説明

壁材および壁構造

【課題】壁体を形成したときに、壁体の正面と背面とが意匠性を有するようになるとと共に、容易に壁体を形成することが可能な壁材およびそれ用いた壁体の壁構造を提供する。
【解決手段】複数連設することにより壁体を形成する壁材(10)であって、化粧面である第一表面(22)を有する第一前板(20)と、前記第一前板(20)の幅と同じ幅を有し、且つ化粧面である第二表面(32)を有する第二前板(30)と、第一前板(20)と接合部(40)とが略直角を成して接合すると共に、第二前板(30)と接合部(40)とが略直角を成して接合して、第一前板の第一表面(22)と第二前板の第二表面(32)とをそれぞれ壁材(10)の外側に向けて配置する、接合部(40)と、第一前板(20)に対して略直角を成して延在する第一フランジ部(50)と、第二前板(30)に対して略直角を成して延在する第二フランジ部(60)と、備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数連設して壁体を構成する壁材およびその壁材を連設して形成した壁体の壁構造に関する。
【0002】
採光を必要とする外壁や屋内での仕切り壁を施工する場合、従来、透光性のあるガラス製の壁材を並べて壁体が形成されてきた。しかしながら、ガラス製の壁材は高価である上に、重量が大きく、取り扱いが容易でないため、壁材を並べて外壁等を施工する際の施工性がよくないと共に、施工費用も高く付くという課題があった。また、壁材相互の隙間(目地)を目地材等で詰めないと、隙間から透視されるという課題があり、さらに壁材相互の間隔調整も難しいという課題があった。
【0003】
そのような課題に鑑み、特許文献1、2には、縦長の前板を有する断面がコ字形の壁材と、断面がハット形の壁材とを組み合わせて壁体を構成する、合成樹脂製の壁材およびそれらを用いた壁構造が開示されている。壁材の材質として合成樹脂を用いることにより、従来のガラス製の壁材と比較して軽量化され施工性がよくすることができると共に、合成樹脂製は比較的安価であるので壁体のコストを下げることが可能になった。また、断面がハット型の壁体のフランジ部により目地を閉塞するので、目地材等で埋めることなく壁体を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−321923号公報
【特許文献2】特開2007−092519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の壁材や、特許文献1、2で示された壁材を並べて構成した壁体において、その正面は化粧面である壁材の前板表面で構成されるので意匠性は高くなる。しかしながら、壁体の背面は、壁材の左右の側板等が見えるため壁体の正面と意匠が異なり、特に壁材の前板裏側が露出する場合は意匠性が下がるという課題があった。特に屋内の仕切り壁の場合、壁体の正面だけでなく背面も視覚されるため、背面の意匠性が下がるのは望ましくない。背面側の意匠性を高くするために、背面側も正面側と同様に壁材を並べて形成すると、使用する壁材が増加すると共に、壁体を形成する工程数が増加して施工性が悪くなり、結果として費用が増加する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述の課題を解決すべく、壁体を形成したときに、壁体の正面および背面が同等の意匠性を有するようになるとと共に、容易に壁体を形成することが可能な壁材およびそれを用いた壁体の壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的を達成するために、本発明に係る壁材は、複数連設することにより壁体を形成する壁材であって、化粧面である第一表面を有する第一前板と、第一前板の幅と同じ幅を有し、且つ化粧面である第二表面を有する縦長の第二前板と、第一前板の裏面と第二前板の裏面とを接合する接合部であって、第一前板の一方の側部と接合部の一方の側部とが略直角を成して接合すると共に、第二前板の一方の側部と接合部の他方の側部とが、第一前板と反対の方向に略直角を成して接合して、第一前板の第一表面と第二前板の第二表面とをそれぞれ壁材の外側に向けて配置する、接合部と、第一前板の他方の側部から、第一前板の第一裏面方向に、第一前板に対して略直角を成して延在する第一フランジ部と、第二前板の他方の側部から、第二前板の第二裏面方向に、第二前板に対して略直角を成して延在する第二フランジ部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明に係る壁材では、接合部は、第一フランジ部に向かって突出する第一連結部と、第二フランジ部に向かって突出する第二連結部とを備え、第一フランジ部には、前に連設する壁材の第二連結部が嵌合して、第一フランジ部と前に連設する壁材の接合部とが連結するよう、第一連結孔が形成されており、第二フランジ部には、次に連設する壁材の第一連結部が嵌合して、第二フランジ部と次に連設する壁材の接合部とが連結するよう、第二連結孔が形成されていることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明に係る壁材では、接合部の第一フランジ部または第二フランジ部に対向する面の少なくとも何れか一方に、接合部の強度を補強する補強部材を設けることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る壁材では、第一連結孔および第二連結孔は楕円形に形成され、該楕円形の短径は第一連結部および第二連結部の略同じ幅を有していることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る壁材では、壁材の接合部と次に連設する壁材の第二フランジ部とを連結すると共に、壁材の第一フランジ部と次に連設する壁材の接合部とを連結することにより、壁体を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の壁材は、化粧面である第一前板の表面および第二前板の表面が、接合部により互いに反対方向かつ壁材の外側に向けて配置されているので、壁材を連設して壁体を形成すると、壁体の正面を化粧面である壁材の第一前板の表面により構築することができると共に、壁体の背面を化粧面である壁材の第二前板の表面により構築することが可能になる。また、化粧面でない第一前板の裏面および第二前板の裏面は、ともに隠すように配置されるので、それぞれの裏面が壁体の正面または背面に露出することがなく、壁体の意匠性が下がるのを防止できる。従って、壁材を連設して壁体を形成することにより、壁体の正面と背面とは同様の意匠性を有することが可能になる。
【0013】
また、第一の壁材と第二の壁材と第三の壁材とを連設して壁体を形成した場合に、第二の壁材の接合部と、第一の壁材の第二フランジ部と、第三の壁材の第一フランジ部とが連結する。このとき、第二の壁材の接合部と第三の壁材の第一フランジ部とによって壁体の正面に形成される目地を、狭くすることができる。また、第二の壁材の接合部と第一の壁材の第二フランジ部とによって壁体の背面に形成される目地も、狭くすることができる。
【0014】
さらに、接合部から突出した第二連結部を、次に連設する壁材の第一連結孔に嵌合すると共に、第二連結孔に、次に連設する壁材の第一連結部を嵌合することにより、本発明の壁材を連設して壁体を形成することができる。連結孔を連結部に嵌合していくだけなので、壁体の施工が容易であると共に、連設する壁体の位置合わせが容易であるので壁体の施工性がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る壁材を示す斜視図である。
【図2】図1に示す壁材を複数連設して形成した壁体の横断面図である。
【図3】図1に示す壁材を複数連設して形成した壁体の連結部を示す、図2のF−F’線に沿った部分拡大断面図である。
【図4】第一フランジ部に形成された第一連結孔を示す部分拡大図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る壁材を示す斜視図である。
【図6】図5に示す壁材を複数連設して形成した壁体の横断面図である。
【図7】図5に示す壁材を複数連設して形成した壁体の連結部分を示す、図6のJ−J’線に沿った部分拡大断面図である。
【図8】図5に示す壁材を用いて施工される壁体を示す正面図である。
【図9】同壁材を用いて施工された壁体の例を示す、図8のK−K’線に沿った縦断面図である。
【図10】同壁材を用いて施工された壁体の例を示す、図8のM−M’線に沿った横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図に基づいて説明する。なお、添付した図面において同一または類似する構造または機能を有する部材には、同一または類似する参照番号が付されている。また、理解を容易にするために図面の縮尺は、適宜変更されている。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る壁材の斜視図である。
【0018】
本実施形態の壁材は、壁体の構成部材であり、壁材を複数連設することにより壁体を形成することが可能になっている。まず、壁材の各構成要素について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る壁材10は、縦長の第一前板20と、第一前板20の幅W2と略同じ幅W3を有する第二前板30とを備え、第一前板20と第二前板30とは、壁材10の中央に位置する接合部40によって接合されている。
【0019】
第一前板20は、長さL1を有する縦長の平板であり、表面22および裏面24を有している。また、第二前板30も同様に、長さL1を有する縦長の平板であり、表面32および裏面34を有している。第一前板20の表面22および第二前板30の表面32は、化粧面となっている。すなわち、化粧面である第一前板20の表面22および第二前板30の表面32は、本壁材を連設することにより形成される壁体の見え掛りである正面および背面を構成するが、装飾的な色彩や繰形などが加えられているか否かは問わない。例えば、化粧面である第一前板20の表面22および第二前板30の表面32は、防水あるいは防汚などの表面処理を施した平面とすることができる。
【0020】
接合部40も、第一前板20および第二前板30の長さL1と同じ長さを有する縦長の平板であり、長さD4の幅を有している。図1に示すように、第一前板20と接合部40とは、第一前板20の一方の側部26と、接合部40の一方の側部46とにおいて、略直角を成して接合している。一方、第二前板30と接合部40とは、第二前板30の一方の側部36と、接合部40の他方の側部48とにおいて、第二前板30は第一前板20と反対の方向に、略直角を成して接合している。言い換えれば、接合部40は第一前板20の一方の側部26から、第一前板20の裏面方向(図1のB方向)に延びるように接合されている。接合部40は第二前板30の一方の側部36から第二前板30の裏面方向(図1のC方向)に延びるよう接合されている。このような構成により、第一前板20と第二前板30とが接合部40により接合されているので、第一前板20と第二前板30とは、接合部40の幅D4だけ離れて、互いに平行になるよう位置されるが、対峙しないようになっている。第一前板20の表面22と、第二前板30の表面32は、壁材10の外側に向けて配置されるようになる。
【0021】
また、本実施形態の壁材10は、第一前板20の他方の側部28から、第一前板20の裏面方向(図1のB方向)に、第一前板20に対して略直角を成して延在する第一フランジ部50と、第二前板30の他方の側部38から、第二前板30の裏面方向(図1のC方向)に、第二前板30に対して直角を成して延在する第二フランジ部60とを備えている。したがって、第一フランジ部50と、接合部40と、第二フランジ部60とは、第一前板20と第二前板30と直角を成して平行に並んだ構成になる。第一フランジ部50および第二フランジ部60も、第一前板20および第二前板30の長さL1と同じ長さを有する平板であり、第一フランジ部50の幅D5と第二フランジ部60の幅D6は、接合部40の幅D4と略同じ長さである。
【0022】
以下、単に前板と記す場合は第一前板および第二前板の両方を示し、単にフランジ部と記す場合は第一フランジ部と第二フランジ部の両方を示すものとする。
【0023】
壁材10は、前板、接合部、フランジ部により一体的に形成されており、その横断面がS字形に近い形状をしている。壁材10のこのような形状は、一枚の板を折り曲げて製造されるか、または型枠等を用いて一体成形により製造される。
【0024】
図2は、図1に示す壁材10を複数連設して壁体100を構成した状態を示す、壁体100の横断面図である。
【0025】
図2を参照して、図1に示した本実施形態に係る壁材10を連設する方法および連設された壁体100の壁構造について説明する。図2は本実施形態に係る壁材が図面左方向から横方向に連続的に配置されて壁体100が形成された状態を示している。連設された複数の壁材10を区別するため、図面左より壁材10a、10b、10cとし、各壁材の構成部材にはそれぞれに対応するアルファベットを付けて説明する。
【0026】
まず、壁材10aを所定の場所に配置する。次に連設する壁材10bの第一フランジ部50bを、壁材10aの接合部40aと第二フランジ部60aとの間に挿入し、壁材10bを左方向(図2のE方向)に移動させることによって、第一フランジ部50bの外面を壁材10aの接続部40aに連結する。壁材10aの接合部40aと第二フランジ部60aとの間の距離と、壁材10bの第一フランジ部50bと接合部40bとの間の距離は同一であるので、接続部40aと第一フランジ部50bと連結すると同時に、壁材10aの第二フランジ部60aと壁材10bの接合部40bとが連結される。このとき、壁材10aの第二前板30aの裏面34aや接合部40aは、壁材10bの第一前板20bによって隠れるようになる。また、第一前板20bの裏面24bも隠れるようになり、従って前板の裏面やフランジ部が壁体100の正面または背面に露出することがない。次に連結する壁材壁材10cも同様に、壁材10cの第一フランジ部50cを、壁材10bの接合部40bと第二フランジ部60bとの間に挿入して、第一フランジ部50cの外面を接合部40bに連結する。このように本実施形態の壁材10を連設していくことによって、壁体100が構築され、壁体100の正面102と壁体100の背面104が同時に形成されるようになる。また、各壁材10の第二前板30の裏面24や接合部、フランジ部は次に連設される壁材の第一前板20および第二前板30によって隠れるようになる。
【0027】
壁材10a〜10cの第一前板20からなる壁体100の正面102について説明する。壁材10aの接合部40aと壁材10bの第一フランジ部50bとが面を接して連結されている。一方、壁材10aの第一前板20aと壁材10aの接合部40とは直角を成しており、隣接する壁材10bの第一前板20bと第一フランジ部50bとは直角を成している。このため、壁材10aの第一前板20aと壁材10bの第一前板20bとは、同一の法線を有する平面を形成するように配置される。同様に、壁材10bの第一前板20bと壁材10cの第一前板20cもまた、同一の法線を有する平面を形成する。このようにして、壁体100の正面102は、壁材10a〜10cの第一前板20a〜20cからなる平坦な壁面を有することになる。同様に、壁体100の背面104も、壁材10a〜10cの第二前板30a〜30cからなる平坦な壁面を有するようになる。
【0028】
なお、図2に示す壁体100において、本実施形態の壁材10を連設しただけでは、完全な壁面を構築することができない。例えば、図2の壁体100の端部に位置する壁材10aの第一前板20aの裏面24aは露出している。そのため、前板とその両端部から延在するフランジ部からなるコ字形の壁材14を用意し、壁体100の端部に設けることによって、裏面24aを隠し、壁体100の背面104を完成させる。
【0029】
このように複数の壁材10を連設することにより、壁体100の正面102は、複数の壁材10の第一前板20の表面22が並べて構成されると共に、壁体100の背面104は、複数の壁材10の第二前板30の表面32が並べて構成される。壁材10の第一前板20の表面22と、第二前板30の表面32とが同一の意匠を有する場合は、壁体100の正面と背面とは、同一の意匠を有するようになる。また、この際、隣接する第一前板20aと第一前板20bとの間などに形成される目地92a〜92cは非常に狭く、壁材10の第一フランジ部50などが外部から視認できない状態で形成される。また、目地92a〜92cは目地材等で埋める必要がないので、正面102および背面104の意匠性を下げることがない。なお、特に水密性を向上させたい場合には、目地材等を使用しても構わない。この場合でも目地92a〜92cは非常に狭く、目地材幅を非常に狭くできるので意匠性をあまり下げることがない。
【0030】
次に、壁体を構成する際の、隣接する壁材同士を連結する手段について説明する。
本実施形態の壁材10は、上述のように複数の壁材を連設することにより壁体を構成する。連設する手段として、本実施形態の壁材10は、接続部40から突起する連結部と、隣接する壁材の第一フランジ部50もしくは第二フランジ部60に形成された連結孔とを備え、連結部をそれに対応する連結孔に嵌合させることにより、隣接する壁材を連設している。
【0031】
具体的には、図1に示すように、接合部40の所定の位置に、第一フランジ部50に向かって突出する第一連結部70と、第二フランジ部60に向かって突出する第二連結部80とが備えられている。なお、第一連結部70は接合部40により視認できないので、破線で表示されている。また、第一フランジ部50には、隣接する壁材10の第二連結部80が嵌合するよう、第一連結孔72が形成されている。さらに、第二フランジ部60には、隣接する壁材10の第一連結部70が嵌合するよう、第二連結孔82が形成されている。
【0032】
以下、単に連結部と記す場合は第一連結部および第二連結部の両方を示し、単に連結孔と記す場合は第一連結孔と第二連結孔の両方を示すものとする。
【0033】
第一連結孔72が第一フランジ部50に形成される位置は、第二連結部80が配置される接合部40の面上の位置と対応する位置となる。すなわち、第二連結部80が接合部40に配設される縦方向の位置および横方向の位置と、第一連結孔72が第一フランジ部50に形成される縦方向の位置および横方向の位置とを略同一の位置にする。同様に、第二連結孔82が第二フランジ部60に形成される位置は、第一連結部70が配置される接合部40の面上の位置と対応する位置になる。すなわち、第一連結部70が接合部40に配設される縦方向の位置および横方向の位置と、第二連結孔82が第二フランジ部60に形成される縦方向の位置および横方向の位置とが略同一の位置にする。
【0034】
図1および図2に示すように、本実施形態の第一連結部70と第二連結部80とは、接合部40の長手方向中心線上に配置されている。第一連結部70が嵌合する第二連結孔82は第二フランジ部60の長手方向中心線上であって第一連結部70の高さと同じ位置に、第二連結部80が嵌合する第一連結孔72は第一フランジ部50の長手方向中心線上であって第二連結部80の高さと同じ位置に配置されている。
【0035】
連結部の構造について図3を用いて説明する。
【0036】
図3は、図1に示す壁材を複数連設して形成した壁体の連結部を示す、図2のF−F’線に沿った部分拡大断面図である。
【0037】
本実施形態では、第一連結部70および第二連結部80は、それぞれ皿ビスを用いて実現されている。図3に示すように第一連結部70bは、皿ビスを接合部40bの所定の位置に第一フランジ部50bの方向に向けて螺嵌することにより設けられている。同様に、第二連結部80bは、皿ビスを接続部40bの所定の位置に第二フランジ部60の方向に向けて螺嵌することにより設けられている。第一連結部70bは、接合部40の表面から突出した皿ビスの先端部分であり、高さH1を有する突起部となる。同様に、第二連結部80bは、接続部40の表面から突出した皿ビスの先端部分からなるH2の高さを有する突起部となる。確実に壁材同士を連結するために、第一連結部70の高さH1は、第二フランジ部60の厚さT6と同じであるかそれ以上であることが望ましく、同様に第二連結部80の高さH2は、第一フランジ部50の厚さT5と同じであるかそれ以上であることが望ましい。
【0038】
皿ビスを接合部40に螺嵌することにより、連結部を実現することにより、壁体の高さや壁材を連設するのに必要とされる強度に応じて、壁材一つ当たりの連結部の数を容易に増減させることができる。また、皿ビスを用いることにより、ビスの頭が接合部40の表面から出ることなく接合部40に凹凸を生じさせることがない。
【0039】
次に、図4を用いて連結孔の形状と連結部との関係について説明する。
【0040】
図4は、図3の矢印G方向から見た第一フランジ部50cの第一連結孔72cを示す部分拡大図である。
【0041】
図4に示すように、第一フランジ部50cに形成される第一連結孔72cは、第一フランジ部50cの長手方向に長軸を有する楕円形状を有している。この楕円の短軸D8は第二連結部80bの直径D7(すなわち皿ビスのねじ部の直径)と同程度の長さを有する。一方、第一連結孔72cの楕円の長軸D9は、第二連結部80bの直径D7より長い。
【0042】
他の連結孔も同様の楕円形状を有している。連結孔を楕円形状とすることにより、壁材10を形成する素材が周囲温度の変化により膨張、収縮したときに壁材10と第一連結部70や第二連結部80との間に生じ得る応力を吸収することができる。また、壁材10を連設するときに、第一連結部70と第二連結孔82との嵌合、および第二連結部80と第一連結孔72との嵌合が容易になるという利点を有する。
【0043】
上述の連結手段以外の方法として、接着剤を使用して各フランジ部と接合部40とを接合してもよい。しかしながら、連結部と連結孔を嵌合させて連結した方が、接合するフランジ部と接合部の位置がずれにくく、壁体の施工が容易である。
【0044】
また、壁材10の各部の寸法は、施工する壁体の規模に応じて適宜設定されるが、標準的な寸法の一例を示すと、壁体10全体の横幅W1が525mm、前後幅D1が75mm、第一前板20の横幅W2および第二前板30の横幅W3が265mm、接合部40の幅D4、第一フランジ部50の幅D5、第二フランジ部60の幅D6が65mm、構成要素それぞれの平板の厚み(T2〜T6)は5mmである。
【0045】
壁材10の材質は、特に限定しないが、意匠性を考慮すると、透光性のある合成樹脂あるいはガラスであることが望ましい。とくに材質を合成樹脂とした場合、壁材10が軽量化されるので、壁体の施工性がよくなる。壁材10が合成樹脂である場合、合成樹脂として、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリエスなど熱可塑性の各種の樹脂を使用することができる。その中でもポリエステルの一種であるポリカーボネートが好適に使用される。ポリカーボネートは、強度、成形性、価格などのバランスがよく、高品質の壁材を比較的安価に製造することができる。この合成樹脂製の壁材10には、紫外線吸収剤や光安定剤を含有させ、耐候性を高めることが望ましい。
【0046】
次に、本発明の他の実施形態について、図を用いて説明する。
【0047】
図5は他の実施形態に係る壁材10を示す斜視図である。
図6は、図5に示す壁材10を複数連設して壁体100を構成した状態を示す、壁体100の横断面図である。
図7は、図1に示す壁材を複数連設して形成した壁体の連結部を示す、図6のJ−J’線に沿った部分拡大断面図である。
【0048】
本実施形態は、基本的に図1に示した壁体10を用いているが、壁体10の接合部40の両側にさらに補強部材90、92を設けたことが異なる。図5に示すように、補強部材90、92は板状の部材であり、壁体10の接合部40と同じ長さL1および、接合部40の幅D4と略同じかそれより若干狭い幅D10を有している。
【0049】
補強部材90、92には、第一連結部70または第二連結部80を貫通させる貫通孔94、96が形成されている(図7参照)。第一連結部70または第二連結部80を貫通することにより、接合部40に固定できる。また、図6に示すように、本実施形態の補強部材を備えた壁体10を連設すると、補強部材90は接合部40と第一フランジ部50とに挟持されるようになる。同様に補強部材92は、接合部40と第二フランジ部60とに挟持されるようになる。
【0050】
補強部材90、92の厚さT9は、壁体10の接合部40の厚さT4とは異なる厚さにすることができる。但し、補強部材90、92の厚さが増すと、壁体10を連設した場合、隣接する第一前板または第二前板の接合部分である目地が厚くなるので、壁体100の意匠性が低下する場合がある。従って、補強部材90、92の厚さT9は薄い方が望ましい。
【0051】
なお、本実施形態では、補強部材90、92の形状は、接合部40と同じ形状の平面の薄板形状を有しているが、充分に強度がある場合は、接合部40の平板面よりも小さな面積を有する形状としてもよい。例えば棒状の補強部材を複数並べることにより、補強しても構わない。
【0052】
補強部材90、92の材質は、特に限定されることはないが、耐久性と加工の容易性を考慮すると金属、特にアルミニウムであることが望ましい。アルミニウムからなる補強部材を使用することによって、補強部材90、92を薄く形成した上で、充分な強度を維持することができる。
【0053】
風圧がかかる場所に壁体を設置する場合、壁体に所定の強度が求められる場合がある。そのため、壁体の強度を補強する補強部材(例えば横胴縁等)を壁体に設置しなければならないが、補強部材を壁体背面に設置した場合、さらに意匠性が下がる場合があった。
【0054】
本実施形態で示すように、補強部材90、92を接合部40の両面に設けることによって、壁材10を連設することにより形成される壁体100の強度を向上させることができる。本実施形態のように壁体100の内部に補強材を挿入することにより、補強用の胴縁を配置することなく、壁体100の強度をあげられるため、壁体100の正面および背面の意匠性を下げることを防止できる。
なお、図5〜7では、補強部材を接合部40の両面に設けていたが、補強部材は接合部40の両面の内、何れか一方にのみ設けることにより強度を補強しても構わない。
【0055】
次に、本実施形態の壁材10を複数連設して形成した壁体100の施工例について説明する。
【0056】
図8は、図5に示す壁材10を複数連設して形成した壁体100の施工例を示す正面図である。
【0057】
本実施形態の壁材10を複数連設して壁体100を形成した後、図8に示すように、壁体100の上下には無目130、132が配置される。無目130のさらに上部には梁140が設けられており、壁体100が外壁または仕切り壁として立設する状態になる。また、壁体100の側部には、方立120が設けられている。
【0058】
図9は、壁体100の上下端部を示す図であり、図8のK−K’線に沿った断面図である。
【0059】
図9を参照して、壁体100の上下に配置される無目について説明する。壁体100の上部には上側無目130が、下部には下側無目132が取付けられている。上側無目130は、山形鋼134aと押縁135aとからなり、下側無目132は、山形鋼134bと押縁135bとからなる。壁体100の上端部は、山形鋼134aと押縁135aとに挟持される。壁体100と山形鋼134aとの間には、バックアップ材137aが挿入され、シール材136aが充填される。また、壁体100と押縁135aとの間にも、バックアップ材137aが挿入され、シール材136aが充填される。同様に、壁体100の下端部は、山形鋼134bと押縁135bとに挟持される。壁体100と山形鋼134bとの間には、バックアップ材137bが挿入され、シール材136bが充填される。壁体100と押縁135bとの間にも、バックアップ材137bが挿入される、シール材136bが充填される。下側無目132には、水抜き穴が設けられており、壁体100の内部に結露等により蓄積した水を排出することが可能になっている。
【0060】
図10は、壁体100の側部を示す、図8のM−M’線に沿った断面図である。
【0061】
図10を参照して壁体100の側部に配置される方立について説明する。壁体の側部に配置される方立120は、無目と同様に、山形鋼124と押縁125とからなり、壁体100の側部は、山形鋼124と押縁125とにより挟持されている。壁体100と山形鋼124との間には、バックアップ材127が挿入され、シール材126が充填される。また、壁体100と押縁125との間にも、バックアップ材127が挿入され、シール材126が充填される。図10は壁体100の一方の側部について図示しているが、他方の側部も同様に処理されている。このように、壁体100の周囲には無目130、132および方立120が設けられることにより、壁体100は水密的に施工される。
【0062】
以上、添付した図面を用いて本発明に係る壁体および壁体を連設して形成した壁体の壁構造についてについて説明した。本発明の壁体は、接合部により化粧面である表面が互いに反対方向に向けて配置された第一前板と第二前板とを備えている。そのため壁体を連設して壁体を形成することにより、壁体の正面および背面の意匠を同様にすることが可能になる。
また、壁材の接合部とフランジ部とにより各壁材を連結するので、目地を狭くすることができるので、目地材等を詰める必要なない。さらに、接合部から突出した連結部を、フランジ部の対応する位置に形成された連結孔に嵌合するだけで連結することができ、壁材を容易に連設することができる。連設する壁体の位置合わせも容易であるので壁体の施工性がよくなる。
【0063】
なお、本発明に係る壁体および壁体を連設することにより形成する壁体の壁構造は,添付した図面に図示される実施形態に限定されるものではない。
【0064】
例えば、本実施形体では、皿ネジを螺嵌することにより連結部を実現していたが、連結部は壁材と一体となった突起部を接着もしくは一体成形することにより設けても構わない。第一連結部と第二連結部とは異なる高さの位置に設けていたが、突起部分を接合部に接着して設ける場合は同一の高さに設けることも可能である。
【0065】
また、接合部の幅D4と、第一フランジ部の幅D5および第二フランジ部の幅D6とは、略同じ長さであるが、接合部に設けられた連結部を嵌合可能な連結孔を形成することができるのであれば、第一フランジ部の幅D5および第二フランジ部の幅D6は、接合部の幅D4より短くなるように構成することも可能である。
【0066】
また、本発明に係る壁体は、壁材を横方向に連設して形成されているが、壁材を縦方向に連設して形成することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 壁面部材
20 第一前板
30 第二前板
40 接合部
50 第一フランジ
60 第二フランジ
70、80 連結部
72、82 連結孔
90、92 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数連設することにより壁体を形成する壁材であって、
化粧面である第一表面を有する第一前板と、
前記第一前板の幅と同じ幅を有し、且つ化粧面である第二表面を有する第二前板と、
前記第一前板の裏面と第二前板の裏面とを接合する接合部であって、前記第一前板の一方の側部と前記接合部の一方の側部とが略直角を成して接合すると共に、前記第二前板の一方の側部と前記接合部の他方の側部とが、前記第一前板と反対の方向に略直角を成して接合して、前記第一前板の前記第一表面と前記第二前板の前記第二表面とをそれぞれ前記壁材の外側に向けて配置する、接合部と、
前記第一前板の他方の側部から、前記第一前板の第一裏面方向に、前記第一前板に対して略直角を成して延在する第一フランジ部と、
前記第二前板の他方の側部から、前記第二前板の前記第二裏面方向に、前記第二前板に対して略直角を成して延在する第二フランジ部と、
を備えることを特徴とする壁材。
【請求項2】
前記接合部は、前記第一フランジ部に向かって突出する第一連結部と、前記第二フランジ部に向かって突出する第二連結部とを備え、
前記第一フランジ部には、前に連設する壁材の第二連結部が嵌合して、前記第一フランジ部と前に連設する壁材の接合部とが連結するよう、第一連結孔が形成されており、
前記第二フランジ部には、次に連設する壁材の第一連結部が嵌合して、前記第二フランジ部と次に連設する壁材の接合部とが連結するよう、第二連結孔が形成されている、請求項1に記載の壁材。
【請求項3】
さらに、前記接合部の前記第一フランジ部または前記第二フランジ部に対向する面の少なくとも何れか一方に、前記接合部の強度を補強する補強部材を設けた、請求項1または2に記載の壁材。
【請求項4】
前記第一連結孔および第二連結孔は楕円形に形成され、該楕円形の短径は前記第一連結部および前記第二連結部の略同じ幅を有している、請求項2に記載の壁材。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか記載の壁材を複数連設して壁体を形成する壁構造であって、前記壁材の接合部と次に連設する壁材の第二フランジ部とを連結すると共に、前記壁材の第一フランジ部と次に連設する壁材の接合部とを連結することにより、壁体を形成することを特徴とする壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−26890(P2011−26890A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175420(P2009−175420)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】