壁面緑化ユニットと、その壁面緑化ユニットを用いた壁面緑化設備
【課題】各段のユニットにおいて灌水される水が不均一となるのを極力防止することができるとともに、上段側のユニットよりも下段側のユニットが過湿の状態になるのを極力防止することができる、壁面緑化ユニット及び壁面緑化設備を提供する。
【解決手段】植栽基盤と植物とが収容可能な内プランター3と、該内プランター3を収容可能で且つ灌水される水を貯留する貯水部8を有する外プランター2と、該外プランター2の貯水部8に貯留された水を内プランター3内に誘導するための導水手段と、前記外プランター2の貯水部8内の水を排出する排水口を有して該排水口から排出される水を下段側の壁面緑化ユニットの外プランター2の貯水部内に誘導する排水誘導路とを具備し、該排水誘導路の排水口が前記貯水部8の底面部より上部に設けられて、該排水口から溢流する貯水部8内の水が該排水誘導路の上流側から下流側へ誘導されるように構成する。
【解決手段】植栽基盤と植物とが収容可能な内プランター3と、該内プランター3を収容可能で且つ灌水される水を貯留する貯水部8を有する外プランター2と、該外プランター2の貯水部8に貯留された水を内プランター3内に誘導するための導水手段と、前記外プランター2の貯水部8内の水を排出する排水口を有して該排水口から排出される水を下段側の壁面緑化ユニットの外プランター2の貯水部内に誘導する排水誘導路とを具備し、該排水誘導路の排水口が前記貯水部8の底面部より上部に設けられて、該排水口から溢流する貯水部8内の水が該排水誘導路の上流側から下流側へ誘導されるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築、構築物の壁面に沿って設置することによって、その壁面を緑化する壁面緑化ユニットと、そのような壁面緑化ユニットを用いて壁面の緑化を行う壁面緑化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて都市部における種々の場所、たとえば、公園、歩道等の場所で人為的に樹木を植設する等によって緑化が行われている。特に建築物、構築物等が立ち並ぶような場所では、自然木等が少ないので、そのような建築物、構築物等の壁面の緑化を行うことが盛んに試みられている。このような建築物、構築物等の壁面の緑化は、都市部における景観の改善を図るだけでなく、いわゆるヒートアイランド現象を緩和する点でも好ましいものであり、今後、益々普及が望まれるものである。
【0003】
このような壁面緑化の技術として、土壌等の植栽基盤と植物とが収容可能なユニットを壁面の上下に複数段設置し、灌水パイプ等を配置してユニットに収容された植物や植栽基盤に灌水する技術があり、たとえば特許文献1や特許文献2のような特許出願がなされている。
【0004】
特許文献1は立体プランターに関するものであり、特許文献2は壁面緑化構造及び壁面緑化工法に関するものであるが、これら特許文献1及び2では、いずれも多数の小孔が穿設された灌水管が、植栽基盤と植物とを収容するユニットに対して水平に配置され、その灌水管の小孔から植栽基盤や植物に水が直接散布されるように構成されている。また、植栽基盤と植物とを収容するユニットは、特許文献1では格子状に区画されて構成され、その区画されたユニット内に植栽基盤や植物が収納され、また特許文献2ではメッシュシートで構成されたユニット内に植栽基盤が収納されている。
【0005】
しかし、このような特許文献1や特許文献2に記載された立体プランターや壁面緑化構造では、植栽基盤や植物は、上記のような格子やメッシュシートで区画されたユニット部分に収容されているにすぎず、そのユニットに収容された植栽基盤と植物に対して灌水管の小孔から水が直接散布されるだけであるので、灌水される水は、そのまま上段側のユニットから下段側のユニットに流れ、一定量の水が各ユニットの部分で保持されるようなこともない。
【0006】
従って、各段のユニットへの水の供給が不均一となり易く、また下段側のユニットでは、上段側のユニットに比べて、過湿の状態になり易いという問題も生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−330631号公報
【特許文献2】特開2004−324160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、上記従来の壁面緑化の技術のように、各段のユニットにおいて灌水される水が不均一となるのを極力防止することができるとともに、上段側のユニットよりも下段側のユニットが過湿の状態になるのを極力防止することができる、壁面緑化ユニット及び壁面緑化設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような課題を解決するために、壁面に沿って上下複数段に配置して壁面緑化を行うための壁面緑化ユニットにおいて、植栽基盤と植物とが収容可能な内プランターと、該内プランターを収容可能で且つ灌水される水を貯留する貯水部を有する外プランターと、該外プランターの貯水部に貯留された水を内プランター内に誘導するための導水手段と、前記外プランターの貯水部内の水を排出するする排水口を有して該排水口から排出される水を下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部内に誘導する排水誘導路とを具備し、該排水誘導路の排水口が前記貯水部の底面部より上部に設けられて、該排水口から溢流する貯水部内の水が該排水誘導路の上流側から下流側へ誘導されるように構成され、該排水誘導路の下流側の端部は、該排水誘導路で誘導された水が下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部内に流入しうるような位置に設けられるように構成されていることを特徴とする壁面緑化ユニットを提供する。
【0010】
また本発明は、上記のような壁面緑化ユニットが上下複数段に配置され、上段側の壁面緑化ユニットの排水誘導路の下流側の端部は、該排水誘導路で誘導された水が下段側の壁面緑化用ユニットの外プランターの貯水部内に流入しうるような位置に設けられていることを特徴とする壁面緑化設備を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の壁面緑化ユニットは上述のような構成からなるため、かかる壁面緑化ユニットを上下複数段に配置し、最上段部の壁面緑化用ユニットの外プランターの貯水部内に水が供給されるように灌水すると、灌水された水はその外プランターの貯水部に貯留され、その貯水部から導水手段によって内プランターへ水が誘導されるとともに、前記外プランターの貯水部内の水位が、排水誘導路の排水口の位置の高さを超えたときに、該排水口から貯水部内の水が溢流して、排水誘導路の上流側から下流側へ誘導され、該排水誘導路の下流側の端部から下段側の壁面緑化用ユニットの外プランターの貯水部に流入することとなる。
【0012】
そして、下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部に流入した水は、該下段の外プランターの貯水部から導水手段によって内プランターへ誘導されるとともに、その外プランターの貯水部内の水位が排水誘導路の排水口の位置の高さを超えたときに、該排水口から貯水部内の水が溢流して排水誘導路の上流側から下流側へ誘導され、該排水誘導路の下流側の端部からさらに下段側の壁面緑化用ユニットの外プランターの貯水部に流入することとなる。
【0013】
このようにして、灌水される水は、その一定量が外プランターの貯水部に貯留され、排水誘導路を介して下段側の外プランターの貯水部へ誘導される一方で、その貯水部から導水手段を介して内プランター内に誘導されて該内プランター内に収容されている植栽基盤や植物に供給され、これを順次繰り返して、最下段の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部に誘導され、且つ該貯水部から内プランター内に誘導されることとなる。
【0014】
このように、本発明の壁面緑化ユニットにおいては、貯水部に貯留される水の水位が排水誘導路の排水口の高さを超えるまでは、壁面緑化ユニットに灌水される水の一定量が貯水部に貯留され、排水誘導路を介して確実に下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部内に順次誘導されるので、同様の構成の壁面緑化ユニットを上下複数段に配置することで、各段の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部には略同量の水が貯留されることとなり、従って、それぞれの段のユニットに貯留される水の量が不均一となるのが極力防止されることとなり、また上段と下段の壁面緑化ユニットで水分量が変化するのを極力防止することができ、下段側の壁面緑化ユニットが上段側の壁面緑化ユニットに比べて過湿の状態になるのを防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態の壁面緑化ユニットの外プランターの概略平面図。
【図2】同外プランターの概略側面図。
【図3】図1のA−A線断面図。
【図4】内プランターの概略平面図。
【図5】内プランターの概略側面図。
【図6】図4のB−B線断面図。
【図7】外プランターを取り付けるLアングルの正面図。
【図8】内プランター固定金具の斜視図。
【図9】供給管を外プランターの底部に取り付ける状態を示す要部拡大分解斜視図。
【図10】外プランター内に内プランターを収納した状態を示す概略平面図。
【図11】図10のC−C線断面図。
【図12】図10のD−D線断面図。
【図13】壁面緑化ユニットを上下複数段に配置した状態を示す概略正面図。
【図14】壁面緑化ユニットを上下複数段に配置した状態を示す概略側面断面図。
【図15】他実施形態の壁面緑化ユニットを上下複数段に配置した状態を示す概略側面断面図。
【図16】壁面緑化ユニットをフレームに取り付けた状態を示す概略正面図。
【図17】壁面緑化ユニットをフレームに取り付けた状態を示す概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
本発明の壁面緑化ユニットは、上述のように、植栽基盤と植物とが収容可能な内プランターと、該内プランターを収容可能で且つ灌水される水を貯留する貯水部を有する外プランターと、該外プランターの貯水部に貯留された水を内プランター内に誘導するための導水手段と、前記外プランターの貯水部内の水を排出する排水口を有して該排水口から排出される水を下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部内に誘導する排水誘導路とを具備し、該排水誘導路の排水口が前記貯水部の底面部より上部に設けられて、該排水口から溢流する貯水部内の水が該排水誘導路の上流側から下流側へ誘導されるように構成され、該排水誘導路の下流側の端部は、該排水誘導路で誘導された水が下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部内に流入しうるような位置に設けられるように構成されているものである。
【0018】
植栽基盤としては、主として土壌が用いられ、その土壌としては、天然土壌の他、人口土壌を用いることもできる。植栽する植物の種類は特に限定されるものではない。
【0019】
内プランターの形状は特に限定されるものではなく、要は、内プランターは土壌等の植栽基盤と植物とが収容可能な形状であればよい。一般には箱状の形態に形成される。また外プランターの形状も特に限定されるものではなく、要は、内プランターが収納可能で且つ水を貯留する貯水部を設けることができるような形状のものであればよい。外プランターも一般には箱状の形態に形成される。
【0020】
また、内プランターや外プランターの材質も特に限定されるものではなく、合成樹脂、不織布、その他、種々の素材のものを使用することができる。たとえば合成樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の汎用性の合成樹脂等を使用することができ、またこれら以外の合成樹脂を用いることも可能である。
【0021】
排水誘導路は、上述のように、外プランターの貯水部内の水を排出して下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部内に誘導するものである。
【0022】
該排水誘導路の排水口は、貯水部の底面部より上部に設けられる。排水口が外プランターの底面部より上部に設けられることで、その排水口の高さの位置まで水が貯留されることとなる。すなわち、貯水部の底面部からの排水口の高さが、貯水部に貯留される水の水位となる。
【0023】
そして、貯水部内の水の水位が排水誘導路の排水口の高さを超えたときに該排水口から貯水部内の水が溢流して、排水誘導路の上流側から下流側へ誘導されることとなる。このように貯水部内での貯留が許容される水の水位は、貯水部の底面部から排水誘導路の排水口までの高さによって決められるので、貯水部の容量等に応じてその底面部からの排水口の高さを所定の高さに設定することで、適切な一定量の水が貯水部内に貯留されることとなり、過湿になり易い過度の量の水が貯水部内に貯留されるのを防止することができるとともに、内プランター側へ供給されるのに必要な水が確保されることとなる。
【0024】
このように排水口から溢流する貯水部内の水は、排水誘導路の上流側から下流側を経て下段側の壁面緑化ユニットの外プランター内の貯水部内に誘導される必要があり、そのために該排水誘導路で誘導される水が、該排水誘導路の下流側の端部から下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部に流入するように構成される。
【0025】
貯水部は、主に外プランターの底部側に形成され、その貯水部の上部側に内プランターが設けられることとなる。このように貯水部が外プランターの底部側に形成される場合には、外プランターの底面部が貯水部の底面部となり、従って、外プランターの底面部からの排水誘導路の排水口までの高さが、貯水部に貯留される水の水位となる。
【0026】
排水誘導路は、たとえば貯水部内の水を排出する排水口を有する排水口形成部と、該排水口から排出される水を上流側から下流側へ誘導する誘導部とで構成される。このような排水口形成部と誘導部とで排水誘導路が構成される場合、排水口形成部の外周面にスリットを形成し、そのスリットを排水口とすることができる。
【0027】
誘導部は、たとえばパイプ状の誘導管で構成することができる。このような誘導管としては、主として円筒状のものが用いられるが、これに限らず、たとえば四角筒状や三角筒状のものを用いることも可能であり、その形状は問わない。また、誘導管の材質も問うものではないが、主としてポリ塩化ビニル等の合成樹脂製のものや金属製のものが用いられる。
【0028】
この誘導管は、たとえば貯水部の底面部に取り付けられる。具体的には、貯水部の底面部から上部に筒状体を突設して、その筒状体を排水口形成部とし、その排水口形成部と反対側、すなわち、貯水部の底面部から下部側に筒状の取付部を突設させ、その筒状の取付部に誘導管を連結することによって誘導管を貯水部の底面部に取り付けることができる。このように誘導管を貯水部の底面部に取り付けることによって、貯水部の底面部から上部に突設された排水口形成部の排水口と、誘導管の上部の開口部が連通する状態となる。
【0029】
さらに、誘導部を、上記のようなパイプ状の誘導管ではなく、鎖状の誘導鎖で構成することもできる。このような誘導鎖で誘導部を構成する場合、たとえば上記のような筒状の排水口形成部を貯水部の底面部から上部に突設させるとともに、貯水部の底面部から下部側に筒状の取付部を突設させ、その筒状の取付部に誘導鎖の上端部を取り付けることによって、誘導鎖を貯水部の底面部に取り付けることができる。
【0030】
さらに、導水手段としては、たとえば内プランターに貫通するように吸水性のシートのような導水部材を取り付けることにより、導水しうるように構成する手段を採用することができる。この場合、導水部材は、たとえば内プランター内に配置される内在部と、該内プランターの外側に延設された外在部とで構成されて、内プランター内に内在部が配置される一方で、その内プランターの底部を貫通して外在部が外側に突出するように、内プランターの底部に取り付けられる。このように導水部材が内プランターに貫通して取り付けられることによって、内プランターを外プランター内に収納したときに導水部材が外プランターの貯水部に貯留される水に浸漬し、導水部材に水が吸収されて、外プランターの貯水部に貯留される水が、導水部材による毛細管現象によって、該導水部材を介して内プランターに誘導されることとなるのである。この場合には、内プランターや、その底部を貫通する貫通孔、さらには内プランター内に配置される内在部は、貯水部内の水に浸漬することがなく、内プランターの外側に延設された外在部のみが貯水部内の水に浸漬した状態となる。その状態でも、外在部に浸透した水が該外在部から内在部側に誘導され、結果として、貫通孔を介して貯水部内の水が内プランター内に誘導されることとなるのである。
【0031】
また他の導水手段として、上記のような導水部材を用いずに、たとえば内プランターの底部に孔を穿設し、その孔を介して外プランターの貯水部から内プランター内に水が誘導されるように構成する手段を採用することもできる。このような導水部材を用いない場合には、内プランターの底部に穿設された孔の部分を、貯水部の水位より下側に位置させることで、該孔の部分から内プランター内に水が浸入して内プランター内に水が供給することとなる。
【0032】
さらに他の導水手段として、たとえばパイプ状の部材を外プランターの貯水部と内プランターに架設し、そのパイプ状の部材を介して外プランターの貯水部から内プランターに水が誘導されるように構成する手段を採用することもできる。さらに他の導水手段として、たとえば内プランターを不織布のような通水性の素材で構成し、その内プランター自体に上記導水部材のような水の吸収、毛細管現象等の機能を具備させるような手段を採用することもできる。
ただし、上記のように内プランターに貫通するように導水部材を取り付けて導水しうるように構成する手段を採用した場合には、内プランターや、その底部を貫通する貫通孔、さらには内プランター内に配置される内在部を貯水部内の水に浸漬させずに、内プランターの外側に延設された外在部のみを貯水部内の水に浸漬させることで、外在部に浸透した水が毛細管現象によって内在部側に誘導されるので、過剰の水が内プランター内に供給されるのが好適に防止されることとなり、その結果、内プランター内の植栽基盤や植物が過湿の状態になるのを好適に防止することができるという効果がある。
【0033】
さらに、本発明の壁面緑化設備は、上記のような壁面緑化ユニットが上下複数段に配置され、上段側の壁面緑化ユニットの排水誘導路の下流側の端部は、該排水誘導路で誘導された水が、下段側の壁面緑化用ユニットの外プランターの貯水部内に流入しうるような位置に設けられているものである。
【0034】
このように壁面緑化用ユニットを上下複数段に配置する場合、たとえばLアングルのような取付具を外プランターの背面側に設け、同様の取付具を壁面に取り付け、両取付具を相互に取り付けることにより外プランターを壁面に取り付けて壁面緑化用ユニットを上下複数段に配置することができる。また、この壁面緑化用ユニットは、上下多段のみならず、左右にも配置することができ、その場合には上下左右に複数段の壁面緑化用ユニットが配置されることになる。
【0035】
さらに、格子状のフレームを壁面に取り付け、その格子状のフレームに外プランターを取り付けることも可能である。この場合には、外プランターと壁面間に格子状のフレームが介在した状態となり、壁面緑化用ユニットの内プランター内の植物がたとえば蔓性植物である場合に、その蔓性植物を格子状のフレームに登攀させることができる。
【0036】
(実施形態1)
以下、本発明の壁面緑化ユニットのより具体的な実施形態について、図面に従って説明する。本実施形態の壁面緑化ユニット1は、外プランター2と、内プランター3と、排水誘導路と、導水部材5を具備して構成されている。
【0037】
内プランター3は、土壌18等の植栽基盤と植物19とを収容するためのもので、図4乃至図6に示すように、上面に開口部4を有し、四方の側面部3a、3b、3c、3dと、底面部3eとで構成されて、全体が箱形に形成されている。また導水部材5は、図5及び図6に示すように、内プランター3の底部に取り付けられている。この導水部材5は、図5及び図6に示すように、内プランター3内に配置される内在部5aと、該内プランター3の外側に延設された外在部5bとで構成されており、全体が断面略T字状に形成されている。そして、内プランター3の底部に内在部5aが載置され、該内プランター3の底部を貫通して外在部5bが内プランターの裏面側(下面側)に突出するように、導水部材5が内プランターの底部に取り付けられている。
【0038】
外プランター2は、水の貯留と誘導を行うためのもので、図1乃至図3に示すように、上面に開口部6を有し、四方の側面部2a、2b、2c、2dと、底面部2eとで構成されて、全体が箱形に形成されている。外プランター2の材質は特に限定されるものではないが、金属製のものを好適に使用することができる。
【0039】
外プランター2の下部側には、貯水部8が形成される。この貯水部8は、後述のように、外プランター2の底面部2eから排水口の位置までの部分に形成されるものである。本実施形態では、上述のように導水部材5が内プランター3に貫通するように設けられ、その導水部材5によって貯水部8の水が内プランター3に誘導されるので、内プランター3自体は貯水部8の水に浸漬されない。一例として、貯水部8の幅が内プランター3の幅より狭くなるように設定することで、貯水部8の水に浸漬されないように内プランター3を外プランター2内に収容することができる。
貯水部8の幅が内プランター3の幅より狭くなるように設定するために、本実施形態では、外プランター2の一側面部側(図2の例では前方の側面部2a側)にテーパ部2fが形成されている。すなわち、このようなテーパ部2fを形成するとともに、内プランター3を外プランター2の内面側と略同幅(若しくは後述のように外プランター2の内面側より狭く且つ外プランター2の底面部2eの幅より広い幅)に形成することで、内プランター3の底部の角部が外プランター2のテーパ部2fと側面部2aとの交差部分である角部2g(若しくはテーパ部2f)に接触して内プランター3が下側に落下するのが阻止され、さらにその内プランター3の底部の下側に排水口が位置するように設定することで、内プランター3が貯水部8の水に浸漬するのが阻止されることとなる。図2の例では、内プランター3が外プランター2の内面側と略同幅である場合を想定し、上記角部2gを起点として水平に形成される仮想直線7の位置に内プランター3の底部が位置する場合を想定している。従って、その仮想直線7より下側に、貯水部8が形成されることとなり、排水口は、上記仮想直線7より下側の部分に位置することとなる。
【0040】
排水誘導路は、上述のように、外プランター2の貯水部8内の水を排水口から排出して下段側の壁面緑化ユニットの外プランター2の貯水部8内に誘導するもので、本実施形態では、排水口を有する排水口形成部としての排水口形成体12と、排水口から排出される水を上流側から下流側へ誘導する誘導部としての誘導管9とで排水誘導路が構成されている。
【0041】
排水口形成体12は、筒状に形成されたものであり、図1及び図3に示すように、外プランター2の側面部2dに近い底面部2eの部分に上向きに突設されている。この排水口形成体12の下部には図9に示すように開口部13が形成されているが、上端部には開口部は形成されていない。そして、該排水口形成体12の上端部の下側に、複数のスリット14が形成されている。この排水口形成体12に形成されたスリット14が、上記排水誘導路の排水口に相当するものである。このスリット14は、前記外プランター2の貯水部の底面部2eから所定の高さとなる位置に設定されている(本実施形態では水位が3cmとなるように設定されている)。
【0042】
そして、水15の上面の高さ(水位)がスリット14の位置よりも高くなったとき、貯水部8内に貯留される水15が溢流してスリット14から筒状の排水口形成体12内に流入し、排水口形成体12の下部の開口部13から後述する誘導管9を介して下段側の屋上緑化ユニット1の外プランター2の貯水部8へ誘導されることとなるのである。
【0043】
排水口形成体12の下部には、後述する誘導管9を取り付けるための筒状の取付部12aが形成されている。この取付部12aは、外プランター2の底面部2eの裏面側に突設され、該取付部12aの外周面に螺子16が形成されている。
【0044】
誘導管9は、図11に示すように、上部及び下部にそれぞれ開口部10、11を有して全体が細い円筒状に形成されている。また誘導管の上部の開口部10の直下の内周面には、前記取付部12aの外周面に形成された螺子16に螺合可能な螺子17が形成されている。
【0045】
さらに、外プランター2の後側の側面部2bの両側には、図1及び図2に示すように、Lアングル27が取り付けられている。このLアングル27は、外プランター2の側面部2bに取り付けられる外プランター用取付部27aと、後述する別のLアングル29に取り付けられるLアングル用取付部27bとで構成されている。さらに、外プランター2の前側及び後側の側面部2a、2bには、後述する内プランター固定金具31を挿入するための挿入孔34が穿設されている。
【0046】
図8において、31は、外プランター2内に収納された状態の内プランター3を固定するための内プランター固定金具31を示す。この内プランター固定金具31は、長辺部31a及び短辺部31bを有する側面略L字状に形成されている。長辺部31aは、上記外プランター2の挿入孔34に挿入可能に形成され、短辺部31bは、該挿入孔34の周辺部に係止可能に形成されている。また長辺部31aには、抜け止めビス33を挿入して固定するための孔32が穿設されている。図10において、39は、外プランター2内に収納される2個の内プランター3、3間に介装される仕切板を示す。
【0047】
そして、上記のような構成からなる壁面緑化ユニット1を、図13及び図14に示すように、上下複数段に配置することによって、壁面緑化設備が構成されることとなる。すなわち、本実施形態の壁面緑化設備においては、上記壁面緑化ユニット1が上下複数段(図13においては4段)に配置され、それぞれの壁面緑化ユニット1の外プランター2の裏面側に突設された取付部12aに誘導管9が取り付けられている。
【0048】
誘導管9の取り付けは、上記のように、外プランター2の取付部12aの外周面に形成された螺子16に、誘導管9の上部の開口部10の直下の内周面に形成された螺子17を螺合させることによって行う。このように両螺子16、17を螺合させることによって、誘導管9が取付部12aを介して外プランター2の底面部2eの裏面側に突出するように取り付けられることとなる。このように外プランター2の取付部12aに誘導管9が取り付けられた状態において、排水口形成体12のスリット14の下方に誘導管9の上部の開口部10が位置することとなる。また、誘導管9の下部の開口部11は、下段側の壁面緑化ユニットの外プランター2内に位置するとともに、該外プランター2の貯水部8に向けて開放するように誘導管9が外プランター2に取り付けられる。このように誘導管9が外プランター2に取り付けられることで、排水口形成体12のスリット14と誘導管9の上部の開口部10が連通状態となり、スリット14から溢流する貯水部8内の水が、上部の開口部10から誘導管9に流入し、該誘導管9の下部の開口部11から、下段側の壁面緑化ユニットの外プランター2の貯水部8内に誘導されることとなるのである。
【0049】
また、この場合、図13に示すように、上下段に隣接する外プランター2に取り付けられた誘導管9が、正面視において相互に逆向きとなるように、誘導管9を取り付けた外プランター2が配置される。図13においては、最上段の外プランター2の誘導管9は、正面視において右側に位置するように配置され、上から2段目の外プランター2の誘導管9は、正面視において左側に位置するように配置され、順次、誘導管9の位置が正面視において交互に右側、左側となるように外プランター2が配置されている。
【0050】
さらに、上記のように外プランター2を上下複数段に設置するに際しては、図7に示すようなLアングル29が予め壁面35に取り付けられ、そのLアングル29に、外プランター2の背面側のLアングルが取り付けられ、それによって外プランター2が壁面35に取り付けられる。より具体的には、両Lアングル27、29の孔28、30を相互に合致させた状態でボルト36が挿入され、さらに別のボルト37によってLアングル29が壁面に固定されている。
【0051】
最上段の外プランター2においては、上記のような誘導管9が取り付けられている他、その誘導管9が取り付けられた外プランター2の端部と反対側の端部(図13では正面視左側)には、水道管等の水の供給源となる部分に接続された給水管20が、前記外プランター2内に挿入されるようにして設けられている。また給水管20には、図11に示すように、電磁弁21が取り付けられている。
【0052】
さらに、最下段の外プランター2の貯水部8の部分においては、誘導管9が挿入された外プランター2の端部と反対側の端部(図13では正面視左側)に、水位センサー22が取り付けられている。そして、この水位センサー22と前記電磁弁21とにコード23が接続されている。本実施形態では、最下段の外プランター2の貯水部8の水位が1cm以下になった状態が水位センサー22に検知され、電磁弁21が開いて給水管20からの給水が開始され、最下段の外プランター2の貯水部8の水位が3cmを超えた状態が水位センサー22に検知され、電磁弁21が閉じられて給水管20からの給水が停止されるように設定されている。尚、水位センサー22の作動を所定時間に設定するタイマー(図示せず)等を設けることも可能である。
【0053】
また、最下段の外プランター2のさらに下側には樋25が設けられ、該樋25に、前記最下段の外プランター2から水が排出されるように構成されている。より具体的には、最下段の外プランター2の、前記水位センサー22が取り付けられた部分のわずか側方に、短い排水管26が取り付けられており、該排水管26を介して最下段の外プランター2から樋25に水が排出されるように構成されている。
【0054】
そして、上記のように構成された壁面緑化設備で灌水を行う場合について説明する 。
【0055】
先ず、灌水を行うに先立って、内プランター3の上面の開口部4から、内プランター3内に植栽基盤としての土壌18を収容する。この土壌18としては、天然土壌及び人工土壌のいずれを用いることも可能である。また、生育させる植物19も内プランター3内に収容する。本実施形態では、低木の植物19が土壌18に植設されている。
【0056】
次に、図10乃至図12に示すように、土壌18及び植物19が収納された内プランター3を、外プランター2内に収納する。本実施形態では、2個の内プランター3、3が外プランター2内に収納される。この場合、内プランター3、3は、貯水部8の上部に位置するように収納される。また、2個の内プランター3、3間には、仕切板39が介装される。内プランター3、3を外プランター2内に収納した状態で、図8に示すような内プランター固定金具31で内プランター3を固定する。より具体的には、内プランター固定金具31の長辺部31aを外プランター2の挿入孔34に挿入し、該内プランター固定金具31の短辺部31bを前記挿入孔34の周辺部に係止させた後、該内プランター固定金具31の長辺部31aの孔32に抜け止めビス33を挿入して固定する。
【0057】
このような内プランター固定金具31によって、外プランター2からの内プランター3の抜け出しが禁止されることとなる。また外プランター2の一側面部側には上述のように、テーパ部2fが形成されており、図2及び図12の例では内プランター3が外プランター2の内面側と略同幅に形成されているので、内プランター3の底部の角部がテーパ部2fと側面部2aとの交差部分である角部2gに接触し、内プランター3が下側に落下して貯水部8の水に浸漬するのが阻止されることとなる。この場合は内プランター3が上記仮想直線7の位置で保持され、仮想直線7より下側に移動しない。一方、排水口は、仮想直線7より下側の部分に位置し、従って、貯水部8は仮想直線7より下側に形成されることとなるので、内プランター3は貯水部8の水に浸漬することがない。
【0058】
尚、図2及び図12の例では、内プランター3が外プランター2の内面側と略同幅に形成されている場合について説明しているが、内プランター3の幅を外プランター2の内面側の幅より狭く、且つ外プランター2の底面部2eの幅より広く形成することもできる。外プランター2の内面側の幅より狭くても、内プランター3の幅を外プランター2の底面部2eの幅より広く形成することで、内プランター3の底部の角部がテーパ部2fに接触し、内プランター3が下側に落下して貯水部8の水に浸漬するのが阻止されることとなる。この場合にも、排水口の位置が内プランター3の底部よりも下側となるように設定することで、内プランター3の底部より下側に貯水部8が形成されることとなり、内プランター3が貯水部8の水に浸漬されるのが阻止されることとなる。
いずれにしても、上記のようなテーパ部2fが外プランター2に形成されていることで、内プランター3の底部の角部が外プランター2のテーパ部2f若しくは角部2gに接触するように内プランター3の幅を設定し、且つ内プランター3の底部より下側に位置するように排水口の位置を設定することで、貯水部8の幅は内プランター3の幅よりも狭くなり、内プランター3が貯水部8の水に浸漬しないように内プランター3を外プランター2内に収容することができるのである。
また、上記のようにテーパ部2fを外プランター2に形成することに代えて、たとえば外プランター2の内周面に段差部を形成し、その段差部に内プランター3の底部の角部を係止させることも可能である。この場合には、その段差部の位置より下側に排水口を形成することで、該段差部に係止される内プランター3の底部より下側に貯水部8が形成されることとなる。
【0059】
上記のようにして外プランター2を上下複数段に設置した状態で、電磁弁21を作動させて開き、給水管20から最上段の外プランター2内に水を供給する。
【0060】
給水管20からの給水が開始されると、最上段の外プランター2の貯水部8内に水が貯留され、貯留された水は導水部材5に吸収され、該導水部材5を介して内プランター3の底部から該内プランター3内に浸入する。より詳しくは、貯水部8内の水に浸漬している導水部材5の外在部5bに水が浸透し、浸透した水は毛細管現象によって上記外在部5bから導水部材5の内在部5a側に移動し、それによって内プランター3内に浸入することとなるのである。すなわち、内プランター3の内部側には内在部5aが配置され、その内プランター3の底部を貫通して外在部5bが内プランター3の裏面側に突出するように、導水部材5が内プランター3の底部に取り付けられているので、貯水部8内の水は、導水部材5を介して内プランター3内に好適に誘導されることとなるのである。これによって、プランター3内の土壌18や植物19に必要な水が供給されることとなる。
【0061】
一方、外プランター2内に供給された水は、図13の矢印イ方向に水が流れ、貯水部8の高さが所定の水位(本実施形態では3cm以上)になったときに、排水口形成体12のスリット14から該排水口形成体12内に水が流入し、誘導管9を介して2段目の外プランター2の貯水部8内に誘導される。2段目の外プランター2内に誘導された水は、該2段目の外プランター2の貯水部8内に貯留されることとなる。
【0062】
図13においては図示していないが、2段目の外プランター2内においても内プランター3が収納されており、従って、貯水部8内の水は、導水部材5に浸透し、浸透した水は毛細管現象によって内プランター3に貫通して設けられた導水部材5を介して2段目の内プランター3内に浸入し、その結果、内プランター3内の土壌18や植物19に水が供給されることとなる。
【0063】
最上段の外プランター2から誘導管9を介して2段目の外プランター2内に誘導された水は図13の矢印ロ方向に流れ、所定の水位(本実施形態では3cm以上)になったときに、排水口形成体12のスリット14から該排水口形成体12内に水が流入し、誘導管9を介して2段目の外プランター2の貯水部8内に水が誘導され、該2段目の外プランター2に取り付けられた誘導管9を介して3段目の外プランター2の貯水部8内に誘導されることとなる。
【0064】
3段目の外プランター2においても、同様に導水部材5を介しての内プランター3内への水の浸入、及び該内プランター3内の土壌18や植物19への水の供給がなされ、また水は図13の矢印ハ方向に流れ、所定の水位(本実施形態では3cm以上)になったときに、排水口形成体12のスリット14から該排水口形成体12内に水が流入し、3段目の外プランター2に取り付けられた誘導管9を介して最下段の外プランター2内に供給されることとなる。
【0065】
最下段の外プランター2内に供給された水は、同様に貯水部8で貯留されるのであるが、該最下段の外プランター2には誘導管9は取り付けられておらず、従って最下段の外プランター2内の水は、排水管26から樋25に供給されて排出されることとなる。
【0066】
このように、各段の誘導管9を介しての下段側の外プランター2の貯水部8への水の誘導と貯水部8での所定量の水の貯留、及び導水部材5を介しての内プランター3内への水の誘導を繰り返すことによって、最下段の外プランター2内における貯水部8内の水の水位が3cm以上となったとき、水位センサー22が作動し、電磁弁21が閉の状態となり、給水管20から最上段の外プランター2への水の供給が停止されることとなり、それによって各段の外プランター2への水の誘導も停止されることとなる。このように最下段の屋上緑化ユニット1の外プランター2の貯水部8内の水位が、それより上段側の屋上緑化ユニット1の外プランター2の貯水部8内の水位とほぼ同じになったとき、上下複数段の各屋上緑化ユニット1において均一な灌水がなされたことになる。
【0067】
以上のように、本実施形態においては、屋上緑化ユニット1の外プランター2に水を貯留する貯水部8が設けられているとともに、該貯水部8に貯留された水を下段の屋上緑化ユニット1の外プランター2側へ誘導するための誘導管9が該外プランター2に取り付けられるため、水源となる水供給手段は、最上段の壁面緑化ユニットの部分のみに設けられていればよく、それより下段の壁面緑化ユニットにおいては、水源となる水供給手段を設けなくても、外プランターの貯水部及び誘導管を介して順次下段側の壁面緑化ユニットへ自動的に誘導されることとなる。
【0068】
また、外プランター2の貯水部8の水位が、スリット14の高さを超えたときに該スリット14から貯水部8内の水が溢流し、スリット14と連通する誘導管9の上部の開口部10から該誘導管9内に水が流入し、誘導管9内を水が誘導されつつ、該誘導管9の下部の開口部11を介して該下段側の壁面緑化ユニットの外プランター2の貯水部8へ誘導されるので、外プランター2の貯水部8及び誘導管9を介して上段側の壁面緑化ユニットから下段側の壁面緑化ユニットへ確実に水が誘導されることとなり、各段の壁面緑化ユニットの外プランター2の貯水部8に誘導された水が、導水部材5を介してそれぞれの段の壁面緑化ユニットの内プランター3に誘導されることとなる。
【0069】
従って、上記のような構成の壁面緑化用ユニットが上下複数段に設けられることで、各段の壁面緑化ユニットの外プランター2の貯水部8には略同量の水が貯留されることとなり、それぞれの段のユニットの外プランター2の貯水部8から内プランター3に導水部材5を介して略均一に水が誘導されることとなり、また上段と下段の壁面緑化ユニットで水分量が変化するのを極力防止することができ、下段側が過湿の状態になるのを防止できるという効果がある。
【0070】
さらに、誘導管9の下部の開口部11が下段側の壁面緑化用ユニットの外プランター2内に位置するとともに、該外プランター2の貯水部8に向かって開放し、内プランター3が外プランター2内の貯水部8の上部に位置するように収納されており、上段側のユニットから下段側のユニットへ誘導される水は、外プランター2の外側には排出されずに排水誘導路(排水口形成体12と誘導管9)を介して誘導され、内プランター3へは導水部材5を介して貯水部8内の水が誘導されるので、水が外プランター2の外側に飛散して下に落下するようなことも防止できるという効果がある。
【0071】
さらに、上記のように、水源となる水供給手段は最上段の壁面緑化ユニットの部分のみに設けられていれば、それより下段側の壁面緑化ユニットには、外プランター2の貯水部8及び誘導管9を介して順次水が誘導されるので、上記のように最下段の外プランター2に水位センサー22を設置し、該最下段の外プランター2の貯水部8の水位が1cm以下になったときに電磁弁21が開いて給水管20からの給水が開始され、最下段の外プランター2の貯水部8の水位が3cmに達したときに電磁弁21が閉じられて給水管20からの給水が停止されるように設定することで、水を必要以上に多量に使用することがなく、水の無駄な使用を極力防止することができるという効果がある。
【0072】
(実施形態2)
本実施形態では、排水誘導路を構成する誘導部が、上記実施形態1のような誘導管9ではなく、図15に示すような誘導鎖9aによって構成されている。すなわち、誘導鎖9aの上端部が、図15に示すように筒状の取付部12a(取付部12aの内面側)に取り付けられ、該筒状の取付部12aから誘導鎖9aから垂下するように設けられている。そして、誘導鎖9aの下端部は、下段側の外プランター2内に位置し、該誘導鎖9aを伝って誘導される水が下段側の外プランター2の貯水部8内に流入しうるように、該下段側の外プランター2の貯水部8の上部に位置している。
【0073】
図示はしていないが、本実施形態においても、実施形態1と同様に、筒状の取付部12aの上部に、排水誘導路の排水口に相当する複数のスリット14が形成された筒状の排水口形成体12が設けられている。
【0074】
本実施形態においても、上記実施形態1と同様に、灌水された水は外プランター2の貯水部8内に貯留され、所定の水位になったときに、排水口形成体12のスリット14から該排水口形成体12内に水が流入する。そして、筒状の排水口形成体12から筒状の取付部12a内に水が流入するが、本実施形態においては排水誘導路を構成する誘導体として、上記実施形態1の誘導管9のようなものではなく、誘導鎖9aが設けられているので、排水口形成体12から取付部12a内に流入した水は、誘導鎖9aを伝って下段側の外プランター2に誘導され、該下段側の外プランター2の貯水部8内に流入することとなる。
【0075】
このように、本実施形態では誘導鎖9aを伝って水が誘導される点で、誘導管9内を流入して水が誘導される上記実施形態1の場合と相違するが、下段側の外プランター2の貯水部8内に水が好適に誘導される点では共通している。他の構成は、上記実施形態1と共通するため、その詳細な説明は省略する。
【0076】
(実施形態3)
本実施形態では、図16及び図17に示すように、格子状のフレーム38が、外プランター2の背面側に位置するように壁面35に取り付けられている。この格子状のフレーム38は、同図に示すように、その上端部が図7に示すようなLアングル29に取り付けられ、下端部が、外プランター2の背面側に取り付けられたLアングル29に取り付けられている。この格子状のフレーム38は、上下に隣接する外プランター2に跨がるように取り付けられている。
【0077】
このような格子状のフレーム38を外プランター2の背面側に位置するように壁面35に取り付けることによって、図17に示すように、蔓性植物のような登攀性の植物19を、壁面35に沿って好適に登攀させることができる。
【0078】
さらに、本実施形態においても、上記実施形態2と同様に、排水誘導路を構成する誘導体として、誘導鎖9aが用いられている。その他の構成は実施形態1と共通するため、その詳細な説明は省略する。
【0079】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、外プランター2が、上面に開口部6を有し、四方の側面部2a、2b、2c、2dと、底面部2eとで構成されて、全体が箱形に形成されていたが、プランター2の形状は該実施形態に限定されるものではなく、たとえば有底円筒状に形成されたようなものであってもよく、また、他の形態のものであってもよい。
【0080】
さらに、この内プランター3の材質も上記実施形態のポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレン等の汎用性の合成樹脂に限らず、また合成樹脂以外の素材のものを用いることも可能である。また、外プランター2の材質も上記実施形態の金属に限定されるものではない。
【0081】
さらに、外プランター2の底面部2eから排水口14の位置までの高さによって設定される貯水部8の水位も特に限定されるものではないが、壁面緑化ユニット1での過湿の状態を防止する観点からは、3〜4cm程度に設定されることが望ましい。
【0082】
さらに、上記実施形態では、Lアングル27、29等を用いて外プランター2を壁面35に取り付けることとしたが、外プランター2を取り付ける手段は該実施形態に限定されるものではなく、他の手段を用いて取り付けることも可能である。
【0083】
さらに、図13乃至図17では、複数段の壁面緑化ユニット1が上下1列に設置されている場合を示しているが、複数列に複数段の壁面緑化ユニット1を設置することも可能である。実際に壁面緑化を行う場合、複数列に複数段の壁面緑化ユニットを設置する場合が多い。このように、複数列に複数段の壁面緑化ユニットを設置することで、上下左右に多数の壁面緑化ユニットが配置されることとなる。
【0084】
その他、本発明の意図する範囲内において設計変更自在である。
【符号の説明】
【0085】
1 壁面緑化ユニット
2 外プランター
3 内プランター
5 導水部材
8 貯水部
9 誘導管
9a 誘導鎖
10 上部の開口部
11 下部の開口部
14 スリット
18 土壌
19 植物
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築、構築物の壁面に沿って設置することによって、その壁面を緑化する壁面緑化ユニットと、そのような壁面緑化ユニットを用いて壁面の緑化を行う壁面緑化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて都市部における種々の場所、たとえば、公園、歩道等の場所で人為的に樹木を植設する等によって緑化が行われている。特に建築物、構築物等が立ち並ぶような場所では、自然木等が少ないので、そのような建築物、構築物等の壁面の緑化を行うことが盛んに試みられている。このような建築物、構築物等の壁面の緑化は、都市部における景観の改善を図るだけでなく、いわゆるヒートアイランド現象を緩和する点でも好ましいものであり、今後、益々普及が望まれるものである。
【0003】
このような壁面緑化の技術として、土壌等の植栽基盤と植物とが収容可能なユニットを壁面の上下に複数段設置し、灌水パイプ等を配置してユニットに収容された植物や植栽基盤に灌水する技術があり、たとえば特許文献1や特許文献2のような特許出願がなされている。
【0004】
特許文献1は立体プランターに関するものであり、特許文献2は壁面緑化構造及び壁面緑化工法に関するものであるが、これら特許文献1及び2では、いずれも多数の小孔が穿設された灌水管が、植栽基盤と植物とを収容するユニットに対して水平に配置され、その灌水管の小孔から植栽基盤や植物に水が直接散布されるように構成されている。また、植栽基盤と植物とを収容するユニットは、特許文献1では格子状に区画されて構成され、その区画されたユニット内に植栽基盤や植物が収納され、また特許文献2ではメッシュシートで構成されたユニット内に植栽基盤が収納されている。
【0005】
しかし、このような特許文献1や特許文献2に記載された立体プランターや壁面緑化構造では、植栽基盤や植物は、上記のような格子やメッシュシートで区画されたユニット部分に収容されているにすぎず、そのユニットに収容された植栽基盤と植物に対して灌水管の小孔から水が直接散布されるだけであるので、灌水される水は、そのまま上段側のユニットから下段側のユニットに流れ、一定量の水が各ユニットの部分で保持されるようなこともない。
【0006】
従って、各段のユニットへの水の供給が不均一となり易く、また下段側のユニットでは、上段側のユニットに比べて、過湿の状態になり易いという問題も生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−330631号公報
【特許文献2】特開2004−324160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、上記従来の壁面緑化の技術のように、各段のユニットにおいて灌水される水が不均一となるのを極力防止することができるとともに、上段側のユニットよりも下段側のユニットが過湿の状態になるのを極力防止することができる、壁面緑化ユニット及び壁面緑化設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような課題を解決するために、壁面に沿って上下複数段に配置して壁面緑化を行うための壁面緑化ユニットにおいて、植栽基盤と植物とが収容可能な内プランターと、該内プランターを収容可能で且つ灌水される水を貯留する貯水部を有する外プランターと、該外プランターの貯水部に貯留された水を内プランター内に誘導するための導水手段と、前記外プランターの貯水部内の水を排出するする排水口を有して該排水口から排出される水を下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部内に誘導する排水誘導路とを具備し、該排水誘導路の排水口が前記貯水部の底面部より上部に設けられて、該排水口から溢流する貯水部内の水が該排水誘導路の上流側から下流側へ誘導されるように構成され、該排水誘導路の下流側の端部は、該排水誘導路で誘導された水が下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部内に流入しうるような位置に設けられるように構成されていることを特徴とする壁面緑化ユニットを提供する。
【0010】
また本発明は、上記のような壁面緑化ユニットが上下複数段に配置され、上段側の壁面緑化ユニットの排水誘導路の下流側の端部は、該排水誘導路で誘導された水が下段側の壁面緑化用ユニットの外プランターの貯水部内に流入しうるような位置に設けられていることを特徴とする壁面緑化設備を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の壁面緑化ユニットは上述のような構成からなるため、かかる壁面緑化ユニットを上下複数段に配置し、最上段部の壁面緑化用ユニットの外プランターの貯水部内に水が供給されるように灌水すると、灌水された水はその外プランターの貯水部に貯留され、その貯水部から導水手段によって内プランターへ水が誘導されるとともに、前記外プランターの貯水部内の水位が、排水誘導路の排水口の位置の高さを超えたときに、該排水口から貯水部内の水が溢流して、排水誘導路の上流側から下流側へ誘導され、該排水誘導路の下流側の端部から下段側の壁面緑化用ユニットの外プランターの貯水部に流入することとなる。
【0012】
そして、下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部に流入した水は、該下段の外プランターの貯水部から導水手段によって内プランターへ誘導されるとともに、その外プランターの貯水部内の水位が排水誘導路の排水口の位置の高さを超えたときに、該排水口から貯水部内の水が溢流して排水誘導路の上流側から下流側へ誘導され、該排水誘導路の下流側の端部からさらに下段側の壁面緑化用ユニットの外プランターの貯水部に流入することとなる。
【0013】
このようにして、灌水される水は、その一定量が外プランターの貯水部に貯留され、排水誘導路を介して下段側の外プランターの貯水部へ誘導される一方で、その貯水部から導水手段を介して内プランター内に誘導されて該内プランター内に収容されている植栽基盤や植物に供給され、これを順次繰り返して、最下段の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部に誘導され、且つ該貯水部から内プランター内に誘導されることとなる。
【0014】
このように、本発明の壁面緑化ユニットにおいては、貯水部に貯留される水の水位が排水誘導路の排水口の高さを超えるまでは、壁面緑化ユニットに灌水される水の一定量が貯水部に貯留され、排水誘導路を介して確実に下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部内に順次誘導されるので、同様の構成の壁面緑化ユニットを上下複数段に配置することで、各段の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部には略同量の水が貯留されることとなり、従って、それぞれの段のユニットに貯留される水の量が不均一となるのが極力防止されることとなり、また上段と下段の壁面緑化ユニットで水分量が変化するのを極力防止することができ、下段側の壁面緑化ユニットが上段側の壁面緑化ユニットに比べて過湿の状態になるのを防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態の壁面緑化ユニットの外プランターの概略平面図。
【図2】同外プランターの概略側面図。
【図3】図1のA−A線断面図。
【図4】内プランターの概略平面図。
【図5】内プランターの概略側面図。
【図6】図4のB−B線断面図。
【図7】外プランターを取り付けるLアングルの正面図。
【図8】内プランター固定金具の斜視図。
【図9】供給管を外プランターの底部に取り付ける状態を示す要部拡大分解斜視図。
【図10】外プランター内に内プランターを収納した状態を示す概略平面図。
【図11】図10のC−C線断面図。
【図12】図10のD−D線断面図。
【図13】壁面緑化ユニットを上下複数段に配置した状態を示す概略正面図。
【図14】壁面緑化ユニットを上下複数段に配置した状態を示す概略側面断面図。
【図15】他実施形態の壁面緑化ユニットを上下複数段に配置した状態を示す概略側面断面図。
【図16】壁面緑化ユニットをフレームに取り付けた状態を示す概略正面図。
【図17】壁面緑化ユニットをフレームに取り付けた状態を示す概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
本発明の壁面緑化ユニットは、上述のように、植栽基盤と植物とが収容可能な内プランターと、該内プランターを収容可能で且つ灌水される水を貯留する貯水部を有する外プランターと、該外プランターの貯水部に貯留された水を内プランター内に誘導するための導水手段と、前記外プランターの貯水部内の水を排出する排水口を有して該排水口から排出される水を下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部内に誘導する排水誘導路とを具備し、該排水誘導路の排水口が前記貯水部の底面部より上部に設けられて、該排水口から溢流する貯水部内の水が該排水誘導路の上流側から下流側へ誘導されるように構成され、該排水誘導路の下流側の端部は、該排水誘導路で誘導された水が下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部内に流入しうるような位置に設けられるように構成されているものである。
【0018】
植栽基盤としては、主として土壌が用いられ、その土壌としては、天然土壌の他、人口土壌を用いることもできる。植栽する植物の種類は特に限定されるものではない。
【0019】
内プランターの形状は特に限定されるものではなく、要は、内プランターは土壌等の植栽基盤と植物とが収容可能な形状であればよい。一般には箱状の形態に形成される。また外プランターの形状も特に限定されるものではなく、要は、内プランターが収納可能で且つ水を貯留する貯水部を設けることができるような形状のものであればよい。外プランターも一般には箱状の形態に形成される。
【0020】
また、内プランターや外プランターの材質も特に限定されるものではなく、合成樹脂、不織布、その他、種々の素材のものを使用することができる。たとえば合成樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の汎用性の合成樹脂等を使用することができ、またこれら以外の合成樹脂を用いることも可能である。
【0021】
排水誘導路は、上述のように、外プランターの貯水部内の水を排出して下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部内に誘導するものである。
【0022】
該排水誘導路の排水口は、貯水部の底面部より上部に設けられる。排水口が外プランターの底面部より上部に設けられることで、その排水口の高さの位置まで水が貯留されることとなる。すなわち、貯水部の底面部からの排水口の高さが、貯水部に貯留される水の水位となる。
【0023】
そして、貯水部内の水の水位が排水誘導路の排水口の高さを超えたときに該排水口から貯水部内の水が溢流して、排水誘導路の上流側から下流側へ誘導されることとなる。このように貯水部内での貯留が許容される水の水位は、貯水部の底面部から排水誘導路の排水口までの高さによって決められるので、貯水部の容量等に応じてその底面部からの排水口の高さを所定の高さに設定することで、適切な一定量の水が貯水部内に貯留されることとなり、過湿になり易い過度の量の水が貯水部内に貯留されるのを防止することができるとともに、内プランター側へ供給されるのに必要な水が確保されることとなる。
【0024】
このように排水口から溢流する貯水部内の水は、排水誘導路の上流側から下流側を経て下段側の壁面緑化ユニットの外プランター内の貯水部内に誘導される必要があり、そのために該排水誘導路で誘導される水が、該排水誘導路の下流側の端部から下段側の壁面緑化ユニットの外プランターの貯水部に流入するように構成される。
【0025】
貯水部は、主に外プランターの底部側に形成され、その貯水部の上部側に内プランターが設けられることとなる。このように貯水部が外プランターの底部側に形成される場合には、外プランターの底面部が貯水部の底面部となり、従って、外プランターの底面部からの排水誘導路の排水口までの高さが、貯水部に貯留される水の水位となる。
【0026】
排水誘導路は、たとえば貯水部内の水を排出する排水口を有する排水口形成部と、該排水口から排出される水を上流側から下流側へ誘導する誘導部とで構成される。このような排水口形成部と誘導部とで排水誘導路が構成される場合、排水口形成部の外周面にスリットを形成し、そのスリットを排水口とすることができる。
【0027】
誘導部は、たとえばパイプ状の誘導管で構成することができる。このような誘導管としては、主として円筒状のものが用いられるが、これに限らず、たとえば四角筒状や三角筒状のものを用いることも可能であり、その形状は問わない。また、誘導管の材質も問うものではないが、主としてポリ塩化ビニル等の合成樹脂製のものや金属製のものが用いられる。
【0028】
この誘導管は、たとえば貯水部の底面部に取り付けられる。具体的には、貯水部の底面部から上部に筒状体を突設して、その筒状体を排水口形成部とし、その排水口形成部と反対側、すなわち、貯水部の底面部から下部側に筒状の取付部を突設させ、その筒状の取付部に誘導管を連結することによって誘導管を貯水部の底面部に取り付けることができる。このように誘導管を貯水部の底面部に取り付けることによって、貯水部の底面部から上部に突設された排水口形成部の排水口と、誘導管の上部の開口部が連通する状態となる。
【0029】
さらに、誘導部を、上記のようなパイプ状の誘導管ではなく、鎖状の誘導鎖で構成することもできる。このような誘導鎖で誘導部を構成する場合、たとえば上記のような筒状の排水口形成部を貯水部の底面部から上部に突設させるとともに、貯水部の底面部から下部側に筒状の取付部を突設させ、その筒状の取付部に誘導鎖の上端部を取り付けることによって、誘導鎖を貯水部の底面部に取り付けることができる。
【0030】
さらに、導水手段としては、たとえば内プランターに貫通するように吸水性のシートのような導水部材を取り付けることにより、導水しうるように構成する手段を採用することができる。この場合、導水部材は、たとえば内プランター内に配置される内在部と、該内プランターの外側に延設された外在部とで構成されて、内プランター内に内在部が配置される一方で、その内プランターの底部を貫通して外在部が外側に突出するように、内プランターの底部に取り付けられる。このように導水部材が内プランターに貫通して取り付けられることによって、内プランターを外プランター内に収納したときに導水部材が外プランターの貯水部に貯留される水に浸漬し、導水部材に水が吸収されて、外プランターの貯水部に貯留される水が、導水部材による毛細管現象によって、該導水部材を介して内プランターに誘導されることとなるのである。この場合には、内プランターや、その底部を貫通する貫通孔、さらには内プランター内に配置される内在部は、貯水部内の水に浸漬することがなく、内プランターの外側に延設された外在部のみが貯水部内の水に浸漬した状態となる。その状態でも、外在部に浸透した水が該外在部から内在部側に誘導され、結果として、貫通孔を介して貯水部内の水が内プランター内に誘導されることとなるのである。
【0031】
また他の導水手段として、上記のような導水部材を用いずに、たとえば内プランターの底部に孔を穿設し、その孔を介して外プランターの貯水部から内プランター内に水が誘導されるように構成する手段を採用することもできる。このような導水部材を用いない場合には、内プランターの底部に穿設された孔の部分を、貯水部の水位より下側に位置させることで、該孔の部分から内プランター内に水が浸入して内プランター内に水が供給することとなる。
【0032】
さらに他の導水手段として、たとえばパイプ状の部材を外プランターの貯水部と内プランターに架設し、そのパイプ状の部材を介して外プランターの貯水部から内プランターに水が誘導されるように構成する手段を採用することもできる。さらに他の導水手段として、たとえば内プランターを不織布のような通水性の素材で構成し、その内プランター自体に上記導水部材のような水の吸収、毛細管現象等の機能を具備させるような手段を採用することもできる。
ただし、上記のように内プランターに貫通するように導水部材を取り付けて導水しうるように構成する手段を採用した場合には、内プランターや、その底部を貫通する貫通孔、さらには内プランター内に配置される内在部を貯水部内の水に浸漬させずに、内プランターの外側に延設された外在部のみを貯水部内の水に浸漬させることで、外在部に浸透した水が毛細管現象によって内在部側に誘導されるので、過剰の水が内プランター内に供給されるのが好適に防止されることとなり、その結果、内プランター内の植栽基盤や植物が過湿の状態になるのを好適に防止することができるという効果がある。
【0033】
さらに、本発明の壁面緑化設備は、上記のような壁面緑化ユニットが上下複数段に配置され、上段側の壁面緑化ユニットの排水誘導路の下流側の端部は、該排水誘導路で誘導された水が、下段側の壁面緑化用ユニットの外プランターの貯水部内に流入しうるような位置に設けられているものである。
【0034】
このように壁面緑化用ユニットを上下複数段に配置する場合、たとえばLアングルのような取付具を外プランターの背面側に設け、同様の取付具を壁面に取り付け、両取付具を相互に取り付けることにより外プランターを壁面に取り付けて壁面緑化用ユニットを上下複数段に配置することができる。また、この壁面緑化用ユニットは、上下多段のみならず、左右にも配置することができ、その場合には上下左右に複数段の壁面緑化用ユニットが配置されることになる。
【0035】
さらに、格子状のフレームを壁面に取り付け、その格子状のフレームに外プランターを取り付けることも可能である。この場合には、外プランターと壁面間に格子状のフレームが介在した状態となり、壁面緑化用ユニットの内プランター内の植物がたとえば蔓性植物である場合に、その蔓性植物を格子状のフレームに登攀させることができる。
【0036】
(実施形態1)
以下、本発明の壁面緑化ユニットのより具体的な実施形態について、図面に従って説明する。本実施形態の壁面緑化ユニット1は、外プランター2と、内プランター3と、排水誘導路と、導水部材5を具備して構成されている。
【0037】
内プランター3は、土壌18等の植栽基盤と植物19とを収容するためのもので、図4乃至図6に示すように、上面に開口部4を有し、四方の側面部3a、3b、3c、3dと、底面部3eとで構成されて、全体が箱形に形成されている。また導水部材5は、図5及び図6に示すように、内プランター3の底部に取り付けられている。この導水部材5は、図5及び図6に示すように、内プランター3内に配置される内在部5aと、該内プランター3の外側に延設された外在部5bとで構成されており、全体が断面略T字状に形成されている。そして、内プランター3の底部に内在部5aが載置され、該内プランター3の底部を貫通して外在部5bが内プランターの裏面側(下面側)に突出するように、導水部材5が内プランターの底部に取り付けられている。
【0038】
外プランター2は、水の貯留と誘導を行うためのもので、図1乃至図3に示すように、上面に開口部6を有し、四方の側面部2a、2b、2c、2dと、底面部2eとで構成されて、全体が箱形に形成されている。外プランター2の材質は特に限定されるものではないが、金属製のものを好適に使用することができる。
【0039】
外プランター2の下部側には、貯水部8が形成される。この貯水部8は、後述のように、外プランター2の底面部2eから排水口の位置までの部分に形成されるものである。本実施形態では、上述のように導水部材5が内プランター3に貫通するように設けられ、その導水部材5によって貯水部8の水が内プランター3に誘導されるので、内プランター3自体は貯水部8の水に浸漬されない。一例として、貯水部8の幅が内プランター3の幅より狭くなるように設定することで、貯水部8の水に浸漬されないように内プランター3を外プランター2内に収容することができる。
貯水部8の幅が内プランター3の幅より狭くなるように設定するために、本実施形態では、外プランター2の一側面部側(図2の例では前方の側面部2a側)にテーパ部2fが形成されている。すなわち、このようなテーパ部2fを形成するとともに、内プランター3を外プランター2の内面側と略同幅(若しくは後述のように外プランター2の内面側より狭く且つ外プランター2の底面部2eの幅より広い幅)に形成することで、内プランター3の底部の角部が外プランター2のテーパ部2fと側面部2aとの交差部分である角部2g(若しくはテーパ部2f)に接触して内プランター3が下側に落下するのが阻止され、さらにその内プランター3の底部の下側に排水口が位置するように設定することで、内プランター3が貯水部8の水に浸漬するのが阻止されることとなる。図2の例では、内プランター3が外プランター2の内面側と略同幅である場合を想定し、上記角部2gを起点として水平に形成される仮想直線7の位置に内プランター3の底部が位置する場合を想定している。従って、その仮想直線7より下側に、貯水部8が形成されることとなり、排水口は、上記仮想直線7より下側の部分に位置することとなる。
【0040】
排水誘導路は、上述のように、外プランター2の貯水部8内の水を排水口から排出して下段側の壁面緑化ユニットの外プランター2の貯水部8内に誘導するもので、本実施形態では、排水口を有する排水口形成部としての排水口形成体12と、排水口から排出される水を上流側から下流側へ誘導する誘導部としての誘導管9とで排水誘導路が構成されている。
【0041】
排水口形成体12は、筒状に形成されたものであり、図1及び図3に示すように、外プランター2の側面部2dに近い底面部2eの部分に上向きに突設されている。この排水口形成体12の下部には図9に示すように開口部13が形成されているが、上端部には開口部は形成されていない。そして、該排水口形成体12の上端部の下側に、複数のスリット14が形成されている。この排水口形成体12に形成されたスリット14が、上記排水誘導路の排水口に相当するものである。このスリット14は、前記外プランター2の貯水部の底面部2eから所定の高さとなる位置に設定されている(本実施形態では水位が3cmとなるように設定されている)。
【0042】
そして、水15の上面の高さ(水位)がスリット14の位置よりも高くなったとき、貯水部8内に貯留される水15が溢流してスリット14から筒状の排水口形成体12内に流入し、排水口形成体12の下部の開口部13から後述する誘導管9を介して下段側の屋上緑化ユニット1の外プランター2の貯水部8へ誘導されることとなるのである。
【0043】
排水口形成体12の下部には、後述する誘導管9を取り付けるための筒状の取付部12aが形成されている。この取付部12aは、外プランター2の底面部2eの裏面側に突設され、該取付部12aの外周面に螺子16が形成されている。
【0044】
誘導管9は、図11に示すように、上部及び下部にそれぞれ開口部10、11を有して全体が細い円筒状に形成されている。また誘導管の上部の開口部10の直下の内周面には、前記取付部12aの外周面に形成された螺子16に螺合可能な螺子17が形成されている。
【0045】
さらに、外プランター2の後側の側面部2bの両側には、図1及び図2に示すように、Lアングル27が取り付けられている。このLアングル27は、外プランター2の側面部2bに取り付けられる外プランター用取付部27aと、後述する別のLアングル29に取り付けられるLアングル用取付部27bとで構成されている。さらに、外プランター2の前側及び後側の側面部2a、2bには、後述する内プランター固定金具31を挿入するための挿入孔34が穿設されている。
【0046】
図8において、31は、外プランター2内に収納された状態の内プランター3を固定するための内プランター固定金具31を示す。この内プランター固定金具31は、長辺部31a及び短辺部31bを有する側面略L字状に形成されている。長辺部31aは、上記外プランター2の挿入孔34に挿入可能に形成され、短辺部31bは、該挿入孔34の周辺部に係止可能に形成されている。また長辺部31aには、抜け止めビス33を挿入して固定するための孔32が穿設されている。図10において、39は、外プランター2内に収納される2個の内プランター3、3間に介装される仕切板を示す。
【0047】
そして、上記のような構成からなる壁面緑化ユニット1を、図13及び図14に示すように、上下複数段に配置することによって、壁面緑化設備が構成されることとなる。すなわち、本実施形態の壁面緑化設備においては、上記壁面緑化ユニット1が上下複数段(図13においては4段)に配置され、それぞれの壁面緑化ユニット1の外プランター2の裏面側に突設された取付部12aに誘導管9が取り付けられている。
【0048】
誘導管9の取り付けは、上記のように、外プランター2の取付部12aの外周面に形成された螺子16に、誘導管9の上部の開口部10の直下の内周面に形成された螺子17を螺合させることによって行う。このように両螺子16、17を螺合させることによって、誘導管9が取付部12aを介して外プランター2の底面部2eの裏面側に突出するように取り付けられることとなる。このように外プランター2の取付部12aに誘導管9が取り付けられた状態において、排水口形成体12のスリット14の下方に誘導管9の上部の開口部10が位置することとなる。また、誘導管9の下部の開口部11は、下段側の壁面緑化ユニットの外プランター2内に位置するとともに、該外プランター2の貯水部8に向けて開放するように誘導管9が外プランター2に取り付けられる。このように誘導管9が外プランター2に取り付けられることで、排水口形成体12のスリット14と誘導管9の上部の開口部10が連通状態となり、スリット14から溢流する貯水部8内の水が、上部の開口部10から誘導管9に流入し、該誘導管9の下部の開口部11から、下段側の壁面緑化ユニットの外プランター2の貯水部8内に誘導されることとなるのである。
【0049】
また、この場合、図13に示すように、上下段に隣接する外プランター2に取り付けられた誘導管9が、正面視において相互に逆向きとなるように、誘導管9を取り付けた外プランター2が配置される。図13においては、最上段の外プランター2の誘導管9は、正面視において右側に位置するように配置され、上から2段目の外プランター2の誘導管9は、正面視において左側に位置するように配置され、順次、誘導管9の位置が正面視において交互に右側、左側となるように外プランター2が配置されている。
【0050】
さらに、上記のように外プランター2を上下複数段に設置するに際しては、図7に示すようなLアングル29が予め壁面35に取り付けられ、そのLアングル29に、外プランター2の背面側のLアングルが取り付けられ、それによって外プランター2が壁面35に取り付けられる。より具体的には、両Lアングル27、29の孔28、30を相互に合致させた状態でボルト36が挿入され、さらに別のボルト37によってLアングル29が壁面に固定されている。
【0051】
最上段の外プランター2においては、上記のような誘導管9が取り付けられている他、その誘導管9が取り付けられた外プランター2の端部と反対側の端部(図13では正面視左側)には、水道管等の水の供給源となる部分に接続された給水管20が、前記外プランター2内に挿入されるようにして設けられている。また給水管20には、図11に示すように、電磁弁21が取り付けられている。
【0052】
さらに、最下段の外プランター2の貯水部8の部分においては、誘導管9が挿入された外プランター2の端部と反対側の端部(図13では正面視左側)に、水位センサー22が取り付けられている。そして、この水位センサー22と前記電磁弁21とにコード23が接続されている。本実施形態では、最下段の外プランター2の貯水部8の水位が1cm以下になった状態が水位センサー22に検知され、電磁弁21が開いて給水管20からの給水が開始され、最下段の外プランター2の貯水部8の水位が3cmを超えた状態が水位センサー22に検知され、電磁弁21が閉じられて給水管20からの給水が停止されるように設定されている。尚、水位センサー22の作動を所定時間に設定するタイマー(図示せず)等を設けることも可能である。
【0053】
また、最下段の外プランター2のさらに下側には樋25が設けられ、該樋25に、前記最下段の外プランター2から水が排出されるように構成されている。より具体的には、最下段の外プランター2の、前記水位センサー22が取り付けられた部分のわずか側方に、短い排水管26が取り付けられており、該排水管26を介して最下段の外プランター2から樋25に水が排出されるように構成されている。
【0054】
そして、上記のように構成された壁面緑化設備で灌水を行う場合について説明する 。
【0055】
先ず、灌水を行うに先立って、内プランター3の上面の開口部4から、内プランター3内に植栽基盤としての土壌18を収容する。この土壌18としては、天然土壌及び人工土壌のいずれを用いることも可能である。また、生育させる植物19も内プランター3内に収容する。本実施形態では、低木の植物19が土壌18に植設されている。
【0056】
次に、図10乃至図12に示すように、土壌18及び植物19が収納された内プランター3を、外プランター2内に収納する。本実施形態では、2個の内プランター3、3が外プランター2内に収納される。この場合、内プランター3、3は、貯水部8の上部に位置するように収納される。また、2個の内プランター3、3間には、仕切板39が介装される。内プランター3、3を外プランター2内に収納した状態で、図8に示すような内プランター固定金具31で内プランター3を固定する。より具体的には、内プランター固定金具31の長辺部31aを外プランター2の挿入孔34に挿入し、該内プランター固定金具31の短辺部31bを前記挿入孔34の周辺部に係止させた後、該内プランター固定金具31の長辺部31aの孔32に抜け止めビス33を挿入して固定する。
【0057】
このような内プランター固定金具31によって、外プランター2からの内プランター3の抜け出しが禁止されることとなる。また外プランター2の一側面部側には上述のように、テーパ部2fが形成されており、図2及び図12の例では内プランター3が外プランター2の内面側と略同幅に形成されているので、内プランター3の底部の角部がテーパ部2fと側面部2aとの交差部分である角部2gに接触し、内プランター3が下側に落下して貯水部8の水に浸漬するのが阻止されることとなる。この場合は内プランター3が上記仮想直線7の位置で保持され、仮想直線7より下側に移動しない。一方、排水口は、仮想直線7より下側の部分に位置し、従って、貯水部8は仮想直線7より下側に形成されることとなるので、内プランター3は貯水部8の水に浸漬することがない。
【0058】
尚、図2及び図12の例では、内プランター3が外プランター2の内面側と略同幅に形成されている場合について説明しているが、内プランター3の幅を外プランター2の内面側の幅より狭く、且つ外プランター2の底面部2eの幅より広く形成することもできる。外プランター2の内面側の幅より狭くても、内プランター3の幅を外プランター2の底面部2eの幅より広く形成することで、内プランター3の底部の角部がテーパ部2fに接触し、内プランター3が下側に落下して貯水部8の水に浸漬するのが阻止されることとなる。この場合にも、排水口の位置が内プランター3の底部よりも下側となるように設定することで、内プランター3の底部より下側に貯水部8が形成されることとなり、内プランター3が貯水部8の水に浸漬されるのが阻止されることとなる。
いずれにしても、上記のようなテーパ部2fが外プランター2に形成されていることで、内プランター3の底部の角部が外プランター2のテーパ部2f若しくは角部2gに接触するように内プランター3の幅を設定し、且つ内プランター3の底部より下側に位置するように排水口の位置を設定することで、貯水部8の幅は内プランター3の幅よりも狭くなり、内プランター3が貯水部8の水に浸漬しないように内プランター3を外プランター2内に収容することができるのである。
また、上記のようにテーパ部2fを外プランター2に形成することに代えて、たとえば外プランター2の内周面に段差部を形成し、その段差部に内プランター3の底部の角部を係止させることも可能である。この場合には、その段差部の位置より下側に排水口を形成することで、該段差部に係止される内プランター3の底部より下側に貯水部8が形成されることとなる。
【0059】
上記のようにして外プランター2を上下複数段に設置した状態で、電磁弁21を作動させて開き、給水管20から最上段の外プランター2内に水を供給する。
【0060】
給水管20からの給水が開始されると、最上段の外プランター2の貯水部8内に水が貯留され、貯留された水は導水部材5に吸収され、該導水部材5を介して内プランター3の底部から該内プランター3内に浸入する。より詳しくは、貯水部8内の水に浸漬している導水部材5の外在部5bに水が浸透し、浸透した水は毛細管現象によって上記外在部5bから導水部材5の内在部5a側に移動し、それによって内プランター3内に浸入することとなるのである。すなわち、内プランター3の内部側には内在部5aが配置され、その内プランター3の底部を貫通して外在部5bが内プランター3の裏面側に突出するように、導水部材5が内プランター3の底部に取り付けられているので、貯水部8内の水は、導水部材5を介して内プランター3内に好適に誘導されることとなるのである。これによって、プランター3内の土壌18や植物19に必要な水が供給されることとなる。
【0061】
一方、外プランター2内に供給された水は、図13の矢印イ方向に水が流れ、貯水部8の高さが所定の水位(本実施形態では3cm以上)になったときに、排水口形成体12のスリット14から該排水口形成体12内に水が流入し、誘導管9を介して2段目の外プランター2の貯水部8内に誘導される。2段目の外プランター2内に誘導された水は、該2段目の外プランター2の貯水部8内に貯留されることとなる。
【0062】
図13においては図示していないが、2段目の外プランター2内においても内プランター3が収納されており、従って、貯水部8内の水は、導水部材5に浸透し、浸透した水は毛細管現象によって内プランター3に貫通して設けられた導水部材5を介して2段目の内プランター3内に浸入し、その結果、内プランター3内の土壌18や植物19に水が供給されることとなる。
【0063】
最上段の外プランター2から誘導管9を介して2段目の外プランター2内に誘導された水は図13の矢印ロ方向に流れ、所定の水位(本実施形態では3cm以上)になったときに、排水口形成体12のスリット14から該排水口形成体12内に水が流入し、誘導管9を介して2段目の外プランター2の貯水部8内に水が誘導され、該2段目の外プランター2に取り付けられた誘導管9を介して3段目の外プランター2の貯水部8内に誘導されることとなる。
【0064】
3段目の外プランター2においても、同様に導水部材5を介しての内プランター3内への水の浸入、及び該内プランター3内の土壌18や植物19への水の供給がなされ、また水は図13の矢印ハ方向に流れ、所定の水位(本実施形態では3cm以上)になったときに、排水口形成体12のスリット14から該排水口形成体12内に水が流入し、3段目の外プランター2に取り付けられた誘導管9を介して最下段の外プランター2内に供給されることとなる。
【0065】
最下段の外プランター2内に供給された水は、同様に貯水部8で貯留されるのであるが、該最下段の外プランター2には誘導管9は取り付けられておらず、従って最下段の外プランター2内の水は、排水管26から樋25に供給されて排出されることとなる。
【0066】
このように、各段の誘導管9を介しての下段側の外プランター2の貯水部8への水の誘導と貯水部8での所定量の水の貯留、及び導水部材5を介しての内プランター3内への水の誘導を繰り返すことによって、最下段の外プランター2内における貯水部8内の水の水位が3cm以上となったとき、水位センサー22が作動し、電磁弁21が閉の状態となり、給水管20から最上段の外プランター2への水の供給が停止されることとなり、それによって各段の外プランター2への水の誘導も停止されることとなる。このように最下段の屋上緑化ユニット1の外プランター2の貯水部8内の水位が、それより上段側の屋上緑化ユニット1の外プランター2の貯水部8内の水位とほぼ同じになったとき、上下複数段の各屋上緑化ユニット1において均一な灌水がなされたことになる。
【0067】
以上のように、本実施形態においては、屋上緑化ユニット1の外プランター2に水を貯留する貯水部8が設けられているとともに、該貯水部8に貯留された水を下段の屋上緑化ユニット1の外プランター2側へ誘導するための誘導管9が該外プランター2に取り付けられるため、水源となる水供給手段は、最上段の壁面緑化ユニットの部分のみに設けられていればよく、それより下段の壁面緑化ユニットにおいては、水源となる水供給手段を設けなくても、外プランターの貯水部及び誘導管を介して順次下段側の壁面緑化ユニットへ自動的に誘導されることとなる。
【0068】
また、外プランター2の貯水部8の水位が、スリット14の高さを超えたときに該スリット14から貯水部8内の水が溢流し、スリット14と連通する誘導管9の上部の開口部10から該誘導管9内に水が流入し、誘導管9内を水が誘導されつつ、該誘導管9の下部の開口部11を介して該下段側の壁面緑化ユニットの外プランター2の貯水部8へ誘導されるので、外プランター2の貯水部8及び誘導管9を介して上段側の壁面緑化ユニットから下段側の壁面緑化ユニットへ確実に水が誘導されることとなり、各段の壁面緑化ユニットの外プランター2の貯水部8に誘導された水が、導水部材5を介してそれぞれの段の壁面緑化ユニットの内プランター3に誘導されることとなる。
【0069】
従って、上記のような構成の壁面緑化用ユニットが上下複数段に設けられることで、各段の壁面緑化ユニットの外プランター2の貯水部8には略同量の水が貯留されることとなり、それぞれの段のユニットの外プランター2の貯水部8から内プランター3に導水部材5を介して略均一に水が誘導されることとなり、また上段と下段の壁面緑化ユニットで水分量が変化するのを極力防止することができ、下段側が過湿の状態になるのを防止できるという効果がある。
【0070】
さらに、誘導管9の下部の開口部11が下段側の壁面緑化用ユニットの外プランター2内に位置するとともに、該外プランター2の貯水部8に向かって開放し、内プランター3が外プランター2内の貯水部8の上部に位置するように収納されており、上段側のユニットから下段側のユニットへ誘導される水は、外プランター2の外側には排出されずに排水誘導路(排水口形成体12と誘導管9)を介して誘導され、内プランター3へは導水部材5を介して貯水部8内の水が誘導されるので、水が外プランター2の外側に飛散して下に落下するようなことも防止できるという効果がある。
【0071】
さらに、上記のように、水源となる水供給手段は最上段の壁面緑化ユニットの部分のみに設けられていれば、それより下段側の壁面緑化ユニットには、外プランター2の貯水部8及び誘導管9を介して順次水が誘導されるので、上記のように最下段の外プランター2に水位センサー22を設置し、該最下段の外プランター2の貯水部8の水位が1cm以下になったときに電磁弁21が開いて給水管20からの給水が開始され、最下段の外プランター2の貯水部8の水位が3cmに達したときに電磁弁21が閉じられて給水管20からの給水が停止されるように設定することで、水を必要以上に多量に使用することがなく、水の無駄な使用を極力防止することができるという効果がある。
【0072】
(実施形態2)
本実施形態では、排水誘導路を構成する誘導部が、上記実施形態1のような誘導管9ではなく、図15に示すような誘導鎖9aによって構成されている。すなわち、誘導鎖9aの上端部が、図15に示すように筒状の取付部12a(取付部12aの内面側)に取り付けられ、該筒状の取付部12aから誘導鎖9aから垂下するように設けられている。そして、誘導鎖9aの下端部は、下段側の外プランター2内に位置し、該誘導鎖9aを伝って誘導される水が下段側の外プランター2の貯水部8内に流入しうるように、該下段側の外プランター2の貯水部8の上部に位置している。
【0073】
図示はしていないが、本実施形態においても、実施形態1と同様に、筒状の取付部12aの上部に、排水誘導路の排水口に相当する複数のスリット14が形成された筒状の排水口形成体12が設けられている。
【0074】
本実施形態においても、上記実施形態1と同様に、灌水された水は外プランター2の貯水部8内に貯留され、所定の水位になったときに、排水口形成体12のスリット14から該排水口形成体12内に水が流入する。そして、筒状の排水口形成体12から筒状の取付部12a内に水が流入するが、本実施形態においては排水誘導路を構成する誘導体として、上記実施形態1の誘導管9のようなものではなく、誘導鎖9aが設けられているので、排水口形成体12から取付部12a内に流入した水は、誘導鎖9aを伝って下段側の外プランター2に誘導され、該下段側の外プランター2の貯水部8内に流入することとなる。
【0075】
このように、本実施形態では誘導鎖9aを伝って水が誘導される点で、誘導管9内を流入して水が誘導される上記実施形態1の場合と相違するが、下段側の外プランター2の貯水部8内に水が好適に誘導される点では共通している。他の構成は、上記実施形態1と共通するため、その詳細な説明は省略する。
【0076】
(実施形態3)
本実施形態では、図16及び図17に示すように、格子状のフレーム38が、外プランター2の背面側に位置するように壁面35に取り付けられている。この格子状のフレーム38は、同図に示すように、その上端部が図7に示すようなLアングル29に取り付けられ、下端部が、外プランター2の背面側に取り付けられたLアングル29に取り付けられている。この格子状のフレーム38は、上下に隣接する外プランター2に跨がるように取り付けられている。
【0077】
このような格子状のフレーム38を外プランター2の背面側に位置するように壁面35に取り付けることによって、図17に示すように、蔓性植物のような登攀性の植物19を、壁面35に沿って好適に登攀させることができる。
【0078】
さらに、本実施形態においても、上記実施形態2と同様に、排水誘導路を構成する誘導体として、誘導鎖9aが用いられている。その他の構成は実施形態1と共通するため、その詳細な説明は省略する。
【0079】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、外プランター2が、上面に開口部6を有し、四方の側面部2a、2b、2c、2dと、底面部2eとで構成されて、全体が箱形に形成されていたが、プランター2の形状は該実施形態に限定されるものではなく、たとえば有底円筒状に形成されたようなものであってもよく、また、他の形態のものであってもよい。
【0080】
さらに、この内プランター3の材質も上記実施形態のポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレン等の汎用性の合成樹脂に限らず、また合成樹脂以外の素材のものを用いることも可能である。また、外プランター2の材質も上記実施形態の金属に限定されるものではない。
【0081】
さらに、外プランター2の底面部2eから排水口14の位置までの高さによって設定される貯水部8の水位も特に限定されるものではないが、壁面緑化ユニット1での過湿の状態を防止する観点からは、3〜4cm程度に設定されることが望ましい。
【0082】
さらに、上記実施形態では、Lアングル27、29等を用いて外プランター2を壁面35に取り付けることとしたが、外プランター2を取り付ける手段は該実施形態に限定されるものではなく、他の手段を用いて取り付けることも可能である。
【0083】
さらに、図13乃至図17では、複数段の壁面緑化ユニット1が上下1列に設置されている場合を示しているが、複数列に複数段の壁面緑化ユニット1を設置することも可能である。実際に壁面緑化を行う場合、複数列に複数段の壁面緑化ユニットを設置する場合が多い。このように、複数列に複数段の壁面緑化ユニットを設置することで、上下左右に多数の壁面緑化ユニットが配置されることとなる。
【0084】
その他、本発明の意図する範囲内において設計変更自在である。
【符号の説明】
【0085】
1 壁面緑化ユニット
2 外プランター
3 内プランター
5 導水部材
8 貯水部
9 誘導管
9a 誘導鎖
10 上部の開口部
11 下部の開口部
14 スリット
18 土壌
19 植物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に沿って上下複数段に配置して壁面緑化を行うための壁面緑化ユニットにおいて、植栽基盤と植物(19)とが収容可能な内プランター(3)と、該内プランター(3)を収容可能で且つ灌水される水を貯留する貯水部(8)を有する外プランター(2)と、該外プランター(2)の貯水部(8)に貯留された水を内プランター(3)内に誘導するための導水手段と、前記外プランター(2)の貯水部(8)内の水を排出する排水口を有して該排水口から排出される水を下段側の壁面緑化ユニットの外プランター(2)の貯水部(8)内に誘導する排水誘導路とを具備し、該排水誘導路の排水口が前記貯水部(8)の底面部より上部に設けられて、該排水口から溢流する貯水部(8)内の水が該排水誘導路の上流側から下流側へ誘導されるように構成され、該排水誘導路の下流側の端部は、該排水誘導路で誘導された水が下段側の壁面緑化ユニットの外プランター(2)の貯水部(8)内に流入しうるような位置に設けられるように構成されていることを特徴とする壁面緑化ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の壁面緑化ユニットが上下複数段に配置され、上段側の壁面緑化ユニットの排水誘導路の下流側の端部は、該排水誘導路で誘導された水が下段側の壁面緑化用ユニットの外プランター(2)の貯水部(8)内に流入しうるような位置に設けられていることを特徴とする壁面緑化設備。
【請求項1】
壁面に沿って上下複数段に配置して壁面緑化を行うための壁面緑化ユニットにおいて、植栽基盤と植物(19)とが収容可能な内プランター(3)と、該内プランター(3)を収容可能で且つ灌水される水を貯留する貯水部(8)を有する外プランター(2)と、該外プランター(2)の貯水部(8)に貯留された水を内プランター(3)内に誘導するための導水手段と、前記外プランター(2)の貯水部(8)内の水を排出する排水口を有して該排水口から排出される水を下段側の壁面緑化ユニットの外プランター(2)の貯水部(8)内に誘導する排水誘導路とを具備し、該排水誘導路の排水口が前記貯水部(8)の底面部より上部に設けられて、該排水口から溢流する貯水部(8)内の水が該排水誘導路の上流側から下流側へ誘導されるように構成され、該排水誘導路の下流側の端部は、該排水誘導路で誘導された水が下段側の壁面緑化ユニットの外プランター(2)の貯水部(8)内に流入しうるような位置に設けられるように構成されていることを特徴とする壁面緑化ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の壁面緑化ユニットが上下複数段に配置され、上段側の壁面緑化ユニットの排水誘導路の下流側の端部は、該排水誘導路で誘導された水が下段側の壁面緑化用ユニットの外プランター(2)の貯水部(8)内に流入しうるような位置に設けられていることを特徴とする壁面緑化設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−19714(P2012−19714A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158815(P2010−158815)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000221775)東邦レオ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000221775)東邦レオ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
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