壁面エキスパンションジョイント
【課題】通常時には大きな風圧に対抗でき、地震時には免震層でのスムーズな相対移動を妨げる虞のない壁面エキスパンションジョイントを提供する。
【解決手段】本体躯体1と、本体に対し免震装置で分離されて平面的に相対移動するマスダンパーとなる躯体2のうち、一方に、両躯体の外壁W1、W2間の隙間を隠蔽するエキ
スパンションジョイントパネル25をヒンジ機構24により揺動自在に枢着し、前記パネル25とヒンジ機構側の躯体とを油圧シリンダー装置26等の伸縮装置で枢支連結し、当該伸縮装置の伸縮を阻止するロック状態と伸縮を許容するロック解除状態とに切換え可能なロック機構4を設け、通常時には、ロック状態にした伸縮装置で前記パネル25を固定しておき、地震発生時には、地震センサーSが設定震度以上の地震を感知することにより、ロック機構をロック状態からロック解除状態に切り換えて、伸縮装置による前記パネル25の固定を解除する。
【解決手段】本体躯体1と、本体に対し免震装置で分離されて平面的に相対移動するマスダンパーとなる躯体2のうち、一方に、両躯体の外壁W1、W2間の隙間を隠蔽するエキ
スパンションジョイントパネル25をヒンジ機構24により揺動自在に枢着し、前記パネル25とヒンジ機構側の躯体とを油圧シリンダー装置26等の伸縮装置で枢支連結し、当該伸縮装置の伸縮を阻止するロック状態と伸縮を許容するロック解除状態とに切換え可能なロック機構4を設け、通常時には、ロック状態にした伸縮装置で前記パネル25を固定しておき、地震発生時には、地震センサーSが設定震度以上の地震を感知することにより、ロック機構をロック状態からロック解除状態に切り換えて、伸縮装置による前記パネル25の固定を解除する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物における本体躯体と、本体に対し免震装置で分離されて平面的に相対移動するマスダンパーとなる躯体との間に設けられる壁面エキスパンションジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な外壁エキスパンションジョイントでは、特許文献1, 2, 3, 4等に見られるように、外壁間の隙間を隠蔽するエキスパンションジョイントパネル(カバー材)を外壁の一方にスプリングで弾性支持させることによって、エキスパンションジョイントパネルの固定及び稼動時の復元を行うように構成されていた。
【0003】
しかしながら、このエキスパンションジョイントパネルの支持方法を超高層建築物の壁面エキスパンションジョイントに用いると、次のような問題が生じる。即ち、例えば高さが150メートルを越えるような超高層の制震構造の建築物では、超高層部の壁面に強大な風圧が作用するので、超高層部に設置されたエキスパンションジョイントパネルには、風による強大な負圧が作用することになる。
【0004】
従って、上述した従来のエキスパンションジョイントパネルの支持方法では、スプリングとして、負圧による強大な引張力に耐え得る強大なバネ力のスプリングが必要になる。そして、エキスパンションジョイントパネルの弾性支持に強大なバネ力のスプリングを用いると、地震時に免震層での相対移動がスムーズに行えなくなるという問題点がある。
【0005】
【特許文献1】特開平6−129024号公報
【特許文献2】特開平9−111893公報
【特許文献3】特開2004−278222号公報
【特許文献4】特開2006−138142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の点に留意してなされたものであって、その目的とするところは、通常時には大きな風圧に対抗でき、地震時には免震層でのスムーズな相対移動を妨げる虞のない壁面エキスパンションジョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明が講じた技術的手段は、次のとおりである。即ち、請求項1に記載の発明による壁面エキスパンションジョイントは、建築物における本体躯体と、本体に対し免震装置で分離されて平面的に相対移動するマスダンパーとなる躯体のうち、一方の躯体に、両躯体の外壁間の隙間を隠蔽するエキスパンションジョイントパネルをヒンジ機構により揺動自在に枢着し、当該エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とを伸縮装置で枢支連結し、当該伸縮装置の伸縮を阻止するロック状態と伸縮を許容するロック解除状態とに切換え可能なロック機構を設け、通常時には、ロック状態にした伸縮装置でエキスパンションジョイントパネルを固定しておき、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記ロック機構をロック状態からロック解除状態に切り換えて、前記伸縮装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の壁面エキスパンションジョイントであって
、前記伸縮装置が油圧シリンダー装置によって構成され、前記ロック機構が当該油圧シリンダー装置の油圧回路に設けられた電磁ロック弁によって構成され、通常時には、ロック状態にした油圧シリンダー装置でエキスパンションジョイントパネルを固定しておき、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記電磁ロック弁をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、設定震度以上の地震発生時に地震センサーから発せられるマスダンパー用トリガーを解除操作するためのトリガー信号によって、前記電磁ロック弁をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、油圧シリンダー装置の油圧回路に、油圧シリンダー装置にかかる油圧を検出する圧力計とその検出結果に基づいて油圧シリンダー装置の油圧を解放する電磁リリーフ弁を設け、何らかの原因により前記電磁ロック弁がロック解除状態に切り換わらない場合、油圧シリンダー装置に一定の荷重がかかることによって、当該電磁リリーフ弁が解放動作するように構成し、何らかの原因により当該電磁リリーフ弁が解放動作しなかった場合、エキスパンションジョイントパネルと油圧シリンダー装置との連結部分が最初に破壊されて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定が解除されるようにしたことを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、前記伸縮装置が引張スプリングによって構成され、前記ロック機構がデッドボルトと当該デッドボルトの先端部を挿抜自在に挿入する係止孔とで構成され、通常時には、デッドボルトの先端部が係止孔に挿入されたロック状態の引張スプリングでエキスパンションジョイントパネルを固定しておき、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記デッドボルトが係止孔から抜け出したロック解除状態に切り換えて、引張スプリングによるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、前記引張スプリングが互いにスライド自在に嵌合する二重筒状の鞘管に内蔵されていることを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、何らかの原因によりロック機構がロック解除状態に切り換わらない場合、デッドボルトに一定の荷重がかかることによって、当該デッドボルトと係止孔との挿入係止部分が最初に破壊されて、引張スプリングによるエキスパンションジョイントパネルの固定が解除されるようにしたことを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項3又は7に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とをチェーンで連結してあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、ヒンジ機構により揺動自在に枢着されたエキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とを伸縮装置で枢支連結し、通常時には、ロック機構によって当該伸縮装置をロック状態にして、エキスパンションジョイントパネル
を固定しておくため、風による揺動が阻止されて、強大な負圧に耐えることができ、例えば高さが150メートルを越えるような超高層の制震構造の建築物にも適用することが可能である。それでいて、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記ロック機構をロック状態からロック解除状態に切り換えて、伸縮装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するので、免震層でのスムーズな相対移動を妨げる虞がない。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、前記伸縮装置が油圧シリンダー装置によって構成され、前記ロック機構が当該油圧シリンダー装置の油圧回路に設けられた電磁ロック弁によって構成されているので、通常時には、油圧シリンダー装置の油圧回路に設けた電磁ロック弁によりロック状態にした油圧シリンダー装置でエキスパンションジョイントパネルを固定しておくことにより、風による揺動が阻止されて、強大な風圧に耐えることができ、それでいて、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記電磁ロック弁をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するので、免震層でのスムーズな相対移動を妨げる虞がない。
【0017】
また、地震終了後は、油圧シリンダー装置を伸縮作動させて、エキスパンションジョイントパネルを元の位置に復帰させることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、設定震度以上の地震発生時に地震センサーから発せられるマスダンパー用トリガーを解除操作するためのトリガー信号(マスダンパーの固定を解除する信号)によって、前記電磁ロック弁をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するので、設定震度以上の地震発生時にトリガー信号を発する地震センサーがエキスパンションジョイントパネルの油圧シリンダー装置をロック状態からロック解除状態に切り換えるための電磁ロック弁を切換え動作させる地震センサーに兼用されることになり、地震センサーの兼用による構成の簡略化と低コスト化が可能である。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、油圧シリンダー装置の油圧回路に、油圧シリンダー装置にかかる油圧を検出する圧力計とその検出結果に基づいて油圧シリンダー装置の油圧を解放する電磁リリーフ弁を設け、何らかの原因により前記電磁ロック弁がロック解除状態に切り換わらない場合、油圧シリンダー装置に一定の荷重がかかることによって、当該電磁リリーフ弁が解放動作するように構成し、何らかの原因により当該電磁リリーフ弁が解放動作しなかった場合、エキスパンションジョイントパネルと油圧シリンダー装置との連結部分が最初に破壊されて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定が解除されるようにしたので、二段階のフェールセーフとなって、設定震度以上の地震発生時に免震層での相対移動が開始されたにもかかわらず、エキスパンションジョイントパネルが開放されないといった不都合な事態の発生を確実に防止できる。
【0020】
この場合、更に、請求項8に記載のように、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とをチェーンで連結しておけば、予測不能な原因(例えば、飛来物の衝突)によって壁面エキスパンションジョイントが破壊されても、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とをチェーンで連結してあるので、三段階のフェールセーフとなって、エキスパンションジョイントパネルの落下の危険性を少しでも軽減させることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の外壁とを引張スプリングで枢支連結して、引張スプリングの引張力で耐風パネルが復元するように構成しているにもかかわらず、通常時には、ロック機構で耐風パネルを固定して
おくので、耐風パネルに風による強大な負圧が作用しても、引張スプリングには引張力が作用しない。従って、風による強大な負圧に耐える強大なバネ力の引張スプリングが必要でないので、強大なバネ力のために、地震時に免震層での相対移動がスムーズに行えなくなるという問題を回避できることになる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、引張スプリングが互いにスライド自在に嵌合する二重筒状の鞘管に内蔵されているので、鞘管のスライドストローク端の設定によって、耐風パネルの初期位置を規定することができ、しかも、引張スプリングが風雨に曝されていないので、引張スプリングの発錆を防止して、長期間にわたって外部壁面エキスパンションジョイントの性能を維持できる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、何らかの原因によりロック機構がロック解除状態に切り換わらない場合、デッドボルトに一定の荷重がかかることによって、当該デッドボルトと係止孔との挿入係止部分が最初に破壊されて、引張スプリングによるエキスパンションジョイントパネルの固定が解除されるので、エキスパンションジョイントパネルの落下を防止することができる。更に、請求項8に記載のように、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とをチェーンで連結しておけば、予測不能な原因(例えば、飛来物の衝突)によって壁面エキスパンションジョイントが破壊されても、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とをチェーンで連結してあるので、エキスパンションジョイントパネルの落下の危険性を少しでも軽減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る壁面エキスパンションジョイントを図面に基づいて説明する。図1〜図4は、スカイラウンジとして利用される最上階の一部(図2に示す平面視ほぼ馬蹄形の部分)を階段・エレベータが設けられている本体コア部の躯体1と免震層aで分離し、分離した最上階部分(本体コア部となる躯体1の三方を取り囲む馬蹄形の部分)の躯体2を本体コア部の躯体1に対して平面的に相対移動するマスダンパー(質量ダンパー)とした制震構造の超高層建築物を示す。
【0025】
具体的には、この超高層建築物は、地表近く(例えば1階)に設置された地震センサーSが設定震度以上の地震を感知すると、当該地震センサーSから発せられるマスダンパー用トリガー(最上階のマスダンパーとなる躯体2と本体コア部の躯体1との固定及び固定解除を司る機構)を解除操作するためのトリガー信号Tによって、本体コア部の躯体1に対するマスダンパーの固定状態が解かれ、マスダンパー(スカイラウンジとして利用される最上階の躯体2)が最大±1mの稼動をするように構成されている。図3、図4に示す3は分離した最上階の躯体(スカイラウンジ)2を支持する免震装置であり、免震層aは、免震装置や積層ゴム等によって構成されている。5は減衰用オイルダンパー、6はトリガー用オイルダンパーである。
【0026】
本体コア部の躯体1とマスダンパーとなる躯体2の相対向する外壁W1、W2間には、防火区画された連絡通路7を形成すると共に当該連絡通路7の雨水処理を行う内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1が複数箇所に設けられている。図示の例では、内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1が4箇所にあり、図2に示すように、本体コア部1の左右両側面とそれに対向する馬蹄形部分の内側面との間に2箇所ずつ設けられている。
【0027】
そして、各々の内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1の外側(屋外空間側)には、風圧処理用の壁面エキスパンションジョイントEXP.J2を設けて、内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1に風圧が作用することを防止するように構成されている。従って、内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1による雨水処理手
段や防火区画形成手段に対する風圧による悪影響を阻止することが可能となり、内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1による本来の止水性能を確保でき、防火区画も確実に維持できることになる。
【0028】
図示の例では、前記壁面エキスパンションジョイントEXP.J2は、図2に示すように、相対向する外壁W1、W2間の隙間のうち、馬蹄形部分の端部に対応する2箇所と、本体コア部の躯体1と馬蹄形部分の中央部との間に形成された屋根の無い吹抜け(中庭用のオープンスペース)8に面した2箇所に設けられている。
【0029】
内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1は、図3、図5〜図7に示すように、連絡通路7の床を形成する床エキスパンションジョイント9と、連絡通路7の天井を形成する天井エキスパンションジョイント10と、連絡通路7の左右の内壁を形成する左右一対の内壁エキスパンションジョイント11とを備えている。
【0030】
床エキスパンションジョイント9は、躯体1側に固定された床板12と、躯体2側に固定された床板13と、両床板12,13に対して平面的に相対移動する中央の床板14と
、その床板14より下方において躯体1と躯体2にわたって連結された縦軸芯周りに変形する左右一対の水平なパンタグラフ式リンク15とを備え、当該パンタグラフ式リンク15における中央の枢支軸15aを中央の床板14に対して縦軸芯周りで回転自在に枢着してある。
【0031】
天井エキスパンションジョイント10は、一方の躯体1により連絡通路7の幅方向にスライド自在に支持され且つ他方の躯体2により連絡通路7の長手方向(連絡通路7の幅方向と直角な方向)にスライド自在に支持されたガイドレール16と、当該ガイドレール16の下面に固定された天井板17とで構成されている。
【0032】
内壁エキスパンションジョイント11は、蛇腹状をなす折り畳み自在な一対の壁板18と、各壁板18の外側において躯体1と躯体2にわたって連結された水平軸芯周りに変形する左右二対の垂直なパンタグラフ式リンク19とを備え、当該パンタグラフ式リンク19の各枢支軸を蛇腹状壁板18の折れ曲り稜線に枢支連結して構成されている。
【0033】
そして、これら床エキスパンションジョイント9、天井エキスパンションジョイント10、内壁エキスパンションジョイント11の周囲全体を取り囲む状態に防火区画形成用の可撓性耐火帯20を配設し、この可撓性耐火帯20を、床エキスパンションジョイント9の中央の床板14に枢着された前記の水平なパンタグラフ式リンク15、天井の可撓性耐火帯20よりも上方において躯体1と躯体2にわたって連結された水平なパンタグラフ式リンク21、側壁の可撓性耐火帯20よりも外側において躯体1と躯体2にわたって連結された垂直なパンタグラフ式リンク22で支持させて、地震によるマスダンパー稼動時にも連絡通路7の防火区画が維持されるように構成されている。
【0034】
また、防火区画の周囲には、その全体を取り囲む状態に止水シート23を配置し、当該止水シート23の一端を躯体1側に、他端を躯体2側に、夫々、水密状態に固定して、連絡通路7の雨水処理(止水処理)を行うように構成されている。
【0035】
前記壁面エキスパンションジョイントEXP.J2は、内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1に風圧がかからないようにすることを主目的とするものであるが、通常時、雨の吹き込みを抑制する程度の雨水処理の役目も果たすものである。
【0036】
図示の例では、壁面エキスパンションジョイントEXP.J2が、図8に示すように、重量及び風圧を分散するために上下複数段(図示の例では3段)のユニットに分割されて
おり、各段のユニットは、図9、図10に示すように、躯体1と躯体2との相対向する外壁W1、W2の一方に上下方向の回動中心を有するヒンジ機構24により揺動自在に枢着されて、外壁W1、W2間の隙間を隠蔽する耐風強度の高い(例えば、100年再現周期の最大設計風圧に耐える強度、換言すれば、100年に一度有るような強風に耐える強度に設計された)エキスパンションジョイントパネル25と、当該エキスパンションジョイントパネル25とヒンジ機構24側の躯体2とを枢支連結する伸縮装置としての油圧シリンダー装置26とを備えている。
【0037】
油圧シリンダー装置(伸縮装置の一例である。)26には、当該油圧シリンダー装置26の伸縮を阻止するロック状態と伸縮を許容するロック解除状態とに切換え可能なロック機構4を設けてある。そして、通常時には、油圧シリンダー装置26でエキスパンションジョイントパネル25を固定しておき、地震発生時には、前記地震センサーSが設定震度以上の地震を感知することにより、前記油圧シリンダー装置26をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定を解除するように構成されている。尚、各段のユニットにおける油圧シリンダー装置26は、互いに並列に接続されており、同時に同じ作動をするように構成されている。
【0038】
より詳しく説明すると、エキスパンションジョイントパネル25の裏面に固着された複数本(図示の例では8本)の水平フレーム27aとそれらと直角に連結された垂直フレーム27bとから成る補強フレームのうち、パネル中央から上下に等間隔を隔てた2本の水平フレーム27aの先端に夫々キャスター28を設け、パネル中央部の垂直フレーム27bとヒンジ機構24側の外壁W2とを、前記油圧シリンダー装置26で枢支連結し、当該油圧シリンダー装置26の油圧回路に後述する電磁ロック弁29を設けて、前記ロック機構4を構成し、前記地震センサーSから発せられるトリガー信号Tにより電磁ロック弁29を開放動作させるように構成してある。
【0039】
尚、通常時、つまり、エキスパンションジョイントパネル25の油圧シリンダー装置26がロック状態にあるとき、前記キャスター28の先端とそれに対向する躯体1の外壁W1との間には、図9に示すように、若干の隙間(例えば、40mm程度の隙間)Hが形成されており、エキスパンションジョイントパネル25の揺動先端縁に取り付けられたパッキン30のみが外壁W1に接触し、キャスター28が外壁W1に接触しないようになっている。これは、風や設定震度以下の地震等による層間変位を許容するための工夫である。
【0040】
図11は、油圧シリンダー装置26の油圧回路を示す。図11において、31はオイルタンク、32は油面計、33は給油口兼エアブリーザー、34はサクションストレーナー、35は油圧ポンプ、36はチェック弁、37は圧力計である。38は、油圧シリンダー装置26を人為的に伸縮作動させるための電磁切換弁であり、弁体のスライドにより、油圧シリンダー装置26を伸長させる流路と、油圧シリンダー装置26を縮小させる流路と、オイルを循環させる流路とを切り換えるようになっている。
【0041】
29は、油圧シリンダー装置26の伸縮を阻止するロック状態と伸縮を許容するロック解除状態とに切り換える電磁ロック弁(ノンリークバルブ)であり、油圧シリンダー装置26の油路を遮断するロック状態と、油圧シリンダー装置26の油路を開放するロック解除状態とに切換え可能に構成されている。そして、通常時には、ロック状態にした油圧シリンダー装置26でエキスパンションジョイントパネル25を固定しておき、設定震度以上の地震発生時には、前記地震センサーSから発せられるマスダンパー用トリガーを解除操作するためのトリガー信号Tによって、前記電磁ロック弁29をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定を解除するように構成されている。29aはパイロットチェック弁である。
【0042】
電磁ロック弁29と油圧シリンダー装置26の間の油路には、油圧シリンダー装置26に掛かる油圧を検出する圧力計39とその検出結果に基づいて油圧シリンダー装置26の油圧を解放する電磁リリーフ弁40が設けられており、何らかの原因により前記電磁ロック弁29がロック解除状態に切り換わらない場合、油圧シリンダー装置26に一定の荷重(例えば、100年再現周期の荷重の1.1倍)が掛かることによって、当該電磁リリーフ弁40が解放動作し、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定が解除されるように構成してある。図示しないが、電磁リリーフ弁40の電源回路には、5分間の無停電電源装置が組み込まれており、地震による停電が発生しても、電磁リリーフ弁40が開放動作し得るように構成されている。
【0043】
エキスパンションジョイントパネル25と油圧シリンダー装置26との連結部分(例えば、エキスパンションジョイントパネル25の補強フレームに油圧シリンダー装置26の一端を枢支連結するためのピン41又はピン41を支持するブラケットの固定用ボルト42)の破壊強度は、電磁リリーフ弁40を開放動作させる荷重の1.2倍に設定されているが、エキスパンションジョイントパネル25における全ての部位の強度を下回る設計となっている。
【0044】
従って、何らかの原因により当該電磁リリーフ弁40が解放動作しなかった場合、エキスパンションジョイントパネル25と油圧シリンダー装置26との連結部分が最初に破壊されて、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定が解除されることになる。
【0045】
43はエキスパンションジョイントパネル25とヒンジ機構4側の躯体2とを連結するステンレス鋼製のチェーンである。従って、予測不能な原因(例えば、飛来物の衝突)によって壁面エキスパンションジョイントが破壊されても、エキスパンションジョイントパネル25とヒンジ機構24側の躯体2とをチェーン43で連結してあるので、エキスパンションジョイントパネル25の落下を防止できる。
【0046】
上記の構成によれば、ヒンジ機構24により揺動自在に枢着されたエキスパンションジョイントパネル25とヒンジ機構24側の躯体2とを油圧シリンダー装置26で枢支連結し、通常時には、ロック機構4によって、つまり、油圧シリンダー装置26の油圧回路に設けた電磁ロック弁29によりロック状態にした油圧シリンダー装置26でエキスパンションジョイントパネル25を固定しておくので、強大な風圧に耐えることができ、例えば高さが150メートルを越えるような超高層の制震構造の建築物にも適用することが可能である。
【0047】
それでいて、地震発生時には、地震センサーSが設定震度以上の地震を感知することにより、前記電磁ロック弁29をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定を解除するので、免震層aでのスムーズな相対移動を妨げる虞がなく、図12〜図14に示すように、マスダンパー(スカイラウンジとして利用される最上階の躯体2)が最大±1mの範囲でスムーズに稼動して、本体コア部の躯体1の揺れを防止することになる。
尚、油圧シリンダー装置26は、ロック解除状態において油圧が開放されるので、エキスパンションジョイントパネル25のキャスター28が外壁W1で押されることによって、図10の(B)、図14に示すように、伸長するが、図13に示すように、外壁W1、W2間の隙間が広くなる方向に躯体2が稼動しても、油圧シリンダー装置26はこれに追従しない。
【0048】
地震センサーSとしては、電磁ロック弁29専用のものを用いてもよいが、上記の実施
形態では、設定震度以上の地震発生時に地震センサーSから発せられるマスダンパー用トリガーを解除操作するためのトリガー信号(マスダンパーの固定を解除する信号)Tによって、前記電磁ロック弁29をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定を解除するようにしたので、設定震度以上の地震発生時にトリガー信号を発する地震センサーSがエキスパンションジョイントパネル25の油圧シリンダー装置26をロック状態からロック解除状態に切り換えるための電磁ロック弁29を切換え動作させる地震センサーに兼用されることになり、地震センサーの兼用による構成の簡略化と低コスト化が可能である。
【0049】
また、地震終了後は、電磁切換弁38により油圧シリンダー装置26を伸縮作動させて、エキスパンションジョイントパネル25を元の位置に復帰させることができる。
【0050】
殊に、上記の構成によれば、三段階のフェールセーフとなって、エキスパンションジョイントパネル25の落下の危険性を少しでも軽減させることができる。即ち、設定震度以上の地震発生時に、何らかの原因により前記電磁ロック弁29がロック解除状態に切り換わらない場合、油圧シリンダー装置26に一定の荷重がかかることによって、電磁リリーフ弁40が解放動作して、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定が解除され、何らかの原因により電磁リリーフ弁40が解放動作しなかった場合には、エキスパンションジョイントパネル25と油圧シリンダー装置26との連結部分が最初に破壊されて、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定が解除される。
【0051】
従って、設定震度以上の地震発生時に免震層aでの相対移動が開始されたにもかかわらず、エキスパンションジョイントパネル25の固定状態が解除されないといった不都合な事態の発生を確実に防止でき、たとえ予測不能な原因(例えば、飛来物の衝突)によって壁面エキスパンションジョイントが破壊されても、エキスパンションジョイントパネル25とヒンジ機構24側の躯体2とをチェーン43で連結してあるので、エキスパンションジョイントパネル25の落下を防止できるのである。
【0052】
図15、図16は、本発明の他の実施形態を示し、エキスパンションジョイントパネル25とヒンジ機構24側の躯体2とを枢支連結する伸縮装置として引張スプリング44を採用し、引張スプリング44の伸縮を阻止するロック状態と伸縮を許容するロック解除状態とに切換え可能なロック機構4を、デッドボルト45と当該デッドボルト45の先端部を挿抜自在に挿入する係止孔46とで構成し、通常時には、デッドボルト45の先端部が係止孔46に挿入されたロック状態の引張スプリング44でエキスパンションジョイントパネル25を固定しておき、地震発生時には、前記地震センサーSが設定震度以上の地震を感知することにより、前記デッドボルト45が係止孔46から抜け出したロック解除状態に切り換えて、引張スプリング44によるエキスパンションジョイントパネル25の固定を解除するようにした点に特徴がある。
【0053】
より詳しく説明すると、エキスパンションジョイントパネル25の裏面に固着された複数本(図示の例では8本)の水平フレーム27aとそれらと直角に連結された垂直フレーム27bとから成る補強フレームのうち、エキスパンションジョイントパネル25中央から上下に等間隔を隔てた2本の水平フレーム27aの先端に夫々キャスター28を設け、エキスパンションジョイントパネル25中央部の垂直フレーム27bとヒンジ機構24側の外壁W2とを、エキスパンションジョイントパネル25の固定及び稼動時の復元を司る引張スプリング44で枢支連結してある。尚、引張スプリング44の両端は、後述するピン47,48で支持されている。
【0054】
躯体1の外壁W1の所定位置に、出没可能なデッドボルト45とそれを出没駆動する電
磁石(図示せず)とを備えた電気錠本体49を固定する一方、通常時、これと対向する位置にある水平フレーム27aの先端には、前記デッドボルト45の先端部が挿入される係止孔46を有する係止用ブロック50を固着して、電気錠から成るロック機構4を構成してある。
【0055】
そして、通常時には、突出状態にあるデッドボルト45の先端部が係止孔46に挿入されて、エキスパンションジョイントパネル25の揺動を阻止するロック状態が維持され、設定震度以上の地震発生時には、電気錠の制御装置(図示せず)が前記地震センサーSからのトリガー信号を受けることにより、デッドボルト45が電気錠本体49に引き込まれて、係止孔46から抜け出したロック解除状態に切り換わり、エキスパンションジョイントパネル25の揺動阻止状態が解除されるように構成されている。
【0056】
従って、ロック解除状態において、マスダンパーが外壁W1、W2間の隙間が狭くなる方向に稼動すると、図16に示すように、キャスター28が外壁W1で押され、エキスパンションジョイントパネル25が引張スプリング44に抗してヒンジ機構24の回動中心周りに揺動し、マスダンパーに追従することになる。
【0057】
尚、通常時、つまり、エキスパンションジョイントパネル25がロック状態にあるとき、キャスター28の先端とそれに対向する躯体1の外壁W1との間には、図15に示すように、若干の隙間(例えば、40mm程度の隙間)Hが形成されており、エキスパンションジョイントパネル25の揺動先端縁に取り付けられたパッキン30のみが外壁W1に接触し、キャスター28が外壁W1に接触しないようになっている。また、係止孔46の内面には適当な厚さのクロロプレンゴム等のスポンジ状緩衝材46aが取り付けられている。これらは、何れも、風や設定震度以下の地震等による層間変位を許容するための工夫である。
【0058】
前記引張スプリング44には、互いにスライド自在に嵌合する二重筒状の鞘管51が套嵌され、一方の鞘管51aの基端はヒンジ機構24の回動中心と平行なピン(引張スプリング29の一端を支持するピン)47でエキスパンションジョイントパネル25側に枢着され、他方の鞘管51bの基端は前記ピン47と平行なピン(引張スプリング44の他端を支持するピン)48でヒンジ機構24側の外壁W2に枢着されている。内側の鞘管51aの基端側外面には、外側の鞘管51bの開口端にして、それ以上の縮小方向へのスライドを阻止するストッパー(スライドストローク端を設定するストッパー)52が設けられている。
【0059】
従って、ピン47,48とヒンジ機構24との位置関係、換言すれば、エキスパンショ
ンジョイントパネル25の初期位置が規定されることになる。また、引張スプリング44が鞘管51に内蔵されているので、引張スプリング44が風雨に曝されず、引張スプリング44の発錆を防止できる。従って、長期間にわたって壁面エキスパンションジョイントEXP.J2の性能が維持されることになる。
【0060】
尚、デッドボルト45と係止孔46との挿入係止部分(例えばデッドボルト45又は係止孔46を形成する係止用ブロック50)の破壊強度は、壁面エキスパンションジョイントEXP.J2の破壊強度よりも弱く設計されており、設定震度以上の地震発生時に、何らかの原因によりデッドボルト4が係止孔46から抜け出さない場合、デッドボルト45に一定の荷重(例えば、100年再現周期の荷重の1.1倍)が掛かることによって、当該デッドボルトと係止孔との挿入係止部分が最初に破壊されて、引張スプリング44によるエキスパンションジョイントパネル25の固定が解除されるように構成されている。
【0061】
上記の構成によれば、エキスパンションジョイントパネル25側とヒンジ機構24側の
外壁W2とを、エキスパンションジョイントパネル25の固定及び稼動時の復元を司る引張スプリング44で枢支連結してあるが、通常時には、ロック機構4のデッドボルト30先端部を係止孔31に挿入して、エキスパンションジョイントパネル25を固定しておくので、エキスパンションジョイントパネル25に風による強大な負圧が作用しても、引張スプリング44には引張力が作用せず、従って、引張スプリング44として風による強大な負圧に耐える強大なバネ力の引張スプリングを必要としない。
【0062】
設定震度以上の地震発生時には、地震センサーSから発せられるマスダンパー用トリガーを解除操作するためのトリガー信号Tによって、躯体1に対するマスダンパー(スカイラウンジとして利用される最上階部分の躯体2)の固定状態が解かれると同時に、前記デッドボルト30が係止孔31から抜け出してロック解除状態に切り換わり、エキスパンションジョイントパネル25の固定を解除する。
【0063】
従って、壁面エキスパンションジョイントEXP.J2のエキスパンションジョイントパネル25が地震時における免震層aでの相対移動の妨げにならず、しかも、引張スプリング44として強大なバネ力のものを要求されないので、引張スプリング44によって免震層aでのスムーズな相対移動を妨げることもなく、図17、図18に示すように、マスダンパー(スカイラウンジとして利用される最上階部分の躯体2)が最大±1mの範囲でスムーズに稼動して、本体1の揺れを防止することになる。
【0064】
地震が終わると、壁面エキスパンションジョイントEXP.J2のエキスパンションジョイントパネル25が引張スプリング44によって初期位置に復帰するので、図15に示したロック状態に復元することができる。
【0065】
図19は、本発明の他の実施形態を示し、ヒンジ機構24側の外壁W2に、エキスパンションジョイントパネル25の補強フレームの一部27cと当接して、エキスパンションジョイントパネル25のそれ以上の内側への揺動を阻止するストッパー53を設けた点に特徴がある。
【0066】
この構成によれば、引張スプリング44に套嵌させる二重筒状の鞘管51が不要となるので、低コスト化を図ることができる。その他の構成、作用効果は先の実施形態と同じであるため、同一構成部材に同一符号を付し、説明を省略する。
【0067】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態を示す超高層建築物の概略側面図である。
【図2】超高層建築物の最上階部分の要部横断平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】内部壁面エキスパンションジョイントの分解斜視図である。
【図6】内部壁面エキスパンションジョイントの縦断側面図である。
【図7】内部壁面エキスパンションジョイントの縦断正面図である。
【図8】図2のC−C立面図である。
【図9】本発明に係る壁面エキスパンションジョイントの横断平面図である。
【図10】本発明に係る壁面エキスパンションジョイントの作用図である。
【図11】本発明に係る壁面エキスパンションジョイントにおける油圧シリンダー装置の油圧回路図である。
【図12】本発明に係る壁面エキスパンションジョイントと内部壁面エキスパンションジョイントの通常時における位置関係を示す作用図である。
【図13】本発明に係る壁面エキスパンションジョイントと内部壁面エキスパンションジョイントの地震時における位置関係を示す作用図である。
【図14】本発明に係る壁面エキスパンションジョイントと内部壁面エキスパンションジョイントの地震時における位置関係を示す作用図である。
【図15】本発明の他の実施形態を示す壁面エキスパンションジョイントの通常時における横断平面図である。
【図16】上記の壁面エキスパンションジョイントの地震時における横断平面図である。
【図17】上記の壁面エキスパンションジョイントと内部壁面エキスパンションジョイントの地震時における位置関係を示す作用図である。
【図18】上記の壁面エキスパンションジョイントと内部壁面エキスパンションジョイントの地震時における位置関係を示す作用図である。
【図19】本発明の他の実施形態を示す壁面エキスパンションジョイントの通常時における横断平面図である。
【符号の説明】
【0069】
EXP.J2A 壁面エキスパンションジョイント
S 地震センサー
a 免震層
1,2 躯体
4 ロック機構
25 エキスパンションジョイントパネル
26 油圧シリンダー装置(伸縮装置)
29 電磁ロック弁
44 引張スプリング(伸縮装置)
45 デッドボルト
46 係止孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物における本体躯体と、本体に対し免震装置で分離されて平面的に相対移動するマスダンパーとなる躯体との間に設けられる壁面エキスパンションジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な外壁エキスパンションジョイントでは、特許文献1, 2, 3, 4等に見られるように、外壁間の隙間を隠蔽するエキスパンションジョイントパネル(カバー材)を外壁の一方にスプリングで弾性支持させることによって、エキスパンションジョイントパネルの固定及び稼動時の復元を行うように構成されていた。
【0003】
しかしながら、このエキスパンションジョイントパネルの支持方法を超高層建築物の壁面エキスパンションジョイントに用いると、次のような問題が生じる。即ち、例えば高さが150メートルを越えるような超高層の制震構造の建築物では、超高層部の壁面に強大な風圧が作用するので、超高層部に設置されたエキスパンションジョイントパネルには、風による強大な負圧が作用することになる。
【0004】
従って、上述した従来のエキスパンションジョイントパネルの支持方法では、スプリングとして、負圧による強大な引張力に耐え得る強大なバネ力のスプリングが必要になる。そして、エキスパンションジョイントパネルの弾性支持に強大なバネ力のスプリングを用いると、地震時に免震層での相対移動がスムーズに行えなくなるという問題点がある。
【0005】
【特許文献1】特開平6−129024号公報
【特許文献2】特開平9−111893公報
【特許文献3】特開2004−278222号公報
【特許文献4】特開2006−138142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の点に留意してなされたものであって、その目的とするところは、通常時には大きな風圧に対抗でき、地震時には免震層でのスムーズな相対移動を妨げる虞のない壁面エキスパンションジョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明が講じた技術的手段は、次のとおりである。即ち、請求項1に記載の発明による壁面エキスパンションジョイントは、建築物における本体躯体と、本体に対し免震装置で分離されて平面的に相対移動するマスダンパーとなる躯体のうち、一方の躯体に、両躯体の外壁間の隙間を隠蔽するエキスパンションジョイントパネルをヒンジ機構により揺動自在に枢着し、当該エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とを伸縮装置で枢支連結し、当該伸縮装置の伸縮を阻止するロック状態と伸縮を許容するロック解除状態とに切換え可能なロック機構を設け、通常時には、ロック状態にした伸縮装置でエキスパンションジョイントパネルを固定しておき、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記ロック機構をロック状態からロック解除状態に切り換えて、前記伸縮装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の壁面エキスパンションジョイントであって
、前記伸縮装置が油圧シリンダー装置によって構成され、前記ロック機構が当該油圧シリンダー装置の油圧回路に設けられた電磁ロック弁によって構成され、通常時には、ロック状態にした油圧シリンダー装置でエキスパンションジョイントパネルを固定しておき、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記電磁ロック弁をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、設定震度以上の地震発生時に地震センサーから発せられるマスダンパー用トリガーを解除操作するためのトリガー信号によって、前記電磁ロック弁をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、油圧シリンダー装置の油圧回路に、油圧シリンダー装置にかかる油圧を検出する圧力計とその検出結果に基づいて油圧シリンダー装置の油圧を解放する電磁リリーフ弁を設け、何らかの原因により前記電磁ロック弁がロック解除状態に切り換わらない場合、油圧シリンダー装置に一定の荷重がかかることによって、当該電磁リリーフ弁が解放動作するように構成し、何らかの原因により当該電磁リリーフ弁が解放動作しなかった場合、エキスパンションジョイントパネルと油圧シリンダー装置との連結部分が最初に破壊されて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定が解除されるようにしたことを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、前記伸縮装置が引張スプリングによって構成され、前記ロック機構がデッドボルトと当該デッドボルトの先端部を挿抜自在に挿入する係止孔とで構成され、通常時には、デッドボルトの先端部が係止孔に挿入されたロック状態の引張スプリングでエキスパンションジョイントパネルを固定しておき、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記デッドボルトが係止孔から抜け出したロック解除状態に切り換えて、引張スプリングによるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、前記引張スプリングが互いにスライド自在に嵌合する二重筒状の鞘管に内蔵されていることを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、何らかの原因によりロック機構がロック解除状態に切り換わらない場合、デッドボルトに一定の荷重がかかることによって、当該デッドボルトと係止孔との挿入係止部分が最初に破壊されて、引張スプリングによるエキスパンションジョイントパネルの固定が解除されるようにしたことを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項3又は7に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とをチェーンで連結してあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、ヒンジ機構により揺動自在に枢着されたエキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とを伸縮装置で枢支連結し、通常時には、ロック機構によって当該伸縮装置をロック状態にして、エキスパンションジョイントパネル
を固定しておくため、風による揺動が阻止されて、強大な負圧に耐えることができ、例えば高さが150メートルを越えるような超高層の制震構造の建築物にも適用することが可能である。それでいて、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記ロック機構をロック状態からロック解除状態に切り換えて、伸縮装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するので、免震層でのスムーズな相対移動を妨げる虞がない。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、前記伸縮装置が油圧シリンダー装置によって構成され、前記ロック機構が当該油圧シリンダー装置の油圧回路に設けられた電磁ロック弁によって構成されているので、通常時には、油圧シリンダー装置の油圧回路に設けた電磁ロック弁によりロック状態にした油圧シリンダー装置でエキスパンションジョイントパネルを固定しておくことにより、風による揺動が阻止されて、強大な風圧に耐えることができ、それでいて、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記電磁ロック弁をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するので、免震層でのスムーズな相対移動を妨げる虞がない。
【0017】
また、地震終了後は、油圧シリンダー装置を伸縮作動させて、エキスパンションジョイントパネルを元の位置に復帰させることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、設定震度以上の地震発生時に地震センサーから発せられるマスダンパー用トリガーを解除操作するためのトリガー信号(マスダンパーの固定を解除する信号)によって、前記電磁ロック弁をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するので、設定震度以上の地震発生時にトリガー信号を発する地震センサーがエキスパンションジョイントパネルの油圧シリンダー装置をロック状態からロック解除状態に切り換えるための電磁ロック弁を切換え動作させる地震センサーに兼用されることになり、地震センサーの兼用による構成の簡略化と低コスト化が可能である。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、油圧シリンダー装置の油圧回路に、油圧シリンダー装置にかかる油圧を検出する圧力計とその検出結果に基づいて油圧シリンダー装置の油圧を解放する電磁リリーフ弁を設け、何らかの原因により前記電磁ロック弁がロック解除状態に切り換わらない場合、油圧シリンダー装置に一定の荷重がかかることによって、当該電磁リリーフ弁が解放動作するように構成し、何らかの原因により当該電磁リリーフ弁が解放動作しなかった場合、エキスパンションジョイントパネルと油圧シリンダー装置との連結部分が最初に破壊されて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定が解除されるようにしたので、二段階のフェールセーフとなって、設定震度以上の地震発生時に免震層での相対移動が開始されたにもかかわらず、エキスパンションジョイントパネルが開放されないといった不都合な事態の発生を確実に防止できる。
【0020】
この場合、更に、請求項8に記載のように、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とをチェーンで連結しておけば、予測不能な原因(例えば、飛来物の衝突)によって壁面エキスパンションジョイントが破壊されても、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とをチェーンで連結してあるので、三段階のフェールセーフとなって、エキスパンションジョイントパネルの落下の危険性を少しでも軽減させることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の外壁とを引張スプリングで枢支連結して、引張スプリングの引張力で耐風パネルが復元するように構成しているにもかかわらず、通常時には、ロック機構で耐風パネルを固定して
おくので、耐風パネルに風による強大な負圧が作用しても、引張スプリングには引張力が作用しない。従って、風による強大な負圧に耐える強大なバネ力の引張スプリングが必要でないので、強大なバネ力のために、地震時に免震層での相対移動がスムーズに行えなくなるという問題を回避できることになる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、引張スプリングが互いにスライド自在に嵌合する二重筒状の鞘管に内蔵されているので、鞘管のスライドストローク端の設定によって、耐風パネルの初期位置を規定することができ、しかも、引張スプリングが風雨に曝されていないので、引張スプリングの発錆を防止して、長期間にわたって外部壁面エキスパンションジョイントの性能を維持できる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、何らかの原因によりロック機構がロック解除状態に切り換わらない場合、デッドボルトに一定の荷重がかかることによって、当該デッドボルトと係止孔との挿入係止部分が最初に破壊されて、引張スプリングによるエキスパンションジョイントパネルの固定が解除されるので、エキスパンションジョイントパネルの落下を防止することができる。更に、請求項8に記載のように、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とをチェーンで連結しておけば、予測不能な原因(例えば、飛来物の衝突)によって壁面エキスパンションジョイントが破壊されても、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とをチェーンで連結してあるので、エキスパンションジョイントパネルの落下の危険性を少しでも軽減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る壁面エキスパンションジョイントを図面に基づいて説明する。図1〜図4は、スカイラウンジとして利用される最上階の一部(図2に示す平面視ほぼ馬蹄形の部分)を階段・エレベータが設けられている本体コア部の躯体1と免震層aで分離し、分離した最上階部分(本体コア部となる躯体1の三方を取り囲む馬蹄形の部分)の躯体2を本体コア部の躯体1に対して平面的に相対移動するマスダンパー(質量ダンパー)とした制震構造の超高層建築物を示す。
【0025】
具体的には、この超高層建築物は、地表近く(例えば1階)に設置された地震センサーSが設定震度以上の地震を感知すると、当該地震センサーSから発せられるマスダンパー用トリガー(最上階のマスダンパーとなる躯体2と本体コア部の躯体1との固定及び固定解除を司る機構)を解除操作するためのトリガー信号Tによって、本体コア部の躯体1に対するマスダンパーの固定状態が解かれ、マスダンパー(スカイラウンジとして利用される最上階の躯体2)が最大±1mの稼動をするように構成されている。図3、図4に示す3は分離した最上階の躯体(スカイラウンジ)2を支持する免震装置であり、免震層aは、免震装置や積層ゴム等によって構成されている。5は減衰用オイルダンパー、6はトリガー用オイルダンパーである。
【0026】
本体コア部の躯体1とマスダンパーとなる躯体2の相対向する外壁W1、W2間には、防火区画された連絡通路7を形成すると共に当該連絡通路7の雨水処理を行う内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1が複数箇所に設けられている。図示の例では、内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1が4箇所にあり、図2に示すように、本体コア部1の左右両側面とそれに対向する馬蹄形部分の内側面との間に2箇所ずつ設けられている。
【0027】
そして、各々の内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1の外側(屋外空間側)には、風圧処理用の壁面エキスパンションジョイントEXP.J2を設けて、内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1に風圧が作用することを防止するように構成されている。従って、内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1による雨水処理手
段や防火区画形成手段に対する風圧による悪影響を阻止することが可能となり、内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1による本来の止水性能を確保でき、防火区画も確実に維持できることになる。
【0028】
図示の例では、前記壁面エキスパンションジョイントEXP.J2は、図2に示すように、相対向する外壁W1、W2間の隙間のうち、馬蹄形部分の端部に対応する2箇所と、本体コア部の躯体1と馬蹄形部分の中央部との間に形成された屋根の無い吹抜け(中庭用のオープンスペース)8に面した2箇所に設けられている。
【0029】
内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1は、図3、図5〜図7に示すように、連絡通路7の床を形成する床エキスパンションジョイント9と、連絡通路7の天井を形成する天井エキスパンションジョイント10と、連絡通路7の左右の内壁を形成する左右一対の内壁エキスパンションジョイント11とを備えている。
【0030】
床エキスパンションジョイント9は、躯体1側に固定された床板12と、躯体2側に固定された床板13と、両床板12,13に対して平面的に相対移動する中央の床板14と
、その床板14より下方において躯体1と躯体2にわたって連結された縦軸芯周りに変形する左右一対の水平なパンタグラフ式リンク15とを備え、当該パンタグラフ式リンク15における中央の枢支軸15aを中央の床板14に対して縦軸芯周りで回転自在に枢着してある。
【0031】
天井エキスパンションジョイント10は、一方の躯体1により連絡通路7の幅方向にスライド自在に支持され且つ他方の躯体2により連絡通路7の長手方向(連絡通路7の幅方向と直角な方向)にスライド自在に支持されたガイドレール16と、当該ガイドレール16の下面に固定された天井板17とで構成されている。
【0032】
内壁エキスパンションジョイント11は、蛇腹状をなす折り畳み自在な一対の壁板18と、各壁板18の外側において躯体1と躯体2にわたって連結された水平軸芯周りに変形する左右二対の垂直なパンタグラフ式リンク19とを備え、当該パンタグラフ式リンク19の各枢支軸を蛇腹状壁板18の折れ曲り稜線に枢支連結して構成されている。
【0033】
そして、これら床エキスパンションジョイント9、天井エキスパンションジョイント10、内壁エキスパンションジョイント11の周囲全体を取り囲む状態に防火区画形成用の可撓性耐火帯20を配設し、この可撓性耐火帯20を、床エキスパンションジョイント9の中央の床板14に枢着された前記の水平なパンタグラフ式リンク15、天井の可撓性耐火帯20よりも上方において躯体1と躯体2にわたって連結された水平なパンタグラフ式リンク21、側壁の可撓性耐火帯20よりも外側において躯体1と躯体2にわたって連結された垂直なパンタグラフ式リンク22で支持させて、地震によるマスダンパー稼動時にも連絡通路7の防火区画が維持されるように構成されている。
【0034】
また、防火区画の周囲には、その全体を取り囲む状態に止水シート23を配置し、当該止水シート23の一端を躯体1側に、他端を躯体2側に、夫々、水密状態に固定して、連絡通路7の雨水処理(止水処理)を行うように構成されている。
【0035】
前記壁面エキスパンションジョイントEXP.J2は、内部壁面エキスパンションジョイントEXP.J1に風圧がかからないようにすることを主目的とするものであるが、通常時、雨の吹き込みを抑制する程度の雨水処理の役目も果たすものである。
【0036】
図示の例では、壁面エキスパンションジョイントEXP.J2が、図8に示すように、重量及び風圧を分散するために上下複数段(図示の例では3段)のユニットに分割されて
おり、各段のユニットは、図9、図10に示すように、躯体1と躯体2との相対向する外壁W1、W2の一方に上下方向の回動中心を有するヒンジ機構24により揺動自在に枢着されて、外壁W1、W2間の隙間を隠蔽する耐風強度の高い(例えば、100年再現周期の最大設計風圧に耐える強度、換言すれば、100年に一度有るような強風に耐える強度に設計された)エキスパンションジョイントパネル25と、当該エキスパンションジョイントパネル25とヒンジ機構24側の躯体2とを枢支連結する伸縮装置としての油圧シリンダー装置26とを備えている。
【0037】
油圧シリンダー装置(伸縮装置の一例である。)26には、当該油圧シリンダー装置26の伸縮を阻止するロック状態と伸縮を許容するロック解除状態とに切換え可能なロック機構4を設けてある。そして、通常時には、油圧シリンダー装置26でエキスパンションジョイントパネル25を固定しておき、地震発生時には、前記地震センサーSが設定震度以上の地震を感知することにより、前記油圧シリンダー装置26をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定を解除するように構成されている。尚、各段のユニットにおける油圧シリンダー装置26は、互いに並列に接続されており、同時に同じ作動をするように構成されている。
【0038】
より詳しく説明すると、エキスパンションジョイントパネル25の裏面に固着された複数本(図示の例では8本)の水平フレーム27aとそれらと直角に連結された垂直フレーム27bとから成る補強フレームのうち、パネル中央から上下に等間隔を隔てた2本の水平フレーム27aの先端に夫々キャスター28を設け、パネル中央部の垂直フレーム27bとヒンジ機構24側の外壁W2とを、前記油圧シリンダー装置26で枢支連結し、当該油圧シリンダー装置26の油圧回路に後述する電磁ロック弁29を設けて、前記ロック機構4を構成し、前記地震センサーSから発せられるトリガー信号Tにより電磁ロック弁29を開放動作させるように構成してある。
【0039】
尚、通常時、つまり、エキスパンションジョイントパネル25の油圧シリンダー装置26がロック状態にあるとき、前記キャスター28の先端とそれに対向する躯体1の外壁W1との間には、図9に示すように、若干の隙間(例えば、40mm程度の隙間)Hが形成されており、エキスパンションジョイントパネル25の揺動先端縁に取り付けられたパッキン30のみが外壁W1に接触し、キャスター28が外壁W1に接触しないようになっている。これは、風や設定震度以下の地震等による層間変位を許容するための工夫である。
【0040】
図11は、油圧シリンダー装置26の油圧回路を示す。図11において、31はオイルタンク、32は油面計、33は給油口兼エアブリーザー、34はサクションストレーナー、35は油圧ポンプ、36はチェック弁、37は圧力計である。38は、油圧シリンダー装置26を人為的に伸縮作動させるための電磁切換弁であり、弁体のスライドにより、油圧シリンダー装置26を伸長させる流路と、油圧シリンダー装置26を縮小させる流路と、オイルを循環させる流路とを切り換えるようになっている。
【0041】
29は、油圧シリンダー装置26の伸縮を阻止するロック状態と伸縮を許容するロック解除状態とに切り換える電磁ロック弁(ノンリークバルブ)であり、油圧シリンダー装置26の油路を遮断するロック状態と、油圧シリンダー装置26の油路を開放するロック解除状態とに切換え可能に構成されている。そして、通常時には、ロック状態にした油圧シリンダー装置26でエキスパンションジョイントパネル25を固定しておき、設定震度以上の地震発生時には、前記地震センサーSから発せられるマスダンパー用トリガーを解除操作するためのトリガー信号Tによって、前記電磁ロック弁29をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定を解除するように構成されている。29aはパイロットチェック弁である。
【0042】
電磁ロック弁29と油圧シリンダー装置26の間の油路には、油圧シリンダー装置26に掛かる油圧を検出する圧力計39とその検出結果に基づいて油圧シリンダー装置26の油圧を解放する電磁リリーフ弁40が設けられており、何らかの原因により前記電磁ロック弁29がロック解除状態に切り換わらない場合、油圧シリンダー装置26に一定の荷重(例えば、100年再現周期の荷重の1.1倍)が掛かることによって、当該電磁リリーフ弁40が解放動作し、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定が解除されるように構成してある。図示しないが、電磁リリーフ弁40の電源回路には、5分間の無停電電源装置が組み込まれており、地震による停電が発生しても、電磁リリーフ弁40が開放動作し得るように構成されている。
【0043】
エキスパンションジョイントパネル25と油圧シリンダー装置26との連結部分(例えば、エキスパンションジョイントパネル25の補強フレームに油圧シリンダー装置26の一端を枢支連結するためのピン41又はピン41を支持するブラケットの固定用ボルト42)の破壊強度は、電磁リリーフ弁40を開放動作させる荷重の1.2倍に設定されているが、エキスパンションジョイントパネル25における全ての部位の強度を下回る設計となっている。
【0044】
従って、何らかの原因により当該電磁リリーフ弁40が解放動作しなかった場合、エキスパンションジョイントパネル25と油圧シリンダー装置26との連結部分が最初に破壊されて、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定が解除されることになる。
【0045】
43はエキスパンションジョイントパネル25とヒンジ機構4側の躯体2とを連結するステンレス鋼製のチェーンである。従って、予測不能な原因(例えば、飛来物の衝突)によって壁面エキスパンションジョイントが破壊されても、エキスパンションジョイントパネル25とヒンジ機構24側の躯体2とをチェーン43で連結してあるので、エキスパンションジョイントパネル25の落下を防止できる。
【0046】
上記の構成によれば、ヒンジ機構24により揺動自在に枢着されたエキスパンションジョイントパネル25とヒンジ機構24側の躯体2とを油圧シリンダー装置26で枢支連結し、通常時には、ロック機構4によって、つまり、油圧シリンダー装置26の油圧回路に設けた電磁ロック弁29によりロック状態にした油圧シリンダー装置26でエキスパンションジョイントパネル25を固定しておくので、強大な風圧に耐えることができ、例えば高さが150メートルを越えるような超高層の制震構造の建築物にも適用することが可能である。
【0047】
それでいて、地震発生時には、地震センサーSが設定震度以上の地震を感知することにより、前記電磁ロック弁29をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定を解除するので、免震層aでのスムーズな相対移動を妨げる虞がなく、図12〜図14に示すように、マスダンパー(スカイラウンジとして利用される最上階の躯体2)が最大±1mの範囲でスムーズに稼動して、本体コア部の躯体1の揺れを防止することになる。
尚、油圧シリンダー装置26は、ロック解除状態において油圧が開放されるので、エキスパンションジョイントパネル25のキャスター28が外壁W1で押されることによって、図10の(B)、図14に示すように、伸長するが、図13に示すように、外壁W1、W2間の隙間が広くなる方向に躯体2が稼動しても、油圧シリンダー装置26はこれに追従しない。
【0048】
地震センサーSとしては、電磁ロック弁29専用のものを用いてもよいが、上記の実施
形態では、設定震度以上の地震発生時に地震センサーSから発せられるマスダンパー用トリガーを解除操作するためのトリガー信号(マスダンパーの固定を解除する信号)Tによって、前記電磁ロック弁29をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定を解除するようにしたので、設定震度以上の地震発生時にトリガー信号を発する地震センサーSがエキスパンションジョイントパネル25の油圧シリンダー装置26をロック状態からロック解除状態に切り換えるための電磁ロック弁29を切換え動作させる地震センサーに兼用されることになり、地震センサーの兼用による構成の簡略化と低コスト化が可能である。
【0049】
また、地震終了後は、電磁切換弁38により油圧シリンダー装置26を伸縮作動させて、エキスパンションジョイントパネル25を元の位置に復帰させることができる。
【0050】
殊に、上記の構成によれば、三段階のフェールセーフとなって、エキスパンションジョイントパネル25の落下の危険性を少しでも軽減させることができる。即ち、設定震度以上の地震発生時に、何らかの原因により前記電磁ロック弁29がロック解除状態に切り換わらない場合、油圧シリンダー装置26に一定の荷重がかかることによって、電磁リリーフ弁40が解放動作して、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定が解除され、何らかの原因により電磁リリーフ弁40が解放動作しなかった場合には、エキスパンションジョイントパネル25と油圧シリンダー装置26との連結部分が最初に破壊されて、油圧シリンダー装置26によるエキスパンションジョイントパネル25の固定が解除される。
【0051】
従って、設定震度以上の地震発生時に免震層aでの相対移動が開始されたにもかかわらず、エキスパンションジョイントパネル25の固定状態が解除されないといった不都合な事態の発生を確実に防止でき、たとえ予測不能な原因(例えば、飛来物の衝突)によって壁面エキスパンションジョイントが破壊されても、エキスパンションジョイントパネル25とヒンジ機構24側の躯体2とをチェーン43で連結してあるので、エキスパンションジョイントパネル25の落下を防止できるのである。
【0052】
図15、図16は、本発明の他の実施形態を示し、エキスパンションジョイントパネル25とヒンジ機構24側の躯体2とを枢支連結する伸縮装置として引張スプリング44を採用し、引張スプリング44の伸縮を阻止するロック状態と伸縮を許容するロック解除状態とに切換え可能なロック機構4を、デッドボルト45と当該デッドボルト45の先端部を挿抜自在に挿入する係止孔46とで構成し、通常時には、デッドボルト45の先端部が係止孔46に挿入されたロック状態の引張スプリング44でエキスパンションジョイントパネル25を固定しておき、地震発生時には、前記地震センサーSが設定震度以上の地震を感知することにより、前記デッドボルト45が係止孔46から抜け出したロック解除状態に切り換えて、引張スプリング44によるエキスパンションジョイントパネル25の固定を解除するようにした点に特徴がある。
【0053】
より詳しく説明すると、エキスパンションジョイントパネル25の裏面に固着された複数本(図示の例では8本)の水平フレーム27aとそれらと直角に連結された垂直フレーム27bとから成る補強フレームのうち、エキスパンションジョイントパネル25中央から上下に等間隔を隔てた2本の水平フレーム27aの先端に夫々キャスター28を設け、エキスパンションジョイントパネル25中央部の垂直フレーム27bとヒンジ機構24側の外壁W2とを、エキスパンションジョイントパネル25の固定及び稼動時の復元を司る引張スプリング44で枢支連結してある。尚、引張スプリング44の両端は、後述するピン47,48で支持されている。
【0054】
躯体1の外壁W1の所定位置に、出没可能なデッドボルト45とそれを出没駆動する電
磁石(図示せず)とを備えた電気錠本体49を固定する一方、通常時、これと対向する位置にある水平フレーム27aの先端には、前記デッドボルト45の先端部が挿入される係止孔46を有する係止用ブロック50を固着して、電気錠から成るロック機構4を構成してある。
【0055】
そして、通常時には、突出状態にあるデッドボルト45の先端部が係止孔46に挿入されて、エキスパンションジョイントパネル25の揺動を阻止するロック状態が維持され、設定震度以上の地震発生時には、電気錠の制御装置(図示せず)が前記地震センサーSからのトリガー信号を受けることにより、デッドボルト45が電気錠本体49に引き込まれて、係止孔46から抜け出したロック解除状態に切り換わり、エキスパンションジョイントパネル25の揺動阻止状態が解除されるように構成されている。
【0056】
従って、ロック解除状態において、マスダンパーが外壁W1、W2間の隙間が狭くなる方向に稼動すると、図16に示すように、キャスター28が外壁W1で押され、エキスパンションジョイントパネル25が引張スプリング44に抗してヒンジ機構24の回動中心周りに揺動し、マスダンパーに追従することになる。
【0057】
尚、通常時、つまり、エキスパンションジョイントパネル25がロック状態にあるとき、キャスター28の先端とそれに対向する躯体1の外壁W1との間には、図15に示すように、若干の隙間(例えば、40mm程度の隙間)Hが形成されており、エキスパンションジョイントパネル25の揺動先端縁に取り付けられたパッキン30のみが外壁W1に接触し、キャスター28が外壁W1に接触しないようになっている。また、係止孔46の内面には適当な厚さのクロロプレンゴム等のスポンジ状緩衝材46aが取り付けられている。これらは、何れも、風や設定震度以下の地震等による層間変位を許容するための工夫である。
【0058】
前記引張スプリング44には、互いにスライド自在に嵌合する二重筒状の鞘管51が套嵌され、一方の鞘管51aの基端はヒンジ機構24の回動中心と平行なピン(引張スプリング29の一端を支持するピン)47でエキスパンションジョイントパネル25側に枢着され、他方の鞘管51bの基端は前記ピン47と平行なピン(引張スプリング44の他端を支持するピン)48でヒンジ機構24側の外壁W2に枢着されている。内側の鞘管51aの基端側外面には、外側の鞘管51bの開口端にして、それ以上の縮小方向へのスライドを阻止するストッパー(スライドストローク端を設定するストッパー)52が設けられている。
【0059】
従って、ピン47,48とヒンジ機構24との位置関係、換言すれば、エキスパンショ
ンジョイントパネル25の初期位置が規定されることになる。また、引張スプリング44が鞘管51に内蔵されているので、引張スプリング44が風雨に曝されず、引張スプリング44の発錆を防止できる。従って、長期間にわたって壁面エキスパンションジョイントEXP.J2の性能が維持されることになる。
【0060】
尚、デッドボルト45と係止孔46との挿入係止部分(例えばデッドボルト45又は係止孔46を形成する係止用ブロック50)の破壊強度は、壁面エキスパンションジョイントEXP.J2の破壊強度よりも弱く設計されており、設定震度以上の地震発生時に、何らかの原因によりデッドボルト4が係止孔46から抜け出さない場合、デッドボルト45に一定の荷重(例えば、100年再現周期の荷重の1.1倍)が掛かることによって、当該デッドボルトと係止孔との挿入係止部分が最初に破壊されて、引張スプリング44によるエキスパンションジョイントパネル25の固定が解除されるように構成されている。
【0061】
上記の構成によれば、エキスパンションジョイントパネル25側とヒンジ機構24側の
外壁W2とを、エキスパンションジョイントパネル25の固定及び稼動時の復元を司る引張スプリング44で枢支連結してあるが、通常時には、ロック機構4のデッドボルト30先端部を係止孔31に挿入して、エキスパンションジョイントパネル25を固定しておくので、エキスパンションジョイントパネル25に風による強大な負圧が作用しても、引張スプリング44には引張力が作用せず、従って、引張スプリング44として風による強大な負圧に耐える強大なバネ力の引張スプリングを必要としない。
【0062】
設定震度以上の地震発生時には、地震センサーSから発せられるマスダンパー用トリガーを解除操作するためのトリガー信号Tによって、躯体1に対するマスダンパー(スカイラウンジとして利用される最上階部分の躯体2)の固定状態が解かれると同時に、前記デッドボルト30が係止孔31から抜け出してロック解除状態に切り換わり、エキスパンションジョイントパネル25の固定を解除する。
【0063】
従って、壁面エキスパンションジョイントEXP.J2のエキスパンションジョイントパネル25が地震時における免震層aでの相対移動の妨げにならず、しかも、引張スプリング44として強大なバネ力のものを要求されないので、引張スプリング44によって免震層aでのスムーズな相対移動を妨げることもなく、図17、図18に示すように、マスダンパー(スカイラウンジとして利用される最上階部分の躯体2)が最大±1mの範囲でスムーズに稼動して、本体1の揺れを防止することになる。
【0064】
地震が終わると、壁面エキスパンションジョイントEXP.J2のエキスパンションジョイントパネル25が引張スプリング44によって初期位置に復帰するので、図15に示したロック状態に復元することができる。
【0065】
図19は、本発明の他の実施形態を示し、ヒンジ機構24側の外壁W2に、エキスパンションジョイントパネル25の補強フレームの一部27cと当接して、エキスパンションジョイントパネル25のそれ以上の内側への揺動を阻止するストッパー53を設けた点に特徴がある。
【0066】
この構成によれば、引張スプリング44に套嵌させる二重筒状の鞘管51が不要となるので、低コスト化を図ることができる。その他の構成、作用効果は先の実施形態と同じであるため、同一構成部材に同一符号を付し、説明を省略する。
【0067】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態を示す超高層建築物の概略側面図である。
【図2】超高層建築物の最上階部分の要部横断平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】内部壁面エキスパンションジョイントの分解斜視図である。
【図6】内部壁面エキスパンションジョイントの縦断側面図である。
【図7】内部壁面エキスパンションジョイントの縦断正面図である。
【図8】図2のC−C立面図である。
【図9】本発明に係る壁面エキスパンションジョイントの横断平面図である。
【図10】本発明に係る壁面エキスパンションジョイントの作用図である。
【図11】本発明に係る壁面エキスパンションジョイントにおける油圧シリンダー装置の油圧回路図である。
【図12】本発明に係る壁面エキスパンションジョイントと内部壁面エキスパンションジョイントの通常時における位置関係を示す作用図である。
【図13】本発明に係る壁面エキスパンションジョイントと内部壁面エキスパンションジョイントの地震時における位置関係を示す作用図である。
【図14】本発明に係る壁面エキスパンションジョイントと内部壁面エキスパンションジョイントの地震時における位置関係を示す作用図である。
【図15】本発明の他の実施形態を示す壁面エキスパンションジョイントの通常時における横断平面図である。
【図16】上記の壁面エキスパンションジョイントの地震時における横断平面図である。
【図17】上記の壁面エキスパンションジョイントと内部壁面エキスパンションジョイントの地震時における位置関係を示す作用図である。
【図18】上記の壁面エキスパンションジョイントと内部壁面エキスパンションジョイントの地震時における位置関係を示す作用図である。
【図19】本発明の他の実施形態を示す壁面エキスパンションジョイントの通常時における横断平面図である。
【符号の説明】
【0069】
EXP.J2A 壁面エキスパンションジョイント
S 地震センサー
a 免震層
1,2 躯体
4 ロック機構
25 エキスパンションジョイントパネル
26 油圧シリンダー装置(伸縮装置)
29 電磁ロック弁
44 引張スプリング(伸縮装置)
45 デッドボルト
46 係止孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物における本体躯体と、本体に対し免震装置で分離されて平面的に相対移動するマスダンパーとなる躯体のうち、一方の躯体に、両躯体の外壁間の隙間を隠蔽するエキスパンションジョイントパネルをヒンジ機構により揺動自在に枢着し、当該エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とを伸縮装置で枢支連結し、当該伸縮装置の伸縮を阻止するロック状態と伸縮を許容するロック解除状態とに切換え可能なロック機構を設け、通常時には、ロック状態にした伸縮装置でエキスパンションジョイントパネルを固定しておき、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記ロック機構をロック状態からロック解除状態に切り換えて、前記伸縮装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項2】
請求項1に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、前記伸縮装置が油圧シリンダー装置によって構成され、前記ロック機構が当該油圧シリンダー装置の油圧回路に設けられた電磁ロック弁によって構成され、通常時には、ロック状態にした油圧シリンダー装置でエキスパンションジョイントパネルを固定しておき、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記電磁ロック弁をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項3】
請求項2に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、設定震度以上の地震発生時に地震センサーから発せられるマスダンパー用トリガーを解除操作するためのトリガー信号によって、前記電磁ロック弁をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項4】
請求項3に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、油圧シリンダー装置の油圧回路に、油圧シリンダー装置にかかる油圧を検出する圧力計とその検出結果に基づいて油圧シリンダー装置の油圧を解放する電磁リリーフ弁を設け、何らかの原因により前記電磁ロック弁がロック解除状態に切り換わらない場合、油圧シリンダー装置に一定の荷重がかかることによって、当該電磁リリーフ弁が解放動作するように構成し、何らかの原因により当該電磁リリーフ弁が解放動作しなかった場合、エキスパンションジョイントパネルと油圧シリンダー装置との連結部分が最初に破壊されて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定が解除されるようにしたことを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項5】
請求項1に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、前記伸縮装置が引張スプリングによって構成され、前記ロック機構がデッドボルトと当該デッドボルトの先端部を挿抜自在に挿入する係止孔とで構成され、通常時には、デッドボルトの先端部が係止孔に挿入されたロック状態の引張スプリングでエキスパンションジョイントパネルを固定しておき、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記デッドボルトが係止孔から抜け出したロック解除状態に切り換えて、引張スプリングによるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項6】
請求項5に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、前記引張スプリングが互いにスライド自在に嵌合する二重筒状の鞘管に内蔵されていることを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、何らかの原因によりロック機構がロック解除状態に切り換わらない場合、デッドボルトに一定の荷重がかかることによって、当該デッドボルトと係止孔との挿入係止部分が最初に破壊されて、引張スプリングによるエキスパンションジョイントパネルの固定が解除されるようにしたことを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項8】
請求項3又は7に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とをチェーンで連結してあることを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項1】
建築物における本体躯体と、本体に対し免震装置で分離されて平面的に相対移動するマスダンパーとなる躯体のうち、一方の躯体に、両躯体の外壁間の隙間を隠蔽するエキスパンションジョイントパネルをヒンジ機構により揺動自在に枢着し、当該エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とを伸縮装置で枢支連結し、当該伸縮装置の伸縮を阻止するロック状態と伸縮を許容するロック解除状態とに切換え可能なロック機構を設け、通常時には、ロック状態にした伸縮装置でエキスパンションジョイントパネルを固定しておき、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記ロック機構をロック状態からロック解除状態に切り換えて、前記伸縮装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項2】
請求項1に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、前記伸縮装置が油圧シリンダー装置によって構成され、前記ロック機構が当該油圧シリンダー装置の油圧回路に設けられた電磁ロック弁によって構成され、通常時には、ロック状態にした油圧シリンダー装置でエキスパンションジョイントパネルを固定しておき、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記電磁ロック弁をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項3】
請求項2に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、設定震度以上の地震発生時に地震センサーから発せられるマスダンパー用トリガーを解除操作するためのトリガー信号によって、前記電磁ロック弁をロック状態からロック解除状態に切り換えて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項4】
請求項3に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、油圧シリンダー装置の油圧回路に、油圧シリンダー装置にかかる油圧を検出する圧力計とその検出結果に基づいて油圧シリンダー装置の油圧を解放する電磁リリーフ弁を設け、何らかの原因により前記電磁ロック弁がロック解除状態に切り換わらない場合、油圧シリンダー装置に一定の荷重がかかることによって、当該電磁リリーフ弁が解放動作するように構成し、何らかの原因により当該電磁リリーフ弁が解放動作しなかった場合、エキスパンションジョイントパネルと油圧シリンダー装置との連結部分が最初に破壊されて、油圧シリンダー装置によるエキスパンションジョイントパネルの固定が解除されるようにしたことを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項5】
請求項1に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、前記伸縮装置が引張スプリングによって構成され、前記ロック機構がデッドボルトと当該デッドボルトの先端部を挿抜自在に挿入する係止孔とで構成され、通常時には、デッドボルトの先端部が係止孔に挿入されたロック状態の引張スプリングでエキスパンションジョイントパネルを固定しておき、地震発生時には、地震センサーが設定震度以上の地震を感知することにより、前記デッドボルトが係止孔から抜け出したロック解除状態に切り換えて、引張スプリングによるエキスパンションジョイントパネルの固定を解除するようにしたことを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項6】
請求項5に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、前記引張スプリングが互いにスライド自在に嵌合する二重筒状の鞘管に内蔵されていることを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、何らかの原因によりロック機構がロック解除状態に切り換わらない場合、デッドボルトに一定の荷重がかかることによって、当該デッドボルトと係止孔との挿入係止部分が最初に破壊されて、引張スプリングによるエキスパンションジョイントパネルの固定が解除されるようにしたことを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【請求項8】
請求項3又は7に記載の壁面エキスパンションジョイントであって、エキスパンションジョイントパネルとヒンジ機構側の躯体とをチェーンで連結してあることを特徴とする壁面エキスパンションジョイント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−106473(P2008−106473A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288780(P2006−288780)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]