説明

変位センサ、及び測定機

【課題】接触子に加えられる負荷の方向と、負荷の大きさと、変位センサにて検出される変位との関係を容易に調整することができる変位センサの提供。
【解決手段】変位センサ5は、対象物に接触する測定子2Aを先端部に有するスタイラス51と、スタイラス51を内部に収納する筒状のハウジング52と、スタイラス51、及びハウジング52の間に設けられ、スタイラス51を揺動自在に支持する2つの支持部材53とを備える。各支持部材53は、スタイラス51が取り付けられる取付部と、ハウジング52の内部に固定される固定部と、取付部、及び固定部を接続するバネ部とを備え、スタイラス51の軸方向に離間して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位センサ、及びこの変位センサを備える測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一定の範囲内で移動可能に構成され、対象物に接触する接触子を有するプローブと、プローブを保持するとともに、移動させる移動機構とを備え、接触子を対象物に押し込んだ状態で対象物の表面に倣って接触子を移動させることによって対象物を測定する三次元測定機等の測定機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような測定機のプローブは、例えば、接触子を先端部に有するスタイラスと、スタイラスを内部に収納する筒状のハウジングと、スタイラス、及びハウジングの間に設けられ、スタイラスを揺動自在に支持する支持部材とを備え、スタイラスにおける基端部の変位を検出することで接触子の変位を検出する接触式の変位センサとして構成されている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、接触子は、スタイラスを支持部材にて揺動自在に支持することで一定の範囲内で移動可能に構成されている。
特許文献2に記載のタッチプローブは、スタイラスと、プローブ本体(ハウジング)と、スタイラス支持手段(支持部材)とを備え、検出手段にてスタイラスの変位を検出する接触式の変位センサとして構成されている。
【0003】
また、支持部材にてスタイラスを揺動自在に支持する構成としては、スタイラスが取り付けられる取付部と、ハウジングの内部に固定される固定部と、取付部、及び固定部を接続するバネ部とを備える構成が知られている。
特許文献2に記載のタッチプローブでは、スタイラス支持手段は、ダイヤフラムを備え、ダイヤフラムは、中心部(取付部)と、外周部(固定部)と、中心部、及び外周部を連結する複数のリム(バネ部)とを備え、各リムは、中心部、及び外周部の間に放射状に設けられている。
【0004】
ここで、スタイラス支持手段は、1つのダイヤフラム、または2つのダイヤフラムで構成され、2つのダイヤフラムで構成される場合には、中心部、及び外周部を結合して一体化させている。
しかしながら、1つのダイヤフラム、または一体化させた2つのダイヤフラムにてスタイラスを揺動可能に支持すると、接触子に対してスタイラスの軸方向に所定の負荷が加えられたときのスタイラスの軸方向における基端部の変位と、接触子に対してスタイラスの軸方向と直交する方向(以下、直交方向とする)に所定の負荷が加えられたときのスタイラスの直交方向における基端部の変位とが異なる場合がある。言い換えると、接触子に加えられる負荷の方向によって、負荷の大きさと、変位センサにて検出される変位との関係が異なる場合がある。
このような場合には、前述した測定機において、接触子を対象物に押し込んだ状態で対象物の表面に倣って移動させることによって対象物を測定するときに、変位センサにて検出される変位が同じであっても接触子を対象物に押し込む方向によっては対象物にかかる負荷が異なることになるので、対象物を破損してしまうおそれがあるという問題がある。
【0005】
これに対して、例えば、接触子に加えられる負荷の方向が異なる場合であっても負荷の大きさが一定となるように、変位センサにて検出される変位を制御して対象物を測定することも考えられるが、制御処理が複雑化するという問題がある。
また、例えば、接触子に加えられる負荷の方向が異なる場合であっても負荷の大きさと、変位センサにて検出される変位との関係が同じになるように、電子回路によって調整することも考えられるが、接触子に加えられる負荷の方向によって、負荷の大きさと、変位センサにて検出される変位との関係が大きく変化する場合には、調整が困難であるという問題がある。
このため、プローブは、接触子に加えられる負荷の方向が異なる場合であっても負荷の大きさと、変位センサにて検出される変位との関係が同じになるように予め調整されていることが望ましい。
【0006】
【特許文献1】特開2008−89578号公報
【特許文献2】特開2008−76089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、接触子に加えられる負荷の方向と、負荷の大きさと、変位センサにて検出される変位との関係は、支持部材の材質、形状、大きさ等によって定まるので容易に調整することができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、接触子に加えられる負荷の方向と、負荷の大きさと、変位センサにて検出される変位との関係を容易に調整することができる変位センサ、及び測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の変位センサは、対象物に接触する接触子を先端部に有するスタイラスと、前記スタイラスを内部に収納する筒状のハウジングと、前記スタイラス、及び前記ハウジングの間に設けられ、前記スタイラスを揺動自在に支持する支持部材とを備え、前記スタイラスにおける基端部の変位を検出することで前記接触子の変位を検出する接触式の変位センサであって、2つの前記支持部材を備え、前記各支持部材は、前記スタイラスが取り付けられる取付部と、前記ハウジングの内部に固定される固定部と、前記取付部、及び前記固定部を接続するバネ部とを備え、前記スタイラスの軸方向に離間して配置されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、2つの支持部材は、スタイラスの軸方向に離間して配置されているので、各支持部材の間隔を調整することができる。そして、各支持部材の間隔を調整することによって、スタイラスの直交方向における負荷の大きさと、変位センサにて検出される基端部の変位との関係を調整することができる。したがって、変位センサは、接触子に加えられる負荷の方向と、負荷の大きさと、変位センサにて検出される変位との関係を容易に調整することができる。
【0011】
本発明では、前記各支持部材は、前記接触子に対して前記軸方向に所定の負荷が加えられたときの前記軸方向における前記基端部の変位と、前記接触子に対して前記軸方向と直交する方向に前記所定の負荷が加えられたときの前記直交方向における前記基端部の変位とが同じになる間隔で前記軸方向に離間して配置されていることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、接触子に加えられる負荷の方向が異なる場合であっても負荷の大きさと、変位センサにて検出される変位との関係が同じになるように予め調整されているので、変位センサを好適に利用することができる。
例えば、前述した測定機に本発明の変位センサを利用する場合において、接触子を対象物に押し込んだ状態で対象物の表面に倣って移動させることによって対象物を測定するときに、変位センサにて検出される変位が同じであれば接触子を対象物に押し込む方向に関わらず対象物にかかる負荷が同じになるので、対象物を破損することなく測定することができる。
また、変位センサにて検出される変位が一定であれば、対象物にかかる負荷も一定となるので、制御処理を簡素化することができる。さらに、電子回路によって調整する必要もないので、変位センサの構成を簡素化することができる。
【0013】
本発明では、前記各支持部材は、複数の前記バネ部を備え、前記取付部、及び前記固定部は、円環状に形成され、前記各バネ部は、断面矩形状に形成され、前記取付部、及び前記固定部を径方向に沿って接続するとともに、周方向に沿った折り返し構造を有していることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、各バネ部は、取付部、及び固定部の周方向に沿った折り返し構造を有しているので、例えば、各バネ部を、取付部、及び固定部の間に放射状に設ける場合と比較してバネの長さを長くすることができ、バネ定数を低くすることができる。したがって、本発明によれば、各支持部材の間隔を調整することによって、スタイラスの直交方向における負荷の大きさと、変位センサにて検出される基端部の変位との関係を調整する調整幅を大きくすることができる。
【0015】
本発明の測定機は、前述した変位センサを備え、前記接触子を対象物に接触させることで前記対象物を測定することを特徴とする。
このような構成によれば、測定機は、前述した変位センサを備えるので、前述した変位センサの作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔三次元測定機の概略構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係る三次元測定機1を示す全体模式図である。なお、図1では、上方向を+Z軸方向とし、このZ軸に直交する2軸をそれぞれX軸、及びY軸として説明する。以下の図面においても同様である。
三次元測定機1は、図1に示すように、一定の範囲内で移動可能に構成され、対象物の表面に当接される接触子としての測定子2Aを先端側(−Z軸方向側)に有するプローブ2と、プローブ2の基端側(+Z軸方向側)を保持するとともに、プローブ2を移動させる移動機構3と、移動機構3が立設される定盤4とを備える。この三次元測定機1は、測定子2Aを対象物(図示略)に押し込んだ状態で対象物の表面に倣って測定子2Aを移動させることによって対象物を測定する測定機である。
【0017】
移動機構3は、定盤4におけるX軸方向の両端から+Z軸方向に延出し、Y軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられる2つのビーム支持体31と、各ビーム支持体31にて支持され、X軸方向に沿って延出するビーム32と、Z軸方向に沿って延出する角筒状に形成され、ビーム32上をX軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられるコラム33と、コラム33の内部に挿入されるとともに、コラム33の内部をZ軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられる角柱状のスピンドル34とを備える。
したがって、移動機構3は、X,Y,Z軸の各軸方向にプローブ2を移動させる複数の移動軸を備えている。そして、スピンドル34は、−Z軸方向側の端部においてプローブ2の基端側を保持している。
【0018】
〔プローブの詳細構成〕
図2は、プローブ2の全体を示す断面模式図である。なお、図2は、XZ平面に沿ってプローブ2を切断した断面図である。
プローブ2は、図2に示すように、測定子2Aの変位を検出する接触式の変位センサ5と、移動機構3に保持される本体部6とを備える。
変位センサ5は、測定子2Aを先端部(−Z軸方向側の端部)に有するスタイラス51と、スタイラス51を内部に収納する円筒状のハウジング52と、スタイラス51、及びハウジング52の間に設けられ、スタイラス51を揺動自在に支持する2つの支持部材53と、スタイラス51における基端部(+Z軸方向側の端部)の変位を検出し、検出した変位を電気信号として出力する静電容量式の変位検出手段54とを備える。
本体部6は、図示を省略するが、変位検出手段54から出力される電気信号を増幅する増幅手段を備え、増幅手段は、増幅した電気信号を三次元測定機1に出力する。
【0019】
図3は、変位センサ5の要部を示す斜視図である。図4は、図2におけるA−A断面図である。
各支持部材53は、図3に示すように、円盤状に形成され、スタイラス51の軸方向(Z軸方向)に離間して配置される。そして、各支持部材53は、図3、及び図4に示すように、スタイラス51が取り付けられる取付部531と、ハウジング52の内部に固定される固定部532と、取付部531、及び固定部532を接続する複数のバネ部533とを備える。
【0020】
取付部531は、略中央に孔531Aを有する円環状に形成され、スタイラス51は、孔531Aに挿通されて取付部531に取り付けられる。なお、スタイラス51は、スタイラス51の軸方向における略中央位置で孔531Aに固定される(図2参照)。
固定部532は、円環状に形成され、各支持部材53における固定部532の間には、スペーサ534が配設される。スペーサ534は、各支持部材53の間隔を設定するものであり、固定部532は、スペーサ534を介してハウジング52の内部に固定される。
【0021】
各バネ部533は、断面矩形状に形成され、取付部531、及び固定部532を径方向に沿って接続するとともに、周方向に沿った折り返し構造を有している。具体的に、各バネ部533は、取付部531から径方向に沿って延出した後、周方向に沿って延出し、周方向に沿って延出した後、固定部532に向かって径方向に沿って延出し、これを繰り返すことで折り返し構造を形成している。また、バネ部533における径方向に延出する部分は、周方向に延出する部分の両端において、それぞれ略直線状に配置されている。
なお、各バネ部533の断面形状は、スタイラス51の軸方向(以下、軸方向vとする)の厚さと、取付部531、及び固定部532の径方向の幅との比が1:5程度となることが望ましい。このように各バネ部533の断面形状を設定すれば、強度を確保しつつ、バネ定数の低いバネを構成することができる。なお、本実施形態では、各バネ部533の厚さを30μm以下に設定している。
【0022】
次に、各支持部材53の間隔、すなわち、軸方向vにおけるスペーサ534の厚さの設定について説明する。
スペーサ534の厚さは、測定子2Aに対して軸方向vに所定の負荷が加えられたときの軸方向vにおけるスタイラス51の基端部の変位と、測定子2Aに対してスタイラス51の直交方向(以下、直交方向hとする)に所定の負荷が加えられたときの直交方向hにおけるスタイラス51の基端部の変位とが同じになる厚さに設定されている。
【0023】
図5は、スペーサ534の厚さSを変化させたときの測定子2Aに対して加えられる負荷fと、スタイラス51の基端部の変位δとの関係を示すグラフである。なお、図5では、スペーサ534の厚さSをS1からS4まで一定の変化幅で変化させたときのそれぞれのグラフを示し(S1<S2<S3<S4)、縦軸を測定子2Aに加えられる負荷fとし、横軸をスタイラス51の基端部の変位δとしている。
また、図5(A)は、測定子2Aに対して軸方向vに負荷fvが加えられたときの軸方向vにおけるスタイラス51の基端部の変位δvを示すグラフである。図5(B)は、測定子2Aに対して直交方向hに負荷fhが加えられたときの直交方向hにおけるスタイラス51の基端部の変位δhを示すグラフである。
【0024】
ここで、測定子2Aに対して軸方向vに加えられる負荷fvと、軸方向vにおけるスタイラス51の基端部の変位δvとの関係は、図5(A)に示すように、スペーサ534の厚さSを変化させても変化しない。
これに対して、測定子2Aに対して直交方向hに加えられる負荷fhと、直交方向hにおけるスタイラス51の基端部の変位δhとの関係は、図5(B)に示すように、スペーサ534の厚さSを変化させると非線形に変化する。具体的に、スペーサ534の厚さSを厚くするに従って変位δhを一定とした場合の負荷fhが大きくなる方向に変化する。
【0025】
図6は、スタイラス51の基端部の変位δv,δhを一定としたときの測定子2Aに対して加えられる負荷fv,fhと、スペーサ534の厚さSとの関係を示すグラフである。なお、図6では、縦軸を負荷fv,fhとし、横軸をスペーサ534の厚さSとしている。
また、図6中破線で示されるグラフG1は、軸方向vにおけるスタイラス51の基端部の変位δvを一定としたときの測定子2Aに対して加えられる負荷fvと、スペーサ534の厚さSとの関係を示すグラフである。図6中実線で示されるグラフG2は、直交方向hにおけるスタイラス51の基端部の変位δhを一定としたときの測定子2Aに対して加えられる負荷fhと、スペーサ534の厚さSとの関係を示すグラフである。
【0026】
ここで、グラフG1,G2の交点(S=Sx)は、測定子2Aに対して軸方向vに所定の負荷が加えられたときの軸方向vにおけるスタイラス51の基端部の変位δvと、測定子2Aに対して直交方向hに所定の負荷が加えられたときの直交方向hにおけるスタイラス51の基端部の変位δhとが同じになる厚さを示している(図6参照)。
【0027】
図7は、支持部材53の材質、形状、大きさ等を変更したときのスペーサ534の厚さSxを示す図である。なお、図7では、縦軸を負荷fv,fhとし、横軸をスペーサ534の厚さSとしている。
また、グラフG11,G21、グラフG12,G22、グラフG13,G23、及びグラフG14,G24は、支持部材53の材質、形状、大きさ等を変更したときのグラフG1,G2を示している。
【0028】
ここで、グラフG11,G21の交点(S=Sx1)、グラフG12,G22の交点(S=Sx2)、グラフG13,G23の交点(S=Sx3)、グラフG14,G24の交点(S=Sx4)は、測定子2Aに対して軸方向vに所定の負荷が加えられたときの軸方向vにおけるスタイラス51の基端部の変位δvと、測定子2Aに対して直交方向hに所定の負荷が加えられたときの直交方向hにおけるスタイラス51の基端部の変位δhとが同じになる厚さを示している(図7参照)。
したがって、スペーサ534の厚さSは、支持部材53の材質、形状、大きさ等に応じて厚さSx1〜Sx4に設定される。
【0029】
図8は、スタイラス51の基端部の変位δv,δhを一定としたときの測定子2Aに対して加えられる負荷fv,fhと、スペーサ534の厚さSとの関係の変動幅を示すグラフである。
ここで、スタイラス51の基端部の変位δv,δhを一定としたときの測定子2Aに対して加えられる負荷fv,fhと、スペーサ534の厚さSとの関係は、例えば、スペーサ534の厚さSを変更しながら変位δv,δh、及び負荷fv,fhの関係を測定することで取得することができる。しかしながら、これらの関係、すなわちグラフG1,G2を厳密に取得することは困難であるので、図8に示すように、各関係は、ある程度の変動幅(図8中点線)を有して取得される。
【0030】
したがって、スペーサ534の厚さSは、厚さSx_minと、厚さSx_maxとの間で厚さSxに対する誤差を含んで設定されることになる。
なお、このような場合には、測定子2Aに加えられる負荷fの方向によって、負荷fの大きさと、変位センサ5にて検出される変位δとの関係が殆ど変化しないので、測定子2Aに加えられる負荷fの方向が異なる場合であっても負荷fの大きさと、変位センサ5にて検出される変位δとの関係が同じになるように、電子回路によって容易に調整することができる。
【0031】
このような本実施形態によれば以下の効果がある。
(1)2つの支持部材53は、スタイラス51の軸方向vに離間して配置されているので、各支持部材53の間隔を調整することができる。そして、各支持部材53の間隔を調整することによって、スタイラス51の直交方向hにおける負荷の大きさfhと、変位センサ5にて検出される基端部の変位δhとの関係を調整することができる。したがって、変位センサ5は、測定子2Aに加えられる負荷fの方向と、負荷fの大きさと、変位センサ5にて検出される変位δとの関係を容易に調整することができる。
(2)測定子2Aに加えられる負荷fの方向が異なる場合であっても負荷fの大きさと、変位センサ5にて検出される変位δとの関係が同じになるように予め調整されているので、三次元測定機1は、対象物を破損することなく測定することができる。また、変位センサ5にて検出される変位δが一定であれば、対象物にかかる負荷fも一定となるので、制御処理を簡素化することができる。
【0032】
(3)スペーサ534の厚さSを、測定子2Aに対して軸方向vに所定の負荷が加えられたときの軸方向vにおけるスタイラス51の基端部の変位δvと、測定子2Aに対して直交方向hに所定の負荷が加えられたときの直交方向hにおけるスタイラス51の基端部の変位δhとが同じになる厚さSxに設定することができる場合には、電子回路によって調整する必要もないので、変位センサ5の構成を簡素化することができる。
(4)各バネ部533は、取付部531、及び固定部532の周方向に沿った折り返し構造を有しているので、各支持部材53の間隔を調整することによって、スタイラス51の直交方向hにおける負荷fhの大きさと、変位センサ5にて検出される基端部の変位δhとの関係を調整する調整幅を大きくすることができる。
【0033】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、スペーサ534の厚さは、測定子2Aに対して軸方向vに所定の負荷が加えられたときの軸方向vにおけるスタイラス51の基端部の変位δvと、測定子2Aに対して直交方向hに所定の負荷が加えられたときの直交方向hにおけるスタイラス51の基端部の変位δhとが同じになる厚さ(S=Sx)に設定されていたが、これに限らず、任意の厚さに設定されていてもよい。要するに、各支持部材は、スタイラスの軸方向に離間して配置されていればよい。
【0034】
図9は、各支持部材におけるバネ部の他の構造を例示する図である。
前記実施形態では、各バネ部533は、断面矩形状に形成され、取付部531、及び固定部532を径方向に沿って接続するとともに、周方向に沿った折り返し構造を有していた。これに対して、各支持部材におけるバネ部は、例えば、図9に示すように、他の構造を有していてもよい。
具体的に、バネ部533Aは、図9(A)に示すように、一体的な構造を有し、取付部531、及び固定部532を接続している。
また、バネ部533Bは、図9(B)に示すように、取付部531、及び固定部532を接続するとともに、取付部531、及び固定部532の間に放射状に設けられている。
【0035】
前記実施形態では、ハウジング52は、円筒状に形成されていたが、例えば、角筒状に形成されていてもよい。要するに、ハウジングは、スタイラスを内部に収納する筒状に形成されていればよい。
前記実施形態では、変位センサ5は、測定子2Aを対象物に押し込んだ状態で対象物の表面に倣って測定子2Aを移動させることによって対象物を測定する三次元測定機1に実装されていたが、他の測定機や、工作機械などに実装されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る三次元測定機を示す全体模式図。
【図2】前記実施形態におけるプローブの全体を示す断面模式図。
【図3】前記実施形態における変位センサの要部を示す斜視図。
【図4】図2におけるA−A断面図。
【図5】前記実施形態におけるスペーサの厚さを変化させたときの測定子に対して加えられる負荷と、スタイラスの基端部の変位との関係を示すグラフ。
【図6】前記実施形態におけるスタイラスの基端部の変位を一定としたときの測定子2Aに対して加えられる負荷と、スペーサの厚さとの関係を示すグラフ。
【図7】前記実施形態における支持部材の材質、形状、大きさ等を変更したときのスペーサの厚さを示す図。
【図8】前記実施形態におけるスタイラスの基端部の変位を一定としたときの測定子に対して加えられる負荷と、スペーサの厚さとの関係の変動幅を示すグラフ。
【図9】各支持部材におけるバネ部の他の構造を例示する図。
【符号の説明】
【0037】
1…三次元測定機(測定機)
2…プローブ
2A…測定子(接触子)
5…変位センサ
51…スタイラス
52…ハウジング
53…支持部材
531…取付部
532…固定部
533,533A,533B…バネ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に接触する接触子を先端部に有するスタイラスと、前記スタイラスを内部に収納する筒状のハウジングと、前記スタイラス、及び前記ハウジングの間に設けられ、前記スタイラスを揺動自在に支持する支持部材とを備え、前記スタイラスにおける基端部の変位を検出することで前記接触子の変位を検出する接触式の変位センサであって、
2つの前記支持部材を備え、
前記各支持部材は、
前記スタイラスが取り付けられる取付部と、
前記ハウジングの内部に固定される固定部と、
前記取付部、及び前記固定部を接続するバネ部とを備え、
前記スタイラスの軸方向に離間して配置されていることを特徴とする変位センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の変位センサにおいて、
前記各支持部材は、
前記接触子に対して前記軸方向に所定の負荷が加えられたときの前記軸方向における前記基端部の変位と、前記接触子に対して前記軸方向と直交する方向に前記所定の負荷が加えられたときの前記直交方向における前記基端部の変位とが同じになる間隔で前記軸方向に離間して配置されていることを特徴とする変位センサ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の変位センサにおいて、
前記各支持部材は、複数の前記バネ部を備え、
前記取付部、及び前記固定部は、円環状に形成され、
前記各バネ部は、断面矩形状に形成され、前記取付部、及び前記固定部を径方向に沿って接続するとともに、周方向に沿った折り返し構造を有していることを特徴とする変位センサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の変位センサを備え、前記接触子を対象物に接触させることで前記対象物を測定することを特徴とする測定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−160002(P2010−160002A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1272(P2009−1272)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】