説明

壁貫通連結装置及び仮設構造

【課題】 現場打ちコンクリートにより壁を構築するにあたり、型枠の変形を生じずに、足場の安定性を向上できる壁貫通連結装置を提供する。
【解決手段】 本壁貫通連結装置は、構築すべき壁の厚さだけ隔てて垂直に支持される一対の型枠35、36の間に装着され、かつ一対の型枠35、36内へコンクリートが現場打ちされ、硬化・凝固した後も壁内に一体的に埋め込まれる壁貫通連結装置であって、一端部において足場に連結される第1壁つなぎ用金具17の先端ボルト17aを螺合可能な雌ねじ部を有する第1連結部31と、他端部において支保工に連結される第2壁つなぎ用金具18の先端ボルト18aを螺合可能な雌ねじ部を有する第2連結部32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場打ちされる生コンクリートにより壁を構築する際に好適な壁貫通連結装置及び仮設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先にスラブ設計の自由度を高く維持しながら、しかも工期を大幅に短縮できる技術を提案し特許権を取得した(特許文献1:特許第4191235号公報)。本発明者は、当該技術をふまえ、さらなる研究を進めているところであるが、壁構築時の足場の安定性について考察した。
【0003】
垂直な壁等の構造部分を現場打ちのコンクリートにより構築する際には、室内のみならず室外にも作業スペースを確保する必要がある。このため、下の階層から上の階層へ順次足場を継ぎ足すことが行われる。香港などの一部地域では竹を使用して足場を組むことがあるが、我が国では、一般に、鋼管を主材とする足場用の部品を組み合わせ足場が組まれる。
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、スラブについて複数階層(例えば2階層等)分を同時並行して構築できるようになっている。このような場合、既設のスラブがある階層から複数階層分の足場を継ぎ足して設けることになる。
【0005】
ここで、足場は、基本的に下の部分に上の部分を継ぎ足してゆくだけのものであるから、構造的に見れば、片持ち状になっており、上の部分がふらつきやすい。
【0006】
複数階層を同時並行して構築しない場合であっても、同様の問題は存在しており、足場の安定性を高める技術が求められている。そうでなければ、足場が不安定となり、作業員や工具・材料等の落下というような事故発生のおそれが増大してしまう。
【0007】
一部の現場では、足場と型枠とを連結することも行われている。しかしながら、型枠は、通常合板からなるコンクリートパネルか、あるいは樹脂製のものであって、足場と型枠を連結すると、予定外の荷重が型枠に作用し、型枠に、撓み等の変形を生じ、コンクリート構造物の寸法精度が低下してしまう。
【特許文献1】特許第4191235号公報
【特許文献2】実開昭61−52032号公報
【特許文献3】特開2008−57253号公報
【特許文献4】特開平10−292621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、現場打ちコンクリートにより壁を構築するにあたり、型枠の変形を生じずに、足場の安定性を向上できる壁貫通連結装置及びそれを用いる仮設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る壁貫通連結装置は、構築すべき壁の厚さだけ隔てて垂直に支持される一対の型枠の間に装着され、かつ一対の型枠内へコンクリートが現場打ちされ、硬化・凝固した後も壁内に一体的に埋め込まれる壁貫通連結装置であって、一端部において型枠の室外側に組み立てられる足場に連結される第1壁つなぎ用金具の先端ボルトを螺合可能な雌ねじ部を有する第1連結部と、他端部において型枠の室内側に仮設される支保工に連結される第2壁つなぎ用金具の先端ボルトを螺合可能な雌ねじ部を有する第2連結部とを備える。
【0010】
この構成において、コンクリートを現場打ちする前に、室内側では、既設スラブの上に支保工が配置され仮設構造体が形成される。また、同じ階層の室外側では、足場が組まれる。そして、壁を構築するための一対の型枠を組む際に、一対の型枠の間に、壁貫通連結装置が装着される。
【0011】
足場に第1壁つなぎ用金具が連結されると共に、この金具の先端ボルトが、壁貫通連結装置の第1連結部における雌ねじ部にねじ込まれる。一方、支保工に第2壁つなぎ用金具が連結されると共に、この金具の先端ボルトが、壁貫通連結装置の第2連結部における雌ねじ部にねじ込まれる。
【0012】
ここで、支保工は、その上部において作業員が移動したり、コンクリートの分布等が変化してもびくともしないほどの強い強度を有するが、このように壁貫通通連結装置を介して、足場を支保工に連結すると、足場が支保工に剛結されることとなり、足場からの荷重が作用しても、それは支保工により支持され、足場の剛性が大幅に向上する。
【0013】
しかもこの際、足場から引っ張りあるいは圧縮の荷重が作用しても、それは支保工へ伝達されるため、型枠の変形は発生せず、できあがりの壁の寸法精度を高く維持することができる。
【0014】
即ち、本発明の壁貫通連結装置は、セパレータに外観上似た部分があったとしても、その機能及び本質は、セパレータのそれとは一線を画すものであり、全く別異の存在である。
【0015】
このように、足場の安定性を大幅に向上できるだけでなく、しかも型枠の変形を抑制することができる。
【0016】
さらに、型枠内に現場打ちされたコンクリートの硬化・凝固が完了し、各先端ボルトと各連結部における雌ねじ部とをゆるめれば、目的の型枠、足場及び支保工を撤去することもできる。
【0017】
加えて、これらの雌ねじ部を所定の配置としておけば、壁の室内側あるいは室外側に所定の配置に従う雌ねじ部が、アンカー打ち等の無駄でコンクリートを痛めつける作業なしに、所望の部材(例えば、高所に設置されるエアコンの室内機、室外機、家具、その他)を設置し支持する上での基礎として活用することができる。
【0018】
第2の発明に係る壁貫通連結装置では、さらに、第1連結部と第2連結部との間に、第1連結部と第2連結部とを連結する埋込体を設け、埋込体の周面からコンクリートへ向けて突出する突部を設けてなる。
【0019】
この構成において、型枠の間にコンクリートが打設されるまでは、埋込体の突部は、空気に触れているだけであって、壁貫通連結装置は、何ら支障なく、型枠の間に装着できる。型枠の間にコンクリートが打設される最中では、硬化していないコンクリートは、突部の周囲にも支障なく拡散することができる。
【0020】
しかしながら、コンクリートが硬化・凝固した後は、突部は、コンクリートとしっかり噛み合うことになり、第1連結部、第2連結部のそれぞれの雌ねじ部に対して先端ボルトを相対的に回転させても、埋込体は、突部とコンクリートとが噛み合っているため、回転しない。
【0021】
即ち、このような回転を試みた際に、埋込体が供回りすることがなく、これらの雌ねじ部と先端ボルトとを円滑に締め込んだり緩めたりすることができる。
【0022】
第3の発明に係る壁貫通連結装置では、さらに、第1連結部と埋込体との間及び埋込体と第2連結部の間の少なくとも一方に、第1連結部、埋込体及び第2連結部のいずれよりも大径の止水板を設けてなる。
【0023】
この構成により、万一水が室外側から室内側へ流れ込もうとしても、止水板がそれを妨げ、コンクリート内における進水を遮断することができる。
【0024】
第4の発明に係る壁貫通連結装置では、さらに、第1連結部及び第2連結部の外周に第1連結部及び第2連結部よりも大径のガイドリングを設け、型枠の撤去時においてガイドリングを取り外せるようにしてなる。
【0025】
この構成において、ガイドリングを設けているため、ガイドリングは、現場打ちされるコンクリートが入り込めない邪魔物として作用し、コンクリートの硬化・凝固が完了した後、ガイドリングを取り外すと、ガイドリングが存在していた部分がコンクリートがない空隙となる。
【0026】
この空隙を設けておくと、この空隙に例えば樹脂製のキャップ等の詰め物を入れて、雌ねじ部の目隠しにすることもできるし、後にこの雌ねじ部を利用しようとする際にも、空隙があいている方が、ボルトあるいはドライバーといった、材料及び工具類を接近させることが容易になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、足場を、壁貫通連結装置を介して支保工に剛結することができ、足場の安定性を大幅に向上できる。しかも、型枠そのものの変形を防止でき、壁等の寸法精度を高く保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。まず、本形態のスラブ施工方法の各工程を述べる。
【0029】
図1は、本発明の一実施の形態における仮設構造の立面図である。本出願人が取得した特許に係る特許公報1に記載の技術を実施すると、図1に示すような仮設構造体が構成される。
【0030】
即ち、室内側において、既設スラブ1の上に下層階仮設支柱2が複数立設される。これらの下層階仮設支柱2同士は水平な水平管3により連結され、高剛性の下層階仮設構造体が形成される。
【0031】
図1の例では、既設スラブ1の1階層上の床スラブだけでなく、さらに1階層上の床スラブが同時並行して構築される。このため、水平管3の上端部には、埋込ブロック4の下面側雌ねじ部が螺合され、埋込ブロック4の上面側雌ねじ部には、上層階仮設支柱5の下端部が螺合される。また、上層階仮設支柱5の上端部には、埋込ブロック6の下面側雌ねじ部が螺合される。
【0032】
図示を簡単にするため、図1では型枠の表示が省略されているが、埋込ブロック4及び埋込ブロック6の上下には、水平な型枠であって床スラブを形成するためのものが、埋込ブロック4及び埋込ブロック6の周囲に現場打ちされるコンクリートが硬化・凝固するまで配置される。
【0033】
硬化・凝固後には、既設スラブ1の1階層及び2階層上の床スラブと、埋込ブロック4及び埋込ブロック6は一体化し、言い換えれば、埋込ブロック4及び埋込ブロック6とはこれらの床スラブの内部にそのまま一体的に埋め込まれた状態となる。
【0034】
以上は、床スラブの構築に関する説明である。勿論、コンクリート造りの建物は、床スラブのみで構成されるものではなく、垂直な要素である壁、柱あるいは補強のための水平な梁なども併せて構築する必要がある。
【0035】
壁を構築するには、一対の型枠を構築すべき壁の厚さだけ隔てて垂直に配置する必要があり、室外での作業も必要になる。このため、図1に示すように、室外において多段の足場が組まれる。
【0036】
本発明の足場は、周知のもので差し支えない。例えば、図2に示すような足場を使用する。
【0037】
図2は、本発明の一実施の形態における足場の斜視図である。この足場は、次のように組まれる。
【0038】
まず、最低面(地面等)に敷板100を敷き、敷板100の上に所定間隔を隔ててジャッキベース101を配置する。
【0039】
次に、ジャッキベース101に建枠102の下端部を挿入し、建枠102を自立させる。また、建枠102に交差筋交103を取付け、建枠102を補強する。
【0040】
次に、建枠102に保護枠104を取付け、作業員が足場から側部へ落下しないように保護する。
【0041】
さらに、建枠102の間に、床付き布枠105を取付け、建枠102を補強すると共に、作業員が載る面を確保する。
【0042】
以上の作業を各段について繰り返せば、所望の高さの足場を組むことができる。
【0043】
図1の例では、既設スラブ1が完成するまでに既設足場11は既に組まれているから、下層階仮設支柱2、埋込ブロック4、上層階仮設支柱5及び埋込ブロック6を含んでなる仮設構造体を組むにあわせて、1段目12、2段目13、3段目14及び必要があれば4段目15を組んでゆく。
【0044】
なお、足場をくみ上げる際には、足場の外側にメッシュシートを張り、工事現場外への悪影響が及ばないように配慮するのが好ましい。
【0045】
さて、図1に示す技術を実施すると、既設足場11の上に一気に既設足場11〜3段目14(あるいは必要なら4段目15)までの足場を組むことになる。本来足場は、それ自体で自立し風等の外力をうけても安定した状態を保ち、作業員に危険が及ばないように配慮されている。
【0046】
しかしながら、現実には、新たにくみ上げられる足場の部分は、しばしば不安定となり、作業員等の落下のような事故が発生するおそれがある。したがって、従来技術の考え方ないしそれに工夫を加えると、新たに組まれる足場の部分に、筋交いなどの補強を施すことになる。
【0047】
しかしながら、このように筋交いなどの補強材を足場に追加すると、作業員が補強材に邪魔されて、極めて作業を行いにくくなる。いきおい、本来設けるべき補強材を省略して作業することになり、危険が増大する。
【0048】
これを避けるには、くみ上げられる足場と型枠を治具で接続することも考えられるが、こうすると、背景技術の項で述べたように、型枠が変形してしまい、構築される壁等の寸法精度が低下する。
【0049】
以上のような点を考慮し、本形態では、次のような壁貫通連結装置を使用し、型枠の変形がなく、作業員の邪魔にならず、しかも足場の実質的な強度を大幅に増加できるようにする。
【0050】
本形態の壁貫通連結装置の説明に先立ち、足場の建枠102と壁貫通連結装置、及び壁貫通連結装置と支保工の下層階仮設支柱2、上層階仮設支柱5とを接続するために使用する第1壁つなぎ用金具17(一端部に先端ボルト17aを有する)、第2壁つなぎ用金具18(一端部に先端ボルト18aを有する)について説明する。
【0051】
なお、これらの第1壁つなぎ用金具17、18は市販のものを使用して差し支えない。
【0052】
図3は、本発明の一実施の形態における壁つなぎ用金具の斜視図である。第1壁つなぎ用金具17、第2壁つなぎ用金具18は、図3に示すような要素を備える。
【0053】
即ち、パイプ19は、ほぼ円筒状をなし左端部がやや細く絞られた形状を有する。
【0054】
パイプ19の右側には、ゴムキャップ22が装着され、さらに右端部には、図3右方向に雄ねじ部を有する先端ボルト23が設けられる。
【0055】
一方、パイプ19の図3左方やや細く絞られた部分には、調整ボルト20が装着され、調整ボルト20の先端部には、外側からパイプを挟持するクランプ21が取り付けられている。
【0056】
即ち、第1壁つなぎ用金具17、第2壁つなぎ用金具18は、そのクランプ21により建枠102の垂直管あるいは下層階仮設支柱2及び上層階仮設支柱5を強固にクランプすることができ、また、第1壁つなぎ用金具17、第2壁つなぎ用金具18は、その先端ボルト23(つまり先端ボルト17a、18a)により、別の部材である雌ねじ部に螺合することができる。
【0057】
次に、本形態の壁貫通連結装置を説明する。図4は、本発明の一実施の形態における型枠付近の拡大断面図である。
【0058】
図4に示すように、壁を構築するために一対の垂直な型枠35、36が構築すべき壁の厚さだけ隔てて支持される。なお、実際には、型枠35、36の間には鉄筋が配置されるが、図を簡単にするため、鉄筋は省略されている。
【0059】
型枠35、36の間の中央部分には、水平な円管状の埋込体25が配置される。埋込体25の周面から外向き放射状に突部26が突設される。
【0060】
突部26は、型枠35、36の間に打設されるコンクリートが硬化・凝固するまでは、目立った働きをせず、コンクリートの打設時にも、埋込体25の周面及び突部26の周囲までコンクリートを充填することができる。
【0061】
しかし、一旦このコンクリートが硬化・凝固すると、硬化・凝固したコンクリートに突部26が噛み込む状態となり、埋込体25はコンクリート内において、その軸を中心に回転できず、また、左右にも移動できなくなる。
【0062】
つまり、埋込体25は、コンクリートと一体化し相対的な移動は不可能となる。埋込体25の左右両端部には、雌ねじ部が形成されている。
【0063】
埋込体25の左側の雌ねじ部には、室外側から連結部31の第1雌ねじ部27が螺合される。
【0064】
同様に、埋込体25の右側の雌ねじ部には、室内側(つまり支保工側)から連結部32の第2雌ねじ部28が螺合される。
【0065】
また、連結部31の左端側及び連結部32の右端側にも雌ねじ部が形成されている。
【0066】
さらに、埋込体25と連結部31との間と、埋込体25と連結部32との間に、それぞれ連結部31、埋込体25及び連結部32のいずれよりも大径の止水板29、30が設けられる。
【0067】
本形態では、止水板29、30は、いずれも円板状に形成しているが、矩形その他の多角形、楕円などとしてもよい。
【0068】
止水板29、30は、室外から室内側へ、あるいは室内から室外側への水の流動を阻止できるようにすれば十分である。例えば、止水板29、30は、片方のみ設けても実用上十分であり、設ける位置も種々変更しても差し支えない。
【0069】
あるいは、単なる板状にせず、止水効果を高めるため、縁部に返しを設けても良いが、コンクリートの打設・充填を阻害しないように配慮する必要がある。
【0070】
止水板29と型枠35の間で連結部31の周囲、及び止水板30と型枠36の間で連結部32の周囲には、それぞれガイドリング33、34が装着される。
【0071】
ガイドリング33、34は、埋込体25、連結部31、連結部32と同軸な回転体とすることが望ましい。例えば、図示しているようにテーパ部とフランジ部の組み合わせとすることが望ましい。
【0072】
本形態の壁貫通連結装置16は、以上のように構成される。
【0073】
さらに、上述したように、足場側から第1壁つなぎ用金具17の先端ボルト17aが連結部31の左端側の雌ねじ部に螺合され、室内、即ち支保工側から第2壁つなぎ用金具18の先端ボルト18aが連結部32の右端側の雌ねじ部に螺合される。
【0074】
これにより、図1に示すように、足場の1段目12、3段目14が第1壁つなぎ用金具17、壁貫通連結装置16、第2壁つなぎ用金具18を介して、下層階仮設支柱2、上層階仮設支柱5に連結される。
【0075】
こうなると、足場からの水平力を支保工に伝達でき、そうしても型枠35、36は剛結されているため、変形せずその寸法精度が保持される。しかも、足場は、強固な支保工と剛結されるから、その強度及び安定性を大幅に向上でき、その結果、作業員の安全性を良好に保持することができる。
【0076】
第1壁つなぎ用金具17、壁貫通連結装置16、第2壁つなぎ用金具18の設置場所は、作業が容易になるように選択すればよいが、好ましくは、図1に示すように、下層階梁8、上層階梁10の下の部分とする。
【0077】
水平方向に一定ピッチで設置すれば、後に別の用途(例えば、エアコンの室内機の支持基礎として)に利用できる雌ねじ列を壁に構築することができる。これには、コンクリートにアンカーを打つというような、コンクリートを傷つける作業は必要ない。
【0078】
壁を構築するためのコンクリートは、図4に示すような状態が形成されてから、型枠35、36内へ打設される。
【0079】
次に、このコンクリートの養生に入り、コンクリートが硬化・凝固するのを待つ。
【0080】
硬化・凝固が完了したら、次に述べるように、連結部等を取り外す。図5は、本発明の一実施の形態1における連結部の取外工程を示す断面図、図6は、本発明の一実施の形態1における取外後の壁を示す断面図である。
【0081】
即ち、図5に示すように、足場側において第1雌ねじ部27を緩める。また、室内側において、第2雌ねじ部28を緩める。
【0082】
この際、足場側において、連結部31、第1壁つなぎ用金具17を取り外すと共に、ガイドリング33を外す。また、室内側において、連結部32、第2壁つなぎ用金具18を取り外すと共に、ガイドリング34を外す。
【0083】
この際、上述したように、突部26がコンクリートに噛み合っているため、螺子の供回りは発生せず、円滑に作業することができる。
【0084】
その結果、図6に示すように、従前、ガイドリング33、連結部31があった箇所及びガイドリング34、連結部32があった箇所は、それぞれ空隙Sとなる。また、止水板29及び止水板30が埋込体25側への水の進入を阻止する。
【0085】
この取り外しまでは、埋込体25の両端部の雌ねじ部は、足場と支保工とを連結する部材として活躍していたのであるが、図6のように取り外した後では、これれらの雌ねじ部を他の用途(物品の支持の基礎とするなど)に活用することができる。しかも、こうするについて、壁にアンカーを打つというような、壁を傷つける作業は一切必要ない。
【0086】
図6に示すように、空隙Sを開けたままにすると、埋込体25が錆びてしまうことも考えられるので、空隙Sに丸い樹脂製のキャップあるいは粘土を装着し、空隙Sを塞ぐのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の壁貫通連結装置は、例えば、足場を組み、現場打ちのコンクリートにより壁を構築する分野において好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施の形態における仮設構造の立面図
【図2】本発明の一実施の形態における足場の斜視図
【図3】本発明の一実施の形態における壁つなぎ用金具の斜視図
【図4】本発明の一実施の形態における型枠付近の拡大断面図
【図5】本発明の一実施の形態1における連結部の取外工程を示す断面図
【図6】本発明の一実施の形態1における取外後の壁を示す断面図
【符号の説明】
【0089】
1 既設スラブ
2 下層階仮設支柱
3 水平管
4、6 埋込ブロック
5 上層階仮設支柱
7 下層階壁
8 下層階梁
9 上層階壁
10 上層階梁
11 既設足場
12 1段目
13 2段目
14 3段目
15 4段目
16 壁貫通連結装置
17 第1壁つなぎ用金具
18 第2壁つなぎ用金具
17a、18a、23 先端ボルト
19 パイプ
20 調整ボルト
21 クランプ
22 ゴムキャップ
25 埋込体
26 突部
27 第1雌ねじ部
28 第2雌ねじ部
29、30 止水板
31、32 連結部
33、34 ガイドリング
35、36 型枠
S 空隙
100 敷板
101 ジャッキベース
102 建枠
103 交差筋交
104 保護枠
105 床付き布枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築すべき壁の厚さだけ隔てて垂直に支持される一対の型枠の間に装着され、かつ前記一対の型枠内へコンクリートが現場打ちされ、硬化・凝固した後も壁内に一体的に埋め込まれる壁貫通連結装置であって、
一端部において前記型枠の室外側に組み立てられる足場に連結される第1壁つなぎ用金具の先端ボルトを螺合可能な雌ねじ部を有する第1連結部と、
他端部において前記型枠の室内側に仮設される支保工に連結される第2壁つなぎ用金具の先端ボルトを螺合可能な雌ねじ部を有する第2連結部とを備えることを特徴とする壁貫通連結装置。
【請求項2】
前記第1連結部と前記第2連結部との間に、前記第1連結部と前記第2連結部とを連結する埋込体を設け、前記埋込体の周面から前記コンクリートへ向けて突出する突部を設けたことを特徴とする請求項1記載の壁貫通連結装置。
【請求項3】
前記第1連結部と前記埋込体との間及び前記埋込体と前記第2連結部の間の少なくとも一方に、前記第1連結部、前記埋込体及び前記第2連結部のいずれよりも大径の止水板を設けた請求項2記載の壁貫通連結装置。
【請求項4】
前記第1連結部及び前記第2連結部の外周に前記第1連結部及び前記第2連結部よりも大径のガイドリングを設け、前記型枠の撤去時において前記ガイドリングを取り外せるようにしてなる請求項1から3のいずれかに記載の壁貫通連結装置。
【請求項5】
型枠と、前記型枠に装着される請求項1から4のいずれかに記載の壁貫通連結装置と、前記壁貫通連結装置により連結される支保工及び足場とを備える仮設構造。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−99287(P2011−99287A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255918(P2009−255918)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(508012611)株式会社JUST.WILL (9)
【Fターム(参考)】