説明

壁紙

【課題】表面強度をはじめとする諸特性において、塩化ビニル系壁紙の代替品となり得るポリオレフィン系壁紙を提供する。
【解決手段】繊維質基材シート上に少なくとも第1非発泡樹脂層、発泡樹脂層、第2非発泡樹脂層、絵柄層及び表面保護層が順に積層されている壁紙であって、(1)少なくとも前記発泡樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の少なくとも1種の樹脂を含み、かつ、架橋されており、(2)前記第2非発泡樹脂層は、厚みが15〜50μmである、
ことを特徴とする壁紙に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内装材、特に壁装材として好適に用いられる壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の内装材等に使用されている壁紙としては、紙基材の上に塩化ビニル樹脂を形成したいわゆる塩化ビニル壁紙が広く利用されている。ところが、近年では塩化ビニルを使用しない化粧シートが考えられており、発泡させたポリオレフィンを用いた壁紙(いわゆる非塩ビ樹脂壁紙)が提案されている。
【0003】
ところが、ポリオレフィン系壁紙では、表面強度が塩化ビニルに比して低いという欠点がある。そのため、この問題を改善すべく種々の方法が提案されている。
【0004】
例えば、1)発泡層を省略する方法、2)印刷層の上の最表層にエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)フィルムをラミネートする方法(特許文献1)、3)印刷層の上の最表層に非ハロゲン系フィルムをラミネートする方法(特許文献2)、4)印刷層の上の最表層にエチレン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンコートを付与する方法、5)発泡層の発泡倍率を低倍率とする方法、6)発泡層を2層化し、上層(絵柄層側)の発泡層の倍率を下げる方法(特許文献3)、7)発泡層と印刷層との間に非発泡層を形成する方法(特許文献4)等が知られている。
【特許文献1】実開昭59−172797号公報
【特許文献2】特開2003−200513号公報
【特許文献3】特開2001−277407号公報
【特許文献4】特開平10−278199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの従来技術では、表面強度の改善とは別に、意匠性、経済性(製造コスト)等のいずれかの点において問題がある。このため、結果として、塩化ビニル系壁紙に匹敵するようなポリオレフィン系壁紙は未だ開発されていないというのが実情である。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、表面強度をはじめとする諸特性において、塩化ビニル系壁紙の代替品となり得るポリオレフィン系壁紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、発泡体層の形成に特定の樹脂組成物を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の壁紙に係る。
【0009】
1. 繊維質基材シート上に少なくとも第1非発泡樹脂層、発泡樹脂層、第2非発泡樹脂層、絵柄層及び表面保護層が順に積層されている壁紙であって、
(1)少なくとも前記発泡樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の少なくとも1種の樹脂を含み、かつ、架橋されており、
(2)前記第2非発泡樹脂層は、厚みが15〜50μmである、
ことを特徴とする壁紙(第1発明)。
【0010】
2. 繊維質基材シート上に少なくとも第1非発泡樹脂層、発泡樹脂層、絵柄層、第2非発泡樹脂層及び表面保護層が順に積層されている壁紙であって、
(1)少なくとも前記発泡樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の少なくとも1種の樹脂を含み、かつ、架橋されており、
(2)前記第2発泡樹脂層は、厚みが8〜50μmである、
ことを特徴とする壁紙(第2発明)。
【0011】
3. 前記第2非発泡樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の少なくとも1種の樹脂を含み、かつ、架橋されている、前記項1又は2に記載の壁紙。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発泡樹脂層と非発泡樹脂層を特定の組み合わせで採用していることから、表面強度に優れ、意匠性が良好な壁紙を提供することができる。
【0013】
また、本発明の壁紙は、少なくとも発泡樹脂層にEVA又はEMMAを用いているので、低コストで製造することができる。
【0014】
このような特長をもつ本発明の壁紙は、従来の塩化ビニル系壁紙の代替品として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1発明の壁紙は、繊維質基材シート上に少なくとも第1非発泡樹脂層、発泡樹脂層、第2非発泡樹脂層、絵柄層及び表面保護層が順に積層されている壁紙であって、
(1)少なくとも前記発泡樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の少なくとも1種の樹脂を含み、かつ、架橋されており、
(2)前記第2非発泡樹脂層は、厚みが15〜50μmである、
ことを特徴とする。
【0016】
第2発明の壁紙は、繊維質基材シート上に少なくとも第1非発泡樹脂層、発泡樹脂層、絵柄層、第2非発泡樹脂層及び表面保護層が順に積層されている壁紙であって、
(1)少なくとも前記発泡樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の少なくとも1種の樹脂を含み、かつ、架橋されており、
(2)前記第2発泡樹脂層は、厚みが15〜50μmである、
ことを特徴とする。
【0017】
このように、両発明は、第2非発泡樹脂層と絵柄層の位置が異なるほかは共通するので、両発明の各層をまとめて説明する。
【0018】
なお、本発明の壁紙の構成は、本発明の効果を妨げない範囲内で他の層(接着剤層、プライマー層等)が含まれていても良い。
【0019】
繊維質基材
繊維質基材シートとしては、例えば紙、不織布、織布等が用いられる。紙としては、難燃紙又は一般紙のいずれであっても良い。
【0020】
難燃紙としては、紙の中に次のような難燃剤を含有させた紙である。難燃剤としては、例えば尿素、アンモニウム化合物等の窒素化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物(好ましくは水和物)のほか、自消性を有するリン又はハロゲン元素を含む難燃剤が適している。特に水酸化マグネシウム等のように結晶水を含む化合物を配合することにより、燃焼分解時に結晶水の気化熱によって好適に難燃化を図ることができる。
【0021】
不織布としては、例えば湿式不織布、乾式不織布等がある。湿式不織布としては、例えば抄紙式がある。また、乾式不織布としては、例えば接着剤式、機械結合式(ニードルパンチ、ステッチボンド)、スパンボンド式等がある。より具体的には、不織布として、レーヨン紙、パルプを混抄したもの、和紙、ガラス不織布、石綿不織布、ポリエステル不織布等が用いられる。
【0022】
第1非発泡樹脂層・第2非発泡樹脂層
第1非発泡樹脂層・第2非発泡樹脂層(以下両者を総称して「非発泡樹脂層」ともいう。)は、ともに発泡しない樹脂層であり、両者は同一であっても良いし、異なるものであっても良い。
【0023】
非発泡樹脂層は、特に第2非発泡樹脂層が架橋されていることが望ましい。これによって、壁紙により高い表面強度を与えることができる。架橋処理の方法は、後記の発泡樹脂層の場合と同様にして実施することができる。この場合、発泡樹脂層と同様、架橋剤を前記樹脂組成物に配合することができる。
【0024】
非発泡樹脂層を構成する樹脂は限定されないが、特にポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のポリオレフィンの1種ないしエチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィンの2種以上の共重合体、あるいは、炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン)、あるいは、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、あるいは、アイオノマー、あるいはこれらの1種ないしそれ以上からなる混合樹脂を挙げることができる。その中でも特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)の少なくとも1種が好ましい。EVA及びEMMAは特に限定されず、公知又は市販のものを使用することができる。特に、EVAは、酢酸ビニル成分(VA成分)が15〜30重量%であるものが望ましい。また、EMMAは、メタクリル酸メチル成分(EMA成分)が15〜30重量%であるものが望ましい。
【0025】
本発明では、樹脂成分としてEVA及びEMMA以外のものが含まれていても良い。例えば、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、ポリプロピレン、プロピレン・ブテン−1共重合体、ポリブテン−1、ブテン−1・プロピレン・エチレン・3元共重合体、ブテン−1・ヘキセン−1・オクテン−1・3元共重合体、ポリメチルペンテンのほか、特開平6−16832号公報、特公平6−23278号公報等に記載されたオレフィン系エラストマー等も使用できる。これらの樹脂は1種又は2種以上で用いることができる。
【0026】
また、これらの樹脂以外にも、他の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、無機充填剤を入れて増量効果を付与したり、難燃剤を入れて難燃性を付与することもできる。また、架橋する場合は、発泡樹脂層で用いられる架橋助剤を配合することもできる。
【0027】
無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の粉末(粒子)のほか、マイカ、シリカ、アルミナ、ケイソウ土、ケイ砂、シラスバルーンのような無機質中空体等が挙げられる。
【0028】
難燃剤としては、例えば尿素等の窒素化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物(特に結晶水を持つ化合物)、自消性を有するリン又はハロゲン元素を含む難燃剤等が適している。特に水酸化物のような化合物を配合することにより、燃焼分解時に結晶水の気化熱で難燃化を図ることができる。また、ポリオレフィン系樹脂に、窒素化合物とリン化合物からなる混合難燃化合物が25〜100重量部配合されていると好ましい。その理由としては、ポリオレフィンとの相溶性が良好となり、熱安定性も良くなるからである。
【0029】
また、ポリオレフィン系樹脂に柔軟性、耐衝撃性、易接着性を付与する目的で各種ゴム類を添加することもできる。
【0030】
ゴム類としては、例えばジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等が挙げられる。この中でも水素添加ジエン系ゴムが好ましい。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、本発明においてはポリオレフィン系樹脂の改質材として、使用される。ポリオレフィン系樹脂の結晶化を抑え、柔軟性、透明性を高める役割がある。また、一般にポリオレフィン系樹脂にジエン系ゴムを添加するとジエン系ゴムの二重結合のため、耐候性・耐熱性はジエン系ゴム無添加のポリオレフィン系樹脂より低下するが、本発明では、ジエン系ゴムの二重結合を水素で飽和させるため、ポリオレフィン系樹脂の耐候性、耐熱性の低下も無く良好なものとなる。
【0031】
ジエン系ゴムとしては、例えばイソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム等が挙げられる。本発明の目的からは、特にスチレン・ブタジエンゴム等が好ましい。
【0032】
ゴム類の添加量としては、特に限定されないが、通常はポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、1〜90重量部程度とすれば良い。
【0033】
また、顔料を添加して透明着色又は不透明着色を施す方法が挙げられる。顔料としては、公知又は市販のものを使用できる。例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブリーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む)、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。これらは、用途に応じて、透明着色顔料又は不透明着色顔料のいずれかを選択することができる。これら顔料は、粉末又は鱗片状箔片として添加、分散すれば良い。
【0034】
非発泡樹脂層の形成は、例えばTダイによる押出し法、カレンダー加工による方法、接着剤を用いるドライラミネートによる方法、ゾルコートによる方法等の公知の方法をいずれも採用することができる。この場合、樹脂組成物による層を繊維質基材上に直接形成し、積層体とする方法であっても良いし、あるいは樹脂組成物による層を単独で形成した後、これを繊維質基材に積層する方法等のいずれであっても良い。また、架橋する場合は、第2非発泡樹脂層を形成した後、架橋処理を実施すれば良い。架橋処理の方法は、後記の発泡樹脂層で適用される方法と同様にすれば良い。
【0035】
非発泡樹脂層の厚みに関し、特に第1発明の壁紙では第2非発泡樹脂層の厚みを15〜50μm、好ましくは20〜40μmとする。また、特に第2発明の壁紙では第2非発泡樹脂層の厚みを8〜50μm、好ましくは15〜40μmとする。かかる範囲の厚みを制御することにより、優れた表面強度を達成することができる。
【0036】
第1発明及び第2発明ともに、第1非発泡樹脂層の厚みは限定的ではなく、一般的には50μm以下程度とすれば良いが、壁紙の用途、所望の特性等に応じて適宜設定することができる。
【0037】
発泡樹脂層
発泡樹脂層は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)の少なくとも1種の樹脂を含み、かつ、架橋されている。
【0038】
EVA及びEMMAは特に限定されず、前記の非発泡樹脂層で使用されるものを好適に用いることができる。
【0039】
また、架橋剤を用いる場合、ポリオレフィン系樹脂を架橋するものであれば良く、用いるポリオレフィン系樹脂の種類等に応じて適宜選択すれば良い。本発明では、特にアクリルモノマー等を好適に用いることができる。
【0040】
発泡樹脂層の形成は、例えば上記樹脂、発泡剤及び必要に応じて架橋剤を含む樹脂組成物を用い、前記非発泡樹脂層の場合と同様にして製膜し、架橋処理した後、発泡処理することにより行うことができる。
【0041】
架橋処理の方法は限定されないが、特に電離放射線による架橋処理(硬化処理)が好ましい。例えば、繊維質基材シート上に上記樹脂組成物による層を形成し、発泡適性粘度の温度範囲を広くするために、電子線等の電離放射線を照射して架橋させる。これにより、生産性が安定する上、表面の発泡シートは電子線で架橋されているので、表面がより硬くなり、表面に傷が付きにくくなる。
【0042】
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合・架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常は紫外線、電子線等が用いられる。紫外線源としては、例えば超高圧水銀燈、高圧水銀燈、低圧水銀燈、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等の光源を用いることができる。また、電子線源としては、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用れば良い。強度としては、通常100〜1000keV程度、好ましくは100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射すれば良い。
【0043】
発泡処理の方法は特に限定されず、公知の壁紙で採用されている方法に従えば良い。例えば、発泡する前の層を200〜300℃程度で加熱することにより実施することができる。
【0044】
発泡剤は、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、前記したポリオレフィン系樹脂のプラスチゾル、オルガノゾル等の組成物に起泡剤を添加し、プラネタリーミキサー等の攪拌機で攪拌して機械的に発泡させる場合は、市販の起泡剤を使用すれば良い。また、アゾジカーボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド系化合物;N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;炭酸アンモニウム、ソジウムボロンハイドライト、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の熱分解型発泡剤のほか、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル等からなる樹脂皮殻にヘキサン、ヘプタン、ブタン、空気等の熱膨張性気体を内包させたマイクロカプセル型発泡剤等を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0045】
発泡剤の添加量は、使用する発泡剤の種類、発泡方法等により適宜設定すれば良いが、一般的にはポリオレフィン系樹脂100重量部に対して1〜10重量部程度とすれば良い。
【0046】
熱分解型発泡剤を用いて発泡体層とする場合には、発泡剤とともに必要に応じて発泡促進剤を添加することができる。発泡促進剤は使用する熱分解型発泡剤の熱分解、気体発生反応を促進する物質を使用すれば良い。例えば、発泡剤としてアゾジカーボンアミド等のアゾ化合物を用いる場合は、発泡促進剤として二塩基性硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、ステアリン酸鉛、亜鉛華、尿素、シュウ酸、エタノールアミン等を少なくとも1種用いることができる。また、発泡剤としてN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンを用いる場合は、発泡促進剤としてシュウ酸、サリチル酸、無水フタル酸、尿素、エチレングリコール、ホウ酸、安息香酸等を少なくとも1種用いることができる。
【0047】
発泡樹脂層の厚み(発泡後の厚み)は、特に制限されず、所望の特性等に応じて適宜設定することができる。また、発泡樹脂層は、発泡倍率の限定は特にないが、通常は3〜7倍程度であれば良い。上記範囲であれば、所望の表面強度、加工性等をより確実に得ることができる。
【0048】
絵柄層
絵柄層は、一般的にはグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等周知の印刷法によりインキにて形成することができる。
【0049】
印刷絵の図柄としては、例えば木目柄、石目柄、布目柄、皮紋柄、幾何学図形、文字、記号、あるいは、全面ベタ等の印刷絵柄が挙げられる。
【0050】
印刷インキとしては、ビヒクルとして、例えば塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、アクリル、酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等を1種ないし2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることができる。特に、本発明では、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、アクリル、酢酸ビニル、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等の1種又は2種以上混合した非塩素系樹脂が好ましい。
【0051】
表面保護層
表面保護層は、壁紙に耐スクラッチ性、耐摩耗性、耐汚染性等の表面物性を付与することができる。
【0052】
表面保護層を形成する樹脂は限定的でないが、特に耐スクラッチ性、耐摩耗性、耐汚染性等に優れるという点でナイロン樹脂が好ましい。ナイロン樹脂とは、主鎖にアミド結合を持つ重合体で、ジアミンと二塩基酸の重縮合、ラクタムの開環重合、アミノカルボンの重縮合などによって得られるポリアミド樹脂のうち線状のものをナイロン樹脂という。ナイロン樹脂にはナイロンmn(mはジアミン、nは二塩基酸のそれぞれの炭素原子数)とナイロンn(nはω−アミノ酸又はラクタムの炭素原子数)の二つのタイプがある。これら高機能性プラスチックの一つであるナイロン樹脂は、結晶性の線状高分子であり、分子鎖中に特異なアミド結合−CONH−が存在するため、種々の優れた性質(耐衝撃性、耐摩耗性、自己消火性)を有する。
【0053】
表面保護層の形成方法としては、例えば前記樹脂を加熱溶融したものを押出しコート法等の塗工手段を用いて塗工したり、あるいは前記樹脂をフイルム化したものを周知のドライラミネーション法等で貼合することにより形成することができる。
【0054】
表面保護層の厚みは限定的でないが、表面物性、加工性、コスト対効果等の観点から5〜30μmの範囲とすることが好ましい。
【0055】
また、必要に応じて表面保護層の上から凹凸模様の形成することもできる。凹凸模様は、周知の枚葉あるいは輪転式のエンボス機を用いて化粧シートが加熱された状態にあるときに、最も外側の層からエンボス版で凹凸を施して後に冷却することにより、表面保護層から前記発泡樹脂層にかけて凹凸を形成することができる。この凹凸模様の形状としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
【0056】
その他の層
本発明の壁紙では、前記の各層のほか、必要に応じて他の層(接着剤層、プライマー層等)が含まれていても良い。
【0057】
接着剤層は、例えば公知のアクリル系、ウレタン系等の接着剤を使用することができる。
【0058】
プライマー層(又はアンカー層)としては、例えばアクリル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等を使用することができる。特に、特にアクリル、塩素化ポリプロピレン等が望ましい。
【0059】
アクリルとしては、例えばポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなるアクリル樹脂のことである。但し、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルを意味するものとし、以下同様である。
【0060】
ポリウレタンとはポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする組成物である。
【0061】
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が用いられる。
【0062】
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2−4トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4−4ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環族)イソシアネートが用いられる。
【0063】
壁紙の製造方法
本発明の壁紙の製造方法は、各層を前記のような形成方法に従って実施すれば良い。例えば、1)裏打紙からなる基材層上に、EVA又はEMMAを含む樹脂組成物を加熱溶融して第1非発泡樹脂層を形成した後、2)発泡剤、難燃剤、二酸化チタン及びEVA又はEMMAを含む樹脂組成物を加熱溶融押出しして未発泡状態の発泡樹脂層を形成し、3)未発泡状態の発泡樹脂層の露出面にコロナ放電処理を施すとともに、コロナ放電処理を施した面にグラビア印刷にて絵柄層を形成し、4)EVA又はEMMAを含む樹脂組成物を加熱溶融して第2非発泡樹脂層を絵柄層上に形成した後、5)第2非発泡樹脂層全面に対して、加熱溶融押出により未延伸ナイロン樹脂からなる表面保護層を形成し、6)このものを加熱発泡炉で前記未発泡の発泡樹脂層を発泡させるとともに、前記表面保護層側から前記発泡樹脂層にかけて、エンボス版にて凹凸模様を形成後、冷却することにより、壁紙を得ることができる。
【0064】
このように前記発泡樹脂層を未発泡の状態で溶融押出により形成することにより、絵柄層を鮮明に形成することができる。また、表面保護層として未延伸ナイロン樹脂を用いる場合には、特に、エンボス賦形性に優れ、シャープな凹凸模様を極めて効率的に得ることができる。また、表面保護層を形成する場合に、ナイロン樹脂と接着性樹脂の2層同時加熱溶融押出して、接着性樹脂が絵柄層と接するように設けることによって、より優れた密着性を得ることができる。
【0065】
被着材
本発明の壁紙を貼りつけるための被着材としては特に制限されず、例えば石膏ボード、パーライトボード、襖、扉等の平板、曲面板等の板材、立体形状物品〔成形品〕等の各種形状の物品が対象となる。
【0066】
これら各種被着材への積層方法としては、例えば1)接着剤層を間に介して被着材に加圧ローラーで加圧して積層する方法、2)被着材の表面に壁紙を間に接着剤層を介して対向乃至は載置し、被着材(成形品)側からの真空吸引による圧力差により壁紙を成形品表面に積層する、いわゆる真空プレス積層方法、3)円柱、多角柱等の柱に、壁紙4を間に接着剤層を介して供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、柱状体を構成する複数の側面に順次壁紙を加圧接着して積層してゆく、いわゆるラッピング加工法等がある。特に、壁紙を凹凸立体物に貼り合わせる方法としては、ラッピング加工法が好ましい。
【0067】
本発明の壁紙は、所定の成形加工等を施して、各種用途に用いる。例えば、壁、天井、床等建築物の内装、窓枠、扉、手摺等の建具の表面化粧、家具又は弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車輛内装、航空機内装、窓硝子の化粧等の用途が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0069】
実施例1及び比較例1〜2
発泡体層を形成するための樹脂組成物として、エチレン−酢酸共重合体(住友化学製「5053」,MFR70,VA20)100重量部、炭酸カルシウム(白石工業製「ホワイトンH」)25重量部、二酸化チタン(デュポン製「R108」)20重量部、セル調整剤(旭電化製「OF101」)5重量部、発泡剤(永和化成製「AC#3−K2」)3重量部、発泡剤(永和化成製「N#5000」)1重量部及び架橋剤(JSR製、アクリルモノマー)1重量部の混練物Aを用いた。
【0070】
第1非発泡樹脂層及び第2非発泡樹脂層を形成する樹脂組成物としては、前記組成物で発泡剤を含まない混練物Bを使用した。
【0071】
表面保護層は、エチレンビニルアルコール共重合樹脂系塗料(日本合成化学製「ソアノール」)を使用した。
【0072】
これらを用いて図1に示す構成の壁紙を製造した。この場合、第1非発泡樹脂層の厚みはいずれも12μmとし、第2非発泡樹脂層の厚みを表1に示すように設定した。
【0073】
【表1】

まず、前記混練物Bを120℃に加熱し、Tダイ押し出しによって製膜し、基材である裏打ち紙上に積層することによって第1非発泡樹脂層を形成した。次に、前記混練物Bを同様にして製膜し、これを第1非発泡樹脂層上に積層することにより発泡樹脂層を形成した。発泡樹脂層に電子線を照射(175kv,5Mrad)することにより架橋処理を実施した。次いで、発泡樹脂層上に第1非発泡樹脂層の場合と同様にして第2非発泡樹脂層を形成した。第2発泡樹脂層の表面に、2液硬化型ポリエステル系インキ(「FPGR」昭和インク工業所製)を用いて石目柄印刷をグラビア印刷法にて絵柄層の形成を行った。この絵柄層上に前記塗料を塗布することにより表面保護層を形成した。その後、加熱炉中にて230°Cで30秒加熱し、前記発泡樹脂層を5倍に発泡させることにより発泡体層を形成した。
【0074】
実施例2及び比較例3〜4
壁紙の積層構造を図2及び表1に示すようにしたほかは、実施例1と同様にして壁紙を製造した。
【0075】
試験例1
実施例及び比較例で得られた壁紙の表面強度を測定した。試験は、ビニル工業会の表面強化試験に準拠し、引っ掻き負荷(錘)を基準の5倍として実施した。その結果を表1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例1、比較例1及び比較例2で作製された壁紙の断面図である。
【図2】実施例2、比較例3及び比較例4で作製された壁紙の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質基材シート上に少なくとも第1非発泡樹脂層、発泡樹脂層、第2非発泡樹脂層、絵柄層及び表面保護層が順に積層されている壁紙であって、
(1)少なくとも前記発泡樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の少なくとも1種の樹脂を含み、かつ、架橋されており、
(2)前記第2非発泡樹脂層は、厚みが15〜50μmである、
ことを特徴とする壁紙。
【請求項2】
繊維質基材シート上に少なくとも第1非発泡樹脂層、発泡樹脂層、絵柄層、第2非発泡樹脂層及び表面保護層が順に積層されている壁紙であって、
(1)少なくとも前記発泡樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の少なくとも1種の樹脂を含み、かつ、架橋されており、
(2)前記第2発泡樹脂層は、厚みが8〜50μmである、
ことを特徴とする壁紙。
【請求項3】
前記第2非発泡樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の少なくとも1種の樹脂を含み、かつ、架橋されている、請求項1又は2に記載の壁紙。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−97210(P2006−97210A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288013(P2004−288013)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】