説明

変周筒状体

【課題】本発明は、筒状体構成材料量や所要占有容積を省きながらも筒状体内周面の表面積を大きくし、熱交換距離を伸長することなく、熱交換所要時間を短縮させ、高効率な熱交換や触媒反応が可能な熱交換管或いは触媒反応管を提供することを目的とする。
【解決手段】
至る所の横断面の内部断面積を等しく設定しつつも、周長を変化させた形状に形成して内外の表面積を著しく大きく設定し得るように構成したことによって、その内部を流通させる流体を殆ど圧縮させずに、その内周面との接触分子数を増やすことができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状体或いは管材に関し、特に、内部に流体を流通させ、この流体が有する熱と外部の熱とを効率よく交換するための熱交換器やその配管等、或いは、内表面に触媒層を形成して通過流体を触媒反応させるための管材等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器は、特許文献1に開示されているように、銅やアルミニウム等の熱伝導性の良好な材料を管状に形成して、その内部に熱交換対象の流体を流通させ得、この流体が有する熱と外部の熱との間で熱の授受が効率的に成され、効率的に当該流体の温度を外部温度に接近させることが出来る熱交換管を含んだ構成になっている。
【0003】
熱交換器に用いられる金属製管材、即ち熱交換管は、特許文献2に開示されているように、当該管材の外周にヒートシンクを接設させるなどして、当該管材と外部との接触面積をより広大化させて熱交換効率を高めるように構成されていることが多く、また当該管材を蛇行させて熱交換距離を長めに設定することによって、熱交換時間をより長くするように構成されていることが多い。
【0004】
他方、触媒管等は、特許文献3に開示されているように、内周面に触媒層を形成した多数の長尺状の穴を有して成る、若しくは正六角筒状の管材を集束して成るハニカム構造管を利用していることが多い。
【特許文献1】特開平11−256358号公報
【特許文献2】特許第3192622号公報
【特許文献3】特開2008−178858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
斯かる従来の熱交換管は、管材の外周にヒートシンクを設けるなどして管材外表面と外部との接触面積をより広くなるように設定したものであるが、管材外面にヒートシンクを設けるだけでは、管材の内表面積に対する外表面積を著しく大きくしたに過ぎない。
【0006】
つまり、この構造乃至方法では、管材内部を流通する流体からの熱は、狭い表面積の管材内周面に対してしか伝えられず、管材の外表面を大きくしたところで、内周面で絞られた貫熱量の熱を、熱抵抗体である管材を介して外部に伝達しようとするものであり、管材の内表面積の過狭性が熱効率を向上させる上での阻害要因になっていた。
【0007】
また、従来の熱交換管においては、内周面積の過狭性による熱交換効率の低さを改善する為に、管長を長く設定して熱交換可能距離を伸長するという方法が採られているが、これに依れば、長い熱交換時間を要する上、所要の空間容積が大きくなるという問題が生じる。
【0008】
他方、従来の触媒管は、正六角筒状の複数の細管を集束して構成することから重複領域が多数出来、省スペース化、省資源化の観点から問題視される。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みて創作したものであり、圧力損失を高度に抑制しつつ、筒状体構成材料量や所要占有容積を省きながらも筒状体内周面の貫熱量を多量化させ、筒状体の長さ、即ち、熱交換距離を伸長することなく従って、熱交換所要時間を短縮させ、高効率に熱交換をさせることが可能な熱交換管を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、省スペース化や省資源化を図りながらも触媒反応効率を向上させることが出来る触媒反応管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の変周筒状体の採った手段は、適宜の素材を筒状に形成し、この軸方向の任意の位置における当該軸方向に直交する断面の内周に囲繞された内部空間の断面積が至る所ほぼ等しく、且つ、当該軸方向における異なる二点以上の位置における周長が互いに異なるように形成されることを特徴としている。
【0012】
横断面の周長が比較的短い短周領域と、この短周領域の周長よりも長い周長の長周領域とを有することを特徴としている。更に、短周領域の中でも最短の周長に設定された最短周領域と、長周領域の中でも最長の周長に設定された最長周領域とを有することを特徴とする。
【0013】
軸方向において、前記長周領域の距離が前記短周領域の距離よりも長く設定されることを特徴としている。
【0014】
軸方向における横断面形状が、軸方向に沿って連続的に変形したものであることを特徴としている。
【0015】
軸方向の少なくとも一端側の横断面形状が円形で、他端側に向かって横断面形状が略長円乃至略楕円形に変形したものであることを特徴とし、更にその離心率が0から1に向かって連続的に近付く内周面形状を有することを特徴としている。
【0016】
軸方向の両端側の断面形状が円形で、軸方向における中央に向かって断面形状が略長円乃至略楕円形に変形したものであることを特徴とし、更にその離心率が0から1に向かって連続的に近付く内周面形状を有することを特徴としている。
【0017】
筒状体の横断面形状が、略フラクタル平面図形状を成す部分を有することを特徴としている。
【0018】
内周面に整流部が設けられることを特徴とし、整流部が最短周領域から最長周領域に遷移する過程の遷移領域に設けられたを特徴とし、更には整流部が上記過程領域の周面から内部に向かって凸設されることによって形成されることを特徴としている。また、整流部が別体の部材を内周面に固設することによって形成されることを特徴としている。
【0019】
外周面にヒートシンクが設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、筒状体の軸方向における任意の横断面の内部空間断面積を至る所ほぼ同等に設定しつつ、軸方向に向かって連続的に横断面形状を変化させ、周長が比較的小さな領域と周長が比較的長い領域とを設けたことにより、当該筒状体内部を流通する流体を殆ど圧縮することなく流下させることが出来ながらも、周長を長く設定した領域を通過する際に、流体の大部分を筒状体の内周面に接触させることが出来、これによって筒状体と流通流体との熱交換効率を著しく向上させたり、触媒層との接触による触媒反応効率を向上させたりすることが出来る。
【0021】
従来の一般的な円筒型管材と当該発明の筒状体との比較上においては、互いに全く等量の素材使用量で且つ同等の内部空間断面積であっても、当該発明の筒状体の所要占有容積を小さくしつつ、内周面或いは外周面の表面積を著しく大きくすることが出来、また短距離化を図ることが出来る。
【0022】
また、内部空間容積を同等としたとき、従来の一般的な円筒型管材と当該発明の筒状体とを比較すると、当該発明の筒状体の内周面或いは外周面の表面積を著しく大きくすることが出来る。
【0023】
また、筒状体の内部に流体を流下させる場合には、流下距離が短縮化され、且つ時間的短縮化が成されるにも拘わらず、熱交換量又は触媒反応量は向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面(図1乃至6)を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の変周筒状体1の一実施形態を模式的に三面図として示したものである。本実施形態の変周筒状体1は、熱交換用途を目的として筒状に形成された銅製の管材であるが、勿論構成素材や用途はこれらに限定されるものではなく、例えば、内周面の表層に触媒層を設けて、触媒反応用途に資するものとしても良いことは言うまでもない。
【0025】
図1(a)〜(c)に示すように、本実施形態の変周筒状体1は、一端Sから適宜の肉厚で適宜の内径に設定されて円筒状に形成された最も周長の短い第一の最短周領域2と、この第一の最短周領域2の終端E1を始端S1とし、全ての横断面の内部断面積が同等一定で、軸方向に沿って離心率が0から1に向かって終端まで連続的に遷移した断面形状が楕円形状の第一の遷移領域3と、この終端E2を始端S2として一定の断面形状まま軸方向に延設され最長の周長に設定された最長周領域4と、この終端E3を始端S3とし、全ての横断面の内部断面積が同等一定で、軸方向に沿って離心率が0に向かって終端E4まで連続的に遷移した断面形状が楕円形状の第二の遷移領域5と、この終端E4を始端S4とし、変周筒状体1の他端Eを終端E5とする円筒状に形成された第二の最短周領域5とを有して構成される。
【0026】
変周筒状体1の任意の横断面における当該変周筒状体1を構成する素材によって囲繞された内部空間断面積は、至る所同等一定に設定される。
【0027】
つまり、変周筒状体1の軸方向における任意の位置をi、この位置iにおける内部空間断面積をSi、位置iと異なる当該軸方向における任意の位置をj、この位置jにおける内部空間断面積をSj、軸方向における或る位置をm、この位置mにおける内周面の周長をCm、位置mと異なる当該軸方向における或る位置をn、この位置nにおける内周面の周長をCnとするとき、Si=Sj∧Cm<Cn(m≠n∈i≠j)が成り立つ。
【0028】
図2(a)は、変周筒状体1の第一の最短周領域2、第一の遷移領域3、最長周領域4、第二の遷移領域5、第二の最短周領域5の各領域における適宜の横断面位置を示したものであり、図2(b)は、それらの位置に対応して各横断面の内部断面形状を列示した図である。尚、図2(b)に示す各内部断面A−A’、B−B’、C−C’、D−D’、E−E’、F−F’、G−G’、H−H’、I−I’、J−J’、K−K’は、勿論、全て互いに同等である。
【0029】
本実施形態の変周筒状体1は、上記説明のように構成され、例えば、内部に気相流体を流下させる場合、その気相流体を複数の流束Fとして表した図3(a)に示すように、断面形状が円形に設定された第一の最短周領域2(又は第二の最短周領域6)では、第一の最短周領域2の内周面に接触している流束Fは、流束F全体の極一部分に過ぎないが、これに対して図3(b)に示す最長周領域4においては、全ての流束Fが最長周領域4の内周面に接触している。
【0030】
つまり、図3の模式図から判るように、断面積は等しいが周長が異なり、周長が短い領域に比べ、周長が長い領域では、内周面の表面積が大きく、従って同じ長さの円筒体に比して比表面積を著しく大きく設定することが出来る。
【0031】
これによって、変周筒状体1の内部に流体を通過させた場合、圧力損失を極力抑え、流体を殆ど非圧縮のまま流下させ得、変周筒状体1の内周面に高確率でより多くの流体分子を接触させることが可能となり、熱交換効率や触媒反応効率を著しく向上させることが出来る。
【0032】
ここで、本実施形態の変周筒状体1の断面形状は円形を成す一端から軸方向の中央に向かって楕円形に遷移し、中央から他端に向かって再び円形に遷移した形状に構成されているが、断面形状は、これに限らず例えば、図4に示すように、変周筒状体11の端部E’が正方形で徐々に細長い長方形に遷移する形状とすることも可能である。或いは、軸方向の一部に横断面形状が図5に示すような略フラクタル図形状の部分を有したものであっても良く、この場合、その横断面における内部断面積を有限一定の大きさとしながらも周長を極めて大きくすることが出来る。これは、平面フラクタル閉図形が有限の面積を有しながらもその周長が、如何なる正定数Kよりも大きいという事実による。
【0033】
また、本発明の変周筒状体の平面形状は、図1(a)に示すような単調な形状だけでなく、図6に示す変周筒状体101ように、中央がくびれた曲線部を有する閉図形状に構成することが可能であり、任意の曲線や直線の組み合わせによって構成される閉図形に設定することが出来る。これらの意味から本発明の変周筒状体の採り得る形状は無数に存在するといえる。
【0034】
また、変周筒状体の内部の適宜の部位に整流板、整流条等の整流体を設け、内部を流通させる流体を整流させても良く、この場合、特に遷移領域に形成するのが効果的であるが、これに限定されず、所望の部位に形成することが出来る。整流体7は、図7に示すように、変周筒状体201の上下の両外周面から内部に向かってそれぞれ凹落させて内部に条状に凸設しても良い。勿論、整流体7を設けた場合には、変周筒状体201の内部の表面積をより大きくすることが出来るので、熱交換効率や触媒反応効率を更に向上することも出来る。
【0035】
或いは、製流体7aは、図8に示すように、予め別体として形成したものを、変周筒状体301の内周面に固設しても良い。この場合、変周筒状体301は、内部を流下させる流体を整流するだけでなく、変周筒状体301を補強する効果もある。
【0036】
更に、熱交換用途に変周筒状体を用いる場合には、図9に示すように、変周筒状体401の外周面にヒートシンク8を設けて熱交換効率を更に高めるように構成する事も可能である。勿論、この場合、ヒートシンク8は、変周筒状体401を補強する効果もある。
【0037】
以上説明したように、本発明の変周筒状体は、至る所の横断面の内部断面積を等しく設定しつつも、周長を変化させた形状に形成することによって、その内部を流通させる流体を殆ど圧縮させずに、その内周面との接触分子数を増やすように構成するものであって、その主旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】一実施形態を示す三面図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図2】変種筒状体の任意の横断面の内部断面積が一定で且つ周長が一定ではないことを示す模式図であって、(a)は図1(a)の平面図に適当な断面位置を指示する図であり、(b)は(a)に指示する各断面の内部断面形状を、(a)の指示位置に対応した位置に列示した図である。
【図3】(a)は、内部断面が円形を成す最短周領域の適当な断面の断面図であって、変周筒状体の内部に流体を流下させている状態を模式的に示す図であり、(b)は内部断面が楕円形を成す最長周領域の適当な断面の断面図であって、(a)と等量の流体が流下している状態を模式的に示す図である。
【図4】正方形状の筒状を成す端部形状を有し、その終端から徐々に長方形状の筒状を成す断面形状に遷移した変周筒状体の部分拡大斜視図である。
【図5】一変形例の変周筒状体の或る断面形状を示す図であって、その断面形状が略フラクタル図形状を成していることを示す模式図である。
【図6】一変形例の変周筒状体の平面図である。
【図7】一変形例の変周筒状体の構成を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すL−L’断面の断面部分図である。
【図8】一変形例の変周筒状体の構成を示す整流部形成位置における横断面の断面図であって、別体形成された整流部が変周筒状体の内周面に固設されて成る変周筒状体の構成を示す図である。
【図9】一変形例の変周筒状体の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 変周筒状体
2 第一の最短周領域
3 第一の遷移領域
4 最長周領域
5 第二の遷移領域
6 第二の最短周領域
7 整流体
7a 製流体
8 ヒートシンク
11 変周筒状体
101 変周筒状体
201 変周筒状体
301 変周筒状体
401 変周筒状体
S 一端
E1 終端
S1 始端
E2 終端
S2 始端
E3 終端
S3 始端
E4 終端
S4 始端
E5 終端
E 他端
F 流束
E’ 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜の素材を筒状に形成し、
この軸方向の任意の位置における当該軸方向に直交する断面の内周に囲繞された内部空間の断面積が至る所ほぼ等しく、且つ、当該軸方向における異なる二点以上の位置における周長が互いに異なるように形成されることを特徴とする変周筒状体。
【請求項2】
横断面の周長が比較的短い短周領域と、この短周領域の周長よりも長い周長の長周領域とを有することを特徴とする請求項1に記載の変周筒状体。
【請求項3】
軸方向において、前記長周領域の距離が前記短周領域の距離よりも長く設定されることを特徴とする請求項2に記載の変周筒状体。
【請求項4】
軸方向における横断面形状が、軸方向に沿って連続的に変形したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の変周筒状体。
【請求項5】
軸方向の少なくとも一端側の横断面形状が円形で、他端側に向かって横断面形状が略長円乃至略楕円形に変形し、その離心率が0から1に向かって連続的に近付く内周面形状を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の変周筒状体。
【請求項6】
軸方向の両端側の断面形状が円形で、軸方向における中央に向かって断面形状が略長円乃至略楕円形に変形し、その離心率が0から1に向かって連続的に近付く内周面形状を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の変周筒状体。
【請求項7】
筒状体の横断面形状が、略フラクタル平面図形状を成す部分を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の変周筒状体。
【請求項8】
内周面に整流部が設けられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の変周筒状体。
【請求項9】
外周面にヒートシンクが設けられることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の変周筒状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−5450(P2011−5450A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153072(P2009−153072)
【出願日】平成21年6月28日(2009.6.28)
【出願人】(708000812)
【Fターム(参考)】