説明

壁用目地カバー装置

【課題】常態にあっては、目地内への不審者の侵入を防止し得る一方、地震時には、他方の建造物とホルダーの他端との衝当を回避し得る壁用目地カバー装置を提供する。
【解決手段】目地sを介して隣接する左右の建造物A,Bの、その一方の建造物Aの側壁面5に一端が回動可能に枢結され、他端が付勢手段により目地の内方に付勢されて他方の建造物Bの前壁面12に弾接されるホルダー2に、目地sを覆うカバー板13が被着されてなる壁用目地カバー装置1にあって、目地sの幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなる伸縮性規制部材17を、前記ホルダー2の背面側で、両建造物A,B間に亘って伸縮可能に配設し、該伸縮性規制部材17によって前記ホルダー2の背面の目地sを遮蔽するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する左右の建造物の側壁面間の目地を遮蔽する壁用目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の壁用目地カバー装置aにあって、図6に示すように、目地sを介して隣接する一方の建造物Aの側壁面bに矩形枠状に形成されたホルダーcの一端をヒンジdを介して回動可能に枢結し、該ホルダーcの他端を他方の建造物Bの前壁面eに差し渡すとともに、引張バネfからなる付勢手段によって前記ホルダーcを目地sの内方に付勢することにより、ホルダーcの他端を建造物Bの前壁面eに弾接させ、該ホルダーcに被着したカバー板gによって、目地sを遮蔽するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、前記ホルダーcの枢結端側には、該ホルダーcに裏面から当接するストッパーhが配設され、該ストッパーhによってホルダーcの内方への回動を規制し、目地sの外方にのみ回動させ得るようにしている。これにより、地震時に、構造物A,Bが前後方向あるいは左右方向に相対変位して、ホルダーcの他端が建造物Bの前壁面eから離れても、該ホルダーcが目地sの内方に回動しないように位置保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−160706号公報(図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来構成の壁用目地カバー装置aにあっては、カバー板gを被着したホルダーcが目地sの外方へ回動可能であるため、地震時でない常態において、いたずらや犯罪を目的とする不審者が、ホルダーcとともにカバー板gを外方へ回動させてカバー板gを開き、開放された目地s内に入ったり、さらには目地sから建造物内へ侵入する虞があった。
【0006】
また、地震時に、構造物A,Bの相対変位によって、建造物Bがホルダーcの他端より外側方に相対変位して、図7に示すような位置関係になった後、建造物Bの定常位置への復帰に際して、該建造物Bが矢印z方向に相対変位すると、ホルダーcの他端に衝当して壁用目地カバー装置aを破損させる虞があった。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点を解消するためになされたものであり、常態にあっては、目地内への不審者の侵入を防止し得る一方、地震時には、他方の建造物とホルダーの他端との衝当を回避し得る壁用目地カバー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、目地を介して隣接する左右の建造物の、その一方の建造物の目地の内外方向に沿う側壁面に一端が回動可能に枢結され、他端が他方の建造物の前壁面に差し渡されるホルダーを、付勢手段により目地の内方に付勢して該ホルダーの他端を他方の建造物の前壁面に弾接させるとともに、該ホルダーを外方にのみ回動可能に設け、該ホルダーに目地を覆うカバー板を被着してなる壁用目地カバー装置において、目地の幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなる伸縮性規制部材が、前記ホルダーの背面側で、両建造物間に亘って伸縮可能に配設され、該伸縮性規制部材によって前記ホルダーの背面の目地が遮蔽されていることを特徴とする壁用目地カバー装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上述したように、伸縮性規制部材が、ホルダーの背面側で、両建造物間に亘って伸縮可能に配設され、該伸縮性規制部材によってホルダーの背面の目地が遮蔽されていることにより、地震時でない常態にあっては、不審者が、ホルダーとともにカバー板を外方へ回動させてカバー板を開いても、ホルダーの背面の目地を遮蔽する伸縮性規制部材によって目地内への侵入を防止することができる。
【0010】
また、他方の建造物がホルダーの他端より外側方に相対変位した場合に、伸縮性規制部材がホルダーの他端を内方から押圧して外方に回動させることにより、他方の建造物が定常位置に復帰する際にホルダーとの衝当が回避され、これにより目地カバー装置の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかる壁用目地カバー装置1の施工状態を示す横断面図である。
【図2】同上の壁用目地カバー装置1の施工状態を示す正面図である。
【図3】伸縮性規制部材17の外観斜視図である。
【図4】カバー板13が開かれた状態を示す説明図である。
【図5】建造物Bが外側方に相対変位したときの伸縮性規制部材17の作用説明図である。
【図6】従来構成の壁用目地カバー装置aの施工状態を示す横断面図である。
【図7】建造物Bがホルダーcの他端より外側方に相対変位した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施例を、図1〜図5に基づいて説明する。
本発明にかかる壁用目地カバー装置1は、図1に示すように、目地sを介して隣接する左右の建造物A,B間に配設される。ここで、一方の建造物Aは、図示しない免震装置によって下部が支持されており、免震構造となっている。これにより、地震時には、免震装置の免震作用によって建造物Aが水平方向に大きく揺れることとなる。
【0013】
壁用目地カバー装置1を構成するホルダー2は、図1,図2に示すように、左右両側部に配設された縦杆3,3間に、複数の横杆4を上下方向に所定間隔で横架して縦長矩形状に形成されている。そして、該ホルダー2の一端を、前記建造物Aの、目地sの内外方向に沿う側壁面5に固定された上下方向に延在する取付フレーム6に複数のヒンジ7を介して枢結することにより、ホルダー2が回動可能となっている。さらに、ホルダー2の枢結端側に裏面から当接するストッパー8が取付フレーム6から突設されており、ホルダー2は、該ストッパー8によって目地sの内方への回動が規制されて、目地sの外方にのみ回動し得るようになっている。
【0014】
また、ホルダー2の所定の横杆4の中間部にはバネ受片9が後方に夫々突設されており、各バネ受片9に一端を係止した複数の引張バネ10の他端が前記取付フレーム6に付設されたバネ受片11に夫々係止されている。そして、この引張バネ10の引張力によって、ホルダー2を目地sの内方に付勢することにより、建造物Bに差し渡されたホルダー2の他端を建造物Bの前壁面12に弾接し得るようになっている。この引張バネ10により、ホルダー2の付勢手段が構成されている。
【0015】
前記ホルダー2の前面側には、目地sを覆うカバー板13が被着されている。該カバー板13は、ホルダー2と略同一寸法の縦長矩形状に形成されており、建造物B側の一端に、外側方に傾斜する傾斜縁14が設けられている。一方、該傾斜縁14が設けられたカバー板13の一端が常態において当接する建造物Bの前壁面12の内端には、前記傾斜縁14と同方向に傾斜する案内傾斜面16を備えた案内受枠15が配設されており、両建造物A,Bの近接方向の相対変位時に、傾斜縁14が案内傾斜面16に当接すると該案内傾斜面16の案内作用を介して、ホルダー2の他端を外側方に押出し得るようになっている。
【0016】
次に、本発明の要部について説明する。
前記ホルダー2の背面側には、伸縮性規制部材17が両建造物A,B間に亘って伸縮可能に配設されている。該伸縮性規制部材17は、目地sの幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなり、図3に示すように、その全体形状が縦長矩形状に形成されている。この薄肉バネ鋼板としては厚み0.2mm程度のステンレスバネ鋼(SUS304H)が好適に用いられ、プレス加工によって蛇腹状に折曲される。伸縮性規制部材17の一側縁17aは、図1に示すように、建造物Aの側壁面5に固定された上下方向の固定枠18に複数のピアスビス19で連結されており、伸縮性規制部材17の他側縁17bは、建造物Bの前壁面12に配設された前記案内受枠15に複数のピアスビス20で連結されている。そして、このように両建造物A,B間に配設された伸縮性規制部材17によって、ホルダー2の背面の目地sが遮蔽されている。
【0017】
かかる構成にあって、地震時でない常態にあっては、図4に示すように、不審者がホルダー2とともにカバー板13を外方へ回動させてカバー板13を開いても、ホルダー2の背面の目地sが伸縮性規制部材17によって遮蔽されていることにより、目地s内への侵入を防止することができる。
【0018】
一方、地震時に、隣接する左右の建造物A,Bが前後方向または左右方向に相対変位すると、蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなる伸縮性規制部材17が、その伸縮性によって各相対変位に追従する。ここで、図5に示すように、建造物Bが図1に示す定常位置のホルダー2の他端より外側方に出る位置に相対変位する場合に、伸縮性規制部材17がホルダー2の他端を内方から押圧して外方に回動させる状態が得られる。これにより、他方の建造物Bが定常位置に復帰する際に、ホルダー2の他端に衝当することがないため、壁用目地カバー装置1の破損を防止することができる。尚、上記にあっては説明の便宜上、建造物Bが変位するとして伸縮性規制部材17の作用を説明したが、実際には免震構造の建造物Aが変位するものである。
【符号の説明】
【0019】
A 建造物
B 建造物
s 目地
1 壁用目地カバー装置
2 ホルダー
5 側壁面
10 引張バネ(付勢手段)
12 前壁面
13 カバー板
17 伸縮性規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地を介して隣接する左右の建造物の、その一方の建造物の目地の内外方向に沿う側壁面に一端が回動可能に枢結され、他端が他方の建造物の前壁面に差し渡されるホルダーを、付勢手段により目地の内方に付勢して該ホルダーの他端を他方の建造物の前壁面に弾接させるとともに、該ホルダーを外方にのみ回動可能に設け、該ホルダーに目地を覆うカバー板を被着してなる壁用目地カバー装置において、
目地の幅方向に連続するように蛇腹状に折曲された薄肉バネ鋼板からなる伸縮性規制部材が、前記ホルダーの背面側で、両建造物間に亘って伸縮可能に配設され、該伸縮性規制部材によって前記ホルダーの背面の目地が遮蔽されていることを特徴とする壁用目地カバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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