説明

変位測定装置

【課題】第2被測定部の変位が時間軸に対して急激に変化するような場合であっても第1被測定部に対する第2被測定部の相対変位を正確に測定することが可能な変位測定装置を提供する。
【解決手段】外軸(第1被測定部)11に固定されるセンサ本体部31と、このセンサ本体部31に対して出退可能な触針部32と、この触針部32を内軸(第2被測定部)12に従動させる従動手段とを備え、センサ本体部31に対する触針部32の出退量を検出することにより外軸11に対する内軸12の相対的な変位を測定する変位測定装置で、触針部32をセンサ本体部31に対して弾性付勢することなく出退自在に保持し、内軸12側に設けられた磁石(保持部)35に、触針部32側に設けられた鉄製の接触子(被保持部)42を吸着させることにより触針部32を内軸12に従動させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1被測定部に対する第2被測定部の相対変位を測定するための変位測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1被測定部に対する第2被測定部の相対変位を測定する変位測定装置には、従来は特許文献1に記載されているようなダイヤルゲージ等の変位センサが一般に用いられていた。この種の変位センサは、第1被測定部に固定されるセンサ本体部と、このセンサ本体部に対して出退可能な触針部と、この触針部をセンサ本体部に対して軸方向外向きに弾性付勢して第2被測定部に圧着させることにより触針部を第2被測定部に従動させるバネ部材とを備え、センサ本体部に対する触針部の出退量を検出することにより、第1被測定部に対する第2被測定部の相対変位を測定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−300319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のダイヤルゲージ等の変位センサは、上述したように、バネ部材により触針部を第2被測定部に圧着させることにより触針部を第2被測定部に従動させるようになっているため、例えば第1被測定部に対して第2被測定部が高速で振動する場合など、第2被測定部の変位が時間軸に対して急激に変化するような場合には、触針部を第2被測定部の動作に正確に追随させることができず、正確な測定結果を得られない場合があった。また、例えば第2被測定部に所定の駆動力をかけて変位を測定する場合、バネ力が駆動力の一部となって測定結果に悪影響を与えることも考えられる。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、第1被測定部に対して第2被測定部が高速で振動する場合など、第2被測定部の変位が時間軸に対して急激に変化するような場合であっても、触針部を第2被測定部の動作に正確に追随させて第1被測定部に対する第2被測定部の相対変位を正確に測定することが可能な変位測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1被測定部に固定されるセンサ本体部と、該センサ本体部に対して出退可能な触針部と、該触針部を第2被測定部に従動させる従動手段とを備え、前記センサ本体部に対する前記触針部の出退量を検出することにより前記第1被測定部に対する前記第2被測定部の相対的な変位を測定する変位測定装置において、前記触針部は前記センサ本体部に対して弾性付勢されることなく出退自在に保持されており、前記従動手段は、前記第2被測定部側又は前記触針部側に設けられた保持部と、前記触針部側又は前記第2被測定部側に設けられ且つ前記保持部により保持される被保持部とで構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第2被測定部の変位が時間軸に対して急激に変化するような場合であっても、触針部を第2被測定部の動作に正確に追随させることができ、また触針部を弾性付勢していないためにその力が第2被測定部への駆動力の一部となって測定結果に悪影響を与えることもなく、第1被測定部に対する第2被測定部の相対変位を正確に測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態を示す変位測定装置の全体側面図及び正面図である。
【図2】被測定物の一例としての伸縮自在シャフトの一部断面図である。
【図3】変位センサの一部断面図である。
【図4】触針部の先端側の分解断面図である。
【図5】被測定物に対する変位センサと磁石の装着状態を示す斜視図である。
【図6】被測定物に対する変位センサと磁石の装着状態を示す平面断面図である。
【図7】本実施形態の変位測定装置による変位測定結果(a)及び従来の変位測定装置による変位測定結果(b)の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。図1〜図7は、本発明の一実施形態を例示している。本実施形態に係る変位測定装置1は、伸縮自在シャフト等の被測定物2の捩り方向の変位(ガタ)を測定するためのもので、図1に示すように、被測定物2を保持する被測定物保持部3、この被測定物保持部3により保持された被測定物2に対して所定のパターンでトルクを作用させる駆動部4、被測定物2の捩り方向の変位を測定する変位センサ5、駆動部4の駆動制御処理や変位センサ5の測定値に基づくポスト処理等の各種制御処理を行う制御部6、この制御部6に対して各種設定入力等を行うキーボード、操作盤等の操作入力部7、制御部6から出力される測定結果等の各種情報を表示する表示部8等を備え、装置台9上に搭載されている。
【0010】
被測定物2の一例である伸縮自在シャフトは、図2に示すように、円筒状に形成された外軸(第1被測定部)11と、同じく円筒状に形成され且つ外軸11内に嵌合する内軸 (第2被測定部)12と、外軸11及び内軸12の端部に夫々設けられた一対の自在継手13,14とを備えている。外軸11の内周面側及び内軸12の外周面側には、夫々スプライン歯11a,12aが多数形成されており、これらが互いに噛み合うことにより、外軸11と内軸12とは軸方向摺動自在且つトルク伝達可能に連結されている。
【0011】
被測定物保持部3は、例えば上下に配置された一対の駆動側チャック15及び固定側チャック16と、被測定物2の大きさ等に応じて駆動側チャック15と固定側チャック16との少なくとも一方、例えば固定側チャック16の位置を調整する位置調整手段17とを備えている。駆動側チャック15は、被測定物2の上端側を駆動部4からの駆動力を伝達可能な状態で保持するもので、例えば装置台9上に立設された支持プレート18の前面側に駆動部4等を介して下向きに支持されており、本実施形態ではこの駆動側チャック15に被測定物2の内軸12側の自在継手14(図2)が固定されている。
【0012】
固定側チャック16は、被測定物2の下端側を回転不能に保持するもので、例えば支持プレート18の前面側に昇降可能に支持された昇降台19上に上向きに固定されており、本実施形態ではこの固定側チャック16に被測定物2の外軸11側の自在継手13が固定されている。なお、昇降台19は、送りねじ機構等よりなる位置調整手段17を介して支持プレート18上に支持されており、例えば手動でハンドル20を操作することによりその高さ位置を調整可能となっている。
【0013】
駆動部4は、例えば被測定物保持部3の上部側に配置されており、支持プレート18の前側に駆動軸21aを下向きにした状態で装着されたモータ21、このモータ21と駆動側チャック15との間に上下方向に配置された伝達軸22、例えば伝達軸22の回転変位を測定するエンコーダ23、例えば伝達軸22におけるトルクを測定するトルクセンサ24等を備えている。
【0014】
伝達軸22は、その上端側がモータ21の駆動軸21aに対して例えばカップリング25を介して一体に連結され、下端側が駆動側チャック15に固定されており、モータ21の正逆両方向の駆動力(トルク)が、この伝達軸22、駆動側チャック15等を介して被測定物2に伝達されるようになっている。なお、カップリング25は、過負荷時に駆動軸21aと伝達軸22との間のトルク伝達を切断するトルクリミッタとしての機能を有している。
【0015】
モータ21は、被測定物2に例えば所定値のトルクを正逆両方向に所定周期で繰り返し作用させるように、例えばエンコーダ23、トルクセンサ24等の測定値に基づく制御部6の制御により正逆両方向に駆動されるようになっている。
【0016】
変位センサ5は、例えば一般的な差動トランス方式を採用した接触式変位センサで、図3等に示すように、センサ本体部31と、このセンサ本体部31の軸方向一端側に出退自在に装着された触針部32とを備え、図5等に示すように、センサ本体部31がセンサホルダ33により被測定物2の外軸11に固定され、触針部32は、磁石ホルダ34により被測定物2の内軸12に固定された磁石35に吸着されて内軸12の捩り方向の動作に従動するようになっている。
【0017】
センサ本体部31は、図3に示すように例えば略円筒状の筐体36と、この筐体36の内面に沿って配置される1次コイル37a及びその軸方向両側に配置される一対の2次コイル37bと、筐体36内に設けられ且つ触針部32を軸方向の1又は複数箇所で軸方向褶動自在に保持する軸受部38とを備えている。また、触針部32は、可動鉄心39を備えたシャフト部40と、このシャフト部40の先端側に絶縁ピン41を介して装着された接触子42とを備え、シャフト部40の後端側がセンサ本体部31内に挿入され、軸受部38を介して軸方向出退自在に保持されている。
【0018】
センサ本体部31側の1次コイル37aを交流で励磁すると、触針部32の出退動作に伴う可動鉄心39の移動により、その可動鉄心39と2つの2次コイル37bとの位置関係に応じて2次コイル37bに交流電圧が発生するため、その電圧に基づいて触針部32の出退量、即ち変位を測定することができる。なお、本実施形態の変位センサ5は、センサ本体部31に対して触針部32を例えば突出方向に弾性付勢するバネ部材等は備えておらず、触針部32はセンサ本体部31に対して出退方向に移動自在である。
【0019】
接触子42は、例えば鉄製(強磁性体の一例)で、図4に示すように先端側が例えば略半球状に形成され、後端側に例えば着脱用の雄ねじ部43が設けられている。絶縁ピン41は、ナイロンその他の非磁性体材料により例えば円柱状に形成されており、シャフト部40と接触子42との間に、それらシャフト部40と接触子42とが互いに接触しないように着脱自在に装着されている。
【0020】
即ちこの絶縁ピン41は、図4に示すようにその両端側に例えばタップ穴にヘリサートが挿入されることにより雌ねじ部44,45が互いに貫通しないように形成され、更に後端側の雌ねじ部44にはスタッドボルト46が装着されて雄ねじ部47が形成されており、この後端側の雄ねじ部47がシャフト部40の先端側に形成された雌ねじ部48にねじ込まれることによりシャフト部40に着脱自在に固定され、また先端側の雌ねじ部45に接触子42側の雄ねじ部43がねじ込まれることにより接触子42を着脱自在に保持している。
【0021】
この変位センサ5を外軸11に固定するセンサホルダ33は、図5及び図6に示すように、例えば互いに平行な第1,第2アーム部51a,51bの一端側が連結部51cにより一体に連結されて略コの字型に形成されたクランプ本体51と、第1アーム部51aの内面側に固定され且つ第2アーム部51bとの対向面側に例えばV溝52aが形成されたクランプブロック52と、先端部をクランプブロック52に対向させるように第2アーム部51bに螺着されたクランプボルト53と、例えば第1アーム部51aの先端側に設けられ且つ変位センサ5のセンサ本体部31を着脱自在に保持するセンサ保持部54とを備え、クランプブロック52とクランプボルト53とで外軸11を挟持することにより外軸11に着脱自在に固定されている。変位センサ5は、このセンサホルダ33により、図6に示すように外軸11の軸心に垂直な面内で且つセンサ軸心が外軸11の軸心と交差しない状態で保持される。
【0022】
また、磁石35を内軸12に固定する磁石ホルダ34は、図5に示すように、例えば互いに平行な第1,第2アーム部55a,55bの一端側が連結部55cにより一体に連結されて略コの字型に形成されたクランプ本体55と、第1アーム部55aの内面側に固定され且つ第2アーム部55bとの対向面側に例えばV溝56aが形成されたクランプブロック56と、先端部をクランプブロック56に対向させるように第2アーム部55bに螺着されたクランプボルト57と、例えば第1アーム部55aに固定された磁石保持アーム58とを備え、クランプブロック56とクランプボルト57とで内軸12を挟持することにより内軸12に着脱自在に固定されている。磁石保持アーム58は、例えば第1アーム部55aから内軸12に略平行に突設されており、その先端側に磁石35が装着されている。
【0023】
これらセンサホルダ33と磁石ホルダ34とは、図6に示すように変位センサ5の触針部32がその可動範囲の例えば略中間にある状態で接触子42が磁石35に接触(吸着)するように、互いの装着高さ及び角度が調整される。これにより、変位センサ5のセンサ本体部31がセンサホルダ33を介して外軸11に固定され、変位センサ5の触針部32は、磁石ホルダ34により内軸12に固定された磁石35に吸着されて内軸12に従動するため、変位センサ5により外軸11に対する内軸12の捩り方向の相対変位を測定することができる。
【0024】
また、触針部32は、可動鉄心39が設けられたシャフト部40と鉄製の接触子42との間に非磁性体よりなる絶縁ピン41が配置されているため、変位センサ5が磁気を利用する差動トランス方式を採用しているにも拘わらず、磁石35の磁気が測定結果に及ぼす悪影響を排除できる。更に、接触子42の先端部は略半球状に形成されており、図6に示すように磁石35の端面35aに対して例えば略一点で接触するようになっているため、外軸11に対して内軸12が捩り方向に相対的に変位することにより、磁石35の端面35aと触針部32の軸心とのなす角度が微妙に変化するにも拘わらず、その影響を受けることなく常に正確な変位測定が可能である。
【0025】
なお、このように外軸11に対して内軸12が捩り方向に相対的に変位したとき、センサ本体部31に対する触針部32の相対的な軌跡は実際には円弧状になるが、変位センサ5により得られる測定値は直線変位となる。しかしながらそれらの差は僅かであるため、例えば被測定物2の捩り方向のガタの角度を測定する際には、「円弧の長さ=直線の長さ」とみなし、変位センサ5による測定値(直線変位)と、被測定物2と変位センサ5との軸心間距離とに基づいて三角関数を用いて算出することができる。
【0026】
図7(a)は、本実施形態の変位測定装置1により、被測定物2に対して正逆一定範囲のトルクを一定周期で作用させた場合の、外軸11に対する内軸12の捩り方向の変位測定結果を示しており、横軸が変位センサ5による測定変位、縦軸がトルク入力値となっている。また、図7(b)は、図7(a)に対して、変位センサのみをバネ部材が内蔵された従来の変位センサに変更した場合の変位測定結果を示している。この図7(b)で用いた従来の変位センサは、触針部がバネ部材により突出方向に弾性付勢されており、そのバネ力により触針部を内軸12側の所定部位に圧着させることにより触針部を内軸12に従動させているものとする。
【0027】
図7(a),(b)共に、波形は図中に示す矢印の方向に描かれるが、従来の変位センサを用いた図7(b)では、トルクの方向が反転した直後の波形に、縦軸と平行な部分、即ちトルクが変動しているにも拘わらず測定変位が変動していない部分(P及びQ)が現れている。これは、図7(b)の場合には触針部がバネ部材によって内軸12側に圧着されているため、その測定力(バネ部材による付勢力、センサ本体部と触針部との間の摩擦力等)が大きく、内軸12側の変位の急変に触針部が追随できていないためであると考えられる。
【0028】
なお、変位センサの測定力は、静止状態から動き出す瞬間に最も大きくなるため(最大静止摩擦力>動摩擦力)、測定力が0でない従来の変位センサを用いた場合には、図7 (b)のP,Q部のような縦軸に平行な部分は必ず現れる。従って、従来の変位センサを用いた測定では、変位が急変したような測定結果が得られた場合、それが実際の変位によるものなのか、センサの測定力の影響によるものなのかを判別することができない。
【0029】
それに対して本実施形態の変位測定装置1による図7(a)では、トルクの方向が反転した直後の波形についても、縦軸と平行な部分は現れておらず、トルクの変動に応じて測定変位が常に変化している。これは、本実施形態の変位測定装置1では触針部を磁石で内軸12側に吸着させて従動させていることにより、内軸12側の変位の急変にも触針部が的確に追随できているためであると考えられる。また、本実施形態の変位センサ5は差動トランス式であるため、触針部32とセンサ本体部31との間に発生する摩擦力は極小であり、それによって触針部32の追随性がより向上している。このように、本発明に係る変位センサでは測定力による測定結果への悪影響が排除されるため、実際に変位が急変するような測定についても正確に行うことが可能である。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の変位測定装置1では、変位センサ5の触針部32がセンサ本体部31に対して弾性付勢されることなく出退自在に保持されており、内軸(第2被測定部)12側に設けられた磁石(保持部)35と、触針部32側に設けられ且つ磁石(保持部)35によって吸着保持される鉄製の接触子42とで構成される従動手段により触針部32を内軸(第2被測定部)12に従動させているため、内軸12の変位が時間軸に対して急激に変化するような場合であっても、触針部32を内軸12の動作に正確に追随させて外軸11に対する内軸12の相対変位を正確に測定することが可能である。
【0031】
また、触針部32を弾性付勢するバネ部材を設けていないため、そのバネ力が入力トルクの一部となって測定結果に悪影響を及ぼすこともない。しかも、従来の一般的な変位センサからバネ部材を除去すると共に接触子42を鉄製とし、その接触子42が当接する相手方を磁石で構成するだけでよいため、コストを低く抑えることができ、また装置が大型化することもないという利点もある。
【0032】
しかも、変位センサ5の触針部32と内軸(第2被測定部)12側とを磁石で接続しているため、測定時の作業性が向上すると共に、変位センサ5の破損等を防止できる。即ち、ワーク取り替え時に変位センサ5の触針部32を第2被測定部から容易に切り離すことができるため、測定間の作業性が向上し、サイクルタイムの減少が期待されると共に、被測定物の着脱作業中に変位センサ5の触針部32に異常な負荷が作用することがなく、変位センサ5の破損等を防止できる。
【0033】
また、鉄製の接触子42は、非磁性体よりなる絶縁ピン41を介して触針部32の先端側に固定されているため、磁気を利用する差動トランス方式の変位センサ5を採用しているにも拘わらず、磁石35の磁気が測定結果に及ぼす悪影響を排除できる。更に、接触子42の先端部は略半球状に形成されており、磁石35の端面35aに対して例えば略一点で接触するようになっているため、外軸11に対して内軸12が捩り方向に相対的に変位することにより、磁石35の端面35aと触針部32の軸心とのなす角度が微妙に変化するにも拘わらず、その影響を受けることなく常に正確な変位測定が可能である。
【0034】
以上、本発明の実施形態について例示したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、実施形態では伸縮自在シャフトを被測定物とし、その外軸(第1被測定部)11に対する内軸(第2被測定部)12の捩り方向の相対変位を測定する例を示したが、捩り方向以外の相対変位を測定対象としてもよい。例えば、実施形態と同じ伸縮自在シャフトを被測定物とし、その外軸(第1被測定部)11に対する内軸(第2被測定部)12の伸縮方向の相対変位を測定対象としてもよい。
【0035】
本発明に係る変位測定装置では、変位センサ5の設置方向に拘わらず触針部32を第2被測定部の動きに追随させることができるため、例えば触針部32が上向きとなるように配置する等、被測定物の種類等に応じて変位センサ5を任意の向きに配置することが可能である。また、本発明の変位測定装置は触針部の追随性が良いため、変位測定全般に対応可能であり、常時摺動部や振動部の他、スティックスリップの測定、物体の動き出し時の変位測定や動き出しのタイミングの測定も可能である。また、低荷重で変位するワークの変位測定にも有効である。
【0036】
変位センサは差動トランス式のものに限らず、磁化したスケールとその磁気を感知するスライドセンサー部とを有するマグネスケールや、エンコーダ、干渉計等を用いたものを採用してもよい。それらのうち、例えばマグネスケールによる変位センサは、差動トランス式の変位センサと同様に触針部とセンサ本体部との間に発生する摩擦力が非常に小さいため、触針部の追随性が良く理想的である。
【0037】
触針部を第2被測定部に従動させる従動手段として、実施形態では内軸(第2被測定部)12側に磁石35を固定し、触針部32側の接触子42を鉄製(強磁性体)とした例を示したが、例えば触針部側の接触子を磁石とし、第2被測定部側に強磁性体よりなる当接板を固定してもよい。もちろん、強磁性体は鉄に限られるものではない。また、接触子42とシャフト部40との間に配置する非磁性体についてもナイロンに限られるものではない。なお、磁気の影響を受けない方式の変位センサを用いる場合には、接触子とシャフト部との間に非磁性体を介在させる必要はない。
【0038】
また、実施形態では接触子42の先端部を略半球状に形成し、磁石35の端面35aに対して例えば略一点で接触するように構成したが、接触子42の先端部を尖形としてもよい。また、磁石35の先端部を略半球状又は尖形とし、接触子42側の端面を平面に形成してもよいし、磁石35と接触子42の両方を略半球状又は尖形としてもよい。
【0039】
また、磁石と強磁性体との組み合わせと同じく、触針部と第2被測定部との一方側に設けられた保持部により他方側に設けられた被保持部を吸着させる従動手段としては、静電気力を利用するもの、バキュームを利用するもの等が考えられ、また吸着と類似の方法として粘着物を利用するもの等が考えられる。但し、静電気力を利用するものについてはノイズの影響が懸念され、バキュームを利用するものは真空回路を設ける必要からコスト高となり、また粘着物を利用するものについては粘着力が一定でないなどの問題がある。また、吸着以外の方法を利用する従動手段として、コレットチャック、3つ爪チャック、ダイヤフラムチャック等の各種チャック装置を用いてもよい。なお、コレットチャック等のように、保持部として磁石を用いないものについては、接触子とシャフト部との間に非磁性体を配置する必要はない。
【0040】
変位センサのセンサ本体部を第1被測定部に固定するホルダ、及び強磁性体等の被保持部又は磁石等の保持部を第2被測定部に固定するホルダについては、被測定物の種類等に応じて適切な構成を採用すればよい。
【符号の説明】
【0041】
1 変位測定装置
11 外軸(第1被測定部)
12 内軸(第2被測定部)
31 センサ本体部
32 触針部
35 磁石(保持部)
42 接触子(強磁性体,被保持部)
41 絶縁ピン(非磁性体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被測定部に固定されるセンサ本体部と、該センサ本体部に対して出退可能な触針部と、該触針部を第2被測定部に従動させる従動手段とを備え、前記センサ本体部に対する前記触針部の出退量を検出することにより前記第1被測定部に対する前記第2被測定部の相対的な変位を測定する変位測定装置において、前記触針部は前記センサ本体部に対して弾性付勢されることなく出退自在に保持されており、前記従動手段は、前記第2被測定部側又は前記触針部側に設けられた保持部と、前記触針部側又は前記第2被測定部側に設けられ且つ前記保持部により保持される被保持部とで構成されていることを特徴とする変位測定装置。
【請求項2】
前記保持部は前記被保持部を吸着により保持するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。
【請求項3】
前記保持部と前記被保持部とが磁石とこの磁石に吸着される強磁性体とで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の変位測定装置。
【請求項4】
前記磁石又は前記強磁性体は、非磁性体を介して前記触針部の先端側に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の変位測定装置。
【請求項5】
前記磁石と前記強磁性体とが略一点で接触するようにそれらの少なくとも一方の先端側が尖形又は略球面に形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の変位測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−133317(P2011−133317A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292466(P2009−292466)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000167222)光洋機械工業株式会社 (85)
【Fターム(参考)】