説明

壁面、天井面を高精細に再現できる撮影方法

【課題】壁面やレンズ面の歪みを考慮して撮影することにより、実際の壁面や天井面に描かれた文化財をデジタル情報として、歪み無く高精細に記録保存することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ラインカメラと壁面の距離とを設定する距離設定手段と、壁面の全幅を設定する全幅設定手段と、距離設定手段と全幅設定手段で設定された数値を用いて回転手段の副走査速度を設定する回転速度設定手段と、からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインセンサ(一次元イメージセンサ)を用いた平面である壁面、天井面を実物大サイズで高精細に再現できる撮影方法に関する。詳しくは古墳、文化財の歴史的発掘、保存調査向けに壁画、天井画をフォトマップ撮影(正確な写真を撮影した後コンピュータで画像解析を行い、精度の高い実測図と写真画像を得るもの)するために過去にはない、最高水準の撮影画像を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、デジタルカメラは、高精細カメラ、プロ向けデジタルカメラとしては、1000万画素〜2000万画素のCCDセンサーが用いられている。この仕様は、縦×横の画素数として約3000×3000画素、3000×6000画素を示すが、デジタルカメラはエリアCCDセンサーを使用しているため、実際は4画素(2×2のマトリックス状)を使って一つのエリアを記録している。よって、RGBフィルターを並べてフルカラーデータを作成するため、実質の解像度については、1/2×1/2=1/4相当の解像度になる。
【0003】
したがって、デジタルカメラの画素数が増え、高画質となったとしても、壁面、天井面という大きな対象物(4m〜10m大)を高精細デジタルカメラで撮影しても実物大以上のサイズで実現するだけの高精細画像は期待出来ず、実現することは困難である。
【0004】
このデジタルカメラを使ってワイドな景観画像を得る手法に関しては、ソフトウエアによるパノラマ合成画像を作成し、そのカメラの持つ最大限の解像度を保ち、広げていくことが周知の改善技術として広まっている。しかし、その処理はワイド方向(幅方向)のみで、他方向は本来のカメラの画素数に依存することになり、画素数が上がると、改善にはなるがその効果は不十分である。
【0005】
一方、他の撮影手法であるラインCCDセンサーカメラは、一般的にマシンビジョン(産業向け)の検査向けの用途が多く、高速に流れるラインを読取るカメラとして高精細より、リアルタイム(高速)性を望まれるため、通常、解像度はデジタルカメラ相当の仕様(1000万画素〜2000万画素)が一般的である。また、上述のデジタルカメラと同様に、ラインCCDカメラもワイド方向はデジタルカメラより、リニアに改善できるが他方向は同様にその効果は不十分である。
【0006】
従来、CCDセンサーなどの撮像素子を用いて周囲360度の画像を撮像して得たパノラマ 画像を領域毎に切出して出力できるパノラマ撮像システムが提案されている(特許文献1)
【特許文献1】特開平11−136584号公報 この従来の発明においては、撮像したパノラマ画像から所定領域の画像を短時間で得ることができるが、パノラマ画像の全体を得ることはできず、尚且つ、高精細に歪み無く記録することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、壁面やレンズ面の歪みを考慮して撮影することにより、実際の壁面や天井面に描かれた文化財をデジタル情報として、歪み無く高精細に記録保存することを課題とする。
現存場所から動かせない古墳、文化財等を、恒久的保存を行う手段として正確な実測図と高精細な写真画像を提供するフォトマップ撮影を実行することで、更に高精彩な実物サイズで復元することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、画面の撮影において一定のライン周期で1ライン分の撮影である主走査を繰り返すラインセンサと、被写体からの光をラインセンサへ入射させる焦点距離の変更が可能な撮影レンズと、ラインセンサと撮影レンズを副走査方向に回転させる回転手段と、からなるラインカメラを用いて壁面を撮影する方法であって、ラインカメラと壁面の距離とを設定する距離設定手段と、壁面の全幅を設定する全幅設定手段と、距離設定手段と全幅設定手段で設定された数値を用いて回転手段の副走査速度を設定する回転速度設定手段と、からなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は1画面の撮影において一定のライン周期で1ライン分の撮影である主走査を繰り返すラインセンサと、被写体からの光をラインセンサへ入射させる焦点距離の変更が可能な撮影レンズと、ラインセンサと撮影レンズを副走査方向に回転させる回転手段と、からなるラインカメラを用いて天井面を撮影する方法であって、ラインカメラを回転させる回転手段を重力方向に対して90度回転させることにより、撮影レンズを天井面に向ける撮影方向変更手段と、ラインカメラと天井面の距離とを設定する距離設定手段と、天井面の全幅を設定する全幅設定手段と、距離設定手段と全幅設定手段で設定された数値を用いて回転手段の副走査速度を設定する回転速度設定手段と、からなる天井面撮影方法とからなることを特徴とする。
【0010】
図4は、カメラ部の回転で距離が変化することによるひずみとレンズのひずみの関係を示す図である。この図4で示すように、回転ひずみとレンズひずみが大きいとトータルの画像ひずみは大きくなる。本発明によるフォトマップ撮影方法においては、図5で示すように、回転半径を大きくし、レンズの被写界深度を深く取る(絞りを大きく、距離を長くとる)設定にすることで、トータルの画像のひずみを小さくする手法を採用している。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、歪みが少なく、高精細な画像を得ることができる。また、壁面・天井を一度に撮影できることから、デジタルカメラで撮影された複数の画像をつなぎ合わせる場合より、より現物に近い画像を記録保存することが可能となる。更に、重要文化財等の移動させることが困難な壁面や天井面に描かれた絵画等を高精細に現状記録保存が可能になる。
【0012】
詳しくは、神社仏閣のデジタルアーカイブとして、動かせない仏像、壁画、襖等の再現、また、大きな対象物を原寸大で再現として、自動車、一戸建て、樹木、花木、機械、等の原寸大画像再現が可能となる
本発明による平面の高精細撮影方法による発生するレンズと回転による画像ひずみは、実際の場所の正確な実測図を伴えば、画像処理ソフトにて正確にひずみ補正が可能である。もっとも重要なのは、高精細画像の提供である。本発明による平面の高精細撮影方法は、原寸大サイズの復元も可能となり、画期的手法である。
【実施例】
【0013】
図1を用いて壁面撮影方法を詳しく説明する。符号2は、画像の撮影において一定のライン周期で1ライン分の撮影である主走査を繰り返すラインセンサで構成されたカメラ部である。また、符号3は、被写体からの光をラインセンサへ入射させる焦点距離の変更が可能なレンズ部である。さらに、符号4は、カメラ部2とレンズ部3を副走査方向に回転させる回転機構部である。
【0014】
上記回転機構部は、カメラ用の三脚5に設けられた雲台に固定され、コンパクトに持ち運び可能である。また、このレンズ部は通常のカメラマウントを使用しているため、レンズ交換が可能となっている。
【0015】
また、符号6で示されるのは、コントローラー部である。このコントローラー部は、カメラ部2と回転機構部4と接続され、カメラ部2からの画像データを変換したり、回転機構部4の回転速度を制御したりする。
【0016】
符号7で示されるのはパーソナルコンピュータ(以後PCと略す)である。このPC7は、コントローラー6から出力された画像をソフトウエアを用いて表示させたり、コントローラー6を制御する設定値を入力したりするために用いられる。
【0017】
実際に壁面Aを撮影する方法を説明する。図2で示すように、カメラ部2を壁面の中央に来るように三脚5ごと配置する。次に、カメラ部2と壁面Aの距離を測定し、PC7を用いてコントローラー6に数値を入力する。
【0018】
次に、壁面Aの長さを、PC7を用いてコントローラー6に入力する。更に、使用するカメラレンズに応じたレンズ補正値を、PC7を用いてコントローラー6に入力する。
【0019】
次に、撮影する壁面Aの明るさを露出計で測定し、レンズ部3の撮影レンズの絞り値を決定する。その際、絞り値は、壁面Aの全幅を考慮して、被写界深度が高くなるように設定する。その撮影レンズの絞り値もPC7を用いてコントローラー6に入力する。
【0020】
すべての設定が終了したなら、撮影を開始する。図3で示すように、カメラ部2がゆっくりと副走査方向に回転していき、壁面Aの全体を一度に撮影する。撮影された画像は、コントローラー6を介してPC7に入力され、PC7内のソフトウエアにて画像が記録保存されることになる。
【0021】
その撮影の際、PC7は、内蔵したソフトウエアにて壁面Aの大きさとカメラ部2との距離、撮影レンズの歪、壁面Aの明るさを考慮して回転機構部4の回転速度を計算する。詳しくは、PC7にて壁面Aとカメラ部2の距離や、撮影レンズのゆがみ、壁面Aの明るさに応じて回転速度を変化させることで、壁面Aの撮影画像のひずみを無くようにしている。その計算結果をコントローラー6に入力して、回転機構部4を制御している。
【0022】
また、本発明は、壁面だけではなく天井面でも撮影が可能となる。詳しくは、回転機構部4の回転方向を重力方向と同じ方向にすることで、カメラ部を天井方向に向けることで実現している。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、重要文化財等移動させることが困難であり、且つ、平面的に大きな作品(襖絵、天井画等)を記録保存することに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は壁面撮影方法のための装置の全体図である。
【図2】図2は壁面撮影方法の装置を配置するための配置図である。
【図3】図3は壁面撮影方法の動作を説明する平面図である。
【図4】図4は本発明の作用を説明する平面図である。
【図5】図5は本発明の作用を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 壁面撮影方法のための装置
2 カメラ部
3 レンズ部
4 回転機構部
5 三脚部
6 コントローラー部
7 パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1画面の撮影において一定のライン周期で1ライン分の撮影である主走査を繰り返すラインセンサと、被写体からの光を前記ラインセンサへ入射させる焦点距離の変更が可能な撮影レンズと、前記ラインセンサと撮影レンズを副走査方向に回転させる回転手段と、からなるラインカメラを用いて壁面を撮影する方法であって、
前記ラインカメラと壁面の距離とを設定する距離設定手段と、
壁面の全幅を設定する全幅設定手段と、
前記距離設定手段と全幅設定手段で設定された数値を用いて前記回転手段の副走査速度を設定する回転速度設定手段と、
からなる壁面、天井面を高精細に再現できる撮影方法。
【請求項2】
1画面の撮影において一定のライン周期で1ライン分の撮影である主走査を繰り返すラインセンサと、被写体からの光を前記ラインセンサへ入射させる焦点距離の変更が可能な撮影レンズと、前記ラインセンサと撮影レンズを副走査方向に回転させる回転手段と、からなるラインカメラを用いて天井面を撮影する方法であって、
前記ラインカメラを回転させる回転手段を重力方向に対して90度回転させることにより、撮影レンズを天井面に向ける撮影方向変更手段と、
前記ラインカメラと天井面の距離とを設定する距離設定手段と、
天井面の全幅を設定する全幅設定手段と、
前記距離設定手段と全幅設定手段で設定された数値を用いて前記回転手段の副走査速度を設定する回転速度設定手段と、
からなる壁面、天井面を高精細に再現できる撮影方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−11106(P2010−11106A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168210(P2008−168210)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000111247)ニューリー株式会社 (29)
【Fターム(参考)】