図,(c)は(a)のY−Y線の要部断面図であって、壁下地材Mは図6に示したレール状係合型材Sと、図5に示したレール状係合型材T(2本)と、図7に示したレール状係合型材Tとが水平方向に壁体Wの表面に上部から順に所定間隔をあけて配設されると共に各レール状係合型材間(3列)に複数枚の基板F(図8上、各列3枚で合計9枚の定寸の基板F)が嵌合されると共に前記基板Fの隣接部において、一方側の前記基板F(図8上、右側に位置する基板F)の端部が断面L字状に切り欠かれた断面L字状切欠部36を有し、前記基板Fの隣接部に断面略コの字状凹部37が形成され、さらに両側端面に係合型材S,A,Tの側端面および前記基板Fの側端面を被覆する、たとえば、黒色に着色された合成樹脂製のエンドカバー38が設けられている。前記エンドカバー38は断面T字状であって、係合型材S,A,Tが表出するように当該部分が切り欠かれている。これは、前記エンドカバー38を螺子等で基板Fに螺着する場合に基板Fの上面に位置する前記エンドカバー38の部分で螺着するためであり、壁下地材Mを壁体Wの表面の略全面に設ける場合に前記エンドカバー38の取り付けを容易なものとすることができる。なお、前記断面略コの字状凹部37は、たとえば、図示はしないが、必要に応じて、壁面に棚を取り付ける場合に用いられる棚支柱型材(いわゆるガチャ柱)が嵌め込まれる溝として用いられるものであって、棚支柱型材(いわゆるガチャ柱)を嵌め込まない場合には、たとえば、黒色に着色された合成樹脂製の前記断面略コの字状凹部37に係合する形状の成形品で前記断面略コの字状凹部37とその近傍が被覆されるものである。このように構成することにより、壁下地材Mの前面に前記壁パネルB,B’を取り付けた際に、前記基板Fが前記成形品で被覆されているので、見栄えのよいものとすることができる。また、前記断面略コの字状凹部37は上記した形成方法に限るものではなく、たとえば、上記した1列を一枚の大きい基板で構成し、略コの字状に切削加工して形成してもよいものである。
【0023】
また、前記基板Fには下部にダボ39が設けられ、前記壁パネルB,B’に設けたダボ穴22をこれに挿入して前記壁パネルB,B’の水平方向の位置決めができるようになっているし、また、前記基板Fは上下方向の両端部がL字状に切削加工され、この部分が、たとえば、レール状係合型材Sにあっては前記取付縁8’と前記垂下状突起7’との間に嵌合され、また、レール状係合型材Aにあっては前記取付縁8と前記垂直状突起6との間、あるいは、前記支持縁9と前記垂下状突起7との間に嵌合され、また、レール状係合型材Tにあっては、L字状に切削加工された部分の端部にさらにT字状に切り欠かれたT字状溝を形成した基板Fが用いられて前記嵌合凸部35に前記基板Fの前記T字状溝を嵌入させて前記板状突起34と前記取付縁8”との間に嵌合される。
【0024】
具体的に図8を例に挙げて壁下地材Mの取り付け方法を説明する。なお、基板Fは対向する両端部がL字状に切り欠かれたもので、この切り欠かれた両端部がレール状係合型材に嵌合されるものである。壁下地材Mの取り付け方法としては、最初にレール状係合型材Tをその取付縁8”の螺子孔Rに螺子Qを螺着して壁面Wに取り付け、次に一方の端部がT字状に切り欠かれたT字状溝を有する基板Fを前記嵌合凸部35に前記T字状溝を嵌入させて前記板状突起34と前記取付縁8”との間に嵌合し、次に、他方の端部を支持縁9と垂下状突起7で挟むように第1のレール状係合型材Aを嵌合すると共に第1のレール状係合型材Aをその取付縁8の螺子孔Rに螺子Qを螺着して壁面Wに取り付け、次に、新たな基板Fの一方の端部を第1のレール状係合型材Aの前記取付縁8と垂直状突起6との間に嵌合し、次に、他方の端部を支持縁9と垂下状突起7で挟むように第2のレール状係合型材Aを嵌合すると共に第2のレール状係合型材Aをその取付縁8の螺子孔Rに螺子Qを螺着して壁面Wに取り付け、次に、さらに新たな基板Fの一方の端部を第2のレール状係合型材Aの前記取付縁8と垂直状突起6との間に嵌合し、最後に他方の端部を取付縁8’と垂下状突起7’で挟むようにレール状係合型材Sを嵌合して基板F上から前記取付縁8’に設けた螺子孔Rを貫通するように螺子Qを壁体Wに螺着すると共に、図示はしないが前記基板Fの適宜の箇所を螺子により壁体Wに螺着することにより壁体Wへの壁下地材Mの取り付けが完了するものである。前記基板Fの材質としては、一般木材、中密度繊維板(いわゆる、MDF)、合板、パーティクルボード等が適当である。なお、図8上の符号Qは螺着された螺子を示す。
【0025】
図9は本発明にかかる壁面構造の一実施例を示す(a)は斜視図,(b)は(a)の上下方向の要部断面図であって、壁面構造N1は図8で示した壁下地材Mの前記レール状係合型材Sの前記挿嵌溝33に前記壁パネルBをその前記取付具Dに設けた前記板状挿嵌部11を前記挿入口3bから挿入して挿嵌し、また、前記レール状係合型材Aの下段挿嵌溝4に前記壁パネルBをその前記取付具Dに設けた前記板状挿嵌部11を前記下段挿入口4aから挿入して挿嵌し、前記基板Fに設けられたダボ39に前記壁パネルBに設けたダボ穴22を挿入して壁下地材Mに壁パネルBを取り付けたものである。このように構成した壁面構造N1は、壁パネルの取り付け・取り外しを壁パネルに設けた板状挿嵌部を壁下地材Mに設けたレール状係合型材S,Tの挿嵌溝に着脱すればよいので、工具等を用いることなく誰でも容易に行うことができ、また、壁体Wの表面に壁下地材Mが予め設けてあるために、壁体Wを損傷することがなく、また、壁パネルB,B’は壁面とした際に木質系基材の表出する面に木目調、石目調、布目調、ヘアーライン調等の化粧シートや布を貼着した構成、あるいは、鏡を取り付けた構成、あるいは、天然木、天然石そのものを用いた構成など種々の構成が可能であると共に組み合わせも自在であり、興趣に富んだ壁面とすることができ、また、壁パネルB,B’が壁体Wの表面から壁下地材Mを介して前面に突出した状態で設けられるために、住宅や店舗内部の壁体Wの表面に書画を飾ったようなイメージを演出することができるという数々の優れた効果を奏する。
【0026】
図10は本発明にかかる壁面構造の他の実施例を示す図9(b)に対応する図であって、壁面構造N2は図9に示した壁パネルBに代えて壁パネルB’を用いたものである。壁パネルB’を用いることにより、壁パネルB’に設けた取付具D’の支持部13が前記基板Fにより支持されることとなり、壁パネルB’の安定性を得ることができると共に後述する棚部材E(図11参照)を前記レール状係合型材Aの上段挿入口3aから上段挿嵌溝3に挿嵌して取り付けた際に、棚部材E(棚部材上に置かれた物品を含む)の荷重を前記紙パネルB’を介して確実に受けることができるので、壁パネルBに比べて強度のある壁面構造とすることができる。
【0027】
次に、上述した壁パネルに棚を設ける場合について説明する。この壁パネルは、第2レール状係合型材を利用することにより、棚を設けることができる。以下、この棚を構成する棚体について、図11及び図12を参照しつつ説明する。この棚体Eは、棚板Vと、これを支持する棚受け用係止型材Cとで構成されている。図11(a)は棚受け用係止型材Cの斜視図,図11(b)は棚受け用係止型材Cの断面図,図11(c)は棚体の断面図である。また、図12はこの棚体を壁パネルに装着したときの断面図である。
【0028】
図11に示すように、棚受け用係止型材Cはアルミニウム等の金属で形成され、垂直方向に延びる支持板部17を備えており、この支持板部17の上端には、前方に垂直に延びる棚板挟持用上板部16と、後方へ垂直に突出する断面弧状の板状挿嵌部15とが設けられている。板状挿嵌部15は、先端がやや上方に向くように屈曲している。また、後述するように、壁パネルの上端を超えて係合型材に連結されるため、前後方向の長さは、化粧ボードの厚みよりも長くなっている。
【0029】
支持板部17の中間部には、前方へ垂直に延びる棚板挟持用下板部18が設けられており、棚板挟持用上板部16との間に棚板が挿入される。支持板部17において、棚板挟持用下板部18と棚板挟持用上板部16との間には、鋸歯状の板状挿入突起19が形成されており、棚板Vの後端部に形成された挿入溝21’に、この板状挿入突起19が嵌め込まれる。また、支持板部17の下端部と、棚板挟持用下板部18の前端との間には、支持強度を高めるために、板状の連結部41が斜めに架け渡されている。これにより、棚板挟持用下板部18、支持板部17、及び連結部41は、略直角三角形状の断面を形成しており、本発明に係る補強部を構成している。
【0030】
このように構成された棚部材Eは、図示はしないが、図9に示した壁面構造N1とした後に、レール状係合型材Aの上段挿嵌溝3に板状挿嵌部15を上段挿入口3aから挿入して挿嵌することにより壁面パネルBの前面に取り付けられる。このとき、図4に示す壁パネル、つまりを図2に示す取付具D‘を有する壁パネルを使用する場合には、図12に示すように、この取付具D‘の支持部13と支持板部17の下端部Zとが、化粧ボード20を挟んで対向する位置に配置されるように構成する。これにより、次の効果を得ることができる。つまり、棚板Vに物品をのせた場合、棚板Vには、下向きの荷重が作用する。これを支持するのが上述した棚板挟持用下板部18、支持板部17、及び連結部41であるが、この荷重の多くは支持板部17の下端Zに作用するため、その押圧力によって化粧ボード20が損傷する恐れがある。これに対して、上述したように構成すると、支持板部17の下端Zに作用する力を、取付具D‘の支持部13で受け止めることができるため、化粧ボードが損傷するのを防止することができる。
【0031】
なお、前記棚体Eを取り付けない壁面構造にあっては前記レール状係合型材Aを用いることなく、前記挿嵌部L(図5参照)に1条の挿嵌溝が形成されたレール状係合型材(図示せず)を用いればよいものである。
【0032】
また、棚板Vの挟持効果を高めるために棚板挟持用上板部16の前記棚板Vが当接する面および前記棚板挟持用下板部18の前記棚板Eが当接する先端面を粗面加工あるいはゴム塗布加工を施して前記棚板Vの前記棚受け用係止型材Cに対する係止効果を高めてもよいものである。
【0033】
上記棚体Eでは、直角三角形状の補強部を設けているが、これに限定されるものではなく、棚板Vの下面の一点とこの棚板Vの後端より下方の一点とを結ぶように補強部が構成されていればよい。例えば、図11に示す棚体を例とすると、連結部41を有さず支持板部17と棚板挟持用下板部18とで、L字型の補強部にしてもよい。また、棚板挟持用下板部18をなくし、連結部41の前端を棚板Vの下端に固定することで、V字型の補強部にすることもできる。さらにまた、支持板部17を短くし、連結部41と支持板部17とを連結しないような構成にすることもできる。
【0034】
また、取付具D‘の支持部13の構成も上述したものに限定されず、T字型以外にも、断面矩形状でもよく、要するに、化粧ボード20と基板Fとの間で挟持されるような形状であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明にかかる壁パネルの構成部材の取付具の一実施例を示す(a)は斜視図,(b)は断面図である。
【図2】本発明にかかる壁パネルの構成部材の取付具の他の実施例を示す(a)は斜視図,(b)は断面図である。
【図3】本発明にかかる壁パネルの一実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明にかかる壁パネルの他の実施例を示す斜視図である。
【図5】本発明にかかるレール状係合型材の第1実施形態を示す(a)は斜視図,(b)は断面図である。
【図6】本発明にかかるレール状係合型材の第2実施形態を示す(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図7】本発明にかかるレール状係合型材の第3実施形態を示す(a)は斜視図,(b)は断面図である。
【図8】本発明にかかる壁下地材の取付状態の一実施例を示す(a)は平面図,(b)は(a)のX−X線断面図,(c)は(a)のY−Y線の要部断面図である。
【図9】本発明にかかる壁面構造の一実施例を示す(a)は斜視図,(b)は(a)の上下方向の要部断面図である。
【図10】本発明にかかる壁面構造の他の実施例を示す図9(b)に対応する図である。
【図11】本発明にかかる壁面構造に用いる棚受け用係止型材の一実施例を示す(a)は斜視図,(b)は断面図,(c)は棚受け用係止型材に棚板を装着した状態を示す図である。
【図12】図10の壁面構造に、図11の棚体を取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1,1’ 上板
2,2’,2” 下板
3 上段挿嵌溝
3a 上段挿入口
3b 挿入口
4 下段挿嵌溝
4a 下段挿入口
6 垂直状突起
7,7’ 垂下状突起
8,8’,8” 板状取付縁
9 支持縁
10 板状固定部
11 板状挿嵌部
12 板状突起部
13 支持部
15 棚板挿嵌部
16 棚板挟持用上板部
17 支持板部
18 棚板挟持用下板部
19 板状挿入突起
20 化粧ボード
21,21’ 挿入溝
22 ダボ穴
33 挿嵌溝
34 板状突起
35 嵌合凸部
36 L字状切欠部
37 断面略コの字状凹部
38 エンドカバー
39 ダボ
41 連結部
A,S,T レール状係合型材
B,B’ 壁パネル
C 棚受け用係止型材
D,D’ 取付具
E 棚体
F 基板
L 挿嵌部
M 壁下地材
N1,N2 壁面構造
Q 螺子
R 螺子孔
V 棚板
W 壁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧ボードと、
前記化粧ボードの背面上部に設けられた取付具と、を備え、
前記取付具は、化粧ボードに固着される板状固定部と、当該板状固定部からその先端が上方を向くように略垂直方向に突出する断面弧状の板状挿嵌部とを備えている、壁パネル。
【請求項2】
前記板状挿嵌部が前記板状固定部の上端から突出している、請求項1に記載の壁パネル。
【請求項3】
化粧ボードの背面下部にダボないしダボ穴が設けられている、請求項1または2に記載の壁パネル。
【請求項4】
前記化粧ボードが木質系基材に化粧シートを貼着したものである、請求項1から3のいずれかに記載の壁パネル。
【請求項5】
前記板状固定部の下端にその一端が延設され、その他端に前記板状挿嵌部側に突出する突出部を有する板状支持部が設けられている、請求項1から4のいずれかに記載の壁パネル。
【請求項6】
断面弧状でその下端に挿入口を備えた少なくとも一つの挿嵌溝が形成された挿嵌部を有するレール状係合型材を壁体表面に水平方向に一本ないし間隔をあけて複数本を取り付けると共に前記レール状係合型材の下部ないし前記レール状係合型材間に基板を設け、該基板にダボ穴ないしダボを設けてなることを特徴とする壁下地材。
【請求項7】
壁パネルに設けた板状挿嵌部を壁下地材のレール状係合型材の挿入口から挿嵌溝に挿嵌すると共に壁パネルに設けたダボないしダボ穴を壁下地材の基板に設けたダボ穴ないしダボに挿入することにより壁パネルを壁下地材に取り付けたことを特徴とする壁面構造。
【請求項8】
壁面に配置される壁面構造であって、
断面弧状でその下端に挿入口を備えた少なくとも一つの挿嵌溝が形成された挿嵌部を有し、壁体表面に水平方向に取り付けられる少なくとも一つのレール状係合型材と、
前記レール状係合型材の下部に取り付けられる基板と、
請求項1から5のいずれかに記載の壁パネルと、を備え、
前記壁パネルの板状挿嵌部は、前記レール状係合型材の挿嵌溝に嵌合している、壁面構造。
【請求項9】
前記化粧ボードの背面下部と前記基板とを着脱自在に固定する固定機構がさらに設けられている、請求項8に記載の壁面構造。
【請求項10】
壁面に配置される壁面構造であって、
断面弧状でその下端に挿入口を備えた少なくとも二つの挿嵌溝が上下方向に並ぶように形成された挿嵌部を有し、壁面表面に水平方向に取り付けられる少なくとも一つのレール状係合型材と、
前記レール状係合型材の下部に取り付けられる基板と、
請求項5に記載の壁パネルと、
棚板、当該棚板の後端部に設けられ、その先端が上方を向くように略垂直方向に突出する断面弧状の板状挿嵌部、及び前記棚板の下面の一点とこの棚板の後端より下方の一点とを結び当該棚板を支持する補強部を有する棚体と、を備え、
前記壁パネルの板状挿嵌部は、前記レール状係合型材の下方の挿嵌溝に嵌合し、
前記棚体の板状挿嵌部は、前記レール状係合型材の上方の挿嵌溝に嵌合することで、前記壁パネル上に配置され、
前記棚体の補強部において前記壁パネルと当接する下端部と、前記壁パネルの板状支持部とは、前記化粧ボードを挟んで対向する位置に配置されている、壁面構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−71011(P2007−71011A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75739(P2006−75739)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】