変位量測定装置
【課題】簡素で安価な装置でありながら、測定の信頼性を向上し得て、しかも実際に揺動が発生するまでメンテナンスを不要とすることができる変位量測定装置を提供する。
【解決手段】本発明は、基準構造物としての建物の壁面11と壁面11に設けられた対象構造物としての配管12とが外力の作用によって非同期に揺動した場合に、壁面11に対する配管12の相対変位量を測定するために、壁面11に対する変位が拘束された固定体13と、固定体13に支持されて配管12の被測定部15の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体14と、を備える。
【解決手段】本発明は、基準構造物としての建物の壁面11と壁面11に設けられた対象構造物としての配管12とが外力の作用によって非同期に揺動した場合に、壁面11に対する配管12の相対変位量を測定するために、壁面11に対する変位が拘束された固定体13と、固定体13に支持されて配管12の被測定部15の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体14と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準構造物に支持されると共に、この基準構造物とは非同期で外力によって変位する対象構造物の変位量を記録する変位量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基準構造物(建物の基礎等)が地震や強風等の外力を受けた場合、この基準構造物に設置した対象構造物(配管や柱状部材等)が変形して損傷することがあるが、外力が作用した後には変形が見掛け上は元に戻っていることが多い。このため、対象構造物の変形状態を推定して損傷の度合いを評価することが重要となる。
【0003】
しかしながら、外力が大きい場合には、基準構造物と対象構造物とが非同期で揺動して相対的に変位する。このため、対象構造物の変形状態の推定が妥当であるか否かを判断するには、基準構造物と対象構造物との相対変位量の最大値と方向との測定結果と、推定した相対変位量の最大値と方向とを比較検討することが有効となる。
【0004】
これに関連する技術として、従来においては、最大変位量を歪センサ等の電気的センサによって測定する変位量測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−186308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した歪センサ等の電気的なセンサを用いた変位量測定装置にあっては、装置全体が複雑で高価であるうえ、地震発生時の停電や給電不良が発生すると測定の信頼性が損なわれてしまうばかりでなく、稼動状態の確認(テスト)や部品交換等のメンテナンスが必要となるなど、その維持管理が大変であるといった問題が生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、簡素で安価な装置でありながら、測定の信頼性を向上し得て、しかも実際に揺動が発生するまでメンテナンスを不要とすることができる変位量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の変位量測定装置は、基準構造物と前記基準構造物に設けられた対象構造物とが外力の作用によって非同期に揺動した場合に、前記基準構造物に対する前記対象構造物の相対変位量を測定する変位量測定装置であって、前記基準構造物に対する変位が拘束された固定体と、前記固定体に支持されて前記対象構造物の被測定部の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の変位量測定装置によれば、簡素で安価な装置でありながら、測定の信頼性を向上し得て、しかも実際に揺動が発生するまでメンテナンスを不要とすることができる。
なお、復元不能な変形には、破損・破裂・穿孔・構成要素の一部の変位等が考えられる。
【0010】
本発明の変位量測定装置は、前記被測定部は、前記対象構造物に固定されて前記記録体に向けて突出する一つ以上の長尺状の棒状体であることを特徴とする。
【0011】
本発明の変位量測定装置によれば、一つ以上の長尺状の棒状体によって記録体を変形させることができ、基準構造物と対象構造物との配置関係に容易に対応することができる。
【0012】
本発明の変位量測定装置は、前記被測定部は、前記対象構造物の周囲に配置されて前記対象構造物の変位量と変位方向とに応じて係合する一つ以上の長尺状の棒状体であることを特徴とする。
【0013】
本発明の変位量測定装置によれば、対象構造物の周囲に配置された一つ以上の長尺状の棒状体により記録体を変形させることにより、対象構造物の変位量と変位方向とに容易に対応することができる。
【0014】
本発明の変位量測定装置は、前記記録体は、一つ以上の前記被測定部と接触することで変形する一つ以上の立体によって前記被測定部の三次元方向の最大変位量を記録することを特徴とする。
【0015】
本発明の変位量測定装置によれば、少ない数の記録体によって三次元方向の最大変位量を記録することができる。
【0016】
本発明の変位量測定装置は、前記記録体は、前記対象構造物の前後・左右・上下の何れか一方向に延在された前記被測定部の両端と独立して接触することで変形する一対の立体によって前記被測定部の三次元方向の最大変位量を記録することを特徴とする。
【0017】
本発明の変位量測定装置によれば、一方の記録体から離間する方向の対象構造物の変位を他方の記録体で記録することができ、より厳密な変位量の記録を可能とすることができる。
【0018】
本発明の変位量測定装置は、前記記録体は、前記対象構造物の前後・左右・上下の異なる二方向以上に延在された前記被測定部と独立して接触する二つ以上の平面体によって前記被測定部の三次元方向の最大変位量を記録することを特徴とする。
【0019】
本発明の変位量測定装置によれば、二つ以上の平面体によって三次元方向の最大変位量を記録することができ、材料コストを大幅に削減することができる。
【0020】
本発明の変位量測定装置は、前記固定体は、前記基準構造物に固定された連結体と、該連結体に固定されて少なくとも前記被測定部と対向する面を前面として開口する筐体形状の支持体と、を備え、前記記録体は、前記支持体に離間状態で順次平行に対向配置された複数の平面体からなる立体であることを特徴とする。
【0021】
本発明の変位量測定装置によれば、複数の平面体で立体とされた記録体により三次元方向の最大変位量を記録することができる。
【0022】
本発明の変位量測定装置は、前記固定体は、前記基準構造物に固定された連結体と、該連結体に固定されて少なくとも前記被測定部と対向する面を前面として開口する筐体形状の支持体と、を備え、前記記録体は、前記支持体の内部に設けられた塑性変形可能な材料からなる立体であることを特徴とする。
【0023】
本発明の変位量測定装置によれば、三次元方向のより厳密な最大変位量を記録体に記録することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の変位量測定装置は、簡素で安価な装置でありながら、測定の信頼性を向上し得て、しかも実際に揺動が発生するまでメンテナンスを不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態1を示し、(A)は要部の斜視図、(B)は変形前の記録体の断面図、(C)は変形中の記録体の断面図、(D)は変形後の記録体の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態1の変形例1を示す要部の縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態1の変形例2を示す要部の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態2を示し、(A)は要部の斜視図、(B)は要部の縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態2を示し、(A)は記録体変形前における記録体配列方向に沿う要部の断面図、(B)は記録体変形前における記録体配列方向と直交する方向に沿う要部の断面図、(C)は記録体変形状態における記録体配列方向に沿う要部の断面図、(D)は記録体変形状態における記録体配列方向と直交する方向に沿う要部の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態2を示し、(A)は固定体と被測定部との関係を示す要部の拡大斜視図、(B)は記録体変形後の固定体と被測定部との関係を示す要部の断面図、(C)は記録体変形後の固定体と被測定部との関係を示す要部の正面図である。
【図7】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態3を示し、(A)は要部の斜視図、(B)は要部の縦断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態3を示し、(A)は記録体変形後における要部の断面図、(B)は記録体変形後の固定体と被測定部との関係を示す要部の正面図である。
【図9】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態4を示し、(A)は要部の斜視図、(B)は記録体の正面図である。
【図10】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態5を示し、(A)は要部の斜視図、(B)は記録体の正面図、(C)は記録体の変形例の斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態6を示し、(A)は要部の縦断面図、(B)は要部の平断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態7を示し、(A)は地震発生前の要部の縦断面図、(B)は地震発生後の要部の平断面図である。
【図13】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態7の変形例を示し、(A)は地震発生前の要部の縦断面図、(B)は要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の一実施形態に係る変位量測定装置について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施例は本発明の変位量測定装置における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下に示す実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態1を示し、図1(A)は要部の斜視図、図1(B)は変形前の記録体の断面図、図1(C)は変形中の記録体の断面図、図1(D)は変形後の記録体の断面図である。
【0028】
図1において、本発明の変位量測定装置10は、基準構造物としての壁面11に設けられた対象構造物としての配管12との関係において、壁面11と配管12とが外力の作用によって非同期で揺動した場合に壁面11に対する配管12の相対変位量を測定するもので、壁面11に対する変位が拘束された固定体13と、固定体13に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体14と、を備えている。また、配管12には、記録体14と接触して配管12の変位に同期して変位する被測定部15が設けられている。
【0029】
尚、壁面11と配管12とは、本実施の形態における基準構造物並びに対象構造物として機能しているが、基準構造物と対象構造物とはこれらに限定されるものではなく、例えば、基礎(床面)とその基礎上に設置(又は載置)されたもの等、外力による変位が比較的小さい基準構造物に支持されて同じ外力によって基準構造物とは非同期で変位する対象構造物全般に適用することができる。
【0030】
また、配管12は、支持金具12Aを介して壁面11に支持されている。この際、支持金具12Aは、配管12の適宜複数個所に設けられて配管12を支持しているが、この支持金具12Aの存在と配管12が長尺な構造体であることから、同じ外力を受けた場合であっても壁面11の変位よりも配管12の変位は非同期で大きくなる。
【0031】
固定体13は、基端が壁面11に固定された連結体としての連結ブラケット13Aと、各連結ブラケット13Aの先端に固定されて配管12に対向する前面に開口する支持体としての筐体13Bと、を備えている。
【0032】
記録体14は、筐体13Bに設けられており、本実施の形態においては、最前に配置されたもので筐体13Bの前面開口を閉成すると共に奥行き方向に所定間隔(一定間隔)を存して順次平行に配列され、その全体で実質的な立体状に構成されている。また、記録体14には、例えば、薄い金属箔(アルミホイル等)や紙材(障子紙等)等のように、経年劣化が少なく、破れ易い材質のシート状物を用いるのが好ましい。尚、記録体14は、被測定部と接触して外力を直接受けた部分のみが破れるように変形するもので、その厚さ等で調整するのが好ましいが、経年劣化が少なく、破れ易い材質のシート状物であれば、その材質や厚さ等は特に限定されるものではない。
【0033】
被測定部15は、配管12の変位に同期するように配管12に固定されており、本実施の形態においては、配管12に固定された環状の支持ブラケット15Aと、支持ブラケット15Aから最前の記録体14の中心付近に向って突出する長尺な棒状体15Bと、を備えている。また、棒状体15Bの先端は、図1(B)に示すように、最前の記録体14と常時は非接触であり、特に、棒状体15Bの軸線方向に沿うように配管12が軸線方向と直交する左右方向に変位すると、図1(C)に示すように、その変位量に応じて最前の記録体14から筐体13Bの奥行き方向に順次突き破り、配管12の変位が終了すると、図1(D)に示すように、元の位置へと復帰する。
【0034】
上記の構成において、外力としての地震が発生した場合、壁面11が変位すると共に、配管12が壁面11とは非同期で変位するため、壁面11と配管12との間に相対変位が生じる。
【0035】
この相対変位は、棒状体15Bの軸線方向に沿う変位の大きさに応じた枚数だけ記録体14を突き破って変形(穿孔)させることで記録する。
【0036】
従って、地震後に記録体14の変形枚数を確認すれば、配管12がどれだけ変位したかを記録体14の変形枚数(記録状態)から確認することができる。
【0037】
これにより、記録体14の変形枚数によって、記録体14のシート状物の配列方向における配管12の最大変位量を確認することができる。
【0038】
また、地震発生に伴って記録体14が変形するが、例えば、記録体14を新たなものと交換(又は、筐体13Bを交換若しくは固定体13を交換)することにより、新たな地震発生による対応を容易且つ迅速に、しかも安価に行うことができる。
【0039】
このように、電気的なセンサ部材等を用いることなく、容易に変位量を測定することができ、特に、その変位方向と最大変位量を安定して記録することができる。
【0040】
この際、例えば、棒状体15Bの先端を先細り(針状)とすれば、例えば、紙等を記録体14に用いた場合に、その外力によって記録体14を余分に破損させてしまうことを抑制することができ、変形範囲の厳密化に寄与することができる。
【0041】
また、図2に示すように、配管12を挟んで互いに離間する方向に一対の棒状体15Bを設け、各棒状体15Bに対して固定体13を配置しても良い。
この構成によれば、一方向(棒状体15Bの延在方向)における両方向の最大変位量を記録することができる。
【0042】
さらに、図3に示すように、配管12の上下左右前後に相当する三方に向けて棒状体15Bを突出させると共に、各棒状体15Bに対して固定体13を配置しても良い。
この構成によれば、複数方向の最大変位量を三次元で計測することができる。
【0043】
(実施の形態2)
図4は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態2を示し、図4(A)は要部の斜視図、図4(B)は要部の縦断面図、図5は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態2を示し、図5(A)は記録体変形前における記録体配列方向に沿う要部の断面図、図5(B)は記録体変形前における記録体配列方向と直交する方向に沿う要部の断面図、図5(C)は記録体変形状態における記録体配列方向に沿う要部の断面図、図5(D)は記録体変形状態における記録体配列方向と直交する方向に沿う要部の断面図、図6は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態2を示し、図6(A)は固定体と被測定部との関係を示す要部の拡大斜視図、図6(B)は記録体変形後の固定体と被測定部との関係を示す要部の断面図、図6(C)は記録体変形後の固定体と被測定部との関係を示す要部の正面図である。尚、図4乃至図6において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
図4において、変位量測定装置20は、壁面11に対する変位が拘束された固定体23と、固定体23に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体24と、を備えている。また、配管12には、記録体24と接触して配管12の変位に同期して変位する被測定部25が設けられている。
【0045】
固定体23は、基端が壁面11に固定された連結体としての上下一対の連結ブラケット23Aと、各連結ブラケット23Aの先端に固定されて互いに対向する上下面に開口する支持体としての筐体23Bと、を備えている。
【0046】
記録体24は、本実施の形態においては、前面開口に隙間ができるように各筐体23Bの奥行き方向(上下方向)に面が沿って所定間隔(一定間隔)を存して平行に配置された複数の平面体が用いられており、実質的な立体状を構成している。
【0047】
被測定部25は、配管12の変位に同期するように固定されており、本実施の形態においては、上下一対の筐体23Bの中間に先端が位置するように壁面11に向って突出する板状の支持ブラケット25Aと、支持ブラケット25Aの先端から上下方向に延在する一対の棒状体25Bと、を備えている。また、棒状体25Bの先端は、筐体23Bの開口端の中心付近で内部に臨んでいる。この際、棒状体25Bの先端は、複数の記録体24の間(前面開口の隙間)に位置するのが好ましい。
【0048】
上記の構成において、外力としての地震が発生すると、壁面11が変位すると共に、配管12が壁面11とは非同期で変位し、棒状体25Bと記録体24との間に相対変位が生じる。
【0049】
この相対変位が生じると、図5に示すように、相対変位量及び変位方向に応じて棒状体25Bが記録体24としての薄い金属箔を破り、棒状体25Bが変位した範囲で記録体24が強制的に塑性変形する。
【0050】
従って、地震後に記録体24の変形状態を確認すれば、配管12が、どの方向にどれだけ変位したかを立体的、即ち、配管12の配置を基準とする上下前後左右方向の変位量を記録体24の変形状態で確認することができる。
【0051】
具体的には、図4(A)に示すように、記録体24の配列方向に沿う水平方向(配管12の左右)をX方向、記録体24の配列方向を直交する水平方向(配管12の前後)をY方向、記録体24の面方向に沿う垂直方向(配管12の上下)をZ方向としたとき、図5(A),(B)の実線で示す位置から鎖線で示す位置に棒状体25Bが変位した場合、図5(C),(D)に示すように、その変形した幅x1,y1及び奥行z1からおよその変位量を求めることができる。
【0052】
この際、例えば、幅x1や奥行z1は、全幅(奥行)に対して棒状体25Bの直径(幅α)や先端初期位置の深さ(深さβ)を減算する。また、配管12の上下方向に関しては、記録体24を対向する上下に配置したことから、例え、配管12の上下方向の変位量が大きく、棒状体25Bの一方の先端が筐体23Bから離反(離脱)してしまったとしても、他方の先端は筐体23Bの奥行き方向に入り込んで記録を行っていることから、上下前後左右の全方向の変位量を確実に記録することができる。さらに、各記録体24の配置間隔を狭くすると共に棒状体25Bの直径を細くすれば、幅y1の測定誤差は小さくすることができる。但し、本実施の形態では、高価で不安定な結果となる虞のある電気的な検出センサを用いて厳密な数値を算出する代わりに、安価で安定した結果を得ることを目的とし、厳密な数値に変えて三次元の最大変位量と方向とを記録できればよいことから、記録体24の配置間隔や棒状体25Bの直径は数ミリ(例えば、5mm〜20mm)単位であれば、構造物側の変形箇所を予測するには充分な記録結果を得ることができる。
【0053】
また、地震発生に伴って記録体24が変形するが、例えば、記録体24を新たなものと交換(又は、筐体23Bを交換若しくは固定体23を交換)することにより、新たな地震発生による対応を容易且つ迅速に、しかも安価に行うことができる。
【0054】
このように、電気的なセンサ部材等を用いることなく、容易に変位量を三次元で測定することができ、特に、その変位方向と最大変位量を安定して記録することができる。
【0055】
この際、例えば、棒状体25Bの先端を先細り(針状)とすれば、例えば、紙等を記録体24に用いた場合に、その外力によって記録体24を余分に変形させてしまうことを抑制することができ、変形範囲の厳密化に寄与することができる。
【0056】
また、記録体24の材質等に応じて、図6(A)に示すように、棒状体25Bの先端を球形部25Cとしても良い。さらに、球形部25Cを記録体24の内部に位置するように配置することで、図6(B),(C)に示すように、先端25Bから基端側に向かう方向の相対変位量を求めることができる。
【0057】
(実施の形態3)
図7は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態3を示し、図7(A)は要部の斜視図、図7(B)は要部の縦断面図、図8は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態3を示し、図8(A)は記録体破損後における要部の断面図、図8(B)は記録体破損後の固定体と被測定部との関係を示す要部の正面図である。尚、図7及び図8において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図7において、本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置30は、壁面11に対する変位が拘束された固定体33と、固定体33に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体34と、を備えている。また、配管12には、記録体34と接触して配管12の変位に同期して変位する被測定部35が設けられている。
【0059】
固定体33は、基端が壁面11に固定された連結体としての連結ブラケット33Aと、連結ブラケット33Aの先端に固定されて配管12と対向する前面に開口する支持体としての筐体33Bと、を備えている。
【0060】
記録体34は、筐体33Bの内部に設けられており、本実施の形態においては、粘土や発砲樹脂等のように、常時は経年劣化が少ないと共に保形性が高く、外力を受けた際には塑性変形して元の形状へと復元不能な材質のものが密に充填されて立体とされている。
【0061】
被測定部35は、配管12の変位に同期して変位するように配管12に固定されており、本実施の形態においては、配管12に固定された支持ブラケット35Aと、支持ブラケット35Aから筐体33Bの内部に先端が臨む棒状体35Bと、を備えている。尚、棒状体35Bの先端には球形部35Cが形成されている。また、棒状体35Bの先端(球形部35C)は、筐体33Bの内部中心付近に位置している。
【0062】
上記の構成において、外力としての地震が発生すると、壁面11と非同期で配管12が変位する。同時に、球形部35Cと記録体34との間に相対変位が生じる。
【0063】
この相対変位が生じると、図8に示すように、相対変位量及び変位方向に応じて球形部35Cが記録体34に干渉するため、球形部35Cが変位した範囲で記録体34が強制的に塑性変形する。
【0064】
従って、地震後に記録体34の変形状態を確認すれば、配管12が、どの方向にどれだけ変位したかを立体的、即ち、配管12の配置を基準とする上下前後左右方向の変位量を一つの記録体34の変形状態で確認することができる。
【0065】
具体的には、図8(A),(B)に示すように、記録体34の変形状態から、球形部35Cの元の位置から上下前後左右の全方向の最大変形幅(例えば、x2,x3、y2,y3、z2,z3)を求めることで三次元の最大変位量を一つの球形部35Cと記録体34とで求めることができる。尚、記録体34と被測定部35とは、補完的に方向を異ならせて複数設けても良い。
【0066】
(実施の形態4)
図9は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態4を示し、図9(A)は要部の斜視図、図9(B)は記録体の正面図である。尚、図9において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図9において、本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置40は、壁面11に対する変位が拘束された固定体43と、固定体43に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体44と、を備えている。また、配管12には、記録体44と接触して配管12の変位に同期して変位する被測定部45が設けられている。
【0068】
固定体43は、基端が壁面11に固定された連結体としての連結ブラケット43Aと、連結ブラケット43Aの先端に固定されて配管12と対向する前面に開口する支持体としての枠体43Bと、を備えている。
【0069】
記録体44は、枠体43Bの内部に張られており、本実施の形態においては、例えば、薄い金属箔(アルミホイル等)や紙材(障子紙等)のように、経年劣化が少なく、破れて変形し易い又は変形し易い材質のシート状物が用いられている。尚、記録体44は、外力を直接受けた部分のみが変形するように、その厚さ等で調整するのが好ましいが、経年劣化が少なく、破れ易い又は変形し易い材質のシート状物であれば、その材質や厚さ等は特に限定されるものではない。また、固定体43と記録体44とは、本実施の形態のように、配管12が直交する2方向に軸線を有するエルボ管である場合、その2方向に独立して配置することにより、2枚の記録体で上下前後左右方向の配管12の変位を記録することができる。
【0070】
被測定部45は、配管12の変位に同期して変位するように配管12に固定されており、本実施の形態においては、配管12に固定された支持ブラケット45Aと、支持ブラケット45Aから枠体43Bの中心を先端が貫通する棒状体45Bと、を備えている。
【0071】
上記の構成において、外力としての地震が発生すると、壁面11が変位すると共に、配管12が壁面11と非同期で変位し、棒状体45Bと記録体44との間に相対変位が生じる。
【0072】
この相対変位が生じると、図8に示すように、相対変位量及び変位方向に応じて棒状体45Bが記録体44に干渉するため、棒状体45Bが変位した範囲で記録体44が強制的に塑性変形する。
【0073】
従って、地震後に記録体44の変形状態を確認すれば、配管12が、どの方向にどれだけ変位したかを立体的、即ち、配管12の配置を基準とする上下前後左右方向の変位量を一対の記録体44の変形状態で確認することができる。
【0074】
(実施の形態5)
図10は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態5を示し、図10(A)は要部の斜視図、図10(B)は記録体の正面図、図10(C)は記録体の変形例の斜視図である。尚、図10において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
図10(A),(B)において、本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置50は、壁面11に対する変位が拘束された固定体53と、固定体53に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体54と、を備えている。尚、本実施の形態においては、配管12を被測定部に兼用している。
【0076】
固定体53は、基端が壁面11に固定された連結体としての連結ブラケット53Aと、連結ブラケット53Aの先端に固定されて配管12を取り巻く支持体としての枠体53Bと、を備えている。
【0077】
記録体54は、枠体53Bに張られており、本実施の形態においては、その中心で配管12が貫通している。したがって、その着脱のために、枠体53Bと記録体54とは半割り形状とされている。また、記録体54には、例えば、薄い金属箔(アルミホイル等)や紙材(障子紙等)等のように、経年劣化が少なく、破れて変形し易い材質のシート状物が用いられている。尚、記録体54は、外力を直接受けた部分のみが破れて変形するように、その厚さ等で調整するのが好ましいが、経年劣化が少なく、破れ易い材質のシート状物であれば、その材質や厚さ等は特に限定されるものではない。また、図10(C)に示すように、複数の平板状のものを配列したものを用いても良い。さらに、固定体53及び記録体54とは、本実施の形態のように、配管12がエルボ管である場合、その配管2方向に独立して配置することにより、1枚の記録体で上下前後左右方向の配管12の変位を記録することができる。
【0078】
上記の構成において、外力としての地震が発生した場合、壁面11が変位すると共に、配管12が壁面11とは非同期で変位する。同時に、配管12の変位は、直接記録体54に変形を及ぼして記録する。
【0079】
従って、地震後に記録体54の破損状態や変形状態を確認すれば、配管12が、どの方向にどれだけ変位したかを立体的、即ち、配管12の配置を基準とする上下前後左右方向の変位量を2つの記録体54の変形状態で確認することができる。
【0080】
(実施の形態6)
図11は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態6を示し、図11(A)は要部の縦断面図、図11(B)は要部の平断面図である。尚、図11において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0081】
図11において、本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置60は、壁面11に対する変位が拘束された固定体63と、固定体63に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体64と、を備えている。また、配管12には、記録体64と接触して配管12の変位に同期して変位する被測定部65が設けられている。尚、配管12の外周には、保温性を確保するための筒状のグラスウール等の保温材66が設けられている。
【0082】
固定体63は、基端が壁面11に固定された連結体としての連結ブラケット63Aと、連結ブラケット63Aの先端に固定されて配管12を取り巻く支持体としての環状の枠体63Bと、を備えている。
【0083】
記録体64は、枠体63Bに設けられており、本実施の形態においては、配管12に向けて開口する断面コ字形状の枠体63Bの周方向に沿って複数配列されている。また、記録体64には、例えば、薄い金属箔(アルミホイル等)や紙材(障子紙等)等のように、経年劣化が少なく、破れ易い材質のシート状物が用いられている。尚、記録体64は、外力を直接受けた部分のみが破れて変形するように、その厚さ等で調整するのが好ましいが、経年劣化が少なく、破れて変形し易い材質のシート状物であれば、その材質や厚さ等は特に限定されるものではない。
【0084】
被測定部65は、本実施の形態においては、配管12に固定されて配管12を取り巻く環状の支持ブラケット65Aと、支持ブラケット65Aから放射状(例えば、対向する二箇所又は四箇所)に突出する棒状体65Bと、を備えている。
【0085】
上記の構成において、外力としての地震が発生した場合、壁面11が変位すると共に、配管12が壁面11とは非同期で変位する。同時に、配管12の変位は、被測定部65の変位となって記録体64に変形を及ぼして記録する。
【0086】
従って、地震後に記録体64の変形状態を確認すれば、配管12が、どの方向にどれだけ変位したかを立体的、即ち、配管12の配置を基準とする上下前後左右方向の変位量を1つの記録体64の変形状態で確認することができる。
【0087】
(実施の形態7)
図12は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態7を示し、図12(A)は地震発生前の要部の縦断面図、図12(B)は地震発生後の要部の平断面図である。尚、図12において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0088】
図12において、本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置70は、壁面11に対する変位が拘束された固定体73と、固定体73に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体74と、を備えている。また、配管12には、記録体74と接触して配管12の変位に同期して変位する被測定部75が設けられている
【0089】
固定体73は、基端が壁面11に固定された連結体としての連結ブラケット73Aと、連結ブラケット73Aの先端に固定されて配管12を取り巻く支持体としての環状の枠体73Bと、を備えている。
【0090】
記録体74は、枠体73Bに設けられており、本実施の形態においては、配管12に向けて開口する断面コ字形状の枠体73Bの周方向に沿って充填された粘土材等が用いられている。尚、記録体74は、薄い金属箔(アルミホイル等)や紙材(障子紙等)等を同心状に複数重ねたものでもよい。
【0091】
被測定部75は、本実施の形態においては、配管12に固定されて配管12を取り巻く環状の支持ブラケット75Aと、支持ブラケット75Aに変位可能に支持されて放射状に突出する棒状体75Bと、を備えている。
【0092】
尚、これら固定体73、記録体74、被測定部75は、配管12(エルボ管)の軸線方向の異なる二箇所に配置されている。
【0093】
上記の構成において、外力としての地震が発生した場合、壁面11が変位すると共に、配管12が壁面11と非同期で変位する。同時に、配管12の変位は、棒状体75Bの軸線方向に沿う変位となって記録体74に先端が埋没するように変形して記録される。
【0094】
従って、地震後に記録体74の埋没深さを確認すれば、配管12が、どの方向にどれだけ変位したかを立体的、即ち、配管12の配置を基準とする上下前後左右方向の変位量を1つの記録体54の変形状態で確認することができる。
【0095】
(変形例)
図13は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態7の変形例を示し、図13(A)は地震発生前の要部の縦断面図、図13(B)は要部の拡大断面図である。尚、図13において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0096】
上記実施の形態7では、棒状体75Bを連結ブラケット73Aで変位可能に保持すると共に、その変位量を記録体74への埋没量で計測(記録)するものを開示したが、例えば、ラチェット方式により記録体74を廃止してもよい。
【0097】
即ち、固定体83の連結ブラケット83Aに棒状体83Bが貫通する貫通穴83Cを形成すると共に、この貫通穴83Cに先端が出没するピン83Dと、ピン83Dの先端が突出する方向に付勢設定されたスプリング83Eとを設け、棒状体83Bにピン83Dと係合する多数の歯部83Fを形成する。
【0098】
これにより、配管12の変位によって連動する突出方向への棒状体83Bの変位を許容すると共に、棒状体83Bの埋没方向への変位はピン83Dと歯部83Fとの係合によって阻止することにより、棒状体83Bの突出量を変位量として記録することができる。
【0099】
このように、本発明の変位量測定装置にあっては、壁面11とは非同期で外力によって変位する配管12の変位量を、地震等の外力を受けた後に、記録体14、24,34,44,54,64,74の変形や棒状体83Bの変位量によって、最大変位量を求めることができる。この際、電気的な検出センサを駆動させるための電源を必要としないので、停電による記録停止、機器の故障、ノイズによる誤差といった不具合が発生し難く、しかも、物理的な直接記録を行うことにより、電機回路や機械駆動部がないので精度検定やメンテナンスを不要とし得て、維持コストも削減することができる。
【符号の説明】
【0100】
10…変位量測定装置
11…壁面(基準構造物)
12…配管(対象構造物)
12A…支持金具
13…固定体
13A…連結ブラケット(連結体)
13B…筐体(支持体)
14…記録体
15…被測定部
15A…支持ブラケット
15B…棒状体
15C…球形部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準構造物に支持されると共に、この基準構造物とは非同期で外力によって変位する対象構造物の変位量を記録する変位量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基準構造物(建物の基礎等)が地震や強風等の外力を受けた場合、この基準構造物に設置した対象構造物(配管や柱状部材等)が変形して損傷することがあるが、外力が作用した後には変形が見掛け上は元に戻っていることが多い。このため、対象構造物の変形状態を推定して損傷の度合いを評価することが重要となる。
【0003】
しかしながら、外力が大きい場合には、基準構造物と対象構造物とが非同期で揺動して相対的に変位する。このため、対象構造物の変形状態の推定が妥当であるか否かを判断するには、基準構造物と対象構造物との相対変位量の最大値と方向との測定結果と、推定した相対変位量の最大値と方向とを比較検討することが有効となる。
【0004】
これに関連する技術として、従来においては、最大変位量を歪センサ等の電気的センサによって測定する変位量測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−186308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した歪センサ等の電気的なセンサを用いた変位量測定装置にあっては、装置全体が複雑で高価であるうえ、地震発生時の停電や給電不良が発生すると測定の信頼性が損なわれてしまうばかりでなく、稼動状態の確認(テスト)や部品交換等のメンテナンスが必要となるなど、その維持管理が大変であるといった問題が生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、簡素で安価な装置でありながら、測定の信頼性を向上し得て、しかも実際に揺動が発生するまでメンテナンスを不要とすることができる変位量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の変位量測定装置は、基準構造物と前記基準構造物に設けられた対象構造物とが外力の作用によって非同期に揺動した場合に、前記基準構造物に対する前記対象構造物の相対変位量を測定する変位量測定装置であって、前記基準構造物に対する変位が拘束された固定体と、前記固定体に支持されて前記対象構造物の被測定部の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の変位量測定装置によれば、簡素で安価な装置でありながら、測定の信頼性を向上し得て、しかも実際に揺動が発生するまでメンテナンスを不要とすることができる。
なお、復元不能な変形には、破損・破裂・穿孔・構成要素の一部の変位等が考えられる。
【0010】
本発明の変位量測定装置は、前記被測定部は、前記対象構造物に固定されて前記記録体に向けて突出する一つ以上の長尺状の棒状体であることを特徴とする。
【0011】
本発明の変位量測定装置によれば、一つ以上の長尺状の棒状体によって記録体を変形させることができ、基準構造物と対象構造物との配置関係に容易に対応することができる。
【0012】
本発明の変位量測定装置は、前記被測定部は、前記対象構造物の周囲に配置されて前記対象構造物の変位量と変位方向とに応じて係合する一つ以上の長尺状の棒状体であることを特徴とする。
【0013】
本発明の変位量測定装置によれば、対象構造物の周囲に配置された一つ以上の長尺状の棒状体により記録体を変形させることにより、対象構造物の変位量と変位方向とに容易に対応することができる。
【0014】
本発明の変位量測定装置は、前記記録体は、一つ以上の前記被測定部と接触することで変形する一つ以上の立体によって前記被測定部の三次元方向の最大変位量を記録することを特徴とする。
【0015】
本発明の変位量測定装置によれば、少ない数の記録体によって三次元方向の最大変位量を記録することができる。
【0016】
本発明の変位量測定装置は、前記記録体は、前記対象構造物の前後・左右・上下の何れか一方向に延在された前記被測定部の両端と独立して接触することで変形する一対の立体によって前記被測定部の三次元方向の最大変位量を記録することを特徴とする。
【0017】
本発明の変位量測定装置によれば、一方の記録体から離間する方向の対象構造物の変位を他方の記録体で記録することができ、より厳密な変位量の記録を可能とすることができる。
【0018】
本発明の変位量測定装置は、前記記録体は、前記対象構造物の前後・左右・上下の異なる二方向以上に延在された前記被測定部と独立して接触する二つ以上の平面体によって前記被測定部の三次元方向の最大変位量を記録することを特徴とする。
【0019】
本発明の変位量測定装置によれば、二つ以上の平面体によって三次元方向の最大変位量を記録することができ、材料コストを大幅に削減することができる。
【0020】
本発明の変位量測定装置は、前記固定体は、前記基準構造物に固定された連結体と、該連結体に固定されて少なくとも前記被測定部と対向する面を前面として開口する筐体形状の支持体と、を備え、前記記録体は、前記支持体に離間状態で順次平行に対向配置された複数の平面体からなる立体であることを特徴とする。
【0021】
本発明の変位量測定装置によれば、複数の平面体で立体とされた記録体により三次元方向の最大変位量を記録することができる。
【0022】
本発明の変位量測定装置は、前記固定体は、前記基準構造物に固定された連結体と、該連結体に固定されて少なくとも前記被測定部と対向する面を前面として開口する筐体形状の支持体と、を備え、前記記録体は、前記支持体の内部に設けられた塑性変形可能な材料からなる立体であることを特徴とする。
【0023】
本発明の変位量測定装置によれば、三次元方向のより厳密な最大変位量を記録体に記録することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の変位量測定装置は、簡素で安価な装置でありながら、測定の信頼性を向上し得て、しかも実際に揺動が発生するまでメンテナンスを不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態1を示し、(A)は要部の斜視図、(B)は変形前の記録体の断面図、(C)は変形中の記録体の断面図、(D)は変形後の記録体の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態1の変形例1を示す要部の縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態1の変形例2を示す要部の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態2を示し、(A)は要部の斜視図、(B)は要部の縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態2を示し、(A)は記録体変形前における記録体配列方向に沿う要部の断面図、(B)は記録体変形前における記録体配列方向と直交する方向に沿う要部の断面図、(C)は記録体変形状態における記録体配列方向に沿う要部の断面図、(D)は記録体変形状態における記録体配列方向と直交する方向に沿う要部の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態2を示し、(A)は固定体と被測定部との関係を示す要部の拡大斜視図、(B)は記録体変形後の固定体と被測定部との関係を示す要部の断面図、(C)は記録体変形後の固定体と被測定部との関係を示す要部の正面図である。
【図7】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態3を示し、(A)は要部の斜視図、(B)は要部の縦断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態3を示し、(A)は記録体変形後における要部の断面図、(B)は記録体変形後の固定体と被測定部との関係を示す要部の正面図である。
【図9】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態4を示し、(A)は要部の斜視図、(B)は記録体の正面図である。
【図10】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態5を示し、(A)は要部の斜視図、(B)は記録体の正面図、(C)は記録体の変形例の斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態6を示し、(A)は要部の縦断面図、(B)は要部の平断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態7を示し、(A)は地震発生前の要部の縦断面図、(B)は地震発生後の要部の平断面図である。
【図13】本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態7の変形例を示し、(A)は地震発生前の要部の縦断面図、(B)は要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の一実施形態に係る変位量測定装置について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施例は本発明の変位量測定装置における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下に示す実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態1を示し、図1(A)は要部の斜視図、図1(B)は変形前の記録体の断面図、図1(C)は変形中の記録体の断面図、図1(D)は変形後の記録体の断面図である。
【0028】
図1において、本発明の変位量測定装置10は、基準構造物としての壁面11に設けられた対象構造物としての配管12との関係において、壁面11と配管12とが外力の作用によって非同期で揺動した場合に壁面11に対する配管12の相対変位量を測定するもので、壁面11に対する変位が拘束された固定体13と、固定体13に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体14と、を備えている。また、配管12には、記録体14と接触して配管12の変位に同期して変位する被測定部15が設けられている。
【0029】
尚、壁面11と配管12とは、本実施の形態における基準構造物並びに対象構造物として機能しているが、基準構造物と対象構造物とはこれらに限定されるものではなく、例えば、基礎(床面)とその基礎上に設置(又は載置)されたもの等、外力による変位が比較的小さい基準構造物に支持されて同じ外力によって基準構造物とは非同期で変位する対象構造物全般に適用することができる。
【0030】
また、配管12は、支持金具12Aを介して壁面11に支持されている。この際、支持金具12Aは、配管12の適宜複数個所に設けられて配管12を支持しているが、この支持金具12Aの存在と配管12が長尺な構造体であることから、同じ外力を受けた場合であっても壁面11の変位よりも配管12の変位は非同期で大きくなる。
【0031】
固定体13は、基端が壁面11に固定された連結体としての連結ブラケット13Aと、各連結ブラケット13Aの先端に固定されて配管12に対向する前面に開口する支持体としての筐体13Bと、を備えている。
【0032】
記録体14は、筐体13Bに設けられており、本実施の形態においては、最前に配置されたもので筐体13Bの前面開口を閉成すると共に奥行き方向に所定間隔(一定間隔)を存して順次平行に配列され、その全体で実質的な立体状に構成されている。また、記録体14には、例えば、薄い金属箔(アルミホイル等)や紙材(障子紙等)等のように、経年劣化が少なく、破れ易い材質のシート状物を用いるのが好ましい。尚、記録体14は、被測定部と接触して外力を直接受けた部分のみが破れるように変形するもので、その厚さ等で調整するのが好ましいが、経年劣化が少なく、破れ易い材質のシート状物であれば、その材質や厚さ等は特に限定されるものではない。
【0033】
被測定部15は、配管12の変位に同期するように配管12に固定されており、本実施の形態においては、配管12に固定された環状の支持ブラケット15Aと、支持ブラケット15Aから最前の記録体14の中心付近に向って突出する長尺な棒状体15Bと、を備えている。また、棒状体15Bの先端は、図1(B)に示すように、最前の記録体14と常時は非接触であり、特に、棒状体15Bの軸線方向に沿うように配管12が軸線方向と直交する左右方向に変位すると、図1(C)に示すように、その変位量に応じて最前の記録体14から筐体13Bの奥行き方向に順次突き破り、配管12の変位が終了すると、図1(D)に示すように、元の位置へと復帰する。
【0034】
上記の構成において、外力としての地震が発生した場合、壁面11が変位すると共に、配管12が壁面11とは非同期で変位するため、壁面11と配管12との間に相対変位が生じる。
【0035】
この相対変位は、棒状体15Bの軸線方向に沿う変位の大きさに応じた枚数だけ記録体14を突き破って変形(穿孔)させることで記録する。
【0036】
従って、地震後に記録体14の変形枚数を確認すれば、配管12がどれだけ変位したかを記録体14の変形枚数(記録状態)から確認することができる。
【0037】
これにより、記録体14の変形枚数によって、記録体14のシート状物の配列方向における配管12の最大変位量を確認することができる。
【0038】
また、地震発生に伴って記録体14が変形するが、例えば、記録体14を新たなものと交換(又は、筐体13Bを交換若しくは固定体13を交換)することにより、新たな地震発生による対応を容易且つ迅速に、しかも安価に行うことができる。
【0039】
このように、電気的なセンサ部材等を用いることなく、容易に変位量を測定することができ、特に、その変位方向と最大変位量を安定して記録することができる。
【0040】
この際、例えば、棒状体15Bの先端を先細り(針状)とすれば、例えば、紙等を記録体14に用いた場合に、その外力によって記録体14を余分に破損させてしまうことを抑制することができ、変形範囲の厳密化に寄与することができる。
【0041】
また、図2に示すように、配管12を挟んで互いに離間する方向に一対の棒状体15Bを設け、各棒状体15Bに対して固定体13を配置しても良い。
この構成によれば、一方向(棒状体15Bの延在方向)における両方向の最大変位量を記録することができる。
【0042】
さらに、図3に示すように、配管12の上下左右前後に相当する三方に向けて棒状体15Bを突出させると共に、各棒状体15Bに対して固定体13を配置しても良い。
この構成によれば、複数方向の最大変位量を三次元で計測することができる。
【0043】
(実施の形態2)
図4は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態2を示し、図4(A)は要部の斜視図、図4(B)は要部の縦断面図、図5は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態2を示し、図5(A)は記録体変形前における記録体配列方向に沿う要部の断面図、図5(B)は記録体変形前における記録体配列方向と直交する方向に沿う要部の断面図、図5(C)は記録体変形状態における記録体配列方向に沿う要部の断面図、図5(D)は記録体変形状態における記録体配列方向と直交する方向に沿う要部の断面図、図6は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態2を示し、図6(A)は固定体と被測定部との関係を示す要部の拡大斜視図、図6(B)は記録体変形後の固定体と被測定部との関係を示す要部の断面図、図6(C)は記録体変形後の固定体と被測定部との関係を示す要部の正面図である。尚、図4乃至図6において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
図4において、変位量測定装置20は、壁面11に対する変位が拘束された固定体23と、固定体23に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体24と、を備えている。また、配管12には、記録体24と接触して配管12の変位に同期して変位する被測定部25が設けられている。
【0045】
固定体23は、基端が壁面11に固定された連結体としての上下一対の連結ブラケット23Aと、各連結ブラケット23Aの先端に固定されて互いに対向する上下面に開口する支持体としての筐体23Bと、を備えている。
【0046】
記録体24は、本実施の形態においては、前面開口に隙間ができるように各筐体23Bの奥行き方向(上下方向)に面が沿って所定間隔(一定間隔)を存して平行に配置された複数の平面体が用いられており、実質的な立体状を構成している。
【0047】
被測定部25は、配管12の変位に同期するように固定されており、本実施の形態においては、上下一対の筐体23Bの中間に先端が位置するように壁面11に向って突出する板状の支持ブラケット25Aと、支持ブラケット25Aの先端から上下方向に延在する一対の棒状体25Bと、を備えている。また、棒状体25Bの先端は、筐体23Bの開口端の中心付近で内部に臨んでいる。この際、棒状体25Bの先端は、複数の記録体24の間(前面開口の隙間)に位置するのが好ましい。
【0048】
上記の構成において、外力としての地震が発生すると、壁面11が変位すると共に、配管12が壁面11とは非同期で変位し、棒状体25Bと記録体24との間に相対変位が生じる。
【0049】
この相対変位が生じると、図5に示すように、相対変位量及び変位方向に応じて棒状体25Bが記録体24としての薄い金属箔を破り、棒状体25Bが変位した範囲で記録体24が強制的に塑性変形する。
【0050】
従って、地震後に記録体24の変形状態を確認すれば、配管12が、どの方向にどれだけ変位したかを立体的、即ち、配管12の配置を基準とする上下前後左右方向の変位量を記録体24の変形状態で確認することができる。
【0051】
具体的には、図4(A)に示すように、記録体24の配列方向に沿う水平方向(配管12の左右)をX方向、記録体24の配列方向を直交する水平方向(配管12の前後)をY方向、記録体24の面方向に沿う垂直方向(配管12の上下)をZ方向としたとき、図5(A),(B)の実線で示す位置から鎖線で示す位置に棒状体25Bが変位した場合、図5(C),(D)に示すように、その変形した幅x1,y1及び奥行z1からおよその変位量を求めることができる。
【0052】
この際、例えば、幅x1や奥行z1は、全幅(奥行)に対して棒状体25Bの直径(幅α)や先端初期位置の深さ(深さβ)を減算する。また、配管12の上下方向に関しては、記録体24を対向する上下に配置したことから、例え、配管12の上下方向の変位量が大きく、棒状体25Bの一方の先端が筐体23Bから離反(離脱)してしまったとしても、他方の先端は筐体23Bの奥行き方向に入り込んで記録を行っていることから、上下前後左右の全方向の変位量を確実に記録することができる。さらに、各記録体24の配置間隔を狭くすると共に棒状体25Bの直径を細くすれば、幅y1の測定誤差は小さくすることができる。但し、本実施の形態では、高価で不安定な結果となる虞のある電気的な検出センサを用いて厳密な数値を算出する代わりに、安価で安定した結果を得ることを目的とし、厳密な数値に変えて三次元の最大変位量と方向とを記録できればよいことから、記録体24の配置間隔や棒状体25Bの直径は数ミリ(例えば、5mm〜20mm)単位であれば、構造物側の変形箇所を予測するには充分な記録結果を得ることができる。
【0053】
また、地震発生に伴って記録体24が変形するが、例えば、記録体24を新たなものと交換(又は、筐体23Bを交換若しくは固定体23を交換)することにより、新たな地震発生による対応を容易且つ迅速に、しかも安価に行うことができる。
【0054】
このように、電気的なセンサ部材等を用いることなく、容易に変位量を三次元で測定することができ、特に、その変位方向と最大変位量を安定して記録することができる。
【0055】
この際、例えば、棒状体25Bの先端を先細り(針状)とすれば、例えば、紙等を記録体24に用いた場合に、その外力によって記録体24を余分に変形させてしまうことを抑制することができ、変形範囲の厳密化に寄与することができる。
【0056】
また、記録体24の材質等に応じて、図6(A)に示すように、棒状体25Bの先端を球形部25Cとしても良い。さらに、球形部25Cを記録体24の内部に位置するように配置することで、図6(B),(C)に示すように、先端25Bから基端側に向かう方向の相対変位量を求めることができる。
【0057】
(実施の形態3)
図7は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態3を示し、図7(A)は要部の斜視図、図7(B)は要部の縦断面図、図8は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態3を示し、図8(A)は記録体破損後における要部の断面図、図8(B)は記録体破損後の固定体と被測定部との関係を示す要部の正面図である。尚、図7及び図8において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図7において、本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置30は、壁面11に対する変位が拘束された固定体33と、固定体33に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体34と、を備えている。また、配管12には、記録体34と接触して配管12の変位に同期して変位する被測定部35が設けられている。
【0059】
固定体33は、基端が壁面11に固定された連結体としての連結ブラケット33Aと、連結ブラケット33Aの先端に固定されて配管12と対向する前面に開口する支持体としての筐体33Bと、を備えている。
【0060】
記録体34は、筐体33Bの内部に設けられており、本実施の形態においては、粘土や発砲樹脂等のように、常時は経年劣化が少ないと共に保形性が高く、外力を受けた際には塑性変形して元の形状へと復元不能な材質のものが密に充填されて立体とされている。
【0061】
被測定部35は、配管12の変位に同期して変位するように配管12に固定されており、本実施の形態においては、配管12に固定された支持ブラケット35Aと、支持ブラケット35Aから筐体33Bの内部に先端が臨む棒状体35Bと、を備えている。尚、棒状体35Bの先端には球形部35Cが形成されている。また、棒状体35Bの先端(球形部35C)は、筐体33Bの内部中心付近に位置している。
【0062】
上記の構成において、外力としての地震が発生すると、壁面11と非同期で配管12が変位する。同時に、球形部35Cと記録体34との間に相対変位が生じる。
【0063】
この相対変位が生じると、図8に示すように、相対変位量及び変位方向に応じて球形部35Cが記録体34に干渉するため、球形部35Cが変位した範囲で記録体34が強制的に塑性変形する。
【0064】
従って、地震後に記録体34の変形状態を確認すれば、配管12が、どの方向にどれだけ変位したかを立体的、即ち、配管12の配置を基準とする上下前後左右方向の変位量を一つの記録体34の変形状態で確認することができる。
【0065】
具体的には、図8(A),(B)に示すように、記録体34の変形状態から、球形部35Cの元の位置から上下前後左右の全方向の最大変形幅(例えば、x2,x3、y2,y3、z2,z3)を求めることで三次元の最大変位量を一つの球形部35Cと記録体34とで求めることができる。尚、記録体34と被測定部35とは、補完的に方向を異ならせて複数設けても良い。
【0066】
(実施の形態4)
図9は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態4を示し、図9(A)は要部の斜視図、図9(B)は記録体の正面図である。尚、図9において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図9において、本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置40は、壁面11に対する変位が拘束された固定体43と、固定体43に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体44と、を備えている。また、配管12には、記録体44と接触して配管12の変位に同期して変位する被測定部45が設けられている。
【0068】
固定体43は、基端が壁面11に固定された連結体としての連結ブラケット43Aと、連結ブラケット43Aの先端に固定されて配管12と対向する前面に開口する支持体としての枠体43Bと、を備えている。
【0069】
記録体44は、枠体43Bの内部に張られており、本実施の形態においては、例えば、薄い金属箔(アルミホイル等)や紙材(障子紙等)のように、経年劣化が少なく、破れて変形し易い又は変形し易い材質のシート状物が用いられている。尚、記録体44は、外力を直接受けた部分のみが変形するように、その厚さ等で調整するのが好ましいが、経年劣化が少なく、破れ易い又は変形し易い材質のシート状物であれば、その材質や厚さ等は特に限定されるものではない。また、固定体43と記録体44とは、本実施の形態のように、配管12が直交する2方向に軸線を有するエルボ管である場合、その2方向に独立して配置することにより、2枚の記録体で上下前後左右方向の配管12の変位を記録することができる。
【0070】
被測定部45は、配管12の変位に同期して変位するように配管12に固定されており、本実施の形態においては、配管12に固定された支持ブラケット45Aと、支持ブラケット45Aから枠体43Bの中心を先端が貫通する棒状体45Bと、を備えている。
【0071】
上記の構成において、外力としての地震が発生すると、壁面11が変位すると共に、配管12が壁面11と非同期で変位し、棒状体45Bと記録体44との間に相対変位が生じる。
【0072】
この相対変位が生じると、図8に示すように、相対変位量及び変位方向に応じて棒状体45Bが記録体44に干渉するため、棒状体45Bが変位した範囲で記録体44が強制的に塑性変形する。
【0073】
従って、地震後に記録体44の変形状態を確認すれば、配管12が、どの方向にどれだけ変位したかを立体的、即ち、配管12の配置を基準とする上下前後左右方向の変位量を一対の記録体44の変形状態で確認することができる。
【0074】
(実施の形態5)
図10は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態5を示し、図10(A)は要部の斜視図、図10(B)は記録体の正面図、図10(C)は記録体の変形例の斜視図である。尚、図10において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
図10(A),(B)において、本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置50は、壁面11に対する変位が拘束された固定体53と、固定体53に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体54と、を備えている。尚、本実施の形態においては、配管12を被測定部に兼用している。
【0076】
固定体53は、基端が壁面11に固定された連結体としての連結ブラケット53Aと、連結ブラケット53Aの先端に固定されて配管12を取り巻く支持体としての枠体53Bと、を備えている。
【0077】
記録体54は、枠体53Bに張られており、本実施の形態においては、その中心で配管12が貫通している。したがって、その着脱のために、枠体53Bと記録体54とは半割り形状とされている。また、記録体54には、例えば、薄い金属箔(アルミホイル等)や紙材(障子紙等)等のように、経年劣化が少なく、破れて変形し易い材質のシート状物が用いられている。尚、記録体54は、外力を直接受けた部分のみが破れて変形するように、その厚さ等で調整するのが好ましいが、経年劣化が少なく、破れ易い材質のシート状物であれば、その材質や厚さ等は特に限定されるものではない。また、図10(C)に示すように、複数の平板状のものを配列したものを用いても良い。さらに、固定体53及び記録体54とは、本実施の形態のように、配管12がエルボ管である場合、その配管2方向に独立して配置することにより、1枚の記録体で上下前後左右方向の配管12の変位を記録することができる。
【0078】
上記の構成において、外力としての地震が発生した場合、壁面11が変位すると共に、配管12が壁面11とは非同期で変位する。同時に、配管12の変位は、直接記録体54に変形を及ぼして記録する。
【0079】
従って、地震後に記録体54の破損状態や変形状態を確認すれば、配管12が、どの方向にどれだけ変位したかを立体的、即ち、配管12の配置を基準とする上下前後左右方向の変位量を2つの記録体54の変形状態で確認することができる。
【0080】
(実施の形態6)
図11は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態6を示し、図11(A)は要部の縦断面図、図11(B)は要部の平断面図である。尚、図11において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0081】
図11において、本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置60は、壁面11に対する変位が拘束された固定体63と、固定体63に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体64と、を備えている。また、配管12には、記録体64と接触して配管12の変位に同期して変位する被測定部65が設けられている。尚、配管12の外周には、保温性を確保するための筒状のグラスウール等の保温材66が設けられている。
【0082】
固定体63は、基端が壁面11に固定された連結体としての連結ブラケット63Aと、連結ブラケット63Aの先端に固定されて配管12を取り巻く支持体としての環状の枠体63Bと、を備えている。
【0083】
記録体64は、枠体63Bに設けられており、本実施の形態においては、配管12に向けて開口する断面コ字形状の枠体63Bの周方向に沿って複数配列されている。また、記録体64には、例えば、薄い金属箔(アルミホイル等)や紙材(障子紙等)等のように、経年劣化が少なく、破れ易い材質のシート状物が用いられている。尚、記録体64は、外力を直接受けた部分のみが破れて変形するように、その厚さ等で調整するのが好ましいが、経年劣化が少なく、破れて変形し易い材質のシート状物であれば、その材質や厚さ等は特に限定されるものではない。
【0084】
被測定部65は、本実施の形態においては、配管12に固定されて配管12を取り巻く環状の支持ブラケット65Aと、支持ブラケット65Aから放射状(例えば、対向する二箇所又は四箇所)に突出する棒状体65Bと、を備えている。
【0085】
上記の構成において、外力としての地震が発生した場合、壁面11が変位すると共に、配管12が壁面11とは非同期で変位する。同時に、配管12の変位は、被測定部65の変位となって記録体64に変形を及ぼして記録する。
【0086】
従って、地震後に記録体64の変形状態を確認すれば、配管12が、どの方向にどれだけ変位したかを立体的、即ち、配管12の配置を基準とする上下前後左右方向の変位量を1つの記録体64の変形状態で確認することができる。
【0087】
(実施の形態7)
図12は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態7を示し、図12(A)は地震発生前の要部の縦断面図、図12(B)は地震発生後の要部の平断面図である。尚、図12において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0088】
図12において、本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置70は、壁面11に対する変位が拘束された固定体73と、固定体73に支持されて配管12の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体74と、を備えている。また、配管12には、記録体74と接触して配管12の変位に同期して変位する被測定部75が設けられている
【0089】
固定体73は、基端が壁面11に固定された連結体としての連結ブラケット73Aと、連結ブラケット73Aの先端に固定されて配管12を取り巻く支持体としての環状の枠体73Bと、を備えている。
【0090】
記録体74は、枠体73Bに設けられており、本実施の形態においては、配管12に向けて開口する断面コ字形状の枠体73Bの周方向に沿って充填された粘土材等が用いられている。尚、記録体74は、薄い金属箔(アルミホイル等)や紙材(障子紙等)等を同心状に複数重ねたものでもよい。
【0091】
被測定部75は、本実施の形態においては、配管12に固定されて配管12を取り巻く環状の支持ブラケット75Aと、支持ブラケット75Aに変位可能に支持されて放射状に突出する棒状体75Bと、を備えている。
【0092】
尚、これら固定体73、記録体74、被測定部75は、配管12(エルボ管)の軸線方向の異なる二箇所に配置されている。
【0093】
上記の構成において、外力としての地震が発生した場合、壁面11が変位すると共に、配管12が壁面11と非同期で変位する。同時に、配管12の変位は、棒状体75Bの軸線方向に沿う変位となって記録体74に先端が埋没するように変形して記録される。
【0094】
従って、地震後に記録体74の埋没深さを確認すれば、配管12が、どの方向にどれだけ変位したかを立体的、即ち、配管12の配置を基準とする上下前後左右方向の変位量を1つの記録体54の変形状態で確認することができる。
【0095】
(変形例)
図13は本発明の一実施形態に関わる変位量測定装置の実施の形態7の変形例を示し、図13(A)は地震発生前の要部の縦断面図、図13(B)は要部の拡大断面図である。尚、図13において、上記実施の形態1と実質的に同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0096】
上記実施の形態7では、棒状体75Bを連結ブラケット73Aで変位可能に保持すると共に、その変位量を記録体74への埋没量で計測(記録)するものを開示したが、例えば、ラチェット方式により記録体74を廃止してもよい。
【0097】
即ち、固定体83の連結ブラケット83Aに棒状体83Bが貫通する貫通穴83Cを形成すると共に、この貫通穴83Cに先端が出没するピン83Dと、ピン83Dの先端が突出する方向に付勢設定されたスプリング83Eとを設け、棒状体83Bにピン83Dと係合する多数の歯部83Fを形成する。
【0098】
これにより、配管12の変位によって連動する突出方向への棒状体83Bの変位を許容すると共に、棒状体83Bの埋没方向への変位はピン83Dと歯部83Fとの係合によって阻止することにより、棒状体83Bの突出量を変位量として記録することができる。
【0099】
このように、本発明の変位量測定装置にあっては、壁面11とは非同期で外力によって変位する配管12の変位量を、地震等の外力を受けた後に、記録体14、24,34,44,54,64,74の変形や棒状体83Bの変位量によって、最大変位量を求めることができる。この際、電気的な検出センサを駆動させるための電源を必要としないので、停電による記録停止、機器の故障、ノイズによる誤差といった不具合が発生し難く、しかも、物理的な直接記録を行うことにより、電機回路や機械駆動部がないので精度検定やメンテナンスを不要とし得て、維持コストも削減することができる。
【符号の説明】
【0100】
10…変位量測定装置
11…壁面(基準構造物)
12…配管(対象構造物)
12A…支持金具
13…固定体
13A…連結ブラケット(連結体)
13B…筐体(支持体)
14…記録体
15…被測定部
15A…支持ブラケット
15B…棒状体
15C…球形部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準構造物と前記基準構造物に設けられた対象構造物とが外力の作用によって非同期に揺動した場合に、前記基準構造物に対する前記対象構造物の相対変位量を測定する変位量測定装置であって、
前記基準構造物に対する変位が拘束された固定体と、
前記固定体に支持されて前記対象構造物の被測定部の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体と、
を備えることを特徴とする変位量測定装置。
【請求項2】
前記被測定部は、前記対象構造物に固定されて前記記録体に向けて突出する一つ以上の長尺状の棒状体であることを特徴とする請求項1に記載の変位量測定装置。
【請求項3】
前記被測定部は、前記対象構造物の周囲に配置されて前記対象構造物の変位量と変位方向とに応じて係合する一つ以上の長尺状の棒状体であることを特徴とする請求項1に記載の変位量測定装置。
【請求項4】
前記記録体は、一つ以上の前記被測定部と接触することで変形する一つ以上の立体によって前記被測定部の三次元方向の最大変位量を記録することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の変位量測定装置。
【請求項5】
前記記録体は、前記対象構造物の前後・左右・上下の何れか一方向に延在された前記被測定部の両端と独立して接触することで変形する一対の立体によって前記被測定部の三次元方向の最大変位量を記録することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の変位量測定装置。
【請求項6】
前記記録体は、前記対象構造物の前後・左右・上下の異なる二方向以上に延在された前記被測定部と独立して接触する二つ以上の平面体によって前記被測定部の三次元方向の最大変位量を記録することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の変位量測定装置。
【請求項7】
前記固定体は、前記基準構造物に固定された連結体と、該連結体に固定されて少なくとも前記被測定部と対向する面を前面として開口する筐体形状の支持体と、を備え、
前記記録体は、前記支持体に離間状態で順次平行に対向配置された複数の平面体からなる立体であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の変位量測定装置。
【請求項8】
前記固定体は、前記基準構造物に固定された連結体と、該連結体に固定されて少なくとも前記被測定部と対向する面を前面として開口する筐体形状の支持体と、を備え、
前記記録体は、前記支持体の内部に設けられた塑性変形可能な材料からなる立体であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の変位量測定装置。
【請求項1】
基準構造物と前記基準構造物に設けられた対象構造物とが外力の作用によって非同期に揺動した場合に、前記基準構造物に対する前記対象構造物の相対変位量を測定する変位量測定装置であって、
前記基準構造物に対する変位が拘束された固定体と、
前記固定体に支持されて前記対象構造物の被測定部の変位によって元の状態へと復元不能に変形する記録体と、
を備えることを特徴とする変位量測定装置。
【請求項2】
前記被測定部は、前記対象構造物に固定されて前記記録体に向けて突出する一つ以上の長尺状の棒状体であることを特徴とする請求項1に記載の変位量測定装置。
【請求項3】
前記被測定部は、前記対象構造物の周囲に配置されて前記対象構造物の変位量と変位方向とに応じて係合する一つ以上の長尺状の棒状体であることを特徴とする請求項1に記載の変位量測定装置。
【請求項4】
前記記録体は、一つ以上の前記被測定部と接触することで変形する一つ以上の立体によって前記被測定部の三次元方向の最大変位量を記録することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の変位量測定装置。
【請求項5】
前記記録体は、前記対象構造物の前後・左右・上下の何れか一方向に延在された前記被測定部の両端と独立して接触することで変形する一対の立体によって前記被測定部の三次元方向の最大変位量を記録することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の変位量測定装置。
【請求項6】
前記記録体は、前記対象構造物の前後・左右・上下の異なる二方向以上に延在された前記被測定部と独立して接触する二つ以上の平面体によって前記被測定部の三次元方向の最大変位量を記録することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の変位量測定装置。
【請求項7】
前記固定体は、前記基準構造物に固定された連結体と、該連結体に固定されて少なくとも前記被測定部と対向する面を前面として開口する筐体形状の支持体と、を備え、
前記記録体は、前記支持体に離間状態で順次平行に対向配置された複数の平面体からなる立体であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の変位量測定装置。
【請求項8】
前記固定体は、前記基準構造物に固定された連結体と、該連結体に固定されて少なくとも前記被測定部と対向する面を前面として開口する筐体形状の支持体と、を備え、
前記記録体は、前記支持体の内部に設けられた塑性変形可能な材料からなる立体であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の変位量測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−103005(P2012−103005A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248823(P2010−248823)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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